説明

植物栽培システムおよび建物用植物栽培システム

【課題】水の管理が容易であり、害虫や雑草を防いで植物の栽培を容易にすることができる植物栽培システムおよび建物用植物栽培システムを提供する。
【解決手段】透光性の傾斜屋根22が、収納室21の上部に設けられている。外部貯水槽12が、開口部12aを有し、傾斜屋根22から流れ落ちる水を開口部12aで受けて貯水可能に前記収納室21の外部に設けられている。内部貯水槽13が、外部貯水槽12と通水可能に収納室21の内部に設けられている。栽培容器14が、植物を栽培可能で、収納室21の内部の内部貯水槽13の上方に設けられている。給水手段16が、内部貯水槽13の内部の水を栽培容器14に栽培された植物に供給可能に設けられている。通気フィルタが、収納室21の吸気口24と排気口25とに設けられている。通水フィルタ17が、外部貯水槽12の開口部12aに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培システムおよび建物用植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地面に直接植えることなく植物を栽培する場合には、植木鉢やポット、プランターなどに植物を植えて育てている。従来、植木鉢などに植えられた植物に水を供給する際、植木鉢などの上部開口から入る雨水や水やりの水だけでなく、植木鉢などの周囲に落ちる水を集めて効率よく植物に供給するものとして、植木鉢などの上部開口の周縁に沿って設置する傾斜具がある(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180568号公報
【特許文献2】特公平8−12号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載の傾斜具では、屋外に置いた場合、雨が多いときには、水の供給が多くなり過ぎて根腐れを起こすおそれがあり、雨が少ないときには、土の乾燥状態等に応じて頻繁に水やりをする必要がある。また、屋内に置いた場合にも、土の乾燥状態等に応じて頻繁に水やりをする必要がある。このため、土の湿潤状態や乾燥状態を把握して、頻繁に水の管理をしなければならず、労力を要するという課題があった。また、植木鉢などで栽培する場合、害虫が寄ってきたり、雑草が生えたりするため、管理が大変であるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、水の管理が容易であり、害虫や雑草を防いで植物の栽培を容易にすることができる植物栽培システムおよび建物用植物栽培システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る植物栽培システムは、吸気口と排気口とを有する収納室と、前記吸気口と前記排気口とに設けられた通気フィルタと、前記収納室の上部に設けられた透光性の傾斜屋根と、開口部を有し、前記傾斜屋根から流れ落ちる水を開口部で受けて貯水可能に前記収納室の外部に設けられた外部貯水槽と、前記開口部に取り付けられた通水フィルタと、前記外部貯水槽と通水可能に前記収納室の内部に設けられた内部貯水槽と、前記収納室の内部の前記内部貯水槽の上方に設けられた植物の栽培容器と、前記内部貯水槽の内部の水を前記栽培容器の植物に供給可能に設けられた給水手段とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る植物栽培システムは、雨水や水やりの水を収納室の上部に設けられた傾斜屋根で受け、その傾斜屋根から流れ落ちる水を開口部で受けて、収納室の外部に設けられた外部貯水槽に貯水することができる。外部貯水槽に貯水された水は、外部貯水槽と通水可能に収納室の内部に設けられた内部貯水槽の内部に入り、給水手段により、その水を栽培容器に栽培された植物に供給することができる。また、吸気口と排気口とに通気フィルタが設けられ、外部貯水槽の開口部に通水フィルタが設けられているため、収納室内に害虫や雑草の種などが入り込むのを防ぐことができ、栽培容器での植物の栽培を容易にすることができる。
【0008】
本発明に係る植物栽培システムは、雨が多いときなどに、あらかじめ外部貯水槽および内部貯水槽に水を貯めておくことができる。また、外部貯水槽および内部貯水槽の水が少なくなったときには、装置に水をかけるだけで容易に水を貯めておくことができる。このため、雨が少ないとき等でも、給水手段により植物に水を供給することができ、頻繁に水やりを行う必要がない。また、必要以上の水は通水フィルタから逆流して、それ以上の水の浸入を防止するため、栽培容器下部が水中に没して空気供給が遮断されて根腐れを起こすことはなくなる。このように、本発明に係る植物栽培システムは、水の管理が容易である。
【0009】
本発明に係る植物栽培システムで、吸気口および排気口は、光合成に必要な炭酸ガスや呼吸に必要な酸素などの気体を出し入れすることができる。本発明に係る植物栽培システムは、植物を栽培する栽培容器を収納した収納室に吸気口と排気口とを有しているため、吸気口から収納室に入った空気を、植物で浄化して排気口から排出することができ、周囲の環境に対する空気清浄効果を有している。外部貯水槽の開口部に通水フィルタが取り付けられているため、不純物などを取り除いたきれいな水を植物に供給することができる。傾斜屋根が透光性であるため、収納室内の植物が光合成を行うことができる。
【0010】
傾斜屋根は、屋根全体が平面状に傾斜している必要はなく、片流れ、切り妻、寄せ棟、かまぼこ状、ドーム状などの屋根を含み、少なくとも屋根の一部が傾斜して、開口部に向かって雨水等が流れ落ちるようになっていればよい。また、収納室は、収納物を出し入れする部分があることが好ましい。外部貯水槽および内部貯水槽は、互いに通水可能であれば、一体に設けられていても、パイプなどで接続されていてもよい。
【0011】
