説明

植物から組換えタンパク質を精製するための非変性プロセス

本発明は、植物、植物由来組織または植物細胞で産生された高価値の異種タンパク質のタンパク質精製のための改善法に関する。本発明は、植物で産生された異種タンパク質の下流プロセシングのコストを減少させ、そしてその品質を改善することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は生化学およびタンパク質技術の分野にあり、そしてトランスジェニック植物材料からの異種タンパク質の単離および精製の改善法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
タンパク質に基づく生物薬剤は、深刻な疾患に対する、より特異的で、そして組織特異的であるか、または細胞特異的な薬剤治療を提供するのに、きわめて有望である(概説に関しては、“Recombinant Protein Drugs” P. Buckel監修 2001を参照されたい)。
【0003】
先行技術および適用の多くの例によって、こうした生物薬剤の産生のための細菌などの微生物、および動物細胞の使用が示されてきており、このうちインスリンが注目すべき例である。
【0004】
文献中の多くの例によって、高価値の異種ポリペプチドまたは生物薬剤を発現し、そして製造するためのトランスジェニック植物または植物細胞培養物の利用が示されてきている。こうした植物に基づく製造プロセスを、分子農業と呼ぶことも可能である。
【0005】
産生生物として植物を使用することによって、価値あるタンパク質の産生を、より経済的にすることも可能である。タンパク質製造の宿主生物として用いる植物の栽培コストは、原核生物産生系、動物細胞培養などのバイオリアクターに基づく、大部分の産生系に比較して、かなり低くなることも可能である。しかし、上記産生系のすべてに関して、異種タンパク質の精製は、依然として要求が厳しく、そして費用がかかる課題である。したがって、植物に基づく産生系に関しては、下流プロセシングが、高価値の異種タンパク質を産生する際の産生コストの大部分を生じる。
【0006】
タンパク質精製および単離は、遺伝子技術の使用によって、多様な宿主生物中で集積し、そして産生されたタンパク質の下流プロセシングの重要なプロセスである。宿主生物からのタンパク質の精製は、非常に困難で、複雑であり、そして高価である可能性もある。産生宿主生物からの目的のタンパク質の分離および精製のため、商業的には、多様なクロマトグラフィー戦略が用いられる。クロマトグラフィー戦略は、混入または内因性タンパク質および目的の異種タンパク質間の、大きさ、可溶性、電荷、疎水性、およびアフィニティーなどの物理化学的相違に頼ることも可能である。
【0007】
多数の工程からなるクロマトグラフィー戦略の組み合わせは、いくつかの高価なクロマトグラフィー・マトリックス、およびカラム、制御装置などからなる必要なハードウェアを必要とし、そして各工程で産物収量の損失が付随し、そしてその結果、経済的損失が生じる。関与するクロマトグラフィー工程に加えて、下流プロセシングは、典型的には、多数のろ過工程および遠心分離工程を伴う。その結果、精製および下流プロセシングのコストのため、タンパク質に基づくバイオテクノロジー製品の精製は手が届かないほど高額になりうる。産業タンパク質などの、より価値が低い、タンパク質に基づくいくつかの製品に関しては、下流プロセシングのコストのため、使用およびマーケティングが抑制される可能性もあり、未精製でそしてあまり明確でない製品を生じる可能性もある。ほとんどのバイオテクノロジー製品に関しては、明らかに、精製コストが、製造コストの大きな割合を占める。
【0008】
混入物質からの目的のタンパク質の分離を達成する特殊化クロマトグラフィー・マトリックスのコストは、その産生に伴う複雑なカップリング化学反応の結果、高い。いくつかの一般的なクロマトグラフィー法は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィーである。マトリックスにカップリングされたリガンドには、多様な強度の陰イオン交換体としての多様なジエチルアミノエチル基または第四アミノエチル基、並びに陽イオン交換体としてのカルボキシメチル置換基およびスルホネート基およびホスフェート(Scopes、1993)、疎水性相互作用クロマトグラフィー用の架橋アガロース・マトリックスにカップリングした疎水性アルキル基、フェニル基またはブチル基(疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC) 番号18−1020−90、Amersham Pharmacia Biotech)、あるいはシリカまたは合成有機ポリマーで構成される多孔不溶性ビーズ化マトリックスに移植されたリガンドとしての疎水性n−アルキル基(逆相クロマトグラフィー(RPC)、コード番号18−11134−16、Amersham Pharmacia Biotech)が含まれることも可能である。これらのマトリックスは化学的に複雑であるため、精製法中に、マトリックスからのリガンドおよび他の物質の望ましくない浸出が引き起こされる可能性もあり、この場合は、予防手段、監視、または目的のタンパク質からの浸出物の除去が必要となり、すでに高価な下流プロセシングのコストがさらに上がることになる。
【0009】
アフィニティー・クロマトグラフィーは、剤および特異的リガンド間の特異的アフィニティーに基づき、しばしば天然タンパク質−リガンド相互作用を模倣しているため、最も強力な精製原理のうちの1つである。いくつかの異なる種類のアフィニティー吸着剤が利用可能であり、あるものは特定のタンパク質に非常に特異的であり、他のものは特定のタンパク質よりもタンパク質種に結合する。多くの場合、アフィニティー・クロマトグラフィーは、そのリガンドに結合するタンパク質を特異的に選び出す吸着剤に対する、固定化されたリガンドの使用を意味する。アフィニティー吸着剤へのリガンドのカップリングは、吸着剤の臭化シアン活性化、トシル活性化、またはビニルスルホン活性化などのカップリング化学反応の使用を伴う。カラムマトリックスにカップリングしたリガンドは、タンパク質性起源のものであることもまたはないことも可能である。前者の例は、限定されるわけではないが、?−グロブリンへのアフィニティーを有し、したがって抗体の精製に有用な固定化プロテインAまたはプロテインG、および糖タンパク質に対するアフィニティーを持つレクチンである。後者の例として、マトリックスにカップリングした固定化グルタチオンは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ・ドメインを含有する融合タンパク質に結合する。固定化金属アフィニティー・クロマトグラフィー(IMAC)は、マトリックスへの金属キレートリガンドの固定に基づき、そしてカラム上に固定された金属イオンおよびタンパク質上の塩基性基、主にヒスチジン残基の間の弱い配位結合の形成に頼る。商業的なクローニングベクターは、一連のヒスチジン残基、His−タグとイン・フレームで、cDNAのクローニングを提供し、このタグが、IMACを用いて、生じた融合タンパク質を精製するのを可能にする。IMACはタンパク質の小規模精製に広く用いられているが、混入タンパク質中の天然ヒスチジン残基がIMACにおいて結合を生じる可能性もあるため、IMACは非特異的だが選択的な方法である(Scopes 1993)。融合タンパク質を生じる、商業的発現ベクターにおいて、いくつかの異なる種類のタグまたは結合ドメインが利用可能であり、この場合、タグ/結合ドメインが、カラムマトリックス上にカップリングしたリガンドに、融合タンパク質を結合させる。
【0010】
これらのマトリックス−リガンド系を用いて、高特異性のタンパク質結合を達成することも可能である。上述の場合は、複雑なカップリング化学反応を伴って、不活性マトリックス上にリガンドを固定する。その結果、アフィニティー・マトリックスのコストのため、しばしば、この強力な技術の産業規模の適用が抑制されることもありうる。さらに、クロマトグラフィー法の大部分の他の種類でのように、マトリックスへのリガンドのカップリングの安定性が問題になり、そして浸出が非常に懸念される。IMACにおける重金属浸出は、細心の注意を払うべき生物活性タンパク質の多くの精製プロセスにおいて、許容し得ない、そして深刻な混入を生じる可能性もあり、そして精製中のタンパク質を不活性にする可能性もある(Scopes、1993)。
