植物保護における及び植物保護に関する改良
本発明は種子処理用組成物並びにその使用、種子の処理方法、害虫からの植物保護の方法、及びさらには種子及び植物の処理方法を提供する。一つの態様では、種子を、種子処理用組成物で処理して、前記種子からの植物の生長において1種以上の害虫に対する耐性機構を誘導させる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は植物の保護、特に、種子処理用組成物及びその使用、種子の処理方法、害虫から植物を保護する方法、並びに、種子及び植物に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の病気は、植物病原微生物(例えば、菌類、細菌、又はウイルス)によって引き起こされ、植物病原微生物は休眠状態の種子から成熟した植物までの生育の様々な段階で植物に感染しうる。様々な病原体による攻撃は、急性かつ大規模な組織の壊死から長期の慢性感染まで、広範囲な様々な病気をもたらす。農作物の害虫には広範囲の動物が包含されるが、多くは、線虫及び節足動物、例えば昆虫又はダニ類を含めた無脊椎動物である。これらの害虫は植物組織を餌にし、様々な害虫が様々な方法で様々な組織を攻撃する。例えば、過激な線虫は、個々の根の細胞の内容物を吸い取ることがある一方で、大きな昆虫害虫は、葉の大きな範囲をかじり取ることがある。
【0003】
栽培実務、例えば、輪作及び衛生はひとまず別にして、多くの農作物保護は、害虫又は病害を引き起こす病原菌に直接毒性のある薬剤(農薬、これは害虫と病害の両方に対して用いる薬剤に用いる用語である)の適用に頼っている。例えば、害虫は、殺虫剤又は殺線虫剤を用いて処理し、病害は、抗微生物剤、例えば抗カビ剤又は抗菌剤で処理することができる。感染又は攻撃の部位に応じて、農薬を、葉への噴霧、土壌浸液、又は種子処理を含めた多くの方法で農作物に適用できる。適用方法に関わらず、従来の農薬は害虫又は病原体との直接の接触を通して作用するか、植物によって吸収されて植物組織が食べられたときにその機能を果たすことができる(例えば、浸透性農薬)。
【0004】
公知の農薬を種子の処理に用いた場合は、種子は、病原体又は害虫を直接に阻害又は妨害するために設計された薬剤で被覆され、これらは種子の上で乾燥させる。そのような処理は、種子、苗、又は根を攻撃する土壌病原体又は害虫に対する直接の防御をもたらすことを多くの場合に目的としている。ほとんどの場合、観察される防御は、一時的であって、その保護剤が、成長の進行とともに、土壌及び根の中で分解、希釈、又は局限されることよって低下する。
【0005】
公知の農薬の欠点は、その多くが非標的種に対しても毒性があり、生物学的多様性の低下をもたらし、有益種、例えば花粉媒介昆虫又は捕食性昆虫を害しさえすることである。加えて、いくつかの公知の農薬の潜在的な人への毒性に関する消費者の懸念がある。
【0006】
遺伝子組み換えが、統合的害虫駆除(Integrated Pest Management, IPM)が用いられてきているのにしたがって、農薬の代替として用いられており、統合的害虫駆除は、栽培実務を、生物学的コントロールの手段としての害虫の寄生生物又は捕食者の使用と組み合わせるものである。しかし、それぞれが欠点をもっている。
【0007】
害虫制御のさらなるアプローチは、植物の自然の防御システを使用することを意図している。植物は、非常に広範囲の環境からの刺激に応答する。応答には、害虫(例えば、草食性動物、例えば昆虫)及び病原体(例えば、菌類、バクテリア、ウイルスなど)に対する防御をもたらすものも含まれる。害虫又は病原体の攻撃に対する植物の応答は、刺激の最初の認識を、最終的には防御へと導く植物細胞中の変化へと結びつける一連の事象によって引き起こされる。したがって、傷に対する、及び害虫/病原体の攻撃に応えて、局所で起こるシグナル伝達経路、植物のまわりの局所的な事象と通じている全組織的シグナル、及びその全組織的シグナルに応答する離れたところの細胞中に生じるシグナル伝達経路を伴って、引き起こされる局所的及び全組織的事象がある。
【0008】
植物のシグナル伝達分子は、環境刺激に対するこれら誘発された応答において中心的役割を演じており、なぜなら、それらの分子は、攻撃を植物内での内部的最終効果に結びつける中間分子シグナルとして作用するからである。例えば、様々な植物種において、ジャスモン酸は、傷害又は草食性動物の攻撃に続いて一時的に蓄積されることが知られており、かつ、傷害に反応する遺伝子の活性化と結びつけられている。別な例は、植物と病原体との相互作用の間に、サリチル酸は量が増加することが知られており、局所及び全組織的に獲得された抵抗性(systemic acquired resistance; SAR)と病気抵抗性にかかわる防御関連遺伝子の活性化の中心的調節因子であると考えられている。
【0009】
ジャスモン酸(JA)は、農作物(例えばトマト(ソラナム・リコペルシカム Solanum lycopersicum)及びブドウのつる)に害虫抵抗性を誘導するために、外からの葉への噴霧として適用されている。しかし、JA又はその誘導体のそのような葉(及び根)への適用は、例えば、植物毒性を引き起こすことによって農作物に直接ダメージを引き起こす傾向があり、商業的に実施するためには費用がかかりすぎる。
【0010】
米国特許第5977060号明細書は、アーウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)のハーピンタンパク質(Harpin protein)を用いて、農作物中に敏感かつ全組織的に取得された抵抗性応答を誘発させ、ウイルスに対する病気抵抗性並びに初期の苗の生育を攻撃する土壌の菌類、線虫、及びいくらかの昆虫に対する防御をもたらすことを開示している。しかし、種子の浸漬によるもたらされる昆虫への抵抗性は、アブラムシ、すなわち、樹液を摂取する節足動物に制限されるように思われる。この浸漬は播種前に適用され、植物保護は種子の浸漬から苗へと持ち越されることによって、効果的にはそのタンパク質を苗に直接適用することによって、実際にもたらされると思われる。ハーピンは、多くの地域でその使用が大きな制限を受けうる遺伝子操作の結果であるという欠点も持っている。
【0011】
発芽豆とメロン種子へ適用される種子浸漬剤としてのジャスモン酸の使用は、真菌病に対する防御を提供する目的のためだけにしか知られていない。植物にもたらされる防御は限定的なものであり、発芽した苗に直接移ったジャスモン酸から生じるようである。
【0012】
国際公開WO02055480号パンフレットは、昆虫を含めた病原体に対する耐性を誘導することにおけるコロナロン及び関連化合物の適用に関する。コロナロンはコロナチンの(化学的に合成された)人工的類似体であり、コロナチンはJAアミノ酸複合体の類縁体であり、同じではないが、JAに類似した生物学的活性を有している。しかし、コロナロンは生育しつつある植物に適用されており、したがって、この開示はJAの葉への噴霧とは少し異なる。
【0013】
国際公開WO0141568号パンフレットは、害虫を追い払い且つ有益な昆虫を誘引する植物揮発成分放出を誘発させるための、シスジャスモン噴霧の使用を開示している。ここでも、これは生長しつつある植物に直接適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5977060号明細書
【特許文献2】国際公開WO02/055480号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO01/41568号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、本明細書で議論していようとそうでなかろうと、従来技術に伴う少なくとも1つの欠点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
〔本発明のまとめ〕
本発明の第一の面によれば、種子を種子処理用組成物で処理し、前記種子から生長した植物に1種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導し、それにより、害虫による植物の被害を低減する方法を提供し、本方法は、種子に上記処理用組成物を適用する工程を含む。
【0017】
好ましくは、本方法は、発芽していない種子に上記処理用組成物を適用する工程を含む。適切には、本発明は上記処理用組成物を、次に発芽しうる未発芽種子に適用する工程を含む。あるいは、本方法は、上記処理用組成物を発芽種子に適用する工程を含んでもよい。
【0018】
本明細書で用いるように、用語「害虫」は「病気」を含まない。特に、用語「害虫」からは、菌類、バクテリア、及びウイルスを含めた病原体は除かれる。用語「害虫」には、線虫、軟体動物、及び節足動物、例えば、昆虫及びダニ、を含めた無脊椎動物が含まれる。
【0019】
適切には、害虫には草食性害虫が含まれる。適切には、害虫には草食性無脊椎動物が含まれる。害虫には線虫及び/又は軟体動物及び/又は草食性節足動物を含めることができる。あるいは、又は加えて、害虫には脊椎動物、例えばウサギを含めることも出来る。害虫には葉を餌にする害虫を含めることができる。害虫には樹液を餌にする害虫を含めることができる。したがって、誘発された植物抵抗機構は、樹液及び/又は葉を食べる害虫による植物の被害を低減するように作用しうる。あるいは、又は加えて、害虫にはその他の植物部位を餌にする害虫を含めることができ、誘発された植物抵抗機構はそのような害虫に対抗するように作用しうる。本方法/本処理用組成物は、病原体、例えば菌類、バクテリア、及びウイルスを含めた病気に対する、並びに害虫に対する防御をもたらしうる。
【0020】
本明細書で用いるとおり、「種子処理用組成物」の用語には、種子被覆(種子コーティング)及び種子浸漬用組成物が含まれる。
【0021】
適切には、種子処理用組成物は、種子浸漬を含む。したがって、本方法は、種子を、種子処理用組成物に浸漬することによって種子を処理する方法を含むことができる。
【0022】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)、又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、あるいはJA依存性の草食動物抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択された処理剤(適切には植物のシグナル伝達化学物質)を含み、それには、ジャスモン酸又はそのジャスモン酸塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合体(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類(esters)及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類(esters);コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物が含まれる。
【0023】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物からなる群から選択される処理剤を含む。
【0024】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル)からなる群から選択される単一の処理剤を含む。
【0025】
適切には、本処理用組成物は、処理剤としてジャスモン酸(JA)を含む。好適には、本処理用組成物は、単一の処理剤としてジャスモン酸(JA)を含む。
【0026】
適切には、本処理用組成物は、処理剤としてジャスモン酸メチル(MeJA)を含む。本処理組成物は、単一の処理剤としてジャスモン酸メチル(MeJA)を含むことができる。
【0027】
ジャスモン酸(JA)は、植物における、草食動物の攻撃に対する応答の普遍的な調節因子であると考えられる。それは長距離の植物防御シグナル伝達経路の一部を形成し、外部から(葉の組織又は根に)適用した場合には、攻撃の時に生じる被害及び将来の攻撃の可能性を低下させる目的のために、節足動物及びその他の害虫に対する防御関連応答を誘導しうる。JAの生合成へと導くオクタデカノイド経路は、植物防御応答の活性化に関連づけられることが理解されている。
【0028】
しかし、害虫の攻撃に対して誘導された植物防御の現在の理解を前提とすれば、防御システムを誘導する化合物を種子に適用することが、長期にわたって害虫から、生長しつつある植物を防御することは予想されない。種子から生長しつつある植物への遷移には、大きな代謝の再プログラム化と、種子には存在しない組織の生成を、生長点形態においてすら必要とする。これにも関わらず、草食昆虫に対するジャスモン酸介在防御応答(これは本発明によって誘導されうる)は、驚くほど有効でありうる。さらに意外なことに、処理した種子の続く発芽は、この処理方法によって実質的に抑制されないであろう。
【0029】
驚くべきことに、本発明者は、種子に処理用組成物を適用することが、処理した種子から発芽した植物において害虫を標的とする自然防御構成因子を誘導しうることを発見した。これは、発芽後のかなりの時間その状態に保つことができ、これは全く予期しないことである。これは、処理剤を低濃度で種子に適応した後でさえ、そうであり、活性化合物が自然に分解した後長く、何週間にもわたって持続する害虫制御をもたらしうる。予期せぬことに、未発芽種子に適用した場合、防御は、続いて生長する植物に誘導されうることを発見した。
【0030】
適切には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られている)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0031】
好適には、上記種子処理用組成物は、水性組成物を含む。この処理用組成物は、非水溶媒、適切にはアルコール、例えばエタノールを含有しうる。
【0032】
適切には、処理用組成物は、処理剤、例えばジャスモン酸を、少なくとも10μM、例えば1mM以上の濃度で含む。この処理用組成物は、処理剤、例えばジャスモン酸を、10μM〜50mM、適切には0.1mM〜15mM、例えば1mM〜5mMの濃度で含みうる。この処理用組成物は、処理剤を10mM以下の量で含みうる。
【0033】
本処理用組成物は、処理剤を、少なくとも0.1mM、例えば、少なくとも、0.5mM;1.0mM;1.5mM;2.0mM;2.5mM;3.0mM;3.5mM;4.0mM;4.5mM;5.0mM;6.0mM;7.0mM;8.0mM;9.0mM;又は10mMの量で含みうる。
【0034】
本処理用組成物は、処理剤を、15mM以下、例えば、14mM、13mM、12.5mM、12.0mM、11.5mM、11.0mM、10.5mM、10.0mM、9.5mM、9.0mM、8.0mM、7.0mM、又は6.0mM以下の量で含みうる。
【0035】
本処理用組成物は、非水溶媒、好適にはアルコールを、少なくとも1mMの濃度で含みうる。本処理用組成物は、非水溶媒、好適にはアルコールを、1mM〜100mM、好適には10mM〜100mM、例えば30mM〜50mMの濃度で含みうる。
【0036】
好適には、本処理用組成物は、水と処理剤と好適にはさらに非水溶媒、好適にはアルコール、をさらに含む。好適には、処理用組成物の少なくとも95質量%、例えば少なくとも99質量%が、水、処理剤、及びアルコールからなっていてよい。好適には、この処理用組成物は、水、処理剤、及びアルコールのみからなる。本処理用組成物は、水、エタノール、及びジャスモン酸のみからなることができる。
【0037】
好適には、本方法は、種子処理用組成物を、休眠種子であってよい未発芽種子に適用することを含む。
【0038】
好適には、本方法は、発芽を妨げる条件下で、種子処理用組成物を種子に適用することを含む。この種子処理用組成物は、低温及び/又は暗闇の条件下で、種子に適用されうる。
【0039】
好適には、種子処理用組成物は、種子に、10℃以下、例えば、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、又は4℃、又はそれ未満の温度にて適用される。好適には、種子は処理工程の間を通して、そのような温度に保たれる。
【0040】
好適には、本方法は、冷たい温度、適切には10℃未満であるが処理用組成物の凝固点よりは高い温度を用いて、処理の間、未発芽状態に種子を保つことを含む。
【0041】
適切には、本方法は、1時間以上のあいだ、適切には少なくとも6時間、例えば少なくとも12時間、種子を処理用組成物と接触させておくことを含む。好適には、本方法は、1時間〜72時間、好適には6時間〜48時間、例えば約24時間、種子を種子処理用組成物に接触させておくことを含む。
【0042】
好適には、処理用組成物は、種子に適用される液体、例えば、種子浸漬液を含む。好適には、この処理用組成物は、液体として適用されるジャスモン酸を含む。
【0043】
あるいは、処理用組成物は、ダスト状、粉末、スラリー、又は蒸気として適用されうる。処理剤には、例えば、蒸気として適用されるジャスモン酸メチルが含まれる。
【0044】
粉末として適用する場合は、処理用組成物は展着剤を含むことができる。スラリーとして適用する場合は、スラリーは、水和性粉末、水分散性粉末、又はマイクロカプセル封入剤/カプセル懸濁液のいずれかを含んでよい。液体として適用する場合は、濃縮物は、種子への適用の前に希釈を必要としうる。ジャスモン酸又はジャスモネートに由来する種子コーティング剤は、例えば、液体として容易に適用されうるが、適用しすぎを避けるためにクレーなどのフィラーで充分に希釈した場合には、ダスト状又はスラリーとして適用することもできる。
【0045】
種子を処理用組成物でコーティングするためには、その組成物は種子と機械的にブレンドされて均一な被覆を確実にし、いかなる水分も、時期尚早の発芽を引き起こすことを避けるために蒸発することが推奨されうる。コーティング法の変形には、いくつかの異なる処理(これらの処理がそれらの適用手段に関して適合性がある場合)を、配合物を介して同時に種子に適用すること、又はいくつかの異なる処理を順次適用して、ペレット化として公知の方法で一連の処理層を構築することを含みうる。粉が取り払われることに抗して種子をシールするために、また必要な場合には、識別のために種子を着色するために、いくつかの周知のポリマー又はその他のコーティングのうちの一つが適用されてもよい。
【0046】
好適には、本方法は、部分的に又は完全に、最も好適には完全に種子を処理用組成物中に浸すことによって、種子を浸漬することを含む。好適には、本方法は、処理用組成物に種子を浸し、そうして、上に詳述したように、種子を少なくとも1時間のあいだ、組成物と接触させておく。
