説明

植物栽培装置

【課題】簡易な構成で屋内において植物を種子や苗から効率的に栽培することができる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置200は、植物Vの種子や苗を植え付けるための栽培トレー202を出し入れ自在に保持するトレー保持体201を備えている。トレー保持体201は、栽培トレー202を載置した状態で保持する載置台であり、水平方向に延びる台状に形成されている。トレー保持体201の上面は、加温部203が設けられている。また、トレー保持体201の側面には、支持支柱205を介して天板206が支持されている。天板206は、人工光源部207を備えている。人工光源部207は、栽培トレー202の植付面に向けて赤色光および青色光をそれぞれ発する多数の発光ダイオード(LED)によって構成されている。また、支持支柱205は、人工光源部207の高さおよび角度を調整可能に支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内において植物を種子や苗から栽培するための植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野菜や観葉植物などの植物を一般家庭、店舗またはオフィスなどの屋内の一角で栽培するための植物栽培装置が提案されている。例えば、下記特許文献1には、断熱材で覆われて内部が密閉される箱体内に植物の栽培に必要な諸設備、具体的には、温度、湿度およびCO2濃度の各調整設備、人工光源、養液の循環設備などを備えた植物栽培装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4314316号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された植物栽培装置においては、植物を効率的に栽培する諸設備として温度、湿度およびCO濃度の各調整設備、人工光源および養液の循環設備などを備えているため、植物栽培装置の構成が大型化および複雑化して装置の設置場所が限定されるとともに、装置の設置、取り扱いおよびメンテナンスが煩雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、簡易な構成で屋内において植物を種子や苗から効率的に栽培することができる植物栽培装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、栽培トレー内に植えた植物の種および/または苗を室内で育成するための植物栽培装置であって、栽培トレーにおける植付面に対して植物栽培装置の外部からの光の入射を確保した状態で同栽培トレーを出し入れ自在に保持するトレー保持体と、トレー保持体に保持される栽培トレーにおける植付面に人工光を照射する人工光源部と、トレー保持体に保持される栽培トレー内を加温する加温部とを備え、トレー保持体、人工光源部および加温部が全体として人一人で移動させることができる大きさに形成されていることにある。
【0007】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、植物栽培装置は、植物の種子および/または苗を植え付ける栽培トレーを栽培トレーの植付面に植物栽培装置の外からの光の入射を確保した状態で出し入れ自在に保持するトレー保持体と、このトレー保持体に保持された栽培トレーの植付面に人工光を照射する人工光源部と、トレー保持体に保持された栽培トレー内を加温する加温部を備えて構成されている。これにより、栽培トレー内に植え付けられた植物の種子や苗は、トレー保持体の周囲から入射する自然光および人工光からなる外部光、人工光源部から照射される人工光および加温部による加温によって発芽や生育が促進される。この場合、本発明者による実験によれば、本発明に係る植物栽培装置は、通常の露地栽培に比べて種子の発芽および苗の生育を促進することができることを確認した。また、植物栽培装置は、トレー保持体、人工光源部および加温部が全体として人一人で移動させることができる大きさに形成されている。この場合、トレー保持体、人工光源部および加温部の全体の大きさとは、これらの物理的な大きさの他に、形状や重さを含めた概念である。これにより、植物栽培装置は、スペースや環境が限られた屋内において簡単に移動させることができる。これらにより、本発明に係る植物栽培装置は、簡易な構成で植物を種子や苗から効率的に栽培することができる。
【0008】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、トレー保持体は、水平方向に延びる台状に形成されており、人工光源部は、トレー保持体側から上側に延びる支持支柱によって支持されており、加温部は、トレー保持体にて栽培トレーが載置される載置面を構成することにある。
【0009】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、栽培トレーを載置する載置面が加温部によって構成されたトレー保持体の上方に人工光源部が設けられて構成されている。これによれば、極めて簡易な構成で植物栽培装置を構成することができる。なお、この場合、植物栽培装置を家庭用として用いる場合には、トレー保持体を概ね600mm×600mmの大きさに形成するとともに人工光源部の高さを概ね600mm程度の大きさに形成するとよい。
【0010】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、支持支柱は、人工光源部の高さおよび/または角度を調整可能に支持することにある。
【0011】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、支持支柱が人工光源部の高さおよび/または角度を調整可能に支持する。これにより、植物栽培装置は、栽培する植物の生育状態に応じて人工光源部の高さや角度を調節することができる。また、人工光源部の高さや角度を調節することによりトレー保持体に栽培トレーを出し入れする作業を行い易くすることができる。
【0012】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、人工光源部は、赤色光および青色光をそれぞれ発する発光ダイオードを含むことにある。
