説明

植物の細胞プロセスの制御方法

遺伝子改変植物を制御する方法であって、(a) 遺伝子改変植物を提供すること、ここで前記遺伝子改変植物の細胞は異種核酸を含有し、前記遺伝子改変植物は目的細胞プロセスに関して不活性である、(b) 前記異種核酸を含有する細胞へ無細胞組成物に由来するポリペプチドを直接導入することによって前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることを含み、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように前記ポリペプチド及び前記異種核酸は互いに適用されている、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部より適用されるポリペプチドのような外部シグナルによって植物の目的細胞プロセスを制御する方法に関する。更に、本発明は、前記方法に適用された、一過性に又は安定に遺伝子改変された植物、及び本発明の方法により制御されている遺伝子改変植物に関する。更に、本発明は、暗号化された外部シグナルで目的細胞プロセスを制御することによって遺伝子改変植物において産物を産生する方法に関する。本発明の方法は、一過性に又は安定に遺伝子改変された植物におけるトランス遺伝子発現の選択的制御を可能にするものであり、それによって植物においてこれまで機能不能であった目的細胞プロセスのスイッチを所定の時間に選択的に入れることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
植物の制御可能なトランス遺伝子発現システム
植物バイオテクノロジーの主要な問題の1つは、トランス遺伝子発現に対して信頼できる制御を達成することである。植物の遺伝子発現に対する厳重な制御は、例えば生分解プラスチック(Nawrath、Poirier&Somerville、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.91、12760−12764;John&Keller、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.93、12768−12773;US6103956;US5650555)又はタンパク質毒素(US6140075)のように、トランス遺伝子発現の下流産物が増殖抑制性又は毒性であるかどうかが最も重要である。植物において遺伝子発現を制御する既存の技術は、通常、組織特異的且つ誘導性のプロモーターに基づいているが、実際にはそれら全てが、誘導していないときであっても基底の発現活性に悩まされている。即ち、それらは「漏出性」である。組織特異的プロモーター(US05955361;WO09828431)は強力な手段であるが、それらの使用は、例えば不稔性植物の産生(WO9839462)又は種子における目的遺伝子の発現(WO00068388;US05608152)など、非常に特定の応用分野に制限されている。誘導性プロモーターはその誘導条件によって2つのカテゴリーに分類することができる:非生物要因によって誘導されるもの(温度、光、化学物質)と、生物要因、例えば病原体又は害虫の感染によって誘導され得るものである。第1のカテゴリーの例は、熱誘導性プロモーター(US05187287)及び低温誘導性プロモーター(US05847102)、銅誘導性システム(Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.90、4567−4571)、ステロイド誘導性システム(Aoyama&Chua、1997、Plant J.11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.14、247−257;US06063985)、エタノール誘導性システム(Caddickら、1997、Nature Biotech.16、177−180;WO09321334)、並びにテトラサイクリン誘導性システム(Weinmannら、1994、Plant J.5、559−569)である。植物の化学誘導性システムの分野における最近の発展の1つは、グルココルチコイド デキサメサゾンによってスイッチを入れ、テトラサイクリンによってスイッチを切ることができるキメラプロモーターである(Bohnerら、1999、Plant J.19、87−95)。化学誘導性システムの総説として:Zuo&Chua(2000、Current Opin.Biotechnol.11、146−151)を参照されたい。誘導性プロモーターの他の例は、植物において病原性関連(PR)遺伝子の発現を制御するプロモーターである。これらのプロモーターは、病原体感染に応答した植物シグナル伝達経路の重要な成分であるサリチル酸で、又はPR遺伝子発現(US05942662)の誘因となり得る他の化学化合物(ベンゾ−1,2,3−チアジアゾール又はイソニコチン酸)で植物を処理することによって誘導することができる。
【0003】
ウイルス感染によって提供されるウイルスRNA/RNAポリメラーゼを用いる制御可能なトランス遺伝子発現システムに関する報告がある(例えばUS6093554;US5919705を参照されたい)。これらのシステムにおいて、組換え植物DNA配列は、ウイルスRNA/RNAポリメラーゼに認識されるウイルスゲノム由来のヌクレオチド配列を含む。これらシステムの有効性は、ウイルスポリメラーゼがトランスに機能を提供する能力が低いこと、及びRNA増幅以外のプロセスを制御できないことにより、限定されたものである。別の方法は、遺伝子改変植物のある生化学的プロセスのスイッチをコードする異種核酸を提供する遺伝子改変ウイルスを用いることによって、トランスジェニック植物において目的プロセスを誘発することである(WO02068664)。
【0004】
上記システムは、所望のトランス遺伝子発現パターンを得る機会として非常に興味深いが、誘導剤(銅)又はそのアナログ(ステロイド誘導性システムの場合はブラシノステロイド)が残存発現を引き起こすのに十分なレベルで植物組織に存在し得るため、発現パターンを厳格に制御できない。更に、抗生物質やステロイドを化学誘導物質として使用することは、大規模な適用には望ましいことではなく、経済的にも実現不可能である。PR遺伝子又はウイルスRNA/RNAポリメラーゼのプロモーターをトランス遺伝子制御手段として用いる場合、偶然の病原体感染又はストレスが発現を引き起こし得るため、トランス遺伝子発現を厳格に制御する必要性も満たされない。組織又は器官特異的プロモーターは、発現を特定の器官又は特定の植物の発育段階に制限するが、自在にトランス遺伝子のスイッチを入れることはできないため、非常に狭い応用範囲に制限される。WO02/068664に記載されるような組換えウイルススイッは、こうした問題の全てに取り組むものであるが、ウイルスベクター中の異種核酸は組換え可能であるため、厳格な環境保護要件を保証するものではない。
【0005】
ウイルス遺伝子又はウイルスRNAの変異型の発現によるウイルス耐性植物の設計について記載した特許出願を含めた豊富な文献がある(例えばUS5792926;US6040496)。しかしながら、問題のウイルスとトランスジェニックウイルスRNA又はDNAとのあいだの組換えによって新規ウイルスが形成される可能性により、そのような植物の使用には環境リスクが伴う(Adair&Keamey、2000、Arch.Virol、145、1867−1883)。
【0006】
Hooykaas及び同僚は(2000、Science、290、979−982;WO01/89283)、アグロバクテリウムを介在してリコンビナーゼを植物細胞へ移行させるための、Creリコンビナーゼとvir遺伝子断片との翻訳融合物の使用について記載している。Creが介在する植物内組換え事象は選択可能な表現型を生ずる。Creリコンビナーゼの移行が、植物細胞内で目的プロセスを誘発するスイッチとして移行したタンパク質を最初に使用したものである。しかしながら、移行はDNAの移入を必ずしも伴うものではないにもかかわらず、植物病原性遺伝子改変微生物(アグロバクテリウム)はタンパク質Creリコンビナーゼのスイッチを入れる完全なコード配列を有するため、このアプローチは高レベルの安全性を保障するものではない。更に、目的プロセスはスイッチタンパク質を受容した細胞でのみ誘発され得る。細胞の大きな集団を処理する場合、全細胞数に対するスイッチタンパク質を受容した細胞の割合は非常に小さなものである。したがって、Hooykaasの方法は、植物全体に適用することができない。むしろ、その有用性は組織培養又は細胞培養における細胞に限定されている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、全植物において目的細胞プロセスのスイッチを入れる方法を提供するものである。本発明の他の目的は、植物において目的細胞プロセスのスイッチを入れる環境面で安全な方法を提供することであり、細胞プロセスのスイッチは所定の時間に選択的に入れることができる。本発明の他の目的は、トランスジェニック植物において産物を産生する方法を提供するものであり、産物の産生は、植物が所望の段階まで成長した後に選択的にスイッチを入れることができる。それにより、前記細胞プロセスに必要な遺伝物質及び制御機能をコードした遺伝物質はいずれも環境に伝播しないため、このプロセスは環境面で安全である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
上記目的は、遺伝子改変植物を制御する方法によって達成され、前記方法は、
(a) 遺伝子改変植物を提供すること、ここで、前記遺伝子改変植物の細胞は異種核酸を含有し、前記遺伝子改変植物は目的細胞プロセスに関して不活性である、
(b) 前記異種核酸を含有する細胞へ無細胞組成物由来のポリペプチドを直接導入することによって前記目的細胞プロセスのスイッチを入れること、
を含み、ここで、前記ポリペプチド及び前記異種核酸は前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように互いに適応されている。
【0009】
また、本発明は、本発明の方法によって得られる、又は得ることが可能な遺伝子改変植物又はその部分を提供するものである。前記植物の好ましい部分は葉及び種子である。種子が植物の部分の最も好ましい例である。
【0010】
また、本発明は、その細胞内に異種核酸を含有する遺伝子改変植物を提供するものであり、前記植物は目的細胞プロセスに関して不活性であり、前記異種核酸を含有する細胞へポリペプチドを直接導入することにより前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることができるように前記異種核酸は適用され、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように前記ポリペプチド及び前記異種核酸は互いに適用されている。
【0011】
更に、本発明は、遺伝子改変植物において目的細胞プロセスを制御するシステムを提供するものであり、前記システムは、上で定義したような植物、及び遺伝子改変植物において前記目的細胞プロセスのスイッチを入れるためのポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように前記植物及び前記ポリペプチドは互いに適用されている。
【0012】
本発明は、前記異種核酸を含有する細胞へポリペプチドを直接導入することにより植物の目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能である。前記ポリペプチドを直接導入することとは、前記導入が、前記ポリペプチド又は前記ポリペプチドの機能性部分をコードする核酸を前記植物へ適用することを含まないことを意味する。前記ポリペプチドの部分は、本発明の細胞プロセスのスイッチを入れることが可能な場合、機能性である。前記ポリペプチドを前記植物へ直接適用することにより、植物は前記目的細胞プロセスのスイッチを入れ得る遺伝物質と接触しないため、本発明によって非常に高レベルの生物学的安全性が達成される。代わりに、前記細胞プロセスの少なくとも1つの必要な成分がポリペプチドとして植物へ提供され、前記ポリペプチドをコードする遺伝物質は提供されない。本発明の主要な利点は、目的細胞プロセスに必要な遺伝物質及び前記ポリペプチドをコードする遺伝物質がいずれも前記植物の子孫へ移入され得ず、さもなければ環境に共に伝播し得ないことである。
【0013】
Hooykaasの方法(2000、Science、290、979−982;WO01/89283)は、植物細胞の目的細胞プロセスのスイッチを入れることを可能にし、スイッチタンパク質は病原性細菌を用いて導入される。この方法は細胞培養に限定されるため(実験室規模)、スイッチタンパク質をコードするアグロバクテリアの使用による生物学的安全性に対する懸念は生じない。本発明は、植物全体に有効であり、同時に、温室又は農場のように大規模で使用する場合であっても環境面で安全な、目的細胞プロセスを制御する方法を初めて提供するものである。
【0014】
