棚昇降装置
【課題】棚板の下方が自由空間になり、昇降の際にも停止状態でも棚板が揺動したりせず、安定性を有し、少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離を確保でき、家庭内使用の場合には、視覚的印象もそれに相応しいものとなるような棚昇降装置を提供する。
【解決手段】下端に棚板9を固着し、枢軸によって連接された複数枚の吊設板Pからなる吊設手段12が、多面体ドラム11に巻き取られあるいは繰り出されることにより垂直方向への延長を伸縮でき、既に巻き取られた吊設板Pの上に次の吊設板Pが隙間なく当接され、ボールノッチ機構により吊設板Pが垂直状態にて固定される棚昇降装置とする。
【解決手段】下端に棚板9を固着し、枢軸によって連接された複数枚の吊設板Pからなる吊設手段12が、多面体ドラム11に巻き取られあるいは繰り出されることにより垂直方向への延長を伸縮でき、既に巻き取られた吊設板Pの上に次の吊設板Pが隙間なく当接され、ボールノッチ機構により吊設板Pが垂直状態にて固定される棚昇降装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板を昇降させる棚昇降装置に関するものであり、さらに詳しくは、次の構成の棚昇降装置に関するものである。
<構成1>
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
<構成2>
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする構成1に記載の棚昇降装置。
<構成3>
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする構成1あるいは構成2に記載の棚昇降装置。
<構成4>
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする構成1あるいは構成2あるいは構成3に記載の棚昇降装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、棚板を昇降させるメカニズムは様々な種類のものが開発されており、それぞれに特徴を有している。今、主なメカニズムをまとめてみると、
・リンク機構を用いるもの
・ワイヤー、ベルト、チェーン等を巻き上げ、巻き下げするもの
・ピニオンラック機構を用いるもの
・パンタグラフ機構を用いるもの
・スクリュー軸を用いるもの
が挙げられる。
【0003】
リンク機構を用いる装置の特徴としては、枠体やガイドレール等の支持機構を必要としない点が挙げられる。従って、棚板の下部に支持機構が存在しない分、棚板下部がすっきりして、下部空間を有効に利用可能である。しかしながら、欠点としては、昇降距離が限定されることと、上下動だけではなく水平方向の動きも必然的に発生する点である。例として、下記特許文献5、6参照。
【0004】
なお、下記特許文献6はリンク機構を神棚の供物台に用いたものであるが、昇降距離が短すぎて、実際には役に立ちにくいものと考えられる。すなわち、神棚は通常の家庭にては鴨居に取り付けられるものであるが、鴨居の高さは凡そ180センチメートルなので、日本人の主婦の身長から考えると、供物の交換を楽に行うためには、昇降距離は少なくとも50〜60センチメートルは欲しいところである。下記特許文献6における昇降距離は、図面から考えると20〜30センチメートルであり、大幅に不足する。
【0005】
次に、ワイヤー、ベルト、チェーン等を巻き上げ、巻き下げする装置の特徴としては、昇降距離を任意に設定できる点が挙げられる。すなわち、ワイヤー、ベルト、チェーン等を長くすればそれだけ昇降距離を長くすることができる。一方欠点としては、ワイヤー、ベルト、チェーン等で吊設された棚板は、それだけでは不安的なので必然的に枠体やガイドを必要とする点である。すなわち、延長方向への枠体やガイドが不可欠であり、棚板の下方にこれらが存在するため、棚板の下部空間は、リンク機構のもののように自由空間(自由に使える空間)にはならない。例として、下記特許文献1、3参照。
【0006】
次に、ピニオンラック機構を用いる装置の特徴としては、ピニオンラック機構だけで棚板は安定するので、枠体やガイドが不要であり、かつリンク機構のように昇降距離が限定されない点が挙げられる。しかしながら欠点としてはラックが直線状の剛体であるので、やはり棚板下は自由空間にはならない。例として、下記特許文献4参照。
【0007】
次に、パンタグラフ機構を用いるものについては、枠体やガイドが不要であり、かつ上部から吊り下げる形式のパンタグラフ機構を用いれば、棚板下が自由空間になるという特徴が挙げられる。しかし欠点としては、パンタグラフ機構の支持だけでは棚板が不安定になる点、パンタグラフ機構の外観からして例えば室内などには用いにくいという点、及び、昇降距離が長くなるとパンタグラフの段数が増えて棚板が完全に上がりきらない印象になる点が挙げられる。例として、下記特許文献7参照。
【0008】
下記特許文献7は、神棚の供物台にパンタグラフ機構を用いた例であるが、パンタグラフ機構が背面の1辺にしか装着されていないので、どうしても供物の交換の際などに不安定になり、棚が揺れることが予想される。また、昇降の際にも不安定さは免れず、水が載る供物台の昇降メカニズムとしてはふさわしくないように考えられる。また、パンタグラフ機構の外観も、神棚にはどう見てもふさわしいものとは考えられない。
【0009】
次に、スクリュー軸を用いる装置については、棚板の安定性は群を抜いており、枠体やガイドも必要としないが、欠点としては、スクリュー軸が昇降距離の全体に亘って存在するので棚板の下部が自由空間にならない点と、昇降速度を速くできない点が挙げられる。例として、下記特許文献2参照。
【0010】
棚板の中には、棚板下の下部空間が自由空間である方が望ましいものも多数存在する。例えば、下記特許文献の6,7に挙げられている神棚はその例である。神棚は、家庭にては鴨居に取り付けられることが多いが、通常神棚の下方は自由空間になっている。また、下方に流し台があるキッチン棚もその例であり、狭い子供部屋などで、ベッドの上に棚板を造りたい場合などもその例に当てはまる。
【0011】
このような場合には、下方に枠体やガイド、スクリュー軸やラックが突出するタイプのものは用いることができない。また、パンタグタフ機構については、上記の神棚に用いた場合の不自然さはもとより、通常の家庭における各種の棚に用いるには、やはり視覚的不自然さがひとつのネックになるように思われる。
【0012】
さらに、棚板に求められるもう一つの大きな要素は、「安定性」である。ワイヤー、ベルト、チェーン等を用いる機構においては、それだけでは安定性を欠くものであることは上に述べた。また、パンタグラフ機構の場合も、下記特許文献7のように1辺に用いるだけでは安定性を欠く。しかし、パンタグラフ機構を2辺以上に用いるとなると、ますます視覚的に違和感を生じるのも事実である。
【0013】
棚板に求められる最後の要素は、「昇降距離」の問題である。すなわち、リンク機構やパンタグラフ機構のように、昇降距離が限定されてしまうものは、その実用性も限定されたものとならざるをえない。ある程度長い昇降距離、例えば家庭内使用を考えれば、少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離は確保したい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−178414号公報
【特許文献2】特開平8−38267号公報
【特許文献3】特開平10−95596号公報
【特許文献4】特開2009−219592号公報
【特許文献5】特開2009−261838号公報
【特許文献6】登録実用新案第3113096号公報
【特許文献7】登録実用新案第3139879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記より、本発明における課題として、以下の4点を挙げておきたい。
<課題1>棚板の下方が自由空間、すなわち何もない空間になること。
<課題2>昇降の際にも停止状態でも棚板が揺動したりせず、安定性を有すること。
<課題3>少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離は確保したい。
<課題4>家庭内使用の場合には、視覚的印象も大事にしたい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記に示す解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
<解決手段2>
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする解決手段1に記載の棚昇降装置。
<解決手段3>
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2に記載の棚昇降装置。
<解決手段4>
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3に記載の棚昇降装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の解決手段1の発明によれば、吊設部と棚部から構成され、吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、吊設手段の下端部に棚部が装着されているので、ガイドや枠体など、下方に延伸される部材を一切必要とすることなく、棚板の下の空間は、棚板の昇降状態に関係なく常にフリーの自由空間となっている。
【0018】
同じく本発明の解決手段1の発明によれば、吊設手段の長さは、吊設板の数を増やせば基本的に無制限に長くできるので、課題に挙げた「少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離の確保」は楽に実現でき、さらにそれ以上の昇降距離の確保についても容易に可能である。
【0019】
同じく本発明の解決手段1の発明によれば、棚板の下方は常になにもない状態であり、また、棚板の任意の辺に外見がベルト状あるいは棒状のシンプルな吊設手段が現われるだけであるので、視覚的印象においても、家庭でごく通常に使用して全く違和感を生じることがない。
【0020】
次に、本発明の解決手段2の発明によれば、吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されているので、吊設手段が垂直方向に整序された状態にては吊設手段は1本の剛体として機能するので、棚板の揺動等不安定な状態を招くことがなく、棚板は常に安定した状態で吊設される。したがって、棚上の物品を取ったり、あるいは棚上に物品を載置したりといった行為によっても棚板が揺動することがなく、通常の棚と同様の使い勝手で使用することが可能である。また、巻き上げ時には、吊設板が多面体ドラムに巻き取られる力によってボールノッチ機構が解除され、円滑な巻上げが可能となる。しかも、昇降の際においても、ボールノッチ機構の働きにより、吊設手段の垂直部分は一切の揺動を生じず、常に安定した状態にての昇降が可能である。
【0021】
次に、本発明の解決手段3の発明によれば、多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有しているので、連接された吊設板がガイド機構によって順番に垂直位置に置かれ、これによりボールノッチ機構が働いて隣接する吊設板どうしが固定され、全体が円滑に剛体化されていく。すなわち、ガイド機構によりそれより下方の吊設板は極めて円滑にすべての吊設板が一体化された剛体とされることができる。
【0022】
次に、本発明の解決手段4の発明によれば、多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有しているので、すべての吊設板が隙間なく多面体ドラムに巻き取られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態を示している。
【図2】(a)図1の吊設部の要部の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の多面体ドラムの外観斜視図である。
【図3】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の正面図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の平面図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の左側面図である。 (d)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の右側面図である。
