説明

植物栽培用照明装置

【課題】簡易な構造でありながら効率よく光を照光して生産性の高い植物の栽培を達成する植物栽培用照明装置を提供すること。
【解決手段】屋内の植物栽培システムで植物を栽培するために用いられる植物栽培用照明装置100であって、植物Pを配置する中央空間Sの側方周面に配置される複数の発光体110と、発光体110の外周にまたは発光体110と一体に設置される筒状の反射板120とを備えている植物栽培用照明装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、観賞用植物などの植物を人工照明により栽培する、所謂、植物工場のような植物栽培システムに使用される植物育成用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜等の植物の水耕栽培による植物生産の試みが盛んに行われていて、多段に設けた育成棚の各棚上にそれぞれ栽培容器を載置するとともに、各棚に設けた栽培用照明装置によって、栽培容器に植えられた植物を栽培することで、植物の生育を促進させるようにした植物栽培装置が使用されている。
このような植物栽培装置では、空調された栽培室内において育成すべき植物の種類に応じて最適な環境を整えて育成棚に載置された植物の育成を行うのが通常であり、また植物栽培用照明装置として各育成棚の上方に蛍光灯または高圧ナトリウムランプなどの発光体を多数配置したものが周知であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前述した従来の植物栽培装置に使用される植物栽培用照明装置は多数の植物に対し上方からまとめて光を照射するものであったが、これとは別に、図11に示されるような、略円柱状の導光体711を利用して中央の空間に載置した植物Pに対して上方に設置したLED等の発光体が放射した光を導光体を介して外周面から光を照射するようにして、植物の側方から茎葉全体に光を照射して効率的に植物の育成を図ることが提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−304747号公報(段落[0003]、[0004]、図8)
【特許文献2】特開2005−176690号公報(段落[0026]乃至[0030]、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従前より、植物栽培システムにおいても生産性を向上することが求められていて、照明装置についてもその光量を増大させる方向にあり、植物栽培用照明装置の光源を高出力にとしたり、光源の設置数を増加させたりする傾向にある。
しかしながら、従前の蛍光灯または高圧ナトリウムランプのような光源、すなわち発光体、として高出力のものを使用したり、その数を増加して多数の発光体を設置したりすると、光量が増大するだけではなく発光体の発生する熱量も増大するので、植物栽培システム内を植物の生育に適した温度に保持するには、照明装置について別途冷却機構を設ける必要が生じてしまい、高出力化したエネルギー増分に相当するコストに加えて照明装置を冷却する冷却機構を設置するスペース、およびこれを設置・運転するコストが余計に必要となるという問題があった。
また、発光体の発熱量を軽減するため、HEFLや高輝度LEDというような高効率の発光体を使用することも考えられるか、高効率・高出力の発光体を多数設けることはやはりコストが高くなってしまうという問題があった。
また、前述した植物の側面から光を照射して効率を上げるようにしたものでは、独特の形状の導光体を使用するなど特殊な構造を有するものであり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するものであって、本発明の技術的課題、すなわち本発明の目的は、簡易な構造でありながら効率よく光を照光して生産性の高い植物の栽培を達成する植物栽培用照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、屋内の植物栽培システムで植物を栽培するために使用される植物栽培用照明装置であって、前記植物を配置する中央空間の側方周面に設置される複数の発光体と、該発光体の外周にまたは該発光体と一体に設置される筒状の反射板とを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項1に係る発明の構成に加えて、発光体および反射板が、径方向に拡縮自在であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
請求項3に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記発光体が上下方向に延設する管状発光体を周方向に等間隔に並設されて構成され、前記反射板が該管状発光体のそれぞれの外側面にV字状に配置される多数の短冊状鏡板で形成されるとともに各反射短冊状鏡板の内側端部どうしを接続して全体として星形多角柱を呈するように構成されていて、前記反射板の内側面から所定距離離間して前記管状発光体を設置して前記管状発光体および反射板を径方向に拡縮自在としたことにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
請求項4に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記反射板が前記発光体の外周側に所定距離離間して立設された複数の短冊状鏡板から構成されていて、前記発光体および短冊状鏡板が径方向に拡縮自在であるとともに、前記短冊状板体の一端または両端が隣接する短冊状鏡体と重畳あるいは分離して反射面を形成することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
