説明

椅子

【課題】座の下方に、座を撓ませるために十分な空間を確保することができるとともに、座を安定よく支持することができる椅子を提供する。
【解決手段】脚体3によって支持された支基5の左右両側部に、前後方向を向く左右1対の基部杆10を設け、左右の基部杆10の前端に、上方に延出する1対の座支持杆11を連設し、基部杆10の後端に、上方に延出する背凭れ支持杆12を連設し、座支持杆11の上端に、座6の前部および両側部を支持する、平面視においてコ字状の座受けフレーム14における前部14aを固着し、背凭れ支持杆12に、座受けフレーム14の後端を固着し、座受けフレーム14に座を取付け、左右1対の背凭れ支持杆12に背凭れを取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
会議室等の狭い共有スペースにおいて使用される椅子として、座を左右方向に回動可能とし、背凭れを後傾不能とした椅子がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−325931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている椅子においては、左右の背凭れ支持杆を、左右方向を向く横長の支基の両側部に取付けるとともに、座を支基の上に取付け、支基の中央部を脚柱によって支持するようになっているので、座と支基との間に、座を下方に撓ませるための十分な空間を確保できず、また、座の支持が不安定になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、座の下方に、座を撓ませるための十分な空間を確保することができるとともに、座を安定よく、簡易な構造で脚体に支持することができるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)脚体によって支持された支基の左右両側部に、前後方向を向く左右1対の基部杆を設け、左右の前記基部杆の前端に、上方に延出する1対の座支持杆を連設し、前記基部杆の後端に、上方に延出する背凭れ支持杆を連設し、前記座支持杆の上端に、座の前部および両側部を支持する、平面視においてコ字状の座受けフレームにおける前部を固着し、前記背凭れ支持杆に、前記座受けフレームの後端を固着し、前記座受けフレームに座を取付け、前記背凭れ支持杆に背凭れを取付ける。
【0007】
このような構成とすると、座と支基との間には、座の前部および両側部を支持する座受けフレームと、座受けフレームを支持する上下方向を向く座支持杆、および背凭れ支持杆しか存在しないので、座と支基との間に、座を下方に撓ませるのに十分な空間を確保することができる。
【0008】
また、座の前部、および左右の両側部を支持する座受けフレームを、左右の座支持杆と、左右の背凭れ支持杆によって支持するので、座を安定よく、しかも簡単な構造で支持することができる。
さらに、支基を脚体に取付けるだけで、座受け支持杆、背凭れ支持杆、および座受けフレームを脚体によって支持することができる。
因みに、「コ字状の座受けフレーム」とは、口字状の座受けフレームをも含むものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、左右の前記背凭れ支持杆における上下方向の中間部同士を、左右方向を向く連結杆によって連結し、前記連結杆に、前記座受けフレームの後端を固着する。
【0010】
このような構成とすると、連結杆によって、左右の背凭れ支持杆の剛性を高くすることができるとともに、左右の背凭れ支持杆が左右に広がるのを阻止することができる。また、座受けフレームの後部を、連結杆によって確実に支持することができる。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記連結杆に、前記背凭れ支持杆を挿通させる貫通孔を設ける。
【0012】
このような構成とすると、背凭れ支持杆を連結杆の貫通孔に挿通させるだけで、背凭れ支持杆に連結杆を簡単に取付けることができる。
【0013】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、前記支基における左右の側部に、上方に向かって開口する1対の嵌合凹部を設け、左右の前記基部杆の下部を前記嵌合凹部に嵌合させることにより、前記支基に前記基部杆を固着する。
【0014】
このような構成とすると、支基に基部杆を簡単に位置決めして取付けることができる。また、嵌合凹部の開口縁と基部杆とを溶着等によって容易に固着することができる。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前記支基の両側部と、前記支基の上部を覆う蓋の両側部とのいずれか一方に設けた係合凸部を、他方に設けた係合凹部に嵌合させる。
【0016】
このような構成とすると、支基の左右両側部に設けられた基部杆の上部を、蓋によって簡単に覆うことができ、基部杆が位置ずれしたり、外れたりしないようにすることができる。
【0017】
(6)左右の前記座支持杆を、左右方向を向く横杆によって連結し、前記横杆に前記座受けフレームの前部を固着する。
【0018】
このような構成とすると、座受けフレームをより安定よく支持することができるとともに、座支持杆を座受けフレームに固着し易くなる。
【0019】
