説明

植物ポリケタイド合成酵素を用いた3環性非天然型アルカロイドの生産

【課題】常温常圧下、クリーンかつマイルドな条件下で複雑なアルカロイド骨格を一挙に効率的に構築する手段を提供する。
【解決手段】式(I):


(式中の置換基の定義は、明細書に記載の通りである。)で表される化合物またはその塩、および変異III型ポリケタイド合成酵素を触媒として用いて、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体とマロニルCoA誘導体とを縮合反応させる工程を含む、式(I)で表される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のポリケタイド合成酵素の変異酵素および当該酵素を用いた新規化合物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物の基本骨格を構築する二次代謝酵素の中には,活性部位の微妙な構造の違いで反応様式が大きく変化するものがあり、これが天然物の分子多様性を生み出す大きな要因の一つとなっている。一方、一般に酵素の基質特異性は厳密で自由度が低いものとされているが、植物ポリフェノールの基本骨格を構築するIII型ポリケタイド合成酵素(PKS)が示す広範な基質特異性と触媒能力は特筆に値する(非特許文献1−3)。これらは、反応の立体化学が厳密に制御された「精巧な酵素システム」であるとは言い難く、むしろ単純なアシル基転移の繰り返しによる「炭素鎖伸長マシン」と捉えることができる。
【0003】
本発明者らは、トウゲシバ(Huperzia serrata)から新規III型ポリケタイド合成酵素(PKS1)をクローニングすることに成功し、当該酵素が広範な基質特異性と触媒能力を有することを報告している(非特許文献4)。
【0004】
化学合成法による医薬品シードの開発には、強酸または強塩基条件下、金属触媒を用いるなど、過酷な条件も必要であり、しかも保護・脱保護または官能基変換の繰り返しなどの複雑な工程を必要とする。本発明者らがクローニングした上記PKS1は、アクリドン骨格を有する3環性アルカロイド(非特許文献4)または6−5−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド(図1B)を生成することができる。一方、III型PKSを用いて、より複雑な6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを生成することは不可能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Abe, I., Morita, H., Nat. Prod. Rep., 27, 809-838 (2010)
【非特許文献2】Abe, I., Topics in Current Chemistry, 2010, 1-22, DOI: 10.1007/128_2009_22
【非特許文献3】Abe, I. et al., J. Am. Chem. Soc. 122, 11242 (2000)
【非特許文献4】Wanibuchi, K. et al., FEBS Journal 274, 1073-1082 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
常温常圧下、クリーンかつマイルドな条件下で複雑なアルカロイド骨格を一挙に効率的に構築する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、III型ポリケタイド合成酵素の立体構造を鋭意研究し、野生型酵素の1アミノ酸置換変異体を創出した。創出された変異酵素は、野生型の基質特異性をさらに拡張し、より複雑なアルカロイド骨格を有する化合物を生成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕 式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、
、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を、
は水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基またはアシル基を、
は同一または異なって、水素原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示し、
さらに、R、R、RまたはRが結合する炭素原子の位置に窒素原子が導入されていてもよい。)で表される化合物またはその塩。
〔2〕 R、R、RおよびRが水素原子、Rが水素原子ならびにRが水素原子である前記〔1〕記載の化合物またはその塩。
〔3〕 変異III型ポリケタイド合成酵素を触媒として用いて、下記式:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、
、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を、
は水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基またはアシル基を示し、
さらに、C−R、C−R、C−RまたはC−R結合が窒素原子に置換されていてもよい。)で表される2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体と、下記式:
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示す。)で表されるマロニルCoA誘導体とを縮合反応させる工程を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の化合物の製造方法。
〔4〕 変異III型ポリケタイド合成酵素が野生型III型ポリケタイド合成酵素の活性中心キャビティを構成するセリン残基からグリシンまたはアラニン残基への点変異酵素である、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 野生型III型ポリケタイド合成酵素がHuperzia serrata由来野生型III型ポリケタイド合成酵素である、前記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕 下記(A1)〜(A3)のアミノ酸配列を含む、変異III型ポリケタイド合成酵素:
(A1)配列番号2のアミノ酸配列;
(A2)配列番号3のアミノ酸配列;または
(A3)上記(A1)または(A2)のいずれかのアミノ酸配列の348位以外の位置において、さらに1〜数個のアミノ酸が置換、欠失または付加の変異が導入されてなるアミノ酸配列であって、当該変異導入後のアミノ酸配列からなるタンパク質が6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有するアミノ酸配列。
〔7〕 前記〔3〕〜〔6〕いずれかに記載の変異III型ポリケタイド合成酵素をコードする遺伝子。
〔8〕 下記(B1)〜(B3)のポリヌクレオチドを含む、前記〔7〕に記載の遺伝子:
(B1)配列番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(B2)配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(B3)上記(B1)または(B2)のいずれかの塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドからなり、かつ6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有する酵素をコードするポリヌクレオチド。