【0011】
リガンドへのタンパク質の結合アフィニティーが非常に強いため、溶出条件には、リガンド−タンパク質結合を破壊するために、精製中の価値あるタンパク質を部分的に変性させる、劇的な条件が必要である場合が珍しくないことは、本発明に特に関連する。この限定されない例は、プロテインA−アフィニティー・マトリックスからの抗体の溶出であり、これは、カラムから抗体が遊離するのに、低いpHでの変性を必要とする。精製されるタンパク質活性を喪失させるリスクがあり、タンパク質を再フォールディングするために過剰な工程が加えられ、そして続いて、再フォールディングしたタンパク質産物に活性解析が必要であり、そしてコストがさらに加算されることを伴うため、タンパク質精製プロセスに変性工程を含むのは望ましくない。
【0012】
植物からの大規模精製にアフィニティーに基づくクロマトグラフィーを使用するのを可能にするため、商業的に入手可能な現在の手段より単純で、そしてより経済的であり、関与するカップリング化学反応がより少なく、そして製薬産業標準の品質必要条件に適合する、非変性タンパク質精製プロセスを開発することが非常に望ましい。
【0013】
植物に基づくタンパク質産生は、文献の例に示されてきているように、経済的な方式で、大規模にタンパク質を製造するのにきわめて有望である(概説にはHammond 1999を参照されたい)。植物を用いた分子農業に伴う栽培コストは、伝統的なバイオリアクターに基づく方法よりもかなり安価である。植物に基づく産生の上流事象は、特に有望であるようだが、下流プロセシングは、その他のタンパク質産生産業と同じ困難に直面している。
【0014】
多糖および多糖結合タンパク質は、アフィニティー・クロマトグラフィー工程の設計と組み合わせて使用可能である(例えばBorastonら、2001を参照されたい)。
先行技術の例(米国特許第6,331,416号)では、Shaniらは、宿主植物細胞壁のあまり明確でないセルロースに結合する多糖結合ドメインを持つ組換えタンパク質を発現する方法、および宿主植物セルロースへのこのタンパク質のアフィニティーを利用して、可溶性混入タンパク質から分離可能な細胞壁−タンパク質複合体を生じる、タンパク質精製プロセスを記載する。結合強度は、セルロース性植物物質からタンパク質を遊離させるのに、タンパク質を変性させ、精製中の組換えタンパク質の活性に負の影響を有する劇的な条件が必要でありうる程度である可能性もある。したがって、植物材料からタンパク質を精製する方法を提示したものの、リガンド/細胞壁結合を破壊するのに厳しい条件が必要であり、これには抗体−プロテインA溶出に関して上述したものに匹敵する厄介な問題および懸念が伴う。
【0015】
植物からの大規模精製のために、アフィニティーに基づくクロマトグラフィーを使用するのを可能にするため、商業的に入手可能な現在の手段より単純で、そしてより経済的であり、関与するカップリング化学反応がより少なく、そして製薬産業標準の品質必要条件に適合する、非変性タンパク質精製プロセスを開発することが非常に望ましい。
【0016】
炭水化物結合ドメインCBM9−2は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)キシラナーゼ10A由来である(Winterhalterら 1995:Mol. Microbiol. 15(3), 431−444)。CBM9−2ゲノムDNA配列は、GenBank寄託番号Z46264として入手可能であり、そしてCBMのファミリーIXに属し、そして溶出剤として1Mグルコースを用いた非変性溶出条件、および非結晶セルロースとともに結晶セルロースに対する非常に特異的なアフィニティーを含めて、高分解能アフィニティー精製に魅力的ないくつかの特性を有する(Borastonら 2001:Biochemistry 40, 6240−6247)。
【0017】
トランスジェニック植物からの発現組換えタンパク質の回収および精製は、おそらく、タンパク質産生のための現実的な代替系として植物を確立する際に、最も重要な要因であろう。プロセシング工程の数を最小限にし、そして各工程をはるかに効率的に行うことが必須である(Moloney 2000)。
【0018】
このことから、トランスジェニック植物材料から異種タンパク質を、効率的に、単純に、そして経済的に精製するための下流プロセスに関する、認識されている必要性が強まる。さらに、目的のタンパク質の生物活性を安定させ、そして収量を改善するため、穏やかで、目的のタンパク質を変性させない条件からなる下流プロセス(特に穏やかな溶出条件を持つ特異的アフィニティー精製法)の必要性がある。
【0019】
上に詳述する限界を持たない非変性タンパク質精製プロセスは、植物からの生物薬剤の産生に伴う産生コストを有意に低下させることも可能であり、そしてその下流プロセシングが、これまでは手が届かないくらい複雑で高価であった、価値ある異種タンパク質の精製を可能にするであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
発明の概要および目的
本発明の主な目的は、植物、植物由来組織または植物細胞で産生された高価値の異種タンパク質のタンパク質精製のための、改善された非変性法を提供することである。
【0021】
本発明は、植物で産生された異種タンパク質の下流プロセシングのコストを減少させ、そしてその品質を改善することを目的とする。
精製プロセスの重要な工程は、細胞壁断片由来のCBM融合タンパク質としての目的のタンパク質およびあまり明確でない他の植物由来固体物の分離であり、これは本発明のCBM−融合タンパク質がこれらの構成要素に結合しないためである。この工程は、アフィニティー・クロマトグラフィー工程の前に別個に行うことも可能であるし、またアフィニティー・クロマトグラフィー工程と同時に行うことも可能である。
【0022】
第一の側面において、本発明は、セルロース結合性モジュール(CBM)を含む可溶性異種融合タンパク質を発現しているトランスジェニック植物またはトランスジェニック植物細胞から、前記融合タンパク質を産生し、そして精製する、非変性法を提供し、該方法は:
トランスジェニック植物材料を破壊し;
前記の破壊した植物材料から可溶性融合タンパク質を液相に抽出してタンパク質抽出物を得るために、植物材料に抽出液を添加し、それによって可溶性植物材料および不溶性植物材料の混合物を生成し;
細胞壁材料および固体物を含む不溶性植物材料を、目的の前記融合タンパク質を含む前記タンパク質抽出物から分離し;
前記タンパク質抽出物を、前記融合タンパク質に結合する多糖マトリックスに接触させ;
結合した融合タンパク質を伴うマトリックスを、1以上の適切な水溶液、例えば1以上の緩衝溶液で洗浄し、すなわち洗浄は、勾配を用いて1つの工程で行うことも、または一連の異なる洗浄溶液として行うことも可能である;そして
特徴的に穏やかな条件下で、マトリックスからの前記融合タンパク質の遊離を達成する条件を調節することによって、前記多糖マトリックスから融合タンパク質を溶出する
ことを含む。
【0023】
典型的には、トランスジェニック植物または植物細胞は、双子葉植物および単子葉植物の群より選択され、そして好ましい態様において、前記植物細胞またはトランスジェニック植物は、タバコ(tobacco)、ナタネ(rape seed)、ダイズ(soy bean)、レタス(lettuce)、アルファルファ(alfalfa)、オオムギ(barley)、トウモロコシ(maize)、コムギ(wheat)、カラスムギ(oat)およびイネ(rice)の群より選択される。
【0024】
いくつかの態様において、分離工程は、吸着流動床(expanded bed adsorption)(EBA)、充填モード・クロマトグラフィー、沈殿、ろ過、遠心分離、またはその組み合わせのいずれかから選択される方法を含む。
【0025】
多糖マトリックスへの融合タンパク質のアフィニティー結合工程は、好ましくは、クロマトグラフィー工程を含む。
しかし、特定の有用な態様において、目的のタンパク質であるCBM−融合タンパク質からの細胞壁断片およびあまり明確でない他の植物由来固体物の前記分離、並びに多糖マトリックスへの該CBM融合タンパク質のアフィニティー結合は、適切で安価な多糖マトリックスを伴う吸着流動床クロマトグラフィー(EBA)を用いた、単一の強力な精製工程で行うことも可能である。この特徴は、下流プロセシングを経済的に合理化し、そして改善する。