【0047】
好適には、本方法は、種子への処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることを含む。この方法は、種子を自然に乾燥させておくことを含みうる。あるいは、本方法は、種子を乾燥させるために熱をかけることを含みうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。
【0048】
本方法は、種子への処理用組成物の適用に続いて種子を洗浄することを含むことができる。本方法は種子を水で洗うことを含みうる。本方法は、部分的又は完全に、最も好適には完全に、種子を水中に浸漬することを含みうる。本方法は、種子に処理用組成物を適用する工程と、種子を乾燥させる工程との間で、種子を洗浄することを含みうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて且つ発芽の前に種子を洗浄することは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。
【0049】
好適には、本方法で処理した種子は、播種する前に少なくとも24時間貯蔵しうる。好適には本方法で処理した種子は、使用前に、未処理の種子と実質的に同じ方法で貯蔵することができる。処理した種子は、発芽が開始される前に少なくとも24時間、好適には少なくとも72時間、例えば、1週間以上、貯蔵しうる。処理した種子は、例えば、播種される前、且つ発芽が始まる前1ヶ月以上、貯蔵しうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて且つ発芽の前に種子を貯蔵することは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。したがって、処理した種子は、発芽の前1週間以上の間、植物抵抗機構の誘導を妨げることなく、貯蔵されることができる。
【0050】
好適には、本方法で処理された種子は、単子葉植物又は双子葉植物のものである。好適には、本方法で処理された種子は、園芸又は農作物のものである。農作物は商業目的のために育成される農作物であってよい。
【0051】
好適には、本方法は、処理用組成物を適用し、それにより、処理した種子から生長した植物における害虫抵抗性が、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0052】
好適には、この防御機構は、種子の処理によって生じる。好適には、害虫に対する耐性は、処理した種子から発芽する植物への本組成物の残留だけによって生じるのではない。この防御機構は、種子から発芽しつつある植物への処理用組成物の持ち越しによるのではなく、むしろ種子の処理によって誘導されうる。
【0053】
好適には、本発明によって処理した種子から発芽した植物は、発芽後少なくとも1週間において、好適には少なくとも2週間、例えば、発芽後3、4、5、6、7、又は8週間もしくはそれより後において、害虫被害に対する抵抗性を示しうる。
【0054】
好適には、本方法によって処理した種子から発芽した植物は、未処理の種子から発芽した、それ以外は同等の植物よりも、害虫被害に対するさらに大きな抵抗性を、発芽後少なくとも1週間において、好適には発芽後少なくとも2週間、例えば3、4、5、6、7、又は8週間あるいはそれより後において示しうる。
【0055】
好適には、本方法によって処理した種子から発芽した植物における害虫防御機構は、害虫の生存の低下及び/又は害虫による植物被害の低減及び/又は害虫の繁殖の減少によって作用しうる。
【0056】
本種子処理用組成物は、種子から生長した植物における、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導でき、これが害虫の生存及び/又は害虫数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限する。
【0057】
好適には、本方法にしたがって処理した種子から発芽した植物の近傍内にある植物も、害虫による植物被害の危険が低下しうる。好適には、本発明によって処理した種子からの植物によって生産される植物揮発性シグナル伝達化合物の生産が、近くの未処理植物における害虫被害に対する抵抗性をもたらしうる。
【0058】
好適には、処理した種子から発芽した植物における植物毒性に伴う問題は全くない。
【0059】
好適には、この処理方法は、実質的に、処理した種子から生長した植物、又はその植物が生長して作り出す農作物の収量もしくは品質、への悪影響を引き起こすことを回避する。好適には、本方法は、処理した種子から生長した植物における植物毒性を実質的に回避するような方法である。
【0060】
本方法は、これ以後に記載するとおり、第三の側面による組成物で種子を処理することを含みうる。
【0061】
本発明の第二の側面によれば、害虫被害に対する植物の抵抗性が育ちうる種子を提供し、その種子は、その種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物で処理した種子を含む。
【0062】
好ましくは、種子は、未発芽種子を含む。好適には、この種子は、引き続き発芽しうる未発芽種子を含む。
【0063】
好適には、種子は、第一の側面の方法にしたがって処理した種子を含む。この種子は、以下に記載するとおりの第三の側面にしたがう組成物で処理した種子を含みうる。
【0064】
好適には、種子は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含む。
【0065】
植物は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。害虫は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。種子処理用組成物は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。植物防御機構は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。
【0066】
本発明の第三の側面によれば、処理した種子から生長した植物に、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導させるために種子を処理し、それにより、害虫による植物被害を制限するための種子処理用組成物を提供する。
【0067】
好適には、この処理用組成物は、上記第一の側面による方法で用いられるように準備される。
【0068】
好適には、この処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、又はJA依存性の、草食動物への抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択され、それには以下が含まれる:ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩、例えば、ジャスモン酸カリウムもしくはジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」)、ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物。
【0069】
好適には、処理用組成物は、下記の群から選択される処理剤を含む:ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物。
【0070】
好適には、本処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)を処理剤として含む。
【0071】
好適には、本処理用組成物は水性組成物を含む。本処理用組成物は非水溶媒、好適にはアルコール、例えば、エタノール、を含んでもよい。
【0072】
好適には、本処理用組成物は、水と、処理剤と、好適にはさらに非水溶媒、好適にはアルコールとを含む。好適には、本処理用組成物は、実質的に、水、処理剤、及び非水溶媒のみからなる。好適には、本処理用組成物は、実質的に、水、処理剤、及びアルコールのみからなる。
【0073】
好適には、本処理用組成物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含む。
【0074】
種子は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。種子は未発芽種子であってよい。植物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。害虫は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。植物防御機構は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。
【0075】
本発明の第四の側面によれば、害虫被害に対する抵抗性を植物にもたらす方法を提供し、この方法は、種子処理用組成物を種子に適用し、続いてその種子から植物を生長させ、ここで上記処理用組成物が、その処理した種子から生長した植物において、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導させ、それによって害虫による植物被害を制限(低減)する。
【0076】
好適には、上記植物は、未処理の種子から生長した以外は同等の植物よりも、害虫に対する、より大きな抵抗力を含む。
【0077】
好ましくは、本方法は、処理用組成物を未発芽種子に適用することを含む。好適には、本方法は、続いて発芽しうる未発芽種子に処理用組成物を適用することを含む。あるいは、本方法は、発芽しつつある種子に処理用組成物を適用することを含みうる。
【0078】
好適には、本方法は、第一の側面の方法にしたがって種子を処理することを含む。本方法は、上記第二の側面にしたがう種子を用いることができる。本方法は、上記第三の側面にしたがう処理用組成物を用いることができる。
【0079】
本方法は、処理用組成物で種子を処理し、次に発芽前にその種子を洗浄及び/又は乾燥及び/又は貯蔵することを含むことができる。
【0080】
処理(これには、洗浄及び/乾燥を含めることができる)に続いて、本方法は、公知の未処理の種子と実質的に同様の方法で、処理した種子を取り扱うこと(これには貯蔵を含めることができる)を含むことができる。
【0081】
好適には、植物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含む。
【0082】
好適には、本方法によって作った植物は、オキシリピン経路(これはジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路ともいわれる)によって調節される防御機構によって生じた対昆虫抵抗性を示す。
【0083】
種子は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。害虫は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。上記種子処理用組成物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。植物防御機構は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。
【0084】
本発明の第五の側面によれば、害虫被害に抵抗性の植物を提供し、植物には上記第四の側面による方法によって準備した、及び/又は上記第二の側面による種子から生長した、及び/又は上記第一の側面の方法にしたがって処理した種子から生長した、及び/又は上記第三の側面にしたがう組成物で処理した種子から生長した植物が含まれる。
【0085】
第五の側面は、第一、第二、第三、又は第四の側面と関連して説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0086】
本発明の第六の側面によれば、植物への害虫被害の制限方法を提供し、この方法は、前記植物を第五の側面による植物の近くに配置することを含む。
【0087】
上記第六の側面は、上記第一、第二、第三、又は第四の側面と関連して説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0088】
本発明の第七の側面によれば、種子を処理するための種子処理用組成物の使用を提供し、それはその種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導させるためであり、それによって害虫による植物被害を制限(低減)させる。
【0089】
好適には、本種子処理用組成物は、上記第三の側面による組成物を含む。
【0090】
好適には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(これはまたジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0091】
第七の側面は、上記第一、第二、第三、又は第四の側面との関連で説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0092】
本発明の第八の側面によれば、種子を処理するための種子処理用組成物の使用を提供し、これは、害虫の生存及び/又は害虫の数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限(低減)するために、その種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導するためである。
【0093】
好適には、本処理用組成物は、上記第三の側面による組成物を含む。
【0094】
好適には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0095】
第八の側面は、第一、第二、第三、又は第四の側面との関連で説明したいずれかの特性を用いることができるが、そのような特性が相互に排他的である場合を除く。
【0096】
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、付属する図面を参照して、例を使って説明される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、トマトの苗へのハダニの被害に対する、JA種子処理の効果を示している。
【図2】図2は、ハダニの個体数に対するJA種子処理の効果を示している。
【図3】図3は、ハダニ集団による産卵数へのJA種子処理の影響を示している。
【図4】図4は、マンドゥカ・セクスタ(Munduca sexta)の芋虫による草食へのJA種子処理の影響を示す。
【図5】図5は、甘唐辛子におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)へのJA種子処理の影響を示す。
【図6】図6は、すぐ近くの未処理の植物におけるハダニの個体数への、JA種子処理の影響を示す。
【図7】図7は、すぐ近くの未処理の植物におけるハダニの繁殖への、JA種子処理の影響を示す。
【図8】図8は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数への、JA種子処理の影響を示している。
【図9】図9は、トウモロコシでのスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示す。
【図10】図10は、小麦でのスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示す。
【図11】図11は、処理した種子を、2ヶ月の貯蔵の後で播種した場合の、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数へJA種子処理の影響を示す。
【図12】図12は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の種子発芽へのJA種子処理の影響を示す。
【図13】図13は、週毎の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の植物の草丈への、JA種子処理の影響を示す。
【図14】図14は、週毎の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の植物当たりの実の数への、JA種子処理の影響を示す。
【図15】図15は、毎週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))の果実乾燥質量に対する、MeJA種子処理の影響を示す。
【図16】図16は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))におけるアブラムシ(ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae))の個体数へのMeJA種子処理の影響を示す。
【0098】
〔本発明の詳細な説明〕
[ジャスモン酸(JA)及びジャスモン酸メチル(MeJA)の溶液の調製]
ジャスモン酸(JA)及びジャスモン酸メチル(MeJA)の溶液は、種子の処理の直前に調製した。
【0099】
ジャスモン酸溶液を調製するために、250mgのJAを1mLのエタノールに溶かし、脱イオン水で400mLの体積に増やして、42.8mMのエタノール中の3mMのJAの溶液を得た。それは以下の通りである:
1. JA(シグマ-アルドリッチ社)の250mg試薬瓶中のジャスモン酸の塊を、試薬瓶のラベルから記録をとった。
2. そのラベルを除去し、その試薬瓶の外側から全ての接着剤をアセトンを用いて除去した。
3. 5分間その試薬瓶を乾燥させておいた後、最寄りのmgに秤量した。
4. 500mLのメスフラスコをその標線まで脱イオン水で満たした。
5. そのメスフラスコから1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して5mLの水を取り除き、次に分析用100mLピペットを使用してさらに100mLを取り除いた。
6. JAの試薬瓶に、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して1mLのエタノールを添加し、試薬瓶の蓋をし、さらに、試薬瓶を振盪してJAを溶かした。JAが水に直接溶けないので、エタノールの使用が必要である。