〔9〕 前記〔7〕または〔8〕に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
〔10〕 前記〔9〕に記載の組換えベクターを導入してなる形質転換体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変異III型ポリケタイド合成酵素は、野生型酵素に比べて基質特異性が大幅に拡張し、汎用性の高い酵素であり、適切な基質を選択することによって様々なアルカロイド骨格、特に6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを生成することができる。本発明の変異III型ポリケタイド合成酵素を用いた化合物の製造方法は、有機合成方法に比べて、クリーンかつマイルドな条件下でアルカロイドなどを効率的に製造することができる。このようにして製造された6−7−6縮合環構造を有する新規3環性アルカロイドは、医薬品、化粧品、食品(機能性食品)の原材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、トウゲシバ(Huperzia serrata)由来III型ポリケタイド合成酵素(PKS1)の各種基質を用いた反応機構を示す。(A)野生型PKS1によるカルコンの生成反応。(B)野生型PKS1による6−5−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドの生成反応。(C)変異PKS1による6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドの生成反応。
【図2】図2は、実施例8の抗菌アッセイの結果を示す。図中、Ampはアンピシリンを、Compound 1は式(II)の化合物を、Compound 2は図1Bに記載された6−5−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを示す。枠内のウェルではバイオフィルムの形成阻害が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列またはアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0018】
1.6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド
本発明は、式(I)で表される化合物(以下、「本発明の化合物」と称する場合がある)またはその塩を提供する。
【0019】
【化4】

【0020】
式(I)中、R、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示す。
、R、RおよびRにおけるハロゲン原子としては、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素などがあげられる。中でも塩素またはフッ素が好ましい。
、R、RおよびRにおけるC1−6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、ヘキシル基などがあげられる。中でもメチル基またはエチル基が好ましい。
、R、RおよびRにおけるC1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。中でもメトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
、R、RおよびRの好ましい組み合わせは、R、R、RおよびRが水素原子である。
【0021】
式(I)中、Rは水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基またはアシル基を示す。
におけるC1−6アルキル基は、上記R、R、RおよびRと同様である。
2−6アルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニルおよびイソブテニルなどがあげられる。
3−6シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどがあげられる。
アリール基としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルおよび2−アンスリルなどのC6−14アリール基などがあげられる。
アラルキル基としては、ベンジル、α-メチルベンジル、フェネチルなどのC7−15アラルキル基などがあげられる。
複素環基としては、炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1個ないし4個含む5ないし14員(好ましくは5ないし9員、より好ましくは5または6員)の非芳香族複素環(例、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル)または芳香族複素環基(例、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル)などがあげられる。これら「複素環基」は、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、オキソなどの置換基を1ないし3個有していてもよい。
アシル基としては、式−(C=O)−R、−(C=S)−R、−(C=S)−OR、−(C=O)−OR、−SO−R、−SO−R、−(C=O)N(R)(Rb’)または−(P=O)(OR)(ORb’)(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示し、RおよびRb’は同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示す)で表される基などがあげられる。ここで、炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基などが挙げられ、炭素数1ないし16個のものが好ましい。具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびアリール基などがあげられる。また、置換基を有していてもよい複素環基としては、Rにおける複素環基と同様のものがあげられる。
【0022】
式(I)中、Rは同一または異なって、水素原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示す。RにおけるC1−6アルキル基およびアルコキシ基は、上記R、R、RおよびRと同様である。Rは好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基およびエチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0023】
式(I)中、さらに、R、R、RまたはRが結合する炭素原子の位置に窒素原子が導入されていてもよい。窒素原子の導入位置については特に限定されず、導入される数は、1、2または3個でもよい。
【0024】
式(I)において、R、R、RおよびRが水素原子、Rが水素原子ならびにRが水素原子である化合物が好ましい。
【0025】
本発明の化合物の塩としては、例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などがあげられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩があげられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩があげられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
