説明

植物栽培装置

【課題】植物に照射する光強度を調節することが可能な植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置1は、植物が植えられた栽培槽2を載せる載置棚4を有する栽培ラック3と、載置棚4の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置5とを備えている。LED照明装置5が、複数のLED灯具6と、載置棚4に対するLED灯具6の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具6を取り付ける灯具取付部7とを備えている。LED照明装置5の灯具取付部7は、長手方向を前後方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された灯具吊持部材としての左右両枠部材を有する取付枠15と、左右両枠部材に前後方向に移動自在に取り付けられかつLED灯具6を保持するホルダと、ホルダを前後方向の任意の位置で灯具吊持部材に固定する固定部材とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LED照明装置を光源として使用し、かつたとえば植物工場、野菜工場、育苗装置などで用いられる植物栽培装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1の上下、左右を上下、左右といい、図2の下側(図1の紙面表側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0003】
また、この明細書において、「アルミニウム」という用語には、「純アルミニウム」と表現する場合を除いて、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0004】
LED照明装置を用いた植物栽培装置として、植物が植えられた栽培槽を載せる載置棚を有する栽培ラックと、載置棚の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、植物栽培装置においては、植物の種類や植物の成育状況に応じて植物に照射する光強度を調節することが求められるが、特許文献1記載の植物栽培装置においては、植物に照射される光強度は常に一定であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−207933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、植物の種類や植物の成育状況に応じて植物に照射する光強度を調節することが可能な植物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)植物が植えられた栽培槽を載せる載置棚を有する栽培ラックと、載置棚の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置とを備えた植物栽培装置において、
LED照明装置が、複数のLED灯具と、載置棚に対するLED灯具の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具を取り付ける灯具取付部とを備えている植物栽培装置。
【0010】
2)LED照明装置の灯具取付部が、長手方向を前後方向に向けた複数の灯具吊持部材と、灯具吊持部材に前後方向に移動自在に取り付けられかつLED灯具を保持するホルダと、ホルダを前後方向の任意の位置で灯具吊持部材に固定する固定部材とを有している上記1)記載の植物栽培装置。
【0011】
3)灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている上記2)記載の植物栽培装置。
【0012】
4)灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部にねじ嵌められた長さ調整ナット、長さ調整ナットの下端部にねじ嵌められた下側おねじ軸、下側おねじ軸の下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている上記2)記載の植物栽培装置。
【0013】
5)灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部に取り付けられた伸縮ロッド、伸縮ロッドの下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている上記2)記載の植物栽培装置。
【0014】
6)LED照明装置の灯具取付部が、長手方向を前後方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された左右両枠部材と、長手方向を左右方向に向けた状態で前後方向に間隔をおいて配置され、かつ左右両端部が左右両枠部材に固定された前後両枠部材とを備えており、左右両枠部材が灯具吊持部材となっている上記2)〜5)のうちのいずれかに記載の植物栽培装置。
【0015】
7)灯具取付部の前後両枠部材の長さの中間部において、長手方向を前後方向に向けた中桟部材が配置され、中桟部材の前後両端部が、左右方向の任意の位置において固定、解除自在に前後両枠部材に取り付けられている上記6)記載の植物栽培装置。
【0016】