7. 次に、試薬瓶の内容物を、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して500mLのメスフラスコに移した。
8. 1mLの脱イオン水を、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して空の試薬瓶に添加し、試薬瓶の蓋をして、試薬瓶を再度激しく振盪した。
9. 次に、試薬瓶の内容物を1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して上記の500mLのメスフラスコに移した。
10. ステップ8及び9をさらに3回繰り返した。
11. メスフラスコ(この時点で400mLの液体と250mgのJAが入っている)に栓をして、激しく振盪した。
12. 上記試薬瓶を150℃のオーブン中で一定質量になるまで乾燥させて、その質量を記録した。
13. メスフラスコ中のJAの濃度を、上記試薬瓶の2つの質量測定の質量差から計算した。
【0100】
1.5mMのJA溶液は、上記の3mMのJA溶液を、42.8mMのエタノールを含む脱イオン水で2倍に希釈することによって調製した。様々なその他の濃度を、例9のために、適切に加減した量を用いて上記方法にしたがって調製した。
【0101】
3.0mMのMeJA溶液を、上述したものと実質的に同じ方法によって調製したが、JAに変えてMeJAを用いた。MeJA溶液を調製するために、269mgのMeJAを1mLのエタノールに溶かし、脱イオン水で400mLの体積にし、42.8mMのエタノール中の3mMのMeJAの溶液を得た。
【0102】
〔種子処理−概説〕
トマト、ペッパー(pepper)、トウモロコシ(maize)、及び小麦の種子を、3mMのJA又は1.5mMのJAの溶液、あるいは3mMのジャスモン酸メチル(MeJA)、あるいは42.8mMのエタノールを含む脱イオン水(対照)で処理したが、これはホイルで覆ったペトリ皿の溶液中で、24時間、冷蔵庫中4℃で、40までの種子を完全に浸漬させることによって行った。4℃の温度は、ジャスモン酸溶液の分解の防止と、種子の発芽防止の両方のために採用した。
次に、処理溶液から種子を取り出して、1リットルの脱イオン水で5分間洗浄して、種子の外側をコーティングしたJA又はMeJAを除去した。
【0103】
〔トマト、ペッパー、トウモロコシ、及び小麦の生長と試験〕
トマトの種子を石綿ブロック中に播き、泥炭(ピート)系コンポスト上で、温室中、12℃〜28℃で、16時間の光と8時間の暗闇のサイクルの人工照明下で、48日、56日、又は70日、生育した。
【0104】
ペッパーの種子は泥炭系コンポストに播き、夏の環境条件下で、加温していない温室中で生育した。
【0105】
小麦とトウモロコシの種子は泥炭系コンポストに播き、秋に、補助照明(600WのSON−Tランプ、1日当たり16時間)を用いて、加温していない温室中で生育した。
【0106】
次に、トマト植物体を、テトラニカス・ウルチカエ(Tetranychus urticae)(ナミハダニ、two-spotted spider mite)(これは9日間、飼っておいた)、マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)(タバコ・ホーンワーム)(これは4日間、飼っておいた)、又はミズス・ペルシカエ(Myzus persicae))(アブラムシ)(これは10又は12日間、飼っておいた)を用いて試験を行った。それぞれの場合に、これらの生物はそれらが最初にその上に置かれた植物に制限した。ペッパー植物体は、ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae) (アブラムシ)(これは2週間、飼っておいた)を用いた試験した。トウモロコシと小麦の植物体は、スポドプテラ・エグゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫(これは2日(トウモロコシ)又は3日(小麦)、飼っておいた)を用いた試験した。
【0107】
植物体へのテトラニカス・ウルチカエ(Tetranychus urticae)の影響は、各植物上の生きたハダニ及び死んだハダニの数と、解剖顕微鏡を使用してハダニの卵の数とを数えることによって評価した。
【0108】
植物体へのミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の影響は、各植物上のアブラムシの個体数を解剖顕微鏡下、10倍の倍率で数えることによって評価した。
【0109】
植物体へのマンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)又はスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の影響は、食べられた葉の面積の測定によって評価し、これは、葉面積計を使用して測定した。
【実施例1】
【0110】
[実施例1]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル)を、脱イオンH2O中の1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで、24時間、4℃で、暗所にて処理した。次にそれらの種子を溶液から取り出し、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗った。次に、それらの種子を、ロックウォールブロックを用いる商業的方法で播種し、この農作物に適切な温室条件下で生育した。植物を、普通の農作物害虫であって、ここでは「モデル草食動物」として働くナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、Tetranychus urticae)に、処理の後の7週間後に曝した。
【0111】
アカハダニ(red spider mite)の攻撃によって引き起こされた肉眼で分かる被害(この害虫による摂食活動による葉の表面の特徴的な淡色の剥離)は、大幅に低減された(図1−対照及び3.0mMのJAのみ)。誘導され、観察された抵抗性は、種子へのJAの適用後8週間でさえ顕著だった。
【0112】
対照植物上の個体数と比較して、JA処理した種子から生長させた植物の葉の上のナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、tetranychus urticae)の個体数の顕著な低下も観察された(図2)。対照植物は、全てのJA処理した植物から少なくとも10m離して配置し、図示したデータは10回の繰り返しの平均±標準誤差である。
【0113】
対照植物と比較して、産卵によって測定したそのハダニの繁殖速度に顕著な低下があることがさらに観察された(図3)。対照植物は、全てのJA処理した植物から10m離して配置し、図示したデータは10回の繰り返しの平均±標準誤差である。
【0114】
図2は、ハダニ個体数に対するJA種子処理の効果を示しており、図中の説明は以下の通りである。
X2=種子処理のJA濃度(mM);及び
Y2=生存しているハダニの数。
【0115】
図3は、ハダニ集団による産卵に対する、JA種子処理の効果を示し、図中の説明は以下のとおりである。
X3=種子処理のJA濃度(mM);及び
Y3=成虫の雌1頭当たりが産んだ卵。
【実施例2】
【0116】
[実施例2]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル(cv.Carousel))を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(実施例1のもとでの記載どおり)。種子処理後8週間で、処理した種子から生長させた植物を、2頭の3令のガ(マンドゥカ・セクスタ、Manduca sexta)の芋虫(タバコイモムシ)を第5番目の葉の上に置くことによって、葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫はその植物の上で、4日間、摂食させておき、次に食べられた葉の面積を測定した。草食後に残った葉の面積は、対照と比較して、JAで処理した種子から生長させた植物で顕著に高かった(図4)。加えて、JAで処理した種子から生長させた植物の葉を食べた芋虫は、対照を餌にしたものよりも20%低くしか生長していなかった。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保っておいた。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0117】
図4は、マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)のイモムシによる摂食に対する、JA種子処理の影響を示し、図中、説明は以下の通りである:
X4=種子処理(C=対照での処理、及びJA=ジャスモン酸での処理);及び
Y4=摂食後の葉の面積(cm2)。
【実施例3】
【0118】
[実施例3]
この試験では、甘唐辛子の種子(カプシカム・アンナウム、cv ビスケイン;Capsicum annuum, cv Biscayne)を1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説で説明したとおりである)。種子処理後8週間で、処理した種子から生長させた植物を、ミズス・ペルシカエ、Myzus persicaeに曝した。アブラムシは、その植物の上で2週間、摂食させておき、この期間にわたるアブラムシ個体数の増大を次に測定した。JAで処理した種子から生長させた植物上でのアブラムシ個体数の増大の速度に顕著な低下があった(p<0.001)(図5)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした生長曲線であり、これは対照に対して0.19±0.011、JA処理したものに対して0.11±0.016の個体数増加速度を与える。
【0119】
図5は、甘唐辛子(カプシカム・アンナウム、Capsicum annum)におけるミズス・ペルシカエ、Myzus persicaeへの、JA種子処理の影響を示しており、図5において、説明は以下のとおりである:
X5=アブラムシを導入後の日数;及び
Y5=アブラムシ数(C=対照処理、JA=ジャスモン酸処理)。
【実施例4】
【0120】
[実施例4]
トマト(cv. カルーセル(cv. Carousel))の植物を同じ条件下で生長させ、実施例1のもとで説明したとおりに、ナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、tetranychus urticae)に曝した試験では、JA処理は受けていないが、1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)で処理した種子から生長させた植物に隣接して生長させた植物上で、T. urticaeの個体数の顕著な低下があった。この効果は、少なくとも10メートル離れて配置した対照と比較して観測された(図6)。図示したデータは10回の繰り返し試験の平均±その平均の標準誤差である。
【0121】
JA処理を受けていないが、1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)で処理した種子から生長させた植物に隣接して生長した植物で、ハダニの(産卵によって測定した)増殖速度の顕著な低下も観察された。ここでもこの効果は、少なくとも10メートル離れて配置した対照と比較して観察された(図7)。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0122】
図6は、近くの未処理の植物における、ハダニ個体数へのJA種子処理の影響を示しており、その説明は以下のとおりである:
X6=処理(VC=何もしていない対照、N1.5=1.5mM種子処理の近隣、及びN3.0= 3.0mMの種子処理の近隣);及び
Y6=生きているハダニの数。
【0123】
図7は、未処理植物近くにおける、ハダニの増殖に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X7=処理(VC=何もしていない対照、N1.5=1.5mM種子処理の近隣、及びN3.0= 3.0mMの種子処理の近隣);及び
Y7=成虫の雌1頭当たりの産卵。
【実施例5】
【0124】
[実施例5]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv.カルーセル(cv. Carousel))を、脱イオンしたH2O中の3.0mMのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、植物をアブラムシ(ミズス・ペルシカエ、Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で12日間、摂食させておき、アブラムシ個体数を対照植物と比較した。JAで処理した種子から生長させた植物上での、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図8)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは15回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0125】
図8は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数へのJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおである;
X8=最初のアブラムシの攻撃後の日数;及び
Y8=アブラムシの数(対照の%として処理した)。
【実施例6】
【0126】
[実施例6]
トウモロコシ(maize)cv アーリゴールド(Earligold)の種子を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、(実施例1のもとに説明したとおりである)温室中で植物を生長させた。穂を出す時期(種子処理後約10週)に、完全に開いた葉の上に蛾(スポドプテラ・エグゼンプタ, Spodoptera exempta)の2頭の芋虫を置くことによって葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫は植物上で2日間、摂食させておき、次に食べられた葉の面積を測定した。芋虫によって消費された葉の面積は、対照よりも、JAで処理した種子から生長させた植物で38%低かった(p<0.05の有意性)。芋虫の単位質量当たり消費された葉の面積として表した場合は、JAで処理した種子から生長させた植物における低下は、なおさらに明言できる(40%、p<0.001、図9)。対照の種子は適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは、12の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0127】
図9は、トウモロコシ(メイズ、maize)上のスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X9=処理(C=対照、JA=ジャスモン酸処理);及び
Y9=芋虫の初期体重1g当たりの消費された葉の面積。
【実施例7】
【0128】
[実施例7]
市販の小麦の品種(cv. アインシュタイン、cv. Einstein)の種子を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、植物を温室中で生育させた(実施例1で説明したとおり)。種子処理の後7週間で、各植物上に蛾(スポドプテラ・エクゼンプタ、Spodoptera exempta)の2頭の芋虫を置くことによって、葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫は植物上で3日間摂食させておき、次に、食べられた葉の面積を測定した。芋虫によって消費された葉の面積は、対照よりもJAで処理した種子から生長させた植物で60%低かった(p<0.01の有意性、図10)。対照の種子は適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0129】
図10は、小麦上のスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X10=処理(C=対照、JA=ジャスモン酸処理);及び
Y10=食べられた葉の面積(cm2)。
【実施例8】
【0130】
[実施例8]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv.カルーセル、cv. Carousel)の種子を、脱イオン化したH2O中の3.0mMのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。前の実施例におけるとおり、次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、次に乾燥させ、播種前2ヶ月間、4℃で、冷蔵庫中で乾燥貯蔵した。播種後、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、アブラムシであるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で10日間、摂食させておき、アブラムシ個体数を対照植物と比較した。JAで処理した種子から生長させた植物上での、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図11)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは15回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0131】
図11は、処理した種子を2ヶ月貯蔵後に播種した場合の、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)個体数に対するJA種子処理の影響を示し、図中、説明は以下の通りである:
X11=最初にアブラムシに曝した後の日数;及び
Y11=アブラムシの数(対照の%として処理した)。
【実施例9】
【0132】
[実施例9]
