説明

椅子

【課題】背フレームに背もたれを連結した椅子において、背もたれの取り付けが簡単であると共に連結部の特定部分に負担が掛からない構造を提供する。
【解決手段】背もたれは背インナーシェルを有しており、背インナーシェルの左右両端部にサイド連結部が形成されている。サイド連結部は背支柱14の上端に形成したサイド受け部14に連結される。サイド受け部14aに設けた軸受け部29に支軸30が嵌まることで、背もたれの回動が許容される。軸受け部29の切り開き穴29aは斜め上方に開口している一方、支軸30は断面小判型であり、背もたれを後傾姿勢するとことで、支軸30を軸受け部29に嵌め込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は椅子に関し、特に、背もたれの取り付け構造(連結構造)に特徴がある椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば事務用に多様されている回転椅子では、背もたれはベースに連結された背フレームに取り付けていることが多い。その例として特許文献1,2には、ランバーサポート部を有する背もたれを背フレームに取り付けてなる椅子において、背もたれをその上端部を中心にして回動するように背フレームに連結し、背もたれの下部は前後移動可能な状態で背フレームに連結することが記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、座の左右側面にブラケット(背支柱)を固定し、このブラケットに背もたれを取り付けるにおいて、背もたれを、その上下中途部を中心にして回動するようにブラケットに連結して、ピンの操作によって回動姿勢を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−434号公報
【特許文献2】特開2004−49719号公報
【特許文献3】実公昭46−8447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いずれの特許文献も背もたれはピンで連結しているため、ピンの管理に手間が掛かるのみならず、背もたれを手で持って所定の位置に保持しつつピンを挿入せねばならないため、組み立てが面倒であるという問題がある。また、着座した人がもたれ掛かることによる背もたれ荷重はピン及び軸受け部に直接に作用するため、磨耗の進行が速くなる問題があると共に、加工誤差等のために動きが悪くなる可能性もある。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は各請求項の構成を有している。このうち請求項1の発明は、座と背もたれと背フレームとを有しており、前記背もたれのうちその下端にはロア連結部を設け、前記ロア連結部よりも上の高さ位置には左右のサイド連結部を設けている一方、前記背フレームには、前記背もたれのロア連結部が取り付くロア受け部と、前記背もたれのサイド連結部が取り付く左右のサイド受け部とを設けている構成であって、前記サイド連結部とサイド受け部とに、背もたれを側面視で後傾姿勢にすると互いに嵌まり合って背もたれを所定の姿勢に戻すと前後方向及び左右方向並びに上下方向に抜け不能に保持される係合部を設けている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記係合部は、左右に配置された内リブと外リブとに連結された左右横長の支軸と、前記支軸が嵌まる切り開き穴を有する軸受け部とから成っており、軸受け部の切り開き穴は側面視で斜め方向に開口させると開口部は幅狭になっている一方、前記支軸は、背もたれを側面視で後傾させた状態でのみ前記切り開き穴に嵌まるように非円形の断面形状になっている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2において、 前記内外リブと軸受け部との間には隙間が空いており、前記サイド連結部とサイド受け部とのうち前記軸受け部を設けている部分に、前記内外リブのうちいずれか一方又は両方が支軸の軸方向にずれ移動することを規制する規制手段を設けており、更に、前記サイド連結部とサイド受け部とに、背もたれが後ろ向きに押されると互いに当接する荷重作用部を設けており、かつ、前記ロア連結部は前後位置調節可能な状態で前記ロア受け部で支持されており、前記ロア連結部の前後位置を変えると背もたれは前記支軸を中心に回動して姿勢が変更される。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、背もたれを使用状態の姿勢よりも後傾姿勢とすることにより、サイド連結部を背フレームのサイド受け部に連結することができ、背もたれを所定の姿勢に戻すとサイド連結部はサイド受け部から離反不能に保持される。すなわち、ピン等の連結部材を使用することなく、背もたれのサイド連結部を背フレームのサイド受け部に連結できる。このため、連結部材の管理に要する手間を無くすことができると共に、組み立てに際して一々背もたれを所定の姿勢に保持しておく必要はないため、組み立て作業の能率も向上できる。
