椅子
【課題】座板を軸を介して回動可能に支持するものにおいて、設計の自由度に優れた椅子を提供する。
【解決手段】座板3を有し、この座板3を軸262を介して使用位置と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにした椅子1であって、左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレーム23とを備えてなり、この後フレーム23に少なくとも上方に延びる延出部232を設け、その延出部232に軸262を支持させている構成とした。
【解決手段】座板3を有し、この座板3を軸262を介して使用位置と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにした椅子1であって、左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレーム23とを備えてなり、この後フレーム23に少なくとも上方に延びる延出部232を設け、その延出部232に軸262を支持させている構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校用または事務用等として好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の椅子として、座板を直接又は間接的に軸を介して椅子本体に取り付け、座板を使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特にいわゆるパイプ椅子などの分野においては、座を回動可能に支持するために軸が設けられているものが一般的である。この軸は、座の外側に左右に突出して設けられ、座の側部に配された前脚や後脚を構成するフレームに枢支されるようにしている。このため、かかる構成の椅子では、軸の枢着部分が椅子の側部に配されることとなり、軸の枢着部分が外部に露出し易い構成とならざるを得ない。換言すれば、従来の椅子においては、軸の配置箇所が限られており、設計の自由度が制限されるものとなっていた。
【0004】
また、軸の枢着部分が外部に露出する構成である場合、使用者が指や被服を挟むおそれが高いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−158746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、座板を軸を介して回動可能に支持するものにおいて、設計の自由度に優れた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の椅子は、以下の構成をなしたものである。
【0008】
請求項1に係る椅子は、座板を有し、この座板を軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子であって、左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレームとを備えてなり、この後フレームに少なくとも上方に延びる延出部を設け、その延出部に前記軸を支持させるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る椅子は、請求項1の構成において、前記延出部が、後上方に延びる対をなすブラケットであり、これらブラケット間に前記軸を回転可能に架設しているものである。
【0010】
請求項3に係る椅子は、請求項1又は2記載の構成において、前記延出部が、前記後フレームの中間部に設けられたものであり、前記軸が前記後フレームの長手方向寸法よりも短寸なものである。
【0011】
請求項4に係る椅子は、請求項1、2、又は3記載の構成において、前記座板の裏面に、前記軸を包囲する目隠し部を設けているものである。
【0012】
請求項5に係る椅子は、請求項4記載の構成において、前記座板が後端部に反り上がり部を有したものであり、前記目隠し部がその後端部を前記反り上がり部に対応させて上下方向寸法を大きく設定したものである。
【0013】
請求項6に係る椅子は、前記座を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造をなす他の椅子と前後方向にスタッキングし得るように構成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、座板を軸を介して回動可能に支持するものにおいて、設計の自由度に優れた椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である椅子の斜視図。
【図2】同実施形態における正面図。
【図3】同実施形態における左側面図。
【図4】同実施形態における背面図。
【図5】同実施形態における平面図。
【図6】図2におけるA−A線部分拡大断面図。
【図7】同実施形態における座板を跳ね上げた状態の正面図。
【図8】同実施形態における座板を跳ね上げた状態の斜視図。
【図9】同実施形態における座板の回動態様を示す説明図。
【図10】同実施形態における背板の取付態様を示す部分拡大断面図。
【図11】同実施形態におけるネスティングの態様を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図11を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を前後方向にスタッキング可能な椅子1、換言すれば水平方向にネスティング可能な椅子1に適用したものである。すなわち、本実施形態に係る椅子1は、図11に具体的に示すように、収納時などに、座板3を跳ね上げ位置(J)に保持することによって同一構造をなす他の椅子1’と前後方向に近接させて少ないスペースで多くの椅子を収納し得るように構成されているものである。なお、図11では、他の椅子の符号を「1’」としているが、同一構造をなすものであるため、他の符号は椅子1のものと同様のものを付している。
【0018】
椅子1は、椅子本体2に座板3及び背板4を支持させてなるものであり、より詳しくは、座板3を支持する支持フレーム26を有した椅子本体2を具備してなるものであり、この支持フレーム26の軸着部たる軸262を介して座板3を使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしたものである。座板3の回動操作は、基本的には、使用者等が座板3の周縁部分を持って上下動させることにより行われる。
【0019】
以下、椅子1の各構成について詳述する。
【0020】
椅子本体2は、金属パイプ材を主体に構成されたものである。椅子本体2は、下端にキャスタ211を有した左右の前脚21と、下端にキャスタ221を有した左右の後脚22と、これら後脚22の上端と前脚21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム24と、これら左右の側フレーム24の前端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する前フレーム25と、左右の側フレーム24の後端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する後フレーム23と、この後フレーム23に回転可能に支持させた支持フレーム26と、前記後脚22の上端から上方に延出する左右の背フレーム27とを備えてなる。
【0021】
前脚21と側フレーム24とは、共通の金属パイプ材を曲げることにより一体に構成されたもので、側フレーム24の後端は後脚22の上端に溶接等により剛結されている。しかして、前脚21、後脚22、側フレーム24、前フレーム24、後フレーム23、支持フレーム26、及び背フレーム27は、座板3及び背板4に作用する着座者の荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、椅子本体2を構成する支持フレーム26に座板3を支持させており、例えば図9に示すように、座板3が床面に対して略平行になる使用位置(U)と座板3が背板4に対して略平行になる跳ね上げ位置(J)との間で回動し得るようになっている。また、図2、図4、及び図7に示すように、左右の前脚21間の距離すなわち幅寸法は、左右の後脚22間の距離よりも小さく設定されているため、座板3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子1’とネスティング可能になっている。すなわち、図11を例に説明すれば、椅子1と、この椅子1の後にある他の椅子1’とを相互に相寄る方向に移動させることにより、まずは、椅子1における左右の後脚22の内側に他の椅子1’の左右の前脚21を通過させ、その後更に移動させることにより椅子1における前脚21の後部と椅子1’における前脚21の前部とが近接した状態で向かい合うように位置させることで、椅子1と他の椅子1’とのネスティングを可能にしている。後脚22における左右の側フレーム24との結合部分の近傍には、ネスティング時に他の椅子1’の側フレーム24の外側部分が当接し得る当たり部222が設けられている。
【0022】
前フレーム25は、左右の側フレーム24の中央部分よりも前方の部分間に架設されてなる直線状の金属パイプ材を主体にしてなるもので、後述する支持フレーム26の横架材263が使用位置(U)において前フレーム25の上面に当接するようになっている。すなわち、座板3は、支持フレーム26の横架材263が前フレーム25に直接当接することにより、使用位置(U)に保持されるように構成されている。
【0023】