本発明に係る植物栽培システムは、前記栽培容器を前記収納室内で循環移動させる循環移動手段を有し、前記収納室は動物を成育可能であってもよい。この場合、栽培容器に植えられた植物の生育状態に応じて、栽培容器を移動させることにより、最適な生育条件で植物を育てることができる。例えば、栽培初期には、肥料として収納室で成育する動物の排泄物を受取可能なエリアに移動させ、成長期には、光が当たりやすいエリアに移動させ、開花期には、受粉させるために益虫を飼育したエリアに移動させ、収穫期には、容易に収穫を行えるエリアに移動させてもよい。動物は、牛や馬などの家畜や、ウサギやハムスターなどのペットなど、人間を含むいかなる動物であってもよい。
【0012】
本発明に係る植物栽培システムは、水位調整手段を有し、前記栽培容器は底面に排水口を有し、前記水位調整手段は、共通の中心軸を中心として互いに回転可能に設けられた外筒と内筒とを有し、前記外筒は天井面と外周面とを有し、前記外周面の異なる高さ位置に複数の通孔を有し、前記内筒は底面と外周面と隔壁とを有し、前記隔壁は前記内筒の内部を縦方向に2つの区画に分けるよう前記天井面との間に隙間をあけて前記底面に設けられ、前記底面は前記隔壁で分けられた一方の区画に排水用開口を有し、前記外周面は前記外筒に対する回転角度に応じて各通孔にそれぞれ連通可能な複数の連通孔を有し、最も低い位置の前記連通孔が前記隔壁で分けられた他方の区画に設けられ、他の連通孔が前記一方の区画に設けられており、前記水位調整手段は前記排水用開口を前記排水口に連通させて前記栽培容器の底面に設けられていてもよい。
【0013】
この水位調整手段を有する場合、内筒に対して外筒を回転させることにより、以下のようにして栽培容器の内部の水位を調整することができる。まず、隔壁で分けられた一方の区画に設けられた任意の高さ位置の内筒の連通孔と、その連通孔に対応する高さ位置の外筒の通孔とを連通させることにより、栽培容器の内部の水がその連通孔および通孔から排水用開口に流れるため、栽培容器の内部の水位を任意の高さに維持することができる。また、内筒の連通孔と外筒の通孔とを全く連通させないことにより、栽培容器から排水しないようにすることができる。また、栽培容器の内部の水位が隔壁の高さよりも高い位置にあるとき、隔壁で分けられた他方の区画に設けられた最も低い位置の内筒の連通孔と、その連通孔に対応する外筒の通孔とを連通させることにより、サイフォンの原理により、栽培容器の内部の水を、連通孔および通孔から隔壁と天井面との隙間を通って排水用開口に流すことができ、その連通孔の高さ位置まで水位を下げることができる。
【0014】
本発明に係る植物栽培システムで、前記内筒は、前記他方の区画を縦方向にさらに2つの小区画に分けるよう設けられた仕切壁を有し、前記仕切壁で分けられた一方の小区画の前記底面に給水用開口を有し、前記一方の小区画の外周面に給水用連通孔を有し、前記外筒は前記外周面に前記内筒に対する回転角度に応じて前記給水用連通孔に連通可能な給水用通孔を有し、前記給水手段は毛細管作用によって吸水可能な多孔質の素材から成り、敷設部材と吸上部材とを有し、前記敷設部材は前記栽培容器の内部に敷設され、一部が前記給水用通孔に挿入され、前記吸上部材は一端が前記内部貯水槽の内部に配置され、他端が前記給水用開口を通して前記給水用連通孔に挿入され、前記内筒に対して前記外筒を回転させて前記給水用通孔と前記給水用連通孔とを連通させたとき前記敷設部材と前記吸上部材とが接するよう構成されていてもよい。この場合、内筒に対して外筒を回転させて、給水用通孔と給水用連通孔とを連通させることにより、内部貯水槽の内部の水を給水手段により栽培容器の内部に供給することができる。
【0015】
本発明に係る植物栽培システムは、前記収納室の外部の空気を前記吸気口から前記収納室の内部に取り入れ、前記収納室の内部の空気を前記排気口から前記収納室の外部に排出するよう設けられたファンと、前記収納室の内部にミストを噴出可能に設けられたミスト発生手段と、前記収納室の内部に設けられた照明とを有し、前記栽培容器は上部開口を有し、前記上部開口の周縁に前記栽培容器に向かって傾斜する傾斜フランジを有し、前記外部貯水槽は所定の高さ位置に、内部の水を排出可能に設けられたオーバーフロー孔を有していてもよい。
【0016】
この傾斜フランジ等を有する場合、傾斜フランジにより、結露等によって傾斜屋根の裏側に付着した水滴等の上方から落ちてくる水を、効率よく栽培容器の植物に供給することができる。ファンにより、強制的に吸気口から収納室に空気を入れて排気口から排出することができ、空気清浄効果を高めることができる。ミスト発生装置により、収納室内の湿度を調整したり、植物に直接水やりを行ったりすることができる。また、傾斜屋根の内側にミストを噴出することにより、収納室に入る光を遮ることができ、収納室内の温度上昇を抑えることができる。オーバーフロー孔により、外部貯水槽および内部貯水槽の水位が所定の高さより高くならないようにすることができる。照明により、夜間や雨天時の光合成が可能となると同時に、例えば夜間植物をライトアップすることで、傾斜屋根や側面の透光部分からその様子を周囲に見せることができる。また、これにより、幻想的なオブジェの看板として環境に配慮していることをアピールすることもできる。
【0017】
本発明に係る植物栽培システムは、前記外部貯水槽の内部に浮かべられたフロートと、前記外部貯水槽の前記開口部に設けられたフロートガイドとを有し、前記外部貯水槽が満水になったとき、前記フロートが前記フロートガイドに接して前記開口部を塞ぐよう構成されていてもよい。この場合、必要以上の水はフロートによって流入が阻害されるため、それ以上の水の浸入を防止することができる。また、溶液栽培を行ったときに、外部貯水槽および内部貯水槽に溜めた液体肥料等の溶液の流失を防ぐことができる。フロートにより、空気と接する水の表面積を減らすことができ、蒸発による水の損失を抑制することができる。
