棚用支持体及び棚ユニット
本発明は、挿入カップ体(2)を備えた棚用支持体(1)であって、挿入カップ体が、1つの側壁部(6)にT字形の懸架開口部を有し、懸架開口部が、カップ軸線(M)に対して平行に延びる縦スリット(7)と、これに対して垂直に延びる横スリット(8)とによって形成され、縦スリット(7)が横スリット(8)とは逆の側の端部で開いている形式のものに関し、本発明に基づき、挿入カップ体(2)内に、スライダー(4)が縦スリット(7)に対して横方向にスライド可能に支承され、前記スライダー(4)に、縦スリット(10)が形成され、該縦スリットが、挿入カップ体(2)の縦スリット(7)に対して平行に延びていて、挿入カップ体(2)の横スリット(8)と逆の側の端部で開いており、スライダー(4)の中間位置では、挿入カップ体(2)の縦スリット(7)と一緒に共有の1つの導入スリットを形成しており、スライダー(4)が、中間位置で及び/又は、中間位置の両側へ横方向スライドされた終端位置で挿入カップ体(2)に対して係止されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入カップ体を備えた棚用支持体であって、挿入カップ体が、1つの側壁部にT字形の懸架開口部を有しており、懸架開口部が、挿入カップ体のカップ軸線に対して平行に延びる縦スリットと、縦スリットに対して垂直に延びる横スリットとによって形成されており、縦スリットが、横スリットとは逆の側の端部で開いている形式のものに関する。更に本発明は、1つの棚を備える棚ユニットであって、棚が、両方の棚端部(前側の端部及び後側の端部)において両側に、つまり例えばキャブネットの側壁に取り付けられる一方の側と他方の側とにそれぞれ1つの棚用支持体を有している形式のものに関する。
【0002】
前記形式の棚用支持体は、収納キャビネット等(ラックや収納具等を含む)の2つの側壁間に、棚又は棚板、仕切り板又は引き出し支持板若しくは棚底板等を架け渡す、つまり懸架するために用いられるものである。このために、4つの棚用支持体が、棚の下面の対応する凹部(受容部)内に挿入され、次いで、棚がその棚用支持体で以てキャビネット側壁のピン若しくはボルトに懸架されるようになっている。
【0003】
公知技術により、まず片側で開いた懸架スリットを有する簡単な棚用支持体が知られており、棚用支持体が、棚の前側又は手前側及び後側又は奥側の棚端部においてそれぞれ両側で棚の下面に装着されるようになっている。このような簡単な棚用支持体においては欠点として、例えば前側の棚端部に高い荷重が掛かる場合に、後側の棚用支持体、ひいては後側の棚端部が、対応する後側の組立用ボルトから持ち上げられ、結果として、棚が傾倒してしまっている。
【0004】
懸架された棚の傾倒を避けるために、前側の棚端部と後側の棚端部とに互いに異なる棚用支持体を用いることが知られている。前側のための両方の棚用支持体(即ち、キャビネット背壁に最も近く位置する棚用支持体)が、ボルトの頭部の受容のために、片側の開いた1つの懸架スリットだけを有しているのに対して、後側のための棚用支持体(即ち、棚の見える前縁部に最も近く位置する棚用支持体)が、1つのT字形の懸架開口部を有しており、T字形の懸架開口部は、片側で開いた1つの懸架スリット(縦スリット)とこれに対して両側に延びる1つの横スリットとによって形成されている。棚は、まずその後側の棚用支持体で以て、より具体的には後側の棚用支持体の縦スリットで以て後側の組立用ボルトに懸架され、次いで後側へ滑らされ、つまりスライドされ、これにより、後側の組立用ボルトが今や横スリット内に位置しており、後側の棚用支持体が、懸架方向とは逆の方向で後側の組立用ボルトにロックされている。後側の組立用ボルトが、回動軸を形成しており、回動軸(旋回軸)を中心として、棚が、前側の端部を降下させるように、前側の棚用支持体をその縦スリットでもって組立用ボルトに引っ掛け、即ち被せ嵌めるまで下方旋回させられる。懸架された棚は、懸架方向とは逆の方向でロックされる後側のための棚用支持体によって傾倒不能に固定されるようになっている。しかしながら、前側及び後側の異なる種類の棚用支持体には、次のような欠点があり:
− 棚用支持体の装着に際して、前側の棚用支持体を前側の棚端部で棚の凹部内に装着し、かつ後側の棚用支持体を後側の棚端部で棚の凹部内に装着することに、常に注意が払われねばならない。棚用支持体を誤って装着してしまった場合には、棚は懸架されないか、或いは懸架された状態で前後にずらされてしまうことになる。誤って装着された棚用支持体を、改めて正しく装着するために抜き取ることは、手間と時間を必要とし、厄介である。
− 異なる2種類の棚用支持体の製造若しくは製作、並びに出荷すべきロット毎に棚用支持体が前側の棚用支持体と後側の棚用支持体との正確な対で出荷されるようになっているかをチェックする作業は、同様に時間とコストを必要とするものである。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の棚用支持体に改良を加えて、棚用支持体が、前側の棚用支持体としても、後側の棚用支持体としても用いられ、かつ懸架された棚の傾倒若しくはずれを確実に防止できるようにすることである。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の構成によれば、挿入カップ体内に、スライダーが、挿入カップ体の縦スリットに対して横方向又はほぼ垂直方向にスライド可能(移動可能)に支承されており、スライダーに、縦スリットが形成されており、スライダーの縦スリットが、挿入カップ体の縦スリットに対して平行に延びていて、挿入カップ体の横スリットとは逆の側の端部で開いており、かつスライダーの中間位置では、挿入カップ体の縦スリットと一緒に共有の1つの導入スリット又は差し込みスリットを形成しており、スライダーが、その中間位置で及び/又は、その中間位置の各側方へ横方向スライドされた終端位置(両方又は両側の各終端位置)で挿入カップ体に対して係止されるようになっている。
【0007】
本発明に基づく棚用支持体は、そのスライダーがその中間位置を占めている場合には、共有の導入スリットしか有しておらず、従ってその機能から、公知技術の前述の前側の棚用支持体に相当するものである。本発明に基づく棚用支持体は、そのスライダーがその中間位置から側方へ、つまり縦スリットに対して横方向へスライドされた、即ち横滑りされた終端位置を占めている場合には、T字形の懸架開口部を有しており、従ってその機能から、公知技術の前述の後側の棚用支持体に相当するものである。つまり、本発明に基づく棚用支持体は、−そのスライダー位置に対応して−選択的に前側の棚用支持体として、或いは後側の棚用支持体として用いられるようになっている。
【0008】