【0011】
係合部は様々の構造を採用できるが、請求項2のように切り開き穴を有する軸受け部と非円形の支軸との組み合わせを採用すると、簡単な構造で背もたれを背フレームから分離不能に保持できて好適である。
【0012】
請求項3の発明では、分離防止機能は支軸と軸受け部とが担い、左右ずれ防止機能は内外リブのうち片方又は両方と規制手段とが担い、背もたれ荷重の支持は荷重作用部が担っており、連結に必要な機能を異なる部位に担わせているため、特定の部位に過大な荷重が掛かって磨耗が発生する等の不具合を防止できると共に、何らかの問題が起きた場合の対処も簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る椅子を示しており、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は背フレームを後ろにずらした分離側面図である。
【図2】分離斜視図である。
【図3】支持機構部と座部とを省略した斜視図である。
【図4】(A)は背フレームを下から見た斜視図、(B)は第2背フレームをひっくり返した状態での分離斜視図である。
【図5】(A)(B)とも背もたれと第2背フレームとの分離斜視図である。
【図6】(A)(B)とも初期角度調節装置を説明するための分離斜視図である。
【図7】(A)は操作具と背もたれとの分離斜視図、(B)は初期角度調節装置の斜視図、(C)は背インナーシェルの下端部の斜視図である。
【図8】図1(A)の VIII-VIII視断面図である。
【図9】(A)は要部の縦断側面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図10】(A)は初期角度調節装置を示す断面斜視図、(B)は図8の XB-XB視断面図である。
【図11】姿勢固定手段の箇所の縦断側面である。
【図12】第2実施形態を示す図で、(A)は全体斜視図、(B)は要部の分離斜視図である。
【図13】(A)は第2実施形態の断面斜視図、(B)は切断位置を変えた状態での断面図、(C)は(B)の一部を取り出した模式図である。
【図14】第3実施形態を示す図で、(A)(B)はサイド受け部の斜視図、(C)はサイド連結部の斜視図である。
【図15】第3実施形態を示す図で、(A)ははサイド受け部の斜視図、(B)は要部の平断面図である。
【図16】第4実施形態に係るロア連結部とロア受け部との分離斜視図である。
【図17】第4実施形態に係る周面カムの取り付け手順を示す分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0015】
(1).椅子の概略
まず、第1実施形態に係る椅子の概要を主として図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、椅子は、脚支柱1(図1(C)参照)のみを表示している脚装置と、脚支柱1の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを有している。ベース2は上向きに開口した箱状に形成されている。
【0016】
例えば図2に示すように、ベース2の上に金属板製の中間金具(座受け金具)5が配置されており、この中間金具5に樹脂製の座アウターシェル6が取り付けられている。座3は、樹脂製の座インナーシェル(座板)とその上面に重ね配置した座クッション材とを有しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0017】
例えば図2に示すように、ベース2には第1背フレーム7が後傾動自在に連結されていると共に、第1背フレーム7にはその後ろに位置した第2背フレーム8が固定されており、第2背フレーム8に背もたれ4が取り付けられている。第1背フレーム7はベース2の外側位置で前向きに延びるアーム部7aを有しており、左右アーム部7aの前端部が左右横長の第1軸9でベース2に連結されている。従って、背もたれ4は第1軸9の軸心回りに前後傾動する。なお、第1背フレーム7はアルミダイキャスト品、第2背フレーム8は樹脂の成形品であるが、それぞれアルミダイキャスト品又は樹脂の成形品のいずれかを採用することも可能である。