脱イオンH2O中の1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで、24時間、4℃にて、暗所で種子を処理した場合は、UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv カルーセル、cv. Carousel)の種子の発芽がほぼ1日遅くなった。これらの処理は、最終的な発芽の%割合に有意な影響を全く示さなかった。種子を、同じ条件下で0.001〜50mMの広い範囲の濃度のジャスモン酸(JA)で処理した場合は、最終的な発芽の%割合は、10mMを超える濃度によってのみ、有意に低下した(図12)。図示したデータは10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした用量応答である。
【0133】
図12は、播種後7日のトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の種子発芽に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X12=JA濃度(mM log単位);及び
Y12=7日後の種子発芽(%)。
【実施例10】
【0134】
[実施例10]
植物を1週間間隔で収穫した場合の生育と収量の長期試験において、1.5又は3.0mMのJAでの種子処理では、実施例9におけるように、トマト、キュウリ、又はペッパーの栄養増殖及び生殖生長への、あるいは商業的収量へのいかなる有意な影響もなかった。例えば、トマト(cv. カルーセル、cv. Carousel)に対する図示したデータは、各週毎の収穫における植物の草高(図13)、果実の数(図14)、又は果実の乾燥重量(図15)にいかなる有意な影響も示していない。データは8回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした生長応答である。そのフィッティングした生長応答と、二元分散解析(処理x収穫)のいずれも、対照植物と、JA処理した種子から生長した植物との間のいかなる有意な差も示していない。
【0135】
図13は、各週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の草高への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X13=収穫(週数);及び
Y13=草高(cm)(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【0136】
図14は、各週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の一植物体あたりの実の数に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X14=収穫(週数);及び
Y14=実の数(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【0137】
図15は、各週の収穫での、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)からの果実乾燥重量に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X15=収穫(週数);及び
Y15=果実乾燥重量(g)(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【実施例11】
【0138】
[実施例11]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル、cv. Carousel)の種子を、脱イオン化したH2O中の3.0mMのジャスモン酸メチル(MeJA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているMeJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、そしてこの農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、処理した種子から生長した植物を、アブラムシであるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で12日間、摂食させておき、この期間にわたって間隔をおいて、アブラムシ個体数を測定した。対照植物と比較して、MeJAで処理した種子から生長させた植物上で、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図16)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、MeJA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは12回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0139】
図16は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数への、MeJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X16=アブラムシに曝した後の日数;及び
Y16=アブラムシ数(対照の%として処理した)。
【0140】
[実施例のまとめ]
実施例1〜11まで、処理した種子から生長させたトマト、甘唐辛子、トウモロコシ(maize)、及び小麦の植物が、播種後の最大で10週間までに曝した場合に、昆虫及びその他の害虫に対して防御されることが観察された(表1)。
【0141】
【表1】
【0142】
表1は、ジャスモン酸又はジャスモン酸メチルで処理した種子から生長させた、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)、甘唐辛子(カプシカム・アンナム,cv ビスケイン(Capsicum annuum, cv Biscayne)、トウモロコシ(cv. アーリゴールド(cv. Earligold))、及び小麦(cv. アインシュタイン(cv. Einstein))の植物をその試験期間後に様々な害虫に曝して、害虫抵抗性を示すことを発見した試験期間を示している。
【0143】
本発明の方法、種子、植物、及び組成物の好ましい態様は、顕著な利点を持ちうることが理解されよう。植物の天然の防御機構、例えば、害虫に対して作用してその生存、摂食、又は害虫の増殖を抑制する防御機構を誘導するために、種子に植物シグナル伝達化学物質(処理剤)を含む処理組成物を適用することによって、農作物の被害を低減することができる。発芽前にそのような組成物を適用することによって、続く苗及び成熟した植物に驚くほど好都合かつ有効なやり方で害虫の攻撃に対抗する準備をさせることができる。この処理組成物の作用様式に鑑みれば、好ましい態様はIPMアプローチにおける主要な役割及び/又は殺虫剤の使用量の低減に主な役割をもつことができると考えられる。
【0144】
種子を処理するための方法及び組成物の好ましい態様は、草食性の節足動物及びその他の害虫に対抗して、続く植物に有効な防護をもたらしうる。そのような防御は、長期にわたって有効でありうる。驚くべきことに、未発芽種子の処理が有効であり、このことはその種子を処理と播種との間にかなりの期間貯蔵することを許容することができる。有利なことには、植物毒性の問題は回避できる。
【0145】
本出願に関連してこの明細書とともに又はこれに先だって共に提出した全ての論文及び文献に注意が向けられ、これらは本明細書とともに公衆の閲覧に対して公開されており、全てのそのような論文及び文献の内容は、参照により本願に援用する。
【0146】
本明細書中に開示した全ての特徴(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)、及び/又はそうして開示された任意の方法又は工程の全ての段階は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくらかが相互に排他的である組み合わせを除いて、いかなる組み合わせで結合してもよい。
【0147】
本明細書に開示された各特徴物(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)は、他に明示の記載がない限り、同一の、等価な又は類似した目的を果たす代替のものによって置き換えることができる。したがって、他に明示の記載がない限り、開示した各特徴物は、等価又は類似した特徴物の一般的な系統の一例にすぎない。
【0148】
本発明は上述した態様の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)中に開示した特徴の任意の新規な一つ、又は任意の新規な組み合わせに、あるいは、そのようにして開示された任意の方法又は工程の段階の任意の新規な一つ又は任意の新規な組み合わせに拡張される。
【技術分野】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は植物の保護、特に、種子処理用組成物及びその使用、種子の処理方法、害虫から植物を保護する方法、並びに、種子及び植物に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の病気は、植物病原微生物(例えば、菌類、細菌、又はウイルス)によって引き起こされ、植物病原微生物は休眠状態の種子から成熟した植物までの生育の様々な段階で植物に感染しうる。様々な病原体による攻撃は、急性かつ大規模な組織の壊死から長期の慢性感染まで、広範囲な様々な病気をもたらす。農作物の害虫には広範囲の動物が包含されるが、多くは、線虫及び節足動物、例えば昆虫又はダニ類を含めた無脊椎動物である。これらの害虫は植物組織を餌にし、様々な害虫が様々な方法で様々な組織を攻撃する。例えば、過激な線虫は、個々の根の細胞の内容物を吸い取ることがある一方で、大きな昆虫害虫は、葉の大きな範囲をかじり取ることがある。
【0003】
栽培実務、例えば、輪作及び衛生はひとまず別にして、多くの農作物保護は、害虫又は病害を引き起こす病原菌に直接毒性のある薬剤(農薬、これは害虫と病害の両方に対して用いる薬剤に用いる用語である)の適用に頼っている。例えば、害虫は、殺虫剤又は殺線虫剤を用いて処理し、病害は、抗微生物剤、例えば抗カビ剤又は抗菌剤で処理することができる。感染又は攻撃の部位に応じて、農薬を、葉への噴霧、土壌浸液、又は種子処理を含めた多くの方法で農作物に適用できる。適用方法に関わらず、従来の農薬は害虫又は病原体との直接の接触を通して作用するか、植物によって吸収されて植物組織が食べられたときにその機能を果たすことができる(例えば、浸透性農薬)。
【0004】
公知の農薬を種子の処理に用いた場合は、種子は、病原体又は害虫を直接に阻害又は妨害するために設計された薬剤で被覆され、これらは種子の上で乾燥させる。そのような処理は、種子、苗、又は根を攻撃する土壌病原体又は害虫に対する直接の防御をもたらすことを多くの場合に目的としている。ほとんどの場合、観察される防御は、一時的であって、その保護剤が、成長の進行とともに、土壌及び根の中で分解、希釈、又は局限されることよって低下する。
【0005】
公知の農薬の欠点は、その多くが非標的種に対しても毒性があり、生物学的多様性の低下をもたらし、有益種、例えば花粉媒介昆虫又は捕食性昆虫を害しさえすることである。加えて、いくつかの公知の農薬の潜在的な人への毒性に関する消費者の懸念がある。
【0006】
遺伝子組み換えが、統合的害虫駆除(Integrated Pest Management, IPM)が用いられてきているのにしたがって、農薬の代替として用いられており、統合的害虫駆除は、栽培実務を、生物学的コントロールの手段としての害虫の寄生生物又は捕食者の使用と組み合わせるものである。しかし、それぞれが欠点をもっている。
【0007】
害虫制御のさらなるアプローチは、植物の自然の防御システを使用することを意図している。植物は、非常に広範囲の環境からの刺激に応答する。応答には、害虫(例えば、草食性動物、例えば昆虫)及び病原体(例えば、菌類、バクテリア、ウイルスなど)に対する防御をもたらすものも含まれる。害虫又は病原体の攻撃に対する植物の応答は、刺激の最初の認識を、最終的には防御へと導く植物細胞中の変化へと結びつける一連の事象によって引き起こされる。したがって、傷に対する、及び害虫/病原体の攻撃に応えて、局所で起こるシグナル伝達経路、植物のまわりの局所的な事象と通じている全組織的シグナル、及びその全組織的シグナルに応答する離れたところの細胞中に生じるシグナル伝達経路を伴って、引き起こされる局所的及び全組織的事象がある。
【0008】
植物のシグナル伝達分子は、環境刺激に対するこれら誘発された応答において中心的役割を演じており、なぜなら、それらの分子は、攻撃を植物内での内部的最終効果に結びつける中間分子シグナルとして作用するからである。例えば、様々な植物種において、ジャスモン酸は、傷害又は草食性動物の攻撃に続いて一時的に蓄積されることが知られており、かつ、傷害に反応する遺伝子の活性化と結びつけられている。別な例は、植物と病原体との相互作用の間に、サリチル酸は量が増加することが知られており、局所及び全組織的に獲得された抵抗性(systemic acquired resistance; SAR)と病気抵抗性にかかわる防御関連遺伝子の活性化の中心的調節因子であると考えられている。
【0009】
ジャスモン酸(JA)は、農作物(例えばトマト(ソラナム・リコペルシカム Solanum lycopersicum)及びブドウのつる)に害虫抵抗性を誘導するために、外からの葉への噴霧として適用されている。しかし、JA又はその誘導体のそのような葉(及び根)への適用は、例えば、植物毒性を引き起こすことによって農作物に直接ダメージを引き起こす傾向があり、商業的に実施するためには費用がかかりすぎる。
【0010】
米国特許第5977060号明細書は、アーウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)のハーピンタンパク質(Harpin protein)を用いて、農作物中に敏感かつ全組織的に取得された抵抗性応答を誘発させ、ウイルスに対する病気抵抗性並びに初期の苗の生育を攻撃する土壌の菌類、線虫、及びいくらかの昆虫に対する防御をもたらすことを開示している。しかし、種子の浸漬によるもたらされる昆虫への抵抗性は、アブラムシ、すなわち、樹液を摂取する節足動物に制限されるように思われる。この浸漬は播種前に適用され、植物保護は種子の浸漬から苗へと持ち越されることによって、効果的にはそのタンパク質を苗に直接適用することによって、実際にもたらされると思われる。ハーピンは、多くの地域でその使用が大きな制限を受けうる遺伝子操作の結果であるという欠点も持っている。
【0011】
発芽豆とメロン種子へ適用される種子浸漬剤としてのジャスモン酸の使用は、真菌病に対する防御を提供する目的のためだけにしか知られていない。植物にもたらされる防御は限定的なものであり、発芽した苗に直接移ったジャスモン酸から生じるようである。
【0012】
国際公開WO02055480号パンフレットは、昆虫を含めた病原体に対する耐性を誘導することにおけるコロナロン及び関連化合物の適用に関する。コロナロンはコロナチンの(化学的に合成された)人工的類似体であり、コロナチンはJAアミノ酸複合体の類縁体であり、同じではないが、JAに類似した生物学的活性を有している。しかし、コロナロンは生育しつつある植物に適用されており、したがって、この開示はJAの葉への噴霧とは少し異なる。
【0013】
国際公開WO0141568号パンフレットは、害虫を追い払い且つ有益な昆虫を誘引する植物揮発成分放出を誘発させるための、シスジャスモン噴霧の使用を開示している。ここでも、これは生長しつつある植物に直接適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5977060号明細書
【特許文献2】国際公開WO02/055480号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO01/41568号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、本明細書で議論していようとそうでなかろうと、従来技術に伴う少なくとも1つの欠点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
〔本発明のまとめ〕
本発明の第一の面によれば、種子を種子処理用組成物で処理し、前記種子から生長した植物に1種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導し、それにより、害虫による植物の被害を低減する方法を提供し、本方法は、種子に上記処理用組成物を適用する工程を含む。
【0017】
好ましくは、本方法は、発芽していない種子に上記処理用組成物を適用する工程を含む。適切には、本発明は上記処理用組成物を、次に発芽しうる未発芽種子に適用する工程を含む。あるいは、本方法は、上記処理用組成物を発芽種子に適用する工程を含んでもよい。
【0018】
本明細書で用いるように、用語「害虫」は「病気」を含まない。特に、用語「害虫」からは、菌類、バクテリア、及びウイルスを含めた病原体は除かれる。用語「害虫」には、線虫、軟体動物、及び節足動物、例えば、昆虫及びダニ、を含めた無脊椎動物が含まれる。
【0019】
適切には、害虫には草食性害虫が含まれる。適切には、害虫には草食性無脊椎動物が含まれる。害虫には線虫及び/又は軟体動物及び/又は草食性節足動物を含めることができる。あるいは、又は加えて、害虫には脊椎動物、例えばウサギを含めることも出来る。害虫には葉を餌にする害虫を含めることができる。害虫には樹液を餌にする害虫を含めることができる。したがって、誘発された植物抵抗機構は、樹液及び/又は葉を食べる害虫による植物の被害を低減するように作用しうる。あるいは、又は加えて、害虫にはその他の植物部位を餌にする害虫を含めることができ、誘発された植物抵抗機構はそのような害虫に対抗するように作用しうる。本方法/本処理用組成物は、病原体、例えば菌類、バクテリア、及びウイルスを含めた病気に対する、並びに害虫に対する防御をもたらしうる。
【0020】
本明細書で用いるとおり、「種子処理用組成物」の用語には、種子被覆(種子コーティング)及び種子浸漬用組成物が含まれる。
【0021】
適切には、種子処理用組成物は、種子浸漬を含む。したがって、本方法は、種子を、種子処理用組成物に浸漬することによって種子を処理する方法を含むことができる。
