説明

椅子

【課題】背凭れを、脚体や座体の高さを高くすることなく、かつ小さな回動角度で大きく後傾させうるようにする。
【解決手段】脚体1を、前下方に傾斜する前脚と、後下方に傾斜するとともに、平面視後向ハの字状をなすように外側方に拡開する後脚9bとを有する側面視山形状の左右1対の側脚9を備えるものとし、背凭れ支持フレーム3下端に連設された前方を向く左右1対の前向腕部17aの前端部を、両前向腕部17aが左右の後脚間において後傾しうるように、左右の側脚間において座体の下方における脚体の適所に枢着するとともに、左右の前向腕部に、肘掛け7を、その上部が前脚と後脚との連結部付近よりも外側方に位置するようにして取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座体を支持する脚体に、背凭れを、後傾可能に枢着してなる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の椅子は、例えば特許文献1及び2に記載されており、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−282077号公報
【特許文献2】特開2004−16516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている椅子においては、いずれも、後傾可能な背凭れの下端部が、座体の後端部付近において、それと、ほぼ同じ高さで脚体に枢着されているため、枢着部から背凭れの上端までの回転半径は、自ずと制限される。
【0005】
このように、枢軸部から背凭れの上端までの回転半径が制限されると、背凭れを後傾させる際の回動角度が大きくなるので、背凭れを大きく後傾させるには、脚体や座体の高さを高くする必要がある。
【0006】
また、特許文献1に記載されている椅子のように、背凭れの下端を、単に座体の後端部において脚体に枢着しただけでは、背凭れを後傾した際の座体後方への突出寸法が大となり、椅子を設置する際、前後方向の大きな設置スペースが必要となる。
【0007】
特許文献2に記載の椅子においては、背凭れを大きく後傾させうるように、これを一旦リンク機構により上昇させてから後傾させるようになっているので、構造が複雑で、部品点数も多いという問題を有している。
た、座部の両側面に肘掛け台を設けてあるので、肘掛け台同士の離間寸法を大とすることができないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、背凭れを、脚体や座体の高さを高くすることなく、しかも小さな回動角度で大きく後傾させうるとともに、後傾時の後方への突出寸法も小さくしうるようにしうるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)座体を支持する脚体に、前面に背凭れを取付けた背凭れ支持フレームを、前記座体の後方において起立する位置から後傾しうるように枢着してなる椅子において、前記脚体を、前下方に傾斜する前脚と、後下方に傾斜するとともに、平面視後向ハの字状をなすように外側方に拡開する後脚とを有する側面視山形状の左右1対の側脚を備えるものとし、前記背凭れ支持フレームの下端に連設された前方を向く左右1対の前向腕部の前端部を、両前向腕部が前記左右の後脚間において後傾しうるように、前記左右の側脚間において前記座体の下方における脚体の適所に枢着するとともに、前記左右の前向腕部に、肘掛けの下端部を、その上部が前記前脚と後脚との連結部付近よりも外側方に位置するようにして取付ける。
【0010】
このような構成とすると、背凭れ支持フレームにおける前方を向く左右1対の前向腕部の前端部を、両前向腕部が左右の後脚間において後傾しうるように、左右の側脚間において座体の下方の脚体の適所に枢着したことにより、前向腕部の枢着部から背凭れの上端までの回転半径が大となり、小さな回動角度で、背凭れを大きく後傾させることができ、かつ後傾時の後方への突出寸法も小さくなる。
また、脚体や座体の高さを高くすることなく、大きく後傾させうるので、安楽姿勢で着座しうる低座高型の椅子を提供することができる。
さらに、左右の後脚を平面視後向ハの字状をなすように外側方に拡開してあるので、背凭れを後傾させたときの椅子の安定性が向上する。
【0011】
(2)上記(1)項において、肘掛けの下端部を、前向腕部の上面に突設した肘掛け取付部に取付ける。
【0012】