【0013】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、人工光源部が赤色光および青色光をそれぞれ発する発光ダイオード(LED)によって構成されている。この場合、赤色光は、波長が約640〜690nmの範囲の光であり、植物の葉の成長および光合成を活発化させると言われている。また、青色光は、波長が約420〜470nmの範囲の光であり、植物の茎の成長を活発化させると言われている。このため、栽培トレー内に植え付けた植物の種子および/苗を効果的に生育させることができる。
【0014】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、人工光源部は、赤色光の発光量が青色光の発光量よりも多いことにある。
【0015】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、人工光源部が赤色光の光量を青色光の光量よりも多く発するように構成されている。これにより、栽培トレー内に植え付けた植物の種子および/苗をより効果的に生育させることができる。
【0016】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、さらに、トレー保持体の周囲の明るさに応じた検出信号を出力する光センサを備え、人工光源部および/または加温部は、光センサによる検出信号に基づいて作動が制御されることにある。
【0017】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、トレー保持体の周囲の明るさを検出する光センサを備えるとともに、この光センサによって検出されるトレー保持体の周囲の明るさに応じて人工光源部および/または加温部の作動を制御する。これにより、例えば、植物栽培装置は、周囲が暗くなったことに連動して人工光源部や加温部の作動を開始または停止させる、または、周囲が明るくなったことに連動して人工光源部や加温部の作動を開始または停止させることができる。この結果、人工光源部や加温部の作動の開始や停止を自動で行なうことができ、植物の栽培における照度管理および温度管理をより正確に行なうことができるとともにユーザの負担を軽減することができる。
【0018】
また、請求項7に係る本発明の他の特徴は、前記植物栽培装置において、さらに、時間を計測する計時手段を備え、人工光源部および/または加温部は、計測手段によって作動が制御されることにある。
【0019】
このように構成した請求項7に係る本発明の他の特徴によれば、植物栽培装置は、時間を計測する計時手段を備えるとともに、この計時手段による時間の計測に基づいて人工光源部および/または加温部の作動を制御する。この場合、計時手段による時間の計測には、24時間の時間(時刻)を計る所謂時計機能と、経過時間(時間間隔)を計測する経時計測機能とがある。これらにより、例えば、植物栽培装置は、所定の時刻および/または所定の時間の経過後に人工光源部や加温部の作動を開始または停止させることができる。この結果、人工光源部や加温部の作動の開始や停止を自動で行なうことができ、植物の栽培における照度管理および温度管理をより正確に行なうことができるとともにユーザの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る植物栽培装置の外観構成の概略を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1に示す植物栽培装置の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る植物栽培装置の外観構成の概略を模式的に示した斜視図である。
【図4】図3に示す植物栽培装置の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る植物栽培装置の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る植物栽培装置100の外観構成の概略を模式的に示した斜視図である。また、図2は、図1に示す植物栽培装置100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、第1実施形態および第2実施形態ともに、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この植物栽培装置100は、野菜や観葉植物などの植物Vを一般家庭、店舗およびオフィスなどの屋内で栽培するためのものである。
【0022】
(植物栽培装置100の構成)
この植物栽培装置100は、栽培トレー101を備えている。栽培トレー101は、この植物栽培装置100による栽培対象となる植物Vを植えるための樹脂製の容器であり、上面が開放された箱状に形成されている。この栽培トレー101は、上面視において水平方向に延びる長方形状に形成されており、その内部に植物Vを植え付ける土壌Sを保持する部分が凹状に形成されている。栽培トレー101の正面側(図示右側)の壁面には、この栽培トレー101を後述するトレー保持体104から出し入れする際に栽培トレー101を把持するための取っ手102が形成されている。また、栽培トレー101の両側方の壁面には、この栽培トレー101をトレー保持体104に出し入れ自在に保持させるためのトレー側レール103が栽培トレー101の奥行方向に沿ってそれぞれ設けられている。
【0023】
トレー保持体104は、栽培トレー101を出し入れ自在に収納する金属製の棚であり、図示上下方向に延びる直方体状に形成されている。このトレー保持体104は、本実施形態においては、3つの栽培トレー101をそれぞれ収納可能に構成されている。具体的には、トレー保持体104は、図示上下方向に沿って3つに区画された収納領域105a,105b,105cが形成されて構成されている。3つの収納領域105a,105b,105cは、それぞれ1つずつの栽培トレー101を出し入れ可能に収納する直方体状の空間である。なお、図1においては、トレー保持体104の理解を助けるため、収納領域105aは栽培トレー101を引き出した状態を示しており、収納領域105bは栽培トレー101を取り外した状態を示しており、収納領域105cは栽培トレー101を収納した状態を示している。また、本実施形態においては、トレー保持体104は、縦が約1800mm、幅が約600mm、奥行が約500mmの大きさで形成されている。
【0024】
