説明

植栽袋とそれを用いた緑化ユニット

【課題】縫製によって簡易に製造することができる植栽袋を提供する。
【解決手段】本発明は、植栽のための土壌が充填される植栽袋100であって、第1シート材で形成され、本体開口部を有する本体部110と、前記本体部110の内側に縫いつけられ、前記第1シート材との間に空間を形成する第2シート材と、前記空間に収納される保水材と、前記本体開口部の周縁で一端開口部141が縫いつけられるスリーブ部材140と、前記スリーブ部材140の他端開口部142の周縁に設けられる挿通部143と、前記挿通部143に挿通される糸部材150と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外、屋内のいずれの壁面の緑化施工にも好適である植栽袋とそれを用いた緑化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンションなどの建物や自動車から出る排熱、アスファルトからの放熱などが大きい都市部では、郊外に比べて気温が高くなるヒートアイランド現象が問題となっている。このようなヒートアイランド現象を緩和する方法として、建物の壁面や屋上を緑化することが考えられている。特に、建物の壁面の緑化については、建物内に伝達する熱を大幅に低減することができることから、近年非常に注目されている。
【0003】
例えば、建物壁面の緑化においては、植栽がなされた単位ユニットを、壁面に沿って複数配置させることによって、所定面積の壁面の緑化を行うことが提案されている。上記のような単位ユニットを構成するための容器としては、例えば、特許文献1(特開2011−101607号公報)に、植物を植えるための開口部を前面に有する植栽用空間と、その植栽用空間の下部に形成された植栽用水を貯留する貯水部とを有する容器本体を備えた植栽容器が開示されている。
【特許文献1】特開2011−101607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている植栽容器はプラスチック材料で形成されているものと考えられるが、このような植栽容器を製造しようとすると、金型から起こす必要があり、コストがかかってしまう、という問題がある。
【0005】
また、特許文献1に開示されている植栽容器では、植栽単位ユニットの大きさは1種類に固定されることとなるので、例えば、植栽単位ユニットの大きさを変えて、緑化施工を行いたい、といった顧客の要望に柔軟に対応することができない、という問題もある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている植栽容器を用いた方法では、植栽床材Aの一部のみが貯水部14に浸る構造であるので、植栽床材Aの中に均等に水を行き渡らせることができず、植物の根の一部が乾燥し枯れるなどの悪影響がある、という問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、植栽のための土壌が充填される植栽袋であって、第1シート材で形成され、本体開口部を有する本体部と、前記本体部の内側に縫いつけられ、前記第1シート材との間に空間を形成する第2シート材と、前記空間に収納される保水材と、前記本体開口部の周縁で一端開口部が縫いつけられるスリーブ部材と、前記スリーブ部材の他端開口部の周縁に設けられる挿通部と、前記挿通部に挿通される糸部材と、からなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の植栽袋において、前記第1シート材が防草シートであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の植栽袋において、前記第2シート材が透水シートであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植栽袋において、前記保水材がロックウールであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の植栽袋において、前記スリーブ部材は前記第1シート材より薄手であり、かつ柔軟性が高い材料により形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の植栽袋を収納する開口を有する籠状部材と、前記籠状部材上方より給水を行う滴下部と、を有することを特徴とする緑化ユニットである。
【発明の効果】
【0013】
本発明で用いる植栽単位ユニットである植栽袋は、第1シート材などを縫製することによって製造することができ、プラスチック材料を成型するための金型などが不要であるので、本発明に係る植栽袋及び緑化ユニットによれば、コストを要することなく安価に壁面緑化を行うことが可能となると共に、バリエーションが異なる植栽袋を製造し、顧客の要望に柔軟に対応することが可能となる。
【0014】
また、本発明で用いる植栽袋は、第1シート材と第2シート材と間の空間に収納される保水材により、植栽袋に植栽される植物の根全体に水を均等に行き渡らせることができるので、本発明に係る植栽袋及び緑化ユニットによれば、比較的乾燥に強い緑化壁面を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る植栽袋100を構成する本体部110の構造を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る植栽袋100の構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る植栽袋100の利用方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る緑化ユニット200の構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る緑化ユニット200の利用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る植栽袋100を構成する本体部110の構造を説明する図であり、図1(A)は本体部110の斜視図であり、図1(B)は本体部110をX−X’で切って見たときの断面を示す図である。