【0026】
本発明の好適な態様において、多糖マトリックスはセルロースを含み、そして好ましくは、薬学的に適合するセルロースを含む。CBM−融合タンパク質が結合するセルロース性マトリックスが、こうしたよく定義された薬剤等級のものであると、精製された異種タンパク質の多様な高品質の使用が可能になる。多糖マトリックスとして使用するのに有用な薬学的に適合するセルロース材料はAvicel(商標)(FMC Corporation、米国ペンシルバニア州)を含む。
【0027】
本発明記載のアフィニティー・クロマトグラフィーに用いる多糖マトリックスは、複雑なカップリング化学反応も、また浸出する可能性があるリガンドの固定も必要としない。多糖マトリックスは、構造的支持および剛性の両方を提供し、一方でアフィニティー吸着剤自体を構成する。それによって、植物由来異種タンパク質の、より経済的でそしてより安全なタンパク質精製が可能になる。
【0028】
記載するプロセスが、例えば農業、化学産業または製薬産業において、すべて、精製異種タンパク質の異なる最終用途にしたがう、異なる品質の異なる多糖マトリックスに受け入れられることが、本発明のさらなる利点である。薬剤等級の多糖から作成されるアフィニティー吸着剤は、製薬産業内のバルク材料(bulk material)であり、そして商業的に入手可能ないかなるアフィニティー・クロマトグラフィー媒体よりかなり安価である。したがって、本発明に記載するプロセスを用いて、非常に高品質のアフィニティー・マトリックスを経済的に作成することも可能であり、植物由来材料から、高価値のタンパク質をより経済的に下流プロセシングすることが可能になる。
【0029】
本発明のさらなる利点は、植物由来のCBM−融合タンパク質が多糖クロマトグラフィー・マトリックスにひとたび結合し、そしてマトリックスを洗浄して、いかなる混入内因性植物タンパク質も取り除いたならば、典型的には、CBMに付着したいかなる融合パートナータンパク質の活性および構造も保護する、中性条件または酸性条件下、そして好ましくは可溶性炭水化物(糖)の添加を伴う、非変性の穏やかな条件を用いて、カラムから融合タンパク質を溶出させることも可能であることである。糖は、CBMの結合部位に関して、セルロースと競合し、そして適切な濃度で、結合したCBM融合タンパク質すべてを実質的に遊離させるであろう。
【0030】
本発明の方法に用いられ、そして目的の異種タンパク質に融合される、好ましいCBMは、適切な多糖マトリックスに十分に強く結合して、高収量の結合したCBM融合タンパク質を得て、そして上記のような穏やかな条件によって遊離することを可能にする、望ましい結合特性を有するものであるということになる。CBM9−2は、これらの望ましい特性を有することが見出されている。こうした特性を持つ他のCBMの使用もまた、本発明の範囲内である。例えば、望ましい特性を有するCBMをコードする配列、例えば結合特性に重要なCBM9−2中のモチーフに類似であることが見出された配列モチーフに関して、入手可能な遺伝子データベースを検索することによって、こうしたCBMを見出すことも可能である。また、本発明にしたがう適切なCBMを得るため、当該技術分野に周知の点突然変異技術を用いて、存在するCBMを修飾して、その結合特性を修飾することも可能である。
【0031】
多糖アフィニティー・マトリックスから融合タンパク質が溶出されたら、タンパク質の望ましい型および使用に応じて、場合によって1以上のさらなる精製工程または単離工程に供することも可能である。
【0032】
有用な態様において、トランスジェニック植物または植物細胞は、CBMをコードする核酸配列を含み、好ましくは、CBMは熱安定性であり、そして上昇した温度で可溶性のままである。この文脈において、用語、熱安定性は、タンパク質が、上昇した温度、すなわち約25℃より高い温度、そして典型的には約37℃より高い温度、40℃〜100℃の範囲を含む温度で、可溶性であり、正しくフォールディングされ、そして活性であり続けることを示す。
【0033】
こうした好ましいCBMをコードする遺伝子を、好熱性細菌、藻類および真菌を含む、好熱性生物から得ることも可能であり、そして前記CBMを含む融合タンパク質を発現するような方式で、宿主植物または植物細胞に導入することも可能である。用語、好熱性は、本明細書において、40℃を超える温度で最適に増殖する生物を指す。好ましいCBMは、サーモトガ・マリティマ由来のキシラナーゼ10A遺伝子にコードされ、好ましくは、CBMをコードする宿主植物または植物細胞内の領域は、前記遺伝子の領域である。特定の態様において、CBMをコードする前記領域は、配列番号1として示す配列を含むか、あるいは同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または前記アミノ酸配列と実質的な配列同一性を持つアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0034】
本発明のいくつかの態様において、プロセス中、可溶性融合タンパク質を含むタンパク質抽出物を37℃〜100℃の範囲の温度に、例えば50〜80℃の範囲の温度に、1分間〜120分間の範囲などの期間、加熱することが有用である可能性もある。この目的のため、好熱性供給源由来などの熱安定性CBMが特に有用である。いくつかの有用な態様において、熱安定性CBMは、上昇した温度で、付着した異種タンパク質の溶解度を促進することも可能であり、この特徴を用いて、他の熱不安定性植物タンパク質を含有する抽出物をCBM−融合タンパク質に関して濃縮することも可能である。こうした加熱の間、内因性植物タンパク質の一部が不活性化され、そして/または変性される可能性もあり、そしてしたがって、タンパク質抽出物からこれらを容易に分離することも可能である。好ましくは、固体物の分離、および加熱した抽出物からの前記CBM融合タンパク質のアフィニティー結合を同時に行うための、多糖マトリックスを伴う吸着流動床を含むプロセス工程に、前記の加熱した抽出物を供することも可能である。
【0035】
本発明の非常に有用な態様において、前記融合タンパク質は、タンパク質分解性切断部位、好ましくは特異的プロテアーゼに認識され、そして切断される、タンパク質分解性切断部位を含む一連のアミノ酸に遮断される、CBMおよび目的の異種ポリペプチドを含む。こうした切断部位を有することによって、融合タンパク質中の融合パートナーをCBMから容易に切り落として、CBMを伴わない、望ましい精製異種タンパク質を得ることも可能である。特異的プロテアーゼを伴う、こうした精製の成功を、本出願者の同時係属出願「組換えタンパク質のタンパク質分解性切断および精製」に開示し、該出願は、本出願と同時に出願され、そして本明細書に完全に援用される。
【0036】
本発明は、限定されるわけではないが、農業、化学産業およびタンパク質に基づく薬剤製造などの目的のため、大規模な異種タンパク質産生に伴う下流プロセシングの欠点に取り組んで成功している。特に、本発明は、伴うプロセシング工程がより少なく、製薬産業内での使用に受け入れられる、より安全でそしてより経済的なアフィニティー・クロマトグラフィー原理、高価値の異種タンパク質の活性を維持する穏やかな溶出条件をうまく利用した植物由来セルロース性材料などのバイオマスからCBM−融合タンパク質を分離する新規プロセスを提供し、そして出願者の同時係属出願「組換えタンパク質のタンパク質分解性切断および精製」では、プロセス中、高価値の特異的プロテアーゼをリサイクルすることを可能にするプロセス工程を含む。
【課題を解決するための手段】
【0037】
発明の詳細な説明
これ以降、本発明をより詳細に記載する。
別に定義しない限り、本明細書に用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者に一般的に理解され、そして用いられるのと同じ意味を有する。