【図4】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の連接部分の構成を説明する説明図である。
【図5】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。
【図6】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムから解放された状態を示している。
【図8】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した平面図である。
【図9】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した正面図で、吊設板が多面体ドラムから解放された状態を示している。
【図10】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態、即ち棚板が完全に昇りきった状態を示している。
【図11】本発明の実施例1の棚昇降装置の上方から見た外観斜視図である。
【図12】本発明の実施例1の棚昇降装置の下方から見た外観斜視図である。
【図13】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置を神棚の供物台に応用した例で、供物台が昇りきった状態を示している。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置を神棚の供物台に応用した例で、供物台を供物の交換作業が行いやすい高さまで下げた状態を示している。
【図14】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの一例の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの一例の作用を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの他の一例の作用を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの他の一例の作用を説明するための説明図である。
【図15】本発明の実施例1の棚昇降装置の図1とは異なる構成の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
<実施例1の構成>
本発明の実施例1の棚昇降装置A1は、図11、図12に見るように吊設部Bと棚部C1から構成されている。吊設部Bは、図8〜図9に見るように、筐体8の内部に4組の吊設機構1、2、3、4、駆動源5A、伝達機構5Bが組みこまれて構成されている。なお、6は駆動源5Aを制御する制御部、7は電源部である。
【0026】
実施例1の棚昇降装置A1は、図11、図12に見るように、直方体状の筐体8の下方から、昇降可能な4本の吊設手段12、22、32、42を繰出し、4本の吊設手段12、22、32、42の下端に棚部C1の棚板9を固着し、4本の吊設手段12、22、32、42を昇降(矢印方向)させることによって棚板9を昇降させる構成である。
【0027】
図12に見るように、筐体8の底板81に穿設されている繰出口13cから吊設手段12が繰出され、底板81に穿設されている繰出口23cから吊設手段22が繰出され、底板81に穿設されている繰出口33cから吊設手段32が繰出され、底板81に穿設されている繰出口43cから吊設手段42が繰出される。
【0028】
棚部C1は棚板9から構成されている。図11に見るように、棚板9の四隅には半球状のストッパst、st、st、stが固着されているが、これは、棚板9が上昇しきったときに、棚板9と筐体8の底板81の間にある程度の空間を生じるための構成である。ストッパst、st、st、stがない場合、棚板9が上昇しきると棚板9と筐体8の底板81が密接してしまい、棚板9を下降させようとする場合に空気圧が働いて抵抗が大きくなる可能性もあるので、その障害を避けるための構成である。
【0029】
あるいはまた、ストッパst、st、st、stをゴム製または軟質合成樹脂製とすれば、棚板9が上昇しきったときに棚板9と筐体8の底板81が衝突するショックをやわらげるという作用も果たすことができる。
【0030】
図8〜図12に見るように、筐体8は、底板81、上板82、左側板83、右側板84、前板85、後板86が一体として固着されて形成されているが、メンテナンスのために、任意に分解できるように構成されている。筐体8内部には、中央部分に受板87が水平に渡設されており受板87には吊設機構1、2、3、4、駆動源5A、伝達機構5B、制御部6、電源部7が載置固定されているなお、受板87は図8に見るように平面視が「エ」字形で、左右は大きく切欠された形状である。
【0031】
以下に、駆動源5Aと伝達機構5Bを詳細に説明する。駆動源5Aは実施例1の棚昇降装置A1にてはモータMであるが、駆動力を有し、駆動力の制御が可能なものであればモータには限定されず、例えばぜんまいバネや油圧装置等も考えられる。伝達機構5Bは駆動源5Aの駆動力を回動軸X1、X2に伝達する機構をいう。
【0032】
図8に見るように、受板87の左前部87aには軸受X1aが固着され、受板87の左後部87bには軸受X1bが固着され、軸受X1aと軸受X1bに回動自在に支承されて回動軸X1が渡設されている。また、受板87の右前部87cには軸受X2aが固着され、受板87の右後部87dには軸受X2bが固着され、軸受X2aと軸受X2bに回動自在に支承されて回動軸X2が渡設されている。
【0033】
左方の回動軸X1の前端には吊設機構1の多面体ドラム11が固着され、後端には吊設機構2の多面体ドラム21が固着されている。また、回動軸X1の中央近傍には傘歯車であるギアG2が固着されている。右方の回動軸X2の前端には吊設機構3の多面体ドラム31が固着され、後端には吊設機構4の多面体ドラム41が固着されている。また、回動軸X2の中央近傍には傘歯車であるギアG4が固着されている。ギアG2とギアG4は同径で歯数も等しい。
【0034】
受板87の中央部87eの中央右方には駆動源5AであるモータMが固着されており、モータMから左方に延伸されるモータ軸XMには、モータM近傍に平歯車であるギアG5及び先端に傘歯車であるギアG1が固着されている。なお、中央部分87eの中央左端にはモータ軸XMを支承する軸受XMaが固着されている。また、ギアG1は回動軸X1のギアG2と噛合されている。ギアG1は回動軸X1のギアG2と同径で歯数も等しい。さらに、モータ軸XMの中央にはストッパSTが設けられている。
【0035】
受板87の中央部87eの中央やや後方の右端には軸受けXNbが、左方には軸受けXNaが夫々固着され、伝達軸XNを回動自在に支承している。伝達軸XNの左端近傍には平歯車であるギアG6が固着され、伝達軸XNの右端には傘歯車であるギアG3が固着されている。ギアG6はモータ軸XMのギアG5と同径で歯数が等しく、ギアG5と噛合されている。また、ギアG3は回動軸X2のギアG4と噛合されている。ギアG3は回動軸X2のギアG4と同径で歯数も等しい。
【0036】
図8、図9に見るように、筐体8の底板81には長方形状の繰出口13cが穿設されており、繰出口13cには底板81に連接されるメインガイド13a、サブガイド13bからなる繰出口ガイド13が設けられている。同じく、繰出口23cにはメインガイド23a、サブガイド23bからなる繰出口ガイド23が、繰出口33cにはメインガイド33a、サブガイド33bからなる繰出口ガイド33が、繰出口43cにはメインガイド43a、サブガイド43bからなる繰出口ガイド43が夫々設けられている。繰出口ガイド13、23、33、43の構成については、後に繰出口ガイド13を代表として詳述する。
【0037】
図9、図10に見るように、筐体8の左端上方には、上板82と左側板83の間に斜向して補助板88が固着され、筐体8の右端上方には、上板82と右側板84の間に斜向して補助板89が固着されている。図8〜図10に見るように、左側板83の前方には巻上ガイド141が、補助板88の前方には巻上ガイド142が固着され、両者で巻上ガイド14を構成している。左側板83後方には巻上ガイド241が、補助板88後方には巻上ガイド242が固着され、両者で巻上ガイド24を構成している。右側板84前方には巻上ガイド341が、補助板89前方には巻上ガイド342が固着され、両者で巻上ガイド34を構成している。右側板84後方には巻上ガイド441が、補助板89後方には巻上ガイド442が固着され、両者で巻上ガイド44を構成している。巻上ガイド14、24、34、44に関しては、後に巻上ガイド14を代表として詳述する。
【0038】
吊設機構1は、多面体ドラム11、多面体ドラム11の回動軸X1、多面体ドラム11に巻き取られる吊設手段12、繰出口ガイド13、巻上げガイド14から構成されている。吊設機構2は、多面体ドラム21、多面体ドラム21の回動軸X1、多面体ドラム21に巻き取られる吊設手段22、繰出口ガイド23、巻上げガイド24から構成されている。吊設機構3は、多面体ドラム31、多面体ドラム31の回動軸X2、多面体ドラム31に巻き取られる吊設手段32、繰出口ガイド33、巻上げガイド34から構成されている。吊設機構4は、多面体ドラム41、多面体ドラム41の回動軸X2、多面体ドラム41に巻き取られる吊設手段42、繰出口ガイド43、巻上げガイド44から構成されている。吊設機構1、2、3、4は略同一の構成なので、以下に代表として吊設機構1について詳細に説明する。図1、図2、図7に吊設機構1の要部を掲げる。
【0039】
多面体ドラム11は、正面視が略8角形状の多面体であるが、正面視にて、1辺の端点が他辺より突出されており、三角形状の突出部11aを構成している。突出距離は、図1に明らかなように、吊設手段12の厚さに等しい。また、多面体ドラム11の中心には回動軸X1が貫設されており、回動軸X1と多面体ドラム11は固着されている。
【0040】
吊設手段12は、複数枚の吊設板P、P、……を連接したもので、一端が多面体ドラム11に固着され、他端は棚部C1の棚板9の一隅に固着されている。吊設板Pは、図3に見るように、平面視が略長方形状の平板で、左右両端が丸められ、左端においては凸部P1、凹部P2、凸部P3が形成され、右端においては、凹部P4、凸部P5、凹部P6が形成されている。凸部P1、P3は正面視で左に凸の円弧状に形成され、枢軸PX(図4b参照)が挿通される軸孔PXhが穿設され、凹部P2は正面視で右に凹の円弧状に形成され、凸部P5は正面視で右に凸の円弧状に形成され、枢軸PXが挿通される軸孔PXhが穿設され、凹部P4、P6は正面視で左に凹の円弧状に形成されている。
【0041】
凸部P1、P3、P5にはボールノッチBNのボールBLが装着され、凹部P2、P4,P6にはボールノッチBNのノッチNが穿設されている。図5にボールノッチBNの構成を示す。図5aに見るように、凸部Sには円孔Shが穿設され、コイルスプリングCSによって突出方向(矢印方向)に付勢されたボールBLがコイルスプリングCSの先端に固着されている。なお、コイルスプリングCSの他端は円孔Shの底面に固着されている。ボールBLは、コイルスプリングCSの自由状態にて、半分程が円孔Shより突出する状態に構成される。
【0042】
凹部DにはボールBLの突出部分に相当する形状の半球状の凹部で、周囲に面取りNaが施されたノッチNが穿設されており、図5bのように凹部Dと凸部Sが当接されると、ボールBLの突出部分がノッチNに嵌合され、これにより凹部Dと凸部Sの相対位置が固定される。しかしながら、図5cのように凹部Dと凸部SがボールBLの突出部分がノッチNに嵌合されない状態で当接された場合には、コイルスプリングCSが圧縮され、ボールBLは円孔Sh内に収納される。この場合には凹部Dと凸部Sの固定状態が解除される。
【0043】
図6に見るように、凸部Sと凹部Dが枢軸PXにて回動自在に連結されている場合、凸部Sと凹部Dが相互に1直線状となる位置にてボールBLがノッチNに嵌合されるように構成されている。したがって、凹部Dが回動して(あるいは凸部Sが回動して)ボールBLがノッチNから外れた場合には固定状態は解除される。ノッチNの周囲には面取りNaが施されているので(図5参照)、凸部Sあるいは凹部Dを一定以上の力で回動させれば、ボールBLは面取りNa面を滑ってノッチNから脱出され、図6bに示した状態となる。
【0044】
ボールノッチBNはこのように構成されているので、図4bに示した状態で連接された吊設板PA(P)とPB(P)は、互いが1直線状になる位置にては相互に固定されているが、いずれかあるいは両者が回動軸PXのまわりに一定以上の力によって回動させられることによって固定状態を脱し、回動軸PXを枢軸として相互に回動自在となる。