このような構成とすると、必然的に肘掛けの下端部の位置が高くなるので、前向腕部を後傾した際に、肘掛けの下端部が後脚と干渉しにくくなる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)項において、左右1対の前向腕部の前端部を、側脚の山形をなす頂部とほぼ等高をなす位置において、脚体の適所に枢着する。
【0014】
このような構成とすると、背凭れの回転半径がより大きくなるとともに、枢着位置も高くなるので、背凭れを、より小さな回動角度で大きく後傾させることができる。
【0015】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、左右の側脚の頂部付近同士を、左右方向を向く連結部材により連結し、この連結部材の中央部上面に、座体を支持する支基を設ける。
【0016】
このような構成とすると、座体の荷重が、実質的に左右の側脚の頂部付近、すなわち両側脚間の中央部において前脚と後脚との連設部付近によりバランスよく受支されるので、着座時の椅子の安定性がよくなる。
【0017】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、左右の側脚における前脚も、平面視ハの字状をなすように外側方に拡開する。
【0018】
このような構成とすると、椅子全体の安定性が向上するとともに、着座者の下肢部が前脚に当たる恐れが小さくなる。
【0019】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、側脚を、後脚の前後寸法が前脚よりも長寸をなす側面視への字状とする。
【0020】
このような構成とすると、背凭れを後傾させたときの安定性がより高まる。
また、側脚が側面視への字状をなしているので、脚体や座体の高さがより低い低座高型の椅子を提供しうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前向腕部の枢着部から背凭れの上端までの回転半径が大となり、小さな回動角度で、背凭れを大きく後傾させることができ、かつ後傾時の後方への突出寸法も小さくなる。
また、脚体や座体の高さを高くすることなく、大きく後傾させうるので、安楽姿勢で着座しうる低座高型の椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の椅子の一実施形態を示す前方斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】同じく、背凭れを後傾させたときの側面図である。
【図5】同じく後面図である。
【図6】脚体の斜視図である。
【図7】同じく平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の椅子の前方斜視図、図2は正面図、図3は側面図、図4は、同じく背凭れを後傾させたときの側面図、図5は後面図で、この椅子は、脚体1と、それにより支持された座体2と、同じく、脚体1に前下端が枢着された背凭れ支持フレーム3と、その前面に取付けられた、メッシュ状の背凭れ板4とクッション体5とからなる背凭れ6と、背凭れ支持フレーム3の下端部に取付けられた側面視ほぼ菱形枠状の左右1対の肘掛け7とを備えている。
【0024】
脚体2は、図6の斜視図及び図7の平面図にも示すように、前端にキャスタ8を有する前下がり傾斜の前脚9aと、これよりも前後寸法が長寸とされた、後端にキャスタ8を有する後下がり傾斜の後脚9bとからなる側面視への字形をなす左右1対の側脚9、9と、両側脚9における頂部付近の対向面に取付けられた正面視上向コ字状をなす連結部材10とからなっている。
【0025】
なお、後脚9bを前脚9aよりも長寸としたのは、背凭れ6を後傾した際の椅子の安定性を確保するためである。
【0026】
左右の側脚9の前脚9aと後脚9bは、それぞれ、平面視前向ハの字形、および後向ハの字形に外開きに拡開するように、それらの頂部を中心として、外側方に折曲げてあり、脚体1の安定性を高めている。
【0027】
各側脚9の頂部には、左右方向を向く短軸部11が一体的に連設され、また後脚9bの前端部の内側面には、取付片12が下向きに突設されている(図3参照)。
【0028】
上記左右の短軸部11の内側端面には、連結部材10における左右1対の斜前上方を向く起立片10a、10aの上端が、また取付片12の内側面には、同じく連結部材10における起立片10aよりも若干後脚9b側に位置する横杆10bの両側面が、それぞれ外側方より挿入したボルト13により螺着されている。
【0029】