【0038】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において、単量体または多量体のアミノ酸ポリマーいずれかを指し、そして特定の長さのアミノ酸のポリマーを指すのではない。したがって、例えば、用語、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、および酵素は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語にはまた、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等の発現後修飾を伴うポリペプチドも含まれる。
【0039】
用語「目的の異種ポリペプチド」または「目的のポリペプチド」は、本明細書において、本発明の方法または組成物を用いて、植物細胞または植物組織で発現されることが意図されるポリペプチドいずれかを指す。限定されない例として、本発明にしたがって、薬理学的ポリペプチド(例えば医学的使用のためのもの)または産業ポリペプチド(例えば酵素)を産生することも可能である。
【0040】
用語「下流プロセシング」は、バイオテクノロジー産物を、意図される使用に適した型に単離し、そして精製することを指す。
用語「融合パートナー」は、本明細書において、CBMに連結された異種タンパク質を指す。
【0041】
図5は、実施例4から得た結果を示す。グラフは、対照試料のELISA読み取り値、およびCBM9−2に融合させ、そして本明細書記載の精製プロセスの規模縮小型にしたがって精製した、目的の異種タンパク質(HoxB4)を含有する試料の最小読み取り値を示す。柱は、(a)溶出緩衝液、(b)トランスジェニック種子から抽出した融合タンパク質、および(c)非トランスジェニック種子から抽出したタンパク質のELISA測定値を示す。
【0042】
発明の詳細な説明
これ以降、本発明をより詳細に記載する。
別に定義しない限り、本明細書に用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者に一般的に理解され、そして用いられるのと同じ意味を有する。
【0043】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において、単量体または多量体のアミノ酸ポリマーいずれかを指し、そして特定の長さのアミノ酸のポリマーを指すのではない。したがって、例えば、用語、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、および酵素は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語にはまた、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等の発現後修飾を伴うポリペプチドも含まれる。
【0044】
用語「目的の異種ポリペプチド」または「目的のポリペプチド」は、本明細書において、本発明の方法または組成物を用いて、植物細胞または植物組織で発現されることが意図されるポリペプチドいずれかを指す。限定されない例として、本発明にしたがって、薬理学的ポリペプチド(例えば医学的使用のためのもの)または産業ポリペプチド(例えば酵素)を産生することも可能である。
【0045】
用語「下流プロセシング」は、バイオテクノロジー産物を、意図される使用に適した型に単離し、そして精製することを指す。
用語「融合パートナー」は、本明細書において、CBMに連結された異種タンパク質を指す。
【0046】
用語「CBM融合タンパク質」は、異種タンパク質に連結されたCBMからなる分子、そして本発明で提示される背景において、別に記載しない限り、タンパク質分解性切断部位を持たない分子を指す。
【0047】
用語「機能可能であるように連結された」は、プロモーター(核酸発現調節配列、または整列した転写因子結合部位)および第二の核酸配列間の機能可能な連結を指し、ここでプロモーターは第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0048】
用語「変性された」は、タンパク質の天然構造、そしてしたがって活性が破壊され、そしてタンパク質がアンフォールディングされるかまたは誤ってフォールディングされて、天然三次元構造が変化した、タンパク質の状態を指す。
【0049】
用語「発現」および「産生」は、遺伝子産物の生合成を指し、前記遺伝子産物の転写および翻訳が含まれる。
「分子農業」は、野外または閉ざされた施設において、いずれかの種類の植物を用いて、その組織中で異種タンパク質を発現させ、そして産生する作業を指す。
【0050】
用語「トランスジェニック」は、非天然核酸配列が導入され、そしてしたがってその遺伝子型が改変され、子孫も同様であって、該非天然核酸が存在する、細胞、細胞株、組織植物部分、器官または生物いずれかを指す。典型的には、遺伝子操作プロセスによって、非天然核酸配列を遺伝子型に導入するか、またはこうしたプロセスによって、親細胞または植物の遺伝子型に導入し、そして続いて、有性交配または無性増殖によって、後の世代に伝える。
【0051】
「実質的配列同一性」は、本発明の背景において、少なくとも50%の配列同一性、そしてより好ましくは、少なくとも60%、例えば少なくとも70%の配列同一性、例えば少なくとも80%、そして好ましくは少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも95%または99%の配列同一性を示す。配列解析のためのアルゴリズムが当該技術分野に知られ、Altschulら, J. Mol. Biol.(1990)215:403−10に記載されるBLASTなどがある。一般的に、例えば「スコアリング・マトリックス」および「ギャップ・ペナルティ」に関するデフォルト・セッティングを並列に用いる。
【0052】
用語「形質転換」または「形質転換された」は、宿主細胞への核酸断片の導入に用いた技術とは関わりなく、宿主生物のDNAゲノムへの核酸配列の導入を指す。
「好熱性」は、最適増殖温度が45℃を超える生物を指す。
【0053】
用語「GMP」(優良医薬品製造基準)は、生物薬剤および他の薬剤、並びに医学的装置が製造される方式を指示する。GMP要件には、標準的操作法、無菌条件、材料および装置の検証、並びに訓練された人員が含まれる。
【0054】
本発明において、遺伝子操作可能な単子葉植物および双子葉植物が使用可能である。好ましくは、植物は単子葉植物であり、より好ましくはオオムギであり、そして最も好ましくはオオムギ、Hordeum vulgarisである。遺伝的に形質転換可能な植物は、コード領域のDNA配列を含む、非天然DNA配列を導入し、発現させ、安定して維持し、そして続く子孫の世代に伝えることが可能な植物である。遺伝子操作および形質転換法を用いて、例えばビアラホスまたはバスタなどを含む除草剤、またはハイグロマイシンなどの抗生物質を選択可能マーカーとして用いる、オオムギ植物が産生されてきている。
【0055】
方法
限定することを意図しない、以下の実施例を調べると、一般の当業者には、本発明のさらなる目的、利点、および新規特徴が、明らかになるであろう。さらに、上述のような、そして請求項に請求するような本発明の多様な態様および側面各々は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【0056】
本発明の好ましい態様のみを特に例示するが、本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく、上記例に記載するような本発明の多くの修飾および変型が生じることを、当業者は予期するであろう。
【0057】
精製プロセスの概略図を例示する図1を参照すると、以下のようにプロセスを記載することも可能である:
(1)プロセスの出発材料は、トランスジェニック植物、トランスジェニック植物由来の材料、またはトランスジェニック植物細胞であり、限定されるわけではないが、植物細胞の懸濁培養物とともに、カルスの未分化細胞も含まれる。材料は、限定されるわけではないが、アグロバクテリウムが仲介する形質転換または微粒子銃が仲介する形質転換または植物ウイルスベクターが仲介する形質転換などの、当業者に知られるプロセスを通じて、植物細胞に導入されている、CBMオープンリーディングフレームに機能可能であるように連結された異種遺伝子(単数または複数)を、調節された方式で発現するという意味でトランスジェニックである。出発材料は、好ましくは、本発明が記載するプロセスを開始する前に、当業者によってRNAまたはタンパク質レベルの解析によって判断されるように、融合タンパク質が満足できる発現レベルであることに基づいて選択される。