本発明の方法の工程(a)では、遺伝子改変植物が提供される。高等植物、特に高等作物が好ましい。前記植物は、前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることに関与する異種核酸を前記植物の細胞が含有するように遺伝子改変されている。多くの場合、前記異種核酸は発現されるべきタンパク質をコードすることができる。工程(a)で提供される前記植物は、トランスジェニック植物であることができ、前記植物のほとんど又は全ての細胞は前記細胞のゲノムに安定に組み込まれた前記異種核酸を含有する。前記異種核酸は、核ゲノムに、又はミトコンドリア若しくは好ましくはプラスチドのようなオルガネラのゲノムに安定に組み込まれることができる。前記異種核酸のプラスチドゲノムへの組み込みは、生物学的安全性の面で有利である。本発明の方法は、トランスジェニック植物で実施することが好ましい。しかしながら、あるいは、前記植物は一過性に改変され、及び/又は前記異種核酸は細胞の分画に存在し、他の細胞には存在しなくともよい。一過性に改変された植物中の異種核酸は、細胞の前記分画のゲノムに安定に組み込まれても、エピソームに存在してもよい。前記植物の細胞の分画への前記異種核酸の組み込みは、例えば、ウイルス形質移入又はアグロバクテリウム介在形質転換を用いて前記生物に一過性に形質移入することによって達成することができる。いずれの場合も、工程(a)で提供される遺伝子改変植物は、工程(b)を実施する前、目的細胞プロセスに関して不活性である。
【0015】
本発明の方法の工程(b)では、前記ポリペプチドは無細胞組成物から前記異種核酸を含有する前記細胞の少なくともいくつかへ導入される。前記植物がトランスジェニックである場合、前記ポリペプチドは、原則として植物のどの部分にも又はどの細胞にも適用することができる。前記植物の細胞の分画のみが前記異種核酸を含有する場合、目的細胞プロセスのスイッチを入れるための前記異種核酸を含有する細胞に前記ポリペプチドが到達できるように、前記ポリペプチドは植物に適用される。上記のように、前記ポリペプチドは無細胞組成物から前記植物の細胞へ直接導入される。無細胞組成物は、前記ポリペプチドをコードする核酸を複製し得る生存細胞を含有しない。前記無細胞組成物は生存細胞を含有しないことが好ましい。無細胞組成物は、細胞(例えば前記ポリペプチドの発現に用いる細菌細胞のような細胞)を溶解して得られる細胞抽出物でよい。但し、前記ポリペプチドをコードする核酸を複製し得る生存細胞が前記組成物中に含まれないことを条件とする。無細胞組成物の他の例は、前記ポリペプチドの溶液、好ましくは緩衝化水溶液であり、又は固体若しくは乾燥した状態の前記ポリペプチドである。但し、上で定義したような生存細胞を含まないことを条件とする。
【0016】
直接導入は、(i) 粒子(微粒子)銃、(ii) 前記植物の少なくとも一部への前記ポリペプチドの適用、又は(iii) 前記ポリペプチドを含有する溶液を前記植物の組織に注入することによって行なうことができる。(ii)及び(iii)の方法では、前記ポリペプチドは典型的には植物の部分へ適用される液体、好ましくは水性の無細胞組成物(又は溶液)に含有される。そのような組成物は、例えば、ポリペプチドを含有する前記組成物を前記植物に噴霧することによって適用することができる。更に、前記組成物は、(iii)にしたがって注入することができる。
【0017】
(ii)及び(iii)の方法のために、前記ポリペプチドは、前記ポリペプチドが前記植物の細胞内へ入ることを可能にする膜移行配列(MTS)を含むことが好ましい。前記膜移行配列は前記ポリペプチドに共有結合的に結合しても非共有結合的に結合してもよい。好ましくは、共有結合的に前記ポリペプチドに結合している。前記膜移行配列は、前記生物の細胞の形質膜を通過する能力を前記ポリペプチドに付与するペプチドであることができる。そのような膜移行配列の多くは当該技術分野において公知である。それらは塩基性アミノ酸、特にアルギニンを含むことが多い。膜移行配列のサイズは大きく変化することができるが、典型的には3〜100アミノ酸、好ましくは5〜60アミノ酸であることができる。前記ポリペプチドは標準のタンパク質発現技術により、例えば大腸菌中で産生することができる。前記ポリペプチドの発現後の精製は、行なうことが好ましく、特に、前記ポリペプチドをコードする核酸の分解物を除去することが好ましい。核酸は除去しても加水分解により分解してもよく、好ましくはDNase又はリボヌクレアーゼ(RNase)のような酵素によって触媒されて分解される。更に又は追加として、クロマトグラフ技術を用いて前記ポリペプチドから核酸を除去してもよい。前記ポリペプチドは、例えば前記ポリペプチドを含有する液体組成物、好ましくは水溶液を前記植物に噴霧することにより植物に適用することができる。前記ポリペプチドが植物の細胞に入るのを促進するための方策、特に植物細胞壁及び/又は外部植物層を通過するのを可能にする方策を採ることが好ましい。そのような方策の例は、例えば機械的な引っかき傷によって植物表面の部分にわずかに傷をつけることである。他の例は、植物細胞壁を弱め又は穴を開けるセルロース分解酵素の使用である。
【0018】
目的細胞プロセスのスイッチを入れること(工程(b))には、無細胞組成物に由来する前記ポリペプチドを、前記異種核酸を含有する細胞へ直接導入することを必要とする。前記ポリペプチド及び前記異種核酸は、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように互いに適用されている。
【0019】
前記目的細胞プロセスに関し、特に限定はなく、本発明は非常に広く適用可能である。前記目的細胞プロセスは、前記異種核酸若しくは前記異種核酸に関係するDNA、RNA又はタンパク質であっても又はそれらを含むものでもよい。前記DNA、前記RNA又は前記タンパク質の形成を達成する可能性は数多くある。前記ポリペプチドは、例えば、前記異種核酸、例えばプロモーターへの結合活性を有するセグメントを含むことができる。したがって、前記セグメントは、例えば前記異種核酸の転写を誘導する転写因子として作用し、前記RNA及び/又は前記タンパク質の形成を誘発することができる。
【0020】
前記ポリペプチドは、前記DNA、前記RNA又は前記タンパク質の形成を誘発可能な酵素活性を有するセグメントを有することが好ましい。そのような活性の例は、部位特異的リコンビナーゼ、フリッパーゼ、リゾルベース、インテグラーゼ、ポリメラーゼ、又はトランスポザーゼの活性のようなDNA又はRNAの修飾活性である。前記酵素活性は、前記異種核酸を修飾して、例えば組換えにより、前記タンパク質の発現を生ずることができる。前記ポリペプチドがポリメラーゼ活性を有する態様では、前記セグメントは前記異種核酸のプロモーターに作用するDNA依存性RNAポリメラーゼであり得る。前記プロモーターは前記植物の生来のポリメラーゼによって認識されないことが好ましい。そのようなプロモーター−ポリメラーゼシステムの例は、T7プロモーター−T7ポリメラーゼのような、細菌、ウイルス、又はバクテリオファージのプロモーター−ポリメラーゼシステムである。
【0021】
更に、前記前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることは、前記異種核酸からの若しくは前記異種核酸に関係するDNA、RNA又はタンパク質の形成を含むことができる。例として、前記異種核酸からの又は前記異種核酸のRNA発現産物からの発現可能オペロンの形成が挙げられる。
【0022】
前記異種核酸(又は以下で説明するの前記追加の核酸)の配列部分は、前記タンパク質の作用によって転写プロモーターに機能可能に連結することができ、これは、例えば前記目的タンパク質をコードする配列又はRNAアンプリコンをプロモーターと機能可能に連結させることによって、前記追加の異種核酸からの目的タンパク質の発現又はRNA−ウイルスアンプリコンの転写のスイッチを入れることを可能にする。この態様を実施するための方法がいくつかある。1つの選択肢は、前記(追加の)異種核酸において、RNAアンプリコン及びプロモーターをコードする配列を、それらのあいだの機能可能な連結を妨げる配列ブロックによって分離することである。前記配列ブロックは、前記ブロックが前記組換え部位を認識するリコンビナーゼによって切断されるように、組換え部位に隣接することができる。それにより、RNAアンプリコンをコードする配列を転写するための機能可能な連結が確立し、発現スイッチを入れることができる。他の選択肢は、転写に必要な配列の一部(例えばプロモーター又はプロモーター部分)を反対方向に有し、組換え部位に隣接することである。好適なリコンビナーゼを(例えば前記ポリペプチドとともに)提供することにより、前記配列部分を反転させて正しい方向に戻し、機能可能な連結を確立できる。
【0023】
更に、前記DNA、前記RNA又は前記タンパク質は、前記植物の他の細胞へ伝播であることができる(例えばDNA又はRNAウイルスベクター)。そのような細胞プロセスの重要な例は、発現可能アンプリコンの前記異種核酸又は前記異種核酸のRNA発現産物からの形成である。前記アンプリコンは、それが活性化され又は形成される細胞内で増幅可能である(増幅ベクター)。前記アンプリコンは、前記目的細胞プロセスにおいて発現すべき目的遺伝子を含有する発現可能アンプリコンであり得る。更に、前記アンプリコンは、本発明の植物において細胞間移行又は浸透移行可能であり得る。アンプリコンは植物のDNAウイルス又はRNAウイルスに基づいたものであり得る。トバモウイルスのような植物RNAウイルスが好ましい。前記タンパク質の増幅特性は伝播可能であり(以下を参照されたい)、前記アンプリコンは相乗的に行動することができ、したがって前記植物のかなりの部分に伝播する非常に強力な目的細胞プロセスを可能にする(例えば前記アンプリコンから目的タンパク質の非常に強力な発現を生ずる)。トバモウイルスをベースとしたアンプリコンの遺伝子操作は当該技術分野に公知である(例えばDawsonら、1989、Virology、172、285−293;Yusibovら、1999、Curr.Top.Microbiol.Immunol.240、81−94を参照されたい;総説として、「植物ウイルスによる遺伝子操作」、1992、Wilson及びDavies編、CRC Press社を参照されたい)。
【0024】
本発明の主要な態様では、前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることは、前記異種核酸からのタンパク質の形成を包含し、前記タンパク質は植物内を伝播可能であり、即ち、それが形成された前記植物の1つの細胞を出て他の細胞に入ることが可能である(このようなタンパク質は、本明細書において「タンパク質スイッチ」ともいう)。他の細胞では、前記タンパク質は、特に追加の異種核酸を制御することによって、目的細胞プロセスのスイッチを入れることができる(以下を参照されたい)。1つの細胞を出て他の細胞に入ることとは、好ましくは前記植物又はその部分における細胞間移行又は浸透移行を含む。前記タンパク質(本明細書において「タンパク質スイッチ」ともいう)は、前記タンパク質スイッチが1つの細胞を出て他の細胞に入るのを可能にするタンパク質部分を含有することが好ましい。前記タンパク質部分はウイルス移行タンパク質又はウイルス外被タンパク質のドメインでもよい。更に、前記タンパク質部分は、細胞間移行又は浸透移行が可能な植物若しくは動物の転写因子、又は植物若しくは動物の転写因子のドメインであってもよい。更に、前記タンパク質部分は、植物若しくは動物のペプチド細胞間メッセンジャー、又は植物若しくは動物のペプチド細胞間メッセンジャードメインであってもよい。更に、前記タンパク質部分は、細胞間移行又は浸透移行可能な人工ペプチドでもよい。しかしながら、前記タンパク質部分は、ウイルス移行タンパク質若しくはウイルス外被タンパク質、又はウイルス移行タンパク質若しくはウイルス外被タンパク質のドメインであるか、あるいはそれを含むことが好ましい。
【0025】
伝播可能な前記タンパク質が前記異種核酸を含有する他の細胞へ入る場合、前記異種核酸からの前記タンパク質の発現のスイッチを入れる(誘導する)ことが可能であることが好ましい。このタンパク質(タンパク質スイッチ)を使用することにより、本発明の方法は、前記植物において外部より前記ポリペプチドを提供されたスイッチシグナルを増幅し、伝播させることが可能である。特に、前記ポリペプチドが最初に到達する細胞数が少ない場合、スイッチシグナルは前記植物内の更なる細胞へ効率的に運ばれる。前記タンパク質が前記異種核酸からのその発現を制御できる多くの方法がある。これらの方法は、上記工程(b)の前記ポリペプチドに使用できるものに相当する。
【0026】
それ自身の発現を制御する能力とは別に、タンパク質は目的細胞プロセスのスイッチを入れる能力を有することが好ましい。細胞プロセスのスイッチを入れることが好ましいが、スイッチが入れられた細胞プロセスの最終結果が植物の細胞におけるプロセスを抑制すること又はスイッチを切ることでもよいことは当業者に明らかである。前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能であるためには、前記タンパク質は、前記細胞プロセスを制御可能なセグメントを有することができる。前記セグメントは、前記目的細胞プロセスに必要な核酸(特に前記追加の異種核酸)を制御する結合活性又は酵素活性を有することができる。本発明の方法では、前記細胞プロセスのスイッチを入れることは、前記異種核酸からのそれ自身の発現を制御することと同じように達成することができる。この目的のために、前記タンパク質は前記細胞プロセスを制御するセグメント及び前記タンパク質の発現を引き起こすセグメントを有することができ、前記2つのセグメントの制御メカニズムは異なっていてよい。2つの制御メカニズムは類似又は同一であることが好ましく、前記タンパク質の1つのセグメントは、前記細胞プロセスのスイッチを入れるため及び前記タンパク質の発現を制御するために十分なものであり得る。したがって、簡便にするために、前記タンパク質は、前記1つのセグメント、及び前記タンパク質に前記植物の1つの細胞を出て他の細胞に入る能力を付与する部分を含有することが最も好ましい。