後フレーム23は、左右の側フレーム24間に架設された金属パイプ材を主体に構成された略一直線状をなす後フレーム本体231と、この後フレーム本体231の中間部に配された延出部たるブラケット(以下、「取付ブラケット」という。)232を備えている。
【0024】
延出部である取付ブラケット232は、後フレーム本体231の左右方向中間部すなわち後フレーム本体231における両側フレーム24との結合部分よりも内側の部分に配されている。取付ブラケット232は左右一対をなしており、後フレーム本体231の上面部分から上方に延出してなるもの、より具体的には後フレーム本体231の上面部分から斜め後ろ上方に延出してなるものである。
【0025】
取付ブラケット232の基端部は溶接等によって後フレーム本体231に取り付けられている。しかして、取付ブラケット232は後フレーム本体231に片持ち的に支持されている。一方、取付ブラケット232の先端部には、支持フレーム26の軸262を回転可能に支持するための軸受部232aを備えており、左右の取付ブラケット232間に軸262を回転可能に架設している。この軸受部232aは軸孔を主体に構成されたものである。換言すれば、本実施形態に係る椅子1は、後フレーム23の取付ブラケット232に、支持フレーム26の軸262を回転可能に支持させており、これによって支持フレーム26に支持された座板3を使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回転可能なものとしている。
【0026】
取付ブラケット232の軸受部232aは、支持フレーム26の軸262の両端部分を支持するように構成されている。取付ブラケット232は、側面視において後側の上下方向中間部分に前方に向けて凹んだ形状をなす凹陥部232bが形成されており、換言すれば、取付ブラケット232は、側面視において略くの字形状をなすものである。しかして、座板3が跳ね上げ位置(J)にあるときは、後述する座板3の後部下面に配された目隠し部322の端縁部分が凹陥部232bの近傍に位置するようになっている。すなわち、取付ブラケット232に凹陥部232bを形成することにより、図8や図9に示されるように、座板3が跳ね上げ位置(J)にある際に、取付ブラケット232と座板3の目隠し部322とが干渉しないようにしてあり、座板3が無理なく跳ね上げ位置(J)に位置できるようにしている。
【0027】
より詳しく言えば次の通りである。すなわち、後上方に向けて延びる取付ブラケット232の上端部分において支持される軸262は、座板本体31の下面であって、且つ、座板本体31の後端縁よりも内側、すなわち前側の位置に配されるようにしてあるため、座板3が跳ね上げ位置(J)に回動することによって座板3の後端部分が軸262よりも下方に位置することとなる。この際に、座板3の座板本体31から下方に突出してなり、座板3が使用位置(U)にある場合において、詳しくは後述する軸262の側部を覆っている目隠し部322の後部322c(図4を参照)が、座板3が跳ね上げ位置(J)に回動すると軸262の下部に位置することとなる。このため、取付ブラケット322が後上方に延びてなるとともにその上端部分に軸受部232aを有するものとし、さらに取付ブラケット232の後部における上下方向中間部分に凹陥部232bを備えたものとしている本実施形態に係る構成においては、目隠し部322が座板本体31から下方に突出した形状であっても、目隠し部322が回動の妨げとなることなく、結果として、座板3の全体を自由に回動させることができるものとなる。
【0028】
次に、座板3を支持する支持フレーム26について述べる。
【0029】
支持フレーム26は、枠状をなす支持フレーム本体261と、この支持フレーム本体261の後端部に設けられた軸262と、支持フレーム本体261の前後方向中間部に設けられた横架材263とを備えたものである。
【0030】
支持フレーム本体261は、底面視において野球のホームベースの外縁形状に近似した枠体の形状をなしており、具体的には、座板3の前下面に配される前支持フレーム261aと、この前支持フレーム261aの両端部から連続してなり座板3の左右側部の下面に配される側支持フレーム261bと、これら両側の側支持フレーム261bのそれぞれ後端部から連続してなり座板3の後下面に配される後支持フレーム261cとを具備したものである。前支持フレーム261a及び側支持フレーム261bの上面は、座板3に直接当接するようになっている。また、側支持フレーム261bの内側面には座板3を取り付けるためのブラケットbが突設されている。後支持フレーム261cは左右対をなすもので、後支持フレーム261cを構成する対をなすフレーム同士の間隔が後方に向かうにつれて漸次幅狭になるように形成された傾斜部261dと、これら傾斜部261dにそれぞれ連続して形成され左右方向に延びる後端フレーム部261eとを備えている。後端フレーム部261eの後端面は、左右方向に略一直線状に延びる軸262の左右方向中間部分と連結している。
【0031】
軸262は、金属パイプ材を主体に構成されたものである。軸262は、その左右両端部を後フレーム23の取付ブラケット232に軸受部232aを介して回動可能に支持されている。しかして、支持フレーム26の支持フレーム本体261に支持された座板3は、支持フレーム26の軸262を介して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動し得るようになっている。本実施形態では、軸262の長手方向寸法が、後フレーム本体231の長手方向寸法よりも短寸に設定されている。
【0032】
前支持フレーム261aにおける直線状をなす部分は、座板3の前端縁と略平行であり、側支持フレーム261bにおける直線状をなす部分は、座板3の左右側端縁と略平行に配されている。また、後支持フレーム261cの後端フレーム部261eにおける直線状をなす部分は、前支持フレーム261aにおける直線状をなす部分と略平行になるように形成されている。
【0033】
本実施形態においては、前支持フレーム261aと側支持フレーム261bと後支持フレーム261cとは、共通の金属パイプ材を所定箇所で曲げることにより形成されたものとなっており、換言すれば、支持フレーム本体261を構成する各支持フレーム261a、261b、261cは曲げ部分を介して連続してなるものである。
【0034】
支持フレーム本体261を形成する金属パイプ材の両端部分、換言すれば、後支持フレーム261cにおける開放された端縁、すなわち、後支持フレーム261cにおける左右の後端フレーム部261eの小口端面は、互いに一定間隔を開けて向き合うように位置している。しかして、後端フレーム部261eの後面部分と、後端フレーム部261eと略平行に配されてなる軸262の前面部分とが溶接により取り付けられている。かかる構成により、支持フレーム本体261と、支持フレーム本体261に取り付けられた軸262の一部とによって、ループ状に連続してなる部分が形成されており、強度に優れたものとなっている。換言すれば、支持フレーム26が閉塞ループを形成したフレーム構造を有しているので強度に優れたものとなっている。
【0035】
横架材263は、使用位置(U)において前フレーム25に支持されるように構成されている。横架材263は使用位置(U)において、正面視において中央部分を下方に突出させた形状をなしている。換言すれば、横架材263は、使用位置(U)において正面視下方に凸をなす隆起部分を備えたものである。詳述すると、横架材263は、金属パイプ材を主体に構成された隆起部rを有した横架材本体263aと、この横架材本体263aの左右方向中間部位に取り付けられた当接部材263bを備えたものである。横架材本体263aは、正面視において左右方向中間部分が下方に膨出した形状をなしており、この横架材本体263aの膨出部分に樹脂製の当接部材263bが止着具たるねじにより取り付けられている。当接部材263bは、使用位置(U)において前フレーム25に当接するものであり、図6の断面図等に詳しく示されるように、当接面が形成される下面は、前フレーム25の形状に対応した形状、すなわち前フレーム25のパイプフレーム形状に対応させて凹んだ形状となっている。
【0036】
以上に詳述した椅子本体2は、換言すれば、座板3とともに回動可能な支持フレーム26と、支持フレーム26以外の構成要素からなるベース部Bとを備えてなるものである。すなわち、ベース部Bは、金属パイプ材を主体に構成されてなるもので、下端にキャスタ211を有した左右の前脚21と、下端にキャスタ221を有した左右の後脚22と、これら後脚22の上端と前脚21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム24と、これら左右の側フレーム24の前端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する前フレーム25と、左右の側フレーム24の後端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する後フレーム23と、後脚22の上端から上方に延出する左右の背フレーム27とを備えてなる。しかして、本実施形態に係る椅子1は、座板3及び軸262を有した支持フレーム26を、軸262を介して、ベース部Bに対して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしている。
【0037】
次に、座板3について詳述する。
【0038】
座板3は、板状をなす座板本体31と、この座板本体31の裏面すなわち下面に設けられ支持フレーム26と係わり合う支持フレーム係合部32とを備えてなるものである。座板3は、樹脂により一体に成形されている。
【0039】