【0018】
第1の本発明に係る建物用植物栽培システムは、本発明に係る植物栽培システムと、建物の外面に沿って、または、建物の内部および外部に渡って環状に設けられたガイド部材と、前記植物栽培システムを前記ガイド部材に沿って移動可能に構成された移動手段とを、有することを特徴とする。
【0019】
第1の本発明に係る建物用植物栽培システムは、本発明に係る植物栽培システムを有しているため、水の管理が容易である。このため、植物栽培システムが建物の外面に沿って、または、建物の内部および外部に渡って移動しているときでも、植物が枯れるのを防ぐことができる。また、建物の周囲や内部の空気を浄化することもできる。外壁や屋根などの建物の外面に沿って植物栽培システムが移動する場合には、建物を緑化することができ、遮熱効果も得られる。
【0020】
第2の本発明に係る建物用植物栽培システムは、空調機を備えた建物の外面に設置された1つまたは複数の本発明に係る植物栽培システムと、前記空調機からの排気を各植物栽培システムの前記吸気口に導く排気ダクトと、各植物栽培システムの前記排気口からの排気を前記空調機の吸気口に導く吸気ダクトとを、有することを特徴とする。
【0021】
第2の本発明に係る建物用植物栽培システムは、本発明に係る植物栽培システムを有しているため、水の管理が容易である。このため、建物の外面に設置された植物栽培システムの植物が枯れるのを防ぐことができる。植物栽培システムを外壁や屋根などの建物の外面に設置しているため、建物を緑化することができ、遮熱効果も得られる。また、植物栽培システムにより空調機からの排気を浄化するとともに、その浄化した空気を空調機により建物の内部に供給することができ、建物の周囲や内部の空気を浄化することができる。
【0022】
なお、本発明に係る植物栽培システム、第1および第2の本発明に係る建物用植物栽培システムは、植物に与える水に炭酸ガスを溶存させていてもよい。この場合、植物の光合成を活発にする効果が得られる。また、結果的に炭酸ガス施肥と同様の効果をもたらし、酸素排出量や植物からの収穫量を増大することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水の管理が容易であり、害虫や雑草を防いで植物の栽培を容易にすることができる植物栽培システムおよび建物用植物栽培システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態の植物栽培システムを示す(a)所定の位置での端面図、(b)他の位置での端面図である。
【図2】図1に示す植物栽培システムの栽培容器および水位調整手段の(a)定常溜水時の端面図、(b)給水時の端面図、(c)空気の流れを示す端面図である。
【図3】図1に示す植物栽培システムの水位調整手段の取付状態を示す側面図である。
【図4】図1に示す植物栽培システムの水位調整手段の(a)平面図および正面図、(b)底面図および矢視図である。
【図5】図1に示す植物栽培システムの水位調整手段の使用状態を示す端面図である。
【図6】図1に示す植物栽培システムの通気管等を有する変形例を示す端面図である。
【図7】図1に示す植物栽培システムの外部貯水槽にフロートを有する変形例を示す端面図である。
【図8】図1に示す植物栽培システムの外壁に吊り下げる変形例を示す端面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の植物栽培システムを示す端面図である。
【図10】図9に示す植物栽培システムの栽培容器および水位調整手段を示す端面図である。
【図11】図9に示す植物栽培システムの水位調整手段の取付状態を示す側面図である。
【図12】図9に示す植物栽培システムの水位調整手段の(a)平面図および正面図、(b)底面図および矢視図である。
【図13】図9に示す植物栽培システムの循環移動手段の(a)正面図、(b)アダプタを示す平面図である。
【図14】図9に示す植物栽培システムの循環移動手段の(a)アームチェーンを示す正面図、(b)側面図である。
【図15】図9に示す植物栽培システムの栽培容器の変形例を示す端面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態の建物用植物栽培システムを示す端面図である。
【図17】図16に示す建物用植物栽培システムのガイド部材および移動手段を示す正面図である。
【図18】図16に示す建物用植物栽培システムの植物栽培システムの水位調整手段の動作を説明する端面図である。
【図19】図16に示す建物用植物栽培システムの(a)アームチェーンを示す正面図、(b)ガイド部材および移動手段を示す側面図、(c)アームチェーンとローラーアダプタとの着脱動作を示す側面図である。
【図20】図16に示す建物用植物栽培システムの変形例を示す端面図である。
【図21】本発明の第2の実施の形態の建物用植物栽培システムを示す平面図である。
【図22】図21に示す建物用植物栽培システムの(a)A−A線端面図、(b)B−B線端面図である。
【図23】図21に示す建物用植物栽培システムの、植物栽培システムの容器本体の内部が(a)陽圧のときの端面図、(b)陰圧のときの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図8は、本発明の第1の実施の形態の植物栽培システムを示している。
図1に示すように、植物栽培システム10は、容器本体11と外部貯水槽12と内部貯水槽13と植物の栽培容器14と水位調整手段15と給水手段16と通気フィルタ(図示せず)と通水フィルタ17とを有している。
【0026】