請求項5に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記反射板が前記発光体の外周側に所定距離離間して周方向に立設された複数の支持軸に張設されて前記発光体の外周側を覆うように筒状を呈する可撓性の膜体で形成されていて、前記発光体および支持軸が径方向に拡縮自在であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項6に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項2乃至請求項5のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記発光体または反射板の上部または下部が分画されていて、分画された上部または下部の少なくともいずれか一方の端部が径方向に拡縮自在であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
請求項7に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記発光体が、前記反射板の内周面に周方向および上下方向に並設される複数の点状発光体により構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0014】
請求項8に係る発明の植物栽培用照明装置は、請求項1乃至請求項7のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記植物栽培用照明装置が、さらに昇降自在に吊下する昇降手段を備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明は、屋内の植物栽培システムで植物を栽培するために使用される植物栽培用照明装置であって、植物を配置する中央空間の側方周面に設置される複数の発光体と、発光体の外周にまたは発光体と一体に設置される筒状の反射板とを備えていることにより、中央空間に載置される個々の植物に対し筒状の外周面の全体から植物のすべての茎葉に対し影が生ずることなく光を照射するため、簡易な構造でありながら効率よく光を照射して高い生産性での植物の栽培を達成することができる。
特に、各発光体の外周に反射板を設置したことにより、従来は外部に散逸していた光を反射板により反射してすべての光を植物に向かって照射して、発光体の出力を上げることも数を増やすこともなく植物に照射する光量を増大するため、従来技術のように冷却機構を設ける必要もなく発光体の発生した光エネルギーを最大限有効に活用して高い生産性で植物を栽培することができる。
【0016】
請求項2に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、発光体および反射板が径方向に拡縮自在であることにより、照射対象とする植物の外形に対応した位置に発光体および反射板を配置するため、それぞれの植物の外形に適した光照射を実行することができるとともに不必要に大きな照射装置を使用することなく効率的な光照射を達成することができる。
【0017】
請求項3に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、発光体が上下方向に延設する管状発光体を周方向に等間隔に並設されて構成され、反射板が管状発光体のそれぞれの外側面にV字状に配置される多数の短冊状鏡板で形成されるとともに各短冊状鏡板の内側端部どうしを接続して全体として星形多角柱を呈するように構成されていて、反射板の内側面から所定間隔離間して管状発光体を設置して管状発光体および反射板を径方向に拡縮自在であることにより、一枚の平板状の反射板を折り畳んで星形多角柱形状として拡縮自在な反射板を形成するため、反射板を簡易かつ低コストで製作することができるとともに植物栽培用照明装置を全体として簡便かつ低コストで製作することができる。
【0018】
請求項4に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項2に係る発明の奏する効果に加えて、反射板が発光体の外周側に所定距離離間して立設された複数の短冊状鏡板から構成されていて、発光体および短冊状鏡板が径方向に拡縮自在であるとともに、短冊状鏡板の一端または両端が隣接する短冊状板体と重畳あるいは分離して反射面を形成することにより、簡易な形状の複数の短冊状鏡板を使用して反射板を製作することができるにもかかわらず発光体および反射板を自在に拡縮させることができるため、拡縮機構および植物栽培用照明装置を簡易な構造で低コストのものとすることができる。
【0019】
請求項5に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項2に係る発明の奏する効果に加えて、反射板が発光体の外周側に所定距離離間して周方向に立設された複数の支持軸に張設されて発光体の外周側を覆うように筒状を呈する可撓性の膜体で形成されていて、発光体および支持軸が径方向に拡縮自在であることにより、膜体の反射板はその可撓性ゆえに自在に凹凸形状に変形するので周方向の寸法を調整する機構を設ける必要がなく発光体および膜体の支持部を拡縮する機構のみで反射板の拡縮が可能となるため、全体的に構造を簡易化することができるとともに照明装置の製造コストを大幅に低減することができる。
【0020】
請求項6に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項2乃至請求項5のいずれかに係る発明の奏する効果に加えて、発光体または反射板の上部または下部が分画されていて、分画された上部反射板または下部反射板の少なくともいずれか一方の端部が径方向に拡縮自在であることにより、例えば上方を釣鐘状として植物の上面側からの照射を強力にしたり、下方を縮径させて葉裏面からの照射を強力にしたりというように、植物の外形に適した形状に発光体または反射板を形成するため、植物の茎葉に対しさらに効率的に光を照射することができる。
【0021】
