説明

棒状部材の溝加工方法

【課題】外部からローラの全周突起に作用する負荷を軽減し、ローラの寿命を延ばす。
【解決手段】溝加工装置11の位置決め部材21と押付け部材22とによりピストンロッド5を挟んで軸方向に位置決めし、各転造ローラ14,18を回転駆動しつつ全周突起14B,18Bをピストンロッド5の外周面に押付けて全周溝を加工する。この全周溝の加工途中では、位置決め部材21と押付け部材22とをピストンロッド5から離間させ、ピストンロッド5の両端側を自由状態とする。これにより、全周溝の加工時にピストンロッド5が軸方向に伸長しても、位置決め部材21や押付け部材22に突き当たらないから、ピストンロッド5から全周突起14B,18Bに作用する負荷を軽減して各転造ローラ14,18の寿命を延ばすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧緩衝器のピストンロッド等の棒状部材の外周側に全周溝を加工する棒状部材の溝加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の走行装置に設けられる油圧緩衝器は、ピストンを内蔵したシリンダと、一端が該シリンダ内でピストンに連結され他端がロッドガイドを介して前記シリンダから伸縮可能に突出したピストンロッドとにより大略構成されている。ピストンロッドの軸方向の途中位置には、その外周側に位置して環状のストッパが取付けられている。このストッパは、ピストンロッドを伸長させたときにロッドガイドに当接することにより、ピストンロッドの最伸長位置を規定するもである。
【0003】
この場合、ピストンロッドの外周面に全周溝を形成し、この全周溝にストッパの一部を塑性変形させて押入れる、所謂メタルフロー結合によりストッパをピストンロッドに固定している。
【0004】
ここで、ピストンロッドの外周面に全周溝を加工する溝加工装置は、外周側に全周突起を有する複数個の転造ローラからなり、該各転造ローラを平行に配置しつつ回転させ、該各転造ローラ間に配置したピストンロッドに外周側の全周突起を押付けることにより、ピストンロッドの外周面に全周溝を加工するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、溝加工装置は、ピストンロッドが軸方向に正しい位置に配置されたときに該ピストンロッドの端部に当接する位置決め部材と、ピストンロッドを位置決め部材に押付る押付け部材とを有している。これにより、位置決め部材と押付け部材によってピストンロッドを挟んだ状態では、ピストンロッドを正しい軸方向位置に配置でき、全周溝を正確な位置に加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−254436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溝加工時には、ピストンロッドが軸方向にずれないように、位置決め部材と押付け部材とによりピストンロッドを軸方向に挟んで固定している。溝加工では、転造ローラの全周突起を押込んだ分だけ、ピストンロッドの軸方向寸法が伸びることになる。
【0008】
この場合、ピストンロッドは、位置決め部材および押付け部材によって軸方向に固定されているから、ピストンロッドが伸びると、位置決め部材、押付け部材を押圧したときの反力が転造ローラの全周突起に負荷として作用する。この外部からの負荷によって全周突起の寿命が短くなるから、転造ローラの交換頻度が増大し、作業効率が悪くなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、外部からローラの全周突起に作用する負荷を軽減することにより、ローラの寿命を延ばすことができるようにした棒状部材の溝加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、外周側に全周突起を有し棒状部材を径方向から挟むように接近、離間する複数個のローラと、前記棒状部材の軸方向の一端部に当接することで前記棒状部材を軸方向に位置決めする位置決め部材と、前記棒状部材を挟んで前記位置決め部材と軸方向の反対側に配置され前記棒状部材を前記位置決め部材に押付ける押付け部材とを備え、前記位置決め部材と前記押付け部材とにより前記棒状部材を挟んで軸方向に位置決めする棒状部材位置決め工程と、前記各ローラを回転駆動しつつ前記全周突起を前記棒状部材の外周面に押付けて全周溝を加工する溝加工工程と、前記溝加工工程の途中で前記位置決め部材と前記押付け部材とを前記棒状部材から離間させ、前記棒状部材の両端側を自由状態とする位置決め解除工程とからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ローラの全周突起に作用する負荷を軽減することができ、ローラの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態による溝加工方法が施されるピストンロッドを備えた油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に用いる溝加工装置を示す平面図である。