【0027】
本発明では、本発明の前記ポリペプチドは、同一のスイッチ機能を前記タンパク質スイッチとして有することができる。例えば、前記タンパク質スイッチと同一の酵素活性を有することができる。前記ポリペプチドは外部より適用され、それが入る細胞において目的細胞プロセスのスイッチを入れることができる。前記タンパク質スイッチは、好ましくは前記ポリペプチドのスイッチ機能に応答して、前記遺伝子改変植物の細胞内で産生される。次いで、前記タンパク質スイッチは、前記植物の細胞内で産生された後、それが産生された細胞及び/又は前記植物の他の細胞において目的細胞プロセスのスイッチを入れることができる。前記ポリペプチド及び前記タンパク質スイッチが同一の関連する酵素活性によってスイッチ機能を発揮する場合、前記ポリペプチドが好ましくは膜移行配列を有し、一方で前記タンパク質スイッチが好ましくは前記タンパク質スイッチに1つの細胞を出て他の細胞に入る能力を付与するタンパク質部分を有する点において、それらは異なっていてよい。
【0028】
前記目的細胞プロセスは、上記のように、前記細胞プロセスが制御される前記植物の細胞において追加の異種核酸の存在を必要とすることができる。前記追加の異種核酸は、前記植物の全ての細胞又は細胞の分画に存在することができる。前記生物の細胞の核ゲノム又はオルガネラゲノムに安定に組み込まれてもよい。本発明の前記異種核酸に関して言及したことは、前記追加の異種核酸にも一般に適用される。前記植物は、前記追加の異種核酸及び前記異種核酸に関してトランスジェニックであることが好ましい。
【0029】
前記追加の異種核酸は、例えば、植物において伝播可能なタンパク質を形成するために前記異種核酸が用いる場合に使用されるであろう。したがって、伝播タンパク質は、前記追加の異種核酸にコードされる目的細胞プロセスのスイッチを入れることができる。図8は、そのような態様を図解したものである。前記追加の異種核酸からスイッチを入れることができる目的細胞プロセスは、前記異種核酸に関連して言及されたものに相当する。
【0030】
本発明の更なる重要な態様において、前記異種核酸に由来するタンパク質及び前記直接導入されるポリペプチドは、前記タンパク質及び前記ポリペプチドがともに存在する場合にのみ、いっしょになって所定の機能を産生し、前記目的細胞プロセスのスイッチを入れる(図3参照)。前記タンパク質及び前記ポリペプチドは、インテイン介在トランススプライシング又はインテイン介在親和性相互作用によって、いっしょになって前記所定の機能を産生することが好ましい。したがって、前記所定の機能は、本発明の細胞プロセスのスイッチを入れることができる。前記所定の機能は、前記タンパク質について上記のものと同様に、例えば、前記追加の異種核酸に作用し得る結合活性又は酵素活性であり得る。この態様の重要な利点は、異種核酸で遺伝子改変された工程(a)で提供される植物は、本発明の前記細胞プロセスのスイッチを入れるのに必要とされる全ての成分を含有するわけではないことである。したがって、前記植物は、目的の機能性細胞プロセスに関する遺伝情報を子孫又は他の生物に移すことができない。
【0031】
しかしながら、スイッチが入れられた目的細胞プロセスは、本明細書に記載するように、全植物に影響を及ぼす必要はない。むしろ、前記目的細胞プロセスは、葉又は種子のような前記植物の部分に限定されてよい。種子における目的細胞プロセスは種子における目的タンパク質の産生であり得る。それによって目的タンパク質を慣用の方法で容易に回収し、前記種子に貯蔵することができる。しかしながら、目的細胞プロセスは前記植物の実質的な部分に影響を及ぼすことが好ましい。前記細胞プロセスのスイッチが入れられる植物の部分は、とりわけ前記ポリペプチドの適用場所に依存する。一般に、前記目的細胞プロセスは、前記ポリペプチドの適用場所近傍で最強であり、前記場所からの距離が増すにつれて減少してよい。前記減少は一般に異方性であり、前記ポリペプチドが適用された前記植物の組織の構造に依存してよい。例えば、目的細胞プロセスのスイッチが入れられ(例えば目的遺伝子の発現スイッチが入れられる)、前記ポリペプチドが植物の葉の分画へ適用される場合、前記目的細胞プロセスは典型的には、前記葉の前記分画内及び前記葉の前記分画近傍で生ずる。前記目的細胞プロセスは前記葉の主要な部分で生ずることが好ましい。前記目的細胞プロセスは苗条及び他の葉においても生ずることがより好ましい。前記目的細胞プロセスは前記植物の主要な部分で生ずることが最も好ましい。前記目的細胞プロセス(例えば目的遺伝子の発現)の範囲は、例えば細胞の種類又は組織の種類により、前記植物内で変化することができる。前記ポリペプチドの適用は、通常、植物表面の一点に限定されないことは明らかである。前記ポリペプチドは前記植物のいくつかの部分へ適用されることが好ましい(更に以下を参照されたい)。
【0032】
本発明の細胞プロセスは、植物の細胞における多工程生合成経路のような目的生化学的カスケード全体を含み、又はそれを生ずることができる。目的の細胞プロセス又は生化学的カスケードは、前記ポリペプチドに曝露する前は植物において機能可能ではない。本発明の方法は、これまで達成できなかった技術的正確性及び環境安全性をもって目的の細胞プロセス又は生化学的カスケードに対する制御を提供することができる。それにより、一般的にはバイオテクノロジーにおいて、特に植物バイオテクノロジーにおいて、植物における基本的なトランス遺伝子発現活性のような慣用技術では解決できなかった問題を解決するために、特に有毒物質又は生分解ポリマーを産生する場合に、新規適用が可能である。更に、本発明による正確な制御は、例えば、植物が植物の増殖を遅延させる基底の発現活性を負担することがなく、植物が目的細胞プロセスの実施に最も好適である場合、トランスジェニック植物を所望の段階まで増殖させることが可能である。いったん植物に目的細胞プロセスを効率的に実施する準備ができると、目的プロセスのスイッチが入り、高率で実施することができる。したがって、本発明の方法は、多細胞生物、特にトランスジェニック植物の増殖段階と産生段階とを安全に切り離すことが可能である。更に、複数の目的の細胞プロセス又は生化学的カスケードのための多成分システムを設計することが可能であり、それにより1以上の所望のプロセス又はカスケードのスイッチを選択的に入れることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本発明の基礎は、植物の細胞へ入ることが可能なポリペプチドの使用であり、前記ポリペプチド又は前記ポリペプチドの機能性部分をコードする核酸を前記細胞へ送達することなく目的細胞プロセスのスイッチを入れるものである。好ましくは、目的細胞プロセスのスイッチを入れることには、それ自身の発現を引き起こすことが可能なタンパク質の形成が含まれる。本発明の方法の一般原理を、図1〜図9に概略的に示す。
【0034】
「スイッチ」機能のためのタンパク質の選択
前記タンパク質スイッチに関して本明細書に記載されるのと同一のスイッチ機能を前記ポリペプチドのスイッチ機能に使用することができ、逆もまた同様である。本発明の前記タンパク質(タンパク質スイッチ)によって不可逆的に誘発できる目的細胞プロセスは数え切れないほどある。タンパク質スイッチ(図2でABと示す)は、例えば、多くのさまざまな方法で目的トランス遺伝子の発現を制御できる(図2でCと表す)。例えば、DNAの組換え又は転写、RNAのプロセシング又は翻訳、タンパク質翻訳後修飾(図2)などを誘発することができる。更に、タンパク質スイッチは、植物細胞への送達により前記ポリペプチドによって活性化されることができ、その後、スイッチとして機能することができる(図3)。タンパク質スイッチの選択は、前記植物において制御されるべき細胞プロセスの設計/選択に依存することは明らかである。前記細胞プロセスは、細胞内の核酸の再構成又は修飾により制御することができ、特にスイッチを入れることができる。その際、前記タンパク質は、前記タンパク質が侵入する細胞に存在する。そのような場合、タンパク質スイッチは、部位特異的エンドヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、メチラーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ポリメラーゼなどのようなDNA又はRNAの修飾酵素を含むことができる。
【0035】
本発明で意図する他の態様には、DNA制限消化及び/又はDNA複製のような反応を誘発することが含まれる。制限消化によって誘発され得る生化学的カスケードの例は2成分システムであり、ここで、複製オリジンを含有し、核ゲノムに組み込まれているDNA配列を、タンパク質スイッチとして働く切断頻度の小さい制限酵素によって特異的に切断し、常染色体性に複製するプラスミドに変換し、カスケードを誘発する。
【0036】
本発明の細胞プロセスを効率的に誘発する装置として用いることができる、RNA分子に影響を及ぼす反応が数多くある。これらには、とりわけRNAの複製、逆転写、編集、サイレンシング、又は翻訳のような反応が含まれる。例えば、いかにして部位特異的リコンビナーゼ、インテグラーゼ又はトランスポザーゼが、DNAの切断、反転、又は細胞、特に植物細胞への挿入によって目的プロセスを誘発することができるかを詳細に記載する先行技術は豊富にある(Zuo、Moller&Chua、2001、Nat.Biotech.19、157−161;Hoff、Schnorr&Mundy、2001、Plant Mol.Biol.45、41−49;US5225341;WO9911807;WO9925855;US5925808;US6110736;WO0140492;WO0136595)。バクテリオファージ及び酵母由来の部位特異的リコンビナーゼ/インテグラーゼは、DNAをin vitroで並びに植物及び動物で操作するために広く使用されている。本発明での使用に好ましいリコンビナーゼ−組換え部位は、以下の通りである:Creリコンビナーゼ−LoxP組換え部位、FLPリコンビナーゼ−FRT組換え部位、Rリコンビナーゼ−RS組換え部位、attP/attB部位を認識するファージC31インテグラーゼなど。トランスポゾンは、植物において遺伝子機能を発見するために広く使用されている。本発明での使用に好ましいトランスポゾンシステムには、Ac/Ds、En/Spm、「マリナー」ファミリーに属するトランスポゾンなどが含まれる。
【0037】
異種転写因子及びRNAポリメラーゼも本発明のタンパク質スイッチに使用することができる。例えば、T7プロモーターの制御下にあるトランス遺伝子を有する植物の細胞へのT7ポリメラーゼの送達は、そのようなトランス遺伝子の発現を誘導することができる。
【0038】
バクテリオファージプロモーター(例えばT3、T7、SP6、K11)の制御下にある植物トランス遺伝子(例えば本発明の追加の異種核酸)を植物の細胞へ送達された対応のDNA/RNAポリメラーゼで発現させることは、本発明で意図するタンパク質スイッチの開発のための別の有効なアプローチであり得る。別の有用なアプローチは、活性化に異種の又は遺伝子操作された転写因子を必要とする異種プロモーター又はキメラプロモーター又は他の人工プロモーターの使用であり得る。異種転写因子は、前記転写因子が認識可能なプロモーターの制御下で目的トランス遺伝子の発現を誘導するために使用することもできる。そのような転写因子の例は、とりわけ酵母MT(メタロチオネイン)プロモーター中の特定配列に結合する酵母の金属応答性ACE1転写因子(Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.90、4567−4571)、融合した6−ジンクフィンガータンパク質2C7及び単純ヘルペスウイルスVP16転写因子活性化ドメインを有する転写因子のように配列特異的DNA結合ドメイン及び活性化ドメインを有するさまざまなキメラ転写因子(Ordiz、Barbas&Beachy、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99、13290−13295)、全長434リプレッサー及びVP16転写アクチベーターのC末端80アミノ酸を有する転写因子(Wildeら、1994、Plant Mol.Biol.24、381−388)、ステロイド誘導性システムに用いられる転写因子(Aoyama&Chua、1997、Plant J.11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.14、247−257;US06063985)又はテトラサイクリン誘導性システムに用いられる転写因子(Weinmannら、1994、Plant J.5、559−569)である。場合により、トランス遺伝子発現のための既存の誘導性システムを使用することができる。あるいは、転写因子を活性状態にするのにリガンド活性化誘導物質を必要としないように、異種転写因子を改変することができる。キメラ転写因子は、高度に配列特異的なDNA結合ドメインと高率の活性化ドメインとの組み合わせを可能にし、そのような因子を植物細胞へ送達した後で最大の所望の効果を可能にするため、本発明での使用に有利であろう。