8)栽培ラックが、左右方向に間隔をおいて配置されかつ前後方向に所定の奥行きを有する複数の垂直部を備え、栽培ラックの垂直部に、長手方向を前後方向に向けるとともに全長にわたる垂直壁を有する横部材が設けられており、灯具取付部の左右両枠部材の後端部外面に、それぞれ左右方向にのびる軸線の周りに回転自在の車輪が取り付けられ、灯具取付部の左右両枠部材の前端部外面に、それぞれ左右方向外方に突出した位置決めピンが設けられ、栽培ラックの垂直部における横部材の垂直壁の後端部に、車輪を嵌め入れる移動阻止用切り欠きが形成されるとともに、同じく前端部に、車輪が移動阻止用切り欠き内に嵌った際に位置決めピンが嵌る位置決め用切り欠きが形成されている上記6)または7)記載の植物栽培装置。
【0017】
9)栽培ラックの垂直部における横部材の垂直壁の後端部に形成された移動阻止用切り欠きの前側縁部が、下方に向かって後方に傾斜している上記8)記載の植物栽培装置。
【発明の効果】
【0018】
上記1)〜9)の植物栽培装置によれば、栽培ラックの載置棚の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置が、複数のLED灯具と、載置棚に対するLED灯具の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具を取り付ける灯具取付部とを備えているので、植物の種類や植物の成育状況に応じて載置棚に対するLED灯具の前後方向の位置を変更することによって、植物に照射する光強度を調節することが可能になる。
【0019】
上記2)〜5)の植物栽培装置によれば、載置棚に対するLED灯具の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具を取り付ける灯具取付部の構成が、比較的簡単になる。
【0020】
また、上記2)〜5)の植物栽培装置において、灯具吊持部材をアルミニウム製(アルミニウム合金製を含む)にしておけば、LED灯具から発せられる熱の放熱性が向上する。
【0021】
上記4)および5)の植物栽培装置によれば、灯具取付部の灯具吊持部材に対するLED灯具の高さ位置を任意の位置に決めることができる。したがって、植物の種類や植物の成育状況に応じて載置棚に対するLED灯具の高さ位置を変更することによって、植物に照射する光強度を調節することが可能になる。
【0022】
上記7)の植物栽培装置によれば、長手方向を左右方向に向けた直管型LED灯具を用いる場合、直管型LED灯具の両端を灯具取付部の左右両枠部材のホルダに取り付けたり、直管型LED灯具の一端を中桟部材のホルダに取り付けるとともに同他端を左右いずれかの枠部材のホルダに取り付けたりすることが可能になり、異なる長さの直管型LED灯具を用いることができる。しかも、中桟部材の左右方向の位置を変更することが可能になり、様々な長さの直管型LED灯具を用いることができる。
【0023】
上記8)および9)の植物栽培装置によれば、灯具取付部を栽培ラックに設置する作業および栽培ラックから取り外す作業を簡単に行うことができる。しかも、灯具取付部を所定位置に設置した際には、灯具取付具の移動を阻止することができる。
【0024】
上記9)の植物栽培装置によれば、所定位置に設置されている灯具取付部を栽培ラックから取り外す作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の植物栽培装置を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線拡大断面図である。
【図4】図2のC−C線拡大断面図である。
【図5】図1の植物栽培装置の灯具取付部における灯具吊持部材としての左右両枠部材および中桟部材の一部とホルダとを示す分解斜視図である。
【図6】図2のD−D線拡大断面図である。
【図7】ホルダの変形例を示す図5相当の図である。
【図8】ホルダの他の変形例を示す図5相当の図である。
【図9】図7および図8のホルダを用いた場合におけるLED灯具の配置例の概略を示す斜視図である。
【図10】ホルダのさらに他の変形例を示す図5相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
図1はこの発明の植物栽培装置の全体構成を示し、図2〜図6はその要部の構成を示す。
【0029】
図1において、植物栽培装置(1)は、植物が植えられた栽培槽(2)を載せる複数の載置棚(4)を有する栽培ラック(3)と、各載置棚(4)の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置(5)とを備えており、LED照明装置(5)が、複数の直管型LED灯具(6)と、載置棚(4)に対するLED灯具(6)の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具(6)を取り付ける灯具取付部(7)とを有している。
【0030】
図1〜図4に示すように、栽培ラック(3)は、左右方向に間隔をおいて配置されかつ前後方向に所定の奥行きを有する複数の垂直枠(8)(垂直部)を備えており、左右方向に隣り合う垂直枠(8)間に、複数の載置棚(4)が上下方向に間隔をおいて設けられている。
【0031】
