説明

植物の酵素処理およびろ過のためのプロセスならびにそれにより入手可能な製品

果実、野菜などの植物または他の植物部分(例えば、葉、茎、根、塊茎など)を酵素的に処理するためのプロセスが開示される。本発明のプロセスは、植物の酵素処理をろ過とあわせ、浸透物および保持物を得る。植物を処理するために使用される溶解酵素は、ろ過工程の間、活性な状態で維持される。本発明は、植物を酵素的に処理するためのプロセスであって、以下:a.該植物を洗浄する工程;b.酵素を含む食品を形成するために、溶解酵素で該植物を処理する工程;c.該酵素を含む食品中で該溶解酵素を活性な状態で維持する間、該酵素を含む食品を、ろ過ユニットを越えた圧変化が減少し始めるまで該ろ過ユニットを用いて濃縮する工程、ならびに、それによって浸透物および保持物を生成する工程;を包含する、プロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2003年10月1日に出願された米国仮特許出願60/508,172の利益を主張し、この出願は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して植物を酵素的に処理するためのプロセスに関連し、特に、酵素的に処理された植物食品材料をろ過して、栄養分を含む保持物および抽出液を含む浸透物を調製するためのプロセスに関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
ろ過方法は、抽出液製造のための食品加工産業で使用されてきた。代表的に、果実または野菜は、搾り出す工程、角切りにする工程、挽く工程、挽いて粉にする工程、抽出する工程、酵素処理する工程および/または他の工程を介して未加工の抽出液、ピューレまたは他の加工可能な形態に調製され、次いでろ過されて保持物から抽出液を含む浸透物を分離する。生じた浸透物は、抽出液として使用され得るか、または濃縮されて、後の使用のために次いで凍結され、そして/または保存され得る。生じた保持物はまた、食料品に使用可能であり得る。
【0004】
例えば、Blanieらの特許文献1は、少なくとも二つの限外ろ過段階を包含する、透明な植物抽出液を得るためのプロセスを記載する。植物は、最初に圧縮されて一次(未加工の)抽出液から果肉を分離する。未加工の抽出液の温度は、上記明細書および特許請求の範囲中に記載される式に従ってそのpHに依存して調整されるが、代表的には約5と約3との間のpHでは、50〜65℃(約122〜149°F)の範囲になる。上記温度に調整された未加工の抽出液は、第一の限外ろ過段階に供され、一次透明抽出液および一次ペクチン濃縮物を生じる。一次ペクチン濃縮物(これは、水で希釈され得る)は、第二の限外ろ過段階に供され、二次透明抽出液(これは、第一の限外ろ過段階で得られた一次透明抽出液に添加される)および二次ペクチン濃縮物を生じる。Blanieらに従って、そのようにして得られた抽出液は、非常に透明で、時間の経過によって顕著に黒ずむ傾向はなく、かつ、無菌であり、低温殺菌する必要がない。
【0005】
別の例では、Thomasらの特許文献2は、果実からの抽出液の抽出、透明化および滅菌を同時にする工程のための単一パス限外ろ過プロセスを記載する。Thomasらに記載されるとおり、上記果実は、くみ上げ可能なピューレに加工され、上記ピューレは、特定の長さおよび特定の直径を有し、その内側表面に沿って固定された食物グレードの限外ろ過膜を有する多孔性の管状ハウジングを通して特定の入り口圧で単一パスにくみ上げられる。上記限外ろ過膜は、明細書および特許請求の範囲に規定される場合、約1〜約15の水に対する初期浸透性を有する。
【特許文献1】米国特許第4,551,341号
【特許文献2】米国特許第4,716,044号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、果実および野菜などの植物ならびに他の植物部分(例えば、根、塊茎など)を酵素的に処理し、ろ過するための改良されたプロセス、ならびにそれにより入手可能な製品を提供する。
【0007】
一実施形態において、植物は洗浄され、溶解酵素で処理されて酵素を含む食品を形成する。上記酵素を含む食品は、溶解酵素が活性な状態で維持される間、ろ過ユニットを越えた圧変化が減少し始めるまでろ過ユニットを用いて濃縮される。それによって、浸透物および保持物は生成される。
【0008】
サツマイモの加工に関する特定の実施形態において、上記サツマイモは、洗浄され、小さくされる。上記サツマイモに水が添加され、水性サツマイモ混合物が形成され、これは、酵素的に処理されてサツマイモ食品を生成する。サツマイモ食品はろ過されて、浸透物および保持物が得られる。