トレー保持体104の外壁を構成する4つの壁面のうち、植物栽培装置100の正面側(図示右側)の壁面である前面は、各収納領域105a,105b,105cごとに栽培トレー101を出し入れ可能な大きさに開口した出し入れ口106がそれぞれ形成されている。また、トレー保持体104の4つの壁面のうち、前記前面以外の3つの壁面、具体的には、2つの側方の外側壁面および1つの背面には、各収納領域105a,105b,105c内にトレー保持体104の周囲からの光(以降、「外部光」という)を導くための採光窓107がそれぞれ形成されている。
【0025】
一方、トレー保持体104の内部、すなわち、各収納領域105a,105b,105c内における2つの側方の内側壁面には、栽培トレー101に設けられたトレー側レール103と嵌合し合って栽培トレー101を出し入れ自在に保持するための保持体側レール108が各収納領域105a,105b,105cの各奥行方向に沿って設けられている。すなわち、栽培トレー101は、トレー保持体101に対して引き出し状に保持されている。
【0026】
また、トレー保持体104の内部の各収納領域105a,105b,105c内における各底部(床面)には、加温部109がそれぞれ設けられている。加温部109は、各収納領域105a,105b,105c内に収納される栽培トレー101の内部に向けて遠赤外線を発して同内部を加温するための電気機器である。この加温部109は、樹脂製の防水シートの内部に遠赤外線を発生させる電熱線が配置されて面状に構成されており後述する制御部122によって作動が制御される。
【0027】
さらに、トレー保持体104内における各収納領域105a,105b,105c内の各天井部には、人工光源部110がそれぞれ設けられている。人工光源部110は、各収納領域105a,105b,105c内に収納される栽培トレー101における植物Vが植え付けられる植付面(土壌Sの表面)に向けて人工光を照射する照明器具である。この人工光源部110は、赤色光(波長が約640〜690nmの範囲の光)および青色光(波長が約420〜470nmの範囲の光)をそれぞれ発する多数の発光ダイオード(LED)を前記天井部に互いに均等に分散配置して構成されている。
【0028】
この場合、人工光源部110を構成する赤色光を発する発光ダイオードおよび青色光を発する発光ダイオードは、赤色光を発する発光ダイオードの方が青色光を発する発光ダイオードよりも多く設けられている。本実施形態においては、人工光源部110は、赤色光を発する発光ダイオードと青色光を発する発光ダイオードとは、7:3の割合で構成されている。そして、この人工光源部110は、制御部122によって作動が制御される。
【0029】
また、トレー保持体104における底部には、キャスター111が設けられている。キャスター111は、トレー保持体104を人一人で移動させるための車輪であり、トレー保持体104の底部に4つ設けられている。このキャスター111は、トレー保持体104の移動を不能とするために車輪の回転を固定できるように構成されている。
【0030】
また、トレー保持体104の前面における収納領域105bと収納領域105cとの間には、操作パネル120が設けられている。操作パネル120は、ユーザからの指示を制御部122に与えるための操作キー120aを備えるとともに、制御部122からの情報を表示するための液晶表示画面120bを備えたユーザインターフェースである。また、この操作パネル120には、トレー保持体104の周囲の明るさを検出するための光センサ121が設けられている。光センサ121は、光エネルギを電気エネルギに変換する半導体(例えば、フォトダイオード)によって構成されており、トレー保持体104の周囲の明るさに応じた検出信号を制御部122に出力する。
【0031】
この操作パネル120における図示しない背面であるトレー保持体104の内部には、制御部122が設けられている。制御部122は、マイクロコンピュータによって構成されており、加温部109および人工光源部110の作動をそれぞれ制御する。具体的には、制御部122は、経過時間を計測する経時計測機能を備えており、この経時計測機能と前記光センサ121の検出信号に基づいて加温部109および人工光源部110の作動をそれぞれ制御する。
【0032】
より具体的には、制御部122は、光センサ121による検出信号を用いてトレー保持体104の周囲の明るさを検出し、同トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさになったとき(明るくなったとき)、人工光源部110の作動を開始させるとともに加温部109の作動を停止させる。また、制御部122は、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ未満になったとき(暗くなったとき)、前記経時計測機能による時間の測定を開始して所定の時間経過後に人工光源部110の作動を停止させるとともに加温部109の作動を開始させる。また、この植物栽培装置100は、家庭用電源(100V電源)に接続される図示しない電源部を備えており、加温部109、人工光源部110、光センサ121および制御部122にそれぞれの各動作用の電力を供給する。
【0033】
(植物栽培装置100の作動)
次に、このように構成された植物栽培装置100の作動について説明する。まず、ユーザは、植物栽培装置100を屋内の適当な場所に設置する。具体的には、ユーザは、屋内において電源を確保できる適当な位置に植物栽培装置100を設置する。この場合、ユーザは、トレー保持体104の底部に設けられたキャスター111によって人一人で容易にトレー保持体104を所望の場所に移動させることができる。なお、本実施形態においては、植物栽培装置100の設置場所として、日中にのみ人が在室して夜間には人が退出するオフィスや店舗の一角を想定している。
【0034】
次に、ユーザは、栽培トレー101内に植物Vの種子や苗を植える。具体的には、ユーザは、トレー保持体104の各収納領域105a,105b,105cから栽培トレー101を引き出して取り外した後、取り外した各栽培トレー101内に土壌Sを適量ずつそれぞれ敷き詰める。次いで、ユーザは、栽培トレー101内に敷き詰めた土壌S内に植物Vの種子や苗を植える。この場合、ユーザは、必要に応じて栽培トレー101内の土壌Sに水および肥料を加える。そして、ユーザは、植物Vの種子や苗を植え付けた栽培トレー101をトレー保持体104の各収納領域105a,105b,105c内に収納する。なお、図1においては、収納領域105aに収納する栽培トレー101内に植物Vの苗を植え付けた状態を示している。
【0035】