【0039】
本発明で意図される他のタンパク質スイッチは、異種核酸の1種以上の発現産物の翻訳後修飾に依拠することができ、発現産物の活性化をもたらすことができる。ポリペプチドの折り畳み、オリゴマー形成、標的シグナルの除去、プロ酵素から酵素への変換、酵素活性のブロックなどのような工程を制御することにより操作できるタンパク質スイッチについて多くの実施可能性がある。例えば、部位特異的プロテアーゼを植物の細胞へ送達することにより、遺伝子操作された宿主が特異的にプロ酵素を切断して活性酵素に変換する場合、標的モチーフを切断又は修飾する宿主の能力によってある産物が特定の細胞成分を標的とする場合、又は特異的結合配列の除去によってある産物が特異的に起動する場合、目的細胞プロセスを誘発することができる。翻訳融合タンパク質の切断は、ウイルス部位特異的プロテアーゼに認識されるペプチド配列を介して又は触媒ペプチドを介して達成することができる(Doljaら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、10208−10212;Gopinathら、2000、Virology、267、159−173;US5162601;US5766885;US5491076)。本発明に適用可能な部位特異的プロテアーゼの他の例は、哺乳動物のエンテロキナーゼ、例えば配列DDDK−Iを認識し(Kitamotoら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.91、7588−7592)、Lys−Ile結合を特異的に切断するヒトエンテロキナーゼ軽鎖;Gly−Glyジペプチド間のタンパク質分解を触媒するが切断部位の認識には4アミノ酸を必要とするHc−Proのようなウイルスプロテアーゼ(Carrington JC&Herndon KL、1992、Virology、187、308−315);セムリキ森林熱ウイルスの部位特異的プロテアーゼ(Vasiljevaら、2001、J Biol Chem.276、30786−30793);及びポリユビキチンプロセシングに関与するプロテアーゼ、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼ(Osavaら、2001、Biochem Biophys Res Commun.283、627−633)である。
【0040】
前記ポリペプチドの植物細胞への直接導入
a)微粒子銃(粒子銃)
前記ポリペプチドを前記植物の細胞へ直接導入する(直接送達)ためにさまざまな方法を用いることができる。最も単純なのは植物組織との機械的相互作用により直接送達することである。例えば、ポリペプチドで被覆した粒子の微粒子銃により、前記ポリペプチドを植物細胞へ送達することができる。プロトコールは、植物形質転換プロトコールの中でDNA送達について記載されたものと同様であることができる(US05100792;EP00444882B1;EP00434616B1)。しかしながら、DNAの代わりに、前記ポリペプチドを用いて粒子を被覆してもよい。前記ポリペプチドの活性を保存するために適度に穏やかな粒子被覆法を使用する微粒子銃法に関する記載がある(Sanford、Smith&Russell、1993、Methods in Enzymol.217、483−509)。原則として、マイクロインジェクション(WO09209696;WO09400583A1;EP175966B1)、又はリポソーム介在送達(総説として:Fraley&Papahadiopoulos、1982、Curr.Top.Microbiol.Immunol.96、171−191を参照されたい)などの他の植物形質転換法も用いることができる。
【0041】
b)膜移行アミノ酸配列の使用
目的ポリペプチドは、膜移行配列との共有結合的融合又は非共有結合的相互作用により前記植物の標的細胞へ外部より適用することができる。天然及び合成の膜移行配列(MTS)について多くの例が当該技術分野で公知である。それらは、細胞膜透過性を増加させるために、ペプチド薬物及び治療タンパク質との融合物として広く使用されている。MTSは単純なアミノ酸反復配列、例えば11個のアルギニンRRRRRRRRRRRを含有する陽イオン性ペプチドであり得る(Matsushitaら、2001、J.Neurosci.21、6000−6007)。他の陽イオン性MTSは長さ27アミノ酸のトランスポータン(GWTLNSAGYL LGKINLKALA ALAKKIL)である(Poogaら、1998、FASEB J.12、67−77)。そのようなペプチドが、細胞への浸透のために、細胞質に面している脂質単層が陰イオン性リン脂質を含有する細胞の形質膜の非対称性を利用することは大いにあり得る(Buckland&Wilton、2000、Biochim.Biophys.Acta/Mol.Cell.Biol.Of Lipids、1483、199−216)。ある種のタンパク質は、形質膜を通る細胞内への能動移行を可能にするサブユニットも含有する。そのようなドメインに属するのは、HIV−1 Tat49−57の塩基性ドメイン(RKKRRQRRR)(Wenderら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、13003−13008)、アンテナペディア43−58(RQIKIWFQNR RMKWKK)(Derossiら、1994、J.Biol.Chem.269、10444−10450)、カポジ線維芽細胞増殖因子のMTS(AAVALLPAVL LALLAP)(Linら、1995、J.Biol.Chem.270、14255−14258);VP22 MTS(Bennet、Dulby&Guy、2002、Nat Biotechnol.20、20;Laiら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、11297−302);キイロショウジョウバエの節足らずタンパク質及びエングレイルドタンパク質由来のホメオドメイン(Hanら、2000、Mol Cells 10、728−732)である。これらの正に荷電したMTSは全て、それ自身により、及びGFP(Zhaoら、2001、J.Immunol.Methods、254、137−145;Hanら、2000、Mol Cells、10、728−732)、Creリコンビナーゼ(Peitzら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、4489−4494)のような他のタンパク質との融合物として、エネルギー非依存的様式で細胞への侵入を達成可能であることが示された。しかしながら、細胞へのタンパク質輸送には融合は必ずしも必要ではない。GFP、b−Gal、又は全長特異的抗体のようなさまざまな種類のタンパク質との非共有結合的疎水性相互作用によって複合体を形成可能な、Pep−1を有する21残基ペプチドが設計された(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV)。これらの複合体は、細胞膜を効率的に浸透可能である(Morrisら、2001、Nature Biotechnol.19、1173−1176)。MTSの列挙を継続することは可能であるが、一般に、合成又は天然のアルギニンに富んだペプチドは本発明の実施に役立つことができる(Futakiら、2001、J.Biol.Chem.276、5836−5840)。
【0042】
植物と動物の細胞膜あいだで、その一般構築と物理化学特性に影響を及ぼす本質的な構造上の差異はないため、MTSと本発明の前記ポリペプチドとの前記融合物は、植物細胞に浸透させるために効率的に用いることもできる。しかしながら、動物細胞とは異なり、植物細胞は堅い細胞壁を有する(Varner&Linn、1989、Cell、56、231−239;Minorsky、2002、Plant Physiol、128、345−53)。この障害物は、単純な技術を用いることで克服することができる。例えば、MTSを有する前記ポリペプチドを含有する(例えば粗製の)タンパク質抽出物を植物アポプラストへ注入することによって、前記ポリペプチドの植物細胞への移行を容易にする。細胞壁を克服し、植物細胞の細胞膜へ到達するための他のアプローチは、その多くが市販されている細胞溶解酵素を適用することであり得る。いったん前記ポリペプチドを含有する組成物へ添加すると、前記酵素は細胞壁を除去し又は弱めるのに役立つが、細胞膜は無傷のまま、前記MTSを含有する前記ポリペプチドによる浸透に曝露させる。細菌及びカビ由来の前記細胞溶解酵素は、工業規模で長い間市販されており(例えばトリコデルマ・ハルジアナムの「オノズカ」R−10酵素調整品など)、植物プロトプラストを入手するための植物細胞組織培養において広く使用されている(Sidorov&Gleba、1979、Tsitologia、21、441−446;Gleba&Gleba、1978、Tsitol Genet.12、458−469;Ghoshら、1994、J.Biotechnol.32、1−10;Boyer、Zaccomer&Haenni、1993、J.Gen.Virol.74、1911−1917;Hilbricht、Salamini&Bartels、2002、Plant J.31、293−303)。細胞溶解酵素を用いるアプローチは、本発明の大規模な適用に可能性を有する。細胞溶解酵素と細胞透過性ポリペプチドとの混合物は、遺伝子改変植物又はその部分へ噴霧することができる。セルラーゼは、細胞膜を膜透過性ポリペプチドにとって接近可能にすることができる。細胞内に移行すると、前記ポリペプチドは植物内で前記目的細胞プロセス及び前記タンパク質の発現を誘発することができる。
【0043】
前記ポリペプチドの上記送達法に加えて、タンパク質スイッチの植物内での有効な伝播は、好ましくは前記植物内での増殖目的に用いられる。更に、方法全体を安全にするために、異種核酸に対する厳密な制御が必要とされる。
【0044】
これらの課題に取り組むために、本明細書において、タンパク質スイッチをコードするトランス遺伝子の分離を制御するための「スプリット遺伝子」(又は「スプリットタンパク質」)アプローチの使用について提案する。この態様では、活性(機能性)タンパク質スイッチは、インテイン介在タンパク質トランススプライシング(図4A及び図5A)によって、又は親和性相互作用(図4B及び図5B)によって組み立てられる。この場合、タンパク質スイッチは連続したDNA配列をコードせず、その使用は非常によく制御することができる。そのような活性タンパク質スイッチは、例えば、前記ポリペプチド、及び前記植物の細胞内で(例えば異種核酸から)発現するタンパク質から、インテイン介在タンパク質トランススプライシング又は親和性相互作用によって組み立てられることができる。前記異種核酸から発現したタンパク質及び前記ポリペプチドは、タンパク質及び前記ポリペプチドがともに存在する場合にのみ前記目的細胞プロセスのスイッチを入れる所定の機能をいっしょになって産生することができる。前記異種核酸から発現したタンパク質は、例えば構成的に発現することができ、前記ポリペプチドを適用することによって目的プロセスのスイッチをいれることができる。あるいは、前記異種核酸から発現したタンパク質は、調節されたプロモーター(例えば化学的誘導性プロモーター)の制御下にあることができ、目的プロセスの「2重」制御、即ち調節されたプロモーターの誘導及び前記ポリペプチドの導入による制御を可能にする。重要なことは、これらの態様は特別優れた生物学的安全性を有するということである。インテイン介在タンパク質トランススプライシング及び親和性相互作用について次に記載する。
【0045】
