説明

椅子型マッサージ機

【課題】座部前方に対して宙に浮いた状態で足揉み装置が設けられた椅子型マッサージ機において、足揉み装置に許容を越える下向き荷重が負荷したとしても破損や故障に至らないようにする。
【解決手段】椅子型マッサージ機1は、座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3と、座部2の前部に設置された足揉み装置5と、この足揉み装置5を使用位置に進出させると共に収納位置に退行させる進退機構15と、この進退機構15を駆動する電動モータ35(駆動源)と、を備え、進退機構15には、使用位置で保持された足揉み装置5に許容を越える下向き荷重である過荷重が付与された際に、当該過荷重が進退機構15に伝達するのを防ぐための緩衝機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足揉み装置を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
足揉み装置が備えられた椅子型マッサージ機としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
この椅子型マッサージ機は、座部の後部に背もたれ部、前部に足揉み装置をそれぞれ有しており、背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ機構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ機構が内蔵されている。また、背もたれ部は前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【0003】
このような椅子型マッサージ機は、マッサージを行うために利用されるだけでなく、単なる椅子として利用されることも多い。特に、この種の椅子型マッサージ機では、座部等に柔らかいクッションを内蔵している場合が多く、また、背もたれ部にリクライニング機能を有していることからソファとしての利用にも適したものとなっている。
しかしながら、特許文献1の足揉み装置については、その正面に保持溝を形成したものとなっているため、マッサージ機能を使わない場合でも保持溝に下肢を嵌め込まなければならず、これによって足の自由な動きが制限され、楽な体勢をとることが困難となっていた。また、椅子の見栄えを損ねる一因ともなっていた。
【0004】
そこで、このような不都合を回避すべく、特許文献2のような技術を本願出願人は既に開発している。
この椅子型マッサージ機は、足揉み装置を使用位置と座部の下方に内蔵させる収納位置とに移動可能な押引機構を有しており、この押引機構は、椅子型マッサージ機の両側に設置されているガイドレール、ガイドレールに沿って出入りする押引ロッド、押引ロッドに連結されたキャリッジ板を有し、このキャリッジ板に足揉み装置がピン接続されている。
そのため、足揉み装置を使用位置に位置させた上で、足揉み装置の正面(マッサージ面)と後面(フットレスト面)とを回転切換自在としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−238963号公報
【特許文献2】特開2007−75590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の如く、特許文献2に記載の椅子型マッサージ機では、足揉み装置は、座部の前方で且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である「使用位置」と、座部の下方に形成された「収納位置」との間を移動するようになっている。
最近では、足揉み時のリラックス感を高めるために、使用位置において足揉み装置を床面から上昇させ、宙に浮かせるようにすることが提案されるようになっている。この場合、足揉み装置を使用位置に保持させておくとき(宙に浮かせておくとき)に、この足揉み装置の上に子供がいたずらで乗ったり、不注意で大人が腰掛けたり、或いは荷物を置いたりすることを予測しておく必要がある。
【0007】
すなわち、足揉み装置に対して「過荷重」、すなわち座部に着座した使用者が足揉み装置上へ下肢を預け置いた場合に、当該足揉み装置に作用する荷重を許容荷重とするとき、それを遙かに越えるような荷重が負荷するおそれがある。このようになると、足揉み装置を支持している部分や押引機構などが破損したり、押引機構が故障したりすることがある。