次に、ユーザは、植物栽培装置100を図示しない電源(家庭用100V電源)に接続した後、操作パネル120の操作キー120aを操作して植物栽培装置100(制御部122)を起動させる。次に、ユーザは、制御部122に対して加温部109および人工光源部110の作動パターンを設定する。具体的には、ユーザは、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさになったとき、人工光源部110の作動を開始させるとともに加温部109の作動を停止させるように制御部122を設定する。また、ユーザは、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ未満になったとき、経時計測間機能による時間の計測を開始して所定の時間経過後に人工光源部110の作動を停止させるとともに加温部109の作動を開始させるように制御部122を設定する。
【0036】
この場合、所定の明るさ、および人工光源部110の作動を停止させるとともに加温部の作動を開始させる所定の時間は、植物Vの種類、発芽の状態、苗の生育の状態、植物栽培装置100の設置環境および季節などに応じて適宜決定される。本発明者の実験によれば、所定の明るさは、屋内における日中の明るさであり、例えば、人が特別な光源なしに文字を読める程度の明るさである。また、人工光源部110の作動を停止させる所定の時間としては、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ未満になったとき、すなわち、夕方以降から午後8時から午後11時くらいになるまでの数時間(例えば、2〜4時間)が適当である。また、加温部109の作動を開始させる所定の時間としては、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ未満になったとき、すなわち、夕方以降から午後11時から午前2時くらいになる時間くらいになるまでの数時間(例えば、4〜8時間)が適当である。
【0037】
次に、ユーザは、操作パネル120の操作キー120aを操作することにより制御部122に加温部109および人工光源部110の作動の制御を開始させる。これにより、制御部122は、光センサ121から入力した検出信号に基づいてトレー保持体104の周囲の明るさを検出して加温部109および人工光源部110の作動を制御する。
【0038】
すなわち、制御部122は、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ以上であるときに、人工光源部110の作動を開始させるとともに加温部109の作動を停止させる。また、制御部122は、トレー保持体104の周囲の明るさが所定の明るさ未満であるときに、経時計測機能による時間の計測を開始して所定の時間経過後に人工光源部110の作動を停止させるとともに加温部109の作動を開始させる。
【0039】
これにより、植物栽培装置100は、夜明けとともに人工光源部110が作動を開始するとともに加温部109の作動が停止する。また、植物栽培装置100は、夕方以降の時間帯でトレー保持体101の周囲の明るさが所定の明るさ未満であることを検出した後、午後8時〜11時ごろの時間帯で人工光源部110の作動が停止するとともに午後11時〜午前2時ごろの時間帯で加温部109の作動が開始する。
【0040】
この結果、トレー保持体104内に収納された栽培トレー101内の植物Vは、日中において、加温部109からの加温が停止した状態で人工光源部110から人工光が照射されるとともに、トレー保持体104の周囲からの自然光(例えば、太陽からの光)および/または人工光(例えば、蛍光灯からの光)からなる外部光が採光窓106を介して導かれる。この場合、人工光源部110から照射される人工光は、7:3の割合の赤色光および青色光で構成されている。これにより、栽培トレー101内の植物Vは、人工光源部110からの人工光およびトレー保持体104の周囲からの外部光により光合成が促進される。
【0041】
一方、夕方以降から夜明けまでの夜間については、栽培トレー101内の植物Vは、午後8時〜10時ごろまでの間日中から連続して人工光源部110から人工光を照射されるとともに、午後11時〜午前2時以降から夜明けまでの間加温部109により加温される。これにより、栽培トレー101内の植物Vは、午後8時〜10時ごろまでは人工光源部110からの人工光により光合成が促進されるとともに、午後11時〜午前2時以降から夜明けまでは加温部109による加温により発芽や根の発達が促進される。
【0042】
そして、栽培トレー101内の植物Vは、このような加温部109および人工光源部110の作動パターンが日々繰り返し実行されることによって栽培される。この植物栽培装置100による栽培の間、ユーザは、トレー保持体104内から栽培トレー101を引き出したり、トレー保持体104に設けられた採光窓106を介して栽培トレー101内の植物Vの生育状態を観察したりすることにより、植物Vの生育過程を楽しみながら栽培することができる。また、ユーザは、栽培トレー101内の植物Vの生育状態に応じて、栽培トレー101内の植物Vに水や肥料を供給するとともに必要に応じて前記設定した加温部109および人工光源部110の作動パターンを変更する。また、この場合、ユーザは、必要に応じて栽培トレー101をトレー保持体104内に収納した状態で、または取り外した状態でトレー保持体104の設置場所を移動させることもできる。
【0043】
そして、栽培トレー101内の植物Vの一部または全部を他の場所に植え替える場合や収穫する場合においては、ユーザは、栽培トレー101をトレー保持体104から引き出した状態、または取り外した状態において植物Vの一部または全部を植え替えまたは収穫することができる。一方、植物栽培装置100による植物Vの栽培を終了する場合においては、ユーザは、操作パネル120の操作キー120aを操作して加温部109および人工光源部110の作動を停止させた後、植物栽培装置100を電源(家庭用100V電源)から抜いて作業を終了する。
【0044】
ここで、本発明者による植物Vの栽培実験の結果について述べておく。本発明者は、3月〜5月の期間において植物栽培装置100をオフィスの一角に配置して、ほうれん草、ビタミン菜、イタリアンパセリ、京水菜、小松菜、小ねぎを植物Vとしてそれぞれ種子から栽培した。この場合、本発明者は、植物栽培装置100による植物Vの栽培の比較例として、前記各野菜Vの種子を植え付けた栽培トレー101を屋外の適当な場所に配置して所謂露地栽培を行なった。この結果、植物栽培装置100により栽培した前記全ての植物Vについて、屋外で栽培した野菜Vよりも2〜4日早く発芽して生育することを確認した。