【0045】
図1に、上記のような構成の吊設手段12が多面体ドラム11に略完全に巻き取られた(巻き上げられた)状態を示す。この状態にて、吊設手段12を構成する吊設板P、P、……は、多面体ドラム11に巻かれた状態で、多面体ドラム11の周から離れるほど、即ち、より外側に巻かれた吊設板P、P、……ほど吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが長くなるように構成されている。
【0046】
多面体ドラム11に巻き取られている最初の1巻き目は、延長PLは多面体ドラム11の各面の延長11Lに隙間なく当接される長さとなっている。但し、突出部11aのある面においては、延長11Lが若干長くなっており、延長PLもそれに合わせて長くされている。2巻目以降の吊設板Pは、n−1巻目(nは自然数)の吊設板Pの延長PLにぴったり当接させられる延長PLを有するように構成される。但し、棚板9に固着される吊設手段12の下端部にては、後述の繰出口ガイド13を円滑に通過できるように延長PLは短く設定されている。
【0047】
図15には、多面体ドラム11に巻かれる吊設板P、P、……が、3巻き目以降の吊設板P、P、……では、その吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが短くされている例を掲げる。すなわち、2巻目までは一枚の吊設板Pが直線部分を構成しているが、3巻目からは2枚の吊設板P、Pが直列されて直線部分を構成し、最外周においては、6箇所で3枚の吊設板P、P、Pが直列されて直線部分を構成している。
【0048】
即ち、多面体ドラム11の周の直線部分(平面部分)に隙間なく当接され、且つ既に巻かれた吊設板P、P、……の直線部分(平面部分)に隙間なく当接されるという条件は満たしつつ、直線部分(平面部分)を構成する吊設板Pを1枚ではなく複数枚に分割することも可能であるということであり、このようにした場合には、一枚の吊設板Pの吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが余り長くならないので、繰出ガイド13と繰出口13cの通過がより円滑に行われるという効果がある。
【0049】
但し、直線部分(平面部分)を余り多くの吊設板P、P、……にて分割構成すると、繰出ガイド13と繰出口13cの通過の際に曲折される部分が増加してかえって円滑な通過が損なわれるので、分割数の設計は多面体ドラム11のサイズによって決めなければならない。すなわち、多面体ドラム11のサイズが小さい場合には分割数を少なくし、多面体ドラム11のサイズが大きい場合には分割数を増やすということになる。いずれにしても、多面体ドラム11に巻き取られた吊設板P、P、……の曲折される枢軸(連接部分)と隣接する曲折される枢軸(連接部分)の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように構成されていることには変わりはない。
【0050】
次に、繰出口ガイド13の構成を述べる。図1、図7に見るように、筐体8の底板81には長方形状の繰出口13cが穿設されており、吊設手段12はこの繰出口13cより下方に繰り出される。繰出口13cの左方の底板81は上方に弧状に延伸されてメインガイド13aを形成し、右方の底板81は上方に弧状に延伸されてサブガイド13bを形成する。メインガイド13aとサブガイド13b、及びこれに繰出口13cが加わって繰出口ガイド13を構成している。
【0051】
次に、巻上げガイド14の構成を述べる。巻上げガイド14は、巻上げガイド141と巻上げガイド142からなる。筐体8の左側板83には巻上げガイド141が固着されている。巻上げガイド141は円錐状のコイルスプリング141aと先端に装着されたローラ141bから構成されており、コイルスプリング141aの大径端部が左側板83に固着され、ローラ141bは多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12に当接している。コイルスプリング141aは多面体ドラム11の回動軸X1方向に付勢されているので、巻上げガイド141はローラ141bにより多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12の吊設板Pを押圧している。
【0052】
筐体8の上板82と左側板83の間には補助板88が斜めに設けられ、補助板88には巻上げガイド142が固着されている。巻上げガイド142は円錐状のコイルスプリング142aと先端に装着されたローラ142bから構成されており、コイルスプリング142aの大径端部が補助板88に固着され、ローラ142bは多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12に当接している。コイルスプリング142aは多面体ドラム11の回動軸X1方向に付勢されているので、巻上げガイド142はローラ142bにより多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12の吊設板Pを押圧している。
【0053】
図7には、吊設手段12が巻き下げられた状態を示す。巻上げガイド141のコイルスプリング141a、巻上げガイド142のコイルスプリング142aは伸びた状態にあるが、なおローラ141b、142bは多面体ドラム11に残った吊設手段12を押圧している。また、この状態にて、繰出口13cを通過する吊設手段12は正面視で1直線状となっている。また、巻上げガイド141、142の先端にローラ141b、142bが装着されている理由は、この部分がローラ構造でないと吊設手段12との間に摩擦が生じて巻上げガイド141、142が多面体ドラム11の回動方向に引きずられ、押圧作用がうまく働かないからである。
【0054】
図8において、6は制御部、7は電源部である。駆動源5AであるモータMの回転方向及び回転速度は制御部6にて制御される。モータMの回転方向及び回転速度の制御方法はインバータを使用する等任意に選択可能である。また、制御部6の操作は、制御部6自体が高所に位置することが多いので、リモートコントローラ(図示せず)で遠隔操作できるようにするのが望ましい。なお、c1は電源部7からモータMに電力を送る電源ケーブル、c2は制御部6からモータMに制御情報を伝達する情報伝達ケーブル、c3は電源部7から制御部6に電力を送る電源ケーブルである。
【0055】
図8において、STはストッパであり、制御部6からの情報で適宜モータMのモータ軸XMの回転を停止状態に固定する働きをする。この際、モータ軸XMは回転を続けているがストッパSTにてこれを強制停止するように構成しても良いし、モータ軸XMの回転自体を制御部6によって停止させ、さらに停止状態を確実に固定するためにストッパSTを使うという構成にしても良い。
【0056】
図14に、ストッパSTの構成を2例示す。まず1例目は、図14a、図14bに示すように、ストッパST1は縦断面視にて先端部が円弧状に形成された棒状で、本体ST1aは金属製あるいは硬質の合成樹脂製であり、先端部にゴム製あるいは軟質合成樹脂製の摩擦材ST1bが固着されている。一方、モータ軸XMには、金属製の突片t1、t2、t3が周方向に等間隔に植設されている。
【0057】
今、モータ軸XMの回転方向が図14aのα方向の場合、ストッパST1がa方向に進出すると、突片t1、t2、t3のいずれかがストッパST1の摩擦材ST1bに係止されてモータ軸XMの回転はその位置で停止固定される。モータ軸XMの回転方向が図14bのβ方向の場合も同様である。ストッパST1がb方向に退出されると、突片t1、t2、t3のいずれかの係止状態が解除され、モータ軸XMはα方向あるいはβ方向に回転する。
【0058】
次にストッパSTの構成の2例目を示す。図14c、図14dに示すストッパST2は先端が嘴状に分かれて突出されており、空間SSTにモータ軸XMを銜えこんでモータ軸XMの回転を停止固定させる構成である。ST2aは金属製あるいは硬質の合成樹脂製の本体であり、ST2bは嘴状の先端の内側に固着されたゴム製あるいは軟質合成樹脂製の摩擦材である。
【0059】
図14cに見るように、モータ軸XMと摩擦材ST2aが接触していない状態にては、モータ軸XMは回転を続けている。この場合、回転方向は問わない。しかるに、ストッパST2が図14aのa方向に進出して、図14dに見るように摩擦材ST2aがモータ軸XMと接触しモータ軸XMを銜えこむ状態になると、モータ軸XMの回転は停止される。この状態にて、ストッパST2が図14dのb方向に退出すると、モータ軸XMとストッパST2の関係は図14cの状態に戻り、モータ軸XMは摩擦材ST2aから開放されて、再度回転を始めることができる。
【0060】
以上には、モータ軸XMにストッパST1を係止させ、あるいはモータ軸XMをストッパST2に銜えこませてモータ軸XMの回転を停止固定させる構成を記載したが、モータ軸XMの回転を停止固定させる方法は当然上記に限定されるものではない。また、最終的には吊設手段12、22、32、42の昇降運動が停止固定されればよいので、ストッパ機構はモータ軸XM以外の部分に組み込むことも当然可能である。なお、ストッパSTをモータ軸XMに組み込む利点は、モータ軸XMの回転を停止固定させれば回動軸X1、X2の回転は同時に停止固定されるので、結果として吊設手段12、22、32、42の運動もすべて同時に停止固定され、棚板9(C1)には傾斜が一切発生しないという点である。
【0061】
<実施例1の作用>
実施例1の棚昇降装置A1は、使用者が図示しないリモートコントローラを操作することによって駆動される。当初の状態が、図10に示されるように吊設手段12、22、32、42が巻上げられて、棚部C1の棚板9がストッパst、st、st、stを介して吊設部Bの筐体8の底板81に当接された状態であったとすると、使用者が図示しないリモートコントローラにより吊設手段12、22、32、42の繰出し操作(下降操作)を開始する情報を情報部6に伝達すると、情報部6はモータMに「繰出し情報」を送り、モータMはモータ軸XMをβ方向に回転させる(図8参照。なお図8は吊設手段12、22、32、42が繰出された状態である)。
【0062】
モータ軸XMがβ方向に回転されると、ギアG1、G2の作用により、回動軸X1はδ方向に回転される。これにより、多面体ドラム11、21もδ方向に回転され、多面体ドラム11に巻き取られていた吊設板P、P、……は多面体ドラム11より順次離脱して下方に繰出される。この際、吊設機構1においては、図1に見るように、吊設板P、P、……は巻上げガイド141、142に押圧された状態であるので、巻上げガイド141の下方に位置するまでは適切に巻上げられた状態を保持し、巻上げガイド141を外れた段階ではじめて巻上げ状態が解除され、順次繰出口ガイド13に送りこまれる。
【0063】
繰出口ガイド13に送りこまれた吊設板Pは、繰出口ガイド13において隣接する吊設板Pと直列させられる。この際、図6aに示すようにボールノッチBNの働きによって直列状態が固定され、吊設板P、P、……は一枚の板状の吊設手段12として繰出口13cから下方に繰出される。
【0064】
この状態は、吊設機構2にても同様である。すなわち、多面体ドラム21がδ方向に回転され、巻上げガイド24、繰出口ガイド23の働きにより、多面体ドラム21に巻き上げられていた吊設板P、P、……は直列状態に固定された吊設手段22として繰出口23cから下方に繰出される(図12参照)。
【0065】
さらに、吊設機構3、4においても、同様の手順で吊設機構1、2と同時に直列状態に固定された吊設手段32が繰出口33cから下方に繰出され、直列状態に固定された吊設手段42が繰出口43cから下方に繰出される。即ち、図8において、モータ軸XMがβ方向に回転されると、ギアG5、G6の作用により、伝達軸XNはζ方向に回転される。伝達軸XNがζ方向に回転されると、ギアG3、G4の作用により、回動軸X2はθ方向に回転される。
【0066】
回動軸X2がθ方向に回転されると、多面体ドラム31、41もθ方向に回転させられるので、その結果、直列状態に固定された吊設手段32が繰出口33cから下方に繰出され、直列状態に固定された吊設手段42が繰出口43cから下方に繰出される。したがって、吊設手段12、22、32、42は夫々が一枚の板状となり同時に等速度で下方に繰出されるので、吊設手段12、22、32、42の下端に装着された棚板9は、水平状態を保持したままで降下される。この際、吊設手段12、22、32、42にては、ボールノッチBN機構の作用によって板状状態が固定されているので揺動等が一切生じず、円滑に降下されることができる。
【0067】