本発明に基づく棚用支持体を用いて棚を組み立てるためには、本発明に基づく4つの棚用支持体が、棚用支持体のために棚の下面に設けられた凹部内に挿入され、この場合に、全ての棚用支持体のスライダーはその中間位置を占めている。次いで、まず、後側の両方の棚用支持体がそれぞれその共有の導入スリットを介して、突出している後側のボルトに懸架される。次いで、棚は、後側のボルトがそれぞれ横スリットの前側の端部に位置決めされるまで、後へ移動させられ、これにより、後側の両方の棚用支持体が、懸架方向とは逆の方向で後側のボルトに錠止されている。後側のボルトを中心とした棚の旋回運動により、前側の両方の棚用支持体がそれぞれその共有の導入スリットを介して前側のボルトに懸架され、その結果、棚はその水平な終端位置を占める。棚の水平な終端位置では、前側の棚用支持体のスライダーが、その中間位置を占めており、後側の棚用支持体のスライダーが、横方向スライドされ、即ち錠止された終端位置を占めている。これにより、スライダーを用いて左側の組立用ボルトに錠止された棚用支持体は、棚が後側のボルトから持ち上げられ、ひいては傾倒してしまうことを阻止するようになっている。
【0009】
本発明の有利な形態によれば、スライダーの縦スリットは、挿入カップ体の横スリットの高さ位置で、円形の開口部で終わって、つまり円形の開口部へ続いて、即ち移行しており、円形の開口部は、組立用ボルトの特に遊びのない受容のために用いられるようになっている。有利には、スライダーの縦スリットは、円形の開口部への移行部の両方にそれぞれ、円形の開口部内に受容された組立用ボルトを係止するための係止突起部を有している。
【0010】
有利には、スライダーの縦スリットは、該縦スリットの開いている側の端部を起点として、逆の側の端部に向かって先細りになっていて、これにより導入テーパーを形成している。
【0011】
本発明の有利な別の形態によれば、挿入カップ体及びスライダーが、中間位置及び/又は横方向スライドされた終端位置での相互の係止のための係止突起部及び係止受容部を有している。係止突起部及び係止受容部は、挿入カップ体内へのスライダーの差し込みの際の案内としても用いられるようになっている。
【0012】
有利には、挿入カップ体が、その外周に周方向へ延びるリブを有しており、リブは、木材から成る棚に挿入カップ体を用いる場合には、戻り止め機能を有する鉤フックのように棚の孔壁内に押し込まれて食い込み、挿入カップ体を棚内に確実に固定するようになっている。別の形態若しくは追加的な手段として、挿入カップ体は、例えば挿入カップ体のカップ底部の領域に半径方向外側へ突出する係止ばね又は係止キーを有しており、係止ばね又は係止キーが、例えば挿入カップ体を薄板、特に金属薄板から成る棚に用いる場合に、棚の対応するスリット若しくは開口部内に係合して、挿入カップ体を棚内に確実に固定するようになっている。
【0013】
有利には、スライダーが、紛失しないように挿入カップ体内に保持されており、これにより、棚用支持体は、不適切な取り扱いによっても個別の部品が失われることのないまとめられたユニットとして提供されるようになっている。挿入カップ体内へのスライダーの差し込み若しくは押し込みに際して、スライダーが、例えば挿入カップ体に係止されるようになっている。
【0014】
本発明の特に有利な形態によれば、挿入カップ体とスライダーとは、1つの作業過程により、1つ又は複数の目標破断箇所を介して互いにつながった状態で成形されている。このような構成により、挿入カップ体とスライダーとを、まず、(目標破断箇所を介して)つながっている1つの射出成形部品として成形することが可能である。このような形態は、本発明に基づく棚用支持体の安価な成形を可能にするものである。次いで、挿入カップ体のカップ開口部内へのスライダーの押し込みにより、1つ又は複数の目標破断箇所が破断され、その結果、スライダーが問題なく挿入カップ体内へ差し込まれるようになっている。
【0015】
有利には、挿入カップ体及びスライダーが、プラスチックから射出成形により、それも個別の2つの部品として、或いは目標破断箇所を介してまずつながっている1つの射出成形部品として成形されている。
【0016】
本発明は更に、1つの棚及び4つの組立用ボルトを備える棚ユニット又は棚装置にも関するものであり、この場合に、棚が、両方の棚端部において両側にそれぞれ、前述の棚用支持体を有していて、該4つの棚用支持体で以て組立用ボルトに懸架されており、この場合に、一方の棚端部に設けられた棚用支持体のスライダーが、中間位置に位置決めされており、他方の棚端部に設けられた棚用支持体(他方の棚用支持体)のスライダーが、該スライダーの、一方の棚端部に設けられた棚用支持体(一方の棚用支持体)へ向けて横方向スライドされた終端位置に位置決めされており、終端位置では、棚用支持体(他方の棚用支持体)が、棚用支持体の懸架方向とは逆の方向で棚用支持体(他方の棚用支持体)の組立用ボルトに錠止されている。
【0017】
更なる利点が、図示の実施形態に示してある。本発明の前述の構成事項は、それぞれ単独に用いられ、或いは種々に組み合わせて用いられるものである。本発明は、図示して説明する実施形態に限定されるものではなく、図示の実施形態は例として挙げられているものである。
【0018】
次に、本発明を図示の実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】挿入カップ体及び中間位置に位置決めされたスライダーを備える本発明に基づく棚用支持体の斜視図である。
【図2】図1の棚用支持体の下面図である。
【図3】図1の棚用支持体の平面図であり、組立用ボルトが棚用支持体内に嵌め込まれている。
【図4】図3のIV−IV線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図6】終端位置へ横方向スライドされたスライダーを備える棚用支持体の、図1と同様の斜視図である。
【図7】図6の棚用支持体の下面図である。
【図8】図6の棚用支持体の平面図であり、組立用ボルトが棚用支持体内に嵌め込まれている。
【図9】図8のIX−IX線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図10】挿入カップ体とスライダーとが目標破断箇所を介して一体に成形される本発明に基づく棚用支持体の、第1図と同様の斜視図である。
【図11】図10の棚用支持体の別の方向からの斜視図である。
【図12】本発明に基づく棚用支持体を装備する棚の懸架されていない状態での概略的な側面図(図12a)及び懸架された状態での概略的な側面図(図12b)である。
【0020】
図1に示してある棚用支持体1は、棚の下面に設けられた孔内に差し込まれて、棚をキャビネット側壁の組立用ボルトに懸架するために用いられるものである。
【0021】
棚用支持体1は、カップ開口部3を有する挿入カップ体2及びスライダー4を含んでおり、スライダー4はカップ開口部3内に差し込まれ、かつカップ開口部3内に横方向スライド可能(二重矢印5)に支承されている。挿入カップ体2は、平らな1つの側壁部6に(平らな側壁部以外では円筒形の外周面を成している)、図1で上下逆さまに描かれるTの字の形(T字形)の懸架開口部を有しており、該懸架開口部(被せ嵌め開口部又は差し込み開口部)は、挿入カップ体2のカップ軸線Mに対して平行に延びる縦スリット7と、縦スリット7又はカップ軸線Mに対して垂直に延びかつ縦スリット7の両側に延在する横スリット8とによって形成されている。縦スリット7は、横スリット8とは逆の側の端部で、つまり図1で見て上方に向かって、開いて、即ち開口している。横スリット8は、挿入カップ体2の底部壁に対して平行に向けられている。両方の縦スリット7,10の幅は、互いに同じであり、若しくは少なくとも互いにほぼ同じである。挿入カップ体2は、図1で見て上側に、平らな側壁部6の部位を除いて、周囲に沿って延びるつば9を有しており、つば9は、挿入カップ体2を棚の孔内に差し込んだ状態では、棚下面に接触するようになっている。図1に示してあるように、スライダー4は、同じく中空体状又はカップ状に、しかも横断面をほぼ方形(長方形又は正方形)に形成されている。別の実施形態では、スライダー4は、プレートとして形成されていてよいものである。