座板本体31は、中間領域に複数の貫通孔311を備えたものである。貫通孔311は、図5に示すように、座板本体31の前縁部分においては直線状に配列されているとともに、後縁部分においては弧を描くように配列されており、中間部分は前から後ろに向かって漸次曲率が大きくなるようにして弧を描くように配列されている。なお、支持フレーム26を構成する前支持フレーム261aは、略直線状に配されている前側一列目の貫通孔311と、前側2列目の貫通孔311との間に配されており、例えば図5により明らかなように、座板3を上から見た場合に前支持フレーム261aが貫通孔311を通して視認されないようにして、意匠性を向上させている。
【0040】
貫通孔311の大きさは、座板本体31の前縁部分から後縁部分に向かって漸次大きくなるように設定されている。各貫通孔311は、図6に示すように、上半部に設けた円筒部分311aと下半部に設けられ下方に向かって拡開する円錐部分311bとを備えたもので、円筒部分311aと円錐部分311bとの境界部分には、座板3の上面部分から視認可能な稜線が形成されている。
【0041】
座板本体31は、その前端部分が下方に垂れ下がった形状をなしているとともに、後端部分が上方に反り上がった形状をなしている。すなわち、座板本体31は、前端部分に下方に垂れ下がった垂れ下がり部312と、後端部分に上方に反り上がった反り上がり部313とを備えている。本実施形態では、支持フレーム26の軸262が反り上がり部313の下方に位置するようにしている。座板本体31における軸262の端部周辺、すなわち、後フレーム23の取付ブラケット232の外側近傍には、図示しない立壁部が設けられ、軸262の近傍に手指等が接近することを回避している。
【0042】
なお、例えば、後支持フレーム261cを上下方向に押圧して扁平に形成したり縦断面を楕円形状に形成したりして、座板3が使用位置(U)にある際に、後支持フレーム261cと後上方に延出する取付ブラケット232の前部との間を離間させるように構成すれば、後支持フレーム261cと取付ブラケット232との間により大きな隙間が形成されるものとなり、使用者の手指等が挟まることを好適に抑制し得るものとなる。
【0043】
座板3の周縁部、すなわち座板本体31の周縁部は、椅子本体2のベース部Bと離間するように構成されている。より具体的には、本実施形態に係る椅子1は、使用位置(U)において、座板本体31の周縁部の全域と、ベース部Bとが、一定間隔をあけて離間するように構成されており、使用者等の手指や被服が座板3の下面側において挟まれにくいようにしている。前後方向に延びる側フレーム24と座板3の側縁部との間、並びに、側フレーム24と支持フレーム本体261との間は上下方向に離間するように構成されている。
【0044】
支持フレーム係合部32は、支持フレーム本体261の上面側と当接するリブ状の支持フレーム受け部321と、支持フレーム本体261及び軸262の外面側に位置してなり、支持フレーム26を包囲する目隠し部322と、座板本体31の下面に設けられ支持フレーム26に設けられたブラケットbを介してねじ止めされる取付部323とを備えたものである。
【0045】
支持フレーム受け部321は、支持フレーム本体261の長手方向に対して直交する方向に延びる複数のリブであり、座板本体31における支持フレーム本体261の上面に対応させて所定の間隔をあけて複数配されたものである。具体的には、支持フレーム受け部321は、支持フレーム本体261の前支持フレーム261aと側支持フレーム261bの上面に対応させて所定の間隔をあけて複数配されている。
【0046】
目隠し部322は、座板本体31から下方に突出し、本実施形態においては、側面視において支持フレーム本体261及び軸262の外面側を包囲してなるもので、連続した壁状のものである。ここで、「包囲する」とは、周囲を取り囲むという意味であり、例えば、本実施形態に示すように側面視において支持フレーム本体261及び軸262における厚み方向の略半分を外側から覆うもののほか、少なくとも座板本体31の下面と支持フレーム本体261及び軸262との間の隙間を覆い隠すものであれば「包囲する」ものに該当する。
【0047】
目隠し部322は、支持フレーム本体261の前側に位置してなり支持フレーム本体261を覆う前部322aと、支持フレーム本体261の左右の外側に位置してなり支持フレーム261を覆う側部322bと、支持フレーム本体261の後側に位置してなるとともに軸262の左右の外側及び後側に位置してなり、支持フレーム261及び軸262を覆う後部322cとを具備してなる。目隠し部322の一部、具体的には、目隠し部322の前部322a及び側部322bは、支持フレーム本体261の前面と左右側面に添設するように設けられており、支持フレーム26と座板3とを取り付ける際には、目隠し部322の内側面の一部が前支持フレーム261aの外面と側支持フレーム261bの外面と添設し、位置決め機能を発揮するように構成されている。
【0048】
目隠し部322は、反り上がり部313を有した座板本体31に対応させて目隠し部322の後側の上下方向寸法を目隠し部322の前側の上下方向寸法よりも大きく設定している。換言すれば、座板3に形成された目隠し部322における後部322cの上下方向寸法は、目隠し部322における前部322a及び側部322bの上下方向寸法よりも大きく設定されている。より詳しく言えば、目隠し部322の後部322cは、反り上がり部313を有した座板本体31に対応させて、側面視においてその上下方向寸法を後方に向かうにつれて漸次大きくなるように形成されている。座板本体31に配された目隠し部322の前部322aと、側部322bと、後部322cとは、側面視においてそれらの下端部分が略水平に連続して視認されるように高さ寸法を変えている。しかして、座板3は、座板本体31の下方領域と目隠し部322の内側領域とによって、軸232を収容できる空間Kを形成している。より詳しく言えば、座板3は、座板本体31の反り上がり部313の下方領域と目隠し部322の後部322cの内側領域とによって、軸232及び取付ブラケット232の軸受部232aの略全体を収容することができる囲まれた空間Kを備えている。なお、座板本体31から下方に突設された目隠し部322の下端縁は側面視において略水平に形成されている。
【0049】
取付部323は、座板本体31の下面に設けられている。取付部323は、板ナットを配することができる板ナット収容室(図示ぜず)を備えたものであり、この板ナット収容室に配される板ナット(図示せず)に対し、支持フレーム本体261に形成されたブラケットbのねじ挿通孔を通過させたねじnが螺合し、支持フレーム26と座板3とが相互に取り付けられるようになっている。
【0050】
背板4は、背板本体41と、この背板本体41の左右両側部に一体に設けられた取付部42とを備えたもので、取付部42は、背板本体41の下縁よりも下方に延出させてある。そして、取付部42に形成された下方に開口する取付孔421を背フレーム27に嵌め合わせることによって、背板4を椅子本体2に支持させている。背フレーム27は、その上端が背板本体41の中央部における下縁411とほぼ同一高さ位置に達するまで取付孔421に挿入され固定されている。また、背板本体41は、図5に示すように平面視において中央部が後方に膨出するように湾曲した形状をなしている。
【0051】
本実施形態に係る椅子1は、座板3を軸262により回動可能に支持された支持フレーム26によって支持する構成としており、この支持フレーム26は、前述したように、椅子本体2における支持フレーム26を除いた部分であるベース部Bにより回動可能に支持されている。そして、座板3が使用位置(U)にある場合は、支持フレーム26が、ベース部Bを構成する後フレーム23の中間部2箇所と、前フレームの中間部1箇所のみによって支持されるようにしている。このため、本実施形態に示す椅子1は、座板3の外縁部が支持フレーム26の外縁部よりも外側に延出してなるとともに、座板3の外縁部とベース部Bとの間が全域において上下方向に離間している構造をなしており、使用者の手指や衣服が支持フレーム26とベース部Bとの間で挟まれることを好適に抑制できるようにしている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子1は、座板3を有し、この座板3を軸262を介して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにした椅子1であって、左右対をなす側フレーム24とこれら両側フレーム24を結合する後フレーム23とを備えてなり、この後フレーム23に上方に延びる延出部である取付ブラケット232を設け、その取付ブラケット232に軸262を支持させているようにしているため、軸262の位置を後フレーム本体231とは離れた位置に設けることができ、座板3を軸262を介して回動可能に支持するものにおいて設計の自由度に優れた椅子を提供することができる。
【0053】
延出部である取付ブラケット232が、後上方に延びる対をなすものであり、これら取付ブラケット232間に軸262を回転可能に架設しているので、軸262を確実に保持できるとともに、目隠し部322を下方に突設させてなる座板3の後部を無理なく回動可能に支持するものとなる。
【0054】
延出部である取付ブラケット232が、後フレーム本体231の中間部に設けられたものであり、軸262が後フレーム本体231の長手方向寸法よりも短寸なものであるため、軸262の両端部が座板3の端縁よりも内側に位置することとなり、座板3の回動に伴って軸262の周辺で手指や衣服が挟まれるのを好適に抑制するものとなる。
【0055】
座板本体31の裏面に、軸262を包囲する目隠し部322を設けているので、軸262が外側から見えにくくなり、外観に優れたものとなるとともに、座板3の回動に伴って軸262の周辺で手指や衣服が挟まれるのを好適に抑制するものとなる。
