説明

植物栽培装置

【課題】簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大した植物栽培装置を提供すること。
【解決手段】上下方向に多段に配置される複数の栽培棚110を上下方向に移動させる植物栽培装置100において、一端側を回動可能に接続された一対の支持アーム111のそれぞれの他端側の移動軌跡を一対のレール部材114で拘束し、栽培棚110を一対の支持アーム111の回動可能に接続された一端側に支持するように構成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に多段に配置される複数の栽培棚を駆動装置により上下方向に移動させる植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向に複数の栽培棚を多段に配置するとともに、それらを順次上下方向に移動させながら日照、潅水などの作業を行うことで、植物の単位面積当たりの栽培量を増大させた植物栽培装置が知られている。
【0003】
公知の植物栽培装置500は、例えば図3、図4に示すように、植物Sを生育する複数の栽培棚510が、無端状に形成され上下に設けられた回転輪521、522に掛け回された索状体524に等間隔に支持されて多段に配置されている。
【0004】
回転輪521、522の少なくとも一方は回転駆動手段523によって回転駆動され、索状体524が駆動されることにより索状体524に支持された栽培棚510が上方あるいは下方に移動するように構成されており、最下方(あるいは最上方)で植物Sの生育が開始され、日照、潅水などの作業を行いつつ順次栽培棚510を上方向(下方向)に移動し、最上方(あるいは最下方)で植物Sの生育が完了する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3083319号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、公知の植物栽培装置500は、複数の栽培棚510が索状体524に等間隔に支持されており、上下の栽培棚510の間隔が一定であるため、当該間隔を上方位置(下方位置)で植物Sの生育が完了して最も大きくなる際に必要な間隔とする必要があり、植物Sの生育初期における下方位置(上方位置)では上下方向に無駄な空間が生じ、単位空間当たりの栽培量が減少するという問題があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大した植物栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、上下方向に多段に配置される複数の栽培棚と、該栽培棚を上下方向に移動させる駆動装置とを有する植物栽培装置において、前記駆動装置が、一端側を回動可能に接続された一対の支持アームと、前記一対の支持アームのそれぞれの他端側の移動軌跡を拘束する一対のレール部材とを有し、前記支持アームの他端側を前記レール部材に沿って上下方向に駆動するように構成され、前記栽培棚が、前記一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に支持され、前記一対のレール部材が、上下方向で変化する間隔を有するように設けられ、前記一対の支持アームが、複数対設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記駆動装置が、前記一対の支持アームのそれぞれの他端側を回動可能に支持する一対の索状体と、該索状体を駆動する回転駆動手段とを有していることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記索状体が、それぞれ無端状に形成され上下に設けられた回転輪に掛け回され、前記回転駆動手段が、前記回転輪の少なくとも一つを回転駆動するものであることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項2に記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記索状体が、それぞれ有端状に形成されそれぞれの一方の端部が巻取輪に巻き付けられ、前記回転駆動手段が、前記巻取輪を回転駆動するものであることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記栽培棚が、前記一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に着脱可能に支持されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項2乃至請求項5のいずれか1つに記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記一対の支持アームのそれぞれの他端側が、前記索状体に着脱可能に支持されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された植物栽培装置の構成に加えて、前記一対のレール部材が、任意に間隔および角度を設定可能であり、前記複数対の支持アームが、任意の間隔に設定可能に構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の植物栽培装置は、上下方向に多段に配置される複数の栽培棚と、該栽培棚を上下方向に移動させる駆動装置とを有することにより、単位面積当たりの栽培量を増大することができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0016】
すなわち、本請求項1に係る発明の植物栽培装置は、駆動装置が一端側を回動可能に接続された一対の支持アームと、一対の支持アームのそれぞれの他端側の移動軌跡を拘束する一対のレール部材とを有し、支持アームの他端側をレール部材に沿って上下方向に駆動するように構成され、栽培棚が一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に支持され、一対のレール部材が上下方向で変化する間隔を有するように設けられ、一対の支持アームが複数対設けられていることによって、レール部材の間隔の変化により一対の支持アームが回動することによって栽培棚の間隔を変化させることができるため、植物の生育に合わせて栽培棚の間隔を変化させることで上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0017】