【0022】
図1には、スライダー4は、中間位置で描かれており、中間位置では、スライダー4の上方に向かって開いている縦スリット10が、挿入カップ体2の縦スリット7と一緒に共有の1つの導入スリットを形成するようになっている。スライダー4の縦スリット10は、上方の開口側の端部を起点として下方へ、横スリット8の部位に達するまで先細りになっていて、横スリット8の高さで円形の開口部11に広げられている。先細り部から円形の開口部11への移行に基づき、スライダー4は、縦スリット10の両方の側に各1つの係止突起12を有している。図示の中間位置を起点として、スライダー4は、両方の側方へ各終端位置に横方向スライドされるようになっている。
【0023】
図2に示してあるように、スライダー4は、横方向5で互いに離間された2つの係止突起部13を有しており、係止突起部13は、中間位置では、挿入カップ体2の対応する各係止受容部若しくは係止凹部14内に係合している。別の実施形態又は追加的な手段として、スライダー4は、両方の終端位置で挿入カップ体2と係合するようになっており、このために、例えば係止突起部13が、挿入カップ体2の対応する部位に設けられた係止凹部内に係合するようになっている。
【0024】
図3〜図5は、棚用支持体1を、中間位置を占めるスライダー4と嵌め込まれた組立用ボルト15と一緒に示しており、組立用ボルト15は、ねじ部16及び頭部17、並びにねじ部16と頭部17との間の直径の減少されたシャフト部18を有している。スライダー4の占める中間位置において、組立用ボルト15が、そのシャフト部18でもって、挿入カップ体2及びスライダー4の共有の導入スリット内へ導入され、次いで引き続き円形の開口部11内まで移動させられて、そこで係止突起部12により係止されるようになっているのに対して、組立用ボルト15の頭部17は、同時にスライダー4の受容開口部若しくはカップ開口部19内に受容されるようになっている。
【0025】
更に図1及び図4に示してあるように、スライダー4は、上側に上方の2つの案内突起部20を有し、かつ下側にも下方の1つの案内突出部21を有しており、案内突起部20,21が、側壁部6の上側の縁部22若しくは下側の縁部23に沿って横方向に案内されるようになっており、このような構成により、スライダー4が紛失しないように挿入カップ体2内に保持されている。図5に示してあるように、下方の案内突出部21は、爪によって形成されており、該爪(戻り止め)は、挿入カップ体2内へのスライダー4の差し込みに際して、スライダー4の差し込み方向で、側壁部6の、段部により形成された下方の縁部23の背後に係合するようになっている。
【0026】
図6において、挿入カップ体2内に装着されたスライダー4は、中間位置から左側へ、スライダー4の左側の終端位置へ横方向スライドされており、該終端位置では、円形の開口部11が、挿入カップ体2の横スリット8の左側の端部と合致していて、挿入カップ体2の縦スリット7と横スリット8との間の移行部にあるエッジ24によって係合され、つまり部分的に閉じられている。図1に示してある中間位置における場合とは逆に、挿入カップ体2の縦スリット7とスライダー4の縦スリット10とにより形成された共有の導入スリットは、終端位置においては、横方向5で明らかに狭められている。図7に示してあるように、スライダー4の横方向スライドにより、係止突起部13と係止凹部14との間の係止が解除されるようになっている。
【0027】
図8及び図9は、棚用支持体1を、嵌め込まれた組立用ボルト15と一緒に示しており、この場合に、スライダー4、ひいては組立用ボルト15が左側の終端位置へ横方向スライドされている。組立用ボルト15は、懸架方向とは逆の方向で、挿入カップ体2のエッジ24によって円形の開口部11内にロックされている。図9に示してあるように、スライダー4の終端位置は、挿入カップ体2への上方の案内突出部20の側方の当接(ストッパー)によって規定されている。
【0028】
図10及び図11は、棚用支持体1を、製造状態で示しており、この場合に、挿入カップ体2とスライダー4とは、まず目標破断箇所30を介して一体に製造されている。この状態では、スライダー4は、挿入カップ体2の外側に、より正確には挿入カップ体2のカップ開口部3の上側に位置している。目標破断箇所30は、スライダー4の底部側と挿入カップ体2の周囲に沿って延びるつば9との間の結合ウエブとして形成されている。スライダー4を挿入カップ体2内に差し込むために、スライダー4が、カップ軸線Mの方向に挿入カップ体2内へ、目標破断箇所30の破断を伴って、図1に示す位置まで押し込まれる。
【0029】
棚(図示省略)の孔内又は凹部内における棚用支持体1の改良された保持のために、図1、図6、図10及び図11に示してあるように、挿入カップ体2の外周にリブ31が形成されており、該リブは、木材から成る棚の場合には、戻り止め機能を有する鉤フックのように棚の孔壁内に食い込むようになっている。挿入カップ体2は、別の実施形態として、或いは追加的な手段として、例えばカップ底部の領域に、半径方向外側へ突出する係止ばね又は係止キー(図示省略)を有しており、該係止ばね又は係止キーが、金属薄板から成る棚の場合に、棚の縁部に係合するようになっている。
【0030】
図12aには、4つの棚用支持体1を装備する棚40が、4つの組立用ボルト15上への懸架のための懸架準備の状態で示され、かつ図12bには懸架された状態で示されており、図12a及び図12bの側面図には、2つの棚用支持体1及び2つの組立用ボルト15のみが見えている。組立用ボルト15は、所定の間隔でキャビネット側壁(図示省略)内にねじ込まれていて、シャフト部18及び頭部17で以て突出している。懸架準備の状態(図12a)では、棚用支持体1のスライダー4はそれぞれ中間位置を占めている。
【0031】
図12aに示してあるように、棚40は、下方へ傾けられた後側、ここでは左側の端部で以て、後側、ここでは左側の組立用ボルト15上へ降下させられ、かつ後側、ここでは左側の棚用支持体1で以て、左側の組立用ボルト15に懸架され、つまり引っ掛けられて、左側の組立用ボルト15が、スライダー4の円形の開口部11内に係止されるようになっている(図3〜図5)。次いで、まだ傾けられたままの棚40が、後へ、つまり左側へ移動させられ、その結果、左側の不動の組立用ボルト15により、左側の棚用支持体1のスライダー4が、図12bに示された右側の終端位置へ横方向スライドされる。左側の棚用支持体1は、スライダー4の、図8及び図9に示された右側の終端位置では、懸架方向とは逆の方向で左側の組立用ボルト15に錠止(ロック)されている。左側の組立用ボルト15は、回動軸を形成しており、該回動軸(旋回軸)を中心として、棚40が、右側の端部を降下させるように下方旋回させられて、右側の棚用支持体1が右側の組立用ボルト15に懸架されて、つまり引っ掛けられ又は被せ嵌められて、右側の組立用ボルト15が、スライダー4の円形の開口部11内に係止されるようになっている(図3〜図5)。