【0056】
座板本体31が後端部に反り上がり部313を有したものであり、目隠し部322がその後端部を反り上がり部313に対応させて上下方向寸法を前端部よりも大きく設定したものであり、軸262が反り上がり部322の下方に位置しているので、反り上がり部322の下方に位置した軸262を目隠し部322により、外部から見えにくい構成とすることができる。
【0057】
本実施形態に係る椅子1は、座板3を跳ね上げ位置(J)に保持した状態で同一構造をなす他の椅子1’と前後方向にスタッキングし得るように構成されているため、複数の椅子1(1’)を使用しない場合には、効率よく片づけておくことができる。
【0058】
支持フレーム26が、左右方向中間部を下方に突出してなる隆起部rを有した横架材263を備え、この横架材263の隆起部rが前フレーム25の左右方向中間部分に支持されるようしているので、支持フレーム本体261と側フレーム24との間が上下方向に離間し、使用者の手指や衣服等が挟まれてしまうことを好適に抑制するものとなる。
【0059】
椅子本体2が、左右の側フレーム24と、これら両側フレーム24同士を結合する前フレーム25及び後フレーム23とを備えたものであり、前記後フレーム23が上方に延出する取付ブラケット232を備えており、この取付ブラケット232に軸262を支持させているものであるため、目隠し部322により軸262を包囲して隠す構成を容易に実現することができる。
【0060】
椅子本体2を構成する支持フレーム26が、枠状をなす支持フレーム本体261と、この支持フレーム本体261の後端部に設けられた軸262と、支持フレーム本体261の前後方向中間に架設された横架材263とを備えたものであり、使用位置(U)において横架材263が前フレーム25に支持されるように構成されているので、着座者の荷重を適切に支持するものとなる。
【0061】
座板本体31が支持フレーム本体261により支持されているので、板状の座板本体31が支持フレーム本体261にバックアップされ、座板本体31の厚み寸法を小さなもの、すなわち座板本体31を薄肉なものとすることができる。しかも、座板本体31を薄肉にできるため、樹脂により成型された座板本体31に一定の弾性変形が許容されることとなり、着座者が着座する際に一定のクッション性を帯びたものとなる。
【0062】
座板3が、座板本体31の下方領域と目隠し部322の内側領域とによって、軸232を収容できる空間Kを形成しているので、軸232を外部に表出しにくいものとできるとともに、軸232を空間Kに収容することにより、軸232の周囲において、使用者の手指や衣服等が挟まれてしまうことを好適に抑制するものとなる。
【0063】
座板本体31が前部に垂れ下がり部312を設けるとともに後部に反り上がり部313を設けているので、垂れ下がり部312が着座者の大腿や膝裏に好適に対応するとともに反り上がり部313が着座者の臀部に対応し、好適な座り心地を提供することができる。
【0064】
座板本体31は、中間領域に複数の貫通孔311を備えたものであり、貫通孔311は、座板本体31の前縁部分においては直線状に配列されているとともに、後縁部分においては弧を描くように配列されており、中間部分は前から後ろに向かって漸次曲率が大きくなるようにして弧を描くように配列されているので、意匠性に優れた座板3とすることができる。
【0065】
座板3を支持する支持フレーム本体261の前支持フレーム261aは、座板本体31に略直線状に配されている前側一列目の貫通孔311と、前側2列目の貫通孔311との間に配されており、座板3を上から見た場合に前支持フレーム261aが貫通孔311を通して視認されないようにしているため、外観に優れたものとなる。
【0066】
樹脂製の座板3に形成された貫通孔311の大きさは、座板本体31の前縁部分から後縁部分に向かって漸次大きくなるように設定されているので、座板3に適切なクッション性を付与することができる。
【0067】
座板3に設けられた各貫通孔311は、上半部に設けた円筒部分311aと下半部に設けられ下方に向かって拡開する円錐部分311bとを備えたもので、円筒部分311aと円錐部分311bとの境界部分には、座板3の上面部分から視認可能な稜線が形成されているため、使用者等が座板3を上面側から見た場合に、貫通孔311の円筒部分311aのみが視認されることとなり、座板3の座板本体31が実際よりも薄肉に見える構造となっている。このため、使用者にスマートな印象を与え得るようになっている。
【0068】
座板3の目隠し部322が、支持フレーム本体261の前面と左右側面に添接するように座板本体31に設けられた壁状のものであるため、組み付け時等において支持フレーム26と座板3とを容易に位置決めすることができる。
【0069】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0070】
延出部は、本実施形態に示すようなブラケットに限定されるものではない。例えば、パイプ状のフレームを用いるものであってもよいし、フレーム構造物を用いたものであっても良い。換言すれば、延出部とは、後フレームから離間した位置に軸を設けるためのものであればどのようなものでもよい。
【0071】
延出部は、対をなすものには限られず、単一のものであってもよいし、3つ以上の複数のものであってもよい。
【0072】
延出部の設けられる箇所は、本実施形態に示すような後フレームの左右方向中間部に設けられたものには限定されない。しかしながら、本実施形態に示すように、対をなすブラケットにより構成された延出部が後フレームの左右方向中間部に配されるとともに、軸の長手方向寸法が後フレームの長手方向寸法よりも短寸であれば、軸を座板の側端縁、及び側端縁の近傍に露出させない構成を実現することができる。
【0073】
座板は、本実施形態に示すようなものに限定されない。例えば、座板にクッションを設けたものや、座板に貫通孔を設けていないもの等、種々のものが考えられる。
【0074】
軸は、本実施形態に示すように座板を支持するための支持フレームに設けられたものに限定されない。例えば、インサート成型等によって座板に軸を直接設けたものや、ブラケット等を介して座板に軸を設けたものなど、種々のものが考えられる。
【0075】
更に言えば、本発明は、着座面を有した座本体とこの座本体を回転可能にするための軸とを備えてなる座についても適用することができる。
【0076】
また、軸は、ベース部に設けられたものとしても良い。換言すれば、ベース部に軸を備えたものとするとともに、座にベース部の軸を保持するための軸受けを備えたものとし、座をベース部の軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにしても良い。
【0077】
本実施形態では、軸の両端部を対をなす延出部によって支持させていたが、軸の両端部以外の部分を延出部によって支持させてもよい。
【0078】
目隠し部は、側面視において支持フレームの上下方向の全部を包囲するものであってもよい。一方で、目隠し部は、側面視において完全に支持フレームを隠すものでなくても良く、支持フレームと座板との接合部分の近傍に外側方から手指等がアクセスできない程度に包囲したものであればよい。
【0079】
目隠し部は、本実施形態では壁状のものを示していたが、これに限定されるものではない。例えば、座板に形成された複数の突起を支持フレームの周囲に配することにより目隠し部としてもよい。すなわち、複数の突起を支持フレームに囲繞することにより、支持フレームが複数の突起間から見えるような構成であっても目隠し部の構成に相当するものである。
【0080】
軸は、本実施形態に示すように、左右の取付ブラケット間に架設されている1本のものに限定されるものではなく、左右のブラケットのそれぞれに個別に軸を挿通し、支持フレームを回転可能に支持させるようにしてもよい。すなわち、複数の軸を介して座板を回動させ得るようにしたものであってもよい。
【0081】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…椅子
3…座板
24…側フレーム
23…後フレーム
262…軸
323…延出部(取付ブラケット)
(U)…使用位置
(J)…跳ね上げ位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校用または事務用等として好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の椅子として、座板を直接又は間接的に軸を介して椅子本体に取り付け、座板を使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特にいわゆるパイプ椅子などの分野においては、座を回動可能に支持するために軸が設けられているものが一般的である。この軸は、座の外側に左右に突出して設けられ、座の側部に配された前脚や後脚を構成するフレームに枢支されるようにしている。このため、かかる構成の椅子では、軸の枢着部分が椅子の側部に配されることとなり、軸の枢着部分が外部に露出し易い構成とならざるを得ない。換言すれば、従来の椅子においては、軸の配置箇所が限られており、設計の自由度が制限されるものとなっていた。
【0004】
また、軸の枢着部分が外部に露出する構成である場合、使用者が指や被服を挟むおそれが高いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−158746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、座板を軸を介して回動可能に支持するものにおいて、設計の自由度に優れた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の椅子は、以下の構成をなしたものである。