その活性の回復を伴うタンパク質のインテイン介在トランススプライシングは、当該技術分野で公知であり、多くの出版物に詳細に記載されている。タンパク質親和性相互作用及び/又はトランススプライシングは、遺伝子操作されたインテインを用いることによって達成することができる(図4−A)。インテインは、タンパク質前駆体にインフレームで組み込まれ、タンパク質の成熟過程で切除されるタンパク質配列として最初に同定された(Perlerら、1994、Nucleic Acids Res.22、1125−1127;Perler,F.B.1998、Cell、92,1−4)。自己スプライシング反応を実施するのに必要な全ての情報及び触媒基は、インテイン及び2つのフランキングアミノ酸に存在する。タンパク質スプライシングの化学的メカニズムは、Perler及び同僚によって(1997、Curr.Opin.Chem.Biol.1、292−299)、並びにShao&Kentによって(1997、Chem.Biol.4、187−194)記載されている。インテインは通常N端及びC端のスプライシング領域並びに中央のホーミングエンドヌクレアーゼ領域又は小さなリンカー領域から成る。100を超えるインテインがこれまで公知となり、真核生物、古細菌及び真正細菌を含めたさまざまな生物の核ゲノム及び/又はオルガネラゲノム分布している(http://www.neb.com/neb/inteins.html)。インテインはトランススプライシング可能であることが示されている。中央のホーミングエンドヌクレアーゼ領域を除去してもインテインの自己スプライシングに何も作用しない。このことはトランススプライシングシステムの設計を可能にする。このシステムでは、インテインのN端及びC端断片が別個の断片として共発現し、エクステイン(インテインによっていっしょに連結するタンパク質断片)と融合すると、トランススプライシングをin vivoで実施できる(Shingledeckerら、1998、Gene、207、187−195)。結核菌RecAインテインのN端及びC端セグメントを用いて、タンパク質トランススプライシングがin vitroで生じ得ることも証明された(Millsら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95、3543−3548)。この現象は、シネコシスティス種株PCC6803のDnaEタンパク質に関しても同定された(Wuら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95、9226−9231)。反対DNA鎖に700kbp以上離れて位置する2つの異なる遺伝子がこのタンパク質をコードする。大腸菌細胞で試験したとき、これらの遺伝子にコードされた2つのインテイン配列が分離したミニインテインを再構築し、タンパク質トランススプライシング活性を介在可能であることも示された。同一起源のインテイン(シネコシスティス種株PCC6803由来のDnaEインテイン)を用いて、2つの連結していない断片から機能性の除草剤耐性アセト乳酸シンターゼIIを(Sunら、2001、Appl.Environ.Microbiol.67、1025−29)、及び5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェートシンターゼ(EPSPS)(Chenら、2001、Gene、263、39−48)を大腸菌で作製した。
【0046】
タンパク質断片のトランススプライシング(エクステイン間の共有結合形成を含む)は、スプリットタンパク質の元の機能を回復するのに必ずしも必要ではない。多くの場合、ペプチド結合を形成しないタンパク質部分間の親和性相互作用は、タンパク質機能を回復するのに十分である(図4B)。このアプローチは、2以上の機能性ドメインを有するタンパク質を用いた最も成功したものである(インテイン介在トランススプライシングの場合のように)。この場合、ドメインは、2つの転写ベクター間のコード配列を分離することによって互いに離すことができ、タンパク質介在親和性相互作用によっていっしょになることができる(図5B)。タンパク質ドメインは、相互作用するインテインを使用することなく相互作用することができる。タンパク質分解感受性リンカー領域によって接続された2つの構造ドメインから成るIS10トランスポザーゼの再構築活性の例がある(Kwon、Chalmers&Kleckner、1995、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、8234−8238)。各ドメインは、別個にトランスポザーゼ機能を提供できない。しかしながら、いっしょに加えられると、リンカー領域に接続していなくても、移動を提供することができる。ペプチド結合を形成することなく、単離断片から機能性タンパク質を再構築する例が他にも数多くある。機能性インスリン受容体結合部位の効率的な組み立ては、非機能性断片を単純に混合することによって達成された(Kristensenら、2002、J.Biol.Chem.277、18340−18345)。2つの不活性ペプチド断片の単純な混合による活性タンパク質の再構築は、ロイシンデヒドロゲナーゼ(Oikawaら、2001、Biochem.Biophys.Res.Commun.280、1177−1182)、Ca2+−結合タンパク質カルビンディンD28k(Berggardら、2000、Protein Sci.9、2094−2108;Berggardら、2001、Biochemistry、40、1257−1264)、シロイヌナズナ発生レギュレーターCOP1(Staceyら、2000、Plant Physiol.124、979−990)、ドーパミンD受容体(Scarselliら、2000、Eur.J.Pharmacol.397、291−296)、ミクロプラスミノーゲン(De Los Santos、Wang&Reich、1997、Ciba Found.Symp.212、76−83)、及びその他多くについて示された。
【0047】
ロイシン・ジッパードメインは、いったん目的タンパク質と融合するとタンパク質ヘテロダイマーを形成することに関し、特に興味深い(Riecker&Hu、2000、Methods Enzymol.328、282−296;Liu、2001、Curr.Proetin Pept.Sci.2、107−121)。興味深い例は、低分子によるタンパク質−タンパク質相互作用の制御である。例えば、Creリコンビナーゼは、2つの不活性断片に分離されている場合、2つの不活性断片間のヘテロダイマー化により活性相補性を誘発する低分子ラパマイシンの存在下で、そのリコンビナーゼ活性を100%回復できるように遺伝子操作された(Jullienら、2003、Nucleic Acids Res.31、e131)。ラパマイシン及び好ましくは非毒性のアナログを条件付タンパク質スプライシングに用いることもできる。この場合、それらはトランススプライシング反応を誘発する(Mootzら、2003、J.Am.Chem.Soc.125、10561−10569)。ラパマイシン又はラパマイシンアナログのような低分子によるタンパク質−タンパク質相互作用の制御に関し、同様のアプローチがいくつかの文献に記載されている(Amaraら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、10618−10623;Pollockら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、13221−13226;Pollockら、2002、Nat.Biotechnol.20、729−733)。不活性タンパク質断片からの活性なホモダイマー又はヘテロダイマーの組み立てにデキサメサゾン及びメトトレキセートのような他の多くの化学2量体化剤を用いることができる(総説として:Pollock&Clackson、2002、Curr.Opin.Biotechnol.13、459−467を参照されたい)。
【0048】
親和性相互作用は、天然の相互作用タンパク質ドメインを用いることによって又はそのようなドメインを2ハイブリッド(Fields&Son、1989、Nature、340、245−246;Chienら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88、9578−9582;酵母プロトコールハンドブック、クローンテックラボラトリーズ社、2000)若しくはファージディスプレイシステムで同定することによって効率的に操作されることができる。例えば、ファージディスプレイを用いて5〜12量体オリゴペプチドを目的タンパク質断片への高親和性により選択することができる。そのようなシステムのいくつかが現在市販されている。ファージディスプレイは、短い可変の5〜12量体オリゴペプチドをバクテリオファージの外被タンパク質に挿入する選択技術である。この可変オリゴペプチドをコードする配列がバクテリオファージ外被タンパク質の対応する遺伝子に含まれる。通常、7量体ファージディスプレイライブラリーは、可変オリゴペプチド中に7量体アミノ酸のさまざまな組み合わせをもつ少なくとも10の独立したクローンを有する。ファージディスプレイは、バクテリオファージと目的タンパク質との親和性複合体を作製するために用いられてきており、「パニング」と呼ばれるin vitro選択法によって所定の標的タンパク質に対するペプチドリガンドの迅速な同定を可能にする(Parmley、Smith、1988、Gene、73、305−318;Corteseら、1995、Curr.Opin.Biotechnol.6、73−80)。パニング処置の後で作製されるファージ−タンパク質複合体は解離することができ、標的タンパク質に対する親和性を有するファージが増幅できる。通常、高親和性を有するバクテリロファージを得るには、3回のパニングサイクルが必要である。3ラウンド後、ゲノムDNAの可変領域を配列決定することにより、個々のクローンを特定することができる。前記システムは、短い相互作用オリゴペプチドを同定し、タンパク質断片をいっしょにするための親和性タグとしてそれらを使用するために、効率的に採用することができる。
【0049】
他のアプローチには、ロイシンに富んだ反復配列(Kobe&Deisenhofer、1994、Trends Biochem Sci.19、415−421;Kobe&Kajava、2001、Curr.Opin.Struct.Biol.11、725−732)、ジンクフィンガー(Grossley、Merika&Orkin、1995、Mol.Cell.Biol.15、2448−2456)、アンキリン反復配列(Thompson、Brown&McKnight、1991、Science、253、762−768)、クロモドメイン(Paro&Hogness、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88、263−267;Singhら、1991、Nucleic Acids Res.19、789−793)、及びタンパク質−タンパク質相互作用に関与する多くのその他のもののような天然の相互作用ドメインの使用が含まれる。しかしながら、タンパク質−タンパク質相互作用において原動力となる融合を含有する遺伝子操作されたタンパク質断片だけでなく、内在タンパク質も包含する可能性は考慮することができない。
【0050】
遺伝子発現のような目的細胞プロセスのスイッチを入れるためにタンパク質−タンパク質相互作用を包含することにより、とりわけ以下の利点を有する:第1に、目的機能は、誘導されていない状態がゼロレベルであり、非特異的な漏出性がないことを特徴とする高度に特異的なタンパク質−タンパク質又はタンパク質−核酸の相互作用の結果であるため、システムを高度に特異的にすることができる。これは、本質的に特異性が低く、常にある程度の漏出性を示す低分子に基づいたスイッチのような先行技術のシステムとは反対である。第2に、前記タンパク質スイッチ又はその断片(あるいは前記ポリペプチド又はその断片)は、前記ポリペプチドをコードする核酸ベクターを用いることなく、植物の細胞へ直接送達することができ、したがって前記ポリペプチドの正確な用量を可能にする。これは、前記タンパク質スイッチ(又は前記ポリペプチド)の植物の細胞への直接送達を、細胞において必要なプロセスを誘発するための低分子の使用に匹敵したものにする。第3に、このシステムは、問題の生物が目的タンパク質の発現に必要である完全な遺伝情報を含有しないことを可能にするため、目的タンパク質に関する完全な遺伝情報を(直鎖核酸又は前記核酸の断片の形態で)含有する先行技術のシステムよりも、本質的に環境面で安全である。分子生物学のセントラルドグマによれば、生物システムは、タンパク質を核酸に逆翻訳することはできない。したがって、生体による機能性形質の発現に十分な遺伝情報の「逆操作」は不可能である。第4に、このシステムは、システムの不当な使用を禁止するために用いられる特異的ロックを提供する。前記ポリペプチド又は前記ポリペプチド断片を発現する生物からの粗製タンパク質抽出物成分として前記ポリペプチドを使用することにより、事実上、前記抽出物の活性成分の同定を非常に困難にする。
【0051】
目的細胞プロセスを誘発するための植物内でのタンパク質スイッチの伝播
ここで、外部より適用されるポリペプチドが到達できる植物の細胞数が少ないという問題を克服するために、1つのアプローチを提供する:前記ポリペプチドは、細胞間移行又は浸透移行可能な細胞内タンパク質スイッチ分子の形成をもたらすことができる。更に、前記ポリペプチドは、目的遺伝子又はその部分を発現し、前記植物において細胞間移行又は浸透移行可能な、ウイルスをベースとしたベクター(アンプリコン)の形成をもたらすか又は引き起こすことができる。こららのアプローチでは、ウイルスベクター若しくはタンパク質スイッチ分子のいずれか、又は両方の移行は、前記植物のかなりの部分、及び遺伝子改変植物のほぼ全てに対して、細胞プロセス及び/又は生化学的カスケードの伝播をもたらすことができる。
【0052】
