説明

植物栽培装置

【課題】 植物の生長過程に応じたきめ細かな調整可能な植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 長方形の棚板12、13、14、15の長辺に垂直に蛍光ランプ12a、12b、12c、12d、12eを配置し、蛍光ランプ間の光量を異なるように変化させたり、蛍光ランプ間隔を変化させることのより、単一の棚板上であっても場所により光量を調整することを可能とした。また、蛍光ランプ間の分光特性を調整することも可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工光源特に蛍光ランプを使用して植物の栽培もしくは生長を制御する植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蛍光ランプを使用した植物栽培装置を図4並びに図5を参照して説明する。図4は単一の第1栽培棚51の構成を示す斜視図である。すなわち、この例では4段の栽培ステージとなる棚板52〜55を備え、各棚板52〜55の上方には各々2本の蛍光ランプ52a、52b〜55a、55bが設置されている。各棚板52〜55は幅120cm、奥行き45cmの長方形であり、長さ120cmの蛍光ランプ52a、52b〜55a、55bは長方形の棚板52〜55の長辺52j〜55jに平行、すなわち短辺52k〜55kに垂直に設置されている。このように、図4に示す単一の第1栽培棚51においては、各棚板52〜55の上方に長辺52j〜55jに平行に蛍光ランプ52a、52b〜55a、55bが設置されているため、各棚板上のいずれの箇所においても照射される光量は概略一定となる。
【0003】
さて、このような構成の栽培棚を3個連結した植物栽培装置を図5を参照して説明する。なお、符号を付しての説明は4段の棚板の内、最上段の棚板についてのみ行い、2段目以降は省略するが、次段以降も同様な構成並びに動作を行うものである。すなわち、第1栽培棚51、第2栽培棚61、第3栽培棚71は長方形の棚板52、62、72の短辺52k、62k、72kにて連結されている。各棚板52、62、72の上方には図4に示したように棚板の長辺52j、62j、72jに平行に第1蛍光ランプ群56、第2蛍光ランプ群66、第3蛍光ランプ群76が設置されている。第1蛍光ランプ群56は、図4に示したように2本の平行に配置されている蛍光ランプ52a、52bから構成されている。同様にして第2栽培棚61、第3栽培棚71においても、第1栽培棚51と同様な構成となっており、棚板62、72の長辺62j、72jに平行に第2蛍光ランプ群66、第3蛍光ランプ群76が装着されており、図5では前方の蛍光ランプ52a、62a、72aが示されている。
【0004】
被栽培植物である苗80は、移動トレー81に載置された状態で、第1栽培棚51から第3栽培棚71までの棚板52、62、72上を第1蛍光ランプ群56、第2蛍光ランプ群66、第3蛍光ランプ群76によって照射されながら白抜き矢印82の方向へ移動し、一定期間栽培されて第3栽培棚71の端部から取り出される。
【0005】
このような構成の3連の栽培装置においては、第1栽培棚51から苗80を挿入し第3栽培棚71から取り出すまで、全ての栽培棚の光量を一定にすることも可能であるが、植物の生長過程によって必要とする光量が異なるため、図5に示した例では各栽培棚の光量を変化させている。すなわち、第1栽培棚51の第1蛍光ランプ群56の光量を最小とし、第3栽培棚71の第3蛍光ランプ群76の光量を最大にして第2蛍光ランプ群66の光量を中間に設定してある。各蛍光ランプ群からの下方への実線矢印の数で光量の大きさを表してある。このようにして第1栽培棚51から挿入された苗80は第3栽培棚71から取り出されまで3段階の光量の照射を受け育成されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の3連の栽培棚を備えた植物栽培装置においては、植物の生長過程に応じて3段階までは光量を変化させることは可能であるが、それ以上の光量変化を行うことはできない。すなわち、蛍光ランプを棚板の長辺に平行に設置してあるため、各栽培棚の棚板上の光量はいずれの箇所でも概略同一となることに起因している。従って、例えば3連の栽培棚であっても3段階を越えてきめ細かい光量変化により、効率よく育苗させることはできなかった。
【0007】
