説明

植物性食用油の廃油燃焼システム

【課題】植物油から食用油を作る為の精製工程において、植物油である食用油の廃油が発生するが、この食用油の廃油が従来は廃棄処分されていたのである。本発明はこれを見直して、燃焼して灯油の代わりに使わんとするものである。その際において、常温では固体化しようとする植物性食用油の廃油を、液状にして廃油燃焼装置に継続的に供給するシステムを提供する。
【解決手段】廃油燃焼装置(1)と廃油保温タンク(2)と廃油ドラム缶(3)を配置し、廃油ドラム缶(3)内の食用油の廃油を、該廃油保温タンク(2)内において、液状の状態で保温可能とすべく、該廃油保温タンク(2)は、一定温度に保温可能とする加熱装置(4)を具備させ、該廃油ドラム缶(3)内には、廃油溶解装置(5)と給油ホース(6)を投入し、該給油ホース(6)と廃油保温タンク(2)との間には、廃油送出ポンプ(7)を介装配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来は廃棄していた食用油の廃油、特に食用油の製造工程において発生する廃油を燃焼し、ハウス栽培などにおける暖房装置として使用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食用油の廃油は、製造工程等において発生していた。また他の食用油の製造工程においても発生していたが、これらは使用されずに、廃棄物として処理されたり、石油系燃料等と混合して燃焼させることにより、処理していたのである。
【特許文献1】特開平08−226625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年においては、原油の高騰が原因で、ハウス栽培における暖房装置に使用される灯油の値段が上昇し、従来と同じように、灯油をハウス暖房に使用すると、ハウス野菜や果物の栽培において、暖房費の高騰により、採算が取れなくなるという不具合があったのである。
本発明は、この灯油の高騰に対して、高価な灯油を用いずに、安価で手に入れることのできる燃料資源としての、植物から抽出する食用油の廃油をハウス暖房に利用せんとするものである。
しかし、植物油からの精製工程において、植物油である食用油の廃油が発生するが、この食用油の廃油が従来は廃棄処分されていたのである。本発明はこれを見直して、燃焼して灯油の代わりに使わんとするものである。その際において、常温では固体化しようとする植物性食用油の廃油を、液状にして廃油燃焼装置に継続的に供給するシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかし、該植物性食用油の廃油は、常温で廃油ドラム缶内にいれておくと、固形物に変化して固まってしまうという不具合があったのである。この固まった食用油の廃油の状態では、そのままでは廃油燃焼装置に安定的に供給することが出来ないのである。
この不具合を解消する為には、該固まった状態の食用油の廃油を、常時液状に維持し、廃油燃焼装置に必要な容量だけを供給する装置が必要となるのである。
本発明はこの常時液状となった植物性食用油の廃油を、廃油燃焼装置に供給しようとする為の食用油の廃油燃焼システムを提供するものである。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、植物性食用油の廃油燃焼システムにおいて、廃油燃焼装置(1)と廃油保温タンク(2)と廃油ドラム缶(3)を配置し、廃油ドラム缶(3)内の食用油の廃油を、該廃油保温タンク(2)内において、液状の状態で保温可能とすべく、該廃油保温タンク(2)は、一定温度に保温可能とする加熱装置(4)を具備させ、該廃油ドラム缶(3)内には、廃油溶解装置(5)と給油ホース(6)を投入し、該給油ホース(6)と廃油保温タンク(2)との間には、廃油送出ポンプ(7)を介装配置したものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載の植物性食用油の廃油燃焼システムにおいて、前記廃油保温タンク(2)と廃油燃焼装置(1)との間には、廃油定量供給装置(8)を介装配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、植物性食用油の廃油燃焼システムにおいて、廃油燃焼装置(1)と廃油保温タンク(2)と廃油ドラム缶(3)を配置し、廃油ドラム缶(3)内の食用油の廃油を、廃油保温タンク(2)内において、液状の状態で保温可能とすべく、該廃油保温タンク(2)は、一定温度に保温可能とする加熱装置(4)を具備させ、該廃油ドラム缶(3)内には、廃油溶解装置(5)と給油ホース(6)を投入し、該給油ホース(6)と廃油保温タンク(2)との間には、廃油送出ポンプ(7)を介装配置したので、常温近くで固結してしまう可能性の高い植物性食用油の廃油を、廃油溶解装置(5)により常時溶解して、廃油送出ポンプ(7)により廃油保温タンク(2)に供給するので、廃油燃焼装置(1)に対しては、液状の食用油の廃油を不断に供給することが出来て、安い食用油の廃油を、ハウスなどの暖房の燃料として利用することが可能となったのである。
【0010】
請求項2においては、請求項1記載の食用油の廃油燃焼システムにおいて、廃油保温タンク(2)と廃油燃焼装置(1)との間には、廃油定量供給装置(8)を介装配置したので、該廃油保温タンク(2)内には、常時液状の食用油の廃油が滞留されているので、そのままの状態では、植物性食用油の廃油が廃油燃焼装置(1)の一次燃焼室(11)の部分に供給されてしまうが、該廃油定量供給装置(8)を配置することにより、一次燃焼室(11)には必要量の食用油の廃油しか供給出来ないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の植物性食用油の廃油燃焼システムの全体的な構成を示す側面図、図2は同じく本発明の全体斜視図、図3は廃油燃焼装置(1)の斜視図である。
【0013】
本発明の植物性食用油の廃油燃焼システムに使用する燃料の廃油は、植物油を精製して、製造する際に発生する食用油の廃油である。油成分であることには変わりないが、食用には適さない油分である。従来は、食用油を精製する為に、植物油を精製した時において、不要な部分となった廃油は、廃棄物処理業者により、焼却等の手段により環境に害を与えることの無いように処理されていたのである。
【0014】
この処理においては、食用油の製造業者の側で廃棄処理の費用を出すことはあっても、処理業者が購入費用を出すということは無かったのである。
しかし、石油資源の枯渇と、原油価格の上昇が世界的に進行するに及んで、この従来は捨てられていた植物性食用油の廃油を何とか利用できないかとの模索が始められたのである。特に、ハウス栽培で野菜や果物を栽培している農家にとっては、温度低下時におけるハウスの暖房の費用は、長時間の燃焼状態が必要であるので、灯油バーナーを燃焼させて、ハウスを一定の温度に暖房する費用は、大きなコストとなっていたのである。
【0015】
これまでの灯油の値段であれば、何とかコストが見合うという状況でハウス栽培が続行されていたのであるが、これ以上に灯油の値段が高騰すると、ハウス栽培の採算が取れないというギリギリのラインまで至っているのである。
このような状況で、灯油に代わって、安い燃料が購入でき、その燃料を何とか、灯油バーナーと同様に燃焼できれば、直ぐにでも代替燃料として利用することができるのである。
【0016】
しかし、植物性食用油の廃油は、常温でも固まり易い油分であり、ハウスの暖房を行うような戸外の温度の中で、廃油ドラム缶(3)を配置して置く状態では、該廃油ドラム缶(3)の内部の植物性食用油の廃油分が、固形化して、廃油燃焼装置(1)へ常時送油することが不可能となるのである。
本発明においては、この不具合を解消する為に、戸外に配置した廃油ドラム缶(3)から植物性食用油の廃油の油分を、液状にして、廃油燃焼装置(1)に常時供給可能なシステムを提供せんとするものである。
【0017】
本発明の植物性食用油の廃油燃焼システムは、図1と図2に示す如く構成されている。
廃油ドラム缶(3)の内部に、食用油の製造工場から供給される植物性食用油の廃油が密封されて、送られてくる。この廃油ドラム缶(3)を開封して、上部の開口から、廃油溶解装置(5)を投入するのである。該廃油溶解装置(5)は給油ホース(6)の先端に固設されたものであり、該給油ホース(6)の先端に、ストレーナ(17)が付設されており、該ストレーナ(17)の内部に、溶解熱発生装置(18)が配置されている。
【0018】
故に、給油ホース(6)とストレーナ(17)と溶解熱発生装置(18)の一体化された部分を、廃油ドラム缶(3)の内部に挿入すると、それまで固まっていた植物性食用油の廃油部分も溶けて、該廃油溶解装置(5)の部分が廃油ドラム缶(3)の底部まで沈んで行くのである。そして、該廃油溶解装置(5)の周囲は、溶解した植物性食用油の廃油の部分が取り巻く状態となるのである。