(7)前記座支持杆を外方、かつ斜め上方に延出させるとともに、前記背凭れ支持杆を外方、かつ斜め上方に延出させ、さらに上方に屈曲させることにより、上方に延出させ、左右の前記背凭れ支持杆の屈曲部より僅かに上の部分を、前記連結杆によって連結する。
【0020】
このような構成とすると、座を広い面積で安定よく、しかも下方へ撓む空間を十分に確保して支持することができるとともに、座に比べて、支基を小型化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、座を左右1対の座支持杆と、左右1対の背凭れ支持杆によって支持するので、座を安定よく支持することができる。また、座と支基との間に、座を下方に撓ませるのに十分な空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】支持枠を斜め前方の上方から見た斜視図である。
【図4】図2におけるIV−IV線拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を備える椅子を斜め前方の下方から見た斜視図である。
【図6】図1におけるVI−VI線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、この肘掛け付き椅子は、先端部にキャスタ1を備える放射状をなす5本の脚杆2を有する脚体3を備えている。脚体3の中央には、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱4が立設され、脚柱4の上端には、支基5が固着されている。支基5には、座6および背凭れ7を支持する支持枠8が取付けられている。図における支基5の左側部には、図示しないガススプリングの左右方向を向く操作レバー9が突出している。
【0024】
支基5は、平面視においてほぼ四角形をなしている(図3、図5参照)。支持枠8は、支基5の左右の両側部に埋設固着された前後方向を向く1対の基部杆10、10と、各基部杆10の前端に連設された、外方、かつ斜め前上方に延出する座支持杆11と、各基部杆10の後端に連設された、斜め後上方を向き、かつ、途中から上方に屈曲12aする背凭れ支持杆12と、前上方を向く左右の座支持杆11、11の上端同士を連結する、左右方向を向く横杆13(図5参照)と、背凭れ支持杆12、12に固着され、座6の前部および左右の両側部を支持する座受けフレーム14とを有している。
【0025】
基部杆10は、図4に示すように、支基5の左右の両側部に設けた上向凹部15内に嵌合され、かつ上面を上向凹部15の開口縁に溶着10aすることにより、支基5に強固に固着されている。
【0026】
支基5の下面に設けた下ケース16の上方を向く外周縁に設けた、上方および外側方に向かって開口する係合凹部17に、支基5および左右の基部杆10の上部を覆う蓋板18の外周縁に受けた下向の係合凸部19を係合してある。
【0027】
左右の背凭れ支持杆12、12の屈曲部12a、12aより僅かに上方同士は、背凭れ支持杆12より大径の左右方向を向く連結杆20によって連結されている。すなわち、連結杆20の両側部に設けた上下方向を向く貫通孔21は、背凭れ支持杆12へ嵌合されている。
【0028】
座受けフレーム14は、座6の前部を支持する左右方向を向く前杆14aと、前杆14aの左右の両端から後方に延出し、かつ中間部が緩やかに山形に屈曲する左右1対の側杆14b、14bと、両側杆14b、14bの後端に連設された互いに内方を向く後杆14c、14cとを有している。
【0029】
座受けフレーム14の前杆14aは、図5に示すように、左右の座支持杆11、11の前端同士を連結する横杆13の前部に固着されている。同じく後杆14c、14cは、図3に示すように、左右の背凭れ支持杆12、12を連結する連結杆20に固着されている。
なお、座受けフレーム14の後杆14c、14cを省略し、座受けフレーム14の側杆14b、14bの後部を、背凭れ支持杆12、12に固着してもよい。
【0030】
座受けフレーム14の前杆14aにおける上面には、前方に向かって突出する複数の係合片22aを有する左右方向を向く係合部材22が固着されている。各側杆14bの中央より僅かに後方の部分には、内方に向かって突出する係合片23aが設けられている。座受けフレーム14の後杆14cには、前方に向かって突出する係合片23bが設けられている。
【0031】
座6は、図6に示すように、四角形の枠状をなす座枠24と、座枠24の内部空間に張設された張材25とからなり、座枠24の前片24aには、後方に向かって開口する係合溝26が設けられている。座枠24の後片24bは、後上方に向かって傾斜している。後片24bの下面には、互いに前後方向に間隔を開けて設けられた、下方に突出する凸部24cと、下方に突出する突片24dとによって、下方に向かって開口している凹部27が形成されている。
【0032】
座6を、座受けフレーム14に取付けるには、座枠24における前片24aの係合溝26を、座受けフレーム14の前片14aにおける係合片22aに係合させる。また、座枠24の後片24bにおける凹部27内に、座受けフレーム14の後杆14c、および連結杆20を嵌合し、後杆14cの係合片23bを、座枠24における凸部24cの下面に、ねじによって固着する。
【0033】
さらに、座枠24の左右の両側部における係合溝(図示略)を、座受けフレーム14における左右の両側杆14b、14bの係合片23a、23aに係合させる。
これにより、座6は、座受けフレーム14に位置ずれすることなく、確実に取付けられる。
【0034】