【図3】図2に示す溝加工装置の外観斜視図である。
【図4】各ローラユニット間にピストンロッドを配置し位置決め部材を位置決め位置に移動させた状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図5】押付け部材によってピストンロッドを位置決め部材に押付けた状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図6】各ローラユニットを回転駆動し可動ローラユニットをピストンロッドに向けて移動する状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図7】図6中の各ローラユニットとピストンロッドを上側から見た要部拡大の平面図である。
【図8】各転造ローラの全周突起をピストンロッドに当接させてピストンロッドを回転させた状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図9】各転造ローラとピストンロッドを図8中の矢示IX−IX方向から見た拡大断面図である。
【図10】各転造ローラとピストンロッドを図9中の矢示X−X方向から見た要部拡大の断面図である。
【図11】各転造ローラの全周突起をピストンロッドの外周面に規定寸法の50%程度まで押込んだ状態を示す図10と同様位置から見た要部拡大の断面図である。
【図12】ピストンロッドから押付け部材を離間させた状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図13】ピストンロッドから位置決め部材を離間させた状態を図2と同様位置から見た溝加工装置の外観斜視図である。
【図14】各転造ローラの全周突起をピストンロッドの外周面に規定寸法まで押込んだ状態を示す図10と同様位置から見た要部拡大の断面図である。
【図15】可動ローラユニットをピストンロッドから離間させた状態を図7と同様位置から見た要部拡大の平面図である。
【図16】可動ローラユニットをピストンロッドから離間させた状態を図10と同様位置から見た要部拡大の平面図である。
【図17】溝加工装置による溝加工手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による棒状部材の溝加工方法、この溝加工方法に用いる溝加工装置および溝加工方法が適用されるピストンロッドを備えた油圧緩衝器について、図1ないし図17に従って詳細に説明する。
【0014】
本実施の形態による溝加工方法によって全周溝が形成される棒状部材としてのピストンロッド5を備えた油圧緩衝器1の構成について、図1等を参照しつつ述べる。
【0015】
油圧緩衝器1の外形を構成するシリンダ2は、内筒2Aと外筒2Bとからなる二重筒構造をなし、その下部はボトムキャップ2Cによって閉塞されている。一方、シリンダ2の上部はロッドガイド3によって閉塞されている。シリンダ2の内筒2A内には、ピストン4が軸方向に移動可能に挿嵌されている。ピストンロッド5は、軸方向の一端側がシリンダ2内でピストン4に取付けられ、他端側がロッドガイド3を介して伸長、縮小可能に突出している。
【0016】
ここで、ピストンロッド5は、棒状部材を構成するもので、細長い円柱体として形成されている。また、ピストンロッド5の外周面5Aには、伸縮動作によって表面が傷付かないように表面硬化層5B(図16参照)が形成されている。さらに、ピストンロッド5の外周面5Aには、軸方向の途中部位に位置して全周溝6が形成され、該全周溝6は、後述の溝加工装置11を用いた溝加工方法によって形成されるものである。この全周溝6には、ピストンロッド5が大きく伸長したときにロッドガイド3に当接し、それ以上の伸長を規制するストッパ部材7がメタルフロー結合等の結合手段によって取付けられている。
【0017】
次に、油圧緩衝器1のピストンロッド5に全周溝6を形成するための溝加工装置11について述べる。