容器本体11は、縦長の箱体から成り、内部に収納室21が形成されている。容器本体11は、収納室21の上部に設けられた透光性の傾斜屋根22と、中間の高さ位置に設けられ、中央部に円形の開口が形成された仕切板23とを有している。仕切板23は開口を有し、開口の周縁が、開口に向かって傾斜するよう設けられた傾斜フランジ23aを成している。容器本体11は、底面に吸気口24と排気口25とを有し、吸気口24に取り付けられ、仕切板23の下の所定の高さまで伸びる吸気管24aと、排気口25に取り付けられ、仕切板23を貫通して仕切板23の上の空間まで伸びる排気管25aとを有している。
【0027】
外部貯水槽12は、傾斜屋根22の下方へ傾斜した方向側の、容器本体11の側壁の外側下部に、容器本体11と一体的に設けられている。外部貯水槽12は、吸気管24aの高さより低い位置に、上方に向かって開いた開口部12aを有している。外部貯水槽12は、傾斜屋根22から流れ落ちる水を開口部12aで受けて貯水可能に、収納室21の外部に設けられている。内部貯水槽13は、収納室21の下部に設けられている。内部貯水槽13は、外部貯水槽12と通水可能に、外部貯水槽12に隣接する容器本体11の側壁の下部に隙間を有している。
【0028】
植物の栽培容器14は、内部で植物を栽培可能であり、底面に排水口14aを有している。栽培容器14は、収納室21の内部で、内部貯水槽13の上方の仕切板23の開口にはめ込まれている。これにより、傾斜フランジ23aが、栽培容器14の上部開口の周縁に沿って、栽培容器14に向かって傾斜するよう構成されている。
【0029】
水位調整手段15は、栽培容器14の底面に設けられている。図2乃至図4に示すように、水位調整手段15は、共通の中心軸を中心として互いに回転可能に設けられた筒体から成る外筒26と内筒27とを有している。外筒26は、天井面と外周面とを有し、外周面の異なる高さ位置に複数の通孔26aを有している。内筒27は底面と外周面と隔壁とを有し、その外周面は外筒26に対する回転角度に応じて各通孔26aにそれぞれ連通可能な複数の連通孔27aを有している。内筒27の隔壁27bは、内部を縦方向に2つの区画に分けるよう、天井面との間に隙間をあけて底面に設けられ、隔壁27bで分けられた一方の区画の底面に排水用開口27cを有している。内筒27は、他方の区画を縦方向にさらに2つの小区画に分けるよう設けられた仕切壁27dを有し、仕切壁27dで分けられた一方の小区画の底面に給水用開口27eを有し、一方の小区画の外周面に給水用連通孔27fを有している。
【0030】
また、内筒27は、最も低い位置の連通孔27aが隔壁27bで分けられた他方の小区画の外周面に設けられ、他の連通孔27aが一方の区画の外周面に設けられている。外筒26は、外周面に、内筒27に対する回転角度に応じて給水用連通孔27fに連通可能な給水用通孔26bを有している。水位調整手段15は、排水用開口27cを排水口14aに連通させて、天井面を上に底面を下にした状態で栽培容器14の底面に設けられている。なお、通孔26aおよび給水用通孔26fには、フィルタが取り付けられている。
【0031】
給水手段16は、毛細管作用によって吸水可能な多孔質の素材から成り、敷設部材16aと吸上部材16bとを有している。敷設部材16aは、栽培容器14の内部に敷設され、給水用通孔26bに一部が挿入されている。吸上部材16bは、一端が内部貯水槽13の内部に配置され、他端が給水用開口27eを通して給水用連通孔27fに挿入されている。給水手段16は、内筒27に対して外筒26を回転させて、給水用通孔26bと給水用連通孔27fとを連通させたとき、敷設部材16aと吸上部材16bとが接するよう構成されている。これにより、給水手段16は、内部貯水槽13の内部の水を吸い上げて、栽培容器14に栽培された植物1に供給可能になっている。
【0032】
通気フィルタは、吸気口24と排気口25とに取り付けられている。通水フィルタ17は、外部貯水槽12の開口部12aに取り付けられている。
【0033】
次に、作用について説明する。
植物栽培システム10は、栽培容器14に植えた植物1を栽培することができる。植物栽培システム10は、雨水や水やりの水を収納室21の上部に設けられた傾斜屋根22で受け、その傾斜屋根22から流れ落ちる水を開口部12aで受けて、収納室21の外部に設けられた外部貯水槽12に貯水することができる。外部貯水槽12に貯水された水は、外部貯水槽12と通水可能に収納室21の内部に設けられた内部貯水槽13の内部に入り、給水手段16により、その水を栽培容器14に栽培された植物1に供給することができる。
【0034】
植物栽培システム10は、雨が多いときなどに、あらかじめ外部貯水槽12および内部貯水槽13に水を貯めておくことができる。また、外部貯水槽12および内部貯水槽13の水が少なくなったときには、水やりを多めにしておくことにより、水を貯めておくことができる。このため、雨が少ないとき等でも、給水手段16により植物1に水を供給することができ、頻繁に水やりを行う必要がない。また、給水手段16による水の供給をほぼ一定にすることにより、雨が多いときでも、植物1が根腐れを起こすのを防ぐことができる。このように、植物栽培システム10は、水の管理が容易である。なお、大雨の時などには、外部貯水槽12の開口部12aから水があふれることにより、外部貯水槽12および内部貯水槽13の水位が所定の高さより高くならない。
【0035】
植物栽培システム10は、植物1を栽培する栽培容器14を収納した収納室21に吸気口24と排気口25とを有し、太陽熱等による空気密度差により、吸気口24から収納室21に入った空気を、植物1で浄化した後、排気口25から排出することができ、周囲の環境に対する空気清浄効果を有している。このとき、吸気口24から収納室21の仕切板23の下の空間に入った空気は、排水口14aおよび排水用開口27cから、互いに連通した連通孔27aおよび通孔26aを通って栽培容器14の内部に入り、植物用の土等の中を通って仕切板23の上の空間に入り、排気口25から排出される。
【0036】