使用者(図示せず)は、自分の好みの位置に棚板9が位置したときに、リモートコントローラ(図示せず)のスイッチを操作して、制御部6にモータ軸XMの回転を停止させる情報を送信する。これによりモータ軸XMの回転は停止されるが、この際、モータ軸XMの回転の停止は制御部6のインバータ(図示せず)等の制御装置を用いて行っても良いし、またストッパSTを操作することによって行っても良い。さらに、制御部6のインバータ(図示せず)等の制御装置を用いて行い、さらにその状態を固定するためにストッパSTを用いるということでも良い。
【0068】
使用者(図示せず)は、棚板9上に好みの物品(図示せず)を載置するなど必要な作業を行い、その作業が完了すれば、リモートコントローラ(図示せず)のスイッチを操作して制御部6にモータ軸XMをα方向に回転させる情報を送信する。同時にモータ軸XMはストッパSTから解除され、モータ軸XMはα方向に回転を開始する。すると、ギアG1、G2の作用により、回動軸X1はγ方向に回転され、ギアG5、G6、の作用により伝達軸XNはε方向に回動され、ギアG3、G4の作用により回動軸X2はη方向に回転される。
【0069】
これにより、吊設手段12、22、32、42は巻き上げられ棚板9は上昇する。この過程を一例として、吊設手段12の例を図1、図7で説明する。図7は吊設手段12が略完全に巻き下げられ、棚板9が略最下位に位置する状態であるが、この状態にて、回動軸X1が方向γに回動すると、吊設板12の吊設板P、P、……が多面体ドラム11に順次巻き取られて、最終的に図1に示す状態となる。この際、吊設板P、P、……は、1巻目には多面体ドラム11周の各面に吊設板Pが隙間なく当接され、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板Pの上に次の吊設板Pが隙間なく当接されるように構成されているので、最終的に図7に示すように巻き取られた吊設板P、P、……が順次隙間なく当接されるように巻き取られる。
【0070】
この際、巻上げガイド141、142が巻き取られる過程にある吊設板Pを順次押圧していくので、吊設板P、P、……は、既に巻き取られた吊設板Pの上に隙間なく重なって巻き取られていく。すなわち、構成の項にて記述のように、多面体ドラム11に巻き取られている最初の1巻き目は、吊設板Pの延長PLが多面体ドラム11の各面の延長11Lに隙間なく当接される長さとなっており、但し、突出部11aのある面においては、延長11Lが若干長くなっており、延長PLもそれに合わせて長くされており、2巻目以降の吊設板Pは、n−1巻目(nは自然数)の吊設板Pの延長PLにぴったり当接させられる延長PLを有するように構成されているので、上記のように新たな吊設板Pは既に巻き取られた吊設板Pの上に隙間なく巻き取られていく。なお、この際、図15に示すような構成もあり得ることは構成の項にて既述のとおりである。
【0071】
さらに、この過程にて、巻上ガイド141、142の作用により、新たに巻き取られる吊設板Pは既に巻き取られた吊設板Pの上にぴったりと押圧されながら巻き取られていくので、巻上げはさらに確実なものとなる。上記は吊設手段12の巻上げに関する説明であるが、吊設手段22、32、42も同様に巻き上げられる。したがって、棚板9は水平を保持しながら円滑に上昇していく。この際、吊設手段12、22、32、42は筐体から下方に露出された部分は夫々がボールノッチBN機構の作用によって一枚の板状になっているので、棚板9の揺動等が一切発生しない。
【0072】
使用者(図示せず)は、棚板9が自分の望みの位置まで上昇したら、そこでリモートコントローラ(図示せず)の停止ボタンを押す。すると、停止情報が情報部6に送られ、モータ軸XMの回転が停止される。あるいはストッパSTが作用してモータ軸XMが停止固定される。このようにして、使用者(図示せず)は、自在に棚板9の上昇、下降、停止を制御することが可能である。また、制御部6にインバータ(図示せず)を組みこんだ場合には、上昇速度、降下速度の制御も可能となる。
【0073】
<実施例2の構成と作用>
図13には、本発明の実施例2の棚昇降装置A2を示す。棚昇降装置A2は棚部C2を神棚の供物台90として設計したもので、供物台90はベース91、立設部92、台部93が一体として構成され、最上昇位置にて台部93の上面と吊設部Bの筐体8の上面が同一平面状に揃うように構成されている。それ以外の構成は、実施例1の棚昇降装置A1と同一である。
【0074】
ベース91には吊設手段12、22、32、42の下端が固着され、ベース91の正面に立設部92の下端が一体として固着され、立設部92の上端に台部93の後端が一体として固着され、供物台90は側面視が鉤状に曲折された板状体として構成されている。
【0075】
使用に際しては、吊設部Bの筐体8の上面に社殿Yを載置し、供物台90の台部93の上面に榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等を載置する。図13aは供物台90を最高位置、すなわち台部93の上面と吊設部Bの筐体8の上面が同一平面状に揃う位置にまで上昇させた状態で、この位置が通常の祭祀状態である。
【0076】
榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等の交換にあたっては、使用者(図示せず)は供物台90全体を降下させる。すると図13bに示すような状態となるので、身長の低い使用者においても、榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等の交換が容易に行える。交換が終了すれば供物台90全体を上昇させ、再び図13aの状態とすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、棚の昇降装置として理想的な特性を備えたものである。すなわち、リンク機構やパンタグラフ機構のように昇降距離が限定されることがなく、ワイヤーやベルトによる巻上げ機構のように棚板の下部が枠体やガイドによって占められることもない。即ち棚板の下部が自由空間になる。また、ワイヤーやベルトによる巻上げ機構の弱点であった不安定さもなく、揺動も起こらない。さらには、外見がすっきりしていて、リンクやパンタグラフ等のメカニズム的な部材の露出がないので、通常の過程の屋内にても十分に用いることができるし、店舗装飾の分野でも大いに活用が期待される。
【0078】
あるいは、本発明は、神棚の供物台として用いるにも最適の特性を備えている。神棚は通常の日本家屋にては鴨居に取り付けられることが多く、ふつうの日本人の、特に主婦においては、身長条件によって供物台の供物の交換作業は踏み台等を必要とすることが多く、これがために気にはなりながら、頻繁に神棚のお世話をできない人々も多かった。しかし、本発明によれば、通常は棚下になにも置かないという神棚の特性を活かしつつ、供物の交換時には自分の好みの位置まで供物台を降下させられるので、いかに身長の低い人でも踏み台等を使用することなく楽に供物の交換が行える。
【0079】
踏み台は、一々運んで据えるのも面倒であるし、高齢者にとっては持ち運ぶだけでも重労働である。また踏み台に昇っての高所作業も身体能力の低下している高齢者にとっては大変危険である。通常神棚は高齢者がお世話をするケースが多いので、本発明は、家庭内事故を減らす上においても非常に有効である。また外観的にも非常にすっきりとしているので、神棚に使用しても全く違和感を生じない。特に、棚板(供物台)の上昇状態においては、吊設手段等のメカニズムは全く見えなくなってしまうので、外観的にも通常の神棚と変わらない印象を与える。この点は、神棚としての使用においては極めて重要なポイントとなるものである。
【0080】
さらに、本発明は、台所の流し台の上の棚や、子供部屋で下部にベッドのある空間の棚等、室内空間においてあらゆる所に応用することができる。また、店舗装飾の分野においても、昇降が自在であり、下部が自由空間になり、しかも外観がすっきりとしているという点から、様々なディスプレイに応用が可能であり、応用範囲は発想次第で無限に広げることが可能である。また、鉄道車両においても、網棚に用いれば、これまで身長が低くて網棚に荷物を置くのに難渋していた人も楽に網棚を使用することが可能となる。
【0081】
またさらに、本発明は、天井裏収納の一手段としても応用可能である。すなわち、天井裏に本発明を収容し、天井板の一部を棚板として使用することにより、リモコン操作によって棚板として使用される部分の天井板を昇降させることができる。棚板として使用される部分の天井板を、物品の収納や取り出しが楽にできる高さにまで降ろし、物品の収納や取り出しを行い、しかる後に棚板として使用される部分の天井板を上昇させて天井板の他の部分と揃う高さで停止させれば、非常に使い勝手の良い天井裏収納が実現できる。このように、本発明は、ありとあらゆる空間において応用可能な棚昇降装置を提供するものであり、極めて重要にして有益な産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0082】
1 吊設機構
11 多面体ドラム
11a 突出部
12 吊設手段
13 繰出口ガイド
13a メインガイド
13b サブガイド
13c 繰出口
14 巻上ガイド
141 巻上ガイド
141a コイルスプリング
141b ローラ
142 巻上ガイド
142a コイルスプリング
142b ローラ
2 吊設機構
21 多面体ドラム
22 吊設手段
23 繰出口ガイド
23a メインガイド
23b サブガイド
23c 繰出口
24 巻上ガイド
241 巻上ガイド
242 巻上ガイド
3 吊設機構
31 多面体ドラム
32 吊設手段
33 繰出口ガイド
33a メインガイド
33b サブガイド
33c 繰出口
34 巻上ガイド
341 巻上ガイド
342 巻上ガイド
4 吊設機構
41 多面体ドラム
42 吊設手段
43 繰出口ガイド
43a メインガイド
43b サブガイド
43c 繰出口
44 巻上ガイド
441 巻上ガイド
442 巻上ガイド
5A 駆動源
5B 伝達機構
6 制御部
7 電源部
8 筐体
81 底板
82 上板
83 左側板
84 右側板
85 前板
86 後板
87 受板
87a 左前部
87b 左後部
87c 右前部
87d 右後部
87e 中央部
88 補助板
89 補助板
9 棚板
90 供物台
91 ベース
92 立設部
93 台部
A1 棚昇降装置
A2 棚昇降装置
B 吊設部
BL ボール
BN ボールノッチ
C1 棚部
C2 棚部
CS コイルスプリング
Ca 燭台
D 凹部
Da 器
G1 ギア
G2 ギア
G3 ギア
G4 ギア
G5 ギア
G6 ギア
M モータ
N ノッチ
Na 面取り
P 吊設板
P1 凸部
P2 凹部
P3 凸部
P4 凹部
P5 凸部
P6 凹部
PA 吊設板
PB 吊設板
PL 延長
PX 枢軸
PXh 軸孔
S 凸部
SST 空間
ST ストッパ
ST1 ストッパ
ST1a 本体
ST1b 摩擦材
ST2 ストッパ
ST2a 本体
ST2b 摩擦材
Sa 榊
Sh 円孔
X1 回動軸
XIa 軸受
X1b 軸受
X2 回動軸
X2a 軸受
X2b 軸受
XM モータ軸
XMa 軸受
XN 伝達軸
XNa 軸受
XNb 軸受
Y 社殿
a 方向
b 方向
c1 電源ケーブル
c2 情報伝達ケーブル
c3 電源ケーブル
st ストッパ
t1 突片
t2 突片
t3 突片
α 方向
β 方向
γ 方向
δ 方向
ε 方向
η 方向
ζ 方向
θ 方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板を昇降させる棚昇降装置に関するものであり、さらに詳しくは、次の構成の棚昇降装置に関するものである。
<構成1>
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
<構成2>
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする構成1に記載の棚昇降装置。
<構成3>
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする構成1あるいは構成2に記載の棚昇降装置。
<構成4>
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする構成1あるいは構成2あるいは構成3に記載の棚昇降装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、棚板を昇降させるメカニズムは様々な種類のものが開発されており、それぞれに特徴を有している。今、主なメカニズムをまとめてみると、
・リンク機構を用いるもの
・ワイヤー、ベルト、チェーン等を巻き上げ、巻き下げするもの
・ピニオンラック機構を用いるもの
・パンタグラフ機構を用いるもの
・スクリュー軸を用いるもの