本発明の実施例1では、タンパク質スイッチは、ウイルスベクターの前駆体ベクターをウイルスベクターに変換するためのインテグラーゼphiC31を含有する。ウイルスベクターは増幅、細胞間移行及び浸透移行が可能である。pICHGFPinvのattP及びattB部位間でのインテグラーゼ介在組換え(図7A)は、前記部位に隣接したDNA断片の反転、並びに目的遺伝子(GFP)の増幅及び発現を可能にするウイルスベクターの形成をもたらす(図7B)。これは、ベクター増幅及び浸透移行に必要なウイルス成分(3’NTR:3’非翻訳領域;CP:外被タンパク質)を、この実施例におけるアクチン2プロモーターのように問題の植物において活性なプロモーターに対してセンスの方向に配置した結果として達成することができる。したがって、他のウイルスベクター成分(例えばRdRp及びCP)とともに、アクチン2プロモーターによって駆動される転写により、増幅、細胞間移行及び浸透移行が可能なRNAウイルスベクターを形成するcDNAを形成することができる。場合により、前記ベクターは、CP(外被タンパク質)遺伝子を除去することによって更に修飾することができる。CP遺伝子を欠失するそのようなベクターは依然として細胞間移行が可能であろう。植物中で非ウイルス遺伝子を発現させるための植物ウイルスをベースとした発現システムの構築は、いくつかの文献(Dawsonら、1989、Virology、172、285−293;Brissonら、1986、Methods in Enzymology、118、659;MacFarlane&Popovich、2000、Virology、267、29−35;Gopinathら、2000、Virology、267、159−173;Voinnetら、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96、14147−14152)及び総説(Porta&Lomonossoff、1996、Mol.Biotechnol.5、209−221;Yusibovら、1999、Curr.Top.Microbiol.Immunol.240、81−94)に記載されており、当業者であれば容易に実施することができる。ウイルスベクターをベースとした発現システムは、植物の核トランス遺伝子と比較して、顕著に高収率のトランス遺伝子産物を与える。例えば、トランス遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルは、ウイルスベクターから発現した場合、全細胞内植物タンパク質含量の5〜10%に達することができる(Kumagaiら、2000、Gene、245、169−174;Shivprasadら、1999、Virology、255、312−323)。RNAウイルスは、DNAウイルスに比べて高発現レベルを与えるため、最も好適である。植物におけるトランス遺伝子物質の全体発現に好適なウイルスベクターについて記載した公開特許がいくつかある(US5316931;US5589367;US5866785)。一般に、これらのベクターは、ウイルスタンパク質との翻訳融合物として(US5491076;US5977438)、追加のサブゲノムプロモーターから(US5466788;US5670353;US5866785)、又は独立したタンパク質翻訳のためにIRES(配列内リボソーム進入部位)配列を用いてポリシストロン性ウイルスRNAから(ドイツ国特許出願DE10049587)、外来遺伝子を発現できる。最初のアプローチ−組換えタンパク質とウイルス構造タンパク質との翻訳融合物(Hamamotoら、1993、BioTechnology、11、930−932;Gopinathら、2000、Virology、267、159−173;JP6169789;US5977438)は、かなりの収率の組換えタンパク質産物を与える。しかしながら、このアプローチの有用性は、組換えタンパク質をウイルスタンパク質と容易に分離できないため、限定されている。このアプローチの代替物は、ウイルス性部位特異的プロテアーゼに認識されるペプチド配列、又は触媒ペプチドを介した翻訳融合物を採用する(Doljaら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、10208−10212;Gopinathら、2000、Virology、267、159−173;US5162601;US5766885;US5491076)。異種サブゲノムプロモーターに基づいて構築されたウイルスベクターを利用する発現プロセスは、今までで最も高レベルのタンパク質産生を提供する(US5316931)。ウイルスベクター及びその他多くの最も重大な不利益は、増幅すべきDNAのサイズに関するその限定された能力である。通常、安定な構築物は、1kb以下のインサートを収容する。植物の機能ゲノミクスのある分野では、G.della−Cioppaら(WO993651)が、植物cDNAライブラリーを発現させるために、内在遺伝子のサイレンシングを目的としてTMVをベースとしたウイルスベクターを使用したことについて記載したように、これはさほど重要な限定ではないかもしれない。ヘルペスウイルスを使用する2成分増幅システムはわずかによい能力を与えることができる(US5889191)。植物ゲノムに安定に組み込まれる発現カセットに基づいた他のシステムは、ウイルスベクターをベースとしたアンプリコンの発現を駆動する強力な35Sプロモーターを含有する。これらのシステムは通常翻訳後遺伝子サイレンシング(PTGS)に付される(Angell&Baulcombe、1997、EMBO J.16、3675−3684)。PTGSサプレッサーの使用は、このようなサイレンシングを克服するのに必要である(WO0138512)。そのようなシステムによって目的タンパク質の大規模産生を達成するには、サイレンスアンプリコンを有する植物と、PTGSサプレッサー源を有する植物とのあいだで交配を実施する必要がある(Malloryら、2002、Nature Biotechnol.20、622−625)。明らかに、そのようなシステムは、トランス遺伝子の発現に対する柔軟性も厳重な制御もなく、植物の成長及び発生を傷つけないタンパク質の産生に制限されている。
【0053】
我々のシステムは、上記ウイルスベクターシステムの限定、特に発現すべき遺伝子のサイズに関する限定された能力及び発現を制御する上での柔軟性の欠如を克服することを可能にする。本発明では、ウイルスベクター前駆体(プロベクターともいう)がトランスジェニック植物の各細胞に存在することが好ましい。大きい遺伝子(1kb以上)を発現する場合、タンパク質スイッチの移行はウイルスベクターの移行よりも好ましい。ウイルスベクターは細胞内で効率的に増幅することができ、ウイルスベクターのインサートサイズは細胞間移行及び浸透移行の能力にほとんど影響を及ぼす。したがって、宿主植物の多くの細胞又はほとんど全ての細胞に対し、ウイルスベクターを活性化できる移行可能タンパク質スイッチを提供することにより、上記問題を解決するであろう。更に、全てではないにしてもほとんどの宿主植物の細胞においてそのようなウイルスベクターの増幅スイッチを入れることが可能な効率的なスイッチ機能を有するシステムを提供するために、細胞間移行/浸透移行可能なタンパク質スイッチが本発明に使用される。
【0054】
この目的のために、タンパク質スイッチは、前記タンパク質の細胞間移行及び/又は浸透移行を可能にするタンパク質部分を含有してもよい。細胞間輸送可能なそうしたタンパク質部分の例は、当該技術分野で公知である。植物転写因子、防御関連タンパク質及びウイルスタンパク質が原形質連絡を通してできることを示す証拠がある(総説として:Jackson&Hake、1997、Curr.Opin.Genet.Dev.7、495−500;Ding、B.1998、Plant Mol.Biol.38、279−310;Jorgensen RA.2000、Sci STKE、58、PE2;Golz&Hudson、2002、Plant Cell、14、S277−S288)。キュウリモザイクウイルスの3a移行タンパク質とGFPとの融合物が原形質連絡を介して隣接細胞へ輸送できることが示された(Itayaら、2002、Plant Cell、14、2071−2083)。そのような融合物も、師部を通るトランスジェニック台木から非トランスジェニック接ぎ穂への移行を示した。タバコモザイクウイルス(TMV)の移行タンパク質P30は、原形質連絡を通して細胞間を輸送し、原形質連絡サイズに影響を及ぼすことにより、そのような移行に関して特定されていない他の多くの高分子の移行を容易にする(Citovskyら、1999、Phil.Trans.R Soc.London B Biol Sci.354、637−643;Ding、Itaya&Woo、1999、Int Rev.Cytol.190、251−316)。P30:GFP融合物は、生理的条件とは無関係に細胞間の移行を示したが、非標的化GFPは、植物細胞の生理的状態に大いに依存して原形質連絡を通して拡散した(Crawford&Zambryski、2001、Plant Physiol.125、1802−1812)。GFPと転写因子knotted1との融合物も、細胞間輸送能を示した。GFP:KN1融合タンパク質は、タバコ植物の葉の内部組織から表皮へ、表皮細胞間の、及び茎頂分裂組織への移行を証明した(Kimら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99、4103−4108)。原形質連絡はそのような輸送に重要な役割を果たす。そしてその生理学的状態及び構造はそうした輸送効率に重要である。例えば、単純な原形質連絡は、タバコの葉が発育する際に、タンパク質の非特異的輸送を可能にするが、枝分かれしたものはできない(Oparkaら、1999、Cell、98、5−8)。タンパク質を含めた高分子の輸送を可能にすることは、植物ウイルスが細胞間伝播のために利用した原形質連絡の正常な機能であるように見える(Fujiwaraら、1993、Plant Cell、5、1783−1794)。一般に、原形質連絡及び師部が情報高分子(タンパク質及び核酸)の輸送及び送達に重要な役割を果たすことは明らかである(Ruiz−Medranoら、2001、Curr.Opin.Plant Biol、4、202−209)。カボチャ・マキシマ(maxima)及びトウゴマ由来の師部sapタンパク質は、原形質連絡を通した細胞間輸送能を有する(Balachandranら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94、14150−14155)。
【0055】
図8は、本発明のタンパク質スイッチの細胞間移行を達成する可能性を概略的に示す。外部より送達されるタンパク質スイッチ(即ち前記ポリペプチド)及び細胞内で合成されたタンパク質スイッチは、移行シグナル又は輸送シグナルに対する同一の又は異なるタンパク質セグメントの融合物であり得る。我々の実験では(図8)、同一タンパク質セグメント、例えばリコンビナーゼが、細胞膜透過性のために膜移行シグナル(MTS)と融合して本発明の前記ポリペプチドを形成するか、又は細胞間輸送を提供するタンパク質部分(TP)と融合して前記タンパク質スイッチを形成する。小さいタンパク質(GFP及びそれより小さい)に関し、単純な拡散によって高率に細胞間移行可能であり得るため、TPとの融合は必要ないように思われる。しかしながら、より大きいタンパク質スイッチに関しては、TP又はその活性断片との融合は有益である。細胞間輸送に関与する全てのタンパク質の中で、ウイルスタンパク質が最も研究されていることは明らかである。それらはタンパク質スイッチに包含される最も好ましい候補である。図8に示すように、外部より送達されるポリペプチドは、同一酵素活性を有するが、細胞間輸送可能であるタンパク質スイッチ(リコンビナーゼ:TP)をコードするトランス遺伝子の発現を誘発することができる。輸送可能な前記タンパク質スイッチは、影響を受けた全ての細胞内でタンパク質スイッチの発現を誘発することができ、連鎖反応を表す。前記タンパク質スイッチの細胞内における利用可能性は、DNA再構成によって細胞内で目的遺伝子(GOI)の発現を誘発するための必須条件であり、ウイルスベクターをベースとしたアンプリコン形成を引き起こす。そのようなアンプリコンから発現する目的遺伝子のサイズは、アンプリコンの安定性及び細胞間移行はこのシステムでは不要であるため、効率的GOI発現のための限定要因ではない:ウイルスプロベクターは各植物細胞に存在することができ、タンパク質スイッチの伝播はこれらの細胞のそれぞれにおいて目的遺伝子発現を誘発することができる。しかしながら、アンプリコンの伝播は効率的なGOI発現に貢献することが好ましい。
【0056】
本明細書において意図されるタンパク質スイッチシステムの最終目的は、植物産生システムにおける目的細胞プロセス又は目的生化学反応カスケードのいつでも使える制御である。生化学的カスケードは、最終的に特定の目的産物、効果又は形質を生ずる宿主産生システムにおける生化学反応の連鎖である。
【0057】
本明細書に記載されるアプローチは、多目的で、漏出性について保証付きであることに加えて、効率的な産生制御法を提供するものである。上記2成分プロセスは、本質的に「キーロック」システムであり、企業はタンパク質スイッチ成分を販売することにより効率的に産生へのアクセスを制御することができる。
【0058】
本発明での使用に好ましい植物には、あらゆる植物種が含まれ、農学的及び園芸学的に重要な種が好ましい。本発明に使用される一般作物には、アルファルファ、大麦、マメ、アブラナ、カウピー、ワタ、トウモロコシ、クローバー、ハス、ヒラマメ、ルビナス、キビ、エンバク、エンドウ、ラッカセイ、コメ、ライ麦、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、大豆、サトウモロコシ、ライコムギ、クズイモ、ハッショウマメ、ソラマメ、小麦、フジ、及びナッツ植物が含まれる。本発明を実施するのに好ましい植物種には、イネ科、キク科、ナス科及びバラ科の代表種が含まれる。ナス科が好ましい。
【0059】