【0026】
式(I)で表される化合物は、溶媒和物の形をとってもよく、このような化合物も本発明の化合物に包含される。溶媒和物としては、好ましくは水和物、エタノレートなどがあげられる。
【0027】
本発明の化合物は、通常の有機合成方法に従って合成することもできるが、後述する変異III型ポリケタイド合成酵素を触媒として用いる、以下の方法により製造することが好ましい。
【0028】
2.6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドの製造方法
本発明の製造方法は、後述する変異III型ポリケタイド合成酵素を触媒として用いて、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体をスターター基質とし、マロニルCoA誘導体を伸長鎖基質として、縮合反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0029】
スターター基質の2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体は、下記式:
【0030】
【化5】

【0031】
(式中、R、R、R、RおよびRは、上記式(I)で定義したとおりである。)で表される。
【0032】
2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体は、6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドの左側半分の6−7環を構成するものであり、目的とするアルカロイドの構造に応じて所定の構造を有するものを選択することができる。
【0033】
2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体は、例えば、以下のようにして得ることができる。フタルアミド酸誘導体を、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(WSCI)等の存在下、4〜40℃で1〜24時間反応させ、フタルアミド酸誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)とし、得られたNHSエステルの溶液とCoenzymeA水溶液とを混和し、0〜40℃で1〜48時間反応させ、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体を製造する。
【0034】
伸長鎖基質のマロニルCoA誘導体は、下記式:
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、Rは上記式(I)で定義したとおりである)で表され、1種を用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0037】
マロニルCoA誘導体は、マロニルCoA(R=H)、メチルマロニルCoA(R=CH)、エチルマロニルCoA(R=C)などについては市販品を利用することができ、市販品を原料にして常法に従って、他のマロニルCoA誘導体を得ることができる。
【0038】
変異III型ポリケタイド合成酵素を用いた縮合反応の条件は、スターター基質および伸長鎖基質から3環性アルカロイドが生成する限り特に限定されるものではないが、pH6〜9の緩衝液中、所定の濃度(例えば、0.01〜0.1mM)の酵素および所定の濃度(例えば、0.05〜10mM)の基質の存在下、20〜50℃で、0.1〜24時間が例示される。スターター基質と伸長鎖基質の混合比は、1:1〜1:3が例示され、1:2の混合比が好ましい。
【0039】
反応終了後、生成した6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを反応液から回収し、目的に応じて精製する。3環性アルカロイドの回収および精製は、当該技術分野において周知の手段を用いて行うことができ、例えば、逆相HPLC、シリカゲルカラム等があげられる。なお、前記縮合工程においては、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体1分子に対して、3分子のマロニルCoA誘導体が縮合した6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドに加えて、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体1分子に対して、2分子のマロニルCoA誘導体が縮合した6−5−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドも生成する。したがって、目的に応じて、6−5−6縮合環構造を有する生成物も回収および精製することができる。
【0040】
スターター基質として2−カルバモイルベンゾイルCoA、伸長鎖基質としてマロニルCoAを用いて変異III型ポリケタイド合成酵素により生成した6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド(式(II)の化合物)を以下に示し、反応式を図1Cに示す。
【0041】
【化7】

【0042】
上記式(II)で表される化合物は、実施例8に示すように、黄色ブドウ球菌等の細菌のコロニー形成を阻害する。したがって、式(II)で表される化合物および式(I)で表される化合物は、抗菌剤、バイオフィルム除去剤等の新規成分として、あるいは、当該化合物を抗菌剤等の新規成分のシード化合物として利用することが期待される。
【0043】
コロニー形成の阻害、抗菌活性、バイオフィルムの形成阻害の対象となる細菌としては、グラム陽性菌に属する細菌:
Bacillus、Listeria、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Clostridiumなどの属、広義にはMycoplasmaなどのモリクテス綱の細菌もグラム陽性菌に分類される;および
中でも、ヒトの典型的な病原体として、球菌(ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属)、桿菌(コリネバクテリウム属、リステリア属、バシラス属、クロストリジウム属);ならびに
グラム陰性菌に属する細菌:
大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ、腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロフォモナ、ブデロビブリオ、酢酸菌、レジオネラ、Wolbachiaなどのα-プロテオバクテリア;および
シアノバクテリア、Spirochaetes、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌などがあげられる。
【0044】
3.変異III型ポリケタイド合成酵素(変異PKS1)
本発明は、III型ポリケタイド合成酵素の活性中心キャビティを構成するアミノ酸配列中の少なくとも1アミノ酸を置換した変異III型ポリケタイド合成酵素(以下、「本発明の変異酵素」または「変異PKS1」と省略する場合がある)を提供する。
【0045】
本発明においてIII型ポリケタイド合成酵素(以下、「PKS1」と省略する場合がある)とは、4クマロイルCoAを開始基質として3分子のマロニルCoAを順次縮合の後、カルコンを生成する(図1A)。「変異型PKS1」は、カルコンを生成する活性を保持しているという観点から分類する場合、「PKS1」に含まれる。「野生型PKS1」とは、「PKS1」から「変異PKS1」を除く目的で使用される。
