説明

植物の栽培方法、植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料

【課題】
本発明は、植物の成長を著しく促進させ、しかも植物を良質に栽培することができる栽培方法、並びに植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料を提供することを目的とする。
【解決手段】
スズまたはスズ合金を用いる植物の栽培方法。スズまたはスズ合金等を含む植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培方法、植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物や花等の植物の栽培において、植物の成長を促進させることは、生産期間の短縮や生産性の向上を図るうえで非常に重要である。このため、植物の成長を促進させる方法に関する人々の関心は高く、盛んに研究開発がおこなわれている。植物の成長を促進させる方法としては、例えば、肥料使用する栽培や温室栽培等の従来ながらの手法や、近年普及してきた水耕栽培(例えば、特許文献1参照)や光照射栽培(例えば、特許文献2参照)等の手法が存在する。
上述のもの以外にも様々な栽培手法が存在するが、本発明者は従来の技術に囚われることなく研究開発を進めてきた結果、従来の手法とはまったく異なる植物の成長を促進させる栽培方法、栽培用培地、栽培用具および栽培用肥料を創作するに至った。
【特許文献1】特開2007−053976号公報
【特許文献2】特開2008−22812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、植物の成長を著しく促進させ、しかも植物を良質に栽培することができる栽培方法、並びに植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、スズまたはスズ合金を用いることを特徴とする植物の栽培方法である。
この方法によると、単純な栽培方法に比べ、植物の成長を大幅に促進させることができ、しかも植物を良質に栽培することができる。なお、この栽培方法は、土壌等での栽培のような培地を用いる栽培や、水耕栽培のような培地を用いない栽培にも適用することができる。また、スズまたはスズ合金に直接、植物を播種して発芽させることもできる。
【0005】
ここで、本発明による植物の具体的な栽培方法としては、例えば請求項2記載の発明のように、スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用培地により植物を栽培することが挙げられる。培地は、例えば培地の基材となる土、木材片、または繊維等と、スズまたはスズ合金を混合して製造する。なお、培地の基材は上記以外の構成であってもかまわない。
【0006】
また、請求項3記載の発明のように、スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用具を使用して植物を栽培することもできる。ここで用具としては、スズまたはスズ合金を含むシート、または容器等が挙げられ、これらを培地または液体等と組み合わせて植物を栽培することができる。
【0007】
さらに、請求項4記載のような、スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用肥料を培地等に混ぜて植物を栽培することも可能である。肥料は、従来の一般的な肥料に対し、スズまたはスズ合金を混合して製造する。
【0008】
なお、本発明よる植物の栽培方法、植物栽培用培地、植物栽培用具および植物栽培用肥料は、花、果樹または野菜等の栽培に幅広く適用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、単純な栽培方法に比べ、植物の成長を大幅に促進させることができると共に、植物を良質に栽培することができる。また、スズ自体に毒性はほとんど無いので、栽培した植物に害を与える恐れや、それを摂取した人々等の健康も害する恐れも無い。しかも、スズには抗菌効果があり、植物の育成において有害な雑菌の繁殖を抑えることができる。さらに、スズは酸化や腐食し難いため、植物の栽培においてその効果を持続させつつ長期間、使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による植物の栽培方法について、図表等を用いて説明する。本発明による植物の栽培方法は、スズまたはスズ合金を用いることを特徴としており、培地を用いる栽培や、培地を用いない栽培にも適用することができる。以下に、まず本発明の効果について検討するために行った各試験結果について解説し、次いで本発明の実施形態について説明をする。
【0011】
本発明の効果を検討するための試験は、発芽・育成試験、溶液成分試験、抗菌試験および細菌繁殖調査の4つである。以下に順次、説明する。
【0012】
第1の発芽・育成試験は、スズ有りとスズ無し(濾紙)の2検体に対して植物(小松菜)の発芽・育成状況について調査した。試験は、ビーカーに検体サンプルと蒸留水をいれ、検体上に小松菜の種を20粒播種し、1週間育成させて行った。なお、スズ無しの場合は播種の便宜上、濾紙を使用している。
【0013】
発芽試験の結果を表1および図1に示す。結果のうち育成調査成績によると、スズ有りの場合は、スズが無い場合に対して、根丈は約1.3倍であり、草丈にあっては1.9倍となっている。また、図1より茎も一回り太くなっていることが確認できる。
発芽状況については、スズ無しの場合と同じ発芽率であり、成長の過程においても異常な症状は見受けられず良好に成長した。なお、予備試験も行っており、その結果は上記の本試験とほぼ同様の結果であった。よって、試験の再現性は非常に高いものと考えられる。
以上の試験結果により、本発明のスズを用いる植物の栽培方法は、植物に悪影響を与えることなく、植物の成長を大幅に促進させ、しかも良質な植物を栽培できることが証明された。