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、足揉み装置が使用位置に保持されている際(宙に浮いているとき)に、足揉み装置に対して許容を越える下向き荷重が負荷したとしても破損や故障に至らないように構成されている椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る椅子型マッサージ機は、座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設けられた足揉み装置と、前記足揉み装置を座部前方で宙に浮いた使用位置と座部下方の収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ機において、前記進退機構又は足揉み装置と進退機構とを連結する部分には、使用位置で保持された足揉み装置に許容を越える下向き荷重である過荷重が付与された際に、当該過荷重が進退機構に伝達するのを防ぐための緩衝機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記進退機構は、軸心を前後方向へ向けて前後動する推進軸を有し、当該推進軸の前後動で足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動可能になっており、前記緩衝機構は、前記推進軸に設けられて過荷重を吸収する直線ダンパ手段を有するとよい。
また好ましくは、前記進退機構は、軸心を左右方向へ向けて回動する回動軸を有し、当該回動軸の回動で前記足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動可能になっており、前記緩衝機構は、前記回動軸に設けられて過荷重を吸収する回動ダンパ手段を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る椅子型マッサージ機によれば、足揉み装置が使用位置に保持されている際(宙に浮いているとき)に、足揉み装置に対して許容を越える下向き荷重が負荷したとしても破損や故障に至らない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る椅子型マッサージ機の第1実施形態を一部内部透視状態にして示した側面図である。
【図2】図1の状態から足揉み装置を使用位置へ動作させた状態にして示した側面図である。
【図3】図2のA矢視図(下から見た状態の斜視図)である。
【図4】足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態を示した側面図である。
【図5】通常状態における揺動駆動部の断面図である。
【図6】連結切断機構が作動した際における揺動駆動部の断面図である。
【図7】本発明に係る椅子型マッサージ機の第2実施形態についてその主要部(回動ダンパ)周辺を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4は、本発明に係る椅子型マッサージ機1の第1実施形態を示している。なお、図1及び図2が全体的な側面図であり、その他の図では説明の便宜上、必要に応じて構造の一部を省略して描いてある。
椅子型マッサージ機1は、座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有しており、座部2の前部には、この座部2に着座した使用者の下肢(特にふくらはぎ)を揉みマッサージする足揉み装置5が設けられている。
【0013】
図1及び図2に示すように、座部2の下部には、この椅子型マッサージ機1を床面Fへ設置するための脚フレーム6が設けられており、この脚フレーム6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。
また座部2の両側を挟むようにしてアームレスト7が設けられており、これらアームレスト7によって脚フレーム6が外から見えないように隠されている。
なお、以下の説明において、図1の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図1の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図1の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、椅子型マッサージ機1に座った使用者から見たものと一致する。
【0014】
座部2は使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さを有している。背もたれ部3は、その下端部が座部2の後部又は脚フレーム6の後部に対して前後揺動自在な状態に枢支されている。この背もたれ部3は、脚フレーム6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構(図示略)により、リクライニング可能となっている。
背もたれ部3の内部には、揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行う背部用マッサージ機構(図示略)が上下移動自在に設けられている。
足揉み装置5は、正面視すれば略四角形状を呈し、側面視すれば丸みを帯びた三角形状を呈するような箱形に形成されている。足揉み装置5の正面には、使用者の下肢(左右の足)を嵌め入れ可能にする左右一対の保持溝10,10が形成されている。
【0015】
各保持溝10の内部対向面(嵌め入れられた片方の足を挟むようにする両側)には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置が内蔵されている。この下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成としたりすることができる。