【0018】
図2、図3はピストンロッド5に全周溝6を加工するための溝加工装置11を示している。この溝加工装置11は、ピストンロッド5の外周面5Aに後述する転造ローラ14の全周突起14B、転造ローラ18の全周突起18Bを押付ける転造加工により、該ピストンロッド5に全周溝6を形成するものである。溝加工装置11は、後述の固定ローラユニット12、可動ローラユニット16、位置決め部材21、押付け部材22により大略構成されている。
【0019】
溝加工装置11の固定ローラユニット12は、後述するロッド支持台20の側方位置に固定して設けられている。固定ローラユニット12は、回転軸13に取付けられた転造ローラ14と、該転造ローラ14を挟んで前記回転軸13に取付けられた2個の矯正ローラ15A,15Bとにより構成されている。ここで、転造ローラ14は、短尺な円柱体として形成され、その外周側には軸方向の中間部に位置して1段拡径した拡径部14Aが形成されている。
【0020】
また、拡径部14Aの外周側には、全周突起14Bが径方向外向きに突出して設けられている。この全周突起14Bは、図11に示すように、突出寸法H1をもって突出し、その断面形状は全周溝6に対応して形成されている。そして、全周突起14Bは、例えば突出寸法H1のほぼ全部をピストンロッド5の外周面5Aに押込むことにより、規定の深さ寸法をもった全周溝6を形成することができる。即ち、全周溝6の規定の深さ寸法は、全周突起14Bの突出寸法H1と同じ深さ寸法H1となる。
【0021】
一方、図7に示すように、2個の矯正ローラ15A,15Bは、転造ローラ14の拡径部14Aと同等または僅かに大きな径方向寸法をもった短尺な円柱体として形成されている。各矯正ローラ15A,15Bは、転造加工時のピストンロッド5の撓み変形等を矯正し、該ピストンロッド5を真直ぐに仕上げるものである。
【0022】
ロッド支持台20を挟んで固定ローラユニット12の反対側には、固定ローラユニット12と平行に並ぶように可動ローラユニット16が設けられている。この可動ローラユニット16は、ピストンロッド5に近付く矢示A方向と、ピストンロッド5から離れる矢示A′方向とに水平方向に平行移動可能となっている点で、固定ローラユニット12と相違し、それ以外の部分で同様に構成されている。即ち、可動ローラユニット16は、回転軸17、転造ローラ18、2個の矯正ローラ19A,19Bにより構成され、転造ローラ18には、前述した転造ローラ14と同様に、拡径部18Aと全周突起18Bとが設けられている。
【0023】
ここで、固定ローラユニット12と可動ローラユニット16とは、それぞれの間に挟んだピストンロッド5を回転させながら溝加工を施すものであるから、図3に示すように、いずれも矢示B方向に回転駆動することができる。これら固定ローラユニット12と可動ローラユニット16とに挟まれたピストンロッド5は、逆回転となる矢示C方向に回転駆動される。
【0024】
固定ローラユニット12と可動ローラユニット16との間にはロッド支持台20が設けられている。このロッド支持台20は、ピストンロッド5を所定の高さ位置、例えば、図9に示すように、各ローラユニット12,16の中心軸の高さ位置とほぼ同じ位置に配置するものである。
【0025】
図2、図3に示すように、ロッド支持台20の長さ方向の一方側には位置決め部材21が設けられている。この位置決め部材21は、ロッド支持台20の長さ方向でピストンロッド5に近付く矢示D方向と、ピストンロッド5から離れる矢示D′方向とに移動可能となっている。位置決め部材21は、当接ロッド21Aの先端をピストンロッド5の一端面に当接させることにより、ピストンロッド5を軸方向に位置決めすることができ、ピストンロッド5の外周面5Aに対し軸方向の正確な位置に全周溝6を形成することができる。
【0026】
ここで、位置決め部材21は、ロッド支持台20の長さ方向の延長線上に配置され、前述したように矢示D方向または矢示D′方向に移動することができる。しかし、位置決め部材21は、位置決めした状態では移動不能に固定することができる。
【0027】
ロッド支持台20を挟んで位置決め部材21と軸方向の反対側には押付け部材22が設けられている。この押付け部材22は、ピストンロッド5を位置決め部材21に向けて押圧することにより、該ピストンロッド5の一端面を位置決め部材21の当接ロッド21A先端に押付けるものである。このように、ピストンロッド5を当接ロッド21Aに押付けた状態では、位置決め部材21による軸方向の位置決め位置にピストンロッド5を正確に配置することができる。