が挙げられる。
【0003】
リンク機構を用いる装置の特徴としては、枠体やガイドレール等の支持機構を必要としない点が挙げられる。従って、棚板の下部に支持機構が存在しない分、棚板下部がすっきりして、下部空間を有効に利用可能である。しかしながら、欠点としては、昇降距離が限定されることと、上下動だけではなく水平方向の動きも必然的に発生する点である。例として、下記特許文献5、6参照。
【0004】
なお、下記特許文献6はリンク機構を神棚の供物台に用いたものであるが、昇降距離が短すぎて、実際には役に立ちにくいものと考えられる。すなわち、神棚は通常の家庭にては鴨居に取り付けられるものであるが、鴨居の高さは凡そ180センチメートルなので、日本人の主婦の身長から考えると、供物の交換を楽に行うためには、昇降距離は少なくとも50〜60センチメートルは欲しいところである。下記特許文献6における昇降距離は、図面から考えると20〜30センチメートルであり、大幅に不足する。
【0005】
次に、ワイヤー、ベルト、チェーン等を巻き上げ、巻き下げする装置の特徴としては、昇降距離を任意に設定できる点が挙げられる。すなわち、ワイヤー、ベルト、チェーン等を長くすればそれだけ昇降距離を長くすることができる。一方欠点としては、ワイヤー、ベルト、チェーン等で吊設された棚板は、それだけでは不安的なので必然的に枠体やガイドを必要とする点である。すなわち、延長方向への枠体やガイドが不可欠であり、棚板の下方にこれらが存在するため、棚板の下部空間は、リンク機構のもののように自由空間(自由に使える空間)にはならない。例として、下記特許文献1、3参照。
【0006】
次に、ピニオンラック機構を用いる装置の特徴としては、ピニオンラック機構だけで棚板は安定するので、枠体やガイドが不要であり、かつリンク機構のように昇降距離が限定されない点が挙げられる。しかしながら欠点としてはラックが直線状の剛体であるので、やはり棚板下は自由空間にはならない。例として、下記特許文献4参照。
【0007】
次に、パンタグラフ機構を用いるものについては、枠体やガイドが不要であり、かつ上部から吊り下げる形式のパンタグラフ機構を用いれば、棚板下が自由空間になるという特徴が挙げられる。しかし欠点としては、パンタグラフ機構の支持だけでは棚板が不安定になる点、パンタグラフ機構の外観からして例えば室内などには用いにくいという点、及び、昇降距離が長くなるとパンタグラフの段数が増えて棚板が完全に上がりきらない印象になる点が挙げられる。例として、下記特許文献7参照。
【0008】
下記特許文献7は、神棚の供物台にパンタグラフ機構を用いた例であるが、パンタグラフ機構が背面の1辺にしか装着されていないので、どうしても供物の交換の際などに不安定になり、棚が揺れることが予想される。また、昇降の際にも不安定さは免れず、水が載る供物台の昇降メカニズムとしてはふさわしくないように考えられる。また、パンタグラフ機構の外観も、神棚にはどう見てもふさわしいものとは考えられない。
【0009】
次に、スクリュー軸を用いる装置については、棚板の安定性は群を抜いており、枠体やガイドも必要としないが、欠点としては、スクリュー軸が昇降距離の全体に亘って存在するので棚板の下部が自由空間にならない点と、昇降速度を速くできない点が挙げられる。例として、下記特許文献2参照。
【0010】
棚板の中には、棚板下の下部空間が自由空間である方が望ましいものも多数存在する。例えば、下記特許文献の6,7に挙げられている神棚はその例である。神棚は、家庭にては鴨居に取り付けられることが多いが、通常神棚の下方は自由空間になっている。また、下方に流し台があるキッチン棚もその例であり、狭い子供部屋などで、ベッドの上に棚板を造りたい場合などもその例に当てはまる。
【0011】
このような場合には、下方に枠体やガイド、スクリュー軸やラックが突出するタイプのものは用いることができない。また、パンタグタフ機構については、上記の神棚に用いた場合の不自然さはもとより、通常の家庭における各種の棚に用いるには、やはり視覚的不自然さがひとつのネックになるように思われる。
【0012】
さらに、棚板に求められるもう一つの大きな要素は、「安定性」である。ワイヤー、ベルト、チェーン等を用いる機構においては、それだけでは安定性を欠くものであることは上に述べた。また、パンタグラフ機構の場合も、下記特許文献7のように1辺に用いるだけでは安定性を欠く。しかし、パンタグラフ機構を2辺以上に用いるとなると、ますます視覚的に違和感を生じるのも事実である。
【0013】
棚板に求められる最後の要素は、「昇降距離」の問題である。すなわち、リンク機構やパンタグラフ機構のように、昇降距離が限定されてしまうものは、その実用性も限定されたものとならざるをえない。ある程度長い昇降距離、例えば家庭内使用を考えれば、少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離は確保したい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−178414号公報
【特許文献2】特開平8−38267号公報
【特許文献3】特開平10−95596号公報
【特許文献4】特開2009−219592号公報
【特許文献5】特開2009−261838号公報
【特許文献6】登録実用新案第3113096号公報
【特許文献7】登録実用新案第3139879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記より、本発明における課題として、以下の4点を挙げておきたい。
<課題1>棚板の下方が自由空間、すなわち何もない空間になること。
<課題2>昇降の際にも停止状態でも棚板が揺動したりせず、安定性を有すること。
<課題3>少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離は確保したい。
<課題4>家庭内使用の場合には、視覚的印象も大事にしたい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記に示す解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
<解決手段2>
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする解決手段1に記載の棚昇降装置。
<解決手段3>
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2に記載の棚昇降装置。
<解決手段4>
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3に記載の棚昇降装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の解決手段1の発明によれば、吊設部と棚部から構成され、吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、吊設手段の下端部に棚部が装着されているので、ガイドや枠体など、下方に延伸される部材を一切必要とすることなく、棚板の下の空間は、棚板の昇降状態に関係なく常にフリーの自由空間となっている。
【0018】
同じく本発明の解決手段1の発明によれば、吊設手段の長さは、吊設板の数を増やせば基本的に無制限に長くできるので、課題に挙げた「少なくとも50〜60センチメートル程度の昇降距離の確保」は楽に実現でき、さらにそれ以上の昇降距離の確保についても容易に可能である。
【0019】
同じく本発明の解決手段1の発明によれば、棚板の下方は常になにもない状態であり、また、棚板の任意の辺に外見がベルト状あるいは棒状のシンプルな吊設手段が現われるだけであるので、視覚的印象においても、家庭でごく通常に使用して全く違和感を生じることがない。
【0020】
次に、本発明の解決手段2の発明によれば、吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されているので、吊設手段が垂直方向に整序された状態にては吊設手段は1本の剛体として機能するので、棚板の揺動等不安定な状態を招くことがなく、棚板は常に安定した状態で吊設される。したがって、棚上の物品を取ったり、あるいは棚上に物品を載置したりといった行為によっても棚板が揺動することがなく、通常の棚と同様の使い勝手で使用することが可能である。また、巻き上げ時には、吊設板が多面体ドラムに巻き取られる力によってボールノッチ機構が解除され、円滑な巻上げが可能となる。しかも、昇降の際においても、ボールノッチ機構の働きにより、吊設手段の垂直部分は一切の揺動を生じず、常に安定した状態にての昇降が可能である。
【0021】
次に、本発明の解決手段3の発明によれば、多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有しているので、連接された吊設板がガイド機構によって順番に垂直位置に置かれ、これによりボールノッチ機構が働いて隣接する吊設板どうしが固定され、全体が円滑に剛体化されていく。すなわち、ガイド機構によりそれより下方の吊設板は極めて円滑にすべての吊設板が一体化された剛体とされることができる。
【0022】
次に、本発明の解決手段4の発明によれば、多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有しているので、すべての吊設板が隙間なく多面体ドラムに巻き取られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態を示している。
【図2】(a)図1の吊設部の要部の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の多面体ドラムの外観斜視図である。
【図3】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の正面図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の平面図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の左側面図である。 (d)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の右側面図である。
【図4】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板の外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の連接部分の構成を説明する説明図である。
【図5】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。
【図6】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設板のボールノッチ機構の作用を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムから解放された状態を示している。
【図8】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した平面図である。
【図9】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した正面図で、吊設板が多面体ドラムから解放された状態を示している。
【図10】本発明の実施例1の棚昇降装置の吊設部の一部を切欠した正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態、即ち棚板が完全に昇りきった状態を示している。
【図11】本発明の実施例1の棚昇降装置の上方から見た外観斜視図である。
【図12】本発明の実施例1の棚昇降装置の下方から見た外観斜視図である。
【図13】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置を神棚の供物台に応用した例で、供物台が昇りきった状態を示している。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置を神棚の供物台に応用した例で、供物台を供物の交換作業が行いやすい高さまで下げた状態を示している。
【図14】(a)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの一例の作用を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの一例の作用を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの他の一例の作用を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の棚昇降装置のストッパの他の一例の作用を説明するための説明図である。