植物栽培システム10は、吸気口24と排気口25とに通気フィルタが設けられているため、収納室21の内部に虫や塵埃などが入り込むのを防ぐことができる。外部貯水槽12の開口部12aに通水フィルタ17が取り付けられているため、不純物などを取り除いたきれいな水を植物1に供給することができる。傾斜屋根22が透光性であるため、収納室21の内部の植物1が光合成を行うことができる。傾斜フランジ23aにより、傾斜屋根22の裏側に付着した水滴等の上方から落ちてくる水を、効率よく栽培容器14の植物1に供給することができる。
【0037】
植物栽培システム10は、水位調整手段15の外筒26を内筒27に対して回転させることにより、以下のようにして栽培容器14の内部の水位を調整することができる。まず、図5(a)に示すように、隔壁27bで分けられた一方の区画に設けられた任意の高さ位置の内筒27の連通孔27aと、その連通孔27aに対応する高さ位置の外筒26の通孔26aとを連通させることにより、栽培容器14の内部の水がその連通孔27aおよび通孔26aから排水用開口27cに流れるため、栽培容器14の内部の水位を任意の高さに維持することができる。また、内筒27の連通孔27aと外筒26の通孔26aとを全く連通させないことにより、栽培容器14から排水しないようにすることができる。
【0038】
また、図5(b)乃至(d)に示すように、栽培容器14の内部の水位が隔壁27bの高さよりも高い位置にあるとき、隔壁27bで分けられた他方の区画に設けられた最も低い位置の内筒27の連通孔27aと、その連通孔27aに対応する外筒26の通孔26aとを連通させることにより、サイフォンの原理により、栽培容器14の内部の水を、連通孔27aおよび通孔26aから隔壁27bと天井面との隙間を通って排水用開口27cに流すことができ、その連通孔27aの高さ位置まで水位を下げることができる。また、給水用通孔26bと給水用連通孔27fとを連通させることにより、内部貯水槽13の内部の水を給水手段16により栽培容器14の内部に供給することができる。
【0039】
なお、図6に示すように、植物栽培システム10は、吸気口24および排気口25がそれぞれ仕切板23の下および上の容器本体11の側面に設けられていてもよい。また、水位調整手段15が、仕切板23の上下の空間に連通可能に、底面から天井面まで伸びるよう設けられた通気管31と、通気管31の上部の開口に、上方に向かって開くよう設けられた開閉扉32とを有していてもよい。この場合、水位調整手段15がサイフォンの原理で作動し、排水用開口27cや連通孔27a、通孔26aに水が流れているときでも、吸気口24から入った空気が、開閉扉32を押し上げて通気管31を通るため、通気管31を通して吸気口24から排気口25に空気を循環させることができる。なお、サイフォンによる作動時に、開閉扉32が自動的に開くよう構成されていてもよい。
【0040】
また、図7に示すように、植物栽培システム10は、外部貯水槽12の内部に浮かべられたフロート33と、外部貯水槽12の開口部12aに設けられたフロートガイド34とを有していてもよい。この場合、外部貯水槽12が水でいっぱいになるとフロート33がフロートガイド34の開口を塞ぐことにより、外部貯水槽12にそれ以上水が入るのを防ぐことができる。また、外部貯水槽12が一杯でないときには、フロート33とフロートガイド34との間に隙間ができるため、その隙間から雨水等を外部貯水槽12に導入することができる。また、溶液栽培を行ったときに、外部貯水槽12および内部貯水槽13に溜めた液体肥料等の溶液の流失を防ぐことができる。フロート33により、空気と接する水の表面積を減らすことができ、蒸発による水の損失を抑制することができる。フロート33は、球形に限らず、板状など、いかなる形状であってもよい。
【0041】
植物栽培システム10は、室内に設置されても、屋外に設置されてもよい。屋外に設置する場合には、庭やベランダ、バルコニーだけでなく、屋根の上や外壁に沿って設置することもでき、建物を緑化することができる。外壁に沿って設置する場合には、例えば、図8に示すように、吊下ワイヤや吊紐、ローラー等を使用して吊り下げ、フック36が付いた導水路付きアダプタ35を容器本体11の下に取り付けて、数珠つなぎで複数を吊り下げることができる。この場合、外部貯水槽12からあふれた水がアダプタ35を通って、下の植物栽培システム10の傾斜屋根22に落ちるため、全ての植物栽培システム10に水を供給可能である。水やりする場合には、最上段の植物栽培システム10に水をかけ、目視しやすい最下段の植物栽培システム10が満水になったのを確認することにより、全ての植物栽培システム10への給水を完了することができる。また、外部貯水槽12と内部貯水槽13とを隔てる容器本体11の側壁が水中に没しているため、外部貯水槽12および内部貯水槽13の下部に、通水フィルタ17を通過した細かい異物や、栽培容器14から溶け出した微量の土等が沈殿し、植物1に供給する水のみならず、外部貯水槽12からあふれて下段の植物栽培システム10に流れる水をも清浄に保つことができる。
【0042】
図9乃至図15は、本発明の第2の実施の形態の植物栽培システムを示している。
図9に示すように、植物栽培システム40は、容器本体11と外部貯水槽12と内部貯水槽13と栽培容器14と水位調整手段15と循環移動手段41と給水手段16と通気フィルタと通水フィルタ17とを有している。なお、以下の説明では、本発明の第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0043】
容器本体11は、家畜等を成育するための建物から成り、内部に収納室21が形成されている。容器本体11は、収納室21の上部に設けられた透光性の傾斜屋根22と、一つの側壁の下部に設けられた吸気口24と、他の側壁の上部に設けられた排気口25と、吸気口24および排気口25に取り付けられた開閉自在窓42とを有している。なお、動物は、牛や馬などの家畜や、ウサギやハムスターなどのペットなど、人間を含むいかなる動物であってもよい。