【0058】
(2)トランスジェニック材料の破壊は、乾燥状態または湿った状態で、植物組織および植物細胞のホモジナイズを生じる、当業者に知られる方法いずれかによって達成される。植物材料の供給源に適したものから、多様な方法を選択することも可能である。したがって、種子に関しては、トランスジェニック植物組織を破壊するには、製粉が優れた方法であり、一方、葉およびより柔らかい緑色組織に関しては、限定されるわけではないが、Waringブレンダー、Sorvall OmnimixerまたはPolytronホモジナイザーなどの装置でホモジナイズを達成可能である。植物組織および植物細胞を破壊する装置は、商業的に入手可能であり、そして必要に応じたスケールアップが容易である。植物供給源からの可溶性タンパク質の一般的な抽出法は、S. Roeに監修される刊行物、Protein purification applications, 第2版(2001)において、G. Paul Powellに記載される。植物供給源から可溶性タンパク質を抽出する、単純でそして成功する方法は、徹底的に混合しながら、破壊されたホモジナイズ植物組織に、低塩緩衝液などの単純な緩衝液を添加することである。通常、大部分の植物組織からの精製を最適にするのには、精製しようとする異種タンパク質に負の影響を有しうる植物組織由来のフェノール成分を隔離する(sequester)ため、酸化による黒ずみ(tanning)に対する予防措置、例えばポリビニルピロリドンの添加(1% w/v)が十分である。タンパク質分解は、植物供給源ではいつも問題を引き起こすわけではない。しかし、タンパク質分解が懸念される場合は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼ阻害剤などのプロテアーゼ阻害剤を、抽出緩衝液に添加することも可能である。緩衝溶液の存在下または非存在下で、植物材料の破壊を行うことも可能である。抽出溶液は、限定されるわけではないが、2−メルカプトエタノールまたはジチオスレイトール(DTT)などの還元剤を含有することもまたは含有しないことも可能である。可溶性植物タンパク質は、CBM−融合タンパク質とともに、液相に存在するであろう。
【0059】
(3)植物材料と液体の混合は、液相に水溶性融合タンパク質を抽出するために必須である。添加される液体は、pHを調節するため、好ましくは約5.2〜8.3の範囲内に調節するため、緩衝剤を含有することもまたは含有しないことも可能であり、目的のタンパク質に応じて、(2)に記載するような還元剤または隔離剤いずれを含有することもまたはしないことも可能である。最も単純な形では、液体は水であることも可能である。破壊され、そしてホモジナイズされた植物材料を液体と徹底的に混合した後、液相は、CBM−融合タンパク質を含有する。
【0060】
(4)(A)ある程度、ホモジナイズ・レベルに応じて、破壊された植物材料および抽出液の混合物を、吸着流動床(EBA)カラムに直接適用することも可能である。このアプローチでは、多糖性のアフィニティー吸着マトリックスの流動床を通る液体の流れとして、混合物をカラムに適用する。カラムを通じた流動中、液相中の融合タンパク質は、多糖マトリックスに曝露され、そして多糖吸着媒体へのCBMの選択的アフィニティーを通じて、選択的に吸着される。限定されるわけではないが細胞壁断片および他の個体などの粒子は、あらゆる可溶性植物タンパク質とともに、フロースルー液中にあり、EBAカラムから洗い流される(flushed away)。
【0061】
4(B)あるいは、当業者に知られる多様な方法を通じて、アフィニティー結合工程前に、混合物中の固体物の大部分を液体から分離することも可能であり、これらには、限定されるわけではないが、沈殿、ろ過、遠心分離、および沈降が含まれる。上述のように、固体物を廃棄し、そしてCBM−融合タンパク質を含有する液体を、場合による加熱工程4(C)に供するか、またはアフィニティー結合工程(5)に直接適用する。
【0062】
4(C)アフィニティー工程(5)の前の混合物または液体の加熱は、場合によるが、全体としてのCBM−融合タンパク質が上昇した温度で可溶性のままである一方、可溶性植物タンパク質が変性し、そして沈殿することも可能であり、そして内因性植物プロテアーゼが熱で不活性化されうる場合、さらなる精製工程として働くことも可能である。この目的のため、CBM−融合タンパク質の性質を考慮に入れた加熱法は、プロセス中、50〜100℃の範囲に、2分間〜60分間の範囲のなどの期間、加熱することを伴うことも可能である。これらの態様において、好熱起源のCBMが特に有益である。
【0063】
(5)マトリックスへのアフィニティー結合。植物由来CBM−融合タンパク質を含有する液体タンパク質抽出物を、CBMがアフィニティーを有する多糖マトリックスと接触させる。接触は、限定されるわけではないが、多糖マトリックスを伴う充填クロマトグラフィー・カラムなどの多様な方式で達成されることも可能であり、この場合は、多糖マトリックスの密度を指す、充填モードまたは流動(expanded)モードいずれかのカラムを通じて液体を流し、あるいはバッチ・モードで達成することも可能であり、この場合は、適切な容器中で多糖マトリックスを液体と混合し、続いてマトリックスおよび吸着したCBM−融合タンパク質を回収する。多糖マトリックスは、限定されるわけではないが、Avicelなどのセルロース性起源のものであることも可能であるし、または不溶性キシランなどのキシラン性(xylanoic)起源のものであることも可能である。Borastonら(2001)による最近の刊行物において、CBM9−2の結合特異性および熱力学が詳細に研究されてきている。しかし、驚くべきことに、先行技術で示されていたのとは対照的に、本明細書に記載するような本発明の方法にしたがうと、CBM9−2が植物細胞壁構成要素には結合せずに容易に可溶性となる一方、本明細書のアフィニティー吸着工程(5)に用いるような多糖マトリックスに、特異的で優れた結合を保持することが、見出されてきている。上述のように、この驚くべき性質は、植物由来CBM−融合タンパク質の下流プロセシングにいくつかの利点を導入し、非常に改善された、下流プロセシング法が提供される。
【0064】
(6)マトリックスの洗浄。CBM−融合タンパク質が結合した多糖アフィニティー吸着剤を、数カラム体積(アフィニティー・マトリックスをクロマトグラフィー・カラムに入れた場合に該当する定量的表現)の水溶液(例えば水)、あるいは限定されるわけではないが、リン酸緩衝生理食塩水またはTrisに基づく緩衝液などの緩衝液で洗浄することも可能である。洗浄工程の効率を改善するため、限定されるわけではないが、マトリックスから、弱いが非特異的に結合した混入タンパク質を遊離させるのに用いられる、数カラム体積の塩濃度または界面活性剤の勾配または段階的な変化などの手段によって、洗浄緩衝液の組成を調節することも可能である。
【0065】
(7)マトリックスからの融合タンパク質の遊離。本明細書に記載するような望ましい結合特性を持つCBMを用いることによって、限定されるわけではないが、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、およびセロビオースなどの競合する糖にCBM−融合タンパク質を曝露することで、アフィニティー・マトリックスからのCBM−融合タンパク質の溶出を達成することも可能である。溶出工程のため、これらの糖または他の類似の糖、あるいはその組み合わせいずれかを、適切な量、例えば1mM〜1Mの濃度範囲で、溶出緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水またはTrisに基づく緩衝液に添加することも可能である。糖濃度は、例えば25mM〜1Mの範囲、例えば50〜500mMの範囲であることも可能である。これらの糖は、低コストのバルク化学薬品として商業的に入手可能であり、これによって、本発明記載の下流プロセシングの全体の経済性がさらに改善される。
【0066】
