説明

植物栽培装置

【課題】 植物の栽培だけでなく、それに伴って耕作地で行われる収穫、耕作等の作業も効率的に行うことができる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 耕作地に所定間隔の作業通路2を複数掘削し、所定幅の耕作地1を所定間隔で複数作成し、この耕作地1の両側面に沿って、上端に複数の取付孔13を穿設した補強部11構成すると共に、前記補強部11の上端に取り付ける長尺の固定部材3を構成し、前記固定部材3の略中央部を貫通して固定用パイプ35を所定間隔に設け、この固定用パイプ35の耕作地側に隣接して車輪走行路33と散水装置32を設け、前記固定用パイプ35を前記補強部11の取付孔13に嵌合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕作地を所定の高さにして、植物栽培作業を効率的に行える植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より農作業の負担を軽減するために、耕作地に所定深さの作業通路を掘ることで、所定の高さを有する耕作地を作成し、この耕作地に植物を栽培し、作業者は作業通路の中から作業をしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253010号公報
【0004】
特許文献1記載の発明は、ほぼ平坦な農地に、植物栽培者の臍近くの高さとほぼ同一の深さと植物栽培者が歩行可能な幅を持つほぼU字状の作業通路を、所定のピッチで複数条横に並べて掘る。そして、その隣合う作業通路の間に、植物栽培者の臍近くの高さとほぼ同じ高さの土壌からなる植物栽培用の畝を形成するものである。
そして、植物栽培者が畝側部の作業通路に侵入して、その作業通路の底部を歩行しながら、畝で栽培中の植物の芽摘み作業等の農作業を行えるようにする。
【0005】
上記発明によれば、植物栽培者が腰を延ばした楽な姿勢で、植物栽培者の臍近くとほぼ同じ高さの畝で栽培中の植物の芽摘み作業等の農作業を行えるが、ビニールハウスの設置、肥料や水の散布あるいは栽培した植物の収穫等はすべて従来と同様であり、農作業が効率的に行われるとはいえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、植物の栽培だけでなく、それに伴って耕作地で行われる収穫、耕作等の作業も効率的に行うことができる植物栽培装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、耕作地に所定間隔で所定深さの作業通路を複数掘削して、所定幅の耕作地を所定間隔で複数作成し、この耕作地の両側面に沿って、上端に複数の取付孔を所定間隔に穿設した補強部を構成すると共に、前記補強部の上端に取り付ける長尺の固定部材を構成し、前記固定部材の略中央部に、固定部材を補強部に固定するための固定用パイプを前記取付孔と同一の間隔に設け、この固定用パイプの耕作地側に隣接して車輪走行路と散水装置を設け、前記固定用パイプを前記補強部の取付孔に嵌合した植物栽培装置である。
【0008】
本発明は、前記固定用パイプの作業通路側に隣接して、ビニールをかけるためのパイプを支持するための支持パイプを立設し、かつ固定部材の作業通路側の端部を下方に折り曲げてひも掛けを係止するための曲折部を構成した植物栽培装置である。
【0009】
本発明は、耕作地の幅と略同一の幅を有する長尺の保護シートと、この保護シートの両端に沿って所定間隔に設けた複数のスライド部材からなる保護シート張設装置を固定部材上に配置した植物栽培装置である。
【0010】
本発明は、下部に車輪を備え、上部に植物の収納部を備えた台車からなる収穫装置を、固定部材上に移動可能に配置した植物栽培装置である。
【0011】