【0032】
棚40の懸架された状態では、図12bに示してあるように、荷重41が、棚40の自由な右側、即ち前側の端部に作用するような場合には、スライダー4を用いて左側の組立用ボルト15に錠止されている棚用支持体1が、棚40が左側、即ち後側の組立用ボルト15から持ち上げられ、ひいては傾倒してしまうことを阻止するようになっている。
【符号の説明】
【0033】
1 棚用支持体、 2 挿入カップ体、 3 カップ開口部又は中空室、 4 スライダー、 5 横方向、 6 側壁部、 7 縦スリット、 8 横スリット、 9 つば、 10 縦スリット、 11 開口部、 12 係止突起部、 13 係止突起部、 14 係止凹部、 15 組立用ボルト、 16 ねじ部、 17 頭部、 18 シャフト部、 19 受容開口部若しくはカップ開口部、 20,21 案内突出部、 22,23 縁部、 30 目標破断箇所、 40 棚、 M カップ軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入カップ体を備えた棚用支持体であって、挿入カップ体が、1つの側壁部にT字形の懸架開口部を有しており、懸架開口部が、挿入カップ体のカップ軸線に対して平行に延びる縦スリットと、縦スリットに対して垂直に延びる横スリットとによって形成されており、縦スリットが、横スリットとは逆の側の端部で開いている形式のものに関する。更に本発明は、1つの棚を備える棚ユニットであって、棚が、両方の棚端部(前側の端部及び後側の端部)において両側に、つまり例えばキャブネットの側壁に取り付けられる一方の側と他方の側とにそれぞれ1つの棚用支持体を有している形式のものに関する。
【0002】
前記形式の棚用支持体は、収納キャビネット等(ラックや収納具等を含む)の2つの側壁間に、棚又は棚板、仕切り板又は引き出し支持板若しくは棚底板等を架け渡す、つまり懸架するために用いられるものである。このために、4つの棚用支持体が、棚の下面の対応する凹部(受容部)内に挿入され、次いで、棚がその棚用支持体で以てキャビネット側壁のピン若しくはボルトに懸架されるようになっている。
【0003】
公知技術により、まず片側で開いた懸架スリットを有する簡単な棚用支持体が知られており、棚用支持体が、棚の前側又は手前側及び後側又は奥側の棚端部においてそれぞれ両側で棚の下面に装着されるようになっている。このような簡単な棚用支持体においては欠点として、例えば前側の棚端部に高い荷重が掛かる場合に、後側の棚用支持体、ひいては後側の棚端部が、対応する後側の組立用ボルトから持ち上げられ、結果として、棚が傾倒してしまっている。
【0004】
懸架された棚の傾倒を避けるために、前側の棚端部と後側の棚端部とに互いに異なる棚用支持体を用いることが知られている。前側のための両方の棚用支持体(即ち、キャビネット背壁に最も近く位置する棚用支持体)が、ボルトの頭部の受容のために、片側の開いた1つの懸架スリットだけを有しているのに対して、後側のための棚用支持体(即ち、棚の見える前縁部に最も近く位置する棚用支持体)が、1つのT字形の懸架開口部を有しており、T字形の懸架開口部は、片側で開いた1つの懸架スリット(縦スリット)とこれに対して両側に延びる1つの横スリットとによって形成されている。棚は、まずその後側の棚用支持体で以て、より具体的には後側の棚用支持体の縦スリットで以て後側の組立用ボルトに懸架され、次いで後側へ滑らされ、つまりスライドされ、これにより、後側の組立用ボルトが今や横スリット内に位置しており、後側の棚用支持体が、懸架方向とは逆の方向で後側の組立用ボルトにロックされている。後側の組立用ボルトが、回動軸を形成しており、回動軸(旋回軸)を中心として、棚が、前側の端部を降下させるように、前側の棚用支持体をその縦スリットでもって組立用ボルトに引っ掛け、即ち被せ嵌めるまで下方旋回させられる。懸架された棚は、懸架方向とは逆の方向でロックされる後側のための棚用支持体によって傾倒不能に固定されるようになっている。しかしながら、前側及び後側の異なる種類の棚用支持体には、次のような欠点があり:
− 棚用支持体の装着に際して、前側の棚用支持体を前側の棚端部で棚の凹部内に装着し、かつ後側の棚用支持体を後側の棚端部で棚の凹部内に装着することに、常に注意が払われねばならない。棚用支持体を誤って装着してしまった場合には、棚は懸架されないか、或いは懸架された状態で前後にずらされてしまうことになる。誤って装着された棚用支持体を、改めて正しく装着するために抜き取ることは、手間と時間を必要とし、厄介である。
− 異なる2種類の棚用支持体の製造若しくは製作、並びに出荷すべきロット毎に棚用支持体が前側の棚用支持体と後側の棚用支持体との正確な対で出荷されるようになっているかをチェックする作業は、同様に時間とコストを必要とするものである。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の棚用支持体に改良を加えて、棚用支持体が、前側の棚用支持体としても、後側の棚用支持体としても用いられ、かつ懸架された棚の傾倒若しくはずれを確実に防止できるようにすることである。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の構成によれば、挿入カップ体内に、スライダーが、挿入カップ体の縦スリットに対して横方向又はほぼ垂直方向にスライド可能(移動可能)に支承されており、スライダーに、縦スリットが形成されており、スライダーの縦スリットが、挿入カップ体の縦スリットに対して平行に延びていて、挿入カップ体の横スリットとは逆の側の端部で開いており、かつスライダーの中間位置では、挿入カップ体の縦スリットと一緒に共有の1つの導入スリット又は差し込みスリットを形成しており、スライダーが、その中間位置で及び/又は、その中間位置の各側方へ横方向スライドされた終端位置(両方又は両側の各終端位置)で挿入カップ体に対して係止されるようになっている。
【0007】
本発明に基づく棚用支持体は、そのスライダーがその中間位置を占めている場合には、共有の導入スリットしか有しておらず、従ってその機能から、公知技術の前述の前側の棚用支持体に相当するものである。本発明に基づく棚用支持体は、そのスライダーがその中間位置から側方へ、つまり縦スリットに対して横方向へスライドされた、即ち横滑りされた終端位置を占めている場合には、T字形の懸架開口部を有しており、従ってその機能から、公知技術の前述の後側の棚用支持体に相当するものである。つまり、本発明に基づく棚用支持体は、−そのスライダー位置に対応して−選択的に前側の棚用支持体として、或いは後側の棚用支持体として用いられるようになっている。
【0008】