【0018】
本実施形態の椅子は、背もたれ4の後傾に連動して座3が後退しつつ後傾するシンクロタイプの椅子であり、そこで、図2から理解できるように、中間金具5の前部をベース2に設けた左右の受け部材10に前後動自在に装着する一方、中間金具5の後部は、第1背フレーム7に上向き突設したブラケット部11に左右横長の第2軸12で連結されている。ベース2の内部には、背もたれ4及び座3の後傾動を弾性的に支持する反力ユニットや、背もたれ4の傾動を制御するロック用ガスシリンダ等が配置されているが、本願発明との直接の関係はないので詳細は省略する。
【0019】
第2背フレーム8は、第1背フレーム7に固定された基部13とその左右両端部から上向きに突出した角状の背支柱14とを有しており、背支柱14の上端部に背もたれ4を前後傾動可能に連結すると共に、基部13には初期角度調節装置15の一部を設けている。初期角度調節装置15によって背もたれ4の支持位置を前後方向に変えることで、非ロッキング状態での背もたれ4の初期姿勢(初期角度)が調節される。
【0020】
(2).背もたれとその取り付け構造
次に、各部位の詳細を図4以下の図面も参照して説明する。まず、背もたれ4の詳細とその取り付け構造を説明する。図1(A)に簡単に表示するように、背もたれ4は、ポリリプロピレン等の樹脂の成形品である背インナーシェル18と、その前面に張ったクッション19と、クロス等の表皮材20とを有している。従って、背もたれ4の外形は背インナーシェル18の外形と同じになる。図5に示すうに、背インナーシェル18の背面には、縦横に延びる格子状の多数の補強リブ21が形成されている。
【0021】
例えば図3や図9(A)に示すように、背もたれ4は、着座した人の腰部が当たるランバーサポート部22を有しており、このため、側面視及び縦断側面視で前向き突形の形状になっている。正確に述べると、背インナーシェル18は、縦断側面視でランバーサポート部22が最も前に位置するように湾曲している。また、背インナーシェル18は平面視では前向き凹状に緩く湾曲しているが、湾曲の程度はランバーサポート部22で最も大きくて、上に行くに従って湾曲の程度は小さくなっており、上端では平坦に近い形態になっている。
【0022】
例えば図3に示すように、背もたれ4は、ランバーサポート部22の箇所で最も左右横幅が大きくて、ランバーサポート部22から上と下に離れるに従って横幅が小さくなるように設定している。従って、背もたれ4(背インナーシェル18)は正面視で略六角形に近い形状になっている。ランバーサポート部22は背インナーシェル18の下部に寄っているので、背もたれ4は、正確には下膨れの六角形状の形態になっており、ランバーサポート部22の左右端部は正面視で横向き突出した山形の形態を成している。
【0023】
そして、背インナーシェル18におけるランバーサポート部22の左右端部に、背支柱14に連結するためのサイド連結部23を設けている。サイド連結部23はその周辺から前向きに突出している。背インナーシェル18の前面側部には、サイド連結部23から上向きに延びる縦リブ24を設けている。
【0024】
図4に示すように、第1背フレーム7のうちアーム部7aを除いた基部は基本的に板状又はブロック状の形態を成している一方、第2背フレーム8の基部13も板状又はブロック状に近い形態であり、第1背フレーム7の後部に第2背フレーム8における基部13の前部を重ねて、両者をビス25で締結している。この場合、第1背フレーム7に形成した後ろ向き開口の空所26に、第2背フレーム8における基部13の前端に設けた突部13aを嵌め込むと共に、第1背フレーム7に設けた横長の嵌合突起27と、第2背フレーム8の基部13の下面に設けた横長の嵌合溝28とを嵌合させている。このため、両背フレーム7,8は1本のビス25で強固に締結される。
【0025】
例えば図5に示すように、第2背フレーム8における背支柱14の上端には、前向きに開口した拳状のサイド受け部(頭部)14aが形成されており、このサイド受け部14aに、請求項に記載した係合部の一環として、前向きに開口した切り開き穴29aを有する軸受け部29を一体に形成している。他方、背インナーシェル18のサイド連結部23には、軸受け部29と対を成す係合部として、軸受け部29に嵌まる支軸30を一体に形成しており、両者の嵌まり合いにより、背インナーシェル18のサイド連結部23が背支柱14のサイド受け部14aに前向き抜け不能に連結されている。支軸30は、その外側に位置した外リブ31aとその内側に設けた内リブ31bとに一体に繋がっている。