【0044】
外部貯水槽12は、傾斜屋根22の下方へ傾斜した方向側の、容器本体11の側壁の外側に設けられている。外部貯水槽12は、上方に向かって開いた開口部12aを有している。内部貯水槽13は、収納室21の下部に設けられ、外部貯水槽12と通水可能に、外部貯水槽12に連通した通水管43を有している。
【0045】
栽培容器14は、1つまたは複数から成り、内部で植物1を栽培可能であり、底面に排水口14aを有している。水位調整手段15は、栽培容器14の底面に設けられている。図10乃至図12に示すように、水位調整手段15は、共通の中心軸を中心として互いに回転可能に設けられた筒体から成る外筒26と内筒27とを有している。外筒26は、天井面を有し、外周面の異なる高さ位置に複数の通孔26aを有している。内筒27は、底面を有し、外筒26に対して回転させることにより、異なる高さ位置の各通孔26aにそれぞれ連通可能に外周面に設けられた複数の連通孔27aを有している。内筒27は、内部を2つの区画に分けるよう、天井面との間に隙間をあけて設けられた隔壁27bを有し、隔壁27bで分けられた一方の区画の底面に排水用開口27cを有している。また、内筒27は、最も低い位置の連通孔27aが隔壁27bで分けられた他方の小区画の外周面に設けられ、他の連通孔27aが一方の区画の外周面に設けられている。水位調整手段15は、排水用開口27cが排水口14aに重なるよう、天井面を上に底面を下にした状態で栽培容器14の底面に設けられている。なお、通孔26aには、フィルタが取り付けられている。
【0046】
図9、図13および図14に示すように、循環移動手段41は、収納室21の内部に2重環状に設けられた1対のチェーン44と、各チェーン44の方向を変えるためのスプロケット45と、一方のチェーン44に取り付けられた複数のアームチェーン46と、栽培容器14を収納可能に設けられた複数のアダプタ47とを有している。循環移動手段41は、栽培容器14を収納した各アダプタ47の円形の突出部47aを、アームチェーン46のアダプタ挿入部46aに挿入してアダプタ押さえ46bでロックすることにより、栽培容器14をアームチェーン46に取付可能になっている。各チェーン44を動かすことにより、チェーン44に沿ってアームチェーン46に取り付けられた栽培容器14を収納室21の内部で循環移動可能になっている。循環移動手段41は、栽培容器14の上下方向を維持した状態で栽培容器14を移動可能になっている。
【0047】
図9に示すように、給水手段16は、内部貯水槽13から収納室21の上部まで伸びて、収納室21の天井に沿って拡がるよう設けられた散水部材48と、内部貯水槽13の水を散水部材48まで送るためのポンプ49とを有している。給水手段16は、散水部材48から散水することにより、収納室21の内部を循環する栽培容器14の植物1に水を供給可能になっている。
【0048】
次に、作用について説明する。
植物栽培システム40は、栽培容器14に植えられた植物1の生育状態に応じて、栽培容器14を移動させることにより、最適な生育条件で植物1を育てることができる。例えば、図9に示すように、栽培初期には、肥料として収納室21で成育する動物の排泄物を受取可能なエリアに移動させ、成長期には、光が当たりやすいエリアに移動させ、開花期には、受粉させるために益虫を飼育したエリアに移動させ、収穫期には、容易に収穫を行えるエリアに移動させることにより、最適な生育条件で植物1を育てることができる。また、植物栽培システム40は、成育している動物とともに、酸素と二酸化炭素、食物連鎖などの資源循環型のシステムを構築することができる。
【0049】
植物栽培システム40は、太陽熱等による空気密度差により、吸気口24から収納室21に入った空気を、植物1で浄化した後、排気口25から排出することができ、周囲の環境に対する空気清浄効果を有している。また、植物栽培システム40は、図5に示す原理と同様にして、栽培容器14の内部の水位を調整することができる。
【0050】
なお、図15に示すように、栽培容器14は、水位調整手段15を有さず、底面に複数の開口50を有していてもよい。この場合、一般的な植木鉢やポット等と同様に植物1を栽培することができる。給水手段16による給水を適度に行うことにより、植物1が枯れたり根腐れを起こしたりするのを防ぐことができる。
【0051】
図16乃至図20は、本発明の第1の実施の形態の建物用植物栽培システム60を示している。
図16に示すように、建物用植物栽培システム60は、1つまたは複数の植物栽培システム10とガイド部材61と移動手段62と非常給水装置63とを有している。なお、以下の説明では、本発明の第1の実施の形態の植物栽培システム10に関する同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0052】
図16乃至図19に示すように、ガイド部材61は、ビルなどの建物の内部および外部に渡って環状に設けられたチェーン71およびローラーガイド72と、チェーン71の方向を変えるためのスプロケット73とを有している。チェーン71およびローラーガイド72は、互いに所定の間隔を開けて配置されている。チェーン71およびローラーガイド72は、建物の外部では、建物の外壁や屋根に沿って設けられている。
【0053】
移動手段62は、複数のローラーアダプタ74と複数のアームチェーン75と駆動装置76とを有している。各ローラーアダプタ74は、植物栽培システム10に取付可能であり、上下左右の4隅に、チェーン71またはローラーガイド72に沿って回転可能に設けられた4つの車輪74aと、側面に設けられた円形の突出部74bとを有している。各アームチェーン75は、チェーン71に取り付けられており、ローラーアダプタ74の突出部74bに係合可能なローラーアダプタ挿入部75aを有している。
【0054】