【0045】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、植物栽培装置100は、植物Vの種子や苗を植え付ける栽培トレー101を栽培トレー101の植付面に植物栽培装置100の外からの光の入射を確保した状態で出し入れ自在に保持するトレー保持体104と、このトレー保持体104に保持された栽培トレー101の植付面に人工光を照射する人工光源110と、トレー保持体104に保持された栽培トレー101内を加温する加温部109を備えて構成されている。これにより、栽培トレー101内に植え付けられた植物Vの種子や苗は、トレー保持体104の周囲から入射する自然光および人工光からなる外部光、人工光源110から照射される人工光および加温部109による加温によって発芽や生育が促進される。この場合、本発明者による実験によれば、本発明に係る植物栽培装置100は、通常の露地栽培に比べて種子の発芽および苗の生育を促進することができることを確認した。また、植物栽培装置100は、トレー保持体104、人工光源110および加温部109が全体として人一人で移動させることができる大きさに形成されている。この場合、トレー保持体104、人工光源部110および加温部109の全体の大きさとは、これらの物理的な大きさの他に、形状や重さを含めた概念である。これにより、植物栽培装置100は、スペースや環境が限られた屋内において簡単に移動させることができる。これらにより、本発明に係る植物栽培装置100は、簡易な構成で植物Vを種子や苗から効率的に栽培することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る植物栽培装置の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。この第2実施形態の説明においては、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を適宜省略しながら第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る植物栽培装置200の外観構成の概略を模式的に示した斜視図である。また、図4は、図3に示す植物栽培装置200の作動を制御するための制御システムのブロック図である。この植物栽培装置200は、上記第1実施形態と同様に、野菜や観葉植物などの植物Vを一般家庭、店舗およびオフィスなどの屋内で栽培するためのものである。
【0047】
(植物栽培装置200の構成)
この植物栽培装置200は、トレー保持体201を備えている。トレー保持体201は、栽培トレー202を載置した状態で保持する載置台であり、水平方向に延びる台状に形成されている。より具体的には、トレー保持体201は、金属材料を平板状に形成した図示しないベース体の周囲を樹脂製フレームで囲んで形成されている。本実施形態においては、トレー保持体201は、2つの栽培トレー202を載置可能な大きさ、具体的には約600mm×500mmの平面視略長方形状に形成されている。栽培トレー202は、植物栽培装置200による栽培対象となる植物Vを植えるための樹脂製の容器であり、上面が開放された箱状に形成されている。この栽培トレー202は、上面視において水平方向に延びる長方形状に形成されており、その内部に植物Vを植え付ける土壌Sを保持する部分が凹状に形成されている。すなわち、栽培トレー202は、一般的なプランターである。
【0048】
トレー保持体201の上面は、樹脂製フレームの内側が平面視略方形状に窪んで形成されることにより前記図示しないベース体の上面が露出しており、このベース体の上面に加温部203が埋め込まれた状態で設けられている。加温部203は、上記第1実施形態における加温部109と同様の構成であるため、その説明は省略する。また、この植物栽培装置200の背面側(図示右側)におけるトレー保持体201の側面には、両端部に円筒形の基部204が張り出した状態で形成されており、これら2つの基部204に支持支柱205がそれぞれ上方に延びた状態で支持されている。
【0049】
支持支柱205は、天板206を支持するための金属製の柱状部材であり、図示上方の端部に天板206をそれぞれ支持している。これらの支持支柱205は、互いに外径の異なる2つの円筒部材で構成されており、小径の円筒部材が大径の円筒部材内を摺動可能に嵌合することにより図示上下方向(図3において破線矢印参照)に沿って伸縮自在に構成されている。本実施形態においては、支持支柱205は、トレー保持体201の上面(加温部203の上面)から天板206の下面までの高さが300mm〜600mmの範囲で調整することができる。
【0050】
また、各支持支柱205の上端部における天板206の支持部は、図3において破線矢印で示すように、回転自在に形成されるとともに任意の回転位置を維持できるように構成されており、天板206の角度を調節できるようになっている。本実施形態おいては、支持支柱205は天板206を起立させた垂直状態(2つの支持支柱205と平行な状態)からトレー保持部201側(図示下方)に向って100°の角度で天板206を角度調節することができる。なお、図3においては、天板206をトレー保持体201の上面に対して平行な角度に位置決めした状態を二点鎖線で示している。
【0051】
天板206は、人工光源部207を備える樹脂製の板状部材であり、前記2つの支持支柱205に支持されてトレー保持体201の上方に支持されている。この天板206におけるトレー保持体201側の面(図示下面)には、人工光源部207が設けられている。この人工光源部207は、上記第1実施形態における人工光源部110と同様に赤色光および青色光をそれぞれ発光する複数の発光ダイオード(LED)によって構成されているとともに、これら複数の発光ダイオードの前方(図示下方)が透明な樹脂板で覆われて構成されている。また、この人工光源部207は、上記第1実施形態における人工光源部110と同様に、赤色光を発する発光ダイオードと青色光を発する発光ダイオードとは、7:3の割合で構成されているとともに、これらの発光ダイオードの作動が制御部211によって制御される。
【0052】