【0017】
植栽袋100の本体部110は、植栽用の土壌と、植栽袋100に植栽する植物の根が収納されることを想定したものであり、底面部111と外周部112とからなり、底面と対向する箇所には開口部115が設けられている。
【0018】
このような植栽袋100の本体部110を形成するために用いる袋地(第1シート材)としては、通気性、透水性がある不織布或いは織布などの材料であればどのようなものを用いても構わないが、袋地(第1シート材)として、特に、耐候性を有する防草シート(例えば、ポリエステルのスパンボンドに難燃材をコーティングしたもの。谷口産業株式会社製「プロフィット」など)を用いることが好適である。これは、例えば、植栽袋100を利用して、屋外における壁面緑化施工を行うような場合を考えると、施工後、ある程度の期間、屋外環境に曝され続けることとなるからである。
【0019】
植栽袋100の本体部110は、上記のような袋地(第1シート材)を用いて、縫製により造形されるようになっている。なお、本実施形態では、植栽袋100の本体部110の形状として、略円柱状のものを例に挙げ説明しているが、これに限らず、植栽袋100の本体部110は、例えば、略四角柱状のものを用いることなどもできる。
【0020】
上記のような袋地(第1シート材)で縫製により形成されている本体部110の内周部113には、第2シート材120が縫いつけられており、さらに、本体部110の袋地(第1シート材)と第2シート材120との間に空間が形成されるようになっている。この空間には保水材130を充填することにより、この保水材130で、本体部110内に収容される土壌と植物の根を適正に保水することが可能となる。
【0021】
保水材130としては、水を吸水し、吸水した水を土壌側に移行させて、土壌を適度に湿らせることが可能であるスポンジ、綿などの材料であれば、どのようなものを用いても構わないが、特に、本実施形態に係る植栽袋100に用いる保水材130としては、ロックウールが好適である。
【0022】
第2シート材120として用いる生地としては、透水性を有するものであれば、どのようなものを用いても構わないので、例えば、本体部110の袋地(第1シート材)と同様のものを用いてもよい。ただ、第2シート材120は植栽袋100内部に用いられるものであり、第2シート材120には耐候性までの性能は必要とはならない。したがって、第2シート材120としては、袋地(第1シート材)に用いたような防草シートを用いるとコスト的に不利となるので、透水シートなどを用いる方がよい。例えば、第2シート材120として用いる透水シートとしては、旭化成せんい株式会社のエステルスパンボンド不織布、エルタスエステル E5070(商品名)を透水加工処理したものを用いると好適である。
【0023】
以上のように構成される本体部110の開口部115には、スリーブ部材140が取り付けられ、本実施形態に係る植栽袋100とされる。図2は本発明の実施形態に係る植栽袋100の構成を説明する図である。図2(A)は開口状態の植栽袋100の斜視図であり、図2(B)は封口状態の植栽袋100の斜視図である。
【0024】
スリーブ部材140は一端開口部141と他端開口部142の2つの開口部を有しており、本体部110の開口部115の周縁において、スリーブ部材140の一端開口部141の周回が隙間なく縫いつけられることで、本体部110からスリーブ部材140が連続するように形成される。
【0025】
スリーブ部材140の他端開口部142には、2つの切り込み部145が設けられた挿通部143が形成されている。これは、円筒状の布であるスリーブ部材140の他端の開口を折り返して周回状に縫いつけることで、形成することができる。また、切り込み部145から、挿通部143に糸部材150を挿通し、糸部材150の端部同士を結束することで、スリーブ部材140の他端開口部142は、一般的な巾着構造となる。この糸部材150としては、耐候性の高いものを採用することが好ましく、例えば、カナガワ株式会社により提供される、テイジンポリエステルよりなる産業用ミシン糸、#0(型番)を用
いると良い。
【0026】
また、スリーブ部材140に用いる生地材料としては、袋地(第1シート材)より薄手であり、かつ柔軟性が高い材料であることが好ましい。これにより、本体部110側の型くずれを起こすことなく、図2(B)に示すように、糸部材150を挿通部143から引き出し、スリーブ部材140の他端開口部142を封口状態とすることができる。また、スリーブ部材140に用いる生地材料としては、耐候性を有するものであることが好まし
い。以上のようなスリーブ部材140に用いるための要件を満たす生地としては、例えば、株式会社 エルトップにより提供される、旭化成ポリエステル、高密度タフタ KE8
302W(商品名)などを用いることができる。
【0027】
以上のように構成される本発明の実施形態に係る植栽袋100の利用方法を、図3を参照して説明する。図3(A)は植栽袋100への植栽手順を示しており、図3(B)は植物Pが植栽された植栽袋100を示している。
【0028】
例えば、植栽袋100に植栽する際には、植栽用の土壌Sとして、ピートモス、バーミキュライト、パーライト、有機堆肥、真砂土、燻炭、作土などを配合したものを利用する。このような植栽用土壌Sを他端開口部142から適量植栽袋100に詰めた後、次に、図3(A)に示すように植物Pの苗などを、他端開口部142から移植する。そして、図3(B)に示すように、糸部材150を挿通部143から引き出し、スリーブ部材140の他端開口部142を封口状態とすることで、植栽袋100への植物Pの植栽が完了する。
【0029】
次に、以上のように植物Pが植栽された植栽袋100を載置するための緑化ユニット200について説明する。図4は本発明の実施形態に係る緑化ユニット200の構成を説明する図であり、図5は本発明の実施形態に係る緑化ユニット200の利用方法を説明する図である。
【0030】