【0008】
請求項1に係る椅子は、座板を有し、この座板を軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子であって、左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレームとを備えてなり、この後フレームに少なくとも上方に延びる延出部を設け、その延出部に前記軸を支持させるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る椅子は、請求項1の構成において、前記延出部が、後上方に延びる対をなすブラケットであり、これらブラケット間に前記軸を回転可能に架設しているものである。
【0010】
請求項3に係る椅子は、請求項1又は2記載の構成において、前記延出部が、前記後フレームの中間部に設けられたものであり、前記軸が前記後フレームの長手方向寸法よりも短寸なものである。
【0011】
請求項4に係る椅子は、請求項1、2、又は3記載の構成において、前記座板の裏面に、前記軸を包囲する目隠し部を設けているものである。
【0012】
請求項5に係る椅子は、請求項4記載の構成において、前記座板が後端部に反り上がり部を有したものであり、前記目隠し部がその後端部を前記反り上がり部に対応させて上下方向寸法を大きく設定したものである。
【0013】
請求項6に係る椅子は、前記座を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造をなす他の椅子と前後方向にスタッキングし得るように構成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、座板を軸を介して回動可能に支持するものにおいて、設計の自由度に優れた椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である椅子の斜視図。
【図2】同実施形態における正面図。
【図3】同実施形態における左側面図。
【図4】同実施形態における背面図。
【図5】同実施形態における平面図。
【図6】図2におけるA−A線部分拡大断面図。
【図7】同実施形態における座板を跳ね上げた状態の正面図。
【図8】同実施形態における座板を跳ね上げた状態の斜視図。
【図9】同実施形態における座板の回動態様を示す説明図。
【図10】同実施形態における背板の取付態様を示す部分拡大断面図。
【図11】同実施形態におけるネスティングの態様を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図11を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を前後方向にスタッキング可能な椅子1、換言すれば水平方向にネスティング可能な椅子1に適用したものである。すなわち、本実施形態に係る椅子1は、図11に具体的に示すように、収納時などに、座板3を跳ね上げ位置(J)に保持することによって同一構造をなす他の椅子1’と前後方向に近接させて少ないスペースで多くの椅子を収納し得るように構成されているものである。なお、図11では、他の椅子の符号を「1’」としているが、同一構造をなすものであるため、他の符号は椅子1のものと同様のものを付している。
【0018】
椅子1は、椅子本体2に座板3及び背板4を支持させてなるものであり、より詳しくは、座板3を支持する支持フレーム26を有した椅子本体2を具備してなるものであり、この支持フレーム26の軸着部たる軸262を介して座板3を使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしたものである。座板3の回動操作は、基本的には、使用者等が座板3の周縁部分を持って上下動させることにより行われる。
【0019】
以下、椅子1の各構成について詳述する。
【0020】
椅子本体2は、金属パイプ材を主体に構成されたものである。椅子本体2は、下端にキャスタ211を有した左右の前脚21と、下端にキャスタ221を有した左右の後脚22と、これら後脚22の上端と前脚21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム24と、これら左右の側フレーム24の前端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する前フレーム25と、左右の側フレーム24の後端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する後フレーム23と、この後フレーム23に回転可能に支持させた支持フレーム26と、前記後脚22の上端から上方に延出する左右の背フレーム27とを備えてなる。
【0021】
前脚21と側フレーム24とは、共通の金属パイプ材を曲げることにより一体に構成されたもので、側フレーム24の後端は後脚22の上端に溶接等により剛結されている。しかして、前脚21、後脚22、側フレーム24、前フレーム24、後フレーム23、支持フレーム26、及び背フレーム27は、座板3及び背板4に作用する着座者の荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、椅子本体2を構成する支持フレーム26に座板3を支持させており、例えば図9に示すように、座板3が床面に対して略平行になる使用位置(U)と座板3が背板4に対して略平行になる跳ね上げ位置(J)との間で回動し得るようになっている。また、図2、図4、及び図7に示すように、左右の前脚21間の距離すなわち幅寸法は、左右の後脚22間の距離よりも小さく設定されているため、座板3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子1’とネスティング可能になっている。すなわち、図11を例に説明すれば、椅子1と、この椅子1の後にある他の椅子1’とを相互に相寄る方向に移動させることにより、まずは、椅子1における左右の後脚22の内側に他の椅子1’の左右の前脚21を通過させ、その後更に移動させることにより椅子1における前脚21の後部と椅子1’における前脚21の前部とが近接した状態で向かい合うように位置させることで、椅子1と他の椅子1’とのネスティングを可能にしている。後脚22における左右の側フレーム24との結合部分の近傍には、ネスティング時に他の椅子1’の側フレーム24の外側部分が当接し得る当たり部222が設けられている。
【0022】
前フレーム25は、左右の側フレーム24の中央部分よりも前方の部分間に架設されてなる直線状の金属パイプ材を主体にしてなるもので、後述する支持フレーム26の横架材263が使用位置(U)において前フレーム25の上面に当接するようになっている。すなわち、座板3は、支持フレーム26の横架材263が前フレーム25に直接当接することにより、使用位置(U)に保持されるように構成されている。
【0023】
後フレーム23は、左右の側フレーム24間に架設された金属パイプ材を主体に構成された略一直線状をなす後フレーム本体231と、この後フレーム本体231の中間部に配された延出部たるブラケット(以下、「取付ブラケット」という。)232を備えている。
【0024】
延出部である取付ブラケット232は、後フレーム本体231の左右方向中間部すなわち後フレーム本体231における両側フレーム24との結合部分よりも内側の部分に配されている。取付ブラケット232は左右一対をなしており、後フレーム本体231の上面部分から上方に延出してなるもの、より具体的には後フレーム本体231の上面部分から斜め後ろ上方に延出してなるものである。
【0025】
取付ブラケット232の基端部は溶接等によって後フレーム本体231に取り付けられている。しかして、取付ブラケット232は後フレーム本体231に片持ち的に支持されている。一方、取付ブラケット232の先端部には、支持フレーム26の軸262を回転可能に支持するための軸受部232aを備えており、左右の取付ブラケット232間に軸262を回転可能に架設している。この軸受部232aは軸孔を主体に構成されたものである。換言すれば、本実施形態に係る椅子1は、後フレーム23の取付ブラケット232に、支持フレーム26の軸262を回転可能に支持させており、これによって支持フレーム26に支持された座板3を使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回転可能なものとしている。
【0026】
取付ブラケット232の軸受部232aは、支持フレーム26の軸262の両端部分を支持するように構成されている。取付ブラケット232は、側面視において後側の上下方向中間部分に前方に向けて凹んだ形状をなす凹陥部232bが形成されており、換言すれば、取付ブラケット232は、側面視において略くの字形状をなすものである。しかして、座板3が跳ね上げ位置(J)にあるときは、後述する座板3の後部下面に配された目隠し部322の端縁部分が凹陥部232bの近傍に位置するようになっている。すなわち、取付ブラケット232に凹陥部232bを形成することにより、図8や図9に示されるように、座板3が跳ね上げ位置(J)にある際に、取付ブラケット232と座板3の目隠し部322とが干渉しないようにしてあり、座板3が無理なく跳ね上げ位置(J)に位置できるようにしている。
【0027】