【0026】
図10(B)に明示するように、軸受け部29における切り開き穴29aの開口部は溝幅が狭いくびれ部になっている一方、支軸30は断面小判形になっているが、背もたれ4を所定の姿勢にセットした状態では支軸30が略水平姿勢になるように設定する一方、軸受け部29における切り開き穴29aの開口方向を側面視で水平に対して斜め上向きに開口するように設定している。このため、背もたれ4を所定の姿勢(使用状態の姿勢)に対して後傾させた姿勢にすることで、支軸30を軸受け部29に嵌め込みできると共に、背インナーシェル18の下端を第2背フレーム8に連結して背もたれを使用状態の姿勢に戻すと、背もたれ4に前向きの外力が作用しても支軸30は軸受け部29から抜け不能に保持される。従って、背もたれ4の取り付けを簡単に行える。
【0027】
図5及び図8に示すように、背支柱14のサイド受け部14aのうち軸受け部29の内側の部位に、請求項に記載した荷重作用部の一環として、支軸30の半径より遙かに大きな曲率の円弧面を有する荷重受け部32が形成されている一方、背インナーシェル18のサイド連結部23には、荷重受け部32に嵌まる円弧状の荷重当て部33を一体に設けている。荷重当て部33も荷重作用部の一環を成しており、荷重当て部33が荷重受け部32に広い面積で当たっている(面接触している)ことにより、背インナーシェル18は前後回動を阻害されることなく左右の背支柱14によって安定的に支持されている。
【0028】
また、背支柱14のサイド受け部14aのうち軸受け部29と荷重受け部32との間には規制手段の一例としての規制溝32aが空いており、この規制溝32aに背インナーシェル18の内リブ31bが左右ずれ不能にきっちり嵌まっている。このように、規制溝32aと内リブ31bとの嵌まり合いによって背インナーシェル18は左右ずれ不能に保持されているため、ランバーサポート部22に後ろ向きの背もたれ荷重が作用してサイド連結部23が内向きに引っ張られても、サイド連結部23が内側にずれ動くことはない。このため取り付け強度が高い。規制溝32aの底面と内リブ31bの外周は側面視で支軸30の軸心回りの曲率の円弧状に形成されており、従って、背インナーシェル18が支軸30の軸心回りに回動することが許容されている。
【0029】
上述のように、背支柱14の上端と背インナーシェル18の組付構造において、前後方向の抜け止め、背にかかる荷重の支持、左右のずれ防止をそれぞれ別の特定部位で行っている。具体的には、前後方向の抜け止めは支軸30と軸受け部29で行っており、両者に他の機能(背にかかる荷重の支持、左右のずれ防止)を持たせないよう、支軸30は、その外周面と軸受け部29の内周面との間に若干の隙間を持たせた状態で軸受け部29に遊嵌されていると共に、軸受け部29の左右幅寸法よりも支軸30の左右幅寸法を若干幅広に設定することで、外リブ31aが軸受け部29の側面に当らないようにしている。また、内リブ31bの後端面は背支柱14における規制溝32aの底面に当たらないように設定されている。
【0030】
(3).初期角度調節装置
背インナーシェル18の下端部は、その左右中間部が初期角度調節装置15を介して第2背フレーム8に連結されている。この点を次に説明する。
【0031】
例えば図7(A)(C)に示すように、背インナーシェル18の下端部の左右中間部に前向きに突出したロア連結部35を設けており、このロア連結部35には下向きに開口したセンター溝36が形成されていると共に、センター溝36を横切る状態でピン穴37が空いている。更に、背インナーシェル18の下端部のロア連結部35の右側の部位には、ロア連結部35に接続された上下のリブ38,39を設け、上下リブ38,39の間に操作具40を左右スライド自在に装着している。ロア連結部35と操作具40とは初期角度調節装置15の構成要素である。操作具40には、人が掴むことのできる指掛け部40aを設けている。
【0032】
操作具40には、ロア連結部35のピン穴37に嵌まるピン状のロックピン41が一体に形成されている。従って、操作具40を左右スライドさせると、ロックピン41をロア連結部35のセンター溝36に出没させることができる。上リブ38には、操作具40を背インナーシェル18から外れないように保持する爪42を設けている。
【0033】