【0009】
以下の図は、本明細書中の教示に従って本発明の種々の局面および特徴を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、図1を参照すると、本発明に従ったプロセスの一実施形態が示されている。フローチャートとして提示されるが、図1は、列挙された工程が、示された順序で行なわれなければならないことを意図せず、本発明が、示された各工程を必要とすることを意味することを意図する。
【0011】
工程10において、植物(1)は、水中で洗浄され、汚れを取り除かれる。本明細書中で使用される場合、「植物」は、果実、野菜、または他の植物部分(例えば、葉、茎、根、塊茎など)を包含する。植物の皮または外層は、所望の場合、洗浄工程の前か抽出工程などの後の工程で取り除かれ得る(示さず)。
【0012】
上記植物は、工程11に示されるように、代表的に小さくされる。任意の従来のサイズ減少手段(例えば、ハンマーミル、角切り機(dicer)、粉砕機または当該分野で公知の他の機構)が使用され得る。サイズ減少は、植物の細胞からの流体の放出を補助し、後の工程における植物のさらなる加工もまた可能にする。
【0013】
水(2)は、水性植物混合物を形成するために、上記植物に添加され得る。水の添加は、植物の後のプレろ過加工を補助し得る。代表的に、合計で約0〜約20部の水が、本発明に従ったプレろ過加工の間に、約10部の植物に添加される。総量の水が全て一度に添加され得るか、または以下に説明するように、プレろ過加工の種々の工程で部分的に添加され得る。
【0014】
酸は、植物の酸化を防止するために水と一緒に添加され得、後の酵素処理を最適化する役目も果たし得る。酸が使用される場合、動物および/またはヒトによって消費され得る任意の酸または酸の組合せが使用され得、好ましくは、上記酸は、生じる製品の風味に悪い影響を与えない。本発明の好ましい酸としては、リン酸およびクエン酸が挙げられる。還元剤もまた、酸化および生じ得る褐変を取り消すために水と一緒に添加され得る。動物および/またはヒトによって消費され得る任意の還元剤または還元剤の組合せが使用され得、好ましくは、上記還元剤は、生じる抽出液の風味に悪い影響を与えない。本発明の好ましい還元剤は、ビタミンCである。
【0015】
図1に示すように、水性植物混合物は、工程13の加熱/保持処理に供され、植物マッシュ(plant mash)を形成する。上記植物は、植物組織を柔らかくするために加熱され(代表的には攪拌しながら)、そのことにより後の工程における植物の加工を補助する。上記植物が加熱され、保持される温度は植物に依存して変動するが、少なくとも約160°Fの温度まで、好ましくは、約160°F〜約200°Fの範囲で、約5分間と約60分間との間の時間の加熱が種々の植物の組織を軟化するのに十分であることが観察されてきた。加工される植物に依存して、加熱/保持処理はまた、植物内に存在するデンプンを調理し得(後の植物のプロセスをさらに補助する)、そして/または望ましくない酵素(例えば、植物の酸化褐変に寄与するポリフェニルオキシダーゼ)を失活させ得る。いくつかの実施形態において、工程13に示される次の工程に進む前に、上記植物の温度を、例えば、冷却することによって調節することが望ましい。
【0016】
溶解酵素(3)が添加され、酵素を含む植物マッシュは、溶解酵素が工程14に示される酵素処理工程において作用する(代表的に攪拌を伴うか、ある程度剪断作用を伴う)ための酵素が、十分な時間活性である温度、pHおよび固形物レベル(基質濃度)で保持される。溶解酵素としては、植物材料(例えば、ペクチン、セルロースなど)を溶解する任意の酵素が挙げられ、従って、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、セルビアーゼおよびこれらの組合せならびに当該分野で公知の他の溶解酵素が含まれる。使用される特定の酵素または酵素の組合せは、標的とされる特定の植物および植物材料に依存する。
【0017】
各酵素は、その活性に対して最適温度、最適pHおよび最適固形物レベルを有する。このような情報は、既知であるか、または商業的な酵素提供者から容易に入手可能である。酵素の組合せが使用される場合、概して組合せの内の特定の酵素ではなく、組合せ全体としての活性を最適化する温度、pHおよび固形物レベルが選択される。一実施形態において、上記植物マッシュの温度、pHおよび/または固形物レベルは、溶解酵素の添加前に、例えば、水を添加するか、そして/または当該分野で公知の他の手段によって最適なレベルに調整される。他のプロセス条件(例えば、添加する酵素の量、時間、雰囲気など)および補助因子(例えば、カルシウムレベル、阻害因子など)は、酵素活性を最適化するために変動され得る。