請求項7に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、発光体が周方向および上下方向に並設される複数の点状発光体により構成されていることにより、管状発光体の場合のように長さ方向には一定の波長、光量でしか光照射できないという制約がなくなり、例えば、種々の波長の発光体を反射面上で周方向および軸方向に混在して配置するというように、発光体の種類、配置、分布などを決定する自由度が格段に拡張するため、対象となる植物に適合した植物栽培用照明装置をより好適に製作することができる。
【0022】
請求項8に係る発明の植物栽培用照明装置によれば、請求項1乃至請求項7のいずれかに係る発明が奏する効果に加えて、植物栽培用照明装置がさらに昇降自在に吊下する昇降手段を備えていることにより、照射対象である植物が大型である場合にも、光合成の盛んな部位を選択してその部位に植物栽培用照明装置を天井等から吊下して配置して光を照射できるため、さらにより生産性高く植物に対する光照射を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例である植物栽培用照明装置の概略図。
【図2】図1に示す植物栽培用照明装置の第一の使用態様図。
【図3】図1に示す植物栽培用照明装置の第二の使用形態図。
【図4】図1に示す植物栽培用照明装置の第三の使用形態図。
【図5】(a)本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置の拡径状態を示す平面図、(b)本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置の拡径状態を示す斜視図。
【図6】(a)本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置の縮径状態を示す平面図、(b)本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置の縮径状態を示す斜視図。
【図7】(a)本発明の第3実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する平面図、(b)本発明の第3実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する斜視図。
【図8】(a)本発明の第4実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する平面図、(b)本発明の第4実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する斜視図。
【図9】(a)本発明の第5実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する平面図、(b)本発明の第5実施例である植物栽培用照明装置の作動を説明する斜視図。
【図10】本発明の第6実施例である植物栽培用照明装置の部分断面斜視図。
【図11】従来技術の植物栽培用照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、植物栽培システム内で植物を栽培するために使用される植物栽培用照明装置であって、植物を配置する中央空間の側方周面に設置される複数の発光体と発光体の外周にまたは発光体と一体に設置される筒状の反射板とを備えていて、簡易な構造でありながら効率よく光を照光して生産性の高い植物の栽培を達成するものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0025】
すなわち、本発明の植物栽培法照明装置に使用される発光体は、蛍光灯、特にHEFL(ハイブリッド電極蛍光管)のような直線・管状の発光体でも、LEDのような点状の発光体でもよいし、また有機ELのような面状発光体を使用してもよい。
【0026】
また、本発明で使用される反射板としては、植物の生育に寄与する波長の光を反射するものであれば、金属板、合成樹脂板、剛性の板材、箔、可撓性で柔軟なシートなど、いかなるものでも構わない。
具体的には、塩化ビニルシートあるいは発泡スチロールからなる板材またはシート材の表面に反射面となる鏡面を張付、蒸着などの手法により形成したものや、金属板の内面を鏡面研磨した後に梨地状に加工したものなどを使用してもよい。
【0027】
さらに、本発明で使用される反射板は、人手により拡径、縮径させてもよいが、上方の端部に拡縮径のための機構を設けて、機械的に作動するようにしても構わない。
機械的な拡縮機構を採用する場合には、それぞれの管状発光体の端部あるいは反射板の端部に、例えば、従前傘などを開閉させる機構としてよく知られた入れ子状の往復動シリンダおよび数対のリンクからなる拡縮(開閉)機構を装着して拡縮させるというように、従来機構学的に周知のリンク機構、カム機構より構成される拡縮機構を採用すれば、当業者にとり適宜に作成することができる。
【0028】
また、筒状の反射板としては、円筒状の他に、三角筒、四角筒のような断面形状が多角形状のもの、星形多角柱状のものなど、拡縮可能でその断面積を増減自在であって内面を反射面として、内部の発光体が放射した光を外部に漏洩しないように構成されていれば、どのような形状であっても構わない。
さらに、この反射板の一部に開口部を設けて、例えば、植物の育成状況を確認するというように、内部の状態を視認できるようにしておいてもよいし、あるいは、植物栽培用照明装置をその側面に設けたスリット等の箇所から開閉可能としておくと、栽培する植物への着脱を簡便化することができる。
【0029】
また、構造を単純化する場合には、自立性を有する程度の剛性を備えたアルミニウム箔を折り畳んで形成した星形多角柱の内側面に発光体を接着剤などで貼り付けるだけのものとし、人手により拡径、縮径させるものとしても、植物栽培用照明装置としては充分機能させることができる。