また、操作具40には、背インナーシェル18に向いて開口したばね配置用空所43aと、ストローク規制用空所43bとを設けている。ばね配置用空所43aがロックピン41の側に位置し、ストローク規制用空所43bが指掛け部40aの側に位置している。他方、背インナーシェル18には、ばね配置用空所43aに入り込むばね受け突起44aと、ストローク規制用空所43bに入り込むストローク規制突起44bとを設けており、ばね受け突起44aとばね配置用空所43aの内側面43eとの間に圧縮コイルばね43cを配置している。このため、操作具40はロックピン41がロア連結部35に嵌まり勝手となるように(ロック位置が保持されるように)付勢されている。ばね43cは、操作具40の前面に設けた窓穴43eから押し込むことにより、ばね配置用空所43aに配置される。
【0034】
操作具40を手で外側に引いたときの後退位置の規制は、ストローク規制用空所43bの内側面をストローク規制突起44bに当てることで行われる。なお、操作具40がばねで押されたときの前進位置の規制は、ばね配置用空所43aの内側面をストローク規制突起44bに当てることで行ってもよいし、操作具50の端部をロア連結部35の側面に当てることで行ってもよい。
【0035】
図7(B)に示すように、第2背フレーム8における基部13の後端には、座インナーシェル18におけるロア連結部35のセンター溝36に下方から嵌まるブロック状のロック体45を設けており、このロック体45に、操作具40のロックピンが嵌まる3つのロック穴46を空けている。従って、ロック体45も初期角度調節装置15の構成要素であると共に、請求項に記載したロア受け部でもある。3つのロック穴46は、背インナーシェル18の回動支点を中心にした円弧上の存在しており、ロックピンがいずれかのロック穴46に選択的に嵌まることにより、背もたれ4の初期姿勢を3段階に変更できる。敢えて述べるまでもないが、ロック穴46の数は3個には限らず、2個又は4固以上であってもよい。
【0036】
ロック体45は樹脂製で第2背フレーム8とは別体に構成されており、第2背フレーム8の基部13に下方から嵌め込み装着されている。このため、例えば図6に示すように、第2背フレーム8の基部13には、ロック体45が下方から嵌まる穴47を空けていると共に、ロック体45を後ろから支えるセンターガード部48を設け、センターガード部48に、ロック体45が嵌まる前向き開口の溝49を設けている。ロック体45には、背インナーシェル18の下端が前向きに大きく前進することを規制する前壁45aを設けている。
【0037】
図9に示すように、第2背フレーム8の下面にはロック体45が入り込む凹所50を形成し、ロック体45に設けた下フランジ45bを凹所50の底面に重ねている。そして、凹所50の内側面に支持爪51を設け、下フランジ45bが支持爪51を下方から乗り越えることにより、ロック体45は落下不能に保持されている。下フランジ45bと支持爪51とには、誘い込みのための傾斜面を形成している。また、下フランジ45bには変形を容易ならしめるための穴45cを設けている。ロック体45は第2背フレーム8に一体に設けることも可能であるが、本実施形態のように第2背フレーム8とは別体に構成すると、加工が容易になる利点がある。
【0038】
ユーザーによっては背もたれ4の初期姿勢調節機能を必要としない場合もあり得る。そこで、本実施形態では、初期角度調節装置15を使用せずに背もたれ4の姿勢を一定に保持したままにすることも可能である。すなわち、本実施形態では、初期角度調節装置15を使用せずに姿勢固定手段を使用することにより、背もたれ4の初期姿勢を一定に保持することも可能である。姿勢固定手段は、例えば図6(A)に示すように、左右一対ずつの規制リブを有する上下開口のサイドガード部53、サイドガード部53に下方から嵌まったブロック状のサイド規制部54等を有しているが、詳細は省略する。
【0039】
(4).まとめ
既述のように、背インナーシェル18のサイド連結部23を背支柱14に取り付けるにおいて、前後方向の抜け止め機能は支軸30と軸受け部29との嵌まり合いで確保し、背もたれ4に作用した荷重の支持は荷重当て部33と荷重受け部32との嵌まり合いで確保し、背インナーシェル18の左右ずれ防止は内リブ31bと規制溝32aとの嵌まり合いで確保しているが、このように各機能を別々の部位に分担させることにより、各々の機能をしっかりと保持することができる。すなわち、取り付けの容易性と荷重の安定した支持と左右ガタつき防止とをしっかりと確保できる。
【0040】
また、量産過程で万一の不具合が発生した際も、その不具合の原因の特定と問題解決がしやすい(例えば、動きが滑らかでない場合にグリス等で対応するにおいて、グリスを塗布する場所を特定できる)等の利点がある。