更に、上で特定したものに加えて本発明に使用される好ましい種は、以下の属:シロイヌナズチ、コヌカグサ、ネギ、キンギョソウ、オランダミツバ、ラッカセイ、クサスギカズラ、オオカミナスビ、カラスムギ、ホウライチク、アブラナ、スズメノチャヒキ、ルリマガリバナ、ツバキ、アサ、トウガラシ、ヒヨコマメ、アカザ、キクニガナ、ミカン、コーヒーノキ、ジュズダマ、キュウリ、カボチャ、ギョウギシバ、カモガヤ、チョウセンアサガオ、ニンジン、ジギタリス、ヤマノイモ、アブラヤシ、オヒシバ、ウシノケグサ、イチゴ、フクロソウ、ダイズ、ヒマワリ、キスゲ、パラゴムノキ、オオムギ、ヒヨス、サツマイモ、アキノノゲン、ヒラマメ、ユリ、アマ、ドクムギ、ミヤコグサ、トマト、ハナハッカ、リンゴ、マンゴー、イモノキ、ウマゴヤシ、アフリカウンラン、タバコ、イガマメ、イネ、キビ、テンジクアオイ、チカラシバ、ツクバネアサガオ、エンドウ、インゲン、アワガエリ、イチゴツナキ、サクラ、キンポウゲ、ダイコン、スグリ、トウゴマ、キイチゴ、サトウキビ、サルメンバナ、ライムギ、セネシオ、エノコログサ、シロガラシ、ナス、モロコシ、イヌシバ、カカオ、シャジクソウ、レイリョウコウ、コムギ、ソラマメ、ササゲ、ブドウ、トウモロコシと、Olyreae科、Pharoideae科からの植物とその他の多くの種である。
【0060】
本発明の範囲内では、食物または飼料連鎖内に含まれない植物種は、医薬及び技術的タンパク質産生に特に好ましい。これらの中で、タバコ種は十分に開発された発現ベクター(特にウイルスベクター)システムで容易に形質転換及び培養ができるため、最も好ましい。
【0061】
目的細胞プロセスとして発現され、本発明を用いて単離され得る目的遺伝子、それらの断片(機能性又は非機能性)及びそれらの人工誘導体には、限定されるものではないが:デンプン修飾酵素(デンプンシンターゼ、デンプンリン酸化酵素、脱分枝酵素、デンプン分枝酵素、デンプン分枝酵素II、顆粒結合性デンプンシンターゼ)、スクロースリン酸シンターゼ、スクロースホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ポリフルクタンスクラーゼ、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、フルクトシルトランスフェラーゼ、グリコーゲンシンターゼ、ペクチンエステラーゼ、アプロチニン、アビジン、細菌レバンスクラーゼ、大腸菌glgAタンパク質、MAPK4及び相同分子種、窒素同化/代謝酵素、グルタミンシンターゼ、植物オスモチン、2Sアルブミン、タウマチン、部位特異的リコンビナーゼ/インテグラー(FLP、Cre、Rリコンビナーゼ、Int、SSVIインテグラーゼR、インテグラーゼphiC31、又はこれらの活性断片若しくは変異体)、イソペンテニルトランスフェラーゼ、Sca M5(大豆カルモジュリン)、鞘翅類型の毒素又は殺虫活性断片、ユビキチン共役酵素(E2)融合タンパク質、脂質、アミノ酸、糖、核酸及び多糖を代謝する酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、プロテアーゼの不活性プロ酵素型、植物タンパク質毒素、繊維産生植物において繊維を改変させる形質、バチルス・スリンギエンシス由来の鞘翅類活性毒素(Bt2毒素、殺虫性結晶タンパク質(ICP)、CryIC毒素、デルタエンドトキシン、ポリオペプチド毒素、プロトキシン等)、昆虫特異的毒素AaIT、セルロース分解酵素、Acidothermus celluloticus由来E1セルラーゼ、リグニン修飾酵素、シンナモイルアルコールデヒドロゲナーゼ、トレハロース−6−リン酸シンターゼ、サイトキニン代謝経路の酵素、HMG−CoAレダクターゼ、大腸菌の無機ピロホスファターゼ、種子の貯蔵タンパク質、エルウィニア・ヘルビコーラ リコペンシンターゼ、ACCオキシダーゼ、pTOMコードタンパク質、フィターゼ、ケトヒドロラーゼ、アセトアセチルCoAレダクターゼ、PHB(ポリヒドロキシ酪酸)シンターゼ、アシルキャリヤータンパク質、ナピン、EA9、非高等植物フィトエンシンターゼ、pTOM5コードタンパク質、ETR(エチレン受容体)、プラスチドのピルビン酸リン酸ジキナーゼ、線虫誘導性膜貫通孔タンパク質、植物細胞の光合成又はプラスチド機能を高める形質、スチルベンシンターゼ、フェノールを水酸化することが可能な酵素、カテコールジオキシゲナーゼ、カテコール2,3−ジオキシゲナーゼ、クロロムコン酸(chloromuconate)シクロイソメラーゼ、アントラニル酸シンターゼ、Brassica AGL15タンパク質、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ(FBPアーゼ)、AMV RNA3、PVYレプリカーゼ、PLRVレプリカーゼ、ポリウイルス外被タンパク質、CMV外被タンパク質、TMV外被タンパク質、ルテオウイルスレプリカーゼ、MDMVメッセンジャーRNA、突然変異体ジェミニウイルスレプリカーゼ、Umbellularia californica C12:0選好性アシル−ACPチオエステラーゼ、植物C10又はC12:0選好性アシル−ACPチオエステラーゼ、C14:0選好性アシル−ACPチオエステラーゼ(luxD)、植物シンターゼA因子、植物シンターゼB因子、D6−デサチュラーゼ、植物細胞における脂肪酸のペルオキシゾームb−酸化に酵素活性を有するタンパク質、アシル−CoAオキシダーゼ、3−ケトアシル−CoAチオラーゼ、リパーゼ、トウモロコシアセチル−CoA−カルボキシラーゼ、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSP)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(BAR、PAT)、CP4タンパク質、ACCデアミナーゼ、翻訳後切断部位を有するタンパク質、スルホンアミド耐性を与えるDPHS酵素、細菌ニトリラーゼ、2,4−Dモノオキシゲナーゼ、アセト酢酸シンターゼ又はアセトヒドロキシ酸シンターゼ(ALS、AHAS)、ポリガラクツロナーゼ、Taqポリメラーゼ、細菌ニトリラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、メチラーゼ、DNA及びRNAリガーゼ、DNA及びRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ヌクレアーゼ(DNアーゼ及びRNアーゼ)、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ等が含まれる細菌又はファージの他の多くの酵素が含まれる。
【0062】
本発明は、分子農業、並びに工業用酵素(セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ等)及び繊維タンパク質(コラーゲン、クモ絹糸タンパク質等)を含めた商業的に価値が有り医薬的にも重要なタンパク質の精製目的にも用いることができる。ヒト又は動物のいかなる健常タンパク質も、本発明のアプローチにおいて記載したものを用いて発現させ、精製することができる。そのような目的タンパク質の例には、とりわけ、免疫応答タンパク質(モノクローナル抗体、1本鎖抗体T細胞受容体など)、病原微生物由来のものを含めた抗原、コロニー刺激因子、リラキシン、ソマトトロピン(HGH)及びプロインスリンを含めたポリペプチドホルモン、サイトカイン及びそれらの受容体、インターフェロン、増殖因子及び凝固因子、酵素活性のあるリソソーム酵素、線維溶解ポリペプチド、血液凝固因子、トリプシノーゲン、a1−アンチトリプシン(AAT)、ヒト血清アルブミン、グルコセレブロシダーゼ、天然コレラ毒素B、並びに上記タンパク質の融合物、突然変異型及び合成誘導体のような機能保存タンパク質が含まれる。
【実施例1】
【0063】
植物ゲノムに安定に組み込まれたプロベクター部分から増殖ベクターを組み立てるための、タンパク質スイッチによって誘発される部位特異的DNA組換えの使用
2つのプロベクター部分を有するT−DNAをもつ2元ベクターpICHFPinv(図7)を、標準の分子生物学技術(Maniatisら、1982、分子クローニング:実験室マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク)を用いて設計した。プロベクター配列並びに構築物及び機能の基本原理に関する記載は、特許出願PCT/EP02/03476(WO02088369)及びDE10121283に詳細に記載されている。ベクターは、形質転換マーカー(NPTII遺伝子)、シロイヌナズナアクチン2遺伝子の植物プロモーター(Anら、1996、Plant J.10、107−121)に先行されたTMVの5’端を有し、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、及びサブゲノムプロモーターが後に続く移行タンパク質(MP)を含有する。ベクターは、目的遺伝子(GFP)、浸透移行を提供するウイルス外被タンパク質(CP)、及びウイルスベクターの3’−非翻訳領域(3’NTR)を含有する、プロベクターの3’末端も含有する。3’プロベクターは、2つの転写終結シグナルとともに、ファージインテグラーゼphiC31に認識される組換え部位によって隣接される(Thomason、Calendar&Ow、2001、Mol.Genet.Genomics、265、1031−1038)。
【0064】
pICHGFPinvのT−DNAを含有するトランスジェニックタバコ・ベンサミアナ植物は、Horschら(1985、Science、227、129−131)に記載されるように、葉ディスクをアグロバクテリウム介在形質転換することによって得た。葉ディスクを、目的構築物で形質転換したアグロバクテリウム株GV3101とともに30分間インキュベートした。選択物質を含まない培地(MS培地 0.1mg/l NAA、1mg/l BAP)で3日間インキュベーション後、100mg/Lカナマイシンを添加した同一MS培地で形質転換体の選択を行なった。アグロバクテリウムの成長を抑えるため、培地に300mg/Lカルベニシリン及び300mg/Lセフォタキシムも添加した。再生物をホルモン添加はしていないが同一濃度の選択物質を含む選択MS培地でインキュベートし、発根を誘導した。分離T2集団におけるトランス遺伝子の存在を、PCR解析で確認した。
【0065】
選択した膜移行シグナル(MTS)に融合した細胞透過性インテグラーゼ又はリコンビナーゼを産生するために、プロベクターシステム(WO02088369)のための構築物セットを、標準の分子生物学技術にしたがって作製した(図9を参照されたい)。インテグラーゼphiC31をN.ベンサミアナの葉で産生させ、前記インテグラーゼをHIV−Tat48−60のMTS(Wenderら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、13003−13008)、又はカポジ線維芽細胞増殖因子(FGF)MTS(Linら、1995、J.Biol.Chem.270、14255−14258)と融合させた。感染したN.ベンサミアナの葉からの粗製タンパク質抽出物を、pICHGFPinvのT−DNAで形質転換したトランスジェニック植物の処置に用いた。植物細胞壁の透過を容易にするために、いくつかの実験ではインテグラーゼを含有する粗製タンパク質抽出物へ細胞溶解酵素を添加した。0、001%セルラーゼ オノズカR−10(Serva)を用いてMTS−インテグラーゼ融合物の植物細胞への送達効率を高めた。
【0066】
トランスジェニック植物の葉を細胞透過性インテグラーゼに曝露することにより、attP部位とattB部位のあいだに部位特異的組換えを引き起こす。そのような組換えは3’プロベクターの逆転をもたらし、ウイルスアンプリコンの完全cDNAをアクチン2プロモーターの制御下に作製する(図7B)。GFPを発現するTMVをベースとしたRNAアンプリコンは、細胞間移行及び浸透移行することができる。N.ベンサミアナ植物中でのGFP発現は、UVランプを用いることにより、又はライカ立体蛍光顕微鏡システム下(450〜490nmで励起、500〜550nmで発光)で植物組織を解析することにより容易に検出することができる。実験に用いたsGFPは、青色光及びUV光で励起させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は本発明の方法のスキームである。
【図2】図2は本発明の方法の概略図であり、ポリペプチドは活性(機能性)タンパク質(AB)であり、Cは異種DNA及びその発現産物(RNA又はタンパク質)を示す。RNAはリボソームに結合した状態で示されている。植物の細胞では、活性タンパク質(AB)は、目的細胞プロセスのスイッチを入れるために、(1)前記異種核酸、(2)RNA発現産物、又は(3)前記異種核酸のタンパク質発現産物と相互作用することができる。
【図3】図3は本発明の方法の概略図であり、前記ポリペプチドは非機能性タンパク質(AB)であり、植物細胞への直接導入後、異種核酸Cにコードされる因子の影響下で活性化型A’B’に変換される。Dは、タンパク質A’B’の標的とされ、これにより目的細胞プロセスのスイッチが入る追加の異種核酸(又はそのRNA若しくはタンパク質発現産物)を示す。前記活性化型A’B’への変換は、例えば、Cの発現産物の酵素活性によって又はインテイン介在トランススプライシングによって生ずることができる。
【図4】図4は、植物細胞において不活性タンパク質断片から活性タンパク質スイッチが生ずる態様を示すスキームである。A:タンパク質断片のインテイン介在トランススプライシングによる活性タンパク質スイッチの産生。B:タンパク質断片の親和性結合による活性タンパク質スイッチの産生。
【図5】図5は、インテイン介在トランススプライシング(図5A)又は親和性相互作用(図5B)による非機能性タンパク質断片A及びBからの機能性タンパク質(AB)の組み立てを示すスキームである。断片Aは細胞に取り込まれる本発明のポリペプチドである。断片Bは内部で異種核酸から発現する。