【0019】
該給油ホース(6)が廃油ドラム缶(3)から出た部分の他端に、廃油送出ポンプ(7)が設けられている。該廃油送出ポンプ(7)の部分には、モータが配置されており、廃油溶解装置(5)の部分の食用油の廃油が溶けた場合に該モータのスイッチがONとなって、廃油送出ポンプ(7)が回転を開始して、該廃油ドラム缶(3)の内部の液状の食用油の廃油を、廃油送出ポンプ(7)から廃油保温タンク(2)内へ供給すべく構成している。
【0020】
該廃油送出ポンプ(7)の給油ホース(6)と他端側は、廃油保温タンク(2)の下部に連結されており、廃油送出ポンプ(7)から圧送された液状の植物性食用油の廃油は、廃油保温タンク(2)に下方から注入される。
そして、廃油ドラム缶(3)の部分は、空となったら交換することが容易なように、ハウスの外部に配置されているのが通常であり、給油ホース(6)の部分を介して、廃油送出ポンプ(7)と廃油保温タンク(2)と廃油燃焼装置(1)は、ハウスの内部に配置されているのである。
【0021】
そして、該廃油保温タンク(2)の内部に供給された液状の食用油の廃油は、再度固結することの無いように、廃油保温タンク(2)の下方に加熱装置(4)が配置されており、一定の植物性食用油の廃油が固結しない温度に制御固定されている。
また、廃油保温タンク(2)内に植物性食用油の廃油が一定量以上は注入されないように廃油送出ポンプ(7)を停止するための油面センサー(20)が配置されている。
【0022】
該廃油保温タンク(2)と廃油燃焼装置(1)との間には、廃油定量供給装置(8)が配置されている。該廃油定量供給装置(8)は、廃油保温タンク(2)が高い位置に配置されている場合に、必要以上の液状の食用油の廃油が、廃油燃焼装置(1)の一次燃焼室(11)内に流れ込まないようにする為の装置である。電磁弁などの弁機構が配置されている。
【0023】
該廃油定量供給装置(8)に合流する部分の上方に、補助燃料タンク(19)が設けられている。該食用油の廃油のみでは、燃焼しにくい最初の着火時等において、灯油等の着火のような燃料を植物性食用油の廃油に混合させて供給する為の装置である。
そして、該廃油定量供給装置(8)から廃油燃焼装置(1)の一次燃焼室(11)の部分に、常時一定の油面に至るように、植物性食用油の廃油が供給されているのである。
【0024】
以上のように、廃油燃焼装置(1)と廃油保温タンク(2)と廃油ドラム缶(3)と、それらを連結する、廃油定量供給装置(8)と廃油送出ポンプ(7)と給油ホース(6)と廃油溶解装置(5)により、本食用油の廃油燃焼システムが構成されているのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の植物性食用油の廃油燃焼システムの全体的な構成を示す側面図。
【図2】同じく本発明の全体斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 廃油燃焼装置
2 廃油保温タンク
3 廃油ドラム缶
4 加熱装置
5 廃油溶解装置
6 給油ホース
7 廃油送出ポンプ
8 廃油定量供給装置
11 一次燃焼室
12 二次燃焼室
13 小径のバイパス筒
15 燃焼筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃油燃焼装置(1)と廃油保温タンク(2)と廃油ドラム缶(3)を配置し、廃油ドラム缶(3)内の食用油の廃油を、該廃油保温タンク(2)内において、液状の状態で保温可能とすべく、該廃油保温タンク(2)は、一定温度に保温可能とする加熱装置(4)を具備させ、該廃油ドラム缶(3)内には、廃油溶解装置(5)と給油ホース(6)を投入し、該給油ホース(6)と廃油保温タンク(2)との間には、廃油送出ポンプ(7)を介装配置したことを特徴とする植物性食用油の廃油燃焼システム。
【請求項2】
請求項1記載の植物性食用油の廃油燃焼システムにおいて、前記廃油保温タンク(2)と廃油燃焼装置(1)との間には、廃油定量供給装置(8)を介装配置したことを特徴とする植物性食用油の廃油燃焼システム。

【図1】
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【図2】
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