【0041】
(5).第2実施形態
次に、初期角度調節装置15の別例である第2実施形態を図12,13に基づいて説明する。この実施形態では背フレーム60は単一構造になっており、背フレーム60の後端に背支柱14を一体に設けている。背インナーシェル18のランバーサポート部22が背支柱14の上端に連結されている点は第1実施形態と同じである。
【0042】
この第2実施形態では、操作具40は回転式のハンドルになっており、背フレーム60の左右中間部に設けた左右一対の軸受けリブ61で回転自在に保持されている。操作具40のうち左右軸受けリブ61の間に位置した先端部は角柱部40bになっており、この角柱部40bに周面カム62が相対回転不能に(すなわち、操作具40と一緒に回転するように)嵌まっている。周面カム62は、1つのセンターカム部63とその左右両側に位置した左右一対のサイドカム部64を有している。他方、背インナーシェル18の下端には、周面カム62が下方から嵌まるように下向きに開口したロア連結部65を一体に設けている(ロア連結部65は別体に製造し、背インナーシェル18に固定してもよい。)。
【0043】
センターカム部63とサイドカム部64とはその外周面をカム面としており、ロア連結部65の前内面をセンターカム部63が当接する前規制面65aと成し、ロア連結部65の後ろ内面をサイドカム部64が当接する後ろ規制面65bと成している。センターカム部63の外周には、軸心からの高さが異なる第1〜第3のカム面63a〜63cが形成され、サイドカム部64の外周にも軸心からの高さが異なる第1〜第3のカム面64a〜64cが形成されている。ロア連結部65は既述のように下向きに開口しているが、前規制面65aと後ろ規制面65bとの前後間隔L0は下に行くに従って大きくなるように設定している。
【0044】
さて、人が背もたれ4にもたれ掛かることにより、図13(C)に白抜き矢印Xで示すように、背インナーシェル18にはボス部30の軸心回りに回動しようとする外力が作用し、その外力は、ロア連結部65の後ろ規制面65bからサイドカム63を介して操作具40の角柱部40bに伝えられる。すなわち、背もたれ4のロッキングによって生じる背もたれ荷重は、サイドカム部64を介して操作具40で支持される。
【0045】
そして、ロア連結部65の後ろ規制面65bは、側面視で操作具40の軸心を通る背もたれ4の初期角度調節時における回動軌跡Oの接線と直交させている。このため、ロッキングに伴う背もたれ荷重によってサイドカム部64が回転しようとすることはなく、背もたれ荷重が安定的に支持される。つまり、背もたれ荷重によってサイドカム部64が意図することなく回転してしまう不具合はない。ロア連結部65の前規制面65aは後ろ規制面65bに対して傾斜しているが、これにより、ロア連結部65の内部はその前後幅が下向きに広がるテーパ形状になっているため、背フレーム60に背もたれ4を組み付ける際に両カム部63,64にロア連結部65を嵌め込み易くなると共に、金型を使用して成形するに際しての型抜きが容易になる。
【0046】
両カム部63,64は、センターカム部63の第1カム面63aが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第1カム面64aが後ろ規制面65bに当接し、センターカム部63の第2カム面63bが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第2カム面64bが後ろ規制面65bに当接し、センターカム部63の第3カム面63cが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第3カム面64cが後ろ規制面65bに当接している。背フレーム60の後端には、後ろ壁60aを設けている。
【0047】
本実施形態では、操作具40を回転操作することで背もたれ3の初期角度を3段階に調節することができ、かつ、背もたれ4は前後にガタ付き不能に保持される。なお、周面カム62の回転に対して抵抗が生じるが、ロア連結部65を弾性変形させることで周面カム62を回転させることができる。ロア連結部65の左右側板には、当該ロア連結部65が回動することを許容するため、操作具40が遊嵌する長穴71を設けている。
【0048】
この実施形態では、先にサイド連結部23を脚支柱14に連結し、次いで、周面カム62をロア連結部64に下方から嵌め込んでいる。そこで、図13(A)に示すように、背フレーム60には、周面カム62を挿通するめの逃がし穴60bが空いている。