また、トレー保持体201の前面(図示左側側面)には、操作パネル210が設けられている。操作パネル210は、上記第1実施形態における操作パネル120と同様に、ユーザからの指示を制御部211に与えるための操作キー210aを備えるとともに、制御部211からの情報を表示するための液晶表示画面210bを備えたユーザインターフェースである。ただし、この操作パネル210には、上記第1実施形態における光センサ121は設けられていない。
【0053】
この操作パネル210における図示しない背面であるトレー保持体201の内部には、制御部211が設けられている。制御部211は、上記第1実施形態における制御部122と同様に、マイクロコンピュータによって構成されており、加温部203および人工光源部207の作動をそれぞれ制御する。具体的には、制御部211は、経過時間を計測する経時計測機能を備えており、この経時計測機能によって加温部203および人工光源部207の作動をそれぞれ制御する。
【0054】
より具体的には、制御部211は、ユーザによって設定された所定の時間を経過した後に加温部203および人工光源部207の各作動を開始させる、または加温部203および人工光源部207の各作動を停止させる。すなわち、制御部211が備える経時計測機能は、所謂タイマー機能である。また、この植物栽培装置200は、家庭用電源(100V電源)に接続される図示しない電源部を備えており、加温部203、人工光源部207および制御部211にそれぞれの各動作用の電力を供給する。
【0055】
(植物栽培装置200の作動)
次に、このように構成された植物栽培装置200の作動について説明する。まず、ユーザは、上記第1実施形態における植物栽培装置100と同様に、植物栽培装置200を屋内の適当な場所に設置する。この場合、ユーザは、トレー保持体201の底部に手を掛けることにより植物栽培装置200全体を持ち上げて所望の場所に移動させることができる。なお、本第2実施形態においては、植物栽培装置200の設置場所として、一般家庭における窓辺などを想定している。
【0056】
次に、ユーザは、上記第1実施形態における植物栽培装置100と同様に、栽培トレー202内に植物Vの種子や苗を植えた後、栽培トレー202をトレー保持体201上に載置する。この場合、ユーザは、天板206の角度を手で操作することにより天板206を垂直方向に起立させた状態で栽培トレー202をトレー保持体201上に載置する。これにより、ユーザは、作業性良く栽培トレー202をトレー保持体201上にセットすることができる。
【0057】
次に、ユーザは、植物栽培装置200の設置場所の環境(時間帯や気温)や植物Vの状態に応じて、植物栽培装置200を起動させる。具体的には、ユーザは、植物栽培装置200を図示しない電源(家庭用100V電源)に接続した後、操作パネル210の操作キー210aを操作することにより加温部203および/または人工光源部207の作動を開始させる。この場合、ユーザは、加温部203および/または人工光源部207をそれぞれ連続的に作動させることができるとともに、制御部211が備える経時計測機能(タイマー機能)を利用して所定時間経過するまでの間だけ加温部203および/または人工光源部207を作動させることもできる。また、ユーザは、制御部211が備える経時計測機能を利用して所定時間経過した後に加温部203および/または人工光源部207を作動させることもできる。
【0058】
この人工光源部207の作動に際してユーザは、天板206の高さ方向の位置および角度を適宜調節することにより、トレー保持体201上に載置された栽培トレー202に対する人工光源部207の高さ方向の位置および角度を任意の位置および角度に設定する。これにより、ユーザは、植物Vの種類、発芽の状態、苗の生育の状態、植物栽培装置100の設置環境および季節などに応じて人工光源部207から照射される光の量や照射角度を適宜決定することができる。一方、加温部203は、上記第1実施形態における植物栽培装置100と同様に、作動の開始により栽培トレー202の内部を栽培トレー202の底部から加温する。
【0059】
これらにより、トレー保持体201上にセットされた植物Vは、上記第1実施形態における植物栽培装置100と同様に、植物栽培装置200の周囲から照射される外部光の他に、人工光源部207から照射される人工光および加温部203による土壌Sの加温によって生育が促進される。この植物栽培装置200による栽培の間、ユーザは、トレー保持体201上に載置された栽培トレー202内の植物Vの生育状態を観察したりすることにより、植物Vの生育過程を楽しみながら栽培することができる。また、ユーザは、栽培トレー202内の植物Vの生育状態に応じて、栽培トレー202をトレー保持体201上に載置した状態で、または取り外した状態で栽培トレー202内の植物Vに水や肥料を供給することができる。また、さらに、ユーザは、栽培トレー202内の植物Vの生育状態や設置環境に応じて、人工光源部207の高さ方向の位置および角度を変更することができるとともに、植物栽培装置200の設置場所を移動させることもできる。
【0060】
一方、植物栽培装置200による植物Vの栽培を終了する場合においては、ユーザは、操作パネル210の操作キー210aを操作して加温部203および人工光源部207の作動を停止させた後、植物栽培装置200を電源(家庭用100V電源)から抜いて作業を終了する。
【0061】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、植物栽培装置200は、上記第1実施形態における植物栽培装置100と同様の作用効果を奏することができる。また、上記第2実施形態によれば、植物栽培装置200は、栽培トレー202を載置する載置面が加温部203によって構成されたトレー保持体201の上方に人工光源部207が設けられて構成されているため、極めて簡易な構成で植物栽培装置200を構成することができる。また、植物栽培装置200は、栽培する植物Vの生育状態に応じて人工光源部207の高さや角度を調節することができるとともに、人工光源部207の高さや角度を調節することによりトレー保持体201に栽培トレー202を出し入れする作業を行い易くすることができる。