【0046】
PKS1(配列番号1)の活性中心は、触媒の3組のアミノ酸残基(Cys-174、His-313およびAsn-346)、活性部位残基(Thr-207、Phe-225、Gly-266、Phe-275およびSer-348)を含むと考えられる(Wanibuchi, K. et al., FEBS Journal 274, 1073-1082 (2007)、Fig.2を参照)。本発明においては、PKS1から見出された酵素の活性中心のアミノ酸配列と他のPKSのアミノ酸配列の相同性に基づいて、PKS1以外の他のPKSの活性中心に存在する対応するアミノ酸残基の位置を類推することが可能である。
【0047】
活性中心キャビティを構成するセリン残基からグリシンまたはアラニン残基への1アミノ酸の置換とは、野生型PKS1にはない6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を獲得するための置換である。好ましくは、野生型PKS1(配列番号1)の場合、348位のセリン残基からグリシン残基への置換またはアラニン残基への置換である。
【0048】
前記した1アミノ酸の置換は、PKS1をコードする遺伝子に対して部位特異的突然変異誘発法などの自体公知の方法を用いて導入することができる。
【0049】
本発明の「6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を獲得する」における「6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能」とは、2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体およびマロニルCoA誘導体を基質として、6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを合成する特性をいう。「6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能」の測定は、本発明の変異酵素を、2−カルバモイルベンゾイルCoAおよびマロニルCoAを基質として反応させ、反応物をHPLC、LC−ESI MS等のクロマトグラフィーを用いてアルカロイド合成の有無を検出することにより行うことができる。測定方法の詳細は、実施例6に記載されている。
【0050】
本発明で用いられる野生型PKSは、いかなる植物または細菌由来のPKSであってもよい。例えば、Huperzia serrata、Selaginella moellendorffii、Medicago sativa、Pisum sativum、Marchantia polymorpha、Trifolium subterraneumなどの植物由来のPKSがあげられるが、これらに限定されない。
【0051】
野生型PKSは、Huperzia serrata由来のPKS1(DQ979827.1、GeneID:ABI94386.1、配列番号1)が好ましい。
【0052】
変異PKS1は、野生型PKS1に上述した1アミノ酸の置換を導入することにより容易に得ることができる。好適には、
(A1)配列番号2のアミノ酸配列、または
(A2)配列番号3のアミノ酸配列
を含む(好ましくは当該アミノ酸配列からなる)。
配列番号2または3のアミノ酸配列からなる変異PKS1を、それぞれS348GまたはS348Aと称する。
【0053】
本発明の変異PKS1は、
(A3)上記(A1)または(A2)のいずれかのアミノ酸配列の348位以外の位置において、さらに1〜数個のアミノ酸が置換、欠失または付加の変異が導入されてなるアミノ酸配列であって、当該変異導入後のアミノ酸配列からなるタンパク質が6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。ここで、置換、欠失または付加されるアミノ酸の数は、変異PKS1のアルカロイド合成能が保持される限り限定されないが、例えば約1〜30個、好ましくは約1〜20個、より好ましくは約1〜10個、さらにより好ましくは約1〜5個、最も好ましくは1または2個である。アミノ酸の置換、欠失または付加が施される位置も、アルカロイド合成能が保持される限り特に限定されない。
【0054】
4.変異PKS1遺伝子
本発明は、前記変異PKS1をコードする遺伝子(単に変異PKS1遺伝子または変異PKS1 DNAと称する場合がある)を提供する。
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列(配列番号:4〜6)で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)および誘導体)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソンまたはイントロンを含むことができる。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、上記「遺伝子」を化学構造の観点から見た場合の概念を示し、「ポリ」とは2以上(好ましくは10〜10000個程度、より好ましくは20〜5000個程度)のヌクレオチドの数を意味し、「ヌクレオチド」にはDNAのみならずRNAをも含む。
【0055】
野生型PKS1をコードする遺伝子は、Huperzia serrata由来のPKS1(DQ979827.1、GeneID:ABI94386.1、配列番号4)が好ましい。
【0056】
本発明の変異PKS1遺伝子は、野生型PKS1遺伝子に上述した1アミノ酸の置換を可能ならしめる変異を導入することにより容易に得ることができる。セリンからグリシンへの置換のためには、セリンをコードするコドン(TCT、TCC、TCAまたはTCG)に対するグリシンをコードするコドン(GGT、GGC、GGAまたはGGG)の変異導入があげられる。セリンからアラニンへの置換のためには、セリンをコードするコドン(TCT、TCC、TCAまたはTCG)に対するアラニンをコードするコドン(GCT、GCC、GCAまたはGCG)の変異導入、好ましくは点突然変異導入があげられる。
【0057】
変異導入遺伝子は、Kunkel法やGapped duplex法などの公知の手法またはこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて、あるいは、QuickChangeTM XL Kit(Stratagene)などを用いて調製することができる。
【0058】
好適には、変異PKS1遺伝子は、以下に示すような塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む。
(B1)配列番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、または
(B2)配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
配列番号5または6の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む変異PKS1遺伝子を、それぞれS348G遺伝子(DNA)およびS348A遺伝子(DNA)と称する。
【0059】
また、本発明の変異PKS1遺伝子は、