垂直枠(8)は、前後方向に間隔をおいて配置された複数、ここでは2つのアルミニウム製垂直支柱(9)と、各載置棚(4)よりも所定距離上方において長手方向を前後方向に向けた状態で前後方向に隣り合う垂直支柱(9)間に配置されたアルミニウム製横部材(11)とを有している。横部材(11)の前後両端部は、垂直支柱(9)に固定されたアルミニウム製固定部ラケット(12)に固定されている。固定部ラケット(12)は、垂直枠(8)の各垂直支柱(9)における前後方向に隣接する垂直支柱(9)側を向いた面に適当な手段で固定され、かつ一部分が左右方向に隣接する垂直枠(8)側に突出した垂直部(12a)と、垂直部(12a)の上側縁部に一体に形成されかつ前後方向に隣接する垂直支柱(9)側に突出した水平部(12b)とよりなる。横部材(11)は横断面L字形であって、前後両端部が固定部ブラケット(12)の水平部(12b)上に適当な手段により固定された水平壁(11a)と、水平壁(11a)における左右方向に隣接する垂直枠(8)側の縁部に立ち上がり状に一体に形成された垂直壁(11b)とからなる。
【0032】
図示は省略したが、載置棚(4)は、長手方向を左右方向に向けた状態で左右方向に隣り合う垂直枠(8)の垂直支柱(9)間に配置されて左右両端部が垂直支柱(9)に固定されたアルミニウム製第1棚構成部材と、長手方向を前後方向に向けた状態で各垂直枠(8)の前後の垂直支柱(9)間に配置されて前後両端部が垂直支柱(9)に固定されたアルミニウム製第2棚構成部材とを備えている。
【0033】
灯具取付部(7)は、長手方向を前後方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された灯具吊持部材としてのアルミニウム製左右両枠部材(16)、長手方向を左右方向に向けた状態で前後方向に間隔をおいて配置され、かつ左右両端部が左右両枠部材(16)の前後両端部に固定されたアルミニウム製前後両枠部材(17)、および長手方向を前後方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置され、かつ前後両端部が前後両枠部材(17)に固定された灯具吊持部材としての中桟部材(18)からなる左右方向に長い取付枠(15)と、取付枠(15)における灯具吊持部材としての左右両枠部材(16)および中桟部材(18)に前後方向に移動自在に取り付けられ、かつLED灯具(6)の端部を保持するホルダ(19)と、ホルダ(19)を前後方向の任意の位置で左右両枠部材(16)に固定する固定部材(21)とを備えている。
【0034】
図3および図5に示すように、取付枠(15)における灯具吊持部材としての左右両枠部材(16)および中桟部材(18)には、前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝(22)が設けられている。ホルダ案内溝(22)の両側面の下縁部に、それぞれ溝(22)内方に突出した突出片(23)がホルダ案内溝(22)の全長にわたって設けられている。ホルダ(19)は、上端部がホルダ案内溝(22)内に位置するとともに下端部が左右両枠部材(16)および中桟部材(18)よりも下方に位置するおねじ軸(24)、ホルダ案内溝(22)内においておねじ軸(24)の上端部に固定されるとともにホルダ案内溝(22)内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸(24)の軸線周りの回転を阻止する板状の回り止め部材(25)、おねじ軸(24)における左右両枠部材(16)および中桟部材(18)よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材(25)とともに突出片(23)を挟着する蝶ナット(26)、ならびにおねじ軸(24)の下端部に2つのナット(27)(28)を利用して取り付けられかつLED灯具(6)を掴む把持部材(29)とよりなる。回り止め部材(25)は長方形の板状であり、回り止め部材(25)の幅は左右両枠部材(16)および中桟部材(18)の両突出片(23)の先端間の幅よりも狭く、同じく長さは左右両枠部材(16)および中桟部材(18)の両突出片(23)の先端間の幅よりも長く、かつホルダ案内溝(22)の両側面間の間隔よりも短くなっている。そして、おねじ軸(24)、回り止め部材(25)および蝶ナット(26)によって、ホルダ(19)を前後方向の任意の位置で左右両枠部材(16)および中桟部材(18)に固定する固定部材(21)が構成されている。把持部材(29)は下方に開口した略U字状であり、弾性力によってLED灯具(6)の端部を掴むようになっている。なお、取付枠(15)の前後両枠部材(17)の横断面形状は、左右両枠部材(16)および中桟部材(18)の横断面形状と同一である。
【0035】
取付枠(15)の中桟部材(18)の前後両端部は、左右方向の任意の位置において、前後両枠部材(17)に固定、解除自在に取り付けられている。すなわち、図6に示すように、前後両枠部材(17)の下面と中桟部材(18)の下面とが面一になっており、両者に跨るように連結板(31)が配置されている。そして、上端部が前後両枠部材(17)のホルダ案内溝(22)内に位置するとともに下端部が前後両枠部材(17)よりも下方に位置するおねじ軸(33)と、上端部が中桟部材(18)のホルダ案内溝(22)内に位置するとともに下端部が中桟部材(18)よりも下方に位置するおねじ軸(33)とが連結板(31)に形成された2つの貫通穴(32)に通され、ホルダ案内溝(22)内において、各おねじ軸(33)の上端部に、ホルダ案内溝(22)内をその長さ方向に移動自在であり、かつ各おねじ軸(33)の軸線周りの回転を阻止する板状の回り止め部材(34)が固定され、各おねじ軸(24)における前後両枠部材(17)および中桟部材(18)よりも下方に突出した部分に、回り止め部材(34)とともに突出片(23)を挟着する2つのナット(35)(36)がねじ嵌められることによって、取付枠(15)の中桟部材(18)の前後両端部が、前後両枠部材(17)に固定、解除自在に取り付けられている。