なお、発光体と反射板との距離に関しては、反射板が鋭角に折り曲げられる場合には反射板の折り曲げを妨げることのないように折り曲げ線から離間した位置に発光体を設置する必要があるが、そうでなければ反射板の表面に発光体を設置するというように反射板に近接して設けても構わない。
【0030】
なお、発光体および反射板を拡縮自在とするとともに、照射対象となる植物と発光体との距離に応じて照射する光の光量を調整するようにすると、植物栽培用照明装置をより生産性高く栽培することができる。
さらに、予め異なる波長の光を発生する発光体を設置しておいて、照射すべき光の波長を適宜選定できるようにすると、光合成のみならず、花芽形成、発芽、節間伸張、結実など、植物の成長段階において必要となる波長の光を照射するようにすると、植物栽培用照明装置の用途を格段に拡張することができる。
【実施例1】
【0031】
本発明の第1実施例である植物栽培用照明装置100を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例である植物栽培用照明装置100の概略図である。
【0032】
本発明の第1実施例である植物栽培用照明装置100は、全体が略円筒形状を呈するものであって、植物Pが配置される中央空間Sの周囲に直線・管状のHEFLなどの管状発光体110を周面に沿って等間隔で並設させていて、これら管状発光体110の外周を覆うように反射板120を配置させて形成されている。
これら管状発光体110および反射板120は、第1実施例においては上方に設けたコントロールボックス130から径方向外側に張り出した支持アーム140のそれぞれの先端部から下方に垂下するように設けられている。
なお、支持アーム140は、各管状発光体110の位置に対応して発光体の数と同数設けられていて、管状発光体110と反射板120とは同じ支持アーム140から吊下されているが、図1に二点鎖線で示したように、管状発光体110の支持とは別に反射板120のみを支持する支持アーム140’を設けてもよい。
【0033】
また、このコントロールボックス130は各管状発光体110への電流の供給を制御するものであり、この部分に天井等から吊下する昇降手段である吊下ワイヤ150および電源用配線が接続されている。
なお、電源用配線は吊下ワイヤ150と一体としているので、吊下ワイヤ150と電源用配線とが絡まることを防いで取り扱いの便を図っているが、吊下ワイヤ150と電源用配線とを別に接続しても構わない。
さらに、コントロールボックス130において、点灯数、光量などを調整するものであるが、それ以外に、予め異なる波長の光を発生する管状発光体110を設置しておいて照射すべき光の波長に対応する管状発光体110を選択的に点灯するようにすると、光合成のみならず、花芽形成、発芽、節間伸張、結実など、植物Pの成長段階において必要となる波長の光に適合した管状発光体110を点灯し、必要とされる光を照射するようにすると、植物栽培用照明装置100の用途を格段に拡張することができる。
【0034】
なお、この上面の支持アーム140を内側に反射面を形成した円盤状の蓋体としてこの蓋体から管状発光体110および反射板120を垂下するように構成し、上方からも光を反射して照射するようにしてもよいし、この上方の反射面に別途発光体を設置してもよい。
以上のように、円筒形状の周面に管状発光体110および反射板120を配置することにより中央部に中央空間Sが形成されるので、ここに植物Pを位置させて周囲から光を照射するようにして使用する。
実際の使用に際しては、この植物栽培用照明装置100を植物Pの上方より被せて管状発光体110を点灯させれば、円筒状の全周面から植物Pに対し光が照射されるので、上方からのみ光を照射する場合に比べ、どの場所に位置する葉茎、果実等に対しても万遍なく光が照射され、例えば植物Pの上方の葉の影により下方の葉において充分な光合成ができない、というようなこと等が極力解消されて、効率よく植物Pを育成させることができる。
【0035】
また、管状発光体110の外側を反射板120で囲繞しているので、管状発光体110から外方に向けて放射された光も反射板120により反射されて植物Pに照射されるので、管状発光体110で発生した光が外部に散逸してしまうことはなく、ほとんどの光を無駄なく植物Pの栽培に役立てることができる。
さらに、個々の植物Pにそれぞれ植物栽培用照明装置100を配置して植物Pの成長状況に応じて個別に光照射の条件を設定できるので、植物Pの成長に個体差が生じてもそれぞれの成長に応じた光照射を実行することができる。
【0036】
植物栽培装置100を吊下する昇降手段としては、図2乃至図4に示される吊下ワイヤ150のようなワイヤの他に、チェーン、鎖、ベルトなどのような線状材料でも使用可能であり、吊下位置も蓋体の中心から吊下する以外に、上端面周囲の3箇所程度の部位で吊下するようにすれば、姿勢が崩れにくく安定する。
【0037】
本第1実施例の植物栽培用照明装置100は、図2乃至図4に示されるように種々の態様で使用することもできる。
図2乃至図4は、それぞれ図1に示す植物栽培用照明装置100の第一乃至第三の使用態様図である。
図2に示されるのは、背の低い植物Pに被せて使用する形態であるが、栽培用容器に載置された植物Pのみならず、圃場等の栽培地に植えられた植物Pに対しても上方から吊下して植物栽培用照明装置100を被せて使用することもできる。
また、図3に示されるように、例えば、植物Pの上方端部において成長が著しいときには植物Pの上方端部に本植物栽培用照明装置100を位置させて、この部分に重点的に光が照射されるようにすると、効率的に植物Pを生育させることができる。
同様に、図4に示されるように大型の植物Pの場合であっても、発芽、成長、開花、結実等の条件にあわせて、それぞれの時期に応じて植物Pにとり必要な箇所について本植物栽培用照明装置100を配置して各条件に応じた光の照射を行うことができる。
【0038】
以上に示したような種々の態様で植物栽培用照明装置100を使用するためには、人手により吊下ワイヤ150を昇降する他に、植物栽培装置100を昇降自在に吊下する機械的な昇降手段を設けることも有効である。