より詳しく言えば次の通りである。すなわち、後上方に向けて延びる取付ブラケット232の上端部分において支持される軸262は、座板本体31の下面であって、且つ、座板本体31の後端縁よりも内側、すなわち前側の位置に配されるようにしてあるため、座板3が跳ね上げ位置(J)に回動することによって座板3の後端部分が軸262よりも下方に位置することとなる。この際に、座板3の座板本体31から下方に突出してなり、座板3が使用位置(U)にある場合において、詳しくは後述する軸262の側部を覆っている目隠し部322の後部322c(図4を参照)が、座板3が跳ね上げ位置(J)に回動すると軸262の下部に位置することとなる。このため、取付ブラケット322が後上方に延びてなるとともにその上端部分に軸受部232aを有するものとし、さらに取付ブラケット232の後部における上下方向中間部分に凹陥部232bを備えたものとしている本実施形態に係る構成においては、目隠し部322が座板本体31から下方に突出した形状であっても、目隠し部322が回動の妨げとなることなく、結果として、座板3の全体を自由に回動させることができるものとなる。
【0028】
次に、座板3を支持する支持フレーム26について述べる。
【0029】
支持フレーム26は、枠状をなす支持フレーム本体261と、この支持フレーム本体261の後端部に設けられた軸262と、支持フレーム本体261の前後方向中間部に設けられた横架材263とを備えたものである。
【0030】
支持フレーム本体261は、底面視において野球のホームベースの外縁形状に近似した枠体の形状をなしており、具体的には、座板3の前下面に配される前支持フレーム261aと、この前支持フレーム261aの両端部から連続してなり座板3の左右側部の下面に配される側支持フレーム261bと、これら両側の側支持フレーム261bのそれぞれ後端部から連続してなり座板3の後下面に配される後支持フレーム261cとを具備したものである。前支持フレーム261a及び側支持フレーム261bの上面は、座板3に直接当接するようになっている。また、側支持フレーム261bの内側面には座板3を取り付けるためのブラケットbが突設されている。後支持フレーム261cは左右対をなすもので、後支持フレーム261cを構成する対をなすフレーム同士の間隔が後方に向かうにつれて漸次幅狭になるように形成された傾斜部261dと、これら傾斜部261dにそれぞれ連続して形成され左右方向に延びる後端フレーム部261eとを備えている。後端フレーム部261eの後端面は、左右方向に略一直線状に延びる軸262の左右方向中間部分と連結している。
【0031】
軸262は、金属パイプ材を主体に構成されたものである。軸262は、その左右両端部を後フレーム23の取付ブラケット232に軸受部232aを介して回動可能に支持されている。しかして、支持フレーム26の支持フレーム本体261に支持された座板3は、支持フレーム26の軸262を介して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動し得るようになっている。本実施形態では、軸262の長手方向寸法が、後フレーム本体231の長手方向寸法よりも短寸に設定されている。
【0032】
前支持フレーム261aにおける直線状をなす部分は、座板3の前端縁と略平行であり、側支持フレーム261bにおける直線状をなす部分は、座板3の左右側端縁と略平行に配されている。また、後支持フレーム261cの後端フレーム部261eにおける直線状をなす部分は、前支持フレーム261aにおける直線状をなす部分と略平行になるように形成されている。
【0033】
本実施形態においては、前支持フレーム261aと側支持フレーム261bと後支持フレーム261cとは、共通の金属パイプ材を所定箇所で曲げることにより形成されたものとなっており、換言すれば、支持フレーム本体261を構成する各支持フレーム261a、261b、261cは曲げ部分を介して連続してなるものである。
【0034】
支持フレーム本体261を形成する金属パイプ材の両端部分、換言すれば、後支持フレーム261cにおける開放された端縁、すなわち、後支持フレーム261cにおける左右の後端フレーム部261eの小口端面は、互いに一定間隔を開けて向き合うように位置している。しかして、後端フレーム部261eの後面部分と、後端フレーム部261eと略平行に配されてなる軸262の前面部分とが溶接により取り付けられている。かかる構成により、支持フレーム本体261と、支持フレーム本体261に取り付けられた軸262の一部とによって、ループ状に連続してなる部分が形成されており、強度に優れたものとなっている。換言すれば、支持フレーム26が閉塞ループを形成したフレーム構造を有しているので強度に優れたものとなっている。
【0035】
横架材263は、使用位置(U)において前フレーム25に支持されるように構成されている。横架材263は使用位置(U)において、正面視において中央部分を下方に突出させた形状をなしている。換言すれば、横架材263は、使用位置(U)において正面視下方に凸をなす隆起部分を備えたものである。詳述すると、横架材263は、金属パイプ材を主体に構成された隆起部rを有した横架材本体263aと、この横架材本体263aの左右方向中間部位に取り付けられた当接部材263bを備えたものである。横架材本体263aは、正面視において左右方向中間部分が下方に膨出した形状をなしており、この横架材本体263aの膨出部分に樹脂製の当接部材263bが止着具たるねじにより取り付けられている。当接部材263bは、使用位置(U)において前フレーム25に当接するものであり、図6の断面図等に詳しく示されるように、当接面が形成される下面は、前フレーム25の形状に対応した形状、すなわち前フレーム25のパイプフレーム形状に対応させて凹んだ形状となっている。
【0036】
以上に詳述した椅子本体2は、換言すれば、座板3とともに回動可能な支持フレーム26と、支持フレーム26以外の構成要素からなるベース部Bとを備えてなるものである。すなわち、ベース部Bは、金属パイプ材を主体に構成されてなるもので、下端にキャスタ211を有した左右の前脚21と、下端にキャスタ221を有した左右の後脚22と、これら後脚22の上端と前脚21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム24と、これら左右の側フレーム24の前端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する前フレーム25と、左右の側フレーム24の後端近傍部間に架設され両側フレーム24同士を結合する後フレーム23と、後脚22の上端から上方に延出する左右の背フレーム27とを備えてなる。しかして、本実施形態に係る椅子1は、座板3及び軸262を有した支持フレーム26を、軸262を介して、ベース部Bに対して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしている。
【0037】
次に、座板3について詳述する。
【0038】
座板3は、板状をなす座板本体31と、この座板本体31の裏面すなわち下面に設けられ支持フレーム26と係わり合う支持フレーム係合部32とを備えてなるものである。座板3は、樹脂により一体に成形されている。
【0039】
座板本体31は、中間領域に複数の貫通孔311を備えたものである。貫通孔311は、図5に示すように、座板本体31の前縁部分においては直線状に配列されているとともに、後縁部分においては弧を描くように配列されており、中間部分は前から後ろに向かって漸次曲率が大きくなるようにして弧を描くように配列されている。なお、支持フレーム26を構成する前支持フレーム261aは、略直線状に配されている前側一列目の貫通孔311と、前側2列目の貫通孔311との間に配されており、例えば図5により明らかなように、座板3を上から見た場合に前支持フレーム261aが貫通孔311を通して視認されないようにして、意匠性を向上させている。
【0040】
貫通孔311の大きさは、座板本体31の前縁部分から後縁部分に向かって漸次大きくなるように設定されている。各貫通孔311は、図6に示すように、上半部に設けた円筒部分311aと下半部に設けられ下方に向かって拡開する円錐部分311bとを備えたもので、円筒部分311aと円錐部分311bとの境界部分には、座板3の上面部分から視認可能な稜線が形成されている。
【0041】
座板本体31は、その前端部分が下方に垂れ下がった形状をなしているとともに、後端部分が上方に反り上がった形状をなしている。すなわち、座板本体31は、前端部分に下方に垂れ下がった垂れ下がり部312と、後端部分に上方に反り上がった反り上がり部313とを備えている。本実施形態では、支持フレーム26の軸262が反り上がり部313の下方に位置するようにしている。座板本体31における軸262の端部周辺、すなわち、後フレーム23の取付ブラケット232の外側近傍には、図示しない立壁部が設けられ、軸262の近傍に手指等が接近することを回避している。
【0042】
なお、例えば、後支持フレーム261cを上下方向に押圧して扁平に形成したり縦断面を楕円形状に形成したりして、座板3が使用位置(U)にある際に、後支持フレーム261cと後上方に延出する取付ブラケット232の前部との間を離間させるように構成すれば、後支持フレーム261cと取付ブラケット232との間により大きな隙間が形成されるものとなり、使用者の手指等が挟まることを好適に抑制し得るものとなる。
【0043】
座板3の周縁部、すなわち座板本体31の周縁部は、椅子本体2のベース部Bと離間するように構成されている。より具体的には、本実施形態に係る椅子1は、使用位置(U)において、座板本体31の周縁部の全域と、ベース部Bとが、一定間隔をあけて離間するように構成されており、使用者等の手指や被服が座板3の下面側において挟まれにくいようにしている。前後方向に延びる側フレーム24と座板3の側縁部との間、並びに、側フレーム24と支持フレーム本体261との間は上下方向に離間するように構成されている。