移動手段62は、植物栽培システム10に取り付けられた各ローラーアダプタ74の突出部74bを、アームチェーン75のローラーアダプタ挿入部75aに挿入することにより、植物栽培システム10をアームチェーン75に取付可能になっている。駆動装置76でチェーン71を動かすことにより、チェーン71およびローラーガイド72に沿ってアームチェーン75に取り付けられた植物栽培システム10を移動可能になっている。移動手段62は、植物栽培システム10の上下方向を維持した状態で、植物栽培システム10を移動可能になっている。
【0055】
非常給水装置63は、建物の屋根の、ガイド部材61の上方に設けられている。非常給水装置63は、非常給水弁63aを有し、天候や植物栽培システム10の植物の土の乾燥状態に応じて、屋根に沿って移動する植物栽培システム10に上方から散水可能になっている。
【0056】
次に、作用について説明する。
建物用植物栽培システム60は、植物栽培システム10を有しているため、水の管理が容易である。このため、植物栽培システム10が建物の内部および外部に渡って移動しているときでも、植物1が枯れるのを防ぐことができる。長期間雨が降らず、植物1の土が乾燥したときでも、非常給水装置63による給水を適度に行うことにより、植物1が枯れたり根腐れを起こしたりするのを防ぐことができる。また、建物の周囲や内部の空気を浄化することもできる。外壁や屋根などの建物の外面に沿って移動するときには、建物を緑化することができ、遮熱効果も得られる。
【0057】
建物用植物栽培システム60は、栽培容器14に植えられた植物1の生育状態に応じて、植物栽培システム10を移動させることにより、最適な生育条件で植物1を育てることができる。例えば、図16に示すように、栽培初期には、肥料として食品廃棄物を受取可能な建物内の種苗エリアに移動させ、成長期には、光が当たりやすい建物外部の壁面や屋根に移動させ、収穫期には、容易に収穫を行える建物内の収穫エリアに移動させることにより、最適な生育条件で植物1を育てることができる。
【0058】
なお、図20に示すように、建物用植物栽培システム60は、植物栽培システム10の収納室21の内部に照明81と排気ファン82と吸気ファン83と温度センサ84と、内部貯水槽13の水温を測定する温度センサ85と水位を測定する水位センサ86と、収納室21の内部にミストを噴出可能に設けられたミスト発生手段87と、栽培容器14の土の湿度を測定する湿度センサ88とを有し、さらに、各温度センサ84、85および水位センサ86、湿度センサ88からデータを収集し、そのデータに基づいてミスト発生手段87および非常給水装置63の非常給水弁63a、チェーン71を駆動する駆動装置76、照明81、排気ファン82、吸気ファン83等を制御可能に設けられたコンピュータから成る制御部89を有していてもよい。また、制御部89がインターネットに接続され、インターネット経由で制御可能になっていてもよい。この場合、自動または遠隔操作により、植物1を栽培することができる。
【0059】
図21乃至図23は、本発明の第2の実施の形態の建物用植物栽培システム90を示している。
図21および図22に示すように、建物用植物栽培システム90は、1つまたは複数の植物栽培システム10と排気ダクト91と吸気ダクト92とを有している。なお、以下の説明では、本発明の第1の実施の形態の植物栽培システム10に関する同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0060】
図21および図22に示すように、各植物栽培システム10は、建物の屋上に並んで設置されている。排気ダクト91は、一端が建物に備え付けられた空調機の排気口に接続されており、各植物栽培システム10の吸気口24に連通するよう、建物の屋上に配置されている。排気ダクト91は、空調機からの排気を、各植物栽培システム10の吸気口24に導くようになっている。吸気ダクト92は、一端が空調機の吸気口に接続されており、各植物栽培システム10の排気口25に連通するよう、建物の屋上に配置されている。吸気ダクト92は、各植物栽培システム10の排気口25からの排気を、空調機の吸気口に導くようになっている。
【0061】
次に、作用について説明する。
建物用植物栽培システム90は、植物栽培システム10を有しているため、水の管理が容易である。このため、建物の屋上に設置された植物栽培システム10の植物1が枯れるのを防ぐことができる。植物栽培システム10を建物の屋根に設置しているため、建物を緑化することができ、遮熱効果も得られる。また、植物栽培システム10により空調機からの排気を浄化するとともに、その浄化した空気を空調機により建物の内部に供給することができ、建物の周囲や内部の空気を浄化することができる。
【0062】
なお、図23(a)に示すように、建物用植物栽培システム90は、植物栽培システム10が健康増進のために陽圧管理された部屋の空調機に接続されていてもよい。また、図23(b)に示すように、植物栽培システム10が感染防止のために陰圧管理された隔離病棟等の部屋の空調機に接続されていてもよい。これらの閉鎖環境での圧力は、外部貯水槽12と内部貯水槽13との液面差から、それぞれ次式で計算することができる。
【0063】
【数1】

【0064】
なお、図23(a)に示すように、植物栽培システム10の内部を陽圧に保持することにより、内部の溶存ガス量を増やし、植物1の光合成を活発にする効果が得られる。これは、結果的に炭酸ガス施肥と同様の効果をもたらし、酸素排出量や収穫量を増大することができる。また、図23(b)に示すように、植物栽培システム10の内部を陰圧保持することにより、例えば高山植物等を栽培するときに、高地の生育環境を再現することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 植物
10 植物栽培システム
11 容器本体