本発明は、下部に車輪を備え、内部に耕作手段を備えた台車からなる耕作装置を、固定部材上に移動可能に配置した植物栽培装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、作業者が腰を延ばした楽な姿勢で、植物栽培作業を行えると共に、ビニールハウスの設置、肥料や水の散布あるいは栽培した植物の収穫等の、植物栽培に付随する作業も楽に行えるため、植物栽培作業が効率的に行えるのである。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えてビニールハウスの設置時に二重にビニールを張ることができると共に、ビニールをひもで固定して強固にすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、補強部の上に保護シート張設装置を配置して耕作地の表面に保護シートを張ることができるため、請求項1の効果に加えて、耕作地の植物等を鳥や害虫の被害から守ることができ、かつ耕作地の保温性を高めることで植物の良好な成長が図れる。
【0015】
請求項4の発明によれば、補強部の上に収穫装置を配置して収穫作業が行えるため、請求項1の効果に加えて、作業者は収穫作業が容易かつ迅速に行え、作業時間の短縮及び作業能率の向上が図れる。
【0016】
請求項5の発明によれば、補強部の上に耕作装置を配置して耕作地の耕作が行えるため、請求項1の効果に加えて、耕作作業に人手を煩わすことなく、容易、迅速にかつ正確な作業の下に効率よく耕作されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】耕作地の一実施例を示す説明図
【図2】耕作地の一実施例を示す説明図
【図3】耕作地の一実施例を示す説明図
【図4】固定部材の拡大正面断面図
【図5】補強部に固定部材を取り付けた耕作地の正面断面図
【図6】固定部材の一部拡大平面図
【図7】フックの拡大斜視図
【図8】フックを取り付けた固定部材の一部拡大正面断面図
【図9】耕作地にビニールを被覆した状態の正面断面図
【図10】耕作地にビニールを被覆した状態の正面断面図
【図11】耕作地にビニールを被覆した状態の模式図
【図12】耕作地に保護シート張設装置を設置した状態の正面断面図
【図13】保護シート張設装置の一部拡大側面図
【図14】耕作地に保護シート張設装置を設置した状態の模式図
【図15】耕作地に収穫装置を設置した状態の正面断面図
【図16】収穫装置の側面図
【図17】耕作地に収穫装置を設置した状態の模式図
【図18】耕作地に耕作装置を設置した状態の正面断面図
【図19】耕作装置の側面図
【図20】耕作地に耕作装置を設置した状態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
平地の耕作地に所定間隔に所定深さの作業通路を平行して複数掘削することで、作業に適した幅と高さの耕作地を複数構成する。この耕作地の両側面の全面にわたり補強部を設け、かつこの補強部の上端中央部分に固定部材を取り付けるための取付孔を所定間隔に穿設する。
一方、前記補強部より幅の広い長尺の固定部材を構成する。この固定部材の幅方向の中央部に所定間隔に固定用パイプを貫通して設け、前記固定用パイプより耕作地側に車輪走行路と散水装置を設ける。
前記固定部材の固定用パイプの下部を前記補強部の取付孔に嵌合して、固定部材を補強部に固定した植物栽培装置である。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1は、図1ないし図11に示すものであり、平地の耕作地に作業者が作業しやすい間隔と深さの作業通路2,2・・を所定距離、平行に複数掘削することで、作業がしやすい幅と高さの耕作地1,1・・を複数作成する。
【0020】
この耕作地を作成する場合、図1は平地に作成した場合を示す。図2は傾斜地に作成した場合を示し、図3は更に傾斜が大きい傾斜地に作成した場合を示すもので、これらはいわゆる段々畑に対応しているものであり、傾斜地であっても耕作面と作業者の位置関係が同じ状態で作業できるようにしたものである。
図中、符号21は作業者の乗る台であり、符号22は物品等を置く台である。
【0021】
前記耕作地1の両側面の全面にわたりコンクリート製の壁体からなる補強部11,11を設けて耕作地1を安定させ、さらに補強部11の上端12の中央部分に所定間隔に多数の取付孔13,13・・を穿設する。この取付孔13は、後述の固定用パイプ35を嵌合して支持するためのものである。
【0022】
一方、前記補強部11の上端の幅より広い幅を有する長尺の板材からなる固定部材3を構成し、この固定部材3を前記補強部11の上端12の全長にわたり固定する。
【0023】
