説明

椅子の張地の取付構造

【課題】部品同士を連結する連結部など構造上又はデザイン上張地で覆わずに露出させる部分の存在に制約を受けることなく椅子の部品の表裏両面全体を覆い且つ張地の縁端全体に亘って弛みや縒れや捲れを防止することを可能にする。
【解決手段】袋状に形成されてヘッドレスト10の基板11及びクッション材12に被せられる張地1の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材2と、基板11のうち張地1で覆わずに露出させる部分である背凭れ連結部13を挟んで基板11に形成された一対の凹溝3,3とを有し、縁端部材2を凹溝3に嵌め入れて係止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の張地の取付構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、ヘッドレストや背凭れ等の椅子の部品の表面を覆う張地を取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子のヘッドレストや背凭れなどの表面を覆う張地の取付構造として従来からよく用いられているものとして、図10に示すように、背凭れの基板101の表面に設けられたクッション材を張地102で覆い、該張地102の周縁部に取り付けられた可撓性の締付紐条103を両端部103aを引っ張って基板101の裏面側で緊張させて張地102の周縁部をすぼめるようにするものがある(特許文献1)。
【0003】
また、特許文献1の張地の取付構造では基板101の裏面は張地で覆われていない部分があるが、基板の表裏の両面全体を張地で覆う構成のものも従来から良く用いられている。この場合には、具体的な構成としては、張地を袋状に形成すると共に当該張地を基板に被せた後に張地の開口部をチャックで閉じるようにするものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−160894号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の張地の取付構造は、張地102で覆う基板101の周縁部に当該基板101と他の部品とを連結する支柱・支桿等が結合されている場合には当該支柱・支桿等が障害になってしまうので用いることができない。言い換えれば、特許文献1の張地の取付構造を採用した場合には、張地で覆う範囲には当該張地で覆われる部品と他の部品とを連結する支柱・支桿等を設けるようにすることができず、デザインや構造上の大きな制約になってしまう。
【0006】
また、袋状に形成した張地を用いて基板の表裏の両面全体を覆う場合には、部品同士を連結する連結部など構造上又はデザイン上張地で覆わずに露出させる部分では袋の開口部をチャックで閉じることができず開口部縁端部分を固定することができないので、当該部分において張地が弛んだり縒れたり捲れたりなどして外観を損なうと共に張地が痛んで快適な使用を妨げる原因となってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、部品同士を連結する連結部など構造上又はデザイン上張地で覆わずに露出させる部分の存在に制約を受けることなく椅子の部品の表裏両面全体を覆い且つ張地の縁端全体に亘って弛みや縒れや捲れを防止することができる椅子の張地の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の椅子の張地の取付構造は、袋状に形成されて椅子の部品に被せられる張地の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材と、椅子の部品のうち張地で覆わずに露出させる部分を挟んで椅子の部品に形成された一対の凹溝とを有し、縁端部材を凹溝に嵌め入れて係止するようにしている。
【0009】
したがって、この椅子の張地の取付構造によると、袋状の張地の開口部縁端に取り付けられた一対の縁端部材を椅子の部品の張地で覆わない部分を挟んで形成された一対の凹溝に嵌め入れて係止するようにしているので、張地で覆わずに露出させる部分がいずれの場所にあったとしても張地の縁端全体が凹溝に固定される。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の椅子の張地の取付構造において、前記一対の凹溝が平行であるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の椅子の張地の取付構造によれば、椅子の部品の張地で覆わずに露出させる部分がいずれの場所にあったとしても張地の縁端全体を凹溝に固定することができるので、椅子の部品の表裏両面全体を覆い且つ張地の縁端全体に亘って弛みや縒れや捲れを防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1から図6に、本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、本発明の椅子の張地の取付構造を図1〜3に構造を示す椅子のヘッドレスト10に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0014】
本実施形態の椅子のヘッドレスト10は、正面視ほぼ矩形の板状の基板11と、当該基板11の表面に取り付けられたクッション材12と、基板11の下端から延出して椅子の背凭れの上部に取り付けられる背凭れ取付部14が結合する背凭れ連結部13とを備えている。そして、本実施形態のヘッドレスト10においては、背凭れ連結部13は張地1で覆わずに露出させる必要がある。