【0022】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)、又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、あるいはJA依存性の草食動物抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択された処理剤(適切には植物のシグナル伝達化学物質)を含み、それには、ジャスモン酸又はそのジャスモン酸塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合体(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類(esters)及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類(esters);コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物が含まれる。
【0023】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物からなる群から選択される処理剤を含む。
【0024】
適切には、本処理用組成物は、ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸(12-oxo-phytodienoic acid);コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル)からなる群から選択される単一の処理剤を含む。
【0025】
適切には、本処理用組成物は、処理剤としてジャスモン酸(JA)を含む。好適には、本処理用組成物は、単一の処理剤としてジャスモン酸(JA)を含む。
【0026】
適切には、本処理用組成物は、処理剤としてジャスモン酸メチル(MeJA)を含む。本処理組成物は、単一の処理剤としてジャスモン酸メチル(MeJA)を含むことができる。
【0027】
ジャスモン酸(JA)は、植物における、草食動物の攻撃に対する応答の普遍的な調節因子であると考えられる。それは長距離の植物防御シグナル伝達経路の一部を形成し、外部から(葉の組織又は根に)適用した場合には、攻撃の時に生じる被害及び将来の攻撃の可能性を低下させる目的のために、節足動物及びその他の害虫に対する防御関連応答を誘導しうる。JAの生合成へと導くオクタデカノイド経路は、植物防御応答の活性化に関連づけられることが理解されている。
【0028】
しかし、害虫の攻撃に対して誘導された植物防御の現在の理解を前提とすれば、防御システムを誘導する化合物を種子に適用することが、長期にわたって害虫から、生長しつつある植物を防御することは予想されない。種子から生長しつつある植物への遷移には、大きな代謝の再プログラム化と、種子には存在しない組織の生成を、生長点形態においてすら必要とする。これにも関わらず、草食昆虫に対するジャスモン酸介在防御応答(これは本発明によって誘導されうる)は、驚くほど有効でありうる。さらに意外なことに、処理した種子の続く発芽は、この処理方法によって実質的に抑制されないであろう。
【0029】
驚くべきことに、本発明者は、種子に処理用組成物を適用することが、処理した種子から発芽した植物において害虫を標的とする自然防御構成因子を誘導しうることを発見した。これは、発芽後のかなりの時間その状態に保つことができ、これは全く予期しないことである。これは、処理剤を低濃度で種子に適応した後でさえ、そうであり、活性化合物が自然に分解した後長く、何週間にもわたって持続する害虫制御をもたらしうる。予期せぬことに、未発芽種子に適用した場合、防御は、続いて生長する植物に誘導されうることを発見した。
【0030】
適切には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られている)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0031】
好適には、上記種子処理用組成物は、水性組成物を含む。この処理用組成物は、非水溶媒、適切にはアルコール、例えばエタノールを含有しうる。
【0032】
適切には、処理用組成物は、処理剤、例えばジャスモン酸を、少なくとも10μM、例えば1mM以上の濃度で含む。この処理用組成物は、処理剤、例えばジャスモン酸を、10μM〜50mM、適切には0.1mM〜15mM、例えば1mM〜5mMの濃度で含みうる。この処理用組成物は、処理剤を10mM以下の量で含みうる。
【0033】
本処理用組成物は、処理剤を、少なくとも0.1mM、例えば、少なくとも、0.5mM;1.0mM;1.5mM;2.0mM;2.5mM;3.0mM;3.5mM;4.0mM;4.5mM;5.0mM;6.0mM;7.0mM;8.0mM;9.0mM;又は10mMの量で含みうる。
【0034】
本処理用組成物は、処理剤を、15mM以下、例えば、14mM、13mM、12.5mM、12.0mM、11.5mM、11.0mM、10.5mM、10.0mM、9.5mM、9.0mM、8.0mM、7.0mM、又は6.0mM以下の量で含みうる。
【0035】
本処理用組成物は、非水溶媒、好適にはアルコールを、少なくとも1mMの濃度で含みうる。本処理用組成物は、非水溶媒、好適にはアルコールを、1mM〜100mM、好適には10mM〜100mM、例えば30mM〜50mMの濃度で含みうる。
【0036】
好適には、本処理用組成物は、水と処理剤と好適にはさらに非水溶媒、好適にはアルコール、をさらに含む。好適には、処理用組成物の少なくとも95質量%、例えば少なくとも99質量%が、水、処理剤、及びアルコールからなっていてよい。好適には、この処理用組成物は、水、処理剤、及びアルコールのみからなる。本処理用組成物は、水、エタノール、及びジャスモン酸のみからなることができる。
【0037】
好適には、本方法は、種子処理用組成物を、休眠種子であってよい未発芽種子に適用することを含む。
【0038】
好適には、本方法は、発芽を妨げる条件下で、種子処理用組成物を種子に適用することを含む。この種子処理用組成物は、低温及び/又は暗闇の条件下で、種子に適用されうる。
【0039】
好適には、種子処理用組成物は、種子に、10℃以下、例えば、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、又は4℃、又はそれ未満の温度にて適用される。好適には、種子は処理工程の間を通して、そのような温度に保たれる。
【0040】
好適には、本方法は、冷たい温度、適切には10℃未満であるが処理用組成物の凝固点よりは高い温度を用いて、処理の間、未発芽状態に種子を保つことを含む。
【0041】
適切には、本方法は、1時間以上のあいだ、適切には少なくとも6時間、例えば少なくとも12時間、種子を処理用組成物と接触させておくことを含む。好適には、本方法は、1時間〜72時間、好適には6時間〜48時間、例えば約24時間、種子を種子処理用組成物に接触させておくことを含む。
【0042】
好適には、処理用組成物は、種子に適用される液体、例えば、種子浸漬液を含む。好適には、この処理用組成物は、液体として適用されるジャスモン酸を含む。
【0043】
あるいは、処理用組成物は、ダスト状、粉末、スラリー、又は蒸気として適用されうる。処理剤には、例えば、蒸気として適用されるジャスモン酸メチルが含まれる。
【0044】
粉末として適用する場合は、処理用組成物は展着剤を含むことができる。スラリーとして適用する場合は、スラリーは、水和性粉末、水分散性粉末、又はマイクロカプセル封入剤/カプセル懸濁液のいずれかを含んでよい。液体として適用する場合は、濃縮物は、種子への適用の前に希釈を必要としうる。ジャスモン酸又はジャスモネートに由来する種子コーティング剤は、例えば、液体として容易に適用されうるが、適用しすぎを避けるためにクレーなどのフィラーで充分に希釈した場合には、ダスト状又はスラリーとして適用することもできる。
【0045】
種子を処理用組成物でコーティングするためには、その組成物は種子と機械的にブレンドされて均一な被覆を確実にし、いかなる水分も、時期尚早の発芽を引き起こすことを避けるために蒸発することが推奨されうる。コーティング法の変形には、いくつかの異なる処理(これらの処理がそれらの適用手段に関して適合性がある場合)を、配合物を介して同時に種子に適用すること、又はいくつかの異なる処理を順次適用して、ペレット化として公知の方法で一連の処理層を構築することを含みうる。粉が取り払われることに抗して種子をシールするために、また必要な場合には、識別のために種子を着色するために、いくつかの周知のポリマー又はその他のコーティングのうちの一つが適用されてもよい。
【0046】
好適には、本方法は、部分的に又は完全に、最も好適には完全に種子を処理用組成物中に浸すことによって、種子を浸漬することを含む。好適には、本方法は、処理用組成物に種子を浸し、そうして、上に詳述したように、種子を少なくとも1時間のあいだ、組成物と接触させておく。
【0047】
好適には、本方法は、種子への処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることを含む。この方法は、種子を自然に乾燥させておくことを含みうる。あるいは、本方法は、種子を乾燥させるために熱をかけることを含みうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。
【0048】
本方法は、種子への処理用組成物の適用に続いて種子を洗浄することを含むことができる。本方法は種子を水で洗うことを含みうる。本方法は、部分的又は完全に、最も好適には完全に、種子を水中に浸漬することを含みうる。本方法は、種子に処理用組成物を適用する工程と、種子を乾燥させる工程との間で、種子を洗浄することを含みうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて且つ発芽の前に種子を洗浄することは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。
【0049】
好適には、本方法で処理した種子は、播種する前に少なくとも24時間貯蔵しうる。好適には本方法で処理した種子は、使用前に、未処理の種子と実質的に同じ方法で貯蔵することができる。処理した種子は、発芽が開始される前に少なくとも24時間、好適には少なくとも72時間、例えば、1週間以上、貯蔵しうる。処理した種子は、例えば、播種される前、且つ発芽が始まる前1ヶ月以上、貯蔵しうる。好適には、処理用組成物の適用に続いて且つ発芽の前に種子を貯蔵することは、植物抵抗機構の誘導を妨げない。したがって、処理した種子は、発芽の前1週間以上の間、植物抵抗機構の誘導を妨げることなく、貯蔵されることができる。
【0050】
好適には、本方法で処理された種子は、単子葉植物又は双子葉植物のものである。好適には、本方法で処理された種子は、園芸又は農作物のものである。農作物は商業目的のために育成される農作物であってよい。
【0051】
好適には、本方法は、処理用組成物を適用し、それにより、処理した種子から生長した植物における害虫抵抗性が、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0052】
好適には、この防御機構は、種子の処理によって生じる。好適には、害虫に対する耐性は、処理した種子から発芽する植物への本組成物の残留だけによって生じるのではない。この防御機構は、種子から発芽しつつある植物への処理用組成物の持ち越しによるのではなく、むしろ種子の処理によって誘導されうる。
【0053】
好適には、本発明によって処理した種子から発芽した植物は、発芽後少なくとも1週間において、好適には少なくとも2週間、例えば、発芽後3、4、5、6、7、又は8週間もしくはそれより後において、害虫被害に対する抵抗性を示しうる。
【0054】
好適には、本方法によって処理した種子から発芽した植物は、未処理の種子から発芽した、それ以外は同等の植物よりも、害虫被害に対するさらに大きな抵抗性を、発芽後少なくとも1週間において、好適には発芽後少なくとも2週間、例えば3、4、5、6、7、又は8週間あるいはそれより後において示しうる。
【0055】
好適には、本方法によって処理した種子から発芽した植物における害虫防御機構は、害虫の生存の低下及び/又は害虫による植物被害の低減及び/又は害虫の繁殖の減少によって作用しうる。
【0056】
本種子処理用組成物は、種子から生長した植物における、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導でき、これが害虫の生存及び/又は害虫数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限する。
【0057】
好適には、本方法にしたがって処理した種子から発芽した植物の近傍内にある植物も、害虫による植物被害の危険が低下しうる。好適には、本発明によって処理した種子からの植物によって生産される植物揮発性シグナル伝達化合物の生産が、近くの未処理植物における害虫被害に対する抵抗性をもたらしうる。
【0058】
好適には、処理した種子から発芽した植物における植物毒性に伴う問題は全くない。
【0059】
好適には、この処理方法は、実質的に、処理した種子から生長した植物、又はその植物が生長して作り出す農作物の収量もしくは品質、への悪影響を引き起こすことを回避する。好適には、本方法は、処理した種子から生長した植物における植物毒性を実質的に回避するような方法である。
【0060】
本方法は、これ以後に記載するとおり、第三の側面による組成物で種子を処理することを含みうる。
【0061】
本発明の第二の側面によれば、害虫被害に対する植物の抵抗性が育ちうる種子を提供し、その種子は、その種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物で処理した種子を含む。
【0062】
好ましくは、種子は、未発芽種子を含む。好適には、この種子は、引き続き発芽しうる未発芽種子を含む。
【0063】
好適には、種子は、第一の側面の方法にしたがって処理した種子を含む。この種子は、以下に記載するとおりの第三の側面にしたがう組成物で処理した種子を含みうる。
【0064】
好適には、種子は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含む。
【0065】
植物は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。害虫は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。種子処理用組成物は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。植物防御機構は、第一の側面に関連して記載したいずれかの特徴を含みうる。
【0066】
本発明の第三の側面によれば、処理した種子から生長した植物に、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導させるために種子を処理し、それにより、害虫による植物被害を制限するための種子処理用組成物を提供する。
【0067】
好適には、この処理用組成物は、上記第一の側面による方法で用いられるように準備される。
【0068】
好適には、この処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、又はJA依存性の、草食動物への抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択され、それには以下が含まれる:ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩、例えば、ジャスモン酸カリウムもしくはジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」)、ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物。
【0069】
好適には、処理用組成物は、下記の群から選択される処理剤を含む:ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物。
【0070】
好適には、本処理用組成物は、ジャスモン酸(JA)を処理剤として含む。
【0071】
好適には、本処理用組成物は水性組成物を含む。本処理用組成物は非水溶媒、好適にはアルコール、例えば、エタノール、を含んでもよい。
【0072】
好適には、本処理用組成物は、水と、処理剤と、好適にはさらに非水溶媒、好適にはアルコールとを含む。好適には、本処理用組成物は、実質的に、水、処理剤、及び非水溶媒のみからなる。好適には、本処理用組成物は、実質的に、水、処理剤、及びアルコールのみからなる。
【0073】
好適には、本処理用組成物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含む。
【0074】
種子は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。種子は未発芽種子であってよい。植物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。害虫は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。植物防御機構は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含みうる。
【0075】
本発明の第四の側面によれば、害虫被害に対する抵抗性を植物にもたらす方法を提供し、この方法は、種子処理用組成物を種子に適用し、続いてその種子から植物を生長させ、ここで上記処理用組成物が、その処理した種子から生長した植物において、一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導させ、それによって害虫による植物被害を制限(低減)する。
【0076】
好適には、上記植物は、未処理の種子から生長した以外は同等の植物よりも、害虫に対する、より大きな抵抗力を含む。
【0077】
好ましくは、本方法は、処理用組成物を未発芽種子に適用することを含む。好適には、本方法は、続いて発芽しうる未発芽種子に処理用組成物を適用することを含む。あるいは、本方法は、発芽しつつある種子に処理用組成物を適用することを含みうる。
【0078】
好適には、本方法は、第一の側面の方法にしたがって種子を処理することを含む。本方法は、上記第二の側面にしたがう種子を用いることができる。本方法は、上記第三の側面にしたがう処理用組成物を用いることができる。
【0079】
本方法は、処理用組成物で種子を処理し、次に発芽前にその種子を洗浄及び/又は乾燥及び/又は貯蔵することを含むことができる。
【0080】