図4に示すように、前記固定部材3は略中央部に所定高さの段部34を構成し、内側すなわち耕作地1側(図4中、右側)の縁部の全長にわたり角パイプからなる散水装置32を構成する。この散水装置32は、内部の空洞が水や肥料の流通路32aを構成し、この流通路32aの側面に噴射口32b,32b・・を構成して、この噴射口32b,32b・・から、水あるいは肥料等を散布するのである。
この散水装置32と前記段部34の間に車輪走行路33を構成する。
【0024】
前記段部34には、中央部に多数の固定用パイプ35を所定間隔に立設する。この固定用パイプ35の下部を前記補強部11の取付孔13に嵌合して、固定部材3を補強部11に固定する。この固定用パイプ35は、後述のパイプP1が挿入可能な太さの筒状である。
【0025】
前記段部34の外側(図4中、左側)には、スペース36を介して、ビニールV2を張るためのパイプP2を挿入支持するための支持パイプ37を立設する。この支持パイプ37は前記固定用パイプ35と、位置をずらして等間隔に配置している(図6参照)。
【0026】
前記固定部材3の両端を下方に曲折して、夫々曲折部3a、3bを構成する。このうち外側の曲折部3bは、フック4の係合部としての働きをする。
このフック4は、図7に示すように、全体として略長方形の金属板からなり、下端に指掛け部41を構成し、一方の面に前記曲折部3bに係合するためのL字型の係止部42を取り付けていて、上部を内側に切り抜いて、上端にひも掛け43を構成している。
【0027】
次に耕作地の上にビニールを張設する場合を説明する。
一方の固定部材3の固定用パイプ35に、ビニールV1を支持するためのパイプP1の下端を挿入して、その他端を反対側の固定部材3の固定用パイプ35に挿入して、パイプP1を耕作地1の上部にアーチ型に取り付ける。
このパイプP1を補強部11の全長にわたって所定の間隔で取り付け、その後ビニールV1をパイプP1,P1・・の上にかけて、耕作地1の上面を覆い、図9に示すようにビニールハウスを構成する。なお、ビニールV1の端部は巻装してスペース36に押し込んで固定する。
【0028】
また、耕作地の外気温度によっては、図10のようにビニールを二重にすることができる。すなわち、外側の支持パイプ37にパイプP2を挿入し、前記と同様にパイプP2を掛け渡し、その上にビニールV2をかければ良い(図11参照)。
この場合、内側のビニールV1を通風可能なネットにして、外側のビニールV2は保温のためにビニールとするなど、バリエーションを選択できる。
【0029】
またビニールV1、V2が風等により移動したり、剥がれたりしないようにフック4とひも44で固定することができる。
すなわち図8に示すように、フック4の係止部42を曲折部3bに係合して、ひも掛け43にひも44を掛けて上方に引っ張り、ビニールV2あるいはV1の上から固定するのである。
【0030】
本実施例によれば、作業者が立ったままの楽な姿勢で植物栽培作業を行えると共に、肥料や水の散布、ビニールハウスの設置等の作業も簡易迅速に行えるため、農作業が効率的に行える。
【実施例2】
【0031】
本発明の実施例2は、図12ないし図14に示すものである。
本実施例は、固定部材3上に保護シート張設装置5を配置したものである。
この保護シート張設装置5は、耕作地1の幅と略同一の幅を有する長尺の保護シート53と、この保護シート53の両端に沿って所定間隔に設けた複数のスライド部材54からなる。
【0032】
前記保護シート53は通常ビニールを使用するが、他の材質のシートでも良い。
前記スライド部材54は、車輪51と、この車輪51の軸に下端を回動自在に軸止され、上端を保護シート53の端部に固定した支持片52からなる。スライド部材54はこの構成に限定されず公知の構成を採用できる。
【0033】
本実施例の作用を説明すると、保護シート53の両側端部に複数の支持片52,52・・を取り付けて、車輪51を固定部材3の車輪走行部33に配置する。
【0034】
保護シート53は通常は、耕作地1の一方側に寄せて折り畳まれていて、必要に応じて引き出して耕作地1を覆うのである。
このとき図14に示すように、保護シート53の端部を保持して矢印の方向へ引いていけば、車輪51が車輪走行路33上を回転あるいはスライドしていき、保護シート53は伸張していくのである。
【0035】