機械的な昇降手段としては、ウインチ等でワイヤを巻上・巻戻して昇降するような手段の他に、ネジ機構、ラック&ピニオン機構、アクチュエータ機構、リニアガイド機構などを使用して昇降駆動することもでき、これらの機構を採用すると、より安定して動作させることができる。
なお、このような昇降手段と植物栽培用照明装置100との間に回転機構を設けて、植物栽培用照明装置100を周方向に回転させるようにすると、栽培される植物Pに対し回転する管状発光体110および反射板120から光を照射するようになるので、内部の植物Pの全体に均等に光が照射されて植物Pをより一層不揃いなく生育させることができる。
【0039】
以上のようにして得られた本発明の第1実施例である植物栽培用照明装置100は、植物Pを配置する中央空間Sの側方周面に配置される複数の管状発光体110と管状発光体110の外周に配置される筒状の反射板120とを備えていることにより、反射板120を管状発光体110の外周に設けたというだけの簡易な構造でありながら効率よく光を照射して生産性の高い植物Pの栽培を達成することができるとともに、管状発光体110の出力を上げることも数を増やすこともなく植物Pに照射する光量を増加させるため、余分に冷却機構を設ける必要もなく管状発光体110の発生した光エネルギーを最大限有効に活用して高い生産性で植物Pを栽培することができる。
また、植物栽培用照明装置100が昇降自在に吊下する昇降手段150を備えたことにより、植物栽培装置100を植物Pの形態、成長段階に適合した位置に配置して、植物Pの形態、成長段階に適した光照射を実行して植物Pを高い生産性で栽培することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置200について、図5および図6に基づいて以下に説明する。
図5は、本発明の第2実施例である植物栽培用照明装置200が拡径した状態を示すもので、それぞれ(a)平面図および(b)斜視図であり、図6は、同第2実施例である植物栽培用照明装置200が縮径した状態を示すもので、それぞれ(a)平面図および(b)斜視図である。
【0041】
本第2実施例の植物栽培用照明装置200は、管状発光体210および反射板220を拡縮自在としたものである。
第2実施例の植物栽培用照明装置200において、反射板220は、それぞれの管状発光体210の外側に一対の短冊状鏡板222、222をV字形に配置されて、各短冊状鏡板222、222のV字の開口側、すなわち内周側である内側端部223が隣どうしで接合されて稜部を形成していて、また、V字を構成する短冊状鏡板222、222の閉塞端側は稜状の外側端部224を形成しているので、反射板220は、全体として、所謂星形多角柱形状を呈するものとなる。
このような反射板220は、一枚の平板状の反射板を屏風状あるいはアコーディオンカーテンのように屈曲させることにより極めて簡単に製作することができる。
【0042】
管状発光体210は、それぞれのV字を構成する短冊状鏡板222、222の間に配置されていて、例えば、反射板220の外側端部224に支持軸221を挿通して、この支持軸221から内周側に、アーム、リンク等の部材を使用して所定距離離間して立設されるので、反射板220を拡径・縮径させると管状発光体210も同時に拡径・縮径されることとなる。
第2実施例の植物栽培用照明装置200の最も簡単な形態は、図5および図6に示されるように管状発光体210および星形多角形の反射板220とから構成されて、植物Pに被せる際に人手によりその植物Pに応じた径に設定するものである。
この形態では、コントロールボックスは植物栽培用照明装置200の近傍に配置するか、植物栽培システムの中央に配置して遠隔制御するかのいずれかとする。
また、植物栽培用照明装置200の上方は上段の育成棚により覆われるように配置するか、別に蓋を設けて覆うようにすれば、上方向への光の散逸を減少させることができる。
【0043】
また、この植物栽培用照明装置200を上方から吊下する場合には、前述した第1実施例の植物栽培用照明装置100に示されるようなコントロールボックス130に設けた支持アーム140に、前述した管状発光体210および反射板220の外周端部224に設けた支持軸221を垂下して、支持アーム140に長溝等を設けてコントロールボックス130に対し摺動するようにして、支持アーム140とともに管状発光体210および支持軸221を径方向に移動自在とすればよい。
支持アーム140を摺動させて管状発光体210と支持軸221とを径方向内側に移動させると、各々の短冊状鏡板222、222は相互に角度を変え、図6(a)に示されるように、反射板220は全体として外側端部224を鋭角状とする星形多角柱形状を呈するようになり、管状発光体210とともに縮径した状態となる。
なお、これら管状発光体210および反射板220を拡縮自在とする機構は、前述した支持アーム140を摺動させる機構に限らず、パンタグラフ状のリンクを設置する、傘などの開閉機構として周知の拡縮機構を利用するなど、機構学的に周知の種々の機構を利用して構成することができる。
【0044】
このように、本第2実施例の植物栽培用照明装置200は、図5に示される拡径状態、および、図6に示される縮径状態、の2つの状態、あるいはその間の適宜の径を呈する状態を自在に設定可能なものである。
したがって、管状発光体210および反射板220を拡縮させて対象となる植物Pの大きさに応じた大きさとし、対象とする植物Pに好適な大きさの植物栽培用照明装置200として植物Pに応じた光量等で使用することができるので、サイズの合わない植物栽培用照射装置200を使用することがなく、無駄なエネルギーを消費することなく高効率で植物Pの栽培を実行することができる。
【実施例3】
【0045】
次に、上述した第2実施例の変形である第3実施例について、図7に基づいて以下に説明する。
図7は、本発明の第3実施例である植物栽培用照明装置300を示すもので、それぞれ(a)平面図、および(b)斜視図である。