座部2の下方(脚フレーム6の内部)には進退機構15が設けられており、この進退機構15を介して、座部2側(脚フレーム6)と足揉み装置5とが連結される構成となっている。この進退機構15が前方へ向けて進出動作すると、足揉み装置5は座部2の前方で床面Fから浮き上がり、且つ使用者の下肢をマッサージ可能な使用位置U(図2参照)に進む。また、その後、進退機構15が後方へ向けて退行動作すると、足揉み装置5は座部2の下方に形成された収納位置P(図1参照)に収納されるものとなっている。
【0016】
図4(d)は足揉み装置5の収納状態(収納位置P)であり、図4(a)は足揉み装置5の使用状態(使用位置U)であり、図4(b)〜図4(c)は収納状態と使用状態との切り替わりの様子(中途状態)を示している。
これら図4(a)〜図4(d)から明かなように、進退機構15は、リンク20と、揺動駆動部21と、転動輪22とを有している。詳細は後述するものの、揺動駆動部21は、電動モータ35と、電動モータ35を駆動源として伸縮動作する伸縮機構36とから構成されている。さらに、揺動駆動部21の内部には、電動モータ35(駆動源)と伸縮機構36との連結状態を一時的に遮断する連結切断機構120が設けられている。
【0017】
なお、座部2を支持している脚フレーム6には、この椅子型マッサージ機1の設置場所を全体として移動させる場合に、軽快な移動ができるようにするため、床面設置部分(足揉み装置5の底面)の後端に対して左右一対の移動用車輪23が設けられている。また、椅子型マッサージ機1の使用時など、移動させないときにおいてこれら移動用車輪23を床面Fから浮き上げ、設置安定性を保持させるために、床面設置部分の前後・左右の四箇所に着床部材24が設けられている。
着床部材24は、振動吸収性と床面Fに対する滑りにくさとを兼備する硬質ゴム等で形成するのが好適である。
【0018】
一方、足揉み装置5は、底面支持枠と背面支持枠とが側面視L型を呈するように組まれた移動フレームにより、装置全体に剛性が保たれるように支持されている。
リンク20は、座部2の下部(脚フレーム6内の上部側)に設けられる定置枢支部32と、足揉み装置5の背面上部(移動フレームにおける背面支持枠の上部)に設けられる移動枢支部(軸部)33との間に連結されている。
これら定置枢支部32や移動枢支部33は、軸心を左右方向へ向けた回動軸まわりでリンク20を相対回動自在に保持するようになったものである。そのため、座部2に対して足揉み装置5が動作するという観点で言えば、このリンク20は、定置枢支部32を支点として、移動枢支部33が前後方向に揺動自在となされたものである。
【0019】
図3に示すように、定置枢支部32は、座部2の左右方向中央部に設けられており、また移動枢支部33は、足揉み装置5の左右方向中央部に設けられている。
図3に示すように、リンク20は、左右方向で所定間隔をおいて並行させ、互いに連結した2本のリンク構成杆34により構成され、剛性の高い枠形に形成させてある。リンク構成杆34としての本数は特に限定されるものではない。
またリンク20は側面視C型にカーブする形状に形成されている。すなわち、足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pとされている状態(図4(d)の状態)で説明すると、リンク20は、定置枢支部32から一旦、後方へ延びるようになされ、その後、足揉み装置5の正面上部から頂部を経由して背面上部側へ回り込むように下方へUターンし、その後更に、前方へ延びるようになってから移動枢支部33へ至る形状となっている。
【0020】
図4(d)に示したように、定置枢支部32の軸心から床面Fまで最短距離で結んだ直線を最大半径Rとおく仮想円Dを考えるとき、リンク20は、定置枢支部32を中心に、この仮想円Dの範囲内に全て収まるような大きさで形成されたものとなっている。そのため、リンク20が定置枢支部32を中心に前後揺動しても、このリンク20は床面Fに接触することはない。
このリンク20は、足揉み装置5が収納位置Pに位置するとき(図4(d))が可動揺動範囲の後側となり、足揉み装置5が使用位置Uに位置するとき(図4(a))が可動揺動範囲の前側となるようにして前後揺動する。なお、この可動揺動範囲とは、足揉み装置5が収納位置Pと使用位置Uとの間を移動するときにリンク20が揺動する領域を言う。
【0021】
足揉み装置5の背面上部に設けられる移動枢支部33とリンク20との連結部には、回動角制限部材50が設けられている。
この回動角制限部材50は、リンク20が前方揺動することで移動枢支部33が上昇し、足揉み装置5の背面(足揉み装置5の背面支持枠)とリンク20の前端部との角度θが所定値に達したときに、この角度θを維持させたまま、前記転動輪22(要するに足揉み装置5全体)を床面Fから浮き上がらせるようにするためのものである。