【0018】
上記酵素処理工程は、酵素を含む食品(4)を生じ、これは次いで、ろ過ユニットにくみ上げられ、工程15に示されるように、そこで濃縮される、ろ過は、水不溶性植物成分(例えば、カロテノイド、他の水不溶性栄養分)を除去し、それらは抽出液を含む浸透物(6)から保持物(5)中に残存する。
【0019】
ろ過工程の間、ダイアフィルトレーションプロセスにおいて食品に水を添加する工程は、好都合であり得る。水は、濃縮の実行の最初またはその最後に添加され得る(バッチダイアフィルトレーション)か、または濃縮の実行の間持続的に添加され得る(持続的ダイアフィルトレーション;またパルプ洗浄としても既知である)。ダイアフィルトレーションは、より多量の水溶性成分(例えば、糖、ビタミン類など)が、浸透物に含まれることを可能にし、植物の体積あたりの抽出液の収量をより高くする。しかし、ダイアフィルトレーションはまた、より大きい体積の材料をろ過ユニットを通らせ、従ってより高い加工コストを生じる。ダイアフィルトレーションを適用することが、本発明に従ったプロセスに好都合であるか否かは、各適用の特定の経済学に依存し、当業者により決定され得る。
【0020】
驚くべきことに、溶解酵素がろ過工程の間なお活性である場合、上記酵素を含む植物食品はかなり長い時間、これまでに観察されたより高いレベルまで持続的に濃縮され得、より多量の浸透物、従ってより多量の抽出液収量ならびにより低容量の保持物体積およびより多量の栄養分濃縮物を生じることが観察された。
【0021】
いかなる特定の理論に束縛されることなく、これらの予想外の利点は、植物食品中の活性な溶解酵素と植物食品からの水および水溶性成分の持続的な除去の組合せから生じると考えられる。これらの水溶性成分のいくつかは、活性な酵素に対する代替的な結合部位を提供すると考えられる。これらの成分の植物食品からの除去工程は、酵素活性に対する競合経路を排除する。同時に、水を除去することにより食品中の活性な酵素の濃度を増加させる。実際に、これらの因子の組合せは、活性な植物基質に結合する工程、酵素処理が達成され得る先行技術よりさらに酵素による植物材料の溶解を促進する工程に利用可能な酵素の濃度を増加させると考えられる。植物材料(例えば、ペクチン、セルロースなど)の酵素による溶解は、ろ過の間継続するので、より多量の水不溶性の高分子量の植物材料が、低分子量の成分に分解されて、これらは次いで、ろ過膜を通過し得るので、植物食品から、そして最終的には保持物から除去され得る。
【0022】
この驚くべき相乗効果は、図4に示すデータにより証明される。図4は、植物の元の体積(VRF)に対する体積減少因子に対するろ過ユニットを越えた保持物の圧変化(ΔPRET)をプロットし、これは、どれだけの量の保持物が、植物の元の体積に対して濃縮されたかの基準である。代表的に、当業者は、保持物がより濃縮するにつれて(すなわち、VRF値が増加するにつれて)保持物の圧変化が継続的に増加することを予測する。しかし、驚くべきことに、溶解酵素の活性が本発明のプロセスに従って維持される場合、ある程度の濃度レベルでは、保持物の圧変化は、減少し始める。この驚くべき結果は、サツマイモ(白三角)、ケール(白ひし形)およびトマト(白丸)を含む種々の植物で観察された。
【0023】
酵素を含む食品における溶解酵素の活性は代表的に、食品を溶解酵素が活性である温度かつpHレベルで維持することによってろ過工程の間維持される。上で議論したように、各酵素または酵素の組合せは、その活性が最適である温度範囲およびpH範囲を有する。一実施形態において、酵素を含む食品の温度およびpHは、酵素処理工程からろ過工程まで、そしてろ過工程の間最適な範囲内に維持される。溶解酵素がろ過工程の前に失活される場合、活性な溶解酵素が植物食品に添加され得、そして酵素を含む食品は、ろ過工程の間、活性な溶解酵素に最適な温度範囲かつpH範囲内で維持される。
【0024】
サツマイモ(白三角)、ケール(白ひし形)およびトマト(白丸)のそれぞれに対する図4に示すデータは、以下の条件を用いて得られた:植物をペクチナーゼ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼの混合物で処理する工程、および約130°F〜約150°Fの範囲内の温度かつ約6未満のpHで維持する工程。