緑化ユニット200には、植物Pが植栽された植栽袋100を収納する開口221を有する籠状部材220が複数配されている。図4では、このような籠状部材220を4×4のマトリクス状に配したものを示しているが、緑化ユニット200に用いる籠状部材220の数や、緑化ユニット200における籠状部材220の配列方法に特に限定があるわけではない。
【0031】
上記籠状部材220には、水はけのためにメッシュが設けられた部材が用いられる。このような籠状部材220には、例えば、汎用のあんきょ排水管を所定の長さに切りそろえたものなどを利用することができる。このようなあんきょ排水管を用いることで、コストをかけずに壁面緑化を行うことが可能となる。
【0032】
給水管230は不図示の灌水装置などから水を緑化ユニット200に供給する。この給水管230は、図示するように、主流部231から4つの分流部232に枝分かれする構成とされ、各分流部232においては、籠状部材220上方より給水を行う滴下部240が、籠状部材220と一対一で対応するように設けられている。
【0033】
緑化ユニット200のフレーム部材210は、籠状部材220や給水管230などを固定しておくためのものであり、任意の構成を採用し得る。ここで、図4に示すように、フレーム部材210は、籠状部材220の開口面が、必ず、水平方向より鉛直上方を向いているように、籠状部材220を固定するようにしている。このように籠状部材220は水平方向に対して角度をもって配されているので、籠状部材220が、植栽された植栽袋100を収納し、さらに滴下部240から水が滴下されたときには、概略、図5のFに示すような流れで水が流れていくので、植物Pの根全体に水を均等に行き渡らせることができる。
【0034】
上記のように構成される緑化ユニット200の籠状部材220には、図5に示すように、植栽された植栽袋100が収納されることで、屋内や屋外の壁面緑化に資することが可能となる。ここで、植栽袋100の直径R(図1(A)参照)と、籠状部材220の直径r(図4参照)とはほぼ同様とされているため、籠状部材220に収納された植栽袋10
0は、その外周部112が籠状部材220の内周に内嵌されるような状態となるので、時の経過により移動したりするようなことはない。
【0035】
以上のように、本発明で用いる植栽単位ユニットである植栽袋100は、袋地である第1シート材を縫製することによって製造することができ、プラスチック材料を成型するための金型などが不要であるので、本発明に係る植栽袋100及び緑化ユニット200によれば、コストを要することなく安価に壁面緑化を行うことが可能となると共に、バリエーションが異なる植栽袋100を製造し、顧客の要望に柔軟に対応することが可能となる。
【0036】
また、本発明で用いる植栽袋100は、本体部110の第1シート材と第2シート材120と間の空間に収納される保水材130により、植栽袋に植栽される植物の根全体に水を均等に行き渡らせることができるので、本発明に係る植栽袋100及び緑化ユニット200によれば、比較的乾燥に強い緑化壁面を構築することが可能となる。
【0037】
また、植栽袋100に植物Pが収容され、植栽袋100の他端開口部142が封口されると、植栽袋100の中の土壌は、植栽袋100からほとんどこぼれ出ることがない。したがって、本発明に係る植栽袋100は屋内での使用にも好適であり、屋内の壁面緑化にも利用することが容易である。
【符号の説明】
【0038】
100・・・植栽袋
110・・・本体部
111・・・底面部
112・・・外周部
113・・・内周部
115・・・開口部
120・・・第2シート材
130・・・保水材
140・・・スリーブ部材
141・・・一端開口部
142・・・他端開口部
143・・・挿通部
145・・・切り込み部
150・・・糸部材
200・・・緑化ユニット
210・・・フレーム部材
220・・・籠状部材
221・・・開口
230・・・給水管
231・・・主流部
232・・・分流部
240・・・滴下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽のための土壌が充填される植栽袋であって、
第1シート材で形成され、本体開口部を有する本体部と、
前記本体部の内側に縫いつけられ、前記第1シート材との間に空間を形成する第2シート材と、
前記空間に収納される保水材と、
前記本体開口部の周縁で一端開口部が縫いつけられるスリーブ部材と、
前記スリーブ部材の他端開口部の周縁に設けられる挿通部と、
前記挿通部に挿通される糸部材と、からなることを特徴とする植栽袋。
【請求項2】
前記第1シート材が防草シートであることを特徴とする請求項1に記載の植栽袋。
【請求項3】
前記第2シート材が透水シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植栽袋。
【請求項4】
前記保水材がロックウールであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植栽袋。
【請求項5】
前記スリーブ部材は前記第1シート材より薄手であり、かつ柔軟性が高い材料により形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の植栽袋。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の植栽袋を収納する開口を有する籠状部材と、
前記籠状部材上方より給水を行う滴下部と、を有することを特徴とする緑化ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−59304(P2013−59304A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201516(P2011−201516)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(592145268)ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 (53)
【Fターム(参考)】