本発明に基づく棚用支持体を用いて棚を組み立てるためには、本発明に基づく4つの棚用支持体が、棚用支持体のために棚の下面に設けられた凹部内に挿入され、この場合に、全ての棚用支持体のスライダーはその中間位置を占めている。次いで、まず、後側の両方の棚用支持体がそれぞれその共有の導入スリットを介して、突出している後側のボルトに懸架される。次いで、棚は、後側のボルトがそれぞれ横スリットの前側の端部に位置決めされるまで、後へ移動させられ、これにより、後側の両方の棚用支持体が、懸架方向とは逆の方向で後側のボルトに錠止されている。後側のボルトを中心とした棚の旋回運動により、前側の両方の棚用支持体がそれぞれその共有の導入スリットを介して前側のボルトに懸架され、その結果、棚はその水平な終端位置を占める。棚の水平な終端位置では、前側の棚用支持体のスライダーが、その中間位置を占めており、後側の棚用支持体のスライダーが、横方向スライドされ、即ち錠止された終端位置を占めている。これにより、スライダーを用いて左側の組立用ボルトに錠止された棚用支持体は、棚が後側のボルトから持ち上げられ、ひいては傾倒してしまうことを阻止するようになっている。
【0009】
本発明の有利な形態によれば、スライダーの縦スリットは、挿入カップ体の横スリットの高さ位置で、円形の開口部で終わって、つまり円形の開口部へ続いて、即ち移行しており、円形の開口部は、組立用ボルトの特に遊びのない受容のために用いられるようになっている。有利には、スライダーの縦スリットは、円形の開口部への移行部の両方にそれぞれ、円形の開口部内に受容された組立用ボルトを係止するための係止突起部を有している。
【0010】
有利には、スライダーの縦スリットは、該縦スリットの開いている側の端部を起点として、逆の側の端部に向かって先細りになっていて、これにより導入テーパーを形成している。
【0011】
本発明の有利な別の形態によれば、挿入カップ体及びスライダーが、中間位置及び/又は横方向スライドされた終端位置での相互の係止のための係止突起部及び係止受容部を有している。係止突起部及び係止受容部は、挿入カップ体内へのスライダーの差し込みの際の案内としても用いられるようになっている。
【0012】
有利には、挿入カップ体が、その外周に周方向へ延びるリブを有しており、リブは、木材から成る棚に挿入カップ体を用いる場合には、戻り止め機能を有する鉤フックのように棚の孔壁内に押し込まれて食い込み、挿入カップ体を棚内に確実に固定するようになっている。別の形態若しくは追加的な手段として、挿入カップ体は、例えば挿入カップ体のカップ底部の領域に半径方向外側へ突出する係止ばね又は係止キーを有しており、係止ばね又は係止キーが、例えば挿入カップ体を薄板、特に金属薄板から成る棚に用いる場合に、棚の対応するスリット若しくは開口部内に係合して、挿入カップ体を棚内に確実に固定するようになっている。
【0013】
有利には、スライダーが、紛失しないように挿入カップ体内に保持されており、これにより、棚用支持体は、不適切な取り扱いによっても個別の部品が失われることのないまとめられたユニットとして提供されるようになっている。挿入カップ体内へのスライダーの差し込み若しくは押し込みに際して、スライダーが、例えば挿入カップ体に係止されるようになっている。
【0014】
本発明の特に有利な形態によれば、挿入カップ体とスライダーとは、1つの作業過程により、1つ又は複数の目標破断箇所を介して互いにつながった状態で成形されている。このような構成により、挿入カップ体とスライダーとを、まず、(目標破断箇所を介して)つながっている1つの射出成形部品として成形することが可能である。このような形態は、本発明に基づく棚用支持体の安価な成形を可能にするものである。次いで、挿入カップ体のカップ開口部内へのスライダーの押し込みにより、1つ又は複数の目標破断箇所が破断され、その結果、スライダーが問題なく挿入カップ体内へ差し込まれるようになっている。
【0015】
有利には、挿入カップ体及びスライダーが、プラスチックから射出成形により、それも個別の2つの部品として、或いは目標破断箇所を介してまずつながっている1つの射出成形部品として成形されている。
【0016】
本発明は更に、1つの棚及び4つの組立用ボルトを備える棚ユニット又は棚装置にも関するものであり、この場合に、棚が、両方の棚端部において両側にそれぞれ、前述の棚用支持体を有していて、該4つの棚用支持体で以て組立用ボルトに懸架されており、この場合に、一方の棚端部に設けられた棚用支持体のスライダーが、中間位置に位置決めされており、他方の棚端部に設けられた棚用支持体(他方の棚用支持体)のスライダーが、該スライダーの、一方の棚端部に設けられた棚用支持体(一方の棚用支持体)へ向けて横方向スライドされた終端位置に位置決めされており、終端位置では、棚用支持体(他方の棚用支持体)が、棚用支持体の懸架方向とは逆の方向で棚用支持体(他方の棚用支持体)の組立用ボルトに錠止されている。
【0017】
更なる利点が、図示の実施形態に示してある。本発明の前述の構成事項は、それぞれ単独に用いられ、或いは種々に組み合わせて用いられるものである。本発明は、図示して説明する実施形態に限定されるものではなく、図示の実施形態は例として挙げられているものである。
【0018】
次に、本発明を図示の実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】挿入カップ体及び中間位置に位置決めされたスライダーを備える本発明に基づく棚用支持体の斜視図である。
【図2】図1の棚用支持体の下面図である。
【図3】図1の棚用支持体の平面図であり、組立用ボルトが棚用支持体内に嵌め込まれている。
【図4】図3のIV−IV線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図6】終端位置へ横方向スライドされたスライダーを備える棚用支持体の、図1と同様の斜視図である。
【図7】図6の棚用支持体の下面図である。
【図8】図6の棚用支持体の平面図であり、組立用ボルトが棚用支持体内に嵌め込まれている。
【図9】図8のIX−IX線に沿った棚用支持体及び組立用ボルトの断面図である。
【図10】挿入カップ体とスライダーとが目標破断箇所を介して一体に成形される本発明に基づく棚用支持体の、第1図と同様の斜視図である。
【図11】図10の棚用支持体の別の方向からの斜視図である。
【図12】本発明に基づく棚用支持体を装備する棚の懸架されていない状態での概略的な側面図(図12a)及び懸架された状態での概略的な側面図(図12b)である。
【0020】
図1に示してある棚用支持体1は、棚の下面に設けられた孔内に差し込まれて、棚をキャビネット側壁の組立用ボルトに懸架するために用いられるものである。
【0021】