本請求項2に係る発明の植物栽培装置は、請求項1に係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、駆動装置が一対の支持アームのそれぞれの他端側を回動可能に支持する一対の索状体と、該索状体を駆動する回転駆動手段とを有していることにより、簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0018】
本請求項3に係る発明の植物栽培装置は、請求項2に係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、索状体がそれぞれ無端状に形成され上下に設けられた回転輪に掛け回され、前記回転駆動手段が、回転輪の少なくとも一つを回転駆動するものであることにより、さらに簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0019】
本請求項4に係る発明の植物栽培装置は、請求項2に係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、索状体がそれぞれ有端状に形成されそれぞれの一方の端部が巻取輪に巻き付けられ、回転駆動手段が巻取輪を回転駆動するものであることにより、さらに簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0020】
本請求項5に係る発明の植物栽培装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、栽培棚が一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に着脱可能に支持されていることにより、植物の栽培を行わない生育開始前および生育完了後の栽培棚を外部に搬出することができるため、さらに単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0021】
本請求項6に係る発明の植物栽培装置は、請求項2乃至請求項5のいずれか1つに係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、一対の支持アームのそれぞれの他端側が索状体に着脱可能に支持されているため、駆動装置をさらに単純化し小型化することができるため、さらに単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0022】
本請求項7に係る発明の植物栽培装置は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る植物栽培装置が奏する効果に加えて、一対のレール部材が任意に間隔および角度を設定可能であり、複数対の支持アームが任意の間隔に設定可能に構成されていることため、栽培される植物の大きさや生育速度に応じた最適な棚間隔とすることができるため、さらに単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例である植物栽培装置の側面図。
【図2】本発明の一実施例である植物栽培装置の斜視図。
【図3】従来の植物栽培装置の側面図。
【図4】従来の植物栽培装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の植物栽培装置は、上下方向に多段に配置される複数の栽培棚と、該栽培棚を上下方向に移動させる駆動装置とを有する植物栽培装置において、駆動装置が一端側を回動可能に接続された一対の支持アームと、一対の支持アームのそれぞれの他端側の移動軌跡を拘束する一対のレール部材とを有し、支持アームの他端側をレール部材に沿って上下方向に駆動するように構成され、栽培棚が一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に支持され、一対のレール部材が上下方向で変化する間隔を有するように設けられ、一対の支持アームが複数対設けられ、簡単な機構で、生育初期における上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大できるものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0025】
すなわち、本発明の植物栽培装置は、野菜、穀物、豆類、果実、観賞用植物等のいかなる植物を栽培するものであっても良く、種、苗等のいかなる状態から生育を開始するもののでも良く、いかなる状態で生育を完了するものであっても良い。
また、本発明の植物栽培装置は、ビニールハウスや建物等の屋内、屋外のいずれに設置されるものであっても良く、日照、潅水、施肥等はいかなる方法で行われるものであっても良い。
【0026】
本発明の植物栽培装置に用いる索状体は、チェーン、ロープ、ベルト等いかなるものであっても良い。
また、本発明の植物栽培装置に用いる栽培棚は、直接土壌を保持するものでも良く、ポット状の土壌や培養地を保持するものであっても良く、水耕栽培、噴霧栽培等の培養地となるものであっても良い。
【実施例1】
【0027】
以下に、本発明の実施例である植物栽培装置について図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例である植物栽培装置100は、図1、図2に示すように、複数の栽培棚110を順次上方向あるいは下方向に移動させるように構成されている。
栽培棚110は、一端側が回動可能に接続された一対の支持アーム111の該一端側に設けられた栽培棚支持ピン112に支持され、一対の支持アーム111のそれぞれの他端側には摺動ピン113が設けられ、該摺動ピン113が一対のレール部材114に移動軌跡を拘束されて移動するように構成されている。
【0028】
またそれぞれの支持アーム111の摺動ピン113は、それぞれ索状体124に支持されて駆動されるように構成されており、複数の支持アーム111の摺動ピン113が等間隔に支持されている。
【0029】