【0015】
そして、本実施形態の椅子の張地の取付構造は、袋状に形成されてヘッドレスト10の基板11及びクッション材12に被せられる張地1の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材2,2と、基板11のうち張地1で覆わずに露出させる部分である背凭れ連結部13を挟んで基板11の下端面に形成された一対の凹溝3,3とを有し、縁端部材2を凹溝3に嵌め入れて係止するものである。
【0016】
本発明において用いられる張地1は、椅子の部品の表皮部材として必要とされる強度並びに使用の際と部品に被せて取り付ける際とに必要とされる伸縮性を有するものであれば、特定の種類の素材に限定されるものではない。
【0017】
張地1は開口部を有する袋状に形成される。そして、当該開口部の縁端に縁端部材2が取り付けられる。
【0018】
縁端部材2は開口部の大きさに合わせた長さを有する長尺の薄板状に形成される。また、縁端部材2は、張地1を基板11及びクッション材12に被せた際に基板11の表面側の開口部の縁端と裏面側の開口部の縁端とに一対のものとして取り付けられる。すなわち、縁端部材2は開口部の全体に亘って取り付けられる。なお、縁端部材2の取付方法は特定の方法に限定されるものではなく、具体的には例えば縫合、接着、溶着等によって取り付けられる。
【0019】
縁端部材2は少なくとも幅方向には撓み難い程度の剛性を発揮する素材によって形成される。具体的には例えば樹脂によって形成される。なお、長さ方向(即ち長尺方向)には撓んでも構わない。
【0020】
ヘッドレスト10の基板11には、張地1で覆わずに露出させる部分である背凭れ連結部13が形成されている下端面に、基板11の長手方向に、背凭れ連結部13を挟んで、即ち背凭れ連結部13に対して基板11の表面側と裏面側とにほぼ平行な二本の凹溝3,3が形成される。
【0021】
凹溝3は、張地1の開口部の縁端部分と当該縁端部分に取り付けられた縁端部材2とが重ねられた状態で嵌められると共に一端嵌められた縁端部分と縁端部材2とが簡単には外れない程度の幅に調整されて形成される。
【0022】
そして、本発明の椅子の張地の取付構造においては、張地1の開口部を拡げて基板11及びクッション材12の上部側から張地1を被せ、開口部の縁端部分の縁端部材2を引きながら当該縁端部材2の部分を内側に折り返して縁端部材2を凹溝3に嵌め入れる。背凭れ連結部13に対して基板11の表面側の凹溝3と裏面側の凹溝3とについてこの作業を行うことによって張地1が基板11及びクッション材12に被せられた状態で固定される。
【0023】
以上のように構成された本発明の椅子の張地の取付構造によれば、張地1で覆わない部分である背凭れ連結部13を挟んで形成された一対の凹溝3,3に袋状の張地1の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材2,2を嵌め入れて係止するようにしているので、張地1で覆わずに露出させる部分がいずれの場所にあったとしても開口部における張地1の縁端全体を凹溝3に固定することができる。
【0024】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、図1〜3に構造を示すヘッドレスト10を例に挙げて説明したが、本発明の椅子の張地の取付構造が適用され得る椅子の部品はこのヘッドレスト10に限られるものではない。具体的には例えば、基板11とクッション材12とからなるものでなくても構わないし(例えば、枠状のフレームのみからなるもの)、背凭れ連結部が他の形態(例えば、背凭れに連結するための二本の円柱状の支柱が下端に直接結合している形態)のヘッドレストであっても構わないし、背凭れ連結部が裏面に設けられているヘッドレストであっても構わない。なお、他の部品と連結するための連結部が裏面に設けられている場合には、当該連結部を挟む一対の凹溝を裏面に設けるようにすれば良い。
【0025】
また、本実施形態では、ヘッドレスト10に本発明の椅子の張地の取付構造を適用するようにしているが、本発明の椅子の張地の取付構造が適用され得る椅子の部品はヘッドレストに限られるものではなく、背凭れに適用するようにしても良いし、座に適用するようにしても良い。椅子の背凭れに本発明の椅子の張地の取付構造を適用する場合の実施形態を図7〜9に示す。
【0026】
この実施形態の背凭れ20は、正面視ほぼ矩形で側面視く字形の枠状の背凭れフレーム21と、当該背凭れフレーム21の下側枠の表面に設けられて椅子の座部と連結する側方連結部22及び中央連結部23とを備えている。そして、この実施形態の背凭れ20においては、座部と連結させるために側方連結部22及び中央連結部23は張地1で覆わずに露出させる必要がある。
【0027】
そして、この実施形態の椅子の張地の取付構造は、袋状に形成されて背凭れ20の背凭れフレーム21に被せられる張地1の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材2,2と、背凭れフレーム21のうち張地1で覆わずに露出させる部分である側方連結部22及び中央連結部23を挟んで背凭れフレーム21の下側枠に形成された一対の凹溝3,3とを有し、縁端部材2を凹溝3に嵌め入れて係止するものである。
【0028】