第3実施例の植物栽培用照明装置300は、第2実施例と比べ、反射板320の装着態様を異にするのみで、その他の点は前述した第2実施例と同様である。
【0046】
第3実施例の植物栽培用照明装置300においては、図7(a)に示されるように、各管状発光体310の外周側に、周方向に所定の曲率を備えた縦長の短冊状鏡板322が複数設置されて、これら短冊状鏡板322の周方向の一端が、例えば管状発光体310とは別に設置された支持アーム140’から垂下した支持軸321に支持されている。
また、管状発光体310は、例えば前述した第2実施例と同様に支持アーム140から垂下して設けられて、径方向に摺動可能となっている。
これにより、第3実施例の植物栽培用照明装置300は、図7において実線で示される拡径状態、二点鎖線で示される縮径状態、またはそれらの間の適宜の径の状態に設定できるものである。
また、本第3実施例の植物栽培用照明装置300の場合も、第2実施例の場合と同様に、コントロールボックス330等を別体として、図7に示されるように管状発光体310および発光体の外周側に所定距離離間して立設される支持軸321に支持される反射板320とから植物栽培用照明装置300を構成して、植物Pに被せる際に植物栽培装置300の反射板320の径を人手により適宜に設定して使用するようにしてもよい。
【0047】
本第3実施例のように短冊状鏡板322で構成された反射板320を使用すると、前述した第2実施例において使用される星形多角形状の反射板220のような複雑な構造を不要として、構造自体を簡単なものとすることができる。
なお、ねじりコイルばね等により短冊状鏡板322を支持軸321まわりに短冊状鏡板322を閉鎖する方向に付勢しておくようにするか、短冊状鏡板322の支持軸321と周方向の他端側の箇所に周方向に延びる溝を形成しておいて隣接する短冊状鏡板322の支持軸321付近に設けた係合突起を短冊状鏡板322に形成した溝に摺動可能に係合させておくようにするか、あるいは短冊状鏡板322の外周全体を輪ゴム等の弾性部材により囲繞しておく、などの方法により隣接する短冊状鏡板322相互の間に隙間が生じないようにしておくと、反射板320を全体として光の漏れを生ずることのなく、使い勝手のよいものとできる。
【実施例4】
【0048】
次に、本発明の第4実施例の植物栽培用照明装置400を、図8に基づいて以下に説明する。
図8は、本発明の第4実施例である植物栽培用照明装置400を示すもので、それぞれ(a)平面図、および(b)斜視図である。
第4実施例の植物栽培用照明装置400は、前述した各実施例の植物栽培用照明装置と比べ、反射板420を可撓性の膜体により形成したものであり、管状発光体410の配置などその余の点は前述した各実施例と同様である。
【0049】
第4実施例では、図8に示されるように、中央空間Sの周囲に管状発光体410を立設し、この管状発光体410の間で外周側に所定距離離間して周方向に立設された複数の支持軸421に張設されて、各管状発光体410の外周を覆うように塩化ビニルシートの内周面に反射面を形成した可撓性の反射板420を形成したものである。
本第4実施例も、最も簡略化した形態では、コントロールボックス130等を別体として、図8に示されるように、管状発光体410および支持軸421を挿通した反射板420およびこれら所定の距離に維持ずる支持アーム等の適宜の間隔保持機構より植物栽培用照明装置400を構成して、植物Pに被せて使用し、この場合も、植物Pの大きさにあわせて適宜に人手により管状発光体410および反射板420を張設した支持軸421の径を調整して使用するものである。
【0050】
また、吊下して使用する形態では、例えば、管状発光体410を吊下する支持アーム140の間に張設された支持アーム140’から支持軸421を垂下し、支持軸421に内側を鏡面とした膜体の反射板420が設置されて、拡径した状態では、図8に実線で示されるように反射板420が略円筒状を呈するものである。
管状発光体410と反射板420の支持軸421とをあわせて縮径すると、図8に二点鎖線で示されるように、反射板420は、それ自身の可撓性のため管状発光体410の周囲を巻き込むように凹凸状に変形して蛇腹状の形状となる。
この状態においても、管状発光体410から放射された光は凹凸した反射面により反射されて、中央空間に位置する植物Pに照射される。
このように、第4実施例の植物栽培用照明装置400は、図8において実線で示される拡径状態と二点鎖線で示される縮径状態、またはそれらの間の適宜の径の状態に設定できるものである。
第4実施例のように反射板420を可撓性の膜体で形成すると、反射板420を拡縮させるために反射板420に特別の構造を設ける必要がないため、植物栽培用照明装置400を格段に簡素化することができる。
なお膜体の反射板420は必ずしも支持軸421に張設する必要はなく、管状発光体410の外側の周面の一部に接着剤などで張り付けるようにして、管状発光体410とともに拡縮自在として植物栽培用照明装置400を構成することもできる。
【実施例5】
【0051】
さらに、本発明の第5実施例である植物栽培用照明装置500について、図9に基づいて以下に説明する。
図9は、本発明の第5実施例である植物栽培用照明装置500の作動を説明する、それぞれ(a)平面図、および(b)斜視図である。
本第5実施例の植物栽培用照明装置500は、第3実施例の植物栽培用照明装置300と比べて、発光体として点状発光体510を使用したこと、および発光体と反射板の装着態様を異にするものであって、その他の点は前述した第3実施例と同様である。
【0052】
本第5実施例では、発光体として図9に示されるように点状発光体510を使用し、点状発光体510は、反射板520の表面において縮径したときに重ならない位置に縦横に並べて設置されている。
反射板520は、内側に配置される内側反射板522と、外側に配置される外側反射板523とで、本第5実施例では、それぞれ4枚使用されている。