棚用支持体1は、カップ開口部3を有する挿入カップ体2及びスライダー4を含んでおり、スライダー4はカップ開口部3内に差し込まれ、かつカップ開口部3内に横方向スライド可能(二重矢印5)に支承されている。挿入カップ体2は、平らな1つの側壁部6に(平らな側壁部以外では円筒形の外周面を成している)、図1で上下逆さまに描かれるTの字の形(T字形)の懸架開口部を有しており、該懸架開口部(被せ嵌め開口部又は差し込み開口部)は、挿入カップ体2のカップ軸線Mに対して平行に延びる縦スリット7と、縦スリット7又はカップ軸線Mに対して垂直に延びかつ縦スリット7の両側に延在する横スリット8とによって形成されている。縦スリット7は、横スリット8とは逆の側の端部で、つまり図1で見て上方に向かって、開いて、即ち開口している。横スリット8は、挿入カップ体2の底部壁に対して平行に向けられている。両方の縦スリット7,10の幅は、互いに同じであり、若しくは少なくとも互いにほぼ同じである。挿入カップ体2は、図1で見て上側に、平らな側壁部6の部位を除いて、周囲に沿って延びるつば9を有しており、つば9は、挿入カップ体2を棚の孔内に差し込んだ状態では、棚下面に接触するようになっている。図1に示してあるように、スライダー4は、同じく中空体状又はカップ状に、しかも横断面をほぼ方形(長方形又は正方形)に形成されている。別の実施形態では、スライダー4は、プレートとして形成されていてよいものである。
【0022】
図1には、スライダー4は、中間位置で描かれており、中間位置では、スライダー4の上方に向かって開いている縦スリット10が、挿入カップ体2の縦スリット7と一緒に共有の1つの導入スリットを形成するようになっている。スライダー4の縦スリット10は、上方の開口側の端部を起点として下方へ、横スリット8の部位に達するまで先細りになっていて、横スリット8の高さで円形の開口部11に広げられている。先細り部から円形の開口部11への移行に基づき、スライダー4は、縦スリット10の両方の側に各1つの係止突起12を有している。図示の中間位置を起点として、スライダー4は、両方の側方へ各終端位置に横方向スライドされるようになっている。
【0023】
図2に示してあるように、スライダー4は、横方向5で互いに離間された2つの係止突起部13を有しており、係止突起部13は、中間位置では、挿入カップ体2の対応する各係止受容部若しくは係止凹部14内に係合している。別の実施形態又は追加的な手段として、スライダー4は、両方の終端位置で挿入カップ体2と係合するようになっており、このために、例えば係止突起部13が、挿入カップ体2の対応する部位に設けられた係止凹部内に係合するようになっている。
【0024】
図3〜図5は、棚用支持体1を、中間位置を占めるスライダー4と嵌め込まれた組立用ボルト15と一緒に示しており、組立用ボルト15は、ねじ部16及び頭部17、並びにねじ部16と頭部17との間の直径の減少されたシャフト部18を有している。スライダー4の占める中間位置において、組立用ボルト15が、そのシャフト部18でもって、挿入カップ体2及びスライダー4の共有の導入スリット内へ導入され、次いで引き続き円形の開口部11内まで移動させられて、そこで係止突起部12により係止されるようになっているのに対して、組立用ボルト15の頭部17は、同時にスライダー4の受容開口部若しくはカップ開口部19内に受容されるようになっている。
【0025】
更に図1及び図4に示してあるように、スライダー4は、上側に上方の2つの案内突起部20を有し、かつ下側にも下方の1つの案内突出部21を有しており、案内突起部20,21が、側壁部6の上側の縁部22若しくは下側の縁部23に沿って横方向に案内されるようになっており、このような構成により、スライダー4が紛失しないように挿入カップ体2内に保持されている。図5に示してあるように、下方の案内突出部21は、爪によって形成されており、該爪(戻り止め)は、挿入カップ体2内へのスライダー4の差し込みに際して、スライダー4の差し込み方向で、側壁部6の、段部により形成された下方の縁部23の背後に係合するようになっている。
【0026】
図6において、挿入カップ体2内に装着されたスライダー4は、中間位置から左側へ、スライダー4の左側の終端位置へ横方向スライドされており、該終端位置では、円形の開口部11が、挿入カップ体2の横スリット8の左側の端部と合致していて、挿入カップ体2の縦スリット7と横スリット8との間の移行部にあるエッジ24によって係合され、つまり部分的に閉じられている。図1に示してある中間位置における場合とは逆に、挿入カップ体2の縦スリット7とスライダー4の縦スリット10とにより形成された共有の導入スリットは、終端位置においては、横方向5で明らかに狭められている。図7に示してあるように、スライダー4の横方向スライドにより、係止突起部13と係止凹部14との間の係止が解除されるようになっている。
【0027】
図8及び図9は、棚用支持体1を、嵌め込まれた組立用ボルト15と一緒に示しており、この場合に、スライダー4、ひいては組立用ボルト15が左側の終端位置へ横方向スライドされている。組立用ボルト15は、懸架方向とは逆の方向で、挿入カップ体2のエッジ24によって円形の開口部11内にロックされている。図9に示してあるように、スライダー4の終端位置は、挿入カップ体2への上方の案内突出部20の側方の当接(ストッパー)によって規定されている。
【0028】
図10及び図11は、棚用支持体1を、製造状態で示しており、この場合に、挿入カップ体2とスライダー4とは、まず目標破断箇所30を介して一体に製造されている。この状態では、スライダー4は、挿入カップ体2の外側に、より正確には挿入カップ体2のカップ開口部3の上側に位置している。目標破断箇所30は、スライダー4の底部側と挿入カップ体2の周囲に沿って延びるつば9との間の結合ウエブとして形成されている。スライダー4を挿入カップ体2内に差し込むために、スライダー4が、カップ軸線Mの方向に挿入カップ体2内へ、目標破断箇所30の破断を伴って、図1に示す位置まで押し込まれる。
【0029】
棚(図示省略)の孔内又は凹部内における棚用支持体1の改良された保持のために、図1、図6、図10及び図11に示してあるように、挿入カップ体2の外周にリブ31が形成されており、該リブは、木材から成る棚の場合には、戻り止め機能を有する鉤フックのように棚の孔壁内に食い込むようになっている。挿入カップ体2は、別の実施形態として、或いは追加的な手段として、例えばカップ底部の領域に、半径方向外側へ突出する係止ばね又は係止キー(図示省略)を有しており、該係止ばね又は係止キーが、金属薄板から成る棚の場合に、棚の縁部に係合するようになっている。
【0030】
図12aには、4つの棚用支持体1を装備する棚40が、4つの組立用ボルト15上への懸架のための懸架準備の状態で示され、かつ図12bには懸架された状態で示されており、図12a及び図12bの側面図には、2つの棚用支持体1及び2つの組立用ボルト15のみが見えている。組立用ボルト15は、所定の間隔でキャビネット側壁(図示省略)内にねじ込まれていて、シャフト部18及び頭部17で以て突出している。懸架準備の状態(図12a)では、棚用支持体1のスライダー4はそれぞれ中間位置を占めている。
【0031】