ここにおいて、所定角度θとは、足揉み装置5の正面が、座部2の上面と略面一な水平状態(多少の段差は含む)となるか、又は前下がりの折曲状態で連なる形態が実現可能なものとする。
【0022】
言い換えるならば、図2及び図4(a)に示される如く、回動角制限部材50は、転動輪22を床面Fから浮き上がらせる瞬間に、移動枢支部33とリンク20とを回動自在に連結している回動軸心の直下位置より前方で足揉み装置5側へ係合して、移動枢支部33とリンク20とがそれ以上回動しないようにする。この回動角制限部材50は、移動枢支部33とリンク20とを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材としてある。
揺動駆動部21は、リンク20に対して前後揺動の駆動力を付与するものであって、本実施形態では、電動モータ35を駆動源として伸縮動作する伸縮機構36を備えたものとしてある。伸縮機構36には、例えばスクリュウ軸(ネジ軸)を用いた機構や、ラックとピニオンギヤとの組み合わせ機構などを採用可能である。
【0023】
定置枢支部32においてリンク20の後端を回動自在に保持する回動軸(リンク20と一体回動する)には、これと一体回動するようにブラケット部材38が設けられている。このブラケット部材38に対して伸縮機構36の前端部が相対回動自在に連結されている。また伸縮機構36の後端部は、脚フレーム6の縦杆部6aに対して回動自在に連結されている。
転動輪22は、足揉み装置5における背面下端、即ち、底面と背面とのコーナー部分(移動フレームにおける底面支持枠と背面支持枠との連結部)に設けられており、床面F上を移動自在に保持されている。
【0024】
揺動駆動部21は、リンク20に対して前後揺動の駆動力を付与するためのものであり、電動モータ35と、電動モータ35を駆動源として伸縮動作する伸縮機構36とを有している。更に進退機構15には、伸縮機構36と電動モータ35(駆動源)との連動状態を一時的に切り離す連結切断機構120と、緩衝機構150とが設けられている。
図5、図6には揺動駆動部21の断面が示されている。この揺動駆動部21内に緩衝機構150が設けられている。なお、揺動駆動部21等の説明では、図5,図6における左右を前後と呼ぶこととする。図5は、電動モータ35で発生した動力が伸縮機構36を伸縮させて足揉み装置5が移動している状況下を示している。図6は、連結切断機構120により、伸縮機構36への動力伝達が遮断され、足揉み装置5が移動されていない(足揉み装置5を自由に進退させることができる)状況下を示している。
【0025】
図5,図6に示すように、揺動駆動部21の伸縮機構36は、その伸縮動作方向(前後方向)に沿って円筒形に形成された外筒110と、同じく、伸縮動作方向(前後方向)に沿って円筒形に形成され且つ前記外筒110に対して出入り動作自在な状態で挿入される推進軸100とを有している。
この伸縮機構36は、足揉み装置5を使用位置Uにするときには外筒110から推進軸100が前方へ突出し(伸長し)、足揉み装置5を収納位置Pにするときには推進軸100を後退させて外筒110内に格納する(収縮する)状態となる。外筒110には、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸112が収納され、ネジ軸112は、駆動源である電動モータ35の回転軸にウォームギヤを介して連結されている。
【0026】
ネジ軸112には、貫通孔を有しその内側面にネジ溝が形成された移動子114が螺合している。この移動子114の外形は、推進軸100側に向けて先細り形状となっている円錐台形状であり、上下に2分割される構成となっている。
一方、推進軸100の後端側には、円柱状のキャップ体106が嵌め込まれている。このキャップ体106の径方向中央部には、移動子114の錐面が嵌り込む(同じテーパ角を有する)先細り状のテーパ錐面を有する凹部(テーパ錐面凹部)121が形成されている。即ち、キャップ体106の凹部121に移動子114の錐面が嵌り込んでいて、くさび状態となっている。すなわち、キャップ体106はくさび部材である。
【0027】
キャップ体106の後端側(電動モータ35側)には、蓋部材122が設けられて、当該蓋部材122により、テーパ錐面凹部121が蓋部材122で閉塞されている。
移動子114の後端側(電動モータ35側)と、キャップ体106(蓋部材122)との間には、当該キャップ体106を移動子114に向けて付勢するコイルバネ116が設けられている。
即ち、コイルバネ116は、蓋部材122で押されて圧縮された状態となっていて、蓋部材122が取り付いているキャップ体106を移動子114に(後方側に)一定の力で押し込むことで、移動子114とキャップ体106との「くさび作用」を発生させている。つまり、キャップ体106のテーパ錐面凹部121が、コイルバネ116による力で移動子114の外周面に接触することになり、くさび作用で分割可能な移動子114が径方向に押圧されて一体化し、移動子114とネジ軸112との螺合状態は維持されることとなる。
【0028】