この実施形態の場合には、一対の凹溝3,3は、一方は背凭れフレーム21の下側枠の表面に形成され、他方は背凭れフレーム21の下側枠の下面に形成される。この実施形態の場合も、張地1を被せる部品である背凭れフレーム21の周面を連続する面として考えて一対の凹溝3,3は張地1で覆わずに露出させる部分である側方連結部22及び中央連結部23を挟んでいる。このように、本発明は、椅子の部品の周面に沿って考えたときに一対の凹溝3,3を張地1で覆わずに露出させる部分を挟んで形成するようにしたものである。すなわち、本発明においては、一対の凹溝3,3は椅子の部品の同一側面に形成されている必要はなく、例えば、この実施形態のように、一方は部品の下端面に形成され、他方は部品の表面に形成されていても良い。
【0029】
そして、この実施形態の場合も、張地1で覆わずに露出させる部分である側方連結部22及び中央連結部23があるにも拘わらず、開口部における張地1の縁端全体を凹溝3に固定することができる。
【0030】
また、本発明の椅子の張地の取付構造を椅子のヘッドレスト10に適用する実施形態と背凭れ20に適用する実施形態とのどちらにおいても、凹溝3には、溝の壁が途切れている部分3aと当該部分3aに挟まれる爪3bとが設けられるようにしているが、このような構成は本発明において必須の構成ではない。すなわち、凹溝3全体に亘って壁が途切れることなく連続したものであっても良い。なお、実施形態のように溝の壁が途切れている部分3aを設けることによって、当該部分3aにおいて縁端部材2を押さえ付けながら凹溝3に押し込んだり引き出したりすることができるようになるので、張地1を取り付ける場合に凹溝3に縁端部材2を嵌め入れる作業が容易になると共に張地1を交換するために取り外す場合に凹溝3から縁端部材2を取り外す作業が容易になるという利点がある。
【0031】
また、本実施形態では、一対の凹溝3をほぼ平行に配置し且つそれぞれの凹溝3をほぼ直線状に形成するようにしているが、本発明の椅子の張地の取付構造における一対の凹溝は、平行に配置されているものに限られるものではなく、また、直線若しくはほぼ直線状のものに限られるものではなく、椅子の部品のうち張地で覆わずに露出させる部分の周囲の形状に合わせて相互に平行でなくても良いし、例えば湾曲させても良いし、凹凸を有する形状にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けていない状態のヘッドレストの正面図である。
【図2】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けていない状態のヘッドレストの下端面図である。
【図3】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けていない状態のヘッドレストの縦断面図である。(A)は図1の8−8’断面図である。(B)は図1の9−9’断面図である。
【図4】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けた状態のヘッドレストの正面図である。
【図5】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けた場合の縁端部材の取付状況を示すヘッドレストの下端面図である(すなわち、張地を図示せずに縁端部材の取付状況を説明する図である)。
【図6】本発明の椅子の張地の取付構造の実施形態の一例を示す図で、張地を取り付けた状態のヘッドレストの縦断面図である。(A)は図4の8−8’断面図である。(B)は図4の9−9’断面図である。
【図7】本発明の椅子の張地の取付構造の他の実施形態を示す図で、張地を取り付けた場合の縁端部材の取付状況を示す背凭れの正面図である(すなわち、張地を図示せずに縁端部材の取付状況を説明する図である)。
【図8】本発明の椅子の張地の取付構造の他の実施形態を示す図で、張地を取り付けた場合の縁端部材の取付状況を示す背凭れの下端面図である(すなわち、張地を図示せずに縁端部材の取付状況を説明する図である)。
【図9】本発明の椅子の張地の取付構造の他の実施形態を示す図で、張地を取り付けた状態の背凭れの縦断面図(図7の7−7’断面図)である。
【図10】従来の張地の取付構造を示す背凭れの背面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 張地
2 縁端部材
3 凹溝
10 ヘッドレスト
11 基板
12 クッション材
13 背凭れ連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成されて椅子の部品に被せられる張地の開口部の縁端に取り付けられた一対の縁端部材と、前記椅子の部品のうち前記張地で覆わずに露出させる部分を挟んで前記椅子の部品に形成された一対の凹溝とを有し、前記縁端部材を前記凹溝に嵌め入れて係止することを特徴とする椅子の張地の取付構造。
【請求項2】
前記一対の凹溝が平行であることを特徴とする請求項1記載の椅子の張地の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−94453(P2010−94453A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270267(P2008−270267)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】