本発明は、単一の棚板上であっても場所によって所望の光量を照射することを可能とした植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係わる植物栽培装置は、被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも2本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記蛍光ランプのいずれかの光量が他の蛍光ランプの光量と比較して異なるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係わる植物栽培装置は、被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも3本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記いずれかの隣接する蛍光ランプの間隔が他の隣接する蛍光ランプの間隔と比較して異なるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係わる植物栽培装置は、被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも2本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記いずれかの蛍光ランプの分光特性が他の蛍光ランプの分光特性と比較して異なるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
植物を蛍光ランプの照射により栽培する場合に、各植物の生長過程に応じて最適な光量、光質を微妙に選択、調整することが可能となり、植物の生長に好影響をもたらすとともに省電力化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明に係わる実施形態を図1〜図3を参照して説明する。図1は、単一の第1栽培棚11の構成を示す斜視図である。栽培ステージとなる棚板の構成は図4に示したものと同一であるが、4段の棚板12、13、14、15の各々は幅120cm、奥行き45cmの長方形である。また、棚板12、13、14、15の間隔は40cmである。各棚板12、13、14、15の上部には、長さ45cmの蛍光ランプ12a、12b、12c、12d、12e〜15a、15b、15c、15d、15eをそれぞれ棚板12、13、14、15の長辺12j、13j、14j、15jに垂直で、短辺12k、13k、14k、15kに平行でかつ蛍光ランプ間隔を等間隔に配置しており、光量の調整は個々の蛍光ランプに投入する電力を増減調整することにより変化させることができる。また、生長過程に応じた光量の照射に伴って省電力化もなされる。
【0013】
このような構成の栽培棚を3個連結した植物栽培装置を図2を参照して説明する。なお、符号を付しての説明は4段の棚板の内、最上段の棚板についてのみ行い、2段目以降は省略するが、次段以降も同様な構成並びに動作を行うものである。すなわち、第1栽培棚11、第2栽培棚21、第3栽培棚31は長方形の棚板12、22、32の短辺12k、22k、32kにて連結されている。各棚板12、22、32の上方には図1に示したように棚板の長辺12j、22j、32jに垂直、すなわち短辺12k、22k、33kに平行に第1蛍光ランプ群16、第2蛍光ランプ群26、第3蛍光ランプ群36が設置されている。
【0014】
第1蛍光ランプ群16は、図1に示したように棚板12の長辺12jに垂直に5本の蛍光ランプ12a、12b、12c、12d、12eを等間隔に配置して構成されている。同様に、第2蛍光ランプ群26は、5本の蛍光ランプ22a、22b、22c、22d、22eを等間隔に配置して構成し、第3蛍光ランプ群36は、5本の蛍光ランプ32a、32b、32c、32d、32eを等間隔に配置して構成されている。
【0015】
栽培すべき苗40は、移動トレー41に載置された状態で、第1栽培棚11、第2栽培棚21、第3栽培棚31の棚板12、22、32上を第1蛍光ランプ群16、第2蛍光ランプ群26、第3蛍光ランプ群36によって照射されながら白抜き矢印42の方向へ移動して、一定期間栽培されて第3栽培棚31の端部から取り出される。
【0016】
さて、本発明にあっては各栽培棚の蛍光ランプ群を構成する蛍光ランプは、長方形の棚板の長辺に垂直に配置されていることから、各蛍光ランプへの投入電力を調整することにより、蛍光ランプの光量を増減調整することができる。この結果、蛍光ランプ下方の苗が受光する光量を異なるようにすることが可能となる。すなわち、単一の棚板上であっても場所によって蛍光ランプの光量が異なるようにすることを可能にしたものである。
【0017】
図2示した本発明に係わる実施形態においては、苗40の挿入側である第1栽培棚11から取出し側である第3栽培棚31へ向かって蛍光ランプの光量を徐々に増大するように構成したものである。図2の蛍光ランプ下方に示した実線矢印の数は対応する蛍光ランプから照射される光量の大きさを表したものである。第1栽培棚11の第1蛍光ランプ群16においては、3段階に光量を増大させている。すなわち、蛍光ランプ12a、12bは同一の最小光量で照射し、蛍光ランプ12c、12dは同一光量ではあるが2段階目の光量に増大させている。蛍光ランプ12eは3段階目の光量に更に増大させてある。
【0018】