図12aに示してあるように、棚40は、下方へ傾けられた後側、ここでは左側の端部で以て、後側、ここでは左側の組立用ボルト15上へ降下させられ、かつ後側、ここでは左側の棚用支持体1で以て、左側の組立用ボルト15に懸架され、つまり引っ掛けられて、左側の組立用ボルト15が、スライダー4の円形の開口部11内に係止されるようになっている(図3〜図5)。次いで、まだ傾けられたままの棚40が、後へ、つまり左側へ移動させられ、その結果、左側の不動の組立用ボルト15により、左側の棚用支持体1のスライダー4が、図12bに示された右側の終端位置へ横方向スライドされる。左側の棚用支持体1は、スライダー4の、図8及び図9に示された右側の終端位置では、懸架方向とは逆の方向で左側の組立用ボルト15に錠止(ロック)されている。左側の組立用ボルト15は、回動軸を形成しており、該回動軸(旋回軸)を中心として、棚40が、右側の端部を降下させるように下方旋回させられて、右側の棚用支持体1が右側の組立用ボルト15に懸架されて、つまり引っ掛けられ又は被せ嵌められて、右側の組立用ボルト15が、スライダー4の円形の開口部11内に係止されるようになっている(図3〜図5)。
【0032】
棚40の懸架された状態では、図12bに示してあるように、荷重41が、棚40の自由な右側、即ち前側の端部に作用するような場合には、スライダー4を用いて左側の組立用ボルト15に錠止されている棚用支持体1が、棚40が左側、即ち後側の組立用ボルト15から持ち上げられ、ひいては傾倒してしまうことを阻止するようになっている。
【符号の説明】
【0033】
1 棚用支持体、 2 挿入カップ体、 3 カップ開口部又は中空室、 4 スライダー、 5 横方向、 6 側壁部、 7 縦スリット、 8 横スリット、 9 つば、 10 縦スリット、 11 開口部、 12 係止突起部、 13 係止突起部、 14 係止凹部、 15 組立用ボルト、 16 ねじ部、 17 頭部、 18 シャフト部、 19 受容開口部若しくはカップ開口部、 20,21 案内突出部、 22,23 縁部、 30 目標破断箇所、 40 棚、 M カップ軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入カップ体(2)を備えた棚用支持体(1)であって、前記挿入カップ体(2)が、1つの側壁部(6)にT字形の懸架開口部を有しており、該懸架開口部が、カップ軸線(M)に対して平行に延びる縦スリット(7)と、該縦スリット(7)に対して垂直に延びる横スリット(8)とによって形成されており、前記縦スリット(7)が、前記横スリット(8)とは逆の側の端部で開いている形式のものにおいて、
前記挿入カップ体(2)内に、スライダー(4)が、前記縦スリット(7)に対して横方向にスライド可能に支承されており、前記スライダー(4)に、縦スリット(10)が形成されており、該縦スリット(10)が、前記挿入カップ体(2)の前記縦スリット(7)に対して平行に延びていて、前記挿入カップ体(2)の前記横スリット(8)とは逆の側の端部で開いており、かつ該スライダー(4)の中間位置では、前記挿入カップ体(2)の前記縦スリット(7)と一緒に共有の1つの導入スリットを形成するようになっており、前記スライダー(4)が、前記中間位置で及び/又は、該中間位置の両側へ横方向スライドされた終端位置で前記挿入カップ体(2)に対して係止されるようになっていることを特徴とする、棚用支持体。
【請求項2】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、前記挿入カップ体(2)の前記横スリット(8)の高さ位置で、円形の開口部(11)で終わっている請求項1に記載の棚用支持体。
【請求項3】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、円形の開口部(11)への移行部において両側にそれぞれ係止突起部(12)を有している請求項2に記載の棚用支持体。
【請求項4】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、該縦スリット(10)の開いている側の端部を起点として、逆の側の端部に向かって先細りになっている請求項1から3のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項5】
前記挿入カップ体(2)及び前記スライダー(4)が、前記中間位置及び/又は前記横方向スライドされた終端位置での相互の係止のための係止突起部(13)及び係止受容部(14)を有している請求項1から4のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項6】
前記縦スリット(7,10)の幅が、互いに同じであり、若しくは少なくとも互いにほぼ同じである請求項1から5のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項7】
前記スライダー(4)が、該スライダーの開いている側の端部に受容開口部(19)を有している請求項1から6のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項8】
前記挿入カップ体(2)が、外周に周方向へ延びるリブ(31)を有している請求項1から7のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項9】
前記挿入カップ体(2)が、半径方向外側へ突出する係止キーを有している請求項1から8のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項10】
前記スライダー(4)が、紛失しないように前記挿入カップ体(2)内に保持されている請求項1から9のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項11】
前記挿入カップ体(2)と前記スライダー(4)とが、1つの作業過程により、1つ又は複数の目標破断箇所(30)を介して互いにつながった状態で成形されている請求項1から10のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項12】
前記挿入カップ体(2)及び前記スライダー(4)が、プラスチックから射出成形により成形されている請求項1から11のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項13】
棚ユニットにおいて、該棚ユニットが、1つの棚(40)を備えており、該棚(40)が、両側で両方の棚端部にそれぞれ、請求項1から12のいずれか1項に記載の棚用支持体(1)を有しており、前記棚ユニットが更に4つの組立用ボルト(15)を備えており、該組立用ボルト(15)に、前記棚(40)が、該棚の前記4つの棚用支持体(1)で以て懸架されており、一方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)の前記スライダー(4)が、前記中間位置に位置決めされており、他方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)の前記スライダー(4)が、該スライダー(4)の、前記一方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)へ向けて横方向スライドされた終端位置に位置決めされており、該終端位置では、前記棚用支持体(1)が、該棚用支持体(1)の懸架方向とは逆の方向で該棚用支持体(1)の組立用ボルト(15)に錠止されていることを特徴とする、棚ユニット。