以上述べた、移動子114、キャップ体106のテーパ錐面凹部121、コイルバネ116などから連結切断機構120が構成される。この連結切断機構120は、上述した機構(ネジ軸112、移動子114及び外側くさび106)に限定されるものではない。例えば、トルクリミッタのように動力伝達板であるクラッチをスリップさせる機構を採用してもよい。
上述したように、進退機構15の揺動駆動部21は、伸縮機構36の伸縮動作として、外筒110から推進軸100を前方へ突出させたり、推進軸100を後退させて外筒110内へ格納させたりする。進退機構15は、この伸縮動作により定置枢支部32の回動軸まわりでブラケット部材38を回動させ、このブラケット部材38(回動軸)と共にリンク20を一体回動させて、前記足揉み装置5を使用位置Pと収納位置Uとの間で移動させるものである。
【0029】
緩衝機構150は、推進軸100に沿って設けられた直線ダンパ151(直線ダンパ手段)を有している。この直線ダンパ151は、使用位置で保持された足揉み装置5に許容を越える下向き荷重である「過荷重」が付与された際に、当該過荷重が進退機構15に伝達するのを防ぐものとなっている。
直線ダンパ151の具体的な構造は、円筒形に形成された推進軸100の筒内にコイルスプリング153が収納され、このコイルスプリング153が、推進軸100の後端側に結合された円柱状のキャップ体106と、推進軸100の前端側に出入り動作自在に挿入されたヒンジヘッド155との前後間で挟持されるような状態に封じ込められている。
【0030】
なお、ヒンジヘッド155は推進軸100の筒内径よりも細く形成されているが、このヒンジヘッド155の後端部には推進軸100の筒内径と同等又は若干径小のバネ受け156が結合されている。このバネ受け156に対してコイルスプリング153の前端が当接するようになっている。
また、推進軸100の前端側には、ヒンジヘッド155は通すがバネ受け156は通さないスリーブ体154が結合されており、このスリーブ体154によってヒンジヘッド155が推進軸100から抜け止めされている。ヒンジヘッド155には、ヒンジ軸157を介してブラケット部材38(図3参照)が揺動自在に連結されている。
【0031】
コイルスプリング153は、その両端部でキャップ体106及びヒンジヘッド155を相反する方向へ突っ張る状態(押圧付勢する状態)とされており、且つ、軸方向(前後方向)で圧縮代をまだ少し残した状態とされている。従って、この直線ダンパ151は、コイルスプリング153に保持された圧縮代を詰めることのできる範囲で、キャップ体106とヒンジヘッド155との相互間距離を短くさせることができる。
ただし、コイルスプリング153に残る圧縮代、即ち、キャップ体106とヒンジヘッド155とを相反する方向へ突っ張る状態(バネ力)は、伸縮機構36として、外筒110から推進軸100を前方へ突出させ、前記足揉み装置5を収納位置Uから使用位置Pへ移動させるときには維持される(圧縮しない)ようになっている。
【0032】
コイルスプリング153が圧縮するのは、足揉み装置5が使用位置Pへ達した後、宙に浮いた状態とされているときに、この足揉み装置5に対して過荷重が負荷したときである。
以上述べた構成を有する進退機構15に関し、その動作、つまり足揉み装置5の進退動作を説明する。
まず、図4(d)に示すように足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pにある状態とする。このとき足揉み装置5は、その底面が前方を向き、正面(使用者の下肢を嵌め入れる保持溝10,10が設けられた面)が上を向いており、また底面は座部2の前端部と略面一になっている。
【0033】
揺動駆動部21の電動モータ35を作動させると、伸縮機構36が伸長動作を開始する。そのため、伸縮機構36の後端部が連結された脚フレーム6の縦杆部6aを支えとして、伸縮機構36の前端部(ブラケット部材38)で定置枢支部32の回動軸が回動を開始するようになる。このとき、図5に示す状態である。
これに伴い、リンク20は、定置枢支部32を支点として移動枢支部33が前方へ向けて揺動するようになり、その結果、図4(c)に示すように足揉み装置5はその背面上部を前方へ前進させるようになる。この際、転動輪22が床面F上を転動するため、足揉み装置5はスムーズに移動することとなる。
【0034】
リンク20が更に前方へ揺動することで、図4(b)→図4(a)に示すように足揉み装置5はその背面上部が上昇を開始する。そして足揉み装置5の背面上部が座部2の前端下部よりも前方へ出て、且つ図4(a)に示すように、足揉み装置5がその全体として上昇するようになれば、この足揉み装置5は使用位置Uへ至ったことになる。
これら一連の動作が進退機構15の進出動作である。使用位置Uに至った足揉み装置5は、その背面を床面Fと対面させつつ底面が前方を向き、且つ下肢をマッサージする正面(左右の保持溝10,10における溝底に相当)が座部2の上面と略面一な水平状態又は前下がりの折曲状態(図2参照)で連なりつつ上方を向く状態となっている。
【0035】