【0025】
この驚くべき相乗効果は、これまでのろ過方法から得られる柔らかい、ペースト状の粘度の植物保持物に比較して、より滑らかで、より粘性が低く、より液状の粘度を有する保持物を生じる。この生じた保持物はまた、これまでに得られた保持物より低体積かつ高栄養分濃度である。本発明のプロセスに従ったろ過の間の活性な溶解酵素の使用は、いくつかの実施形態において、元の植物に比較して固体(乾燥)基準で、少なくとも700%大きい栄養分濃度(すなわち、少なくとも7の濃縮率)、より好ましくは少なくとも1000%大きい栄養分濃度(すなわち、少なくとも10の濃縮率)を有する栄養分の富化された保持物を生成する。
【0026】
溶媒抽出および超臨界流体抽出などの植物から親水性栄養分を抽出する他の従来技術方法と比較して、本発明のプロセスに従ったろ過の間の活性な溶解酵素の使用は、より費用効率が高く、より環境に優しい、栄養分の富化された植物製品を得る方法を提供する。例えば、本発明に従ったプロセスは、例えば、溶媒抽出法が使用する有機溶媒の使用を必要としないので、費用のかかる溶媒除去工程を必要とせずに、動物および/またはヒトの消費に適した栄養富化製品を生成する。本発明はまた、例えば、超臨界COなどの超臨界流体(これは、制御するために高価な装置を必要とする)を使用する必要性を排除する。さらに、本発明に従う栄養富化保持物は、溶媒抽出および超臨界流体抽出から得られる栄養分抽出物より、温度、酸素、光などの環境因子に対してより安定であるようである。
【0027】
従ってこのプロセスから得られる保持物は、スープ、ソースなどの製造された食品の成分として、これまでに植物保持物および栄養分抽出物から得られたものより望ましくかつより容易に使用可能にする栄養分含量、安定性、風合いおよび粘度を有する。本発明の保持物を乾燥させることは、例えば、微生物の活性を阻害するために、好都合であり得る。保持物の乾燥は、エバポレーション、オーブン乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの当該分野で公知の方法を使用して達成され得る。
【0028】
本発明のプロセスから得られる浸透物は、植物抽出液を含み、代表的に透明であり、それは、ほとんどまたは全く濁りを有さないことを意味する。抽出液のより良い保存および安定性のために浸透物から過剰な水が取り除かれ得る。種々の水除去方法(例えば、逆浸透、エバポレーション、噴霧乾燥など)が当該分野で公知であって、本発明に使用され得る。生じた植物抽出濃縮物は、濃縮形態で使用され得るか、または後に水を添加することにより再構成され得る。上記植物抽出液は例えば、飲料、スープ、ソースなどの食品の成分として使用され得る。
【0029】
いくつかの例では、濃縮物から再構成された抽出液は、最初に浸透物または濃縮物が得られた時には存在しなかった濁りを有する。このことは、代表的に、濃縮物が一定期間保存された後に観察された。この濁りは、抽出液から沈殿した水不溶性成分の形成に起因するようである。酵素を含む食品または浸透物に(濃縮の前か後かのいずれかで)熱を加え、その後分離する工程は、この濁りが形成するのを防止することもまた見出された。
【0030】
任意の特定の理論に束縛されずに、熱の適用は、この濁りを引き起こす水不溶性成分が沈殿し、濃縮物の保存の前に除去され得ることを可能にすると考えられる。酵素を含む食品が加熱される場合、抽出液を含む浸透物を保持物から分離するろ過工程は、同時にこの水不溶性沈殿物を除去する。上記浸透物が加熱される場合、この水不溶性沈殿物が形成するのが観察され、この沈殿物を抽出液から除去するためにさらなる分離工程(例えば、遠心分離またはろ過の工程)が用いられる。酵素を含む食品または浸透物を少なくとも約160°Fの温度まで、好ましくは約180°F〜約200°Fの範囲の温度まで数分間加熱する工程は、再構成した植物抽出液の濁りを防止するのに効果的であることが示されている。
【0031】
ここで、図2を参照すると、特にサツマイモからの抽出液の生成に関連する本発明の別の実施形態が示されている。フローチャートとして提示したが、図2は、列挙した工程が、示した順序で行なわれなければならないことを意味することは意図せず、本発明が、示した各工程を必要とすることを意味することも意図しない。
【0032】
工程20において、サツマイモは、代表的に機械式洗浄機を用いて水中で洗浄され、土および泥をその表面から除去する。このサツマイモは、工程21において、例えば、ハンマーミルなどの従来のサイズ減少手段のいずれかを用いて小さくされる。
【0033】