【表1】

【0014】
第2の溶液成分試験は、スズの溶液への浸出について検討を行った。試験内容は、ビーカーにスズ検体と超純水を入れ、24時間常温放置後、検体を取り出し、水溶液中のSnの定量分析を行うものである。
試験結果を表2に示す。結果によると、成分溶出は検出限界以下であり、有意な成分の溶出は確認できなかった。これにより、本発明により植物を栽培しても、培地、液体(水等)および植物を汚染する可能性は非常に低く、また植物を摂取した人にも悪影響を及ぼす恐れもないものと考えられる。

【表2】

【0015】
第3のスズの抗菌試験は、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する抗菌特性について、フィルム密着法(JIS2081:2000)により検討を行った。具体的な試験内容は、スズ有りとスズ無し(フィルム)の2検体に対し、大腸菌または黄色ブドウ球菌を付着させ、24時間後の菌の繁殖状況を調査するものである。
【0016】
抗菌試験結果として、表3に大腸菌に対する結果を、表4に黄色ブドウ球菌に対する結果を示す。結果によると、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方の試験において、スズ有りの場合の生菌数は、スズ無しの場合に比べ非常に少なくなっており、また抗菌活性値(表略)も2.0以上の値を示しているので、これらの菌に対して抗菌効果があることが認められた。
【0017】
なお、水耕栽培等では、液体内で大腸菌等が繁殖して植物が汚染され、この植物を摂取した人が食中毒になることがあり、このような栽培においてスズを用いて栽培を行うと、植物の成長を促進させるだけではなく、菌の繁殖も抑えられ、植物が汚染される危険性も低くなるので、非常に有効であると考えられる。

【表3】

【表4】

【0018】
第4の細菌の繁殖調査については、シャーレにスズ検体を配置して、検体が浸る程度に滅菌水を入れて密封し、30℃の恒温槽に入れ、1ヶ月間、定期的に繁殖状況を調査しつつ寒天培養することにより行った。なお、比較検討のために、滅菌水のみの場合についても調査を行った。
【0019】
表5は細菌繁殖調査結果を示す。結果よると、スズ検体の場合では、試験期間中、細菌の存在をまったく確認することはできなかった。これより、スズが細菌の繁殖を助長しないことも確認できた。