【0028】
押付け部材22は、伸縮ロッド22Aを有し、該伸縮ロッド22Aは、ピストンロッド5に向けて矢示E方向に伸長したり、ピストンロッド5から離れる矢示E′方向に縮小したりすることができる。
【0029】
次に、溝加工装置11を用いて油圧緩衝器1のピストンロッド5に全周溝6を形成するための溝加工方法について、図17のフローチャートに基づき、図4ないし図16を参照して説明する。
【0030】
最初に、ロッド支持台20上に表面硬化層5Bが施されたピストンロッド5を載置したら、ピストンロッド5の位置決め工程を開始する。このピストンロッド5の位置決め工程では、位置決め部材21と押付け部材22とによりピストンロッド5を挟んで軸方向に位置決めする。図17のフローチャートに従って具体的に述べると、ステップ1では、図4に示す如く、位置決め部材21を矢示D方向に移動し、当接ロッド21Aをピストンロッド5を位置決めする位置に配置し、この位置で位置決め部材21を固定する。
【0031】
次に、位置決め部材21を位置決め位置に固定したら、ステップ2に移って、図5に示す如く、押付け部材22の伸縮ロッド22Aを矢示E方向に伸ばしてピストンロッド5を押圧し、該ピストンロッド5を位置決め部材21の当接ロッド21Aに押付ける。これにより、位置決め部材21と押付け部材22は、ピストンロッド5を軸方向で挟むことにより、これを軸方向に位置決めすることができ、後述の溝加工工程では、ピストンロッド5に対し正確な位置に全周溝6を加工することができる。
【0032】
ピストンロッド5を軸方向に位置決めしたら、ピストンロッド5に全周溝6を加工する溝加工工程に移る。この溝加工工程では、ステップ3として、図6、図7に示すように、転造ローラ14を有する固定ローラユニット12と転造ローラ18を有する可動ローラユニット16を矢示B方向に回転駆動し、この状態で可動ローラユニット16をピストンロッド5に向けて矢示A方向に移動させる。続けて、ステップ4では、図8ないし図10に示すように、転造ローラ14の全周突起14Bと転造ローラ18の全周突起18Bとをピストンロッド5の外周面5Aに接触させることにより、該ピストンロッド5を矢示C方向に回転しつつ、全周突起14B,18Bをピストンロッド5の外周面5Aに押付けて全周溝6を形成する。
【0033】
次に、ピストンロッド5の外周面5Aに全周溝6を形成する溝加工工程の進行中に併行し、ピストンロッド5の両端側を自由状態とする位置決め解除工程を行う。この位置決め解除工程では、ピストンロッド5を軸方向に自由状態とするために、加工途中の全周溝6と各全周突起14B,18Bとの係合によってピストンロッド5が軸方向にずれない状態となっている必要がある。
【0034】
従って、ステップ5では、図11に示すように、各転造ローラ14,18の全周突起14B,18Bの突出寸法H1、即ち、全周溝6の規定の深さ寸法を寸法H1とし、加工途中の全周溝6の深さ寸法を寸法H2とする。これに基づき、本実施の形態では、全周溝6の加工途中の溝深さ寸法H2が全周突起14B,18Bの突出寸法H1の50%程度に達すると、両者間の凹凸係合によってピストンロッド5が軸方向に位置ずれしなくなる。
【0035】
なお、溝深さ寸法H2と突出寸法H1との関係で、ピストンロッド5が位置ずれしなくなる割合は、各転造ローラ14,18およびピストンロッド5の材質、全周突起14B,18Bの形状、全周溝6の規定の深さ寸法H1、溝加工装置11の仕様等の条件によって異なるものであり、上述した50%程度という割合に限定されるものではない。
【0036】
転造ローラ14の全周突起14Bと転造ローラ18の全周突起18Bに対しピストンロッド5が軸方向に位置ずれしなくなる溝深さまで加工が進行したら、図12に示すように、押付け部材22の伸縮ロッド22Aを矢示E′方向に後退させ、ピストンロッド5から離間させる。
【0037】
押付け部材22の伸縮ロッド22Aをピストンロッド5から離間させたら、ステップ6に移って、図13に示す如く、位置決め部材21を矢示D′方向に後退させ、当接ロッド21Aをピストンロッド5から離間させる。
【0038】
これにより、ピストンロッド5は、その両端側が自由状態(自由端)となるから、ピストンロッド5の外周面5Aに全周突起14B,18Bを押込んで該ピストンロッド5が軸方向に伸長するときには、該ピストンロッド5を自由に伸長させることができる。
【0039】