この保護シート53を張設することによって、種子をまく前は耕作地表面の温度を上昇させることができ、種子をまいた後は保温性を高めたり鳥害から守ることができるため植物の良好な成長が図れる。
【実施例3】
【0036】
本発明の実施例3は、図15ないし図17に示すものである。本実施例は、固定部材3上に収穫装置6を配置したものである。
この収穫装置6は、下部に4個の車輪62を備え、上部に植物の収納部63を備えた台車61からなる。
【0037】
本実施例の作用を説明すると、収穫装置6の車輪62を固定部材3の車輪走行部33に配置し、その後、作業者が収穫装置6を手で押しながら耕作地1の上を移動していき植物69を収穫して、上部の収納部63に入れていく。また、台車61上に作業者が乗ることもできる。
【0038】
これによって、作業者は収穫作業を耕作地上で行えるため、場所をとらず、収穫物を抱えて運ぶ必要がなくなるため、作業が容易かつ迅速に行え作業時間の短縮、作業労働の軽減及び作業能率の向上が図れる。
【実施例4】
【0039】
本発明の実施例4は、図18ないし図20に示すものである。
本実施例は、固定部材3上に耕作装置7を配置したものである。
この耕作装置7は、下部に4個の車輪72を備え、内部に耕作手段である耕作刃75を備えた台車71からなる。台車71の上には保護カバー74とモーター73が載置されている。
【0040】
本実施例の作用を説明すると、車輪72を車輪走行路33上に配置し、モーター73を作動させて耕作地1の上を走行させる。同時に耕作刃75を回転させて耕作地1を耕作するのである。
【0041】
これによって、耕作地1は人手を煩わすことなく、容易、迅速にかつ正確な作業の下に耕作されていくのである。
【符号の説明】
【0042】
1 耕作地
2 作業通路
3 固定部材
3b 曲折部
4 フック
6 収穫装置
7 耕作装置
11 補強部
12 補強部の上端
13 取付孔
32 散水装置
34 段部
35 固定用パイプ
36 スペース
37 支持パイプ
43 ひも掛け
44 ひも
53 保護シート
61 台車
69 植物
71 台車
V1 ビニール
V2 ビニール
P1 パイプ
P2 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕作地に所定間隔で所定深さの作業通路を複数掘削して、所定幅の耕作地を所定間隔で複数作成し、この耕作地の両側面に沿って、上端に複数の取付孔を所定間隔に穿設した補強部を構成すると共に、
前記補強部の上端に取り付ける長尺の固定部材を構成し、
前記固定部材の略中央部に、固定部材を補強部に固定するための固定用パイプを前記取付孔と同一の間隔に設け、
この固定用パイプの耕作地側に隣接して車輪走行路と散水装置を設け、
前記固定用パイプを前記補強部の取付孔に嵌合した植物栽培装置。
【請求項2】
前記固定用パイプの作業通路側に隣接して、ビニールをかけるためのパイプを支持するための支持パイプを立設し、かつ固定部材の作業通路側の端部を下方に折り曲げてひも掛けを係止するための曲折部を構成したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
耕作地の幅と略同一の幅を有する長尺の保護シートと、この保護シートの両端に沿って所定間隔に設けた複数のスライド部材からなる保護シート張設装置を固定部材上に配置したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項4】
下部に車輪を備え、上部に植物の収納部を備えた台車からなる収穫装置を、
固定部材上に移動可能に配置したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項5】
下部に車輪を備え、内部に耕作手段を備えた台車からなる耕作装置を、
固定部材上に移動可能に配置したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−101612(P2011−101612A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257446(P2009−257446)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(509302777)株式会社Skip (1)
【Fターム(参考)】