【図6】図6は、細胞間輸送及び他の細胞でそれ自身の発現を引き起こすことが可能なタンパク質スイッチを介して目的細胞プロセスのスイッチが入ることを示す一般的スキームである。PSはタンパク質スイッチを意味し、TPは細胞間輸送(即ち、1つの細胞を出て他の細胞へ入ること)が可能な輸送タンパク質を意味し、PS:TPはPS−TP融合タンパク質を意味し、hNAは追加の異種核酸を意味する。(A)はPS:TPをコードする異種核酸及び追加の異種核酸hNAを表す。外部ポリペプチドは導入されていない。したがって、タンパク質スイッチは発現しておらず、目的細胞プロセスのスイッチは入っていない。(B) タンパク質スイッチPS:TPの発現を引き起こす外部(細胞透過性)ポリペプチドが導入されている。タンパク質スイッチは、それが発現した細胞においてhNAに作用することによって細胞プロセスを制御することができる。更に、タンパク質スイッチは、前記外部より導入されたポリペプチドによって誘発された細胞を出て、他の細胞へ入ることができる。他の細胞では、タンパク質スイッチは、hNAに作用することによって、それ自身の発現を誘導し、細胞プロセスを制御することもできる。(C)は、2つのタンパク質スイッチ:PS1及びPS2をコードする異種核酸を表す。PS1の発現は外部より適用されるシグナル(本発明のポリペプチド)によって引き起こされ、PS1:TPを生ずる。上記のように、PS1:TPは他の細胞へ伝播し、PS2の発現を活性化することができる。PS2は次にhNAに作用することによって細胞プロセスを制御することができる。
【図7】図7は、(A)非機能性のTMVをベースとしたプロベクターを含有する構築物pICHGFPinv及び(B)インテグラーゼ−介在組換えで生ずる前記構築物の機能性誘導体を表す。下部の矢印は、(B)に示す構築物から形成され得るRNA及びサブゲノム(sg)RNAをその方向と共に示す。sgpはサブゲノムプロモーターを意味する。
【図8】図8は、本発明の方法を概略的に示すものであり、細胞透過性ポリペプチド(MTS:リコンビナーゼ)は標的細胞内で組換え事象を誘発し、異種核酸(リコンビナーゼをコードする構築物:TP)から、細胞間輸送可能なタンパク質スイッチ(リコンビナーゼ:TP)の形成を生ずる。タンパク質スイッチは更に組換え事象を誘発することができ、植物ウイルスをベースとしたプロベクター(本発明の追加の異種核酸)の再構成をもたらし、目的遺伝子(GOI)の発現を生ずる。MTS:膜移行配列;TP:細胞間輸送可能なタンパク質;SM:選択可能マーカー;RS:部位特異的DNAリコンビナーゼ/インテグラーゼによって認識される組換え部位;ter1及びter2:転写終結領域;PROM:植物において活性なプロモーター;RdRp:ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ;MP:移行タンパク質;3’NTR:植物RNAウイルスの3’非翻訳領域。矢印はコード配列及び調節配列の方向を示す。
【図9】図9は、膜移行シグナル(MTS)に融合したインテグラーゼphiC31タンパク質を産生するベクターを示す。ベクターpICH13180及びpICH13190は、TMVをベースとしたベクターの5’端を、選択したMTSとともに含有し、インテグラーゼphiC31をコードするTMVをベースとしたベクターの3’端を、そのC末端に核移行シグナル(NLS)とともに含有するベクター(pICH13591)との部位特異的組換え介在組み立てのために設計されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変植物を制御する方法であって、
(a) 遺伝子改変植物を提供すること、ここで、前記遺伝子改変植物の細胞は異種核酸を含有し、前記遺伝子改変植物は目的細胞プロセスに関して不活性である、
(b) 前記異種核酸を含有する細胞へ無細胞組成物由来のポリペプチドを直接導入することによって前記目的細胞プロセスのスイッチを入れること、
を含み、ここで、前記ポリペプチド及び前記異種核酸は前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように互いに適応されている、前記方法。
【請求項2】
前記工程(b)の直接導入することを、前記植物の少なくとも一部へ粒子銃、前記ポリペプチドを適用することにより、又は前記植物の組織へ前記ポリペプチドを含有する溶液を注入することにより行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、前記異種核酸を含有する細胞へ前記ポリペプチドを直接導入することを可能にする膜移行配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜移行配列が共有結合的に前記ポリペプチドに結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記膜移行配列が非共有結合的に前記ポリペプチドに結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることは、前記異種核酸からの若しくは前記異種核酸に関係するDNA、RNA又はタンパク質の形成を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子改変植物の細胞が、前記DNA、前記RNA、又は前記タンパク質によって制御される前記追加の異種核酸を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記DNA、前記RNA、又は前記タンパク質が、前記植物の他の細胞へ伝播可能である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記目的細胞プロセスが、前記異種核酸から又はそのRNA発現産物からの発現可能なオペロンの形成を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記目的細胞プロセスが、前記異種核酸又はそのRNA発現産物からの発現可能なアンプリコンの形成を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記発現可能なアンプリコンが目的遺伝子を発現可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発現可能なアンプリコンが、前記植物内で細胞間移行又は浸透移行可能である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、前記植物の1つの細胞を出て他の細胞に入る能力を前記タンパク質に付与するタンパク質部分を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質部分が以下の群:ウイルス移行タンパク質、ウイルス外被タンパク質、植物又は動物の転写因子、植物又は動物のペプチド細胞間メッセンジャー、前記タンパク質に前記能力を付与可能な人工ペプチド、から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質が、前記異種核酸を含有する細胞内で前記タンパク質の発現を制御可能である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質が前記追加の異種核酸を制御する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記目的細胞プロセスが、前記追加の異種核酸からのRNA若しくはタンパク質発現産物、オペロン、又はアンプリコンの形成を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質及び前記ポリペプチドが、前記タンパク質及び前記ポリペプチドが共同して存在する場合にのみ、前記目的細胞プロセスのスイッチを入れる所定の機能を共同して産生する、請求項6〜8又は13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質及び前記ポリペプチドが、インテイン介在トランススプライシング又はインテイン介在親和性相互作用によって前記所定の機能を共同して産生する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質及び前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド及び前記タンパク質に融合したロイシン・ジッパー断片によって介在される親和性相互作用により前記所定の機能を共同して産生する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質及び前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド及び前記タンパク質に融合した2量体化剤断片によって介在される親和性相互作用により前記所定の機能を共同して産生する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記親和性相互作用が、ラパマイシン又はラパマイシンアナログのような2量体化剤によって調節される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドが、
(i) 酵素活性、又は
(ii) 前記異種核酸又は前記異種核酸の発現産物への結合親和性、
によって前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、部位特異的リコンビナーゼ、フリッパーゼ、リゾルベース、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、レプリカーゼ、及びポリメラーゼから成る群より選択される酵素の酵素活性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド又は前記細胞プロセスのスイッチを入れることが可能な前記ポリペプチドの部分をコードする核酸を導入することなく、工程(b)で導入される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記植物が、核ゲノムに安定に組み込まれた前記異種核酸を含有するトランスジェニック植物である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記植物が、プラスチドゲノムに安定に組み込まれた前記異種核酸を含有するトランスジェニック植物である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記植物が高等作物である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
その細胞内に異種核酸を含有する遺伝子改変植物であって、前記植物は目的細胞プロセスに関して不活性であり、前記異種核酸を含有する細胞へポリペプチドを直接導入することにより前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることができるように前記異種核酸が適応され、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように前記ポリペプチド及び前記異種核酸が互いに適応されている、前記遺伝子改変植物。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項に定義されるような特徴を更に有する、請求項29に記載の遺伝子改変植物。
【請求項31】
遺伝子改変植物内で目的細胞プロセスを制御するシステムであって、請求項29又は30に定義されるような植物、及び前記目的細胞プロセスのスイッチを入れるためのポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが前記目的細胞プロセスのスイッチを入れることが可能なように前記植物及び前記ポリペプチドは互いに適用されている、前記システム。
【請求項32】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法によって得られる、又は得ることが可能な植物。
【請求項33】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の前記ポリペプチドを含有する細胞に由来する無細胞組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−506082(P2006−506082A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552675(P2004−552675)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013018
【国際公開番号】WO2004/046360
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503128043)アイコン ジェネティクス アクチェンゲゼルシャフト (6)
【出願人】(501446789)アイコン・ジェネティクス,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】