12 外部貯水槽
12a 開口部
13 内部貯水槽
14 栽培容器
14a 排水口
15 水位調整手段
16 給水手段
16a 敷設部材
16b 吸上部材
17 通水フィルタ
21 収納室
22 傾斜屋根
23 仕切板
23a 傾斜フランジ
24 吸気口
24a 吸気管
25 排気口
25a 排気管
26 外筒
26a 通孔
26b 給水用通孔
27 内筒
27a 連通孔
27b 隔壁
27c 排水用開口
27d 仕切壁
27e 給水用開口
27f 給水用連通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と排気口とを有する収納室と、
前記吸気口と前記排気口とに設けられた通気フィルタと、
前記収納室の上部に設けられた透光性の傾斜屋根と、
開口部を有し、前記傾斜屋根から流れ落ちる水を開口部で受けて貯水可能に前記収納室の外部に設けられた外部貯水槽と、
前記開口部に取り付けられた通水フィルタと、
前記外部貯水槽と通水可能に前記収納室の内部に設けられた内部貯水槽と、
前記収納室の内部の前記内部貯水槽の上方に設けられた植物の栽培容器と、
前記内部貯水槽の内部の水を前記栽培容器の植物に供給可能に設けられた給水手段とを、
有することを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記栽培容器を前記収納室内で循環移動させる循環移動手段を有し、
前記収納室は動物を成育可能であることを、
特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項3】
水位調整手段を有し、
前記栽培容器は底面に排水口を有し、
前記水位調整手段は、共通の中心軸を中心として互いに回転可能に設けられた外筒と内筒とを有し、前記外筒は天井面と外周面とを有し、前記外周面の異なる高さ位置に複数の通孔を有し、前記内筒は底面と外周面と隔壁とを有し、前記隔壁は前記内筒の内部を縦方向に2つの区画に分けるよう前記天井面との間に隙間をあけて前記底面に設けられ、前記底面は前記隔壁で分けられた一方の区画に排水用開口を有し、前記外周面は前記外筒に対する回転角度に応じて各通孔にそれぞれ連通可能な複数の連通孔を有し、最も低い位置の前記連通孔が前記隔壁で分けられた他方の区画に設けられ、他の連通孔が前記一方の区画に設けられており、前記水位調整手段は前記排水用開口を前記排水口に連通させて前記栽培容器の底面に設けられていることを、
特徴とする請求項1または2記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記内筒は、前記他方の区画を縦方向にさらに2つの小区画に分けるよう設けられた仕切壁を有し、前記仕切壁で分けられた一方の小区画の前記底面に給水用開口を有し、前記一方の小区画の外周面に給水用連通孔を有し、
前記外筒は前記外周面に前記内筒に対する回転角度に応じて前記給水用連通孔に連通可能な給水用通孔を有し、
前記給水手段は毛細管作用によって吸水可能な多孔質の素材から成り、敷設部材と吸上部材とを有し、前記敷設部材は前記栽培容器の内部に敷設され、一部が前記給水用通孔に挿入され、前記吸上部材は一端が前記内部貯水槽の内部に配置され、他端が前記給水用開口を通して前記給水用連通孔に挿入され、前記内筒に対して前記外筒を回転させて前記給水用通孔と前記給水用連通孔とを連通させたとき前記敷設部材と前記吸上部材とが接するよう構成されていることを、
特徴とする請求項3記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記収納室の外部の空気を前記吸気口から前記収納室の内部に取り入れ、前記収納室の内部の空気を前記排気口から前記収納室の外部に排出するよう設けられたファンと、
前記収納室の内部にミストを噴出可能に設けられたミスト発生手段と、
前記収納室の内部に設けられた照明とを有し、
前記栽培容器は上部開口を有し、前記上部開口の周縁に前記栽培容器に向かって傾斜する傾斜フランジを有し、
前記外部貯水槽は所定の高さ位置に、内部の水を排出可能に設けられたオーバーフロー孔を有することを、
特徴とする請求項1、2、3または4記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記外部貯水槽の内部に浮かべられたフロートと、
前記外部貯水槽の前記開口部に設けられたフロートガイドとを有し、
前記外部貯水槽が満水になったとき、前記フロートが前記フロートガイドに接して前記開口部を塞ぐよう構成されていることを、
特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の植物栽培システム。
【請求項7】
請求項1、3、4、5または6記載の植物栽培システムと、
建物の外面に沿って、または、建物の内部および外部に渡って環状に設けられたガイド部材と、
前記植物栽培システムを前記ガイド部材に沿って移動可能に構成された移動手段とを、
有することを特徴とする建物用植物栽培システム。
【請求項8】
空調機を備えた建物の外面に設置された1つまたは複数の請求項1、3、4、5または6記載の植物栽培システムと、
前記空調機からの排気を各植物栽培システムの前記吸気口に導く排気ダクトと、
各植物栽培システムの前記排気口からの排気を前記空調機の吸気口に導く吸気ダクトとを、
有することを特徴とする建物用植物栽培システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−120459(P2012−120459A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271836(P2010−271836)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(507318646)
【Fターム(参考)】