使用者は、足揉み装置5に対して左右の保持溝10,10に片足ずつ差し入れた状態として下肢用のマッサージ機構を作動させれば、心地よくマッサージを受けることができる。また、このとき足揉み装置5が全体として上昇していることにより、使用者は足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようになり、膝を極度に曲げる必要がないので、使用感を高められるようになっている。
なお、使用位置にある足揉み装置5を必要に応じて前方突出状態に切り換え可能にする機構を設けておき、使用者が脚の長さに対して足揉み装置5を窮屈に感じた場合に、この足揉み装置5を前方突出状態とさせればよい。足揉み装置5の使用後には、足揉み装置5を座部2へ近接させるようにする。
【0036】
一方、この使用位置Uから揺動駆動部21の電動モータ35を上記と逆作動させると、伸縮機構36が収縮動作を開始する。そのため、伸縮機構36の後端部が連結された脚フレーム6の縦杆部6aを支えとして、伸縮機構36の前端部(ブラケット部材38)で定置枢支部32の回動軸が上記と逆回動を開始するようになる。このとき、図5に示す状態である。
これに伴い、リンク20は、定置枢支部32を支点として移動枢支部33が後方へ向けて揺動するようになり、その結果、図4(a)→図4(b)に示すように足揉み装置5はその全体として下降し、且つその正面上部を下方へ沈み込ませるようになる。
【0037】
図4(c)に示すように、足揉み装置5の正面上部が座部2下方より低くなるまで背面上部が下降すると、足揉み装置5は座部2下方を後方へ向けて退行するようになる。この際、転動輪22が床面F上を転動するため、足揉み装置5はスムーズに移動することとなる。
そして図4(d)に示すように、足揉み装置5が収納位置Pへ格納された状態に戻される。これら一連の動作が進退機構15の退行動作である。
足揉み装置5が収納位置Pに収まると、その底面が前方を向くと共に座部2の前端部から突出しない状態となるので、椅子型マッサージ機1に座った「マッサージを受けない使用者」は楽な体勢を保持できると共に、椅子型マッサージ機1の見栄えもシンプルなものとなってスッキリとする。
【0038】
伸縮機構36を収縮動作させているときに、足揉み装置5と座部2との間に使用者の下肢等の障害物があると、図6に示す状態になり、電動モータ35が進退機構15を退行させるように回転しても、推進軸100が外筒110に格納される方向に移動しない。
さらに、進退機構15が電気的に故障しているとき(少なくとも電動モータ35が回転していないとき)に、足揉み装置5を使用位置U側に人手で移動させようと足揉み装置5を手前に引っ張ると、図6に示す状態になり、移動子114の雌ネジがネジ軸112の雄ネジを乗り越えて、推進軸100が外筒110から突出するように移動して、足揉み装置5を使用位置U側に容易に引き出される。
【0039】
このように、伸縮機構36内には、電動モータ35からの駆動力を伝達したり遮断したりする動力伝達遮断機構が備えられているので、電気的な回路構成を必要としないで使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができる。さらに、電気的に故障しても足揉み装置5を使用位置U側に容易に引き出すことができる。
そして図2,図4(a)に示すように、足揉み装置5を使用位置に保持させておくとき(宙に浮かせておくとき)に、例えば、この足揉み装置5の上に子供がいたずらで乗ったり、不注意で大人が腰掛けたり、或いは荷物を置いたり、といったことが起こったとする。このとき、足揉み装置5には過荷重が負荷することになる。
【0040】
このようになると、足揉み装置5と進退機構15との間に設けられたリンク20には、定置枢支部32の回動軸を支点としてブラケット部材38を押し戻すような回動作用が生じるようになる(図5中の白抜き矢符Y参照)。従って、これに伴って進退機構15の伸縮機構36では、推進軸100のヒンジヘッド155が後方へ押され、この推進軸100に設けられた直線ダンパ151は、コイルスプリング153を圧縮させるようになる。
その結果、過荷重が直接的に進退機構15に伝達するのを防ぐようになり、足揉み装置5を支持している部分や進退機構15が過荷重によって破損したり故障したりすることを防ぐことができるようになる。
【0041】
なお、コイルスプリング153が圧縮する(緩衝機構150が過荷重を緩衝する)のは、足揉み装置5(転動輪22)が床面に着くまでの間である。また、足揉み装置5に対する過荷重が解消されれば、直線ダンパ151は圧縮力を元に戻すようになり、自動的に、推進軸100が足揉み装置5に対して前方押出作用を生じる正常な状態へと復帰することになる。
[第2実施形態]
図7は、本発明に係る椅子型マッサージ機の第2実施形態を示している。
【0042】
第2実施形態が第1実施形態と最も異なるところは、進退機構15に設けられる緩衝機構150の具体的構造にある。
また、第2実施形態において、座部2側の定置枢支部32に対し、軸心を左右方向へ向けた状態で回動自在に設けられた回動軸170は、入力軸170aと、この入力軸170aに同軸で且つ相対回転自在な状態で突き合わされた出力軸170bとを有した連接軸構造とされている。