【0049】
さて、前後の規制面65a,65bの前後間隔は下に行くに従って広がっているため、第1カム面63a,64aが当たる高さ位置と、第2カム面63b,64bが当たる高さ位置と、第3カム面63c,64cが当たる高さ位置が異なる。
【0050】
そこで、第1カム面63a,64aが当たっている高さ位置での前後規制面65a,66bの間隔寸法をL1、第2カム面63b,64bが当たっている高さ位置での前後規制面65a,65bの間隔寸法をL2、第3カム面63c,64cが当たっている高さ位置での前後規制面65a,65bの間隔寸法をL3とすると、第1カム面63a,64aの高さの和(69a+70a)をL1と略同じ寸法に設定し、第2カム面62b,63bの高さの和(69b+70b)をL2と略同じ寸法に設定し、第3カム面63c,64cの高さの和(69c+70c)をL3と略同じ寸法に設定している。これにより、前記規制面65a,66bを下広がりに傾斜させたものでありながら、背もたれ4をガタつきのない安定した状態に保持できる。
【0051】
(6).第3実施形態
次に、サイド連結部22とサイド受け部14aとの連結構造の別例である第3実施形態を説明する。この実施形態は基本的には第1実施形態と類似している。そこで、第1実施形態と同じ部分は同じ符号を付して説明は省略し、主として相違点を説明する。
【0052】
図15(B)に示すように、荷重当て部33が荷重受け部32に当たった状態では、支軸29の外周面と軸受け部29の内周面との間に若干の隙間E1が空いている。規制溝32aの内側面(荷重受け部38の外側面)には、内リブ31bの内側面が密接又は当接する規制リブ32bを外向きに突設している。規制溝32aの内部は規制リブ32bの存在によって複数のポケット部に仕切られた状態になっており、このポケット部にグリスを充填している。内リブ37と軸受け部29との間には、若干の隙間E2が空いている。
【0053】
背支柱14のサイド受け部14aのうち軸受け部29の外側には、外ストッパーリブ29bを前向きに突設している。このため、軸受け部29とは外ストッパー29bとの間にアウトサイド溝29cが形成されており、このアウトサイド溝29cに、サイド連結部22の外リブ31aが嵌まっている。図15(B)に示すように、外リブ31bの外面は外ストッパーリブ29bの内側面に当接又は密接しており、このため、サイド連結部22が左右外側にずれ移動することが阻止されている一方、外リブ31aの内側面と軸受け部29との間には若干の隙間E3が空くように設定している。従って、軸受け部29の左右両側に隙間E2,E3が空いている。
【0054】
このように、規制溝32bに内リブ31bが嵌まってアウトサイドリブ29cに外リブ31aが嵌まっていることにより、バックフレーム16は左右ずれ不能に保持されているが、バックフレーム18のサイド連結部22が左右内側にずれることは規制リブ32bに担わせて、バックフレーム18のサイド連結部22が左右外向きずれることはストッパーリブ29bに担わせ、更に、バックフレーム16の回転機能は軸受け部29と支軸30とに担わせて、更に、荷重の支持は荷重受け部32に担わせている。この実施形態では、外ストッパーリブ29bも規制手段を構成している。
【0055】
(7).第4実施形態
次に、図16,17に示す第4実施形態を説明する。この第4実施形態は株の連結手段の別例であり、第2実施形態とほぼ共通している。そこで、第2実施形態と共通する部分については同じ符号を付して説明はなるべく省略し、主に相違点を説明する。なお、背フレームは基本に第1実施形態と同じ構造になっており、第2背フレーム8に軸受けリブ61を設けている。
【0056】
この実施形態では、周面カム62の左右両端に軸受け筒部75を一体に形成している一方、軸受けリブ61の内側面には、筒部75が嵌まる上下長手の長溝76を形成している。図17に示すように、周面カム62の嵌め込みは、回転軸心を水平に対して傾斜した姿勢で左右軸受けリブ61の間に嵌め込んでから、水平姿勢に戻すという手順で行われる。長溝76は上下に長いため、周面カム62を正面視で傾けることで左右の筒部75を左右の長溝76に嵌め込むことができ、回転軸心が水平になるように姿勢を戻すと周面カム62は前後動不能に保持される。
【0057】
そして、周面カム62及び操作具40を軸受けリブ61に取り付けてから、背もたれ4のロア連結部65が周面カム62の筒部75に嵌め込まれる。この場合、図16に示すように、ロア連結部65の長穴71は、上部が後ろに位置して下端が手前に位置するように側面視で傾斜していると共に、下向きに開口しているため、予めセットされている周面カム62の筒部75に嵌め込むことができる。