短軸部11に挿入したボルト13の頭部は、短軸部11の側面の凹孔に止着された円形キャップ14(図5においては図示略)により覆われている。
【0030】
連結部材10における横杆10bの左右方向の中央部に形成された上向膨出部10cの上面には、座体2支持用の支基15の後端が、支基15の前端部が横杆10bの前方に突出するようにして、ボルト16により固着されている。
【0031】
支基15の上端の高さは、連結部材10を上向コ字状として、その起立片10aの上端を側脚9の頂部に、かつ横杆10bを後脚9bの取付片12にそれぞれ固着したことにより、側脚9の頂端より若干上方に突出する程度とされている。
【0032】
上記背凭れ支持フレーム3は、図3及び図5に示すように、座体2の後方において起立するとともに、下端に、斜め後ろ上方に傾斜する前向腕部17aが連設された左右1対の側部フレーム17、17と、両側部フレーム17の上端同士を結合している後向凸円弧状の上部フレーム18とからなり、全体形は、前後面視ほぼ縦長下向コ字状をなしている。
【0033】
図4及び図5に示すように、左右の側部フレーム17の下端に連設された前向腕部17a、17a同士の左右寸法は、左右1対の側脚9における後脚9b、9b間の離間寸法よりも小とされ、背凭れ支持フレーム3を後傾させた際、前向腕部17aが左右の後脚9b間において、それと干渉しないで傾動しうるようにしてある。
【0034】
図6に示すように、左右の前向腕部17aの前端には、側脚9の頂部の短軸部11とほぼ同軸をなす内向折曲部17bが連設され、この内向折曲部17bは、支基15内に設けられた、例えば公知のゴムトーションユニット等のリクライニング機構における左右方向を向くトーション軸(いずれも図示略)に、回動可能かつ常時側面視反時計回りに付勢された状態で連結されている。これにより、背凭れ支持フレーム3及びそれに取付けられた背凭れ6は、着座者が背凭れ6を後方に押動すると、支基15を中心として後傾するようになる(図4参照)。
【0035】
支基15の前端に連設された、左右両側端部が支基15の外側方に突出する軸状支持部19の外側端面には、図3及び図6に示すように、上下方向を向く左右1対の座支持リンク20、20の下端における内向折曲部の内側面が、左右方向を向く枢軸21により、前後に回動可能に枢着されている。
【0036】
また、背凭れ支持フレーム3における左右の前向腕部17aの前端部上面には、座支持片22、22が上向に突設されている。23は、直方体状の肘掛け取付部で、座支持片22と連続するようにして、前向腕部17aの上面に突設され、この肘掛け取付部23に、肘掛け7の下端部が取り付けられている。
【0037】
上記左右の座支持リンク20の上端には、座体2の下面に取付けられた座枠24における前端部の左右両側部が、左右方向を向く枢軸25により回動可能に枢着され、また、上記左右の座支持片22の上端には、座枠24の後部側の左右両側部が、左右方向を向く枢軸26により回動可能に枢着されている(図3参照)。
【0038】
これにより、座体2の前部は、左右1対の座支持リンク20を介して、実質的に脚体1と一体をなす支基15の前端の左右両側部により支持されるとともに、座体2の後部寄りの中間部は、左右1対の座支持片22を介して、背凭れ支持フレーム3の左右の前向腕部17aにより支持されている。
【0039】
従って、図4に示すように、背凭れ支持フレーム3を背凭れ6と共に後傾させると、それと連動して座体2も後下方に傾動させられるようになる。なお、座体2の取付後においては、両側脚9における前脚9aの後部と後脚9bの前部が、座体2の両側端よりも内方に位置し、脚体1の両側脚9が外側方に大きく突出しないようにしてある(図2参照)。
【0040】
以上説明したように、上記実施形態の椅子においては、背凭れ支持フレーム3の前下端が、脚体1の両側脚9、9間の中央上部、すなわち座体2の前方寄りの下方において、脚体1と実質的に一体をなす支基15に回動可能に枢着されているので、枢着部から背凭れ支持フレーム3及び背凭れ6の上端までの回転半径が大となり、小さな回動角度で背凭れ6を大きく後傾させることができるとともに、後傾時の後方への突出寸法も小さくなる。
【0041】
また、脚体1及び座体2の高さを高くすることなく、大きく後傾させうるので、安楽姿勢で着座しうる低座高型の椅子を提供することができる。
しかも、上記実施形態では、背凭れ支持フレーム3及び座体2の前部を、脚体1における正面視上向コ字形をなす連結部材10の横杆10a上に設けた、側脚9の頂部とほぼ同じ高さの支基15に枢着しているので、座高はより低くなり、より安楽した姿勢で着座することができる。