水(22)をサツマイモに添加し、水性サツマイモ混合物を形成する。代表的に、本発明に従ったプレろ過加工の間に、合計約5〜約20部の水を約10部のサツマイモに添加するが、本発明の好ましい水の量は、約10部のサツマイモに対して合計で約15重量部である。水の合計量は、全てが一度に添加され得るか、または、以下に説明するようにプレろ過加工の異なる工程で、分けて添加され得る。好ましくは、酸は、水と一緒に添加されて、サツマイモの酸化および褐変を防止し、そしてまた後の酵素処理を最適化するのに役立ち得る。本発明の好ましい酸としては、リン酸およびクエン酸が挙げられる。より好ましくは、還元剤がまた水と一緒に添加されて、生じ得るサツマイモの酸化および褐変を完全に食い止める。本発明の好ましい還元剤は、ビタミンCである。
【0034】
水性サツマイモ混合物は、好都合に、工程23の加熱/保持処理に供される。上記水性サツマイモ混合物は、加熱され(代表的には攪拌しながら)、サツマイモが柔らかくなり、サツマイモ中のデンプンを煮るのを補助し、これらは両方とも後の工程のサツマイモの加工を補助する。代表的に、水性サツマイモは、少なくとも約160°Fの温度まで加熱される。この温度は、サツマイモデンプンが煮え始める温度である。好ましくは、上記水性サツマイモ混合物は、約160°F〜約200°Fの範囲の温度まで加熱され、サツマイモを柔らかくし、少なくともデンプンの一部が煮えるのに十分な時間保持される。本発明では、水性サツマイモ混合物を約180°Fの温度まで加熱し、約15分間〜約20分間保持することが好ましい。
【0035】
上記サツマイモは、工程24において酵素処理に供される。上記酵素処理は、内因性酵素もしくは外因性酵素、またはその両方を含み得、そして外因性酵素の組み合わせを含み得る。
【0036】
一実施形態において、上記酵素処理は、先に記載された上記加熱/保持工程23を包含する。水性サツマイモ混合物を加熱する工程は、内因性のβ−アミラーゼを活性化し得、これは、サツマイモに含まれるデンプンを糖、特にマルトースに変換する。
【0037】
別の実施形態において、外因性の酵素が上記サツマイモに添加されて、酵素を含むサツマイモ混合物は、外因性の酵素が活性である温度かつpHで、上記酵素が作用するのに十分な時間保持される(代表的には、攪拌しながら、または時々剪断作用を伴って)。上記サツマイモ混合物の温度、pHおよび固形物レベルは、酵素処理工程の前に最適なレベルに調節され得る。他のプロセス条件(例えば、添加する外因性酵素の量、時間、雰囲気など)および補助因子(例えば、カルシウムレベル、阻害因子など)は、酵素活性を最適化するために、変動され得る。
【0038】
特に好ましい実施形態において、上記外因性の酵素は、溶解酵素と糖変換酵素との組み合わせを含む。溶解酵素としては、これまでに記載した酵素が挙げられる。糖変換酵素は、デンプンを糖に変換するか、または単糖を異なる糖に(例えば、マルトースをグルコースに)変換する任意の酵素を含み、従って、α−アミラーゼ、グルコ−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせならびに当該分野で公知の他の酵素が挙げられる。使用される酵素の特定の組み合わせは、標的化された特定の植物材料、および/または最終抽出液製品に所望される糖の特定の組み合わせに依存する(例えば、風味または栄養上の理由で)。
【0039】
サツマイモと一緒に使用するための外因性酵素の本発明の好ましい組み合わせは、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびグルコアミラーゼを含む。酵素のこの組み合わせが使用される場合、上記酵素を含むサツマイモ混合物は、約10部(重量で)のサツマイモに添加された約15部の水を含み、約130°F〜約150°Fの範囲の温度で、好ましくは、約140°Fで、約6未満のpHで、好ましくは約4〜約5の範囲で約90分間保持される。
【0040】
サツマイモが加熱され、外因性の酵素が添加される実施形態において、サツマイモは、外因性の酵素が添加される前に冷却されることが望ましい。好ましくは、上記サツマイモは、外因性の酵素が活性である温度に調節される。このことは、加熱されたサツマイモに冷水を添加することによって(添加される水の全量は、上記のように、水22に関して記載されるパラメーター内である)、または当該分野で公知の他の手段によって達成され得る。
【0041】