【0062】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1実施形態および第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、植物栽培装置100,200は、制御部122,211によって加温部109,203および人工光源部110,207の作動をそれぞれ制御するように構成した。しかし、加温部109,203および人工光源部110,207における作動の開始および停止は、ユーザが直接行なうように構成することもできる。これによれば、加温部109,203および人工光源部110,207の作動をそれぞれ制御するための制御部122,211および光センサ121(植物栽培装置100のみ)は不要となり、植物栽培装置100,200の構成を更に簡易するにすることができる。
【0064】
また、加温部109,203および人工光源部110,207のどちらか一方の作動を制御部122,211によって制御することもできる。したがって、光センサ121および/または制御部122,211における経時計測機能により加温部109,203または人工光源部110,207の作動を制御することができる。また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、制御部122,211は、経過時間を計測する経時計測機能により加温部109,203および人工光源部110,207の作動を制御した。しかし、制御部122,211は、経時計測機能に代えてまたは加えて24時間の時間(時刻)を計る時計機能を備えるようにしてもよい。これによれば、所定の時間に達したことに基づいて加温部109,203および/または人工光源部110,207の作動をそれぞれ制御することができる。
【0065】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、人工光源部110,207を赤色光および青色光を発する発光ダイオードで構成した。この場合、赤色光が植物の葉の成長および光合成を活発化させる光であるとともに青色光が植物の茎の成長を活発化させる光であるため、結果として栽培トレー101,202内に植え付けた植物Vの種子や苗を効果的に生育させることができる。しかし、人工光源部110,207は、植物Vの光合成に必要な光を発するものであれば、必ずしも、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、人工光源部110,207は、赤色光および青色光の光源を含んでこれら以外の色(例えば、緑色)を発する発光ダイオードを含んで構成することもできる。また、人工光源部110,207は、発光ダイオード以外の光源、例えば、半導体レーザ、HIDライト、白熱電球および蛍光灯などを単体でまたはこれらを適宜組み合わせて用いることもできる。
【0066】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、人工光源部110,207が赤色光および青色光を発する割合を7:3とした。しかし、人工光源部110,207が赤色光および青色光を発する割合は、植物Vの種類、発芽の状態、苗の生育の状態、植物栽培装置100,200の設置環境および季節などに応じて適宜決定されればよく、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、人工光源部110,200が赤色光および青色光を発する割合を1:1としてもよいし、植物Vの生育過程において適宜割合を変更するようにしてもよい。
【0067】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、加温部109,203は、遠赤外線を発する面状ヒータで構成されている。しかし、加温部109,203は、トレー保持体104,201に保持される栽培トレー101,202内、より具体的には、植物Vの種子や根を加温するように構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。したがって、加温部109,203は、例えば、セラミックヒータ、温水ヒータおよびハロゲンランプなどで構成することもできる。
【0068】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態においては、植物栽培装置100,200によって栽培する植物Vは野菜を想定した。しかし、植物Vは、野菜以外の植物、例えば、果物、観葉植物、草木およびキノコなどの菌類であってもよい。また、上記各実施形態においては、栽培トレー101,202内に土壌Sを敷き詰めて、この土壌S内に植物Vの種子や苗を植えるように構成した。しかし、植物栽培装置100,200によって栽培する植物Vは、水耕栽培であってもよい。すなわち、栽培トレー101,202内には、水や植物Vの生育に必要な栄養分を含んだ液体が直接または脱脂綿などに含ませた状態で配置されるとともに、これらに植物Vの種子や苗が植え付けられていてもよい。
【0069】
また、上記第1実施形態においては、採光窓107は、貫通孔で構成した。しかし、採光窓107は、トレー保持体104に形成されて栽培トレー101における苗や種子の植付面に植物栽培装置100の外部からの光を導くことができる構成であれば、大きさ、形状、設置数および設置位置などは限定されるものではない。したがって、採光窓107は、例えば、トレー保持体104の周囲から導かれる外部光の量を調節できるブラインド状に形成されていてもよいし、前記採光窓107に透明な樹脂板またはガラス板を貼り付けて外部光のみを導く構成とすることもできる。なお、採光窓107を透明な樹脂板またはガラス板を備えて構成した場合、トレー保持体104における栽培トレー101の出し入れ口106に透明または不透明の開閉扉を設けることによりトレー保持体101内の気密性や断熱性を高めることができる。
【0070】
また、上記第1実施形態においては、トレー保持体104は、3つの栽培トレー101を収納するように構成されている。また、上記第2実施形態においては、トレー保持体201は、2つの栽培トレー202を載置可能に構成されている。しかし、トレー保持体104,201は、人一人が移動させることができるとともに少なくとも1つ以上の栽培トレー101,202を保持可能であれば、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0071】
また、上記第1実施形態においては、トレー保持体104の底部に4つのキャスター111を設けることによりトレー保持体104を移動可能に構成した。しかし、トレー保持体104は、人一人が移動させることができる規模、すなわち、人一人で移動させることができる大きさ、形状および重さで構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、トレー保持体104は、1つの栽培トレー101を収納できる大きさに形成されるとともに、トレー保持体104の上面に取っ手を設けることによりトレー保持体104を持ち上げた状態で持ち運びできるように構成することもできる。