(8)融合タンパク質の単離/精製。いくつかの場合、CBM−融合タンパク質のさらなる精製/単離が好適であるかまたは必要とされる可能性もある。限定されるわけではないが、イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーなどの当業者に知られる一般的に利用可能なクロマトグラフィー法いずれを用いて、こうしたさらなる単離を達成することも可能である。
【0067】
(9)最終産物。最終産物は、この場合、非常に精製された型のCBM−融合タンパク質であり、CBM−融合タンパク質の場合によるタンパク質分解性切断の準備ができているか、あるいはいくつかの場合に必要であるかまたは好適である可能性もあるさらなる精製/単離の準備ができている。このさらなる単離は、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー工程であることも可能である。
【0068】
非常に精製された型は、必要に応じて、さらなる配合および最終的な型でのパッケージングの準備ができている。
限定することを意図しない、以下の実施例を調べると、一般の当業者には、本発明のさらなる目的、利点、および新規特徴が、明らかになるであろう。さらに、上述のような、そして請求項に請求するような本発明の多様な態様および側面各々は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0069】
実施例
(実施例1)
バイオマス相互作用研究:CBM9−2および製粉オオムギ種子
乾燥オオムギ種子を、細かい粉になるまで、Retsch製粉装置中で細かく粉砕した。バイオマス相互作用研究に干渉しうるすべての水溶性構成要素を、試料から取り除く手段として、5mlの低塩緩衝液(50mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.02)を用い、種子から水溶性構成要素を抽出するため、製粉した種子1gを用いた。混合物をボルテックスし、そして5分間反転させ(tumbled)液体および製粉したオオムギ種子材料が完全に混合されていることを確実にした。この混合に続いて、試料を5000xgで4分間遠心分離して、固体物をペレットにした。遠心分離後、上清を廃棄した。低塩緩衝液を用いて、この手順を3回繰り返し、各遠心分離後、上清を廃棄した。次いで、高塩緩衝液(50mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.02、1M NaCl)を用いて、洗浄手順を3回繰り返し、前と同様、上清を廃棄した。生じた洗浄固体物は、大部分の植物細胞壁断片および不溶性デンプンに相当する。洗浄した固体物を、上述のような低塩緩衝液で3回洗浄して平衡化して、アフィニティー・クロマトグラフィーにおいて、セルロース性マトリックスへのCBM9−2のアフィニティー結合を支持するのと同じ条件を得た。バイオマス相互作用研究前の固体物の代表的な試料を、SDS−PAGE解析のために取り置いた(レーン3)。細菌で産生し、セルロース(Avicel(商標))−アフィニティー・カラム上で精製したCBM9−2(O.D.@280nm 0.394)10μlを、後のSDS−PAGEのために取り置いた(レーン2)。精製されたCBM9−2は、あらかじめ、タンパク質のセルロース結合アフィニティー特性を回復するように、CBM9−2に結合したいかなるグルコースも脱着するための立証された方法として、希釈および限外ろ過モジュール中の濃縮の繰り返し(4x)に供されていた。
【0070】
精製されたCBM9−2 2mlを、製粉オオムギ種子から得た、洗浄し、平衡化した固体物に添加し、そして混合物を振盪しながら室温で60分間インキュベーションした。インキュベーション後、混合物を5000xgで10分間回転して落とし、そして続いて上清を13,000xgで5分間遠心分離して清澄にした。バイオマス相互作用由来の清澄化上清10μlを、SDS−PAGE解析のために取り置いた(レーン4)。続いて、製粉オオムギ種子固体物からなるペレットを、上述のように、低塩緩衝液で5回洗浄し、そして高塩緩衝液で5回洗浄した。10μlの最初の低塩緩衝液洗浄物(レーン5)および5回目の低塩緩衝液洗浄物(レーン6)を、続くSDS−PAGE解析のために調製した。製粉オオムギ種子固体物から、結合したいかなるCBM9−2も溶出させるため、1mlの溶出緩衝液(50mM KPO、pH7.02中の1Mグルコース)を固体物に添加し、そして15分間混合しながらインキュベーションし、その後、5000xgで5分間遠心分離して、そして上清(溶出液)を除去した。溶出液10μlの試料を、SDS−PAGE解析のために調製した(レーン7)。バイオマス相互作用研究および溶出後の固体物由来の代表的な試料を、SDS−PAGE解析のために取り置いた(レーン8)。SDS−PAGEのために調製したバイオマス相互作用アッセイ由来の試料を、PhastSystem(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、12.5% SDS−PAGEゲル(PhastGels均質12.5)上で泳動した。泳動完了後、ゲルをクーマシーブルーR−250で染色し、そして脱染色した。結果を図2に例示する。
【0071】
これらの結果は、CBM9−2が植物由来細胞壁断片または製粉オオムギ種子由来の他の不溶性固体物に、有意には結合しないことを示す。
(実施例2)
製粉オオムギ種子抽出物からのCBM9−2の精製
商業的に入手可能な製粉装置(Aarslev Maskinfabrik, Erhvervsvangen 11, 5792 Aarslev, DK)を用いて、オオムギ種子を細かく挽いて粉にした。低塩緩衝液(50mMリン酸カリウム緩衝液 pH7.02)中、オオムギ粉:緩衝液がそれぞれ2:3の体積比で、生じたオオムギ粉を湿らせた。液体と粉を容器中で徹底的に混合し、そして4℃で一晩沈降させた。細菌から精製したCBM9−2をオオムギ種子上清に添加した。翌日、CBM9−2を含有するスパイク処理した上清(100ml)を、セルロース(Avicel(商標))を含有するStreamline 25(Amersham Biotech)クロマトグラフィー・カラムに装填した。装填適用は、流動床モードで流速184cm/時間で行い、その後、5カラム体積の高塩緩衝液(50mM KPO、pH7.02中の1M NaCl)、その後、5カラム体積の低塩緩衝液(50mM KPO、pH7.02)の洗浄工程を行った。流動床カラムは、沈降を可能にし(沈降した床の高さ=20cm)、そして92cm/時間、溶出緩衝液:50mM KPO、pH7.02中の1Mグルコース300mlで溶出を行った。溶出条件は、CBM9−2タンパク質を含有する小さいピークを生じた(図3を参照されたい)。
【0072】
これによって、上に記載する方法を用いると、まず;CBM9−2は、溶液中、製粉オオムギ種子由来の細胞壁断片およびあまり明確でない他の固体物には付着しないままであり、次に;本発明に記載するように、多糖アフィニティー・クロマトグラフィーを用いて、製粉オオムギ種子抽出物からCBM9−2を捕捉することも可能であり;第三に;これは、よく定義された薬剤等級セルロース(Avicel)をマトリックスとして使用することによって実行可能であり、そして第四に;アフィニティー・クロマトグラフィー工程は、本発明に記載するような流動床モードで実行可能であり、第五に;オオムギ種子抽出物から精製したCBM9−2は、本発明に記載するように、いかなる変性工程も回避した穏やかな条件下で、マトリックスから溶出させることも可能であることが示された。本明細書に上述するのとまさに同じ条件および方法を適用して、トランスジェニック製粉種子からCBM9−2融合タンパク質を精製することも可能である。記載する多糖アフィニティー・クロマトグラフィーは、本発明に記載するように、プロテアーゼ−CBMを分離し、そしてタンパク質分解性切断反応後、目的のタンパク質からCBMを切除するのにも有効である。
【0073】
(実施例3)
抽出物中のCBM9−2の熱安定性および濃縮