酵素により処理されたサツマイモは、工程25においてろ過される。ろ過は、保持物(26)および浸透物(27)を分離する。上記サツマイモ保持物は、栄養分が豊富であり、特にβ−カロテン含量が高く、十分に色がついていて、栄養補給剤および/または着色添加剤として、食品(例えば、スープ、ソースなど)に使用され得る。
【0042】
上記サツマイモ浸透物(27)は、サツマイモ抽出液を含有する。濃縮工程28において、上記浸透物から過剰な水が取り除かれて、サツマイモ抽出液濃縮物(29)を形成し得る。上記抽出液濃縮物は、より良好な安定性を有し、上記抽出液を含有する浸透物より容易に保存され得る。上記サツマイモ抽出液濃縮物は、濃縮形態で使用され得るか、または、後に水の添加によって再構成され得る。上記サツマイモ抽出液は、例えば、飲料、スープ、ソースなどの食品の矯味矯臭成分および/または甘味成分として使用され得る。
【0043】
図3は、本発明に従ったろ過工程を実施するための本発明の好ましいシステムを例証する。上記システムは、ろ過プロセスの種々のパラメーター(例えば、入口圧、出口圧、温度、流速など)をモニタリングし、制御するハードウェアおよびソフトウェア(それらの全てではないが、いくつかを示す)を備える。上記酵素を含む食品材料を、攪拌器またはかき混ぜ器を備える供給タンク30中に保存する。上記食品材料を、再循環ポンプ31によって、供給タンク30から流量計32を通ってろ過ユニット40にくみ上げる。上記ジュースを含む浸透物は、背圧弁33を介して除去され、浸透物タンク34に回収され得る。上記保持物は、定量ポンプ35によって除去され、保持物タンク36に回収され得るが、好ましくは、背圧弁37を介して処理され、ろ過ユニット40に戻る。
【0044】
すなわち、図3に示すシステムは、上記保持物が好ましくは繰り返し循環するろ過ループ41を備えるので、上で議論したように継続的に濃縮される。上記システムが、この様式で使用される場合、上記定量ポンプ35は、好ましくは、上記保持物を所望の濃度レベルで維持するために、所望の濃度レベルが達成される時点でのみ使用され、このことにより、ろ過が安定な様式で進行することが可能になる。
【0045】
上記入口圧および出口圧は、好ましくは、ろ過ユニットにおける一定の再循環速度(速度)および膜間圧を維持するように設定される。上記入口圧は代表的に、約30〜約80psiの範囲内またはそれ以下であり、上記出口圧は代表的に、約15〜約60psiの範囲内またはそれ以下である。当業者は、これらの圧を、食品の粘度および所望の再循環速度に依存して調節し得る。
【0046】
上記ろ過ユニットは代表的に、少なくとも一つのろ過膜を内蔵し、このろ過膜は、約0.5μm未満、好ましくは約0.1μm以下のみかけの孔径を有し、少なくとも10の初期水浸透度(P)(浸透流量(ガロン/ft/日)を膜間圧(ポンド/平方インチ、psi)で割ることによって規定される)を有する。
【0047】
本発明は、使用され得るフィルターまたはろ過システムの型の条件によって限定されない。特に、本発明の産業規模での適用では、交差流ろ過膜を使用することが好ましい。交差流ろ過膜(その中で、上記食品は、ろ過膜表面と平行に流れる)は、連続的なろ過およびより高い処理量に特に良く適している。特に好ましい型の交差流ろ過膜は、焼結二酸化チタンコーティングを有する多孔性のステンレス鋼の管膜(例えば、Graver Technologiesによって製造されるScepter(登録商標)ろ過モジュール)である。
【0048】
本発明の好ましいろ過ユニットは、三段階の、0.1μmのみかけの孔径および3/4’’の直径を有する多孔性のステンレス鋼の交差流ろ過モジュールを内蔵する。本発明では、最初の二段階は、20’の長さであり、第三段階は、多少短いが、ろ過ユニットの仕様(例えば、ろ過段階の数、ろ過モジュールの直径および長さなど)は、本発明の実施に重要ではなく、所望の場合、または必要な場合、変更され得る。
【0049】
従って、上記の様式において、本発明は、植物を酵素的に処理して植物抽出液および栄養分の豊富な保持物を生成するためのプロセスを提供する。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらは例示的のみであって、限定的ではなく、例として提示してきた。特定の工程の省略および特定の加工パラメーターの適合および最適化を含む他の改変は、明細書および図面を検討することによって当業者に明らかになる。従って、添付の特許請求の範囲は、このような本発明の精神および範囲内に含まれる改変を含むこと意図する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明に従ったプロセスの一実施形態を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明に従ったプロセスの別の実施形態を説明するフローチャートである。