(B3)上記(B1)または(B2)のいずれかの塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドからなり、かつ6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有する酵素をコードするポリヌクレオチドを含むものであってもよい。かかるポリヌクレオチドには、変異PKS1遺伝子の縮重異性体も含まれる。縮重異性体とは、縮重コドンにおいてのみ異なっていて同一のタンパク質をコードすることのできるDNAを意味する。例えば、配列番号5または6の塩基配列からなるDNAに対して、そのアミノ酸のどれかに対応するコドン、例えばPheに対応するコドン(TTC)が、これと縮重関係にある例えばTTTに変わったものを本発明では縮重異性体と呼ぶものとする。
【0060】
ここで、「70%以上の配列同一性」とは、コードする変異PKS1のアルカロイド合成能が保持される限り限定されないが、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有することをいう。本明細書における塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のホモロジー検索プログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。本発明において、塩基配列の「同一性」とは、比較する2種の塩基配列を整列(アラインメント)させ、整列により一致した塩基配列の数を基準となる塩基配列の総数で除して算出した割合を%で示した数字である。なお、整列により生じたギャップは、不一致と見なして算出する。
【0061】
5.組換えベクター
本発明の組換えベクターは、上記4.の遺伝子を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ここで、ベクターとしては、導入する宿主に応じて適宜選択することが好ましい。
【0062】
植物導入用ベクターとしては、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる、pBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクターまたは中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)およびアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列より成るボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である(EMBO Journal, 10(3), 697-704 (1991))。一方、pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクター等も用いることができる。
【0063】
昆虫細胞システムにはバキュロウイルス由来のベクター等を用いることができる。酵母においても、ADHもしくはLEU2のような構成的なプロモーターまたはGALのような誘導的プロモーターを含んでいる多くのベクターを使用することができる。
【0064】
大腸菌を始めとする細菌導入用ベクターとしては、上述したpBI系のバイナリーベクター、pUC系のベクターなどがあげられる。
【0065】
また、当業者であれば、本発明の実施のために、これら以外の適当なベクターを極めて容易に選択することができる。なお、使用されるベクターに従って、多くの適切な転写および翻訳要素、例えば構成的または誘導的なプロモーター、転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等を使用できるが、これらの要素は、当業者にとって公知のものである。
【0066】
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには、遺伝子の上流、内部、あるいは下流に、プロモーター、イントロン、エンハンサー、翻訳終止コドン、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5’−UTR配列、選抜マーカー遺伝子等の構成要素を含むことができる。これらは、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【0067】
プロモーターとしては、DNAが目的の宿主で発現されるようなプロモーターを用いればよい。かかるプロモーターは、発現ベクターとして市販されている種々のベクターに組み込まれており、当該ベクターから単離することができる。また、イントロン、エンハンサー、翻訳終止コドン、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5’−UTR配列、選択マーカー遺伝子等の構成要素も同様に発現ベクターとして市販されている種々のベクターに組み込まれており、これらの構成要素も、当該ベクターから単離することができる。
【0068】
ベクターに遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
【0069】
6.形質転換体
「形質転換」とは、ある細胞にとって新しい(外来性の)DNAを導入することによって、その細胞が永久的な遺伝子変化を起こすことを意味している。細胞が哺乳動物細胞である場合には、永久的な遺伝子変化は、その細胞のゲノム中にDNAが導入されることによって達成される。「形質転換体」は、前記組換えベクターを用いて目的の宿主を形質転換することにより容易に得られる。
【0070】
宿主が真核生物である場合には、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム、ウイルスベクターによって、DNAを真核細胞にトランスフェクションすることができる。また、本発明のタンパク質をコードしているDNA分子と、選択可能な形質(例えば単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子)をコードしている第2のDNA分子とを共に真核細胞にトランスフェクションして形質転換体を選別することができる。形質転換された真核細胞は、当該細胞の増殖に適した培地中で所定の条件下で培養することにより、本発明のタンパク質を発現させることができる。
【0071】
哺乳動物細胞として使用可能な宿主細胞株としては、例えば、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、Jurkat、HEK−293、WI38などがあげられる。昆虫細胞として使用可能な宿主細胞株としては、例えば、Sf9などがあげられる。酵母細胞として使用可能な宿主細胞株としては、例えば、Saccharomyces cerevisiaeなどがあげられる。
【0072】
宿主が原核細胞(例えば大腸菌)であるときには、DNAの取り込み能力を有するコンピテント細胞は、当業者に周知の手順によって、塩化カルシウム法で処理することで準備できる。形質転換は、エレクトロポレーション等の代替方法によっても実行することができる。また、本発明のタンパク質をコードしているDNA分子と、選択可能な形質(例えば、アンピシリン、カナマイシン等の抗生物質に耐性な遺伝子)をコードしている第2のDNA分子とを共に原核細胞にトランスフェクションして形質転換体を選別することができる。形質転換された原核細胞は、当該細胞の増殖に適した培地中(好ましくは、抗生物質存在下)で所定の条件下で培養することにより、本発明のタンパク質を発現させることができる。
【0073】
本発明の変異PKS1は、原核生物において本発明の組換えベクターを用いて当該変異PKS1をコードしているDNAを発現させることによって得ることが好ましい。例えば、宿主として大腸菌を用いた場合、大腸菌を大規模スケールで培養することによって、変異PKS1を発現させることが可能である。