1.5グラムの製粉オオムギを、7.5mlの低塩緩衝液(50mM KPO、pH7.02)に溶解した。反転装置中で溶液を1時間連続して混合し、そして6000rpmで10分間回転して落とした。Bradfordアッセイで、タンパク質含量に関して、上清(抽出物)を測定し、そして可溶性種子タンパク質1.93mg/mlを含有することを見出した。抽出物350μlを精製CBM9−2タンパク質(0.238mg/ml)350μlと混合し、そしてエッペンドルフ試験管にアリコットし、これを続いて、水槽中で異なる温度(室温、50℃、60℃、70℃および90℃)に10分間曝露した。熱処理後、試料を11,000rpmで10分間回転して落とし、そして異なる熱処理由来の試料をSDS−PAGEで解析した。熱安定性試験由来の試料をSDS−PAGE用に調製し、そしてPhastSystem(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、12.5% SDS−PAGEゲル(PhastGels均質12.5)上で泳動した。泳動完了後、ゲルをクーマシーブルーR−250で染色し、そして脱染色した。結果を図4に例示する。熱に曝露したCBM9−2に関するさらなる試験を行って、CBM9−2がセルロースに結合する能力が、熱への曝露によって、いかなる点でも不都合に影響を受けないことを確認した。
【0074】
結果は、可溶性オオムギ種子タンパク質が溶液から次第に失われるのに対して、CBM9−2は、全温度範囲中、可溶性のままであったことを示す。これは、本発明が記載する精製プロセスの抽出段階中、CBMおよびCBM−融合タンパク質を濃縮する目的で、好適に熱を適用可能であることを示す。
【0075】
(実施例4)
製粉された単一のオオムギ種子抽出物からのCBM9−2に付着した異種タンパク質の精製
上述の精製法の規模縮小型において、異種タンパク質を発現しているトランスジェニック・オオムギ植物の単一の種子を用いた。室温で30秒間〜5分間の範囲でインキュベーションした。青色が発色したら、100μlの0.2M硫酸を添加した。色は黄色になり、そしてマイクロプレート読み取り装置中、450nmで吸光度を測定した。
【0076】
個々のトランスジェニック・オオムギ種子由来の単一種子抽出物のELISA解析の結果を図5に示す。
CBM9−2に特異的であることがあらかじめ示されたELISA解析は、まず;個々の種子中の異種融合タンパク質集積を達成し、そして検証可能であり;上述の方法は、小規模の場合であっても、切断部位を持つ異種融合タンパク質を単離するよう働き、精製プロセスの規模変更が可能であることを裏付け;CBM9−2に付着した目的の異種タンパク質が、抽出中、溶液において維持されることに成功し、そしてあまり明確でない植物細胞壁セルロースに結合したために失われることがないことを示し;再生工程を伴わない、特異抗体による溶出後に認識されるように、異種融合タンパク質が、クロマトグラフィー・プロセス中、変性に曝露されないことを示し、上に議論するように、いくつかの他のより厳しいアフィニティー・クロマトグラフィー法よりも本発明が好適であることを強調し;上述の精製法が、CBM9−2に付着したいかなる異種融合タンパク質にも適用可能であることを示す。
【0077】
(実施例5)
CBM−プロテアーゼの精製および活性測定
CBM9−2タグが付着した部位特異的プロテアーゼを産生するため、以下の方法にしたがった:
構造的プロモーター直後のエンテロキナーゼcDNA、該cDNAに付着した、CBM9−2に対応するcDNA、小胞体(ER)にターゲティングするシグナル配列、および該タンパク質をERに保持する保持シグナルで構成される発現構築物を所持するバイナリー・プラスミドを含有するように、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株AGL0を構築した。このアグロバクテリウム株を選択条件下、YEB培地中で、まず10ml中、O.D.600が0.8になるまで28℃で2日間増殖させた。小規模培養物を、20μMアセトシリンゴンを含有する500ml培養に1:50に希釈し、28℃で2〜3日間、そして激しく振盪しながらO.D.600nmが2.5になるまで培養した。この細菌を6,000rpmで10分間回転して落とし、そしてOD600が2.5になるようにMS溶液(55g/lスクロースを含有する)中に再懸濁した。アセトシリンゴン(10mM)を最終濃度200μMになるように添加した。次いで、細菌懸濁物を室温に1時間維持し、そしてTween−20(10%)を最終濃度0.005%になるように添加した。
【0078】
レタスにおけるCBM−プロテアーゼの一過性発現のため、アグロバクテリウム細菌懸濁物を含有するボウル中に植物を15秒間浸した。
続いて植物を真空チャンバーに入れ、そして0.4バール圧を20分間適用し、その後、吸気口を開放して、圧を迅速に均一にした。水道水のボウルに連続して浸漬することによって、葉表面の過剰な細菌を洗い落とした。レタス植物を16時間明期/8時間暗期の光周期、22℃で、増殖チャンバーに4日間入れた。
【0079】
葉組織を切り取ることによって植物を採取し、そして続いて凍結させ、そして86℃に維持した。乳鉢および液体窒素を用いて、非常に細かい粉末が得られるまで、植物をホモジナイズした。低塩抽出緩衝液およびレタス粉末、それぞれ1.2:1(体積:体積)を添加することによって、粉末になったレタス葉材料を抽出し、そして室温で時々混合しながらタンパク質を30分間抽出した。
【0080】
続いて抽出物を6000rpmで20分間遠心分離して、液相から固体物材料および細胞壁断片を分離した。上清をデカントし、そして先に記載するように再び回転した。透明な上清を、上述のようなセルロース性マトリックス(Avicel(商標))を含有する充填床カラムに装填した。CBM−プロテアーゼはセルロース性マトリックスに特異的に付着し、そしてそれぞれ5カラム体積の高塩および低塩洗浄緩衝液で洗浄した後、穏やかな非変性条件下で、すなわち1Mグルコース溶液を用いて、単一ピークとして、CBM−プロテアーゼをカラムから溶出させた。
【0081】
続いて、Millipore濃縮装置(Ultrafree−15−Biomax−5)を用いて、ピークを濃縮した。
標準的アプローチ(Grant& Hermon−Taylor、1979)にしたがい、特異的合成基質を用いてエンテロキナーゼ活性をアッセイする:合成基質:Gly−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys−β−ナフチルアミド(GDK−na);アッセイ条件37℃。反応体積は1.5mlである。反応混合物は:25μlの10mM GDK−na(0.5mM)、125μlの100mM Tris−HCl、pH8.4(25mM)、50μlの100% DMSO(10%)、50μlの100mM CaCl(10mM)、(20〜100)μlエンテロキナーゼ、250μl蒸留水―(20〜100)μlからなる。λex=337nmおよびλem=420nm間の蛍光の増分からβ−ナフチルアミン形成速度を決定した。これを5分間連続して監視した。
【0082】
活性測定の結果、記載するように産生し、そして精製したCBM−エンテロキナーゼが活性であることが示され;エンテロキナーゼ活性は、ブランクの0.0001cps/分/μgに比較して、442.7cps/分/μgと測定された。
【0083】
本実施例はまず;プロテアーゼ−CBMを植物において産生可能であり、この場合はレタス中で一過性に産生可能であり、そして上述の精製法を用いて、CBM−プロテアーゼを成功裡に単離し、そして精製することが可能であることを示す。さらに、本実施例は、融合タンパク質のCBM9−2アフィニティー・タグが完全に機能し;CBM−プロテアーゼがセルロース性マトリックスに有効に付着し、そして本発明が記載する穏やかな溶出条件下で、マトリックスから溶出可能であることを示し、そして溶出したプロテアーゼが完全に活性であることを示す。酵素活性は、部分的変性または完全な変性に特に感受性であり、こうした変性は容易に活性損失を生じるため、酵素的に活性である精製産物は、それ自体、その精製法が非変性特性を持つ証拠を提供する。これは、本発明の構成要素が、すべて機能し、そしてその振る舞いおよび性能が、上述の本発明が記載するような方式で、容易に適用可能であり、供給源いずれかの異種タンパク質の下流プロセシングの特異性、経済性および効率の大きな改善を構成するプロセスを生じるようなものであることを示す。
【0084】
参考文献
【0085】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、精製プロセスの好ましい態様の概略図である。