処理(これには、洗浄及び/乾燥を含めることができる)に続いて、本方法は、公知の未処理の種子と実質的に同様の方法で、処理した種子を取り扱うこと(これには貯蔵を含めることができる)を含むことができる。
【0081】
好適には、植物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含む。
【0082】
好適には、本方法によって作った植物は、オキシリピン経路(これはジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路ともいわれる)によって調節される防御機構によって生じた対昆虫抵抗性を示す。
【0083】
種子は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。害虫は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。上記種子処理用組成物は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。植物防御機構は、上記第一の側面に関連して説明したいずれかの特徴を含むことができる。
【0084】
本発明の第五の側面によれば、害虫被害に抵抗性の植物を提供し、植物には上記第四の側面による方法によって準備した、及び/又は上記第二の側面による種子から生長した、及び/又は上記第一の側面の方法にしたがって処理した種子から生長した、及び/又は上記第三の側面にしたがう組成物で処理した種子から生長した植物が含まれる。
【0085】
第五の側面は、第一、第二、第三、又は第四の側面と関連して説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0086】
本発明の第六の側面によれば、植物への害虫被害の制限方法を提供し、この方法は、前記植物を第五の側面による植物の近くに配置することを含む。
【0087】
上記第六の側面は、上記第一、第二、第三、又は第四の側面と関連して説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0088】
本発明の第七の側面によれば、種子を処理するための種子処理用組成物の使用を提供し、それはその種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導させるためであり、それによって害虫による植物被害を制限(低減)させる。
【0089】
好適には、本種子処理用組成物は、上記第三の側面による組成物を含む。
【0090】
好適には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(これはまたジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0091】
第七の側面は、上記第一、第二、第三、又は第四の側面との関連で説明したいずれかの特徴を用いることができる。
【0092】
本発明の第八の側面によれば、種子を処理するための種子処理用組成物の使用を提供し、これは、害虫の生存及び/又は害虫の数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限(低減)するために、その種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導するためである。
【0093】
好適には、本処理用組成物は、上記第三の側面による組成物を含む。
【0094】
好適には、害虫に対する抵抗性は、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる。
【0095】
第八の側面は、第一、第二、第三、又は第四の側面との関連で説明したいずれかの特性を用いることができるが、そのような特性が相互に排他的である場合を除く。
【0096】
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、付属する図面を参照して、例を使って説明される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、トマトの苗へのハダニの被害に対する、JA種子処理の効果を示している。
【図2】図2は、ハダニの個体数に対するJA種子処理の効果を示している。
【図3】図3は、ハダニ集団による産卵数へのJA種子処理の影響を示している。
【図4】図4は、マンドゥカ・セクスタ(Munduca sexta)の芋虫による草食へのJA種子処理の影響を示す。
【図5】図5は、甘唐辛子におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)へのJA種子処理の影響を示す。
【図6】図6は、すぐ近くの未処理の植物におけるハダニの個体数への、JA種子処理の影響を示す。
【図7】図7は、すぐ近くの未処理の植物におけるハダニの繁殖への、JA種子処理の影響を示す。
【図8】図8は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数への、JA種子処理の影響を示している。
【図9】図9は、トウモロコシでのスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示す。
【図10】図10は、小麦でのスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示す。
【図11】図11は、処理した種子を、2ヶ月の貯蔵の後で播種した場合の、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数へJA種子処理の影響を示す。
【図12】図12は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の種子発芽へのJA種子処理の影響を示す。
【図13】図13は、週毎の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の植物の草丈への、JA種子処理の影響を示す。
【図14】図14は、週毎の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」)の植物当たりの実の数への、JA種子処理の影響を示す。
【図15】図15は、毎週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))の果実乾燥質量に対する、MeJA種子処理の影響を示す。
【図16】図16は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))におけるアブラムシ(ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae))の個体数へのMeJA種子処理の影響を示す。
【0098】
〔本発明の詳細な説明〕
[ジャスモン酸(JA)及びジャスモン酸メチル(MeJA)の溶液の調製]
ジャスモン酸(JA)及びジャスモン酸メチル(MeJA)の溶液は、種子の処理の直前に調製した。
【0099】
ジャスモン酸溶液を調製するために、250mgのJAを1mLのエタノールに溶かし、脱イオン水で400mLの体積に増やして、42.8mMのエタノール中の3mMのJAの溶液を得た。それは以下の通りである:
1. JA(シグマ-アルドリッチ社)の250mg試薬瓶中のジャスモン酸の塊を、試薬瓶のラベルから記録をとった。
2. そのラベルを除去し、その試薬瓶の外側から全ての接着剤をアセトンを用いて除去した。
3. 5分間その試薬瓶を乾燥させておいた後、最寄りのmgに秤量した。
4. 500mLのメスフラスコをその標線まで脱イオン水で満たした。
5. そのメスフラスコから1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して5mLの水を取り除き、次に分析用100mLピペットを使用してさらに100mLを取り除いた。
6. JAの試薬瓶に、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して1mLのエタノールを添加し、試薬瓶の蓋をし、さらに、試薬瓶を振盪してJAを溶かした。JAが水に直接溶けないので、エタノールの使用が必要である。
7. 次に、試薬瓶の内容物を、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して500mLのメスフラスコに移した。
8. 1mLの脱イオン水を、1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して空の試薬瓶に添加し、試薬瓶の蓋をして、試薬瓶を再度激しく振盪した。
9. 次に、試薬瓶の内容物を1000μLのギルソン(Gilson)ピペットを使用して上記の500mLのメスフラスコに移した。
10. ステップ8及び9をさらに3回繰り返した。
11. メスフラスコ(この時点で400mLの液体と250mgのJAが入っている)に栓をして、激しく振盪した。
12. 上記試薬瓶を150℃のオーブン中で一定質量になるまで乾燥させて、その質量を記録した。
13. メスフラスコ中のJAの濃度を、上記試薬瓶の2つの質量測定の質量差から計算した。
【0100】
1.5mMのJA溶液は、上記の3mMのJA溶液を、42.8mMのエタノールを含む脱イオン水で2倍に希釈することによって調製した。様々なその他の濃度を、例9のために、適切に加減した量を用いて上記方法にしたがって調製した。
【0101】
3.0mMのMeJA溶液を、上述したものと実質的に同じ方法によって調製したが、JAに変えてMeJAを用いた。MeJA溶液を調製するために、269mgのMeJAを1mLのエタノールに溶かし、脱イオン水で400mLの体積にし、42.8mMのエタノール中の3mMのMeJAの溶液を得た。
【0102】
〔種子処理−概説〕
トマト、ペッパー(pepper)、トウモロコシ(maize)、及び小麦の種子を、3mMのJA又は1.5mMのJAの溶液、あるいは3mMのジャスモン酸メチル(MeJA)、あるいは42.8mMのエタノールを含む脱イオン水(対照)で処理したが、これはホイルで覆ったペトリ皿の溶液中で、24時間、冷蔵庫中4℃で、40までの種子を完全に浸漬させることによって行った。4℃の温度は、ジャスモン酸溶液の分解の防止と、種子の発芽防止の両方のために採用した。
次に、処理溶液から種子を取り出して、1リットルの脱イオン水で5分間洗浄して、種子の外側をコーティングしたJA又はMeJAを除去した。
【0103】
〔トマト、ペッパー、トウモロコシ、及び小麦の生長と試験〕
トマトの種子を石綿ブロック中に播き、泥炭(ピート)系コンポスト上で、温室中、12℃〜28℃で、16時間の光と8時間の暗闇のサイクルの人工照明下で、48日、56日、又は70日、生育した。
【0104】
ペッパーの種子は泥炭系コンポストに播き、夏の環境条件下で、加温していない温室中で生育した。
【0105】
小麦とトウモロコシの種子は泥炭系コンポストに播き、秋に、補助照明(600WのSON−Tランプ、1日当たり16時間)を用いて、加温していない温室中で生育した。
【0106】
次に、トマト植物体を、テトラニカス・ウルチカエ(Tetranychus urticae)(ナミハダニ、two-spotted spider mite)(これは9日間、飼っておいた)、マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)(タバコ・ホーンワーム)(これは4日間、飼っておいた)、又はミズス・ペルシカエ(Myzus persicae))(アブラムシ)(これは10又は12日間、飼っておいた)を用いて試験を行った。それぞれの場合に、これらの生物はそれらが最初にその上に置かれた植物に制限した。ペッパー植物体は、ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae) (アブラムシ)(これは2週間、飼っておいた)を用いた試験した。トウモロコシと小麦の植物体は、スポドプテラ・エグゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫(これは2日(トウモロコシ)又は3日(小麦)、飼っておいた)を用いた試験した。
【0107】
植物体へのテトラニカス・ウルチカエ(Tetranychus urticae)の影響は、各植物上の生きたハダニ及び死んだハダニの数と、解剖顕微鏡を使用してハダニの卵の数とを数えることによって評価した。
【0108】
植物体へのミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の影響は、各植物上のアブラムシの個体数を解剖顕微鏡下、10倍の倍率で数えることによって評価した。
【0109】
植物体へのマンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)又はスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の影響は、食べられた葉の面積の測定によって評価し、これは、葉面積計を使用して測定した。
【実施例1】
【0110】
[実施例1]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル)を、脱イオンH2O中の1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで、24時間、4℃で、暗所にて処理した。次にそれらの種子を溶液から取り出し、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗った。次に、それらの種子を、ロックウォールブロックを用いる商業的方法で播種し、この農作物に適切な温室条件下で生育した。植物を、普通の農作物害虫であって、ここでは「モデル草食動物」として働くナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、Tetranychus urticae)に、処理の後の7週間後に曝した。
【0111】
アカハダニ(red spider mite)の攻撃によって引き起こされた肉眼で分かる被害(この害虫による摂食活動による葉の表面の特徴的な淡色の剥離)は、大幅に低減された(図1−対照及び3.0mMのJAのみ)。誘導され、観察された抵抗性は、種子へのJAの適用後8週間でさえ顕著だった。
【0112】
対照植物上の個体数と比較して、JA処理した種子から生長させた植物の葉の上のナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、tetranychus urticae)の個体数の顕著な低下も観察された(図2)。対照植物は、全てのJA処理した植物から少なくとも10m離して配置し、図示したデータは10回の繰り返しの平均±標準誤差である。
【0113】
対照植物と比較して、産卵によって測定したそのハダニの繁殖速度に顕著な低下があることがさらに観察された(図3)。対照植物は、全てのJA処理した植物から10m離して配置し、図示したデータは10回の繰り返しの平均±標準誤差である。
【0114】
図2は、ハダニ個体数に対するJA種子処理の効果を示しており、図中の説明は以下の通りである。
X2=種子処理のJA濃度(mM);及び
Y2=生存しているハダニの数。
【0115】
図3は、ハダニ集団による産卵に対する、JA種子処理の効果を示し、図中の説明は以下のとおりである。
X3=種子処理のJA濃度(mM);及び
Y3=成虫の雌1頭当たりが産んだ卵。
【実施例2】
【0116】
[実施例2]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル(cv.Carousel))を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(実施例1のもとでの記載どおり)。種子処理後8週間で、処理した種子から生長させた植物を、2頭の3令のガ(マンドゥカ・セクスタ、Manduca sexta)の芋虫(タバコイモムシ)を第5番目の葉の上に置くことによって、葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫はその植物の上で、4日間、摂食させておき、次に食べられた葉の面積を測定した。草食後に残った葉の面積は、対照と比較して、JAで処理した種子から生長させた植物で顕著に高かった(図4)。加えて、JAで処理した種子から生長させた植物の葉を食べた芋虫は、対照を餌にしたものよりも20%低くしか生長していなかった。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保っておいた。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0117】
図4は、マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)のイモムシによる摂食に対する、JA種子処理の影響を示し、図中、説明は以下の通りである:
X4=種子処理(C=対照での処理、及びJA=ジャスモン酸での処理);及び
Y4=摂食後の葉の面積(cm2)。
【実施例3】
【0118】
[実施例3]
この試験では、甘唐辛子の種子(カプシカム・アンナウム、cv ビスケイン;Capsicum annuum, cv Biscayne)を1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説で説明したとおりである)。種子処理後8週間で、処理した種子から生長させた植物を、ミズス・ペルシカエ、Myzus persicaeに曝した。アブラムシは、その植物の上で2週間、摂食させておき、この期間にわたるアブラムシ個体数の増大を次に測定した。JAで処理した種子から生長させた植物上でのアブラムシ個体数の増大の速度に顕著な低下があった(p<0.001)(図5)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした生長曲線であり、これは対照に対して0.19±0.011、JA処理したものに対して0.11±0.016の個体数増加速度を与える。
【0119】
図5は、甘唐辛子(カプシカム・アンナウム、Capsicum annum)におけるミズス・ペルシカエ、Myzus persicaeへの、JA種子処理の影響を示しており、図5において、説明は以下のとおりである:
X5=アブラムシを導入後の日数;及び
Y5=アブラムシ数(C=対照処理、JA=ジャスモン酸処理)。
【実施例4】
【0120】
[実施例4]