【表5】

【0020】
次に本発明の実施形態について説明する。本発明による植物の栽培方法は、植物1もしくはその種子等の周辺に、スズまたはスズ合金を配置して栽培するものである。以下に、具体的な実施形態について順次説明する。
【0021】
本発明による第一の実施形態は、植物1の栽培において、粉状、粒状または小片状のスズまたはスズ合金を用いる栽培方法である。例えば、スズまたはスズ合金を、土や木材片等の培地2に混合して植物1の栽培を行うことができる。なお、培地2が繊維等であれば、繊維の表面に上記形状のスズまたはスズ合金を配置して栽培することや、または繊維自体にスズ等を含有させて栽培することもできる。これらの培地2を用いた植物1の栽培については、従来の播種および栽培方法により栽培することができる。なお、培地2の構成、スズ等の形状、スズ等の培地への混合方法およびスズ等の繊維への含有の方法については、上記のものに限定されるものではない。
【0022】
本発明における第二の実施形態として、図2に植物栽培用シートを示す。シート3は、ビニール等の素材にスズまたはスズ合金を含有させてシート3を形成し、さらにシート3には植物1を播種および育成させるための孔4を設けている。シート3の使用方法については、土等の培地2で形成した畝11等の表面にシート3を被せた後、孔4の部分において植物1を培地2に播種する。播種後は、従来の栽培方法により植物1を栽培すればよい。この構成によると、植物1の成長を促進させることができると共に、培地2を保温する効果も得られる。なお、シートの素材はビニール以外のものであってもよく、透明・不透明のどちらの素材であってもかまわない。また、孔4については、その形状、大きさ、数および配置位置等は任意であり、栽培条件にあわせて好適に決定すればよい。
【0023】
また、シート3は図3に示すように、シート3上に培地2を載せて使用することも可能である。この場合にあっては、シート3の孔4は設けても設けなくてもどちらでもかまわないが、図4に示すようにシート3に小さな孔4を多数設けておくと通気性や通水性を確保できる。植物1の栽培については、培地2に植物1を播種し、従来の栽培方法で栽培することができる。
【0024】
以上に、第二の実施形態として植物栽培用のシート3について説明を行ったが、必ずしもシート3である必要は無く、板体等であってもよい。板体とする場合には、板の素材にスズ等を混合する構成や、板の表面をスズ等で覆う構成などが挙げられる。
【0025】
本発明による第三の実施形態の実施形態として、図5に植物栽培用のメッシュ体6を示す。このメッシュ体6は、例えばスズまたはスズ合金を含浸した繊維で形成することができる。また、スズまたスズ合金自体でメッシュ体6を形成することもでき、この場合にあっては、メッシュ体6を折り曲げる等その形を変化させた際に、その形状を保持することができる。メッシュ体6の使用方法は、上述した図3に示すような状態で使用でき、また、図6に示すように植物1の根の周りで筒状に丸めて使用するなど、根を覆うようにして使用することもできる。このメッシュ体6により植物1を栽培すると、植物1の根がメッシュ体6に絡みつきやすくなるので植物1の根付が良くなり、その結果、植物1の成長を促進させる効果がより向上し、より良好に植物1を栽培することができる。
【0026】
本発明の第四の実施形態として、図7に植物栽培用の容器5を示す。容器5の構成については、容器5全体をスズまたはスズ合金で形成したもの、若しくは、容器5を構成する素材にスズまたはスズ合金を含有させたもの、または、容器5の内面の全部もしくは一部をスズまたはスズ合金で覆ったもの等が挙げられる。本発明による容器5は、培地2での栽培でも水耕栽培にも用いることができ、容器5内に培地または液体等を入れ、従来の方法により植物1を播種し、栽培することができる。なお、容器5の形状は特に限定されるものではないが、例えばプランターまたは植木鉢のような形状等が挙げられる。
【0027】
本発明における第五の実施形態は、スズまたはスズ合金を含む植物栽培用肥料である。肥料の製造は、植物1の栽培に一般的に使用されている肥料に対してスズまたはスズ合金を混合するものであり、肥料自体は有機肥料、無機肥料、または化学肥料等であってよく、肥料自体の種類は問わない。スズ等の混合は、第一の実施形態と同様に、粉状や粒状または小片状にして混合することができる。肥料の使用方法は、従来の肥料と同様である。
以上に示した本発明における肥料によると、従来の一般的な肥料に比べ、植物1の成長を促進させることができる。
【0028】
なお、当然のことながら、以上に説明した実施形態を組み合わせて植物1を栽培することも可能である。また、図1で示したように、スズまたはスズ合金上に直接、植物1を播種して発芽させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明における植物の発芽・育成調査の結果を示す写真。
【図2】本発明による第二実施形態の1例を示す斜視図。
【図3】本発明による第二実施形態の使用例を示す畝の断面図。
【図4】本発明による第二実施形態の他の例を示す斜視図。
【図5】本発明による第三実施形態を示す平面図。
【図6】本発明による第三実施形態の使用例を示す斜視図。
【図7】本発明による第四実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1 植物
2 培地
3 シート
4 孔
5 容器
6 メッシュ体
11 畝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズまたはスズ合金を用いることを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】
スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用培地。
【請求項3】
スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用具。
【請求項4】
スズまたはスズ合金を含むことを特徴とする植物栽培用肥料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−57415(P2010−57415A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226293(P2008−226293)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(502318216)株式会社能作 (9)
【Fターム(参考)】