【請求項1】
挿入カップ体(2)を備えた棚用支持体(1)であって、前記挿入カップ体(2)が、1つの側壁部(6)にT字形の懸架開口部を有しており、該懸架開口部が、カップ軸線(M)に対して平行に延びる縦スリット(7)と、該縦スリット(7)に対して垂直に延びる横スリット(8)とによって形成されており、前記縦スリット(7)が、前記横スリット(8)とは逆の側の端部で開いている形式のものにおいて、
前記挿入カップ体(2)内に、スライダー(4)が、前記縦スリット(7)に対して横方向にスライド可能に支承されており、前記スライダー(4)に、縦スリット(10)が形成されており、該縦スリット(10)が、前記挿入カップ体(2)の前記縦スリット(7)に対して平行に延びていて、前記挿入カップ体(2)の前記横スリット(8)とは逆の側の端部で開いており、かつ該スライダー(4)の中間位置では、前記挿入カップ体(2)の前記縦スリット(7)と一緒に共有の1つの導入スリットを形成するようになっており、前記スライダー(4)が、前記中間位置で及び/又は、該中間位置の両側へ横方向スライドされた終端位置で前記挿入カップ体(2)に対して係止されるようになっていることを特徴とする、棚用支持体。
【請求項2】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、前記挿入カップ体(2)の前記横スリット(8)の高さ位置で、円形の開口部(11)で終わっている請求項1に記載の棚用支持体。
【請求項3】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、円形の開口部(11)への移行部において両側にそれぞれ係止突起部(12)を有している請求項2に記載の棚用支持体。
【請求項4】
前記スライダー(4)の前記縦スリット(10)が、該縦スリット(10)の開いている側の端部を起点として、逆の側の端部に向かって先細りになっている請求項1から3のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項5】
前記挿入カップ体(2)及び前記スライダー(4)が、前記中間位置及び/又は前記横方向スライドされた終端位置での相互の係止のための係止突起部(13)及び係止受容部(14)を有している請求項1から4のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項6】
前記縦スリット(7,10)の幅が、互いに同じであり、若しくは少なくとも互いにほぼ同じである請求項1から5のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項7】
前記スライダー(4)が、該スライダーの開いている側の端部に受容開口部(19)を有している請求項1から6のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項8】
前記挿入カップ体(2)が、外周に周方向へ延びるリブ(31)を有している請求項1から7のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項9】
前記挿入カップ体(2)が、半径方向外側へ突出する係止キーを有している請求項1から8のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項10】
前記スライダー(4)が、紛失しないように前記挿入カップ体(2)内に保持されている請求項1から9のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項11】
前記挿入カップ体(2)と前記スライダー(4)とが、1つの作業過程により、1つ又は複数の目標破断箇所(30)を介して互いにつながった状態で成形されている請求項1から10のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項12】
前記挿入カップ体(2)及び前記スライダー(4)が、プラスチックから射出成形により成形されている請求項1から11のいずれか1項に記載の棚用支持体。
【請求項13】
棚ユニットにおいて、該棚ユニットが、1つの棚(40)を備えており、該棚(40)が、両側で両方の棚端部にそれぞれ、請求項1から12のいずれか1項に記載の棚用支持体(1)を有しており、前記棚ユニットが更に4つの組立用ボルト(15)を備えており、該組立用ボルト(15)に、前記棚(40)が、該棚の前記4つの棚用支持体(1)で以て懸架されており、一方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)の前記スライダー(4)が、前記中間位置に位置決めされており、他方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)の前記スライダー(4)が、該スライダー(4)の、前記一方の棚端部に設けられた前記棚用支持体(1)へ向けて横方向スライドされた終端位置に位置決めされており、該終端位置では、前記棚用支持体(1)が、該棚用支持体(1)の懸架方向とは逆の方向で該棚用支持体(1)の組立用ボルト(15)に錠止されていることを特徴とする、棚ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【公表番号】特表2013−500090(P2013−500090A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521963(P2012−521963)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/DE2010/050037
【国際公開番号】WO2011/012122
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(304037201)ヘーフェレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】Haefele GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Adolf−Haefele−Str. 1, D−72202 Nagold,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/DE2010/050037
【国際公開番号】WO2011/012122
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(304037201)ヘーフェレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】Haefele GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Adolf−Haefele−Str. 1, D−72202 Nagold,Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]