【0058】
また、第1実施形態において説明したように、サイド連結部23の支軸30を背支柱18の軸受け部29に嵌め込むにおいては背もたれ4を後傾状態にするが、ロア連結部65のうち操作具40が嵌まる穴は長穴71になっているため、軸受け部29への支軸30の嵌め込みと、操作具40に対するロア連結部65の嵌め込みとを同時に行える。両者の嵌め込んでから背もたれ4を後ろに倒すと、背もたれ4は、サイド連結部23とロア連結部65との両方の箇所において上下方向と前後方向とに抜け不能に保持される。
【0059】
(7).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明は背もたれがロッキングしない椅子にも適用できる。また、背もたれの形態・構造も様々に具体化できる。軸受け部をサイド連結部に設けて、支軸をサイド受け部に設けることも可能である。初期角度調節装置を設ける場合、操作具はスライド式や回転式には限らず、回動式なども採用できる。プッシュボタン付きの操作具を背もたれの下端部に設けて、プッシュボタンを押してロックを解除した状態を保持しつつ操作具を前後移動させて背もたれを回動させるという構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は椅子に具体化することができる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
2 ベース
3 座
4 背もたれ
7 背フレームを構成する第1背フレーム
8 背フレームを構成する第2背フレーム
14 背支柱
14a サイド受け部
15 初期角度調節装置
18 背インナーシェル
23 サイド連結部
29 係合部を構成する軸受け部
29a 切り開き穴
29b 規制手段の一例としての外ストッパーリブ
30 係合部を構成する支軸
31a 内リブ
31b 外リブ
32 荷重作用部を構成する荷重受け部
33 荷重作用部を構成する荷重当て部
32a 規制手段の一例としての規制溝
35,64 ロア連結部
61 ロア受け部の一例としての軸受けリブ
E1,E2,E3 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれと背フレームとを有しており、前記背もたれのうちその下端にはロア連結部を設け、前記ロア連結部よりも上の高さ位置には左右のサイド連結部を設けている一方、前記背フレームには、前記背もたれのロア連結部が取り付くロア受け部と、前記背もたれのサイド連結部が取り付く左右のサイド受け部とを設けている構成であって、
前記サイド連結部とサイド受け部とに、背もたれを側面視で後傾姿勢にすると互いに嵌まり合って背もたれを所定の姿勢に戻すと前後方向及び左右方向並びに上下方向に抜け不能に保持される係合部を設けている、
椅子。
【請求項2】
前記係合部は、左右に配置された内リブと外リブとに連結された左右横長の支軸と、前記支軸が嵌まる切り開き穴を有する軸受け部とから成っており、軸受け部の切り開き穴は側面視で斜め方向に開口させると開口部は幅狭になっている一方、前記支軸は、背もたれを側面視で後傾させた状態でのみ前記切り開き穴に嵌まるように非円形の断面形状になっている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記内外リブと軸受け部との間には隙間が空いており、前記サイド連結部とサイド受け部とのうち前記軸受け部を設けている部分に、前記内外リブのうちいずれか一方又は両方が支軸の軸方向にずれ移動することを規制する規制手段を設けており、更に、前記サイド連結部とサイド受け部とに、背もたれが後ろ向きに押されると互いに当接する荷重作用部を設けており、
かつ、前記ロア連結部は前後位置調節可能な状態で前記ロア受け部で支持されており、前記ロア連結部の前後位置を変えると背もたれは前記支軸を中心に回動して姿勢が変更される、
請求項2に記載した椅子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−39339(P2013−39339A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250616(P2011−250616)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】