【0053】
前述した第3実施例と同様に、上方から吊下する形態の場合には、内側反射板522および外側反射板523とは、例えば前述したような支持アーム140から垂下されているが、本第5実施例の場合には点状発光体510が反射板520の表面に設置されるため、点状発光体510と反射板520とを一つの支持アーム140および支持軸521から垂下して構成することができる。
第5実施例である植物栽培用照明装置500が拡径した状態を実線で、また、縮径した状態を二点鎖線で、それぞれ図9に示されているが、本第5実施例も、図9に実線で示される拡径状態、二点鎖線で示される縮径状態、またはそれらの間の適宜の径の状態に設定できるものである。
【0054】
本第5実施例の植物栽培用照明装置500では、縦方向および横方向に点状発光体510が多数配置されているので、管状発光体に劣らない程度の光量の光を照射することができるとともに、点状発光体510を反射板520の表面に設置したことにより拡縮機構をさらに簡易化することができる。
また、本第5実施例の場合も、前述した第3実施例の場合と同様に、コントロールボックスを別体として、図9に示されるように点状発光体510および支持軸521を有する反射板520から植物栽培用照明装置500を構成して、植物Pに被せる際に植物栽培装置500の径を人手により設定して使用するようにしてもよい。
【0055】
以上のようにして得られた第2実施例乃至第5実施例の植物栽培用照明装置200乃至500は、発光体210、310、410、510および反射板220、320、420、520が径方向に拡縮自在であることにより、前述した第1実施例の奏する効果に加えて、照射対象となる植物Pに応じた好適な位置に発光体210、310、410、510および反射板220、320、420、520を配置して、出力の大きな発光体を使用することなく植物Pに対し十分な光量の光を照射するので、簡易な構造でありながら効率よく光を照光して生産性の高い植物Pの栽培を達成することができる。
【0056】
また、発光体として、a1)上下方向に延設する管状発光体210を周方向に等間隔に並設された管状発光体210、310、410、a2)反射板520の内周側に周方向および上下方向に並設した複数の点状発光体510、のいずれかを使用し、反射板として、b1)管状発光体210のそれぞれの外側面にV字状に配置される多数の短冊状鏡板222で形成されるとともに各短冊状鏡板222の内側端部223どうしを接続されて全体として星形多角柱を呈するように構成されていて、反射板220の外側端部224から所定間隔離間して管状発光体210を設置して管状発光体210とともに径方向に拡縮自在である反射板220、b2)管状発光体310の外周側に所定距離離間して周方向に立設された複数の短冊状鏡板322から構成されていて、管状発光体310および短冊状鏡板322が径方向に拡縮自在であるとともに、短冊状鏡板322の一端または両端が隣接する短冊状鏡板322と重畳あるいは分離して反射面を形成する反射板320、520、またはb3)管状発光体410の外周側に所定距離離間して周方向に立設された複数の支持軸に張設されて管状発光体410の外周側を覆うように筒状を呈する可撓性の膜体で形成されていて支持軸421が管状発光体410とともに径方向に拡縮自在である反射板420、のいずれかを使用することにより、発光体210、310、410、510または反射板220、320、420、520の構造を簡便なものとして、簡易な構造かつ低コストで製作可能でありながらも植物Pに対しては充分な光量の光を照射可能な植物栽培用照明装置200、300、400、500を提供することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例6】
【0057】
次に、本発明の第6実施例である植物栽培用照明装置600について、図10に基づいて以下に説明する。
図10は、第6実施例である植物栽培用照明装置600の一部断面斜視図である。
【0058】
第6実施例の植物栽培用照明装置600は、図10に示されるように、反射板620が中央部反射板621と上部反射板622および下部反射板623の3つの部分に分画、形成されている。
上部反射板622と下部反射板623とは、複数の鏡板から形成されていて、中央部反射板621に対し内側方向に屈曲自在に取り付けられていて、それぞれ上端または下端が二点鎖線で示されるような状態にまで、それぞれ縮径自在となっている。
中央部反射板621は、内周面が鏡面に加工されているとともに、この内周面に面状発光体610を設置されている。
また中央部反射板621は、上端においてコントロールボックス630から支持アーム640により吊下されていて、面状発光体610に対する配電はこの支持アーム640の部分を経由して行われる。
また、コントロールボックス630には、吊下ワイヤ650が設けられていて、この吊下ワイヤ650に電源用配線が一体とされていることは、第1実施例と同様である。
【0059】
本第6実施例の植物栽培法照明装置600の場合は、上部反射板622または下部反射板623の端部が適宜に拡縮自在であるため、例えば、植物Pの上部に光を集中させたいときには上部反射板622を縮径させて反射板620を釣鐘状の形態とすれば、上部に集中的に光を照射することができる。
また、開花、結実等の都合で下部、葉裏面などに光を照射したいときには下部反射板623を縮径させて下方に集中的に光を照射することができる。
さらに、図10に示されるように、植物Pの形態に応じて上部反射板622および下部反射板623の双方を適宜に縮径させて、植物Pの形態に適した光照射を実現することもできる。
このように、第6実施例の植物栽培用照明装置600は、植物Pの各成長段階の形態に応じて上部反射板622または下部反射板623の端部を縮径させて、それぞれの段階に適した反射板の形態として光照射を実行することができるものである。
【0060】