【0074】
本発明の変異PKS1を発現した後の単離または精製の技術については、従来より公知の手段、例えばクロマトグラフ分離、硫安沈殿、および抗原または抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)を利用した免疫学的な分離方法によって行うことができる。
【0075】
例えば、本発明の変異PKS1を大腸菌等の微生物から精製するには、ニッケルキレートクロマトグラフィーを用いて、一つの工程で純化するための標識をタンパク質の配列中に持たせることによって単純化できる。例えば、複数個(好ましくは、5個〜15個)のヒスチジン残基からなるポリヒスチジン標識を本発明の変異PKS1のアミノ末端またはカルボキシル末端に組み込んでポリヒスチジンで標識し、ニッケルキレートクロマトグラフィーを用いて、一つの工程でタンパク質の単離を効率よく行うことができる。本発明の変異PKS1には、回収を良好にする目的で、適当な酵素の切断部位を含むように設計することもできる。
【0076】
7.形質転換植物体
上記5.で調製した組換えベクターを用いて、対象植物の細胞を形質転換し、再生することで本発明の変異PKS1を保有する形質転換植物体を調製することができる。
【0077】
形質転換植物体を調製する際には、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができ、その好ましい例として、例えば、生物学的方法としては、ウイルス、アグロバクテリウムのTiプラスミド、Riプラスミド等をベクターとして用いる方法が挙げられ、物理学的方法としては、エレクトロポレーション、ポリエチレングリコール、パーティクルガン、マイクロインジェクション(Plant Genetic Transformation and Gene Expression; a laboratory manual, J. Draper et al. 編, Blackwell Scientific Publication (1988))、シリコンウイスカー(Euphytica, 85, 75-80 (1995); In Vitro Cell. Dev. Biol., 31, 101-104 (1995); Plant Science, 132, 31-43 (1998))、リポソーム、バキューム インフィルトレーション(CR Acad. Sci. Paris, Life Science, 316 :1194(1993))、フローラルディップ等の手段によって遺伝子を導入する方法等が挙げられる。当該導入方法については、当業者であれば適宜選択し、使用することができる。
【0078】
一般に、植物に導入した遺伝子は、宿主植物のゲノム中に組み込まれるが、その場合、導入されるゲノム上での位置が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェクトと呼ばれる現象が見られるので、導入遺伝子の確認が必要である。
【0079】
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換植物体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動などの電気泳動を行い、臭化エチジウム溶液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。
【0080】
本発明において形質転換に用いられる植物としては、イネ、サトイモ等の単子葉植物、シロイヌナズナ、タバコ等の双子葉植物などがあげられ、特に好ましい植物の種類としては、シロイヌナズナ、タバコなどがあげられる。
【0081】
本発明において、形質転換の対象とする植物材料としては、例えば、植物体、生長点、苗条原基、分裂組織、葉片、茎片、根片、塊茎片、葉柄片、プロトプラスト、カルス、葯、花粉、花粉管、花柄片、花茎片、花弁、がく片等の細胞が挙げられる。
【0082】
植物細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには既知の組織培養法により行えばよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、「植物細胞培養マニュアル」(山田康之編著、講談社サイエンティフィク、1984)等の文献を参照することができる。
【0083】
本発明の形質転換植物体は、形質転換処理を施した再分化当代である「T0世代」のほか、その植物の自殖や他殖の種子から得られた後代である「T1世代」、薬剤選抜あるいはサザン法等による解析によりトランスジェニックであることが判明した「T1世代」植物の花を自殖や他殖して得られる次世代(T2世代)などの後代植物やT1世代を栄養系で増殖維持した個体、さらにはT1世代等の後代から特定の形質が変化したような変異個体等、T1世代を元にした、あらゆる栽培や育種の手段により得られ得る世代や個体をも含むものとする。
【0084】
7.形質転換体を用いた6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドの生産
(7-1)形質転換植物体を用いる方法
形質転換植物体は、当該植物体に適した条件下かつアルカロイドの生産に適した条件下(例えば、基質となる2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体およびマロニルCoA誘導体を適切な濃度で与える)で栽培し、収穫し、生産物を回収することにより、目的のアルカロイドを高収率で得ることが可能である。
【0085】
(7-2)形質転換体(植物体を除く)を用いる方法
別の実施形態において、本発明の形質転換体(植物体を除く)を基質の存在下で培養することにより、6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイドを製造することができる。
【0086】
用いる形質転換体は、形質転換体の増殖速度、変異PKS1の発現と酵素反応の条件の設定の容易さなどの観点から、目的に応じた形質転換体を選択することができる。好適な一例として、大腸菌の形質転換体があげられる。以下、大腸菌を例にとって説明する。
【0087】
用いる基質としては、上記2.に記載のとおりである。
【0088】
変異PKS1は、形質転換された大腸菌を培養中に外来遺伝子産物として当該大腸菌内で発現し、培養を続けることにより、培地中の基質等を利用して酵素反応が進行し、反応生成物が大腸菌内に蓄積するか、または菌体外に放出されることが期待される。反応条件としては特に限定されるものではないが、pH6〜9の培養液(例えば、LB(Luria-Bertani)培地)中、所定の濃度(例えば、1〜1000mM)の基質の存在下、20〜40℃で、24〜90時間が例示される。なお、培養は、バイオリアクター等を用いてスケールアップするとともに連続的に培養を続けることもできる。
【0089】
反応終了後、生成した3環性アルカロイドを培養物または培養液から回収し、目的に応じて精製する。3環性アルカロイドの回収および精製は、当該技術分野において周知の手段を用いて行うことができる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
実施例1 Huperzia serrata由来ポリケタイド合成酵素(ABI94386.1)のクローニング
PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymeraseおよび以下のプライマーを使用して、PCR法により目的配列の増幅を行った。1.2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、目的の大きさである1.2 kbpのバンドを切り出し、QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いて精製し、エタノール沈澱を行い、インサートDNAとした。