そして、このような回動軸170に対し、伸縮機構36の推進軸100によって揺動されるブラケット部材38は、入力軸170aと一体回動する構造とされ、足揉み装置5を使用位置Pと収納位置Uとの間で移動させるリンク20は、出力軸170bと一体回動する構造とされたものとする。
【0043】
第2実施形態の緩衝機構150は、定置枢支部32の回動軸170に対し、入力軸170aと出力軸170bとの連接部分まわりで弾性変形により捻り圧を昇圧させたり、この捻り圧を元に戻したりする回動ダンパ171(回動ダンパ手段)を有して構成されている。
回動ダンパ171の具体的な構造としては、回動軸170における入力軸170aと出力軸170bとの間に、両者を連結するコイルスプリング173が設けられている。このコイルスプリング173は、回動軸170の外側に巻き付くよう同軸状に配設されていて、コイルスプリング173の一方端が入力軸170aへ連結し、コイルスプリング173の他方端が出力軸170bへ連結していて、入力軸170aの回動力を出力軸170bへ伝達可能となっている。
【0044】
かかる緩衝機構150において、足揉み装置5を使用位置に保持させておくとき(宙に浮かせておくとき)に、例えば、この足揉み装置5の上に子供がいたずらで乗ったり、不注意で大人が腰掛けたり、或いは荷物を置いたり、といったことが起こったとする。このとき、足揉み装置5には過荷重が負荷することになる。
すると、リンク構成杆34は、出力軸170b回りに下向きに揺動し、図7の右斜めから見て、出力軸170bは反時計回りに回動する。しかしながら、この回動は、回動ダンパ171の捻り弾性変形により吸収され、入力軸170aへ直接は伝達しないようになる。その結果、過荷重が緩衝されて進退機構15に伝達せず、足揉み装置5を支持している部分や進退機構15が過荷重によって破損したり故障したりすることを防ぐことができるようになる。
【0045】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、第1実施形態で採用した直線ダンパ151は、コイルスプリング153を採用するものに代えて、オイル圧やエア圧等を利用した構造にすることが可能である。
同様に、第2実施形態で採用した回動ダンパ171は、コイルスプリング173を採用するものに代えて、オイル圧やエア圧等を利用した捻りダンパの構造にすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、椅子型マッサージ機に取り付けられる足揉み装置に適用することが可能であり、ソファや車両の座席等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背もたれ部
5 足揉み装置
15 進退機構
33 移動枢支部
36 伸縮機構
150 緩衝機構
151 直線ダンパ
171 回動ダンパ
F 床面
P 収納位置
U 使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設けられた足揉み装置と、前記足揉み装置を座部前方で宙に浮いた使用位置と座部下方の収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ機において、
前記進退機構又は足揉み装置と進退機構とを連結する部分には、使用位置で保持された足揉み装置に許容を越える下向き荷重である過荷重が付与された際に、当該過荷重が進退機構に伝達するのを防ぐための緩衝機構が設けられていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記進退機構は、軸心を前後方向へ向けて前後動する推進軸を有し、当該推進軸の前後動で足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動可能になっており、
前記緩衝機構は、前記推進軸に設けられて過荷重を吸収する直線ダンパ手段を有することを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記進退機構は、軸心を左右方向へ向けて回動する回動軸を有し、当該回動軸の回動で前記足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動可能になっており、
前記緩衝機構は、前記回動軸に設けられて過荷重を吸収する回動ダンパ手段を有することを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167155(P2010−167155A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13568(P2009−13568)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(508360604)エムテック株式会社 (7)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】