【図15】本発明の実施例1の棚昇降装置の図1とは異なる構成の吊設部の要部の正面図で、吊設板が多面体ドラムに巻き取られた状態を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
<実施例1の構成>
本発明の実施例1の棚昇降装置A1は、図11、図12に見るように吊設部Bと棚部C1から構成されている。吊設部Bは、図8〜図9に見るように、筐体8の内部に4組の吊設機構1、2、3、4、駆動源5A、伝達機構5Bが組みこまれて構成されている。なお、6は駆動源5Aを制御する制御部、7は電源部である。
【0026】
実施例1の棚昇降装置A1は、図11、図12に見るように、直方体状の筐体8の下方から、昇降可能な4本の吊設手段12、22、32、42を繰出し、4本の吊設手段12、22、32、42の下端に棚部C1の棚板9を固着し、4本の吊設手段12、22、32、42を昇降(矢印方向)させることによって棚板9を昇降させる構成である。
【0027】
図12に見るように、筐体8の底板81に穿設されている繰出口13cから吊設手段12が繰出され、底板81に穿設されている繰出口23cから吊設手段22が繰出され、底板81に穿設されている繰出口33cから吊設手段32が繰出され、底板81に穿設されている繰出口43cから吊設手段42が繰出される。
【0028】
棚部C1は棚板9から構成されている。図11に見るように、棚板9の四隅には半球状のストッパst、st、st、stが固着されているが、これは、棚板9が上昇しきったときに、棚板9と筐体8の底板81の間にある程度の空間を生じるための構成である。ストッパst、st、st、stがない場合、棚板9が上昇しきると棚板9と筐体8の底板81が密接してしまい、棚板9を下降させようとする場合に空気圧が働いて抵抗が大きくなる可能性もあるので、その障害を避けるための構成である。
【0029】
あるいはまた、ストッパst、st、st、stをゴム製または軟質合成樹脂製とすれば、棚板9が上昇しきったときに棚板9と筐体8の底板81が衝突するショックをやわらげるという作用も果たすことができる。
【0030】
図8〜図12に見るように、筐体8は、底板81、上板82、左側板83、右側板84、前板85、後板86が一体として固着されて形成されているが、メンテナンスのために、任意に分解できるように構成されている。筐体8内部には、中央部分に受板87が水平に渡設されており受板87には吊設機構1、2、3、4、駆動源5A、伝達機構5B、制御部6、電源部7が載置固定されているなお、受板87は図8に見るように平面視が「エ」字形で、左右は大きく切欠された形状である。
【0031】
以下に、駆動源5Aと伝達機構5Bを詳細に説明する。駆動源5Aは実施例1の棚昇降装置A1にてはモータMであるが、駆動力を有し、駆動力の制御が可能なものであればモータには限定されず、例えばぜんまいバネや油圧装置等も考えられる。伝達機構5Bは駆動源5Aの駆動力を回動軸X1、X2に伝達する機構をいう。
【0032】
図8に見るように、受板87の左前部87aには軸受X1aが固着され、受板87の左後部87bには軸受X1bが固着され、軸受X1aと軸受X1bに回動自在に支承されて回動軸X1が渡設されている。また、受板87の右前部87cには軸受X2aが固着され、受板87の右後部87dには軸受X2bが固着され、軸受X2aと軸受X2bに回動自在に支承されて回動軸X2が渡設されている。
【0033】
左方の回動軸X1の前端には吊設機構1の多面体ドラム11が固着され、後端には吊設機構2の多面体ドラム21が固着されている。また、回動軸X1の中央近傍には傘歯車であるギアG2が固着されている。右方の回動軸X2の前端には吊設機構3の多面体ドラム31が固着され、後端には吊設機構4の多面体ドラム41が固着されている。また、回動軸X2の中央近傍には傘歯車であるギアG4が固着されている。ギアG2とギアG4は同径で歯数も等しい。
【0034】
受板87の中央部87eの中央右方には駆動源5AであるモータMが固着されており、モータMから左方に延伸されるモータ軸XMには、モータM近傍に平歯車であるギアG5及び先端に傘歯車であるギアG1が固着されている。なお、中央部分87eの中央左端にはモータ軸XMを支承する軸受XMaが固着されている。また、ギアG1は回動軸X1のギアG2と噛合されている。ギアG1は回動軸X1のギアG2と同径で歯数も等しい。さらに、モータ軸XMの中央にはストッパSTが設けられている。
【0035】
受板87の中央部87eの中央やや後方の右端には軸受けXNbが、左方には軸受けXNaが夫々固着され、伝達軸XNを回動自在に支承している。伝達軸XNの左端近傍には平歯車であるギアG6が固着され、伝達軸XNの右端には傘歯車であるギアG3が固着されている。ギアG6はモータ軸XMのギアG5と同径で歯数が等しく、ギアG5と噛合されている。また、ギアG3は回動軸X2のギアG4と噛合されている。ギアG3は回動軸X2のギアG4と同径で歯数も等しい。
【0036】
図8、図9に見るように、筐体8の底板81には長方形状の繰出口13cが穿設されており、繰出口13cには底板81に連接されるメインガイド13a、サブガイド13bからなる繰出口ガイド13が設けられている。同じく、繰出口23cにはメインガイド23a、サブガイド23bからなる繰出口ガイド23が、繰出口33cにはメインガイド33a、サブガイド33bからなる繰出口ガイド33が、繰出口43cにはメインガイド43a、サブガイド43bからなる繰出口ガイド43が夫々設けられている。繰出口ガイド13、23、33、43の構成については、後に繰出口ガイド13を代表として詳述する。
【0037】
図9、図10に見るように、筐体8の左端上方には、上板82と左側板83の間に斜向して補助板88が固着され、筐体8の右端上方には、上板82と右側板84の間に斜向して補助板89が固着されている。図8〜図10に見るように、左側板83の前方には巻上ガイド141が、補助板88の前方には巻上ガイド142が固着され、両者で巻上ガイド14を構成している。左側板83後方には巻上ガイド241が、補助板88後方には巻上ガイド242が固着され、両者で巻上ガイド24を構成している。右側板84前方には巻上ガイド341が、補助板89前方には巻上ガイド342が固着され、両者で巻上ガイド34を構成している。右側板84後方には巻上ガイド441が、補助板89後方には巻上ガイド442が固着され、両者で巻上ガイド44を構成している。巻上ガイド14、24、34、44に関しては、後に巻上ガイド14を代表として詳述する。
【0038】
吊設機構1は、多面体ドラム11、多面体ドラム11の回動軸X1、多面体ドラム11に巻き取られる吊設手段12、繰出口ガイド13、巻上げガイド14から構成されている。吊設機構2は、多面体ドラム21、多面体ドラム21の回動軸X1、多面体ドラム21に巻き取られる吊設手段22、繰出口ガイド23、巻上げガイド24から構成されている。吊設機構3は、多面体ドラム31、多面体ドラム31の回動軸X2、多面体ドラム31に巻き取られる吊設手段32、繰出口ガイド33、巻上げガイド34から構成されている。吊設機構4は、多面体ドラム41、多面体ドラム41の回動軸X2、多面体ドラム41に巻き取られる吊設手段42、繰出口ガイド43、巻上げガイド44から構成されている。吊設機構1、2、3、4は略同一の構成なので、以下に代表として吊設機構1について詳細に説明する。図1、図2、図7に吊設機構1の要部を掲げる。
【0039】
多面体ドラム11は、正面視が略8角形状の多面体であるが、正面視にて、1辺の端点が他辺より突出されており、三角形状の突出部11aを構成している。突出距離は、図1に明らかなように、吊設手段12の厚さに等しい。また、多面体ドラム11の中心には回動軸X1が貫設されており、回動軸X1と多面体ドラム11は固着されている。
【0040】
吊設手段12は、複数枚の吊設板P、P、……を連接したもので、一端が多面体ドラム11に固着され、他端は棚部C1の棚板9の一隅に固着されている。吊設板Pは、図3に見るように、平面視が略長方形状の平板で、左右両端が丸められ、左端においては凸部P1、凹部P2、凸部P3が形成され、右端においては、凹部P4、凸部P5、凹部P6が形成されている。凸部P1、P3は正面視で左に凸の円弧状に形成され、枢軸PX(図4b参照)が挿通される軸孔PXhが穿設され、凹部P2は正面視で右に凹の円弧状に形成され、凸部P5は正面視で右に凸の円弧状に形成され、枢軸PXが挿通される軸孔PXhが穿設され、凹部P4、P6は正面視で左に凹の円弧状に形成されている。
【0041】
凸部P1、P3、P5にはボールノッチBNのボールBLが装着され、凹部P2、P4,P6にはボールノッチBNのノッチNが穿設されている。図5にボールノッチBNの構成を示す。図5aに見るように、凸部Sには円孔Shが穿設され、コイルスプリングCSによって突出方向(矢印方向)に付勢されたボールBLがコイルスプリングCSの先端に固着されている。なお、コイルスプリングCSの他端は円孔Shの底面に固着されている。ボールBLは、コイルスプリングCSの自由状態にて、半分程が円孔Shより突出する状態に構成される。
【0042】
凹部DにはボールBLの突出部分に相当する形状の半球状の凹部で、周囲に面取りNaが施されたノッチNが穿設されており、図5bのように凹部Dと凸部Sが当接されると、ボールBLの突出部分がノッチNに嵌合され、これにより凹部Dと凸部Sの相対位置が固定される。しかしながら、図5cのように凹部Dと凸部SがボールBLの突出部分がノッチNに嵌合されない状態で当接された場合には、コイルスプリングCSが圧縮され、ボールBLは円孔Sh内に収納される。この場合には凹部Dと凸部Sの固定状態が解除される。
【0043】
図6に見るように、凸部Sと凹部Dが枢軸PXにて回動自在に連結されている場合、凸部Sと凹部Dが相互に1直線状となる位置にてボールBLがノッチNに嵌合されるように構成されている。したがって、凹部Dが回動して(あるいは凸部Sが回動して)ボールBLがノッチNから外れた場合には固定状態は解除される。ノッチNの周囲には面取りNaが施されているので(図5参照)、凸部Sあるいは凹部Dを一定以上の力で回動させれば、ボールBLは面取りNa面を滑ってノッチNから脱出され、図6bに示した状態となる。
【0044】
ボールノッチBNはこのように構成されているので、図4bに示した状態で連接された吊設板PA(P)とPB(P)は、互いが1直線状になる位置にては相互に固定されているが、いずれかあるいは両者が回動軸PXのまわりに一定以上の力によって回動させられることによって固定状態を脱し、回動軸PXを枢軸として相互に回動自在となる。
【0045】
図1に、上記のような構成の吊設手段12が多面体ドラム11に略完全に巻き取られた(巻き上げられた)状態を示す。この状態にて、吊設手段12を構成する吊設板P、P、……は、多面体ドラム11に巻かれた状態で、多面体ドラム11の周から離れるほど、即ち、より外側に巻かれた吊設板P、P、……ほど吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが長くなるように構成されている。
【0046】
多面体ドラム11に巻き取られている最初の1巻き目は、延長PLは多面体ドラム11の各面の延長11Lに隙間なく当接される長さとなっている。但し、突出部11aのある面においては、延長11Lが若干長くなっており、延長PLもそれに合わせて長くされている。2巻目以降の吊設板Pは、n−1巻目(nは自然数)の吊設板Pの延長PLにぴったり当接させられる延長PLを有するように構成される。但し、棚板9に固着される吊設手段12の下端部にては、後述の繰出口ガイド13を円滑に通過できるように延長PLは短く設定されている。
【0047】
図15には、多面体ドラム11に巻かれる吊設板P、P、……が、3巻き目以降の吊設板P、P、……では、その吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが短くされている例を掲げる。すなわち、2巻目までは一枚の吊設板Pが直線部分を構成しているが、3巻目からは2枚の吊設板P、Pが直列されて直線部分を構成し、最外周においては、6箇所で3枚の吊設板P、P、Pが直列されて直線部分を構成している。
【0048】
即ち、多面体ドラム11の周の直線部分(平面部分)に隙間なく当接され、且つ既に巻かれた吊設板P、P、……の直線部分(平面部分)に隙間なく当接されるという条件は満たしつつ、直線部分(平面部分)を構成する吊設板Pを1枚ではなく複数枚に分割することも可能であるということであり、このようにした場合には、一枚の吊設板Pの吊設手段12の長手方向に沿った延長PLが余り長くならないので、繰出ガイド13と繰出口13cの通過がより円滑に行われるという効果がある。