なお、第6実施例においては上部反射板622または下部反射板623を球面状の曲面で形成しているが、これは、図示二点鎖線に示される形状からも理解されるように、球面状の曲面としたほうが縮径時における光の漏洩を小さくすることができるからである。
しかし、幅狭の多数の反射板を使用する等して上部反射板622または下部反射板623の重なり具合を調整する、あるいは縮径量を小さい範囲に制限して上部反射板622または下部反射板623の間に生ずる隙間を減少させることで、円筒状の曲面を備える反射板を使用することも可能である。
また、面状発光体610は、中央部反射板621の部分のみではなく上部反射板622、下部反射板623に設置してもよいし、多数の点状発光体をこれら中央部反射板621、上部反射板622および下部反射板623上に並べて設置してもよい。
【0061】
なお、上述した各実施例においては、反射板120、220、320、420、520、620の反射面を鏡面加工したものとして記載しているが、反射面は特に鏡面である必要はなく、反射面を梨地状に加工したものであってもよい。
梨地状の反射面を採用した場合には、発光体110、210、310、410、510、610から放射された光が梨地状の表面で乱反射されて散乱するので、植物Pに対し均質な光を照射することができる。
【0062】
以上のようにして得られた本発明の第6実施例である植物栽培用照明装置600は、面状発光体610または反射板620の上部または下部が分画されていて、分画された上部反射板622および下部反射板623の端部が拡縮自在であることにより、前述した第3実施例乃至第5実施例のいずれかが奏する効果に加えて、反射板620の形状を軸方向にも部分的に拡縮可能とするという簡易な構造であるとともに、植物栽培装置600内での光照射の強弱分布を変更して、植物Pの形態、成長段階に適した箇所または強度の光照射をきめ細かに達成することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0063】
100、200、300、400、500、600・・・植物栽培用照明装置
110、210、310、410 ・・・管状発光体
510 ・・・点状発光体
610・・・面状発光体
120、220、320、420、520、620・・・反射板
221、321、421 ・・・支持軸
222、322 ・・・短冊状鏡板
223 ・・・内側端部
224 ・・・外側端部
522 ・・・内側反射板
523 ・・・外側反射板
621・・・中央部反射板
622・・・上部反射板
623・・・下部反射板
130、 630・・・コントロールボックス
140、140’、 640・・・支持アーム
150、 650・・・吊下ワイヤ
710 ・・・発光体
711 ・・・導光体
P ・・・植物
S ・・・中央空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の植物栽培システムで植物を栽培するために使用される植物栽培用照明装置であって、
前記植物を配置する中央空間の側方周面に設置される複数の発光体と、
該発光体の外周にまたは該発光体と一体に設置される筒状の反射板とを備えていることを特徴とする植物栽培用照明装置。
【請求項2】
前記発光体および反射板が、径方向に拡縮自在であることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項3】
前記発光体が上下方向に延設する管状発光体を周方向に等間隔に並設されて構成され、
前記反射板が該管状発光体のそれぞれの外側面にV字状に配置される多数の短冊状鏡板で形成されるとともに各短冊状鏡板の内側端部どうしを接続されて全体として星形多角柱を呈するように構成されていて、
前記反射板の内側面から所定距離離間して前記管状発光体を設置して前記管状発光体および反射板が径方向に拡縮自在であることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項4】
前記反射板が前記発光体の外周側に所定距離だけ離間して立設された複数の短冊状鏡板から構成されていて、
前記発光体および短冊状鏡板が径方向に拡縮自在であることにより、前記短冊状鏡板の一端または両端が隣接する短冊状鏡板と重畳あるいは分離して反射面を形成することを特徴とする請求項2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項5】
前記反射板が前記発光体の外周側に所定距離だけ離間して周方向に立設された複数の支持軸に張設されて前記発光体の外周側を覆うように筒状を呈する可撓性の膜体で形成されていて、前記発光体および膜体の反射板が径方向に拡縮自在であることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項6】
前記発光体または反射板の上部または下部が分画されていて、分画された上部または下部の少なくともいずれか一方の端部が径方向に拡縮自在であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の植物栽培用照明装置。
【請求項7】
前記発光体が、前記反射板の内周面に周方向および上下方向に並設される複数の点状発光体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の植物栽培用照明装置。
【請求項8】
前記植物栽培用照明装置が、さらに昇降自在に吊下する昇降手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の植物栽培用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−105551(P2012−105551A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254838(P2010−254838)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】