図2に示すように、背凭れ7は、左右の両側部7a、7aにおける下部を、背凭れ支持杆12、12の屈曲部12a、12aより上の部分に嵌合させることにより取付けられる。なお、この背凭れ7、およびその嵌合部分の具体的な構造については、本発明と直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
【0035】
本実施形態の椅子においては、基部杆10の両端に、上方に延出する座支持杆11および背凭れ支持杆12が連設されているので、支持枠8を製造する工程で、杆材を曲げるだけで、座を下方に撓ませる空間を確保することができる。
【0036】
連結杆20は、直線状の杆材を使用することができるため、加工コストが嵩むのを抑えることができる。また、連結杆20に座受けフレーム14における左右の取付杆14c、14cを固着するため、座6の後部を広い面積で支持することができる。
【0037】
座受けフレーム14は、予め平面視においてコ字状となるように形成しておき、その前部14aを支持枠8の横杆13に固着し、後部の取付杆14c、14cを連結杆20に固着するだけで、支持枠8に取付けることができる。したがって、座受けフレーム14の前部14a、側部14b、14b、および取付杆14c、14cを別個に、座支持杆11、および背凭れ杆12に取付ける場合に比べて、加工が容易になる。
【0038】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、例えば次のような変形した態様での実施が可能である。
(1)支基5を座受けフレーム14と同様の大きさとするとともに、支基5の左右の両側部に基部杆10を設け、基部杆10の前端および後端から、座支持杆11、および背凭れ支持杆12を上方に向かって延出させ、その上に座受けフレーム14を取付ける。
(2)連結杆20を、左右の背凭れ支持杆12に溶着等によって固着する。
(3)座受けフレーム14を口字状とし、左右の側杆14b、14bの後端を、両側杆14b、14bの後端に連設した左右方向を向く後杆によって連結する。
【符号の説明】
【0039】
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚体
4 脚柱
5 支基
6 座
7 背凭れ
8 支持枠
9 操作レバー
10 基部杆
10a 溶着(部)
11 座支持杆
12 背凭れ支持杆
12a 屈曲部
13 横杆
14 座受けフレーム
14a 前杆
14b 側杆
14c 後杆
15 上向凹部
16 下ケース
17 係合凹部
18 蓋板
19 係合凸部
20 連結杆
21 貫通孔
22 係合部材
22a 係合片
23a 係合片
23b 係合片
24 座枠
24a 前片
24b 後片
24c 突部
24d 突片
25 張材
26 係合溝
27凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体によって支持された支基の左右両側部に、前後方向を向く左右1対の基部杆を設け、左右の前記基部杆の前端に、上方に延出する左右1対の座支持杆を連設し、かつ前記基部杆の後端に、上方に延出する背凭れ支持杆を連設し、前記座支持杆の上端に、座の前部および両側部を支持する、平面視においてコ字状の座受けフレームにおける前部を固着し、前記背凭れ支持杆に、前記座受けフレームの後端を固着し、かつ前記座受けフレームに座を取付け、前記背凭れ支持杆に背凭れを取付けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
左右の前記背凭れ支持杆における上下方向の中間部同士を、左右方向を向く連結杆によって連結し、前記連結杆に、前記座受けフレームの後端を固着した請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記連結杆に、前記背凭れ支持杆を貫通させる貫通孔を設けた請求項1または2記載の肘掛けの肘当て取付構造。
【請求項4】
前記支基における左右の側部に、上方に向かって開口する1対の嵌合凹部を設け、左右の前記基部杆の下部を前記嵌合凹部に嵌合させることにより、前記支基に前記基部杆を固着した請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
前記支基の両側部と、前記支基の上部を覆う蓋の両側部とのいずれか一方に設けた係合凸部を、他方に設けた係合凹部に嵌合させた請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。
【請求項6】
左右の前記座支持杆を、左右方向を向く横杆によって連結し、前記横杆に前記座受けフレームの前部を固着した請求項1〜5のいずれかに記載の椅子。
【請求項7】
前記座支持杆を外方、かつ斜め上方に延出させるとともに、前記背凭れ支持杆を外方、かつ斜め上方に延出させ、さらに上方に屈曲させることにより、上方に延出させ、左右の前記背凭れ支持杆の屈曲部より僅かに上の部分を、前記連結杆によって連結した請求項2記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95932(P2012−95932A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248089(P2010−248089)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】