【0049】
但し、直線部分(平面部分)を余り多くの吊設板P、P、……にて分割構成すると、繰出ガイド13と繰出口13cの通過の際に曲折される部分が増加してかえって円滑な通過が損なわれるので、分割数の設計は多面体ドラム11のサイズによって決めなければならない。すなわち、多面体ドラム11のサイズが小さい場合には分割数を少なくし、多面体ドラム11のサイズが大きい場合には分割数を増やすということになる。いずれにしても、多面体ドラム11に巻き取られた吊設板P、P、……の曲折される枢軸(連接部分)と隣接する曲折される枢軸(連接部分)の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように構成されていることには変わりはない。
【0050】
次に、繰出口ガイド13の構成を述べる。図1、図7に見るように、筐体8の底板81には長方形状の繰出口13cが穿設されており、吊設手段12はこの繰出口13cより下方に繰り出される。繰出口13cの左方の底板81は上方に弧状に延伸されてメインガイド13aを形成し、右方の底板81は上方に弧状に延伸されてサブガイド13bを形成する。メインガイド13aとサブガイド13b、及びこれに繰出口13cが加わって繰出口ガイド13を構成している。
【0051】
次に、巻上げガイド14の構成を述べる。巻上げガイド14は、巻上げガイド141と巻上げガイド142からなる。筐体8の左側板83には巻上げガイド141が固着されている。巻上げガイド141は円錐状のコイルスプリング141aと先端に装着されたローラ141bから構成されており、コイルスプリング141aの大径端部が左側板83に固着され、ローラ141bは多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12に当接している。コイルスプリング141aは多面体ドラム11の回動軸X1方向に付勢されているので、巻上げガイド141はローラ141bにより多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12の吊設板Pを押圧している。
【0052】
筐体8の上板82と左側板83の間には補助板88が斜めに設けられ、補助板88には巻上げガイド142が固着されている。巻上げガイド142は円錐状のコイルスプリング142aと先端に装着されたローラ142bから構成されており、コイルスプリング142aの大径端部が補助板88に固着され、ローラ142bは多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12に当接している。コイルスプリング142aは多面体ドラム11の回動軸X1方向に付勢されているので、巻上げガイド142はローラ142bにより多面体ドラム11に巻き上げられた吊設手段12の吊設板Pを押圧している。
【0053】
図7には、吊設手段12が巻き下げられた状態を示す。巻上げガイド141のコイルスプリング141a、巻上げガイド142のコイルスプリング142aは伸びた状態にあるが、なおローラ141b、142bは多面体ドラム11に残った吊設手段12を押圧している。また、この状態にて、繰出口13cを通過する吊設手段12は正面視で1直線状となっている。また、巻上げガイド141、142の先端にローラ141b、142bが装着されている理由は、この部分がローラ構造でないと吊設手段12との間に摩擦が生じて巻上げガイド141、142が多面体ドラム11の回動方向に引きずられ、押圧作用がうまく働かないからである。
【0054】
図8において、6は制御部、7は電源部である。駆動源5AであるモータMの回転方向及び回転速度は制御部6にて制御される。モータMの回転方向及び回転速度の制御方法はインバータを使用する等任意に選択可能である。また、制御部6の操作は、制御部6自体が高所に位置することが多いので、リモートコントローラ(図示せず)で遠隔操作できるようにするのが望ましい。なお、c1は電源部7からモータMに電力を送る電源ケーブル、c2は制御部6からモータMに制御情報を伝達する情報伝達ケーブル、c3は電源部7から制御部6に電力を送る電源ケーブルである。
【0055】
図8において、STはストッパであり、制御部6からの情報で適宜モータMのモータ軸XMの回転を停止状態に固定する働きをする。この際、モータ軸XMは回転を続けているがストッパSTにてこれを強制停止するように構成しても良いし、モータ軸XMの回転自体を制御部6によって停止させ、さらに停止状態を確実に固定するためにストッパSTを使うという構成にしても良い。
【0056】
図14に、ストッパSTの構成を2例示す。まず1例目は、図14a、図14bに示すように、ストッパST1は縦断面視にて先端部が円弧状に形成された棒状で、本体ST1aは金属製あるいは硬質の合成樹脂製であり、先端部にゴム製あるいは軟質合成樹脂製の摩擦材ST1bが固着されている。一方、モータ軸XMには、金属製の突片t1、t2、t3が周方向に等間隔に植設されている。
【0057】
今、モータ軸XMの回転方向が図14aのα方向の場合、ストッパST1がa方向に進出すると、突片t1、t2、t3のいずれかがストッパST1の摩擦材ST1bに係止されてモータ軸XMの回転はその位置で停止固定される。モータ軸XMの回転方向が図14bのβ方向の場合も同様である。ストッパST1がb方向に退出されると、突片t1、t2、t3のいずれかの係止状態が解除され、モータ軸XMはα方向あるいはβ方向に回転する。
【0058】
次にストッパSTの構成の2例目を示す。図14c、図14dに示すストッパST2は先端が嘴状に分かれて突出されており、空間SSTにモータ軸XMを銜えこんでモータ軸XMの回転を停止固定させる構成である。ST2aは金属製あるいは硬質の合成樹脂製の本体であり、ST2bは嘴状の先端の内側に固着されたゴム製あるいは軟質合成樹脂製の摩擦材である。
【0059】
図14cに見るように、モータ軸XMと摩擦材ST2aが接触していない状態にては、モータ軸XMは回転を続けている。この場合、回転方向は問わない。しかるに、ストッパST2が図14aのa方向に進出して、図14dに見るように摩擦材ST2aがモータ軸XMと接触しモータ軸XMを銜えこむ状態になると、モータ軸XMの回転は停止される。この状態にて、ストッパST2が図14dのb方向に退出すると、モータ軸XMとストッパST2の関係は図14cの状態に戻り、モータ軸XMは摩擦材ST2aから開放されて、再度回転を始めることができる。
【0060】
以上には、モータ軸XMにストッパST1を係止させ、あるいはモータ軸XMをストッパST2に銜えこませてモータ軸XMの回転を停止固定させる構成を記載したが、モータ軸XMの回転を停止固定させる方法は当然上記に限定されるものではない。また、最終的には吊設手段12、22、32、42の昇降運動が停止固定されればよいので、ストッパ機構はモータ軸XM以外の部分に組み込むことも当然可能である。なお、ストッパSTをモータ軸XMに組み込む利点は、モータ軸XMの回転を停止固定させれば回動軸X1、X2の回転は同時に停止固定されるので、結果として吊設手段12、22、32、42の運動もすべて同時に停止固定され、棚板9(C1)には傾斜が一切発生しないという点である。
【0061】
<実施例1の作用>
実施例1の棚昇降装置A1は、使用者が図示しないリモートコントローラを操作することによって駆動される。当初の状態が、図10に示されるように吊設手段12、22、32、42が巻上げられて、棚部C1の棚板9がストッパst、st、st、stを介して吊設部Bの筐体8の底板81に当接された状態であったとすると、使用者が図示しないリモートコントローラにより吊設手段12、22、32、42の繰出し操作(下降操作)を開始する情報を情報部6に伝達すると、情報部6はモータMに「繰出し情報」を送り、モータMはモータ軸XMをβ方向に回転させる(図8参照。なお図8は吊設手段12、22、32、42が繰出された状態である)。
【0062】
モータ軸XMがβ方向に回転されると、ギアG1、G2の作用により、回動軸X1はδ方向に回転される。これにより、多面体ドラム11、21もδ方向に回転され、多面体ドラム11に巻き取られていた吊設板P、P、……は多面体ドラム11より順次離脱して下方に繰出される。この際、吊設機構1においては、図1に見るように、吊設板P、P、……は巻上げガイド141、142に押圧された状態であるので、巻上げガイド141の下方に位置するまでは適切に巻上げられた状態を保持し、巻上げガイド141を外れた段階ではじめて巻上げ状態が解除され、順次繰出口ガイド13に送りこまれる。
【0063】
繰出口ガイド13に送りこまれた吊設板Pは、繰出口ガイド13において隣接する吊設板Pと直列させられる。この際、図6aに示すようにボールノッチBNの働きによって直列状態が固定され、吊設板P、P、……は一枚の板状の吊設手段12として繰出口13cから下方に繰出される。
【0064】
この状態は、吊設機構2にても同様である。すなわち、多面体ドラム21がδ方向に回転され、巻上げガイド24、繰出口ガイド23の働きにより、多面体ドラム21に巻き上げられていた吊設板P、P、……は直列状態に固定された吊設手段22として繰出口23cから下方に繰出される(図12参照)。
【0065】
さらに、吊設機構3、4においても、同様の手順で吊設機構1、2と同時に直列状態に固定された吊設手段32が繰出口33cから下方に繰出され、直列状態に固定された吊設手段42が繰出口43cから下方に繰出される。即ち、図8において、モータ軸XMがβ方向に回転されると、ギアG5、G6の作用により、伝達軸XNはζ方向に回転される。伝達軸XNがζ方向に回転されると、ギアG3、G4の作用により、回動軸X2はθ方向に回転される。
【0066】
回動軸X2がθ方向に回転されると、多面体ドラム31、41もθ方向に回転させられるので、その結果、直列状態に固定された吊設手段32が繰出口33cから下方に繰出され、直列状態に固定された吊設手段42が繰出口43cから下方に繰出される。したがって、吊設手段12、22、32、42は夫々が一枚の板状となり同時に等速度で下方に繰出されるので、吊設手段12、22、32、42の下端に装着された棚板9は、水平状態を保持したままで降下される。この際、吊設手段12、22、32、42にては、ボールノッチBN機構の作用によって板状状態が固定されているので揺動等が一切生じず、円滑に降下されることができる。
【0067】
使用者(図示せず)は、自分の好みの位置に棚板9が位置したときに、リモートコントローラ(図示せず)のスイッチを操作して、制御部6にモータ軸XMの回転を停止させる情報を送信する。これによりモータ軸XMの回転は停止されるが、この際、モータ軸XMの回転の停止は制御部6のインバータ(図示せず)等の制御装置を用いて行っても良いし、またストッパSTを操作することによって行っても良い。さらに、制御部6のインバータ(図示せず)等の制御装置を用いて行い、さらにその状態を固定するためにストッパSTを用いるということでも良い。
【0068】
使用者(図示せず)は、棚板9上に好みの物品(図示せず)を載置するなど必要な作業を行い、その作業が完了すれば、リモートコントローラ(図示せず)のスイッチを操作して制御部6にモータ軸XMをα方向に回転させる情報を送信する。同時にモータ軸XMはストッパSTから解除され、モータ軸XMはα方向に回転を開始する。すると、ギアG1、G2の作用により、回動軸X1はγ方向に回転され、ギアG5、G6、の作用により伝達軸XNはε方向に回動され、ギアG3、G4の作用により回動軸X2はη方向に回転される。
【0069】
これにより、吊設手段12、22、32、42は巻き上げられ棚板9は上昇する。この過程を一例として、吊設手段12の例を図1、図7で説明する。図7は吊設手段12が略完全に巻き下げられ、棚板9が略最下位に位置する状態であるが、この状態にて、回動軸X1が方向γに回動すると、吊設板12の吊設板P、P、……が多面体ドラム11に順次巻き取られて、最終的に図1に示す状態となる。この際、吊設板P、P、……は、1巻目には多面体ドラム11周の各面に吊設板Pが隙間なく当接され、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板Pの上に次の吊設板Pが隙間なく当接されるように構成されているので、最終的に図7に示すように巻き取られた吊設板P、P、……が順次隙間なく当接されるように巻き取られる。
【0070】