【0072】
また、上記第1実施形態においては、栽培トレー101は、トレー保持体104に対して引き出し状に取り付けられている。これにより、ユーザは、トレー保持体104に対して栽培トレー101を引き出すまたは押し込むことにより容易に出し入れすることがで、植物栽培における作業負担を軽減することができる。また、栽培トレー101がトレー保持体104内においてレールなどで支持されているため、栽培トレー101の下方に様々形態の加温部109を配置でき加温部109の選択の幅を増やすことができる。しかし、栽培トレー101は、トレー保持体104に対して出し入れ可能に構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、栽培トレー101は、トレー保持体104における各収納領域105a,105b、105c内の各床面に直接または加温部109を介して単に載置されるように構成されていてもよい。これによれば、トレー側レール103および保持体側レール107が不要となり、植物栽培装置100の構成をより簡易にすることができる。
【0073】
また、上記第2実施形態においては、上記第1実施形態における光センサ121を省略して植物栽培装置200を構成した。しかし、植物栽培装置200は、上記第1実施形態と同様に、光センサ121を備えて構成することができることは当然である。
【0074】
また、上記第2実施形態においては、植物栽培装置200は、人工光源部207の高さ方向の位置および角度が調節可能に構成されている。この場合、人工光源部207は、天板206を介して2つの支持支柱205によって支持されている。しかし、支持支柱205は、人工光源部207を高さ方向の位置および/または角度を調節可能に支持することができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、支持支柱205は、自由に屈曲させることができる1つの棒状体で構成される所謂フレキシブルアーム(「自在アーム」ともいう)、1つまたは複数の関節を介して棒体が連結された関節方アーム、およびリンク機構などによって構成することもできる。また、人工光源部207の高さ方向の位置および角度調節が不要の場合には、支持支柱205を省略して人工光源部207の高さ方向の位置および角度が固定状態支持する固定支持部材により人工光源部207を支持するように構成することもできる。また、これらの場合、支持支柱205および固定支持部材またはこれらに支持される人工光源部207をトレー保持体201や支持支柱205および固定支持部材から着脱自在に構成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
V…野菜、土壌S、
100,200…植物栽培装置、101,202…栽培トレー、102…取っ手、103…トレー側レール、104,201…トレー保持体、105a,105b,105c…収納領域、106…出し入れ口、107…採光窓、108…保持体側レール、109,203…加温部、110,207…人工光源部、111…キャスター、
120,210…操作パネル、120a,210a…操作キー、120b,210b…液晶表示画面、121…光センサ、122,211…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培トレー内に植えた植物の種および/または苗を室内で育成するための植物栽培装置であって、
前記栽培トレーにおける植付面に対して前記植物栽培装置の外部からの光の入射を確保した状態で同栽培トレーを出し入れ自在に保持するトレー保持体と、
前記トレー保持体に保持される前記栽培トレーにおける前記植付面に人工光を照射する人工光源部と、
前記トレー保持体に保持される前記栽培トレー内を加温する加温部とを備え、
前記トレー保持体、前記人工光源部および前記加温部が全体として人一人で移動させることができる大きさに形成されていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載した植物栽培装置において、
前記トレー保持体は、水平方向に延びる台状に形成されており、
前記人工光源部は、前記トレー保持体側から上側に延びる支持支柱によって支持されており、
前記加温部は、前記トレー保持体にて前記栽培トレーが載置される載置面を構成することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
請求項2に記載した植物栽培装置において、
前記支持支柱は、前記人工光源部の高さおよび/または角度を調整可能に支持することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した植物栽培装置において、
前記人工光源部は、赤色光および青色光をそれぞれ発する発光ダイオードを含むことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項5】
請求項4に記載した植物栽培装置において、
前記人工光源部は、赤色光の発光量が青色光の発光量よりも多いことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した植物栽培装置において、さらに、
前記トレー保持体の周囲の明るさに応じた検出信号を出力する光センサを備え、
前記人工光源部および/または前記加温部は、前記光センサによる検出信号に基づいて作動が制御されることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した植物栽培装置において、さらに、
時間を計測する計時手段を備え、
前記人工光源部および/または前記加温部は、前記計測手段によって作動が制御されることを特徴とする植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51891(P2013−51891A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190382(P2011−190382)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(509313968)株式会社水越鉄工 (1)
【Fターム(参考)】