溝加工工程では、ステップ7に移って、図14に示す如く、ピストンロッド5の外周面に転造ローラ14の全周突起14Bと転造ローラ18の全周突起18Bを規定の深さ寸法H1まで押込むことにより、規定の深さ寸法H1の全周溝6を形成することができる。さらに、ステップ8では、図15、図16に示す如く、各ローラユニット12,16の回転を停止し、可動ローラユニット16をピストンロッド5から後退させるように矢示A′方向に移動させることにより、ピストンロッド5に全周溝6を形成する溝加工を終了する。
【0040】
かくして、本実施の形態によれば、ピストンロッド5の外周面5Aに全周溝6を加工する溝加工方法では、位置決め部材21と押付け部材22とによりピストンロッド5を挟んで軸方向に位置決めするピストンロッド5の位置決め工程を行い、各転造ローラ14,18を回転駆動しつつ全周突起14B,18Bをピストンロッド5の外周面5Aに押付けて全周溝6を加工する溝加工工程を行う。
【0041】
そして、溝加工工程の途中では、この溝加工工程と併行して、位置決め部材21と押付け部材22とをピストンロッド5から離間させ、該ピストンロッド5の両端側を自由状態とする位置決め解除工程を行う。
【0042】
従って、ピストンロッド5の外周面5Aに転造ローラ14の全周突起14Bと転造ローラ18の全周突起18Bを押込んで該ピストンロッド5が軸方向に伸長するときには、位置決め部材21や押付け部材22に突き当たることなく、該ピストンロッド5を自由に伸長させることができる。
【0043】
この結果、伸びたピストンロッド5が位置決め部材21、押付け部材22を押圧することによる反力が転造ローラ14の全周突起14Bと転造ローラ18の全周突起18Bに負荷として作用しなくなるから、全周突起14B,18Bの寿命を延ばすことができる。これにより、各転造ローラ14,18の交換頻度を削減することができ、作業効率の向上、製造コストの低減等を図ることができる。
【0044】
なお、実施の形態では、棒状部材として油圧緩衝器1のピストンロッド5を適用し、溝加工装置11を用いてピストンロッド5に全周溝6を形成する溝加工方法を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、本発明の溝加工方法は、ピストンロッド5以外の棒状部材に対して全周溝6を形成する場合に適用してもよい。また、棒状部材として、中空なパイプ状の棒状部材に適用することもできる。
【0045】
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について述べる。棒状部材は、振動を緩和する緩衝器に用いるピストンロッドである。これにより、緩衝器のピストンロッドに対し全周溝を加工することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 油圧緩衝器
5 ピストンロッド(棒状部材)
5A 外周面
6 全周溝
11 溝加工装置
14,18 転造ローラ
14B,18B 全周突起
21 位置決め部材
22 押付け部材
H1 全周突起の突出寸法(全周溝の溝深さ寸法)
H2 全周溝の加工途中の溝深さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側に全周突起を有し棒状部材を径方向から挟むように接近、離間する複数個のローラと、前記棒状部材の軸方向の一端部に当接することで前記棒状部材を軸方向に位置決めする位置決め部材と、前記棒状部材を挟んで前記位置決め部材と軸方向の反対側に配置され前記棒状部材を前記位置決め部材に押付ける押付け部材とを備え、
前記位置決め部材と前記押付け部材とにより前記棒状部材を挟んで軸方向に位置決めする棒状部材位置決め工程と、
前記各ローラを回転駆動しつつ前記全周突起を前記棒状部材の外周面に押付けて全周溝を加工する溝加工工程と、
前記溝加工工程の途中で前記位置決め部材と前記押付け部材とを前記棒状部材から離間させ、前記棒状部材の両端側を自由状態とする位置決め解除工程とからなる棒状部材の溝加工方法。
【請求項2】
前記棒状部材は、振動を緩和する緩衝器に用いるピストンロッドである請求項1に記載の棒状部材の溝加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−27901(P2013−27901A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165426(P2011−165426)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】