この際、巻上げガイド141、142が巻き取られる過程にある吊設板Pを順次押圧していくので、吊設板P、P、……は、既に巻き取られた吊設板Pの上に隙間なく重なって巻き取られていく。すなわち、構成の項にて記述のように、多面体ドラム11に巻き取られている最初の1巻き目は、吊設板Pの延長PLが多面体ドラム11の各面の延長11Lに隙間なく当接される長さとなっており、但し、突出部11aのある面においては、延長11Lが若干長くなっており、延長PLもそれに合わせて長くされており、2巻目以降の吊設板Pは、n−1巻目(nは自然数)の吊設板Pの延長PLにぴったり当接させられる延長PLを有するように構成されているので、上記のように新たな吊設板Pは既に巻き取られた吊設板Pの上に隙間なく巻き取られていく。なお、この際、図15に示すような構成もあり得ることは構成の項にて既述のとおりである。
【0071】
さらに、この過程にて、巻上ガイド141、142の作用により、新たに巻き取られる吊設板Pは既に巻き取られた吊設板Pの上にぴったりと押圧されながら巻き取られていくので、巻上げはさらに確実なものとなる。上記は吊設手段12の巻上げに関する説明であるが、吊設手段22、32、42も同様に巻き上げられる。したがって、棚板9は水平を保持しながら円滑に上昇していく。この際、吊設手段12、22、32、42は筐体から下方に露出された部分は夫々がボールノッチBN機構の作用によって一枚の板状になっているので、棚板9の揺動等が一切発生しない。
【0072】
使用者(図示せず)は、棚板9が自分の望みの位置まで上昇したら、そこでリモートコントローラ(図示せず)の停止ボタンを押す。すると、停止情報が情報部6に送られ、モータ軸XMの回転が停止される。あるいはストッパSTが作用してモータ軸XMが停止固定される。このようにして、使用者(図示せず)は、自在に棚板9の上昇、下降、停止を制御することが可能である。また、制御部6にインバータ(図示せず)を組みこんだ場合には、上昇速度、降下速度の制御も可能となる。
【0073】
<実施例2の構成と作用>
図13には、本発明の実施例2の棚昇降装置A2を示す。棚昇降装置A2は棚部C2を神棚の供物台90として設計したもので、供物台90はベース91、立設部92、台部93が一体として構成され、最上昇位置にて台部93の上面と吊設部Bの筐体8の上面が同一平面状に揃うように構成されている。それ以外の構成は、実施例1の棚昇降装置A1と同一である。
【0074】
ベース91には吊設手段12、22、32、42の下端が固着され、ベース91の正面に立設部92の下端が一体として固着され、立設部92の上端に台部93の後端が一体として固着され、供物台90は側面視が鉤状に曲折された板状体として構成されている。
【0075】
使用に際しては、吊設部Bの筐体8の上面に社殿Yを載置し、供物台90の台部93の上面に榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等を載置する。図13aは供物台90を最高位置、すなわち台部93の上面と吊設部Bの筐体8の上面が同一平面状に揃う位置にまで上昇させた状態で、この位置が通常の祭祀状態である。
【0076】
榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等の交換にあたっては、使用者(図示せず)は供物台90全体を降下させる。すると図13bに示すような状態となるので、身長の低い使用者においても、榊Sa、燭台Ca、水、塩、米の器Da等の交換が容易に行える。交換が終了すれば供物台90全体を上昇させ、再び図13aの状態とすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、棚の昇降装置として理想的な特性を備えたものである。すなわち、リンク機構やパンタグラフ機構のように昇降距離が限定されることがなく、ワイヤーやベルトによる巻上げ機構のように棚板の下部が枠体やガイドによって占められることもない。即ち棚板の下部が自由空間になる。また、ワイヤーやベルトによる巻上げ機構の弱点であった不安定さもなく、揺動も起こらない。さらには、外見がすっきりしていて、リンクやパンタグラフ等のメカニズム的な部材の露出がないので、通常の過程の屋内にても十分に用いることができるし、店舗装飾の分野でも大いに活用が期待される。
【0078】
あるいは、本発明は、神棚の供物台として用いるにも最適の特性を備えている。神棚は通常の日本家屋にては鴨居に取り付けられることが多く、ふつうの日本人の、特に主婦においては、身長条件によって供物台の供物の交換作業は踏み台等を必要とすることが多く、これがために気にはなりながら、頻繁に神棚のお世話をできない人々も多かった。しかし、本発明によれば、通常は棚下になにも置かないという神棚の特性を活かしつつ、供物の交換時には自分の好みの位置まで供物台を降下させられるので、いかに身長の低い人でも踏み台等を使用することなく楽に供物の交換が行える。
【0079】
踏み台は、一々運んで据えるのも面倒であるし、高齢者にとっては持ち運ぶだけでも重労働である。また踏み台に昇っての高所作業も身体能力の低下している高齢者にとっては大変危険である。通常神棚は高齢者がお世話をするケースが多いので、本発明は、家庭内事故を減らす上においても非常に有効である。また外観的にも非常にすっきりとしているので、神棚に使用しても全く違和感を生じない。特に、棚板(供物台)の上昇状態においては、吊設手段等のメカニズムは全く見えなくなってしまうので、外観的にも通常の神棚と変わらない印象を与える。この点は、神棚としての使用においては極めて重要なポイントとなるものである。
【0080】
さらに、本発明は、台所の流し台の上の棚や、子供部屋で下部にベッドのある空間の棚等、室内空間においてあらゆる所に応用することができる。また、店舗装飾の分野においても、昇降が自在であり、下部が自由空間になり、しかも外観がすっきりとしているという点から、様々なディスプレイに応用が可能であり、応用範囲は発想次第で無限に広げることが可能である。また、鉄道車両においても、網棚に用いれば、これまで身長が低くて網棚に荷物を置くのに難渋していた人も楽に網棚を使用することが可能となる。
【0081】
またさらに、本発明は、天井裏収納の一手段としても応用可能である。すなわち、天井裏に本発明を収容し、天井板の一部を棚板として使用することにより、リモコン操作によって棚板として使用される部分の天井板を昇降させることができる。棚板として使用される部分の天井板を、物品の収納や取り出しが楽にできる高さにまで降ろし、物品の収納や取り出しを行い、しかる後に棚板として使用される部分の天井板を上昇させて天井板の他の部分と揃う高さで停止させれば、非常に使い勝手の良い天井裏収納が実現できる。このように、本発明は、ありとあらゆる空間において応用可能な棚昇降装置を提供するものであり、極めて重要にして有益な産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0082】
1 吊設機構
11 多面体ドラム
11a 突出部
12 吊設手段
13 繰出口ガイド
13a メインガイド
13b サブガイド
13c 繰出口
14 巻上ガイド
141 巻上ガイド
141a コイルスプリング
141b ローラ
142 巻上ガイド
142a コイルスプリング
142b ローラ
2 吊設機構
21 多面体ドラム
22 吊設手段
23 繰出口ガイド
23a メインガイド
23b サブガイド
23c 繰出口
24 巻上ガイド
241 巻上ガイド
242 巻上ガイド
3 吊設機構
31 多面体ドラム
32 吊設手段
33 繰出口ガイド
33a メインガイド
33b サブガイド
33c 繰出口
34 巻上ガイド
341 巻上ガイド
342 巻上ガイド
4 吊設機構
41 多面体ドラム
42 吊設手段
43 繰出口ガイド
43a メインガイド
43b サブガイド
43c 繰出口
44 巻上ガイド
441 巻上ガイド
442 巻上ガイド
5A 駆動源
5B 伝達機構
6 制御部
7 電源部
8 筐体
81 底板
82 上板
83 左側板
84 右側板
85 前板
86 後板
87 受板
87a 左前部
87b 左後部
87c 右前部
87d 右後部
87e 中央部
88 補助板
89 補助板
9 棚板
90 供物台
91 ベース
92 立設部
93 台部
A1 棚昇降装置
A2 棚昇降装置
B 吊設部
BL ボール
BN ボールノッチ
C1 棚部
C2 棚部
CS コイルスプリング
Ca 燭台
D 凹部
Da 器
G1 ギア
G2 ギア
G3 ギア
G4 ギア
G5 ギア
G6 ギア
M モータ
N ノッチ
Na 面取り
P 吊設板
P1 凸部
P2 凹部
P3 凸部
P4 凹部
P5 凸部
P6 凹部
PA 吊設板
PB 吊設板
PL 延長
PX 枢軸
PXh 軸孔
S 凸部
SST 空間
ST ストッパ
ST1 ストッパ
ST1a 本体
ST1b 摩擦材
ST2 ストッパ
ST2a 本体
ST2b 摩擦材
Sa 榊
Sh 円孔
X1 回動軸
XIa 軸受
X1b 軸受
X2 回動軸
X2a 軸受
X2b 軸受
XM モータ軸
XMa 軸受
XN 伝達軸
XNa 軸受
XNb 軸受
Y 社殿
a 方向
b 方向
c1 電源ケーブル
c2 情報伝達ケーブル
c3 電源ケーブル
st ストッパ
t1 突片
t2 突片
t3 突片
α 方向
β 方向
γ 方向
δ 方向
ε 方向
η 方向
ζ 方向
θ 方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
【請求項2】
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の棚昇降装置。
【請求項3】
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の棚昇降装置。
【請求項4】
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3に記載の棚昇降装置。
【請求項1】
吊設部と棚部から構成され、
吊設部は、連接される複数枚の吊設板からなる吊設手段と、回動軸に直角方向の縦断面が多角形状の多面体ドラムからなり、連接された複数枚の吊設板を多面体ドラムに巻き取りあるいは繰り出すことによって複数枚の吊設板から成る吊設手段の垂直方向への延長を伸縮できるように構成され、
吊設手段を構成する複数枚の吊設板は、多面体ドラムに巻き取られる際に、最初の1巻目は多面体ドラムの周部分の各面に平行に重なるように吊設板が巻き取られ、2巻目以降は既に巻き取られた吊設板の上に次の吊設板が平行に重なるように巻き取られ、多面体ドラムに巻き取られる複数枚の吊設板の曲折される連接部分と隣接する曲折される連接部分の間の距離が巻数が増えるにつれ順次長くなるように吊設板の長さが構成され、
吊設手段の下端部に棚部が装着されている
ことを特徴とする棚昇降装置。
【請求項2】
吊設板が、隣接する吊設板と共通する枢軸によって回動自在に結合され、隣接する吊設板との間にボールノッチ機構を介して連接されており、該ボールノッチ機構は、吊設板とこれに隣接する吊設板が垂直になった状態にてボールがノッチに嵌合されて固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の棚昇降装置。
【請求項3】
多面体ドラムに巻き取られた吊設板が繰り出される際に、多面体ドラムの下方に吊設板を両側から挟みこみ、通過する吊設板を垂直方向に整序させるためのガイド機構を有していることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の棚昇降装置。
【請求項4】
多面体ドラムの近傍に、巻き取られる過程にある吊設板が既に巻き取られた吊設板の上に隙間なく当接するように巻き取られる過程にある吊設板を押圧するガイド機構を有していることを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3に記載の棚昇降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−50780(P2012−50780A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197721(P2010−197721)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【特許番号】特許第4606517号(P4606517)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(510238856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【特許番号】特許第4606517号(P4606517)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(510238856)
【Fターム(参考)】
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