オリゴヌクレオチドプライマーは、Invitrogenにより作製されたものを使用した。
5’-CTG CTG GTC GAC ATG ACA ATC AAG GGA-3’(SalI部位を下線にて示す)(配列番号:7)
5’-CCG CCG CTG CAG TCA AAT GTT GAT ACT TCT-3’(PstI部位を下線にて示す)(配列番号:8)
精製したDNAおよびpQE81L(QIAGEN)をSalIおよびPstIを用いて制限酵素処理を行い、得られた制限酵素切断断片を上記DNA精製法により精製した。DNA Ligation Kit Ver.2.1 (TAKARA)を用いて、N末端に6xヒスチジンタグを付加した酵素発現用plasmid DNAを作製し、M15[pREP4](QIAGEN)に形質転換させた。
【0092】
実施例2 変異酵素の作製
野生型酵素発現用plasmid DNA(pET+insert DNA)を鋳型にQuickChangeTMXL Kit(Stratagene)により、以下のプライマーを使用してPCR法により変異導入を行った。オリゴヌクレオチドプライマーは、Invitrogenにより作製されたものを使用した。
S348G Fw 5'-CGGCAACATGGGAAGCGCCTCAGTACTGTTTGTTTTGG-3'(配列番号:9)
S348G Rv 5'-CCAAAACAAACAGTACTGAGGCGCTTCCCATGTTGCCG-3'(配列番号:10)
S348Gの変異が導入されたplasmid DNAを発現大腸菌BL21 (DE3) pLysS (NOVAGEN)に形質転換させた。
【0093】
実施例3 大腸菌における蛋白質の発現
実施例1および2で形質転換した大腸菌を、100mgのAmpicillinを含有する1000mLのLuria-Bertani培地で37℃、OD600 = 0.6になるまで振盪培養を行った。Isopropylthio-β-D-galactoside(IPTG)を、終濃度1mMとなるように加え、23℃、12時間、振盪培養した。
【0094】
実施例4 蛋白質の抽出および精製
実施例3の酵素誘導後の大腸菌を集菌後、0.1M NaClおよび5mM imidazole 含有の40mM potassium phosphate buffer(KPB)、pH 7.9に懸濁し、ソニケーターを用いて大腸菌細胞を破砕した。破砕後10,000rpm、4℃、30min遠心を行い、上清をタンパク粗抽出液とした。粗抽出液をNi SepharoseTM 6 Fast Flow (GE Healthcare)に供し、0.5M NaClおよび40mM imidazole 含有の40mM KPBで洗浄した後、10%(w/v) glycerolおよび500mM imidazole 含有の15mM KPB、pH 7.5により溶出させ、精製酵素を得た。精製酵素溶液を、5%(w/v) glycerolおよび0.2M NaCl含有の0.1mM HEPES、pH7.0を使用して、Amicon Ultra-4 (Ultracel-10k)フィルターを用いて、脱塩および濃縮を行った。
【0095】
実施例5 酵素反応基質の合成(2−カルバモイルベンゾイルCoA)
1) 活性化エステルの合成
アルゴン下、アセトニトリル中でフタルアミド酸3g、N-ヒドロキシスクシンイミド3.6gおよびWSCI・H2O 8.0gを混和し、室温で2時間反応させた。反応後、CH2Cl2と水で分液し有機層を回収して溶媒を減圧留去した。得られた液状物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、フタルアミド酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)を200mg得た。
2) CoAエステルの合成
得られたNHSエステル60mgを溶かしたアセトン溶液と、Coenzyme A 60mgと炭酸水素ナトリウム60 mgを溶かした水溶液とを混和し、4℃で24時間反応させた。アセトンを減圧留去した後、酢酸エチルと水で分液し水層を回収した。水層に含まれているCoAエステルを、C18 Sep-Packカラム(Waters)にて精製した。
3) 精製方法
分液で得られた水層に酢酸アンモニウムを加え、4%酢酸アンモニウム水溶液(サンプル)とした。メタノールと水でカラムを洗浄した後、サンプルと等量の4%酢酸アンモニウム水溶液を溶出させ、カラムの平衡化を行った。次に、サンプルを溶出させ、その後、等量の4%酢酸アンモニウムを溶出させた。最後にサンプルの3倍量の水を溶出し、回収した。凍結乾燥にて水を除去し、CoAエステル12mgを得た。
【0096】
実施例6 酵素反応および化合物解析
変異酵素20μg、CoAエステル25μg、マロニルCoA 50μgを0.1Mリン酸緩衝液(pH 6.5)500μl中で混和し、30℃、24時間反応させた。20%HClを20μl加えた後、酢酸エチルを用いて酵素反応生成物を抽出した。得られた物質をBruker Daltonics esquire4000によるLC-ESIMSにより測定を行った。TSK-gel ODS-80TsQA(2.0×150 mm)(Tosoh)カラムにより流速0.2mL/min、1%酢酸を含む水およびメタノール(MeOH)を用いて、0-5min, 30% MeOH; 5-17min, 30-60% MeOH; 17-25min, 60% MeOH; 25-27min, 60-70% MeOH; 27-35min, 70% MeOH; 35-40min, 100% MeOH、検出波長=280nmの条件で測定を行った。
【0097】
実施例7 化合物の構造決定
得られた分子量(MW)255のプロダクトをNMRにて構造決定した。
NMR測定器JNM-ECX 500 (JEOL)
1H-NMR(500 MHz, DMSO) (ppm): 9.38(s, 1H, OH), 8.27 (s, 1H, CONH), 7.91 (d, J = 7.0 Hz, 1H, Ar), 7.51 (t, J = 7.0, 7.0 Hz, 2H, Ar), 7.40 (d, J = 7.0 Hz, 1H, Ar), 6.85 (d, J = 2.0 Hz, 1H, Ar), 5.06 (d, J = 2.0 Hz, 1H, Ar)
13C-NMR(125 MHz, DMSO) (ppm): 188.5 (C=O), 172.1 (Ar), 165.1 (CONH), 163.5 (Ar), 159.8 (Ar), 137.0 (Ar), 136.2 (Ar), 132.8 (Ar), 132.7 (Ar), 121.3 (Ar), 121.3 (Ar), 121.0 (Ar), 95.5 (Ar), 94.6 (Ar), 86.3 (Ar)
Bruker Daltonics microTOFにより分子量を測定した。
m/z 256.0604 (M+H)+, C14H10NO4
構造式は、以下の通りである。
【0098】
【化8】

【0099】
実施例8 抗菌アッセイ
細菌を加えた液体培地を、実施例7で構造決定した化合物とともにウェルに入れて培養し、コロニー形成の有無で抗菌活性があるか判断した。本アッセイに用いた細菌は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)であった。