トマト(cv. カルーセル(cv. Carousel))の植物を同じ条件下で生長させ、実施例1のもとで説明したとおりに、ナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、tetranychus urticae)に曝した試験では、JA処理は受けていないが、1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)で処理した種子から生長させた植物に隣接して生長させた植物上で、T. urticaeの個体数の顕著な低下があった。この効果は、少なくとも10メートル離れて配置した対照と比較して観測された(図6)。図示したデータは10回の繰り返し試験の平均±その平均の標準誤差である。
【0121】
JA処理を受けていないが、1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)で処理した種子から生長させた植物に隣接して生長した植物で、ハダニの(産卵によって測定した)増殖速度の顕著な低下も観察された。ここでもこの効果は、少なくとも10メートル離れて配置した対照と比較して観察された(図7)。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0122】
図6は、近くの未処理の植物における、ハダニ個体数へのJA種子処理の影響を示しており、その説明は以下のとおりである:
X6=処理(VC=何もしていない対照、N1.5=1.5mM種子処理の近隣、及びN3.0= 3.0mMの種子処理の近隣);及び
Y6=生きているハダニの数。
【0123】
図7は、未処理植物近くにおける、ハダニの増殖に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X7=処理(VC=何もしていない対照、N1.5=1.5mM種子処理の近隣、及びN3.0= 3.0mMの種子処理の近隣);及び
Y7=成虫の雌1頭当たりの産卵。
【実施例5】
【0124】
[実施例5]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv.カルーセル(cv. Carousel))を、脱イオンしたH2O中の3.0mMのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、植物をアブラムシ(ミズス・ペルシカエ、Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で12日間、摂食させておき、アブラムシ個体数を対照植物と比較した。JAで処理した種子から生長させた植物上での、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図8)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは15回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0125】
図8は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数へのJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおである;
X8=最初のアブラムシの攻撃後の日数;及び
Y8=アブラムシの数(対照の%として処理した)。
【実施例6】
【0126】
[実施例6]
トウモロコシ(maize)cv アーリゴールド(Earligold)の種子を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、(実施例1のもとに説明したとおりである)温室中で植物を生長させた。穂を出す時期(種子処理後約10週)に、完全に開いた葉の上に蛾(スポドプテラ・エグゼンプタ, Spodoptera exempta)の2頭の芋虫を置くことによって葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫は植物上で2日間、摂食させておき、次に食べられた葉の面積を測定した。芋虫によって消費された葉の面積は、対照よりも、JAで処理した種子から生長させた植物で38%低かった(p<0.05の有意性)。芋虫の単位質量当たり消費された葉の面積として表した場合は、JAで処理した種子から生長させた植物における低下は、なおさらに明言できる(40%、p<0.001、図9)。対照の種子は適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは、12の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0127】
図9は、トウモロコシ(メイズ、maize)上のスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X9=処理(C=対照、JA=ジャスモン酸処理);及び
Y9=芋虫の初期体重1g当たりの消費された葉の面積。
【実施例7】
【0128】
[実施例7]
市販の小麦の品種(cv. アインシュタイン、cv. Einstein)の種子を、1.5mMのジャスモン酸(JA)で処理し、植物を温室中で生育させた(実施例1で説明したとおり)。種子処理の後7週間で、各植物上に蛾(スポドプテラ・エクゼンプタ、Spodoptera exempta)の2頭の芋虫を置くことによって、葉を咀嚼する草食動物に曝した。芋虫は植物上で3日間摂食させておき、次に、食べられた葉の面積を測定した。芋虫によって消費された葉の面積は、対照よりもJAで処理した種子から生長させた植物で60%低かった(p<0.01の有意性、図10)。対照の種子は適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは、10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0129】
図10は、小麦上のスポドプテラ・エクゼンプタ(Spodoptera exempta)の芋虫による草食への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X10=処理(C=対照、JA=ジャスモン酸処理);及び
Y10=食べられた葉の面積(cm2)。
【実施例8】
【0130】
[実施例8]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv.カルーセル、cv. Carousel)の種子を、脱イオン化したH2O中の3.0mMのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。前の実施例におけるとおり、次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、次に乾燥させ、播種前2ヶ月間、4℃で、冷蔵庫中で乾燥貯蔵した。播種後、この農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、アブラムシであるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で10日間、摂食させておき、アブラムシ個体数を対照植物と比較した。JAで処理した種子から生長させた植物上での、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図11)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、JA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは15回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0131】
図11は、処理した種子を2ヶ月貯蔵後に播種した場合の、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)個体数に対するJA種子処理の影響を示し、図中、説明は以下の通りである:
X11=最初にアブラムシに曝した後の日数;及び
Y11=アブラムシの数(対照の%として処理した)。
【実施例9】
【0132】
[実施例9]
脱イオンH2O中の1.5mM又は3.0mMのいずれかのジャスモン酸(JA)と42.8mMのエタノールで、24時間、4℃にて、暗所で種子を処理した場合は、UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv カルーセル、cv. Carousel)の種子の発芽がほぼ1日遅くなった。これらの処理は、最終的な発芽の%割合に有意な影響を全く示さなかった。種子を、同じ条件下で0.001〜50mMの広い範囲の濃度のジャスモン酸(JA)で処理した場合は、最終的な発芽の%割合は、10mMを超える濃度によってのみ、有意に低下した(図12)。図示したデータは10回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした用量応答である。
【0133】
図12は、播種後7日のトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の種子発芽に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X12=JA濃度(mM log単位);及び
Y12=7日後の種子発芽(%)。
【実施例10】
【0134】
[実施例10]
植物を1週間間隔で収穫した場合の生育と収量の長期試験において、1.5又は3.0mMのJAでの種子処理では、実施例9におけるように、トマト、キュウリ、又はペッパーの栄養増殖及び生殖生長への、あるいは商業的収量へのいかなる有意な影響もなかった。例えば、トマト(cv. カルーセル、cv. Carousel)に対する図示したデータは、各週毎の収穫における植物の草高(図13)、果実の数(図14)、又は果実の乾燥重量(図15)にいかなる有意な影響も示していない。データは8回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差であり、線はフィッティングした生長応答である。そのフィッティングした生長応答と、二元分散解析(処理x収穫)のいずれも、対照植物と、JA処理した種子から生長した植物との間のいかなる有意な差も示していない。
【0135】
図13は、各週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の草高への、JA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下の通りである:
X13=収穫(週数);及び
Y13=草高(cm)(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【0136】
図14は、各週の収穫におけるトマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)の一植物体あたりの実の数に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X14=収穫(週数);及び
Y14=実の数(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【0137】
図15は、各週の収穫での、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)からの果実乾燥重量に対するJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X15=収穫(週数);及び
Y15=果実乾燥重量(g)(C=対照、JA=ジャスモン酸処理)。
【実施例11】
【0138】
[実施例11]
UK市販F1ハイブリッドトマト品種(cv. カルーセル、cv. Carousel)の種子を、脱イオン化したH2O中の3.0mMのジャスモン酸メチル(MeJA)と42.8mMのエタノールで24時間、4℃で暗所にて処理をした。次に、これらの種子を溶液から取り出して、種子の外側を被覆しているMeJAを除去するためだけに、脱イオンH2O中で洗浄し、そしてこの農作物に適した条件下で植物を生長させた(概説のもとに記載したとおり)。播種後10週で、処理した種子から生長した植物を、アブラムシであるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)に曝した。アブラムシは、その植物の上で12日間、摂食させておき、この期間にわたって間隔をおいて、アブラムシ個体数を測定した。対照植物と比較して、MeJAで処理した種子から生長させた植物上で、アブラムシ個体数の有意な(p<0.05)低下があった(図16)。対照の種子は、適切なエタノール溶液で処理したが、MeJA処理した種子から生長させた植物の近くに保った。図示したデータは12回の繰り返しの平均±その平均の標準誤差である。
【0139】
図16は、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”))におけるミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)の個体数への、MeJA種子処理の影響を示しており、図中、説明は以下のとおりである:
X16=アブラムシに曝した後の日数;及び
Y16=アブラムシ数(対照の%として処理した)。
【0140】
[実施例のまとめ]
実施例1〜11まで、処理した種子から生長させたトマト、甘唐辛子、トウモロコシ(maize)、及び小麦の植物が、播種後の最大で10週間までに曝した場合に、昆虫及びその他の害虫に対して防御されることが観察された(表1)。
【0141】
【表1】
【0142】
表1は、ジャスモン酸又はジャスモン酸メチルで処理した種子から生長させた、トマト(ソラナム・リコペルシカム cv 「カルーセル」(Solanum lycopersicum cv “Carousel”)、甘唐辛子(カプシカム・アンナム,cv ビスケイン(Capsicum annuum, cv Biscayne)、トウモロコシ(cv. アーリゴールド(cv. Earligold))、及び小麦(cv. アインシュタイン(cv. Einstein))の植物をその試験期間後に様々な害虫に曝して、害虫抵抗性を示すことを発見した試験期間を示している。
【0143】
本発明の方法、種子、植物、及び組成物の好ましい態様は、顕著な利点を持ちうることが理解されよう。植物の天然の防御機構、例えば、害虫に対して作用してその生存、摂食、又は害虫の増殖を抑制する防御機構を誘導するために、種子に植物シグナル伝達化学物質(処理剤)を含む処理組成物を適用することによって、農作物の被害を低減することができる。発芽前にそのような組成物を適用することによって、続く苗及び成熟した植物に驚くほど好都合かつ有効なやり方で害虫の攻撃に対抗する準備をさせることができる。この処理組成物の作用様式に鑑みれば、好ましい態様はIPMアプローチにおける主要な役割及び/又は殺虫剤の使用量の低減に主な役割をもつことができると考えられる。
【0144】
種子を処理するための方法及び組成物の好ましい態様は、草食性の節足動物及びその他の害虫に対抗して、続く植物に有効な防護をもたらしうる。そのような防御は、長期にわたって有効でありうる。驚くべきことに、未発芽種子の処理が有効であり、このことはその種子を処理と播種との間にかなりの期間貯蔵することを許容することができる。有利なことには、植物毒性の問題は回避できる。
【0145】
本出願に関連してこの明細書とともに又はこれに先だって共に提出した全ての論文及び文献に注意が向けられ、これらは本明細書とともに公衆の閲覧に対して公開されており、全てのそのような論文及び文献の内容は、参照により本願に援用する。
【0146】
本明細書中に開示した全ての特徴(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)、及び/又はそうして開示された任意の方法又は工程の全ての段階は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくらかが相互に排他的である組み合わせを除いて、いかなる組み合わせで結合してもよい。
【0147】
本明細書に開示された各特徴物(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)は、他に明示の記載がない限り、同一の、等価な又は類似した目的を果たす代替のものによって置き換えることができる。したがって、他に明示の記載がない限り、開示した各特徴物は、等価又は類似した特徴物の一般的な系統の一例にすぎない。
【0148】
本発明は上述した態様の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の付属する請求項、要約書、及び図面を含める)中に開示した特徴の任意の新規な一つ、又は任意の新規な組み合わせに、あるいは、そのようにして開示された任意の方法又は工程の段階の任意の新規な一つ又は任意の新規な組み合わせに拡張される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子を種子処理用組成物で処理し、前記種子から生長した植物に1種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導し、それにより、害虫による植物の被害を低減する方法であって、種子に前記処理用組成物を適用する工程を含む方法。
【請求項2】
前記種子が未発芽種子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理用組成物が種子浸漬を含み、前記方法が、処理組成物中に種子を浸漬することによって種子を処理する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理用組成物が、ジャスモン酸又はジャスモン酸塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合体(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物を含めた、ジャスモン酸(JA)、又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連する化合物、あるいはJA依存性の草食動物抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択された処理剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理用組成物が、水、処理剤、及び非水溶媒を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非水溶媒がエタノールを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処理用組成物がジャスモン酸(JA)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理用組成物がジャスモン酸メチル(MeJA)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理用組成物が、処理剤を0.1mM〜15mMの濃度で含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