索状体124は、それぞれ無端状に形成されるとともに上下に設けられた回転輪121、122に掛け回され、回転駆動手段123が、上部の回転輪121を回転駆動することで駆動されるように構成されている。
【0030】
一対のレール部材114は、上方に行くほど間隔が広くなるように設定されており、索状体124を駆動して支持アーム111の摺動ピン113をレール部材114に沿って移動させると、複数の支持アーム111の摺動ピン113はレール部材114に沿って等間隔となるが、複数の支持アーム111の栽培棚支持ピン112の上下方向位置は一対の支持アーム111の屈曲角度が相違するため、上方に行くほど間隔が広くなる。
【0031】
このことで、複数の栽培棚110の上下方向の間隔を植物Sの生育状況に合わせて必要な間隔に変化させることができるため、最下部において播種、幼苗の植え付け等を行い、最上部で収穫を行うことで、上下方向の無駄な空間を減らし、単位空間当たりの栽培量を減少させることなく単位面積当たりの栽培量を増大することができる。
【0032】
また、栽培棚110は支持アーム111の栽培棚支持ピン112に着脱可能に支持されるように構成されているため、索状体124がループ状に循環しても、栽培棚110は最下部で取り付けて最上部で取り外すことができ、連続的に栽培を行うことができる。
このとき、最下部に外部で播種、幼苗の植え付け等を行った栽培棚110を最下部に取り付けたり、生育の完了した最上部の栽培棚110を取り外して外部で収穫したりすることも可能である。
【0033】
さらに、一対の支持アーム111のそれぞれの他端側を索状体124と着脱可能にすることにより、最下部で取り付けて最上部で取り外すことで索状体124を円滑にループ状に循環することができる。
【0034】
上記実施例では、一対のレール部材114は固定的に設けられているが、植物Sの種類による大きさや生育速度に応じて複数の栽培棚110の上下方向の間隔を最適化するために、一対のレール部材114の間隔および角度を任意に設定可能な構成としても良く、一対のレール部材114が曲線状に設けられても良い。
【0035】
また、複数対の支持アーム111の間隔も、植物Sの種類による大きさや生育速度に応じて複数の栽培棚110の上下方向の間隔を最適化するために、任意に設定可能な構成としても良く、設置面積をさらに減少するために、栽培棚110の一方の側面のみを一対の支持アーム111で支持する片持ち支持としても良い。
【0036】
また、一対のレール部材114を上記実施例とは逆に、下方に行くほど間隔が広くなるように設定し、一対の支持アーム111を上方に屈曲するように取り付けることで、栽培棚110の上下方向の間隔を下方に行くほど広くし、最上部において播種、幼苗の植え付け等を行い、最下部で収穫を行うようにしても良い。
【0037】
さらに、上記実施例では、索状体124をループ状に循環するように構成しているが、索状体124を有端状に形成し、回転駆動手段123が上部の回転輪121を駆動することで巻き付けて索状体124を駆動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
100、500 ・・・植物栽培装置
110、510 ・・・栽培棚
111 ・・・支持アーム
112 ・・・栽培棚支持ピン
113 ・・・摺動ピン
114 ・・・レール部材
121、521 ・・・回転輪
122、522 ・・・回転輪
123、523 ・・・回転駆動手段
124、524 ・・・索状体
S ・・・植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に多段に配置される複数の栽培棚と、該栽培棚を上下方向に移動させる駆動装置とを有する植物栽培装置において、
前記駆動装置が、一端側を回動可能に接続された一対の支持アームと、前記一対の支持アームのそれぞれの他端側の移動軌跡を拘束する一対のレール部材とを有し、前記支持アームの他端側を前記レール部材に沿って上下方向に駆動するように構成され、
前記栽培棚が、前記一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に支持され、
前記一対のレール部材が、上下方向で変化する間隔を有するように設けられ、
前記一対の支持アームが、複数対設けられていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記駆動装置が、前記一対の支持アームのそれぞれの他端側を回動可能に支持する一対の索状体と、該索状体を駆動する回転駆動手段とを有していることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記索状体が、それぞれ無端状に形成され上下に設けられた回転輪に掛け回され、
前記回転駆動手段が、前記回転輪の少なくとも一つを回転駆動するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記索状体が、それぞれ有端状に形成されそれぞれの一方の端部が巻取輪に巻き付けられ、
前記回転駆動手段が、前記巻取輪を回転駆動するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記栽培棚が、前記一対の支持アームの回動可能に接続された一端側に着脱可能に支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記一対の支持アームのそれぞれの他端側が、前記索状体に着脱可能に支持されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記一対のレール部材が、任意に間隔および角度を設定可能であり、
前記複数対の支持アームが、任意の間隔に設定可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の植物栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−273656(P2010−273656A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131767(P2009−131767)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】