【図3】図3は、本発明に従ったろ過工程を行なうための好ましいシステムの該略図である。
【図4】図4は、サツマイモ(白三角)、ケール(白ひし形)およびトマト(白丸)に適用された、本発明に従ったプロセスを用いて達成された、保持濃度(VRF、植物の元の体積に対する体積減少因子)に対するろ過ユニットを越えた保持物の圧変化(ΔPRET)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を酵素的に処理するためのプロセスであって、以下:
a.該植物を洗浄する工程;
b.酵素を含む食品を形成するために、溶解酵素で該植物を処理する工程;
c.該酵素を含む食品中で該溶解酵素を活性な状態で維持する間、該酵素を含む食品を、ろ過ユニットを越えた圧変化が減少し始めるまで該ろ過ユニットを用いて濃縮する工程、ならびに、それによって浸透物および保持物を生成する工程;
を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記溶解酵素が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、セルビアーゼおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記植物を前記溶解酵素で処理する工程が、該植物を、該溶解酵素が活性である温度およびpHに調節する工程、ならびに該植物を該溶解酵素と合わせる工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酵素を含む食品中で、前記溶解酵素を活性な状態に維持する工程が、該酵素を含む食品を、該溶解酵素が活性である温度およびpHで維持する工程を包含する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酵素を含む食品は、前記溶解酵素が、前記植物を処理する工程から該酵素を含む食品を濃縮する工程まで活性である温度およびpHで維持される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ろ過ユニットが、少なくとも1つの交差流ろ過段階を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ろ過ユニットが、約0.5μm未満のみかけの孔径を有するろ過膜を少なくとも1つ備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ろ過ユニットが、ろ過ループを備え、前記酵素を含む食品を濃縮する工程が、該ろ過ループを介して該食品を再循環する工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセスであって、以下:
f.前記浸透物を少なくとも約160°Fの温度まで加熱し、それによって水不溶性沈殿物を形成させる工程;および
g.該沈殿物を該浸透物から分離する工程;
をさらに包含する、プロセス。
【請求項10】
前記沈殿物を分離する工程が、該沈殿物を前記浸透物から遠心分離する工程を包含する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記沈殿物を分離する工程が、該沈殿物を前記浸透物からろ過する工程を包含する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1に記載のプロセスから入手可能である、浸透物。
【請求項13】
請求項12に記載の浸透物から調製される、食品。
【請求項14】
請求項1に記載のプロセスから入手可能である、保持物。
【請求項15】
請求項14に記載の保持物から調製される、食品。
【請求項16】
以下:
a.サツマイモを洗浄する工程;
b.該サツマイモの大きさを小さくする工程;
c.該サツマイモに水を添加して水性サツマイモ混合物を形成する工程;
d.該水性サツマイモ混合物を酵素的に処理してサツマイモ食品を形成する工程;および
e.該サツマイモ食品をろ過して浸透物および保持物を得る工程;
を包含する、サツマイモプロセス。
【請求項17】
前記水性サツマイモ混合物を酵素的に処理する工程が、以下:
i)該水性サツマイモ混合物を少なくとも約160°Fに加熱する工程;および
ii)内因性酵素を活性化するために、該水性サツマイモ混合物を少なくとも約160°Fで保持する工程;