害虫に対する抵抗性が、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られている)によって調節される防御機構によって引き起こされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
冷たい温度を用いることによって、処理の間、未発芽状態に種子を保つことを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1時間以上のあいだ種子を種子処理用組成物と接触させておくことを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
種子への処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
発芽の前1週間以上の間、植物抵抗機構の誘導を妨げることなく、処理した種子を貯蔵することができる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法にしたがって処理した種子から発芽した植物が、発芽後少なくとも7週間において害虫被害に対する抵抗性を示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記害虫が草食性無脊椎動物を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
処理した種子から生長した植物における植物毒性が実質的に回避される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
害虫被害に対する植物の抵抗性が育ちうる種子であって、前記種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物で処理した種子を含む種子。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって処理した種子を含む、請求項18に記載の種子。
【請求項20】
種子を処理する種子処理用組成物であって、前記種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物。
【請求項21】
ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩、例えば、ジャスモン酸カリウムもしくはジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」)、ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物、を含めた、ジャスモン酸(JA)又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、又はJA依存性の草食動物抵抗性経路を活性化するその他の化合物から選択される処理剤を含有する、請求項20に記載の種子処理用組成物。
【請求項22】
水、処理剤、及びアルコールを含有する、請求項20又は21に記載の種子処理用組成物。
【請求項23】
ジャスモン酸(JA)又はジャスモン酸メチル(MeJA)を含有する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の種子処理用組成物。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一項と関連づけて記載したいずれかの特徴を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の種子処理用組成物。
【請求項25】
植物に害虫被害に対する抵抗性を付与する方法であって、種子処理用組成物を種子に適用し、次に前記種子から植物を生長させる工程を含み、前記処理用組成物が、前記種子から生長した前記植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させること、を含む方法。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって種子を処理する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
種子を種子処理用組成物で処理し、次に、発芽前に前記種子を洗浄及び/又は乾燥及び/又は貯蔵する工程を含む、請求項25又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法によって提供される植物が、オキシリピン経路(これはジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路ともいわれる)によって調節される害虫防御機構によって引き起こされる害虫抵抗性を示す方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法及び/又は請求項18又は19に記載した種子から生長した及び/又は請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって処理した種子から生長した及び/又は請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物で処理した種子から生長した植物を含む、害虫被害に抵抗性のある植物。
【請求項30】
植物への害虫被害を低減する方法であって、前記植物を、請求項29に記載の植物の近くに配置することを含む方法。
【請求項31】
種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導させ、それによって害虫による植物被害を低減させるために種子を処理するための種子処理用組成物の使用。
【請求項32】
害虫の生存及び/又は害虫の数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限するため、種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導するための、種子を処理するための種子処理用組成物の使用。
【請求項33】
前記種子処理用組成物が請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
害虫に対する抵抗性が、オキシリピン経路(これはまたジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる、請求項31〜33のいずれか一項記載の使用。
【請求項35】
付属する図面のいずれかに関連して実質的に請求項1〜34のいずれかに説明されている方法、種子、植物、処理用組成物、又は組成物の使用。
【請求項1】
種子を種子処理用組成物で処理し、前記種子から生長した植物に1種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導し、それにより、害虫による植物の被害を低減する方法であって、種子に前記処理用組成物を適用する工程を含む方法。
【請求項2】
前記種子が未発芽種子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理用組成物が種子浸漬を含み、前記方法が、処理組成物中に種子を浸漬することによって種子を処理する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理用組成物が、ジャスモン酸又はジャスモン酸塩類、例えば、ジャスモン酸カリウム又はジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」);ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合体(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体又はL-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファコイル-L-セリン及びコロナファコイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシンのメチルエステル類及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又は、これらの組み合わせ物を含めた、ジャスモン酸(JA)、又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連する化合物、あるいはJA依存性の草食動物抵抗経路を活性化するその他の化合物から選択された処理剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理用組成物が、水、処理剤、及び非水溶媒を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非水溶媒がエタノールを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処理用組成物がジャスモン酸(JA)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理用組成物がジャスモン酸メチル(MeJA)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理用組成物が、処理剤を0.1mM〜15mMの濃度で含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
害虫に対する抵抗性が、オキシリピン経路(ジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られている)によって調節される防御機構によって引き起こされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
冷たい温度を用いることによって、処理の間、未発芽状態に種子を保つことを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1時間以上のあいだ種子を種子処理用組成物と接触させておくことを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
種子への処理用組成物の適用に続いて種子を乾燥させることを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
発芽の前1週間以上の間、植物抵抗機構の誘導を妨げることなく、処理した種子を貯蔵することができる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法にしたがって処理した種子から発芽した植物が、発芽後少なくとも7週間において害虫被害に対する抵抗性を示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記害虫が草食性無脊椎動物を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
処理した種子から生長した植物における植物毒性が実質的に回避される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
害虫被害に対する植物の抵抗性が育ちうる種子であって、前記種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物で処理した種子を含む種子。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって処理した種子を含む、請求項18に記載の種子。
【請求項20】
種子を処理する種子処理用組成物であって、前記種子から生長した植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させるための種子処理用組成物。
【請求項21】
ジャスモン酸又はそのジャスモネート塩、例えば、ジャスモン酸カリウムもしくはジャスモン酸ナトリウム;ジャスモン酸メチルエステル(「メチルジャスモネート」)、ジャスモン酸-L-アミノ酸(アミド結合した)複合物(コンジュゲート)、例えば、L-イソロイシンとの複合体、又は、L-バリン、L-ロイシン、及びL-フェニルアラニンとの複合体;12-オキソ-フィトジエン酸;コロナチン(コロナファシン酸と2-エチル-1-アミノシクロプロパンカルボン酸とのアミド);コロナファソイル-L-セリン及びコロナファソイル-L-トレオニン;1-オキソ-インダノイル-イソロイシン及び1-オキソ-インダノイル-ロイシンのメチルエステル類;コロナロン(2-[(6-エチル-1-オキソ-インダン-4-カルボニル)-アミノ]-3-メチルペンタン酸メチルエステル);又はそれらの組み合わせ物、を含めた、ジャスモン酸(JA)又はオキシリピン類のジャスモネートファミリーの関連するもの、又はJA依存性の草食動物抵抗性経路を活性化するその他の化合物から選択される処理剤を含有する、請求項20に記載の種子処理用組成物。
【請求項22】
水、処理剤、及びアルコールを含有する、請求項20又は21に記載の種子処理用組成物。
【請求項23】
ジャスモン酸(JA)又はジャスモン酸メチル(MeJA)を含有する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の種子処理用組成物。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一項と関連づけて記載したいずれかの特徴を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の種子処理用組成物。
【請求項25】
植物に害虫被害に対する抵抗性を付与する方法であって、種子処理用組成物を種子に適用し、次に前記種子から植物を生長させる工程を含み、前記処理用組成物が、前記種子から生長した前記植物において一種以上の害虫に対する植物防御機構を誘導し、それによって害虫による植物被害を低減させること、を含む方法。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって種子を処理する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
種子を種子処理用組成物で処理し、次に、発芽前に前記種子を洗浄及び/又は乾燥及び/又は貯蔵する工程を含む、請求項25又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法によって提供される植物が、オキシリピン経路(これはジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路ともいわれる)によって調節される害虫防御機構によって引き起こされる害虫抵抗性を示す方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法及び/又は請求項18又は19に記載した種子から生長した及び/又は請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって処理した種子から生長した及び/又は請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物で処理した種子から生長した植物を含む、害虫被害に抵抗性のある植物。
【請求項30】
植物への害虫被害を低減する方法であって、前記植物を、請求項29に記載の植物の近くに配置することを含む方法。
【請求項31】
種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導させ、それによって害虫による植物被害を低減させるために種子を処理するための種子処理用組成物の使用。
【請求項32】
害虫の生存及び/又は害虫の数及び/又は害虫の成長及び/又は害虫の繁殖を制限するため、種子から生長した植物に一種以上の害虫に対する植物の抵抗機構を誘導するための、種子を処理するための種子処理用組成物の使用。
【請求項33】
前記種子処理用組成物が請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
害虫に対する抵抗性が、オキシリピン経路(これはまたジャスモネート経路又はオクタデカノイド経路としても知られる)によって調節される防御機構によって引き起こされる、請求項31〜33のいずれか一項記載の使用。
【請求項35】
付属する図面のいずれかに関連して実質的に請求項1〜34のいずれかに説明されている方法、種子、植物、処理用組成物、又は組成物の使用。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図1】
【公表番号】特表2009−542789(P2009−542789A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518961(P2009−518961)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002611
【国際公開番号】WO2008/007100
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500123706)プラント・バイオサイエンス・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002611
【国際公開番号】WO2008/007100
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500123706)プラント・バイオサイエンス・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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