【0042】
背凭れ支持フレーム3の前向腕部17aの前後寸法が比較的長く、その回転半径も大きいだけでなく、座体2の下方において斜後ろ上方に傾斜しており、かつその前下端を、への字形をなす側脚9の頂部とほぼ等高をなす位置に枢着してあるので、前向腕部17aの回動可能角度を大きくすることができ、その後端が床面と干渉する恐れはない。
【0043】
脚体1の両側脚9における前脚9aと後脚9bは、平面視ハ字形をなすように外側方に拡開し、かつ後脚9bの前後寸法を前脚9aよりも長寸としているため、椅子の安定性は高く、かつ背凭れ6を後傾したときの安定性にも優れる。
また、左右の前脚9aが外側方に拡開しているので、着座者の下肢部が前脚9aに当たる恐れは小さい。
【0044】
なお、上記実施形態においては、背凭れ支持フレーム3の前向腕部17aを、支基15に、枢着しているが、左右の側脚9の頂部、すなわち短軸部11の内側面に、適宜のリクライニング機構を介して枢着することもある。
【0045】
また、上記実施形態では、背凭れ支持フレーム3の傾動と連動して、座体2も後傾するものとしたが、座体2は、単に支基15を含む脚体1の上部適所に固定的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 脚体
2 座体
3 背凭れ支持フレーム
4 背凭れ板
5 クッション体
6 背凭れ
7 肘掛け
8 キャスタ
9 側脚
9a前脚
9b後脚
10 連結部材
10a起立片
10b横杆
10c上向膨出部
11短軸部
12取付片
13ボルト
14キャップ
15支基
16ボルト
17側部フレーム
17a前向腕部
17b内向折曲部
18上部フレーム
19軸状支持部
20座支持リンク
21枢軸
22座支持片
23肘掛け取付部
24座枠
25枢軸
26枢軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
座体を支持する脚体に、前面に背凭れを取付けた背凭れ支持フレームを、前記座体の後方において起立する位置から後傾しうるように枢着してなる椅子において、
前記脚体を、前下方に傾斜する前脚と、後下方に傾斜するとともに、平面視後向ハの字状をなすように外側方に拡開する後脚とを有する側面視山形状の左右1対の側脚を備えるものとし、前記背凭れ支持フレームの下端に連設された前方を向く左右1対の前向腕部の前端部を、両前向腕部が前記左右の後脚間において後傾しうるように、前記左右の側脚間において前記座体の下方における脚体の適所に枢着するとともに、前記左右の前向腕部に、肘掛けの下端部を、その上部が前記前脚と後脚との連結部付近よりも外側方に位置するようにして取付けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
肘掛けの下端部を、前向腕部の上面に突設した肘掛け取付部に取付けてなる請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
左右の前向腕部の前端部を、側脚の山形をなす頂部とほぼ等高をなす位置において、脚体の適所に枢着してなる請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
左右の側脚の頂部付近同士を、左右方向を向く連結部材により連結し、この連結部材の中央部上面に、座体を支持する支基を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
左右の側脚における前脚を、平面視前向ハの字状をなすように、外側方に拡開してなる請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。
【請求項6】
側脚を、後脚の前後寸法が前脚よりも長寸をなす側面視への字状としてなる請求項1〜5のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91018(P2012−91018A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−355(P2012−355)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2006−162631(P2006−162631)の分割
【原出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】