を包含する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記水性サツマイモ混合物を酵素的に処理する工程が、以下:
i)該水性サツマイモ混合物を、外因性酵素が活性である温度およびpHまで調節する工程;
ii)該外因性酵素を、該水性サツマイモ混合物に添加する工程;および
iii)該酵素を含むサツマイモ混合物を、外因性酵素が活性である温度およびpHで保持する工程;
を包含する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
前記外因性酵素が、溶解酵素、糖変換酵素およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記溶解酵素が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記糖変換酵素が、グルコ−アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記温度が、約130°F〜約150°Fの範囲内である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項23】
前記pHが、約6未満である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水を含むサツマイモに消耗酸を添加して、前記水性サツマイモ混合物を形成する工程をさらに包含する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項25】
前記消耗酸が、リン酸およびクエン酸からなる群より選択される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
消耗還元剤を前記水を含むサツマイモに添加して、前記水性サツマイモ混合物を形成する工程をさらに包含する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
前記消耗還元剤がビタミンCである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
請求項16に記載のプロセスであって、以下:
g.前記浸透物を約160°F〜約200°Fの範囲の温度まで加熱して、それによって水不溶性沈殿物を形成させる工程;および
h.該水不溶性沈殿物を該浸透物から分離する工程;
をさらに包含する、プロセス。
【請求項29】
請求項16に記載のプロセスであって、以下:
g.ろ過工程の前に、前記サツマイモ食品を約160°F〜約200°Fの範囲の温度まで加熱する工程;
をさらに包含する、プロセス。
【請求項30】
前記サツマイモ食品をろ過する工程が、ろ過ループを介して該サツマイモ食品を再循環する工程を包含する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項31】
前記ろ過ループが、少なくとも1つの交差流ろ過段階を備える、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記ろ過ループが、約0.5μm未満のみかけの孔径を有するろ過膜を少なくとも1つ備える、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
請求項16に記載のプロセスから入手可能である、サツマイモ抽出液。
【請求項34】
請求項33に記載のサツマイモ抽出液から調製される、食品。
【請求項35】
請求項16に記載のプロセスから入手可能である、サツマイモ保持物。
【請求項36】
請求項35に記載のサツマイモ保持物から調製される、食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505607(P2007−505607A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526442(P2006−526442)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032135
【国際公開番号】WO2005/032282
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(591011786)キャンベル・スープ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】CAMPBELL SOUP COMPANY
【Fターム(参考)】