【図2】図2は、SDS−PAGE解析による、実施例1から得た結果を示す。レーン1:分子量サイズマーカー、レーン2:精製CBM9−2、レーン3:製粉したオオムギ種子由来の洗浄した固体物、レーン4:バイオマス相互作用後の上清、レーン5:低塩緩衝液での最初の洗浄液、レーン6:高塩緩衝液での5回目の洗浄液。
【図3】図3は、実施例2に詳細に記載するような、本発明の方法にしたがった、製粉オオムギ種子抽出物からのCBM9−2の精製の成功を示す。この図は、200mlセルロースを用いた、吸着流動床(EBA)カラムのクロマトグラフィー・プロフィールを示す。
【図4】図4は、実施例3から得た結果、抽出物中のCBM9−2の熱安定性および濃縮を示す。この図は、異なる温度に供したオオムギ抽出物中のCBM9−2の熱安定性のSDS−PAGE解析を示す。レーン1:10〜200kDaの分子量サイズマーカー、レーン2:室温(RT)のオオムギ種子抽出物、レーン3:精製CBM9−2(RT)、レーン4:CBM9−2+オオムギ種子抽出物(50℃)、レーン5:CBM9−2+オオムギ種子抽出物(60℃)、レーン6:CBM9−2+オオムギ種子抽出物(70℃)、レーン7:CBM9−2+オオムギ種子抽出物(90℃)。
【図5】図5は、実施例4から得た結果を示す。グラフは、対照試料のELISA読み取り値、およびCBM9−2に融合させ、そして本明細書記載の精製プロセスの規模縮小型にしたがって精製した、目的の異種タンパク質(HoxB4)を含有する試料の最小読み取り値を示す。柱は、(a)溶出緩衝液、(b)トランスジェニック種子から抽出した融合タンパク質、および(c)非トランスジェニック種子から抽出したタンパク質のELISA測定値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース結合性モジュール(CBM)を含む可溶性異種融合タンパク質を発現しているトランスジェニック植物またはトランスジェニック植物細胞から、前記融合タンパク質を産生し、そして精製する方法であって
(a)トランスジェニック植物材料を破壊し;
(b)前記の破壊した植物材料から可溶性融合タンパク質を液相に抽出してタンパク質抽出物を得るために、植物材料に抽出液を添加し、それによって可溶性植物材料および不溶性植物材料の混合物を生成し;
(c)細胞壁材料および固体物を含む不溶性植物材料を、目的の前記融合タンパク質を含む前記タンパク質抽出物から分離し;
(d)前記タンパク質抽出物を、前記融合タンパク質に結合する多糖マトリックスに接触させ;
(e)結合した融合タンパク質を伴うマトリックスを、1以上の適切な水溶液で洗浄し;そして
(f)前記多糖マトリックスからの前記融合タンパク質の遊離を達成する条件を調節することによって、前記マトリックスから融合タンパク質を溶出し、
それによって実質的に精製された可溶性異種融合タンパク質を得る
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記トランスジェニック植物または植物細胞が、双子葉植物および単子葉植物の群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物細胞またはトランスジェニック植物が、タバコ(tobacco)、ナタネ(rape seed)、ダイズ(soy bean)、アルファルファ(alfalfa)、レタス(lettuce)、オオムギ(barley)、トウモロコシ(maize)、コムギ(wheat)、カラスムギ(oat)およびイネ(rice)を含む植物群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分離工程(c)が、吸着流動床(expanded bed adsorption)(EBA)、沈殿、ろ過、遠心分離、またはその組み合わせのいずれかから選択される方法を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)における前記多糖マトリックスへのアフィニティー結合が、クロマトグラフィー工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質抽出物からの細胞壁材料および固体物の分離、並びに多糖マトリックス上への前記CBM融合タンパク質のアフィニティー結合を同時に行うための手段として、多糖マトリックスを伴う吸着流動床を含む、プロセス工程中の工程(c)および(d)を組み合わせた、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
マトリックスからの前記融合タンパク質の溶出を達成する前記条件が、中性条件または酸性条件であることも可能な非変性条件であるか、あるいは炭水化物への曝露を伴うか、あるいはその組み合わせのいずれかである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記多糖マトリックスがセルロースを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記セルロースマトリックスが、薬学的に適合するセルロースを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セルロースがAvicel(商標)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物または植物細胞が、CBMをコードする核酸配列を含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記CBMが熱安定性であり、そして上昇した温度で可溶性のままである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
CBMをコードする前記領域が、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のキシラナーゼ10A遺伝子の領域である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CBMをコードする前記領域が、配列番号1として示す配列を含むか、あるいは前記配列と同一のアミノ酸配列、または前記配列と実質的な配列同一性を持つアミノ酸配列をコードする配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プロセス中、前記タンパク質抽出物を、37℃〜100℃の範囲の温度に、1分間〜120分間の範囲の期間、加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
固体物の分離および加熱した抽出物由来の前記CBM融合タンパク質のアフィニティー結合を同時に行うための、多糖マトリックスを伴う吸着流動床を含むプロセス工程に、前記の加熱した抽出物を供する、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記異種融合タンパク質がプロテアーゼを含む、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテアーゼが哺乳動物エンテロキナーゼ(EK)またはそのエンテロキナーゼ活性部分である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記EKがウシEK触媒性ドメイン(EKc)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウシEKcが配列番号2として示す核酸配列にコードされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記融合タンパク質が、タンパク質分解性切断部位に遮断される、CBMおよび目的の異種ポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−503211(P2007−503211A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524528(P2006−524528)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/IS2004/000010
【国際公開番号】WO2005/021762
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506066847)
【Fターム(参考)】