【0044】
支持フレーム係合部32は、支持フレーム本体261の上面側と当接するリブ状の支持フレーム受け部321と、支持フレーム本体261及び軸262の外面側に位置してなり、支持フレーム26を包囲する目隠し部322と、座板本体31の下面に設けられ支持フレーム26に設けられたブラケットbを介してねじ止めされる取付部323とを備えたものである。
【0045】
支持フレーム受け部321は、支持フレーム本体261の長手方向に対して直交する方向に延びる複数のリブであり、座板本体31における支持フレーム本体261の上面に対応させて所定の間隔をあけて複数配されたものである。具体的には、支持フレーム受け部321は、支持フレーム本体261の前支持フレーム261aと側支持フレーム261bの上面に対応させて所定の間隔をあけて複数配されている。
【0046】
目隠し部322は、座板本体31から下方に突出し、本実施形態においては、側面視において支持フレーム本体261及び軸262の外面側を包囲してなるもので、連続した壁状のものである。ここで、「包囲する」とは、周囲を取り囲むという意味であり、例えば、本実施形態に示すように側面視において支持フレーム本体261及び軸262における厚み方向の略半分を外側から覆うもののほか、少なくとも座板本体31の下面と支持フレーム本体261及び軸262との間の隙間を覆い隠すものであれば「包囲する」ものに該当する。
【0047】
目隠し部322は、支持フレーム本体261の前側に位置してなり支持フレーム本体261を覆う前部322aと、支持フレーム本体261の左右の外側に位置してなり支持フレーム261を覆う側部322bと、支持フレーム本体261の後側に位置してなるとともに軸262の左右の外側及び後側に位置してなり、支持フレーム261及び軸262を覆う後部322cとを具備してなる。目隠し部322の一部、具体的には、目隠し部322の前部322a及び側部322bは、支持フレーム本体261の前面と左右側面に添設するように設けられており、支持フレーム26と座板3とを取り付ける際には、目隠し部322の内側面の一部が前支持フレーム261aの外面と側支持フレーム261bの外面と添設し、位置決め機能を発揮するように構成されている。
【0048】
目隠し部322は、反り上がり部313を有した座板本体31に対応させて目隠し部322の後側の上下方向寸法を目隠し部322の前側の上下方向寸法よりも大きく設定している。換言すれば、座板3に形成された目隠し部322における後部322cの上下方向寸法は、目隠し部322における前部322a及び側部322bの上下方向寸法よりも大きく設定されている。より詳しく言えば、目隠し部322の後部322cは、反り上がり部313を有した座板本体31に対応させて、側面視においてその上下方向寸法を後方に向かうにつれて漸次大きくなるように形成されている。座板本体31に配された目隠し部322の前部322aと、側部322bと、後部322cとは、側面視においてそれらの下端部分が略水平に連続して視認されるように高さ寸法を変えている。しかして、座板3は、座板本体31の下方領域と目隠し部322の内側領域とによって、軸232を収容できる空間Kを形成している。より詳しく言えば、座板3は、座板本体31の反り上がり部313の下方領域と目隠し部322の後部322cの内側領域とによって、軸232及び取付ブラケット232の軸受部232aの略全体を収容することができる囲まれた空間Kを備えている。なお、座板本体31から下方に突設された目隠し部322の下端縁は側面視において略水平に形成されている。
【0049】
取付部323は、座板本体31の下面に設けられている。取付部323は、板ナットを配することができる板ナット収容室(図示ぜず)を備えたものであり、この板ナット収容室に配される板ナット(図示せず)に対し、支持フレーム本体261に形成されたブラケットbのねじ挿通孔を通過させたねじnが螺合し、支持フレーム26と座板3とが相互に取り付けられるようになっている。
【0050】
背板4は、背板本体41と、この背板本体41の左右両側部に一体に設けられた取付部42とを備えたもので、取付部42は、背板本体41の下縁よりも下方に延出させてある。そして、取付部42に形成された下方に開口する取付孔421を背フレーム27に嵌め合わせることによって、背板4を椅子本体2に支持させている。背フレーム27は、その上端が背板本体41の中央部における下縁411とほぼ同一高さ位置に達するまで取付孔421に挿入され固定されている。また、背板本体41は、図5に示すように平面視において中央部が後方に膨出するように湾曲した形状をなしている。
【0051】
本実施形態に係る椅子1は、座板3を軸262により回動可能に支持された支持フレーム26によって支持する構成としており、この支持フレーム26は、前述したように、椅子本体2における支持フレーム26を除いた部分であるベース部Bにより回動可能に支持されている。そして、座板3が使用位置(U)にある場合は、支持フレーム26が、ベース部Bを構成する後フレーム23の中間部2箇所と、前フレームの中間部1箇所のみによって支持されるようにしている。このため、本実施形態に示す椅子1は、座板3の外縁部が支持フレーム26の外縁部よりも外側に延出してなるとともに、座板3の外縁部とベース部Bとの間が全域において上下方向に離間している構造をなしており、使用者の手指や衣服が支持フレーム26とベース部Bとの間で挟まれることを好適に抑制できるようにしている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子1は、座板3を有し、この座板3を軸262を介して使用位置(U)と跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにした椅子1であって、左右対をなす側フレーム24とこれら両側フレーム24を結合する後フレーム23とを備えてなり、この後フレーム23に上方に延びる延出部である取付ブラケット232を設け、その取付ブラケット232に軸262を支持させているようにしているため、軸262の位置を後フレーム本体231とは離れた位置に設けることができ、座板3を軸262を介して回動可能に支持するものにおいて設計の自由度に優れた椅子を提供することができる。
【0053】
延出部である取付ブラケット232が、後上方に延びる対をなすものであり、これら取付ブラケット232間に軸262を回転可能に架設しているので、軸262を確実に保持できるとともに、目隠し部322を下方に突設させてなる座板3の後部を無理なく回動可能に支持するものとなる。
【0054】
延出部である取付ブラケット232が、後フレーム本体231の中間部に設けられたものであり、軸262が後フレーム本体231の長手方向寸法よりも短寸なものであるため、軸262の両端部が座板3の端縁よりも内側に位置することとなり、座板3の回動に伴って軸262の周辺で手指や衣服が挟まれるのを好適に抑制するものとなる。
【0055】
座板本体31の裏面に、軸262を包囲する目隠し部322を設けているので、軸262が外側から見えにくくなり、外観に優れたものとなるとともに、座板3の回動に伴って軸262の周辺で手指や衣服が挟まれるのを好適に抑制するものとなる。
【0056】
座板本体31が後端部に反り上がり部313を有したものであり、目隠し部322がその後端部を反り上がり部313に対応させて上下方向寸法を前端部よりも大きく設定したものであり、軸262が反り上がり部322の下方に位置しているので、反り上がり部322の下方に位置した軸262を目隠し部322により、外部から見えにくい構成とすることができる。
【0057】
本実施形態に係る椅子1は、座板3を跳ね上げ位置(J)に保持した状態で同一構造をなす他の椅子1’と前後方向にスタッキングし得るように構成されているため、複数の椅子1(1’)を使用しない場合には、効率よく片づけておくことができる。
【0058】
支持フレーム26が、左右方向中間部を下方に突出してなる隆起部rを有した横架材263を備え、この横架材263の隆起部rが前フレーム25の左右方向中間部分に支持されるようしているので、支持フレーム本体261と側フレーム24との間が上下方向に離間し、使用者の手指や衣服等が挟まれてしまうことを好適に抑制するものとなる。
【0059】
椅子本体2が、左右の側フレーム24と、これら両側フレーム24同士を結合する前フレーム25及び後フレーム23とを備えたものであり、前記後フレーム23が上方に延出する取付ブラケット232を備えており、この取付ブラケット232に軸262を支持させているものであるため、目隠し部322により軸262を包囲して隠す構成を容易に実現することができる。
【0060】
椅子本体2を構成する支持フレーム26が、枠状をなす支持フレーム本体261と、この支持フレーム本体261の後端部に設けられた軸262と、支持フレーム本体261の前後方向中間に架設された横架材263とを備えたものであり、使用位置(U)において横架材263が前フレーム25に支持されるように構成されているので、着座者の荷重を適切に支持するものとなる。
【0061】
座板本体31が支持フレーム本体261により支持されているので、板状の座板本体31が支持フレーム本体261にバックアップされ、座板本体31の厚み寸法を小さなもの、すなわち座板本体31を薄肉なものとすることができる。しかも、座板本体31を薄肉にできるため、樹脂により成型された座板本体31に一定の弾性変形が許容されることとなり、着座者が着座する際に一定のクッション性を帯びたものとなる。
【0062】
