説明

椅子における座の取付装置

【課題】 単純な構造であり、かつ簡単な操作により、回転椅子の座板を、支基上の座板取付金具に取り付ける。
【解決手段】 椅子の支基2上に配設された座板取付金具7の左右両側の前後に、大径孔16aと、この大径孔16aから前後方向いずれかから連設された大径孔16aよりも幅狭の長孔16bとからなる取付孔16を穿設し、座板18の下面における大径孔16aとの対向位置に、長孔16bの幅と同幅もしくは幅狭の下方を向く取付軸19を突設し、取付軸19の下端に設けた、大径孔16aより小径で、長孔16bの幅より幅広の鍔19aを、大径孔16aより挿通した状態から、取付軸19が長孔16b内に位置するように、座板18を、座取付金具7に対して前後移動させることによって、座板取付金具7に座板18を取り付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、椅子における座の取付装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の回転椅子には、背凭れに寄り掛かる座者の荷重により、背凭れが後方に揺動するとともに座も傾動し、かつ前後動するものがある。このような機構のものは、座者の座り心地を改善し、疲労感をなくす利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年のパソコン等OA機器の普及により、回転椅子において、上述のような座の傾動機構ばかりでなく、背凭れや肘掛けに対する座の前後位置を微妙に調節して、机上のパソコンのキーボード使用時における座者の背凭れ及び肘掛けに対する関係位置を最適に保ち得たいという要求が生じている。この要求に応ずるように、座の座板を、支基上の座板取付金具に取り付けるには、可成りの面倒な機構が必要となる。
【0004】本発明は、上述の問題点に鑑み、単純な構造であり、かつ簡単な操作により、回転椅子の座板を、支基上の座板取付金具に取り付けるようにすることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 椅子の支基上に配設された座板取付金具の左右両側の前後に、大径孔と、この大径孔から前後方向いずれかから連設された大径孔よりも幅狭の長孔とからなる取付孔を穿設し、座板の下面における前記大径孔との対向位置に、前記長孔の幅と同幅もしくは幅狭の下方を向く取付軸を突設し、該取付軸の下端に設けた、前記大径孔より小径で、前記長孔の幅より幅広の鍔を、前記大径孔より挿通した状態から、取付軸が前記長孔内に位置するように、前記座板を、座取付金具に対して前後移動させることによって、前記座板取付金具に前記座板を取り付けるようにする。
【0006】(2) 上記(1)項において、座板取付金具の取付孔の長孔を、大径孔の後方に連設し、座板の取付軸を、前記座板取付金具の取付孔に挿通移動させた状態において、前記座板の後部にストッパを取り付け、このストッパが、前記座板取付金具の後端に係合して、前記取付軸が前記取付孔の大径孔まで戻らないようにする。
【0007】
【発明の実施の形態】図1は、本発明装置の一実施形態を備えるキャスター付き回転椅子の分解斜視図で、キャスター付きの脚(1)の上端に、支基(2)が回転自在に装架されており、支基(2)の後部において左右方向に延びる横軸(3)には、背凭れ(4)の左右を支持し、かつ背凭れ(4)の下端から前方に延びる背杆(5)の先端に形成された、左右方向を向く軸筒(6)が軸着されている。
【0008】座板取付金具(7)の後部左右の軸受部(8)には、背凭れ(4)の背杆(5)の中間位置に設けられた耳片(9)が回動可能に収容されるとともに、軸受部(8)の外端には、肘掛け支柱(10)の下端部が取り付けられている。座板取付金具(7)の前端部には、下方に突出する耳片(11)が設けられており、耳片(11)は、支基(2)の前部に設けた長孔(12)に、ピンにより取り付けられている。
【0009】図1〜図3に示すように、座板取付金具(7)は、後部の左右方向に延びる横杆(13)の左右端部に、前後方向に延びる断面上向コ形のレール(14)を強固に溶接して構成されている。
【0010】横杆(13)は、鋼板を断面上向きコ字状に曲げ、その両端を水平方向外側に曲げてフランジとしたもので、両端部付近を上部から切り欠き、この切り欠き部分に、レール(14)をはめ込んで溶接してある。
【0011】レール(14)も、同様に鋼板を断面上向きコ字状に曲げて形成してなり、その内側端は、水平に曲げてフランジ(14a)を形成しており、フランジ(14a)の前端部付近には、多数段の凹溝(15)(図示の場合6段)が、前後方向に列設されている。この凹溝(15)が、後述する座板の突起に嵌合する被係合部を構成している。
【0012】レール(14)の前部及び後部において、その底部には、大径孔(16a)とこれに引き続いて後方に向かって延びる小径で長さの長い長孔(16b)とからなる取付孔(16)が穿設されている。なお、レール(14)の前部の内側には、前述の耳片(11)が設けられている。
【0013】図1に示す座(17)の下部の座板(18)の裏面には、図4に示すように、レール(14)の外側の立ち上がり部の内側に接する位置に、前後方向に長く延びる突条(20)が設けられている。