第2栽培棚21の第2蛍光ランプ群26においては、蛍光ランプ22a、22b、22cが3段階目の同一光量であるが、蛍光ランプ22d、22eは同一光量ではあるが4段階目に光量を増大させてある。同様に、第3栽培棚31の第3蛍光ランプ群36においては、蛍光ランプ32a、32b、32cが4段階目の同一光量であって、苗40の最終生長時期にあたる蛍光ランプ32d、32eが5段階目の最大光量に増大されている。
【0019】
このようにして、少なくとも2本の蛍光ランプのいずれかの蛍光ランプへの投入電力を調整することにより照射光量を異なるようにすることができ、栽培対象の植物にとって最適に生長するように移動位置すなわち生長時期に応じた光量が照射されるよう調整することを可能とした。図2の例では苗40の挿入から取出しまで光量を順次増大させているが、移動途中すなわち成長途中にて一時的に光量を減少させたり、栽培対象に応じて種々の光量分布パターンになるように調整することも可能である。
【0020】
図2に示した実施形態では、各栽培棚の蛍光ランプの数並びに間隔を同一にし、場所によって該当する蛍光ランプへの投入電力を調整して照射光量を可変にしていたが、照射光量を調整する他の実施形態を図3を参照して説明する。なお、図2と同一箇所は同一符号を付して説明する。
【0021】
図3に示した本発明に係わる他の実施形態においては、第1栽培棚11、第2栽培棚21、第3栽培棚31の各々に装着する蛍光ランプの数並びに隣接する蛍光ランプとの間隔を変更することによって、照射光量が異なるよう調整可能に構成したものである。
【0022】
すなわち、第1栽培棚11では5本の蛍光ランプ12a、12b、12c、12d、12eが蛍光ランプ12aから12eまで間隔を順次狭くなるように配置されており、第2栽培棚21では8本の蛍光ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h並びに第3栽培棚31の11本の蛍光ランプ32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i、32j、32kが同様に間隔が狭くなるように配置されている。このようにして第1栽培棚11から第3栽培棚31までの24本の各蛍光ランプへの投入電力は同一ではあるが、各栽培棚毎に蛍光ランプの本数を増加させ、間隔も狭めてあるために、栽培すべき苗40が生長につれて照射される光量は、順次増大する。このように少なくとも3本の蛍光ランプのいずれかの隣接する蛍光ランプの間隔を他の隣接する蛍光ランプの間隔と異なるように配置することによって、栽培対象への照射光量を変化させることを可能としたものである。
【0023】
また、少なくとも2本の蛍光ランプを配置させた場合に、いずれかの蛍光ランプの分光特性を他の蛍光ランプの分光特性と比較して異なるように変化させることも可能である。栽培対象の植物の種類、生長時期等に応じた分光特性の光を照射させることにより、最適な栽培環境を提供することができる。更に、蛍光ランプとしては熱陰極蛍光ランプでもよいし、冷陰極蛍光ランプを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態の構成並びに動作を説明するための正面図。
【図3】本発明の他の実施形態の構成並びに動作を説明するための正面図。
【図4】従来の栽培装置の要部を示す斜視図。
【図5】従来の栽培装置の構成並びに動作を説明するための正面図。
【符号の説明】
【0025】
11…第1栽培棚、12、13、14、15…棚板、12a、12b、12c、12d、12e…蛍光ランプ、21…第2栽培棚、31…第3栽培棚、40…苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも2本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記蛍光ランプのいずれかの光量が他の蛍光ランプの光量と比較して異なるようにしたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも3本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記いずれかの隣接する蛍光ランプの間隔が他の隣接する蛍光ランプの間隔と比較して異なるようにしたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
被栽培植物が長手方向に移動する長方形の栽培ステージと、この栽培ステージの上方に配置された少なくとも2本の蛍光ランプを備えた植物栽培装置であって、前記蛍光ランプの長手方向が前記栽培ステージの長辺に垂直になる如く配置され、前記いずれかの蛍光ランプの分光特性が他の蛍光ランプの分光特性と比較して異なるようにしたことを特徴とする植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−204244(P2006−204244A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23271(P2005−23271)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】