座板3が、座板本体31の下方領域と目隠し部322の内側領域とによって、軸232を収容できる空間Kを形成しているので、軸232を外部に表出しにくいものとできるとともに、軸232を空間Kに収容することにより、軸232の周囲において、使用者の手指や衣服等が挟まれてしまうことを好適に抑制するものとなる。
【0063】
座板本体31が前部に垂れ下がり部312を設けるとともに後部に反り上がり部313を設けているので、垂れ下がり部312が着座者の大腿や膝裏に好適に対応するとともに反り上がり部313が着座者の臀部に対応し、好適な座り心地を提供することができる。
【0064】
座板本体31は、中間領域に複数の貫通孔311を備えたものであり、貫通孔311は、座板本体31の前縁部分においては直線状に配列されているとともに、後縁部分においては弧を描くように配列されており、中間部分は前から後ろに向かって漸次曲率が大きくなるようにして弧を描くように配列されているので、意匠性に優れた座板3とすることができる。
【0065】
座板3を支持する支持フレーム本体261の前支持フレーム261aは、座板本体31に略直線状に配されている前側一列目の貫通孔311と、前側2列目の貫通孔311との間に配されており、座板3を上から見た場合に前支持フレーム261aが貫通孔311を通して視認されないようにしているため、外観に優れたものとなる。
【0066】
樹脂製の座板3に形成された貫通孔311の大きさは、座板本体31の前縁部分から後縁部分に向かって漸次大きくなるように設定されているので、座板3に適切なクッション性を付与することができる。
【0067】
座板3に設けられた各貫通孔311は、上半部に設けた円筒部分311aと下半部に設けられ下方に向かって拡開する円錐部分311bとを備えたもので、円筒部分311aと円錐部分311bとの境界部分には、座板3の上面部分から視認可能な稜線が形成されているため、使用者等が座板3を上面側から見た場合に、貫通孔311の円筒部分311aのみが視認されることとなり、座板3の座板本体31が実際よりも薄肉に見える構造となっている。このため、使用者にスマートな印象を与え得るようになっている。
【0068】
座板3の目隠し部322が、支持フレーム本体261の前面と左右側面に添接するように座板本体31に設けられた壁状のものであるため、組み付け時等において支持フレーム26と座板3とを容易に位置決めすることができる。
【0069】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0070】
延出部は、本実施形態に示すようなブラケットに限定されるものではない。例えば、パイプ状のフレームを用いるものであってもよいし、フレーム構造物を用いたものであっても良い。換言すれば、延出部とは、後フレームから離間した位置に軸を設けるためのものであればどのようなものでもよい。
【0071】
延出部は、対をなすものには限られず、単一のものであってもよいし、3つ以上の複数のものであってもよい。
【0072】
延出部の設けられる箇所は、本実施形態に示すような後フレームの左右方向中間部に設けられたものには限定されない。しかしながら、本実施形態に示すように、対をなすブラケットにより構成された延出部が後フレームの左右方向中間部に配されるとともに、軸の長手方向寸法が後フレームの長手方向寸法よりも短寸であれば、軸を座板の側端縁、及び側端縁の近傍に露出させない構成を実現することができる。
【0073】
座板は、本実施形態に示すようなものに限定されない。例えば、座板にクッションを設けたものや、座板に貫通孔を設けていないもの等、種々のものが考えられる。
【0074】
軸は、本実施形態に示すように座板を支持するための支持フレームに設けられたものに限定されない。例えば、インサート成型等によって座板に軸を直接設けたものや、ブラケット等を介して座板に軸を設けたものなど、種々のものが考えられる。
【0075】
更に言えば、本発明は、着座面を有した座本体とこの座本体を回転可能にするための軸とを備えてなる座についても適用することができる。
【0076】
また、軸は、ベース部に設けられたものとしても良い。換言すれば、ベース部に軸を備えたものとするとともに、座にベース部の軸を保持するための軸受けを備えたものとし、座をベース部の軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにしても良い。
【0077】
本実施形態では、軸の両端部を対をなす延出部によって支持させていたが、軸の両端部以外の部分を延出部によって支持させてもよい。
【0078】
目隠し部は、側面視において支持フレームの上下方向の全部を包囲するものであってもよい。一方で、目隠し部は、側面視において完全に支持フレームを隠すものでなくても良く、支持フレームと座板との接合部分の近傍に外側方から手指等がアクセスできない程度に包囲したものであればよい。
【0079】
目隠し部は、本実施形態では壁状のものを示していたが、これに限定されるものではない。例えば、座板に形成された複数の突起を支持フレームの周囲に配することにより目隠し部としてもよい。すなわち、複数の突起を支持フレームに囲繞することにより、支持フレームが複数の突起間から見えるような構成であっても目隠し部の構成に相当するものである。
【0080】
軸は、本実施形態に示すように、左右の取付ブラケット間に架設されている1本のものに限定されるものではなく、左右のブラケットのそれぞれに個別に軸を挿通し、支持フレームを回転可能に支持させるようにしてもよい。すなわち、複数の軸を介して座板を回動させ得るようにしたものであってもよい。
【0081】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…椅子
3…座板
24…側フレーム
23…後フレーム
262…軸
323…延出部(取付ブラケット)
(U)…使用位置
(J)…跳ね上げ位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板を有し、この座板を軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子であって、
左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレームとを備えてなり、この後フレームに少なくとも上方に延びる延出部を設け、その延出部に前記軸を支持させていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記延出部が、後上方に延びる対をなすブラケットであり、これらブラケット間に前記軸を回転可能に架設している請求項2記載の椅子。
【請求項3】
前記延出部が、前記後フレームの中間部に設けられたものであり、前記軸が前記後フレームの長手方向寸法よりも短寸なものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記座板の裏面に、前記軸を包囲する目隠し部を設けている請求項1、2又は3記載の椅子。
【請求項5】
前記座板が後端部に反り上がり部を有したものであり、前記目隠し部がその後端部を前記反り上がり部に対応させて上下方向寸法を大きく設定したものであり、前記軸が前記反り上がり部の下方に位置している請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記座を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造をなす他の椅子と前後方向にスタッキングし得るように構成されている請求項1、2、3、4又は5記載の椅子。
【請求項1】
座板を有し、この座板を軸を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動させ得るようにした椅子であって、
左右対をなす側フレームとこれら両側フレームを結合する後フレームとを備えてなり、この後フレームに少なくとも上方に延びる延出部を設け、その延出部に前記軸を支持させていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記延出部が、後上方に延びる対をなすブラケットであり、これらブラケット間に前記軸を回転可能に架設している請求項2記載の椅子。
【請求項3】
前記延出部が、前記後フレームの中間部に設けられたものであり、前記軸が前記後フレームの長手方向寸法よりも短寸なものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記座板の裏面に、前記軸を包囲する目隠し部を設けている請求項1、2又は3記載の椅子。
【請求項5】
前記座板が後端部に反り上がり部を有したものであり、前記目隠し部がその後端部を前記反り上がり部に対応させて上下方向寸法を大きく設定したものであり、前記軸が前記反り上がり部の下方に位置している請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記座を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造をなす他の椅子と前後方向にスタッキングし得るように構成されている請求項1、2、3、4又は5記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−90792(P2012−90792A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240893(P2010−240893)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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