【0014】また、図4及び図5に示すように、座板取付金具(7)のレール(14)に穿設した取付孔(16)に対応して突設した鍔付き取付軸(19)が、下方に向けて突設されている。この取付軸(19)の鍔(19a)の径は、取付孔(16)の大径孔(16a)よりも若干小径とされている。また、取付軸(19)の径は、長孔(16b)の幅と同じか、それよりも若干小径とされている。なお、図4には、座板取付金具(7)の取付孔(16)の位置も、併せて示してある。
【0015】座板(18)の裏面の前部付近には、座板取付金具(7)のレール(14)の凹溝(15)に対応する左右位置に、係合部を構成する2つの突起(21a)を備える突起部材(21)が取り付けられている。
【0016】さらに、図4及び図5に示すように、座板(18)の後部における座板取付金具(7)のレール(14)に対応する左右方向位置には、ストッパ(22)が取り付けられる。
【0017】座板(18)の下面に突設された突条(20)を、レール(14)の外側の立ち上がり部の内側に接するようにして挿入するとともに、取付軸(19)の鍔(19a)を、座板取付金具(7)の取付孔(16)の大径孔(16a)に上方より挿通する。このような挿通状態から、座板(18)を若干上方に持ち上げ加減としながら後方に引くと、座板(18)の突条(20)はレール(14)により案内されて、座板(18)は後方に移動し、取付軸(19)は取付孔(16)の長孔(16b)にはまりこむ。手を離すと、座板(18)の突起(21a)は、凹溝(15)に嵌合する。
【0018】この状態で、ストッパ(22)を座板(18)の後部に固定すると、座板(18)を同様にして前方に移動させても、このストッパ(22)がレール(14)の後端に当接して、取付軸(19)が取付孔(16)の大径孔(16a)まで達せず、従って、座板(18)が座板取付金具(7)から外れなくなる。
【0019】座(17)の前後位置の調節に当たっては、図6に示すように、座板(18)の前端を点線矢印により示すようにやや持ち上げ、座板(18)の下面の突起(21a)を、座板取付金具(7)のレール(14)の凹溝(15)から離す。取付軸(19)は、これを可能とするに充分な長さとされている。
【0020】この状態で、図6の上部に点線矢印により示すように、座板(18)を前後方向に移動させて所望位置とし、座板(18)の前部を下ろすと、突起(21a)は、新たた凹溝(15)と係合し、その位置で係止される。
【0021】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、単純な機構、かつ簡単な操作で、容易に座板を座板取付金具に取り付けることができる。
【0022】請求項2記載の発明によれば、ストッパを取り外さない限り、座板は座板取付金具から外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一実施形態を備える回転椅子の分解斜視図である。
【図2】図1に示す椅子の座板取付金具の斜視図である。
【図3】同じく、座板取付金具の平面図である。
【図4】同じく、座板の裏面図である。
【図5】同じく、座板取付金具と座板とを、離した状態で示す側面図である。
【図6】同じく、座板取付金具と座板とを、結合した状態で示す側面図である。
【符号の説明】
(1)脚
(2)支基
(3)横軸
(4)背凭れ
(5)背杆
(6)軸筒
(7)座板取付金具
(8)軸受部
(9)耳片
(10)肘掛け支柱
(11)耳片
(12)長孔
(13)横杆
(14)レール
(14a)フランジ
(15)凹溝(被係合部)
(16)取付孔
(16a)大径孔
(16b)長孔
(17)座
(18)座板
(19)取付軸
(19a)鍔
(20)突条
(21)突起部材
(21a)突起(係合部)
(22)ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 椅子の支基上に配設された座板取付金具の左右両側の前後に、大径孔と、この大径孔から前後方向いずれかから連設された大径孔よりも幅狭の長孔とからなる取付孔を穿設し、座板の下面における前記大径孔との対向位置に、前記長孔の幅と同幅もしくは幅狭の下方を向く取付軸を突設し、該取付軸の下端に設けた、前記大径孔より小径で、前記長孔の幅より幅広の鍔を、前記大径孔より挿通した状態から、取付軸が前記長孔内に位置するように、前記座板を、座取付金具に対して前後移動させることによって、前記座板取付金具に前記座板を取り付けるようにしたことを特徴とする椅子における座の取付装置。
【請求項2】 座板取付金具の取付孔の長孔を、大径孔の後方に連設し、座板の取付軸を、前記座板取付金具の取付孔に挿通移動させた状態において、前記座板の後部にストッパを取り付け、このストッパが、前記座板取付金具の後端に係合して、前記取付軸が前記取付孔の大径孔まで戻らないようにした、請求項1記載の椅子における座の取付装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2002−136385(P2002−136385A)
【公開日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−335424(P2000−335424)
【出願日】平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】