細菌をLB液体培地にて37℃、16時間培養した。培養後、ミューラーヒントン培地10mlに菌液10μlを混ぜ、1ウェル100μlずつ96ウェルプレートに菌液を入れた。片側末端の列は198μlとした。化合物1および2をそれぞれDMSOに溶かし、2.4mg/mlとした。また、ポジティブコントロールとして、アンピシリン(10mg/ml)、ネガティブコントロールとして0.9%生理食塩水を用いた。
片側末端の列にアンピシリン、サンプル、生理食塩水を2μlずつ加え、100倍希釈しこの濃度を最高濃度とした。その後、隣のウェルへ半量ずつ移しながら倍々希釈し、37℃、16時間インキュベートした。
その結果、アッセイしたすべての濃度で細菌の増殖が見られ、殺菌作用は現在の濃度では確認出来なかった。しかしながら、化合物1を添加したウェルではコロニー形成が阻害されており、バイオフィルム阻害が観察された。化合物1は式(II)の化合物であり、化合物2は実施例6の酵素反応によって式(II)の化合物とともに得られた酵素反応生成物であり、下記式で表される化合物である。
式(II)の化合物のMinimum Inhibitory Concentration(MIC)は12.5μg/mlであった。
【0100】
【化9】

【0101】
含窒素人工基質を用いた非天然型新規アルカロイド骨格の創出
本発明者らが以前クローニングに成功したトウゲシバ(Huperzia serrata)由来PKS1は、比較的大きな基質結合部位を有する新規III型PKSであり、クマロイルCoAを開始基質として3分子のマロニルCoAを順次縮合の後、カルコンを生成する(図1A)。今回、天然型酵素に化学合成した2−カルバモイル安息香酸のCoAチオエステルを開始基質として作用させた場合、2分子のマロニルCoA(またはメチルマロニルCoA)を順次縮合の後,6−5−6縮合環構造を有する3環性非天然型新規アルカロイドを収率80%で単一生成物として与えることを見出した(図1B)。一方、これとは対照的に、PKS1のX線結晶構造解析に基づき、活性中心キャビティを拡大したS348G点変異酵素では、上記図1Bに示す反応に加えて、3分子のマロニルCoAを順次縮合の後、6−7−6縮合環構造を有する3環性非天然型新規アルカロイドを生成することを見出した(図1C)。
【0102】
本発明者らは、これまで困難とされてきた、III型PKSのX線結晶構造解析に基づく合理的な酵素触媒機能の制御を展開している。C、H、O原子で構成される単純な「カルボニルの化学」を触媒するIII型PKSに、さらにNなどヘテロ原子を導入した人工基質を作用させれば、N原子の塩基性を利用した新たなC−NあるいはC−C結合の形成も可能になる。かかるヘテロ原子を導入した種々の人工基質とマロニルCoAまたはその誘導体を用いて、反応性に富むβ-ポリケトメチレン中間体からシッフ塩基の形成を介した分子内環化反応が進行して、複雑なアルカロイドの骨格を一挙に効率的に構築する超天然型新規生体触媒の創出が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の変異III型ポリケタイド合成酵素を用いたアルカロイドの製造方法は、有機合成方法に比べて、クリーンかつマイルドな条件下で非天然型新規アルカロイドなどを効率的に製造することができる。本発明の変異III型ポリケタイド合成酵素およびそれを用いた製造方法は、適切な基質を選択することにより、医薬品、化粧品、食品(機能性食品)の原材料として有用な様々な新規アルカロイドを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を、
は水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基またはアシル基を、
は同一または異なって、水素原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示し、
さらに、R、R、RまたはRが結合する炭素原子の位置に窒素原子が導入されていてもよい。)で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
、R、RおよびRが水素原子、Rが水素原子ならびにRが水素原子である請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
変異III型ポリケタイド合成酵素を触媒として用いて、下記式:
【化2】

(式中、
、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を、
は水素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基またはアシル基を示し、
さらに、C−R、C−R、C−RまたはC−R結合が窒素原子に置換されていてもよい。)で表される2−カルバモイルベンゾイルCoA誘導体と、下記式:
【化3】

(式中、Rは水素原子、C1−6アルキル基またはアルコキシ基を示す。)で表されるマロニルCoA誘導体とを縮合反応させる工程を含む、請求項1または2に記載の化合物の製造方法。
【請求項4】
変異III型ポリケタイド合成酵素が野生型III型ポリケタイド合成酵素の活性中心キャビティを構成するセリン残基からグリシンまたはアラニン残基への点変異酵素である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
野生型III型ポリケタイド合成酵素がHuperzia serrata由来野生型III型ポリケタイド合成酵素である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
下記(A1)〜(A3)のアミノ酸配列を含む、変異III型ポリケタイド合成酵素:
(A1)配列番号2のアミノ酸配列;
(A2)配列番号3のアミノ酸配列;または
(A3)上記(A1)または(A2)のいずれかのアミノ酸配列の348位以外の位置において、さらに1〜数個のアミノ酸が置換、欠失または付加の変異が導入されてなるアミノ酸配列であって、当該変異導入後のアミノ酸配列からなるタンパク質が6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有するアミノ酸配列。
【請求項7】
請求項3〜6いずれか1項に記載の変異III型ポリケタイド合成酵素をコードする遺伝子。
【請求項8】
下記(B1)〜(B3)のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載の遺伝子:
(B1)配列番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(B2)配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(B3)上記(B1)または(B2)のいずれかの塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドからなり、かつ6−7−6縮合環構造を有する3環性アルカロイド合成能を有する酵素をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項7または8に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の組換えベクターを導入してなる形質転換体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−65578(P2012−65578A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212208(P2010−212208)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】