【0036】
図3および図4に示すように、取付枠(15)の左右両枠部材(16)の後端部の外面に、左右方向にのびる軸線の回りに回転可能な溝付き車輪(37)が取り付けられている。また、取付枠(15)の左右両枠部材(16)の後端部の外面に、左右方向外方に突出した位置決めピン(38)が設けられている。溝付き車輪(37)は、垂直枠(8)の横部材(11)の垂直壁(11b)に沿って転動するようになっている。横部材(11)の垂直壁(11b)の後端部に、溝付き車輪(37)を嵌め入れる移動阻止用切り欠き(39)が形成されるとともに、同じく前端部に車輪(37)が移動阻止用切り欠き(39)内に嵌った際に位置決めピン(38)が嵌る位置決め用切り欠き(41)が形成されている。移動阻止用切り欠き(39)の前側縁部は下方に向かって後方に傾斜している。そして、溝付き車輪(37)が移動阻止用切り欠き(39)内に嵌った際に、位置決めピン(38)が位置決め用切り欠き(41)内に嵌り、これによって取付枠(15)の前後方向の移動が阻止されるようになっている。なお、取付枠(15)を栽培ラック(3)から前方に取り外す際には、位置決めピン(38)を位置決め用切り欠き(41)から上方に脱出させた状態で、取付枠(15)を前方に引っ張ることによってスムーズに行うことができる。
【0037】
図示は省略したが、直管型LED灯具(6)は、基板、複数のLEDチップおよび電源回路と、これらを内蔵する円筒状のカバーとからなり、電源回路が円筒状カバーの長手方向の一端部に配置され、円筒状カバーの上半部がアルミニウムのような金属で形成されるとともに、円筒状カバーの下半部が透光性を有する材料で形成されたものである。なお、円筒状カバーのアルミニウムで形成された上半部の外面には、放熱性を高めるために放熱フィンが設けられていてもよい。直管型LED灯具(6)は、電源回路が配置された側の一端に設けられた1対のピンが通電用ピン(42)となり、通電用ピン(42)に給電用配線に取り付けられたコネクタに接続されるようになっている。しかしながら、LED灯具(6)としては、直管型のものに限られず、基板およびLEDチップを有するLEDユニットや、他の形式のLEDランプなどが用いられてもよい。
【0038】
上述した植物栽培装置(1)において、図2に示すように、直管型LED灯具(6)は、取付枠(15)の左右方向の長さとほぼ等しい長さを有し、かつ長手方向を左右方向に向けた状態で左右両端部が取付枠(15)の左右両枠部材(16)のホルダ(19)に取り付けられる場合がある。また、直管型LED灯具(6)は、取付枠(15)の左右方向の長さよりも短い長さを有し、かつ長手方向を左右方向に向けた状態で左端部が左枠部材(16)のホルダ(19)に取り付けられるとともに、右端部が中桟部材(18)のホルダ(19)に取り付けられる場合がある。また、直管型LED灯具(6)は、取付枠(15)の左右方向の長さよりも短い長さを有し、かつ長手方向を左右方向に向けた状態で左端部が中桟部材(18)のホルダ(19)に取り付けられるとともに、右端部が右枠部材(16)のホルダ(19)に取り付けられる場合がある。さらに、直管型LED灯具(6)は、取付枠(15)の左右方向の長さよりも短くかつ右枠部材(16)と中桟部材(18)との間隔よりも長い長さを有し、かつ長手方向を斜め方向に向けた状態で左端部が中桟部材(18)のホルダ(19)に取り付けられるとともに、右端部が右枠部材(16)のホルダ(19)に取り付けられる場合がある。
【0039】
なお、図2に示す状態は、実際のLED灯具(6)の配置を示すものではなく、取付枠(15)への直管型LED灯具(6)の配置可能な状態を示すものである。さらに、用いられる直管型LED灯具(6)の長さおよび配置例は、図2に示すものに限定されない。
【0040】
上述した植物栽培装置(1)において、一部のホルダ(19)のおねじ軸(24)の長さを、他のホルダ(19)のおねじ軸(24)の長さよりも長くしておいてもよい。この場合、図1に示すように、一部のLED灯具(6)の高さ位置を他のLED灯具(6)の高さ位置とは変更することが可能になる。また、この場合、図2に示すように、長手方向を左右方向にLED灯具(6)と長手方向が傾斜したLED灯具(6)とを混在させることができる。
【0041】
上述した植物栽培装置(1)において、植物の種類や植物の成育状況に応じて載置棚に対するLED灯具(6)の前後方向の位置を変更することが可能になり、植物に照射する光強度を最適に調節することが可能になる。
【0042】
また、上述した植物栽培装置(1)において、すべてのホルダのうちの少なくとも一部のホルダとして、図7または図8に示すように、把持部材(29)の高さを変更しうるホルダを用いてもよい。
【0043】
図7に示すホルダ(45)は、おねじ軸(24)の下端部に、長さ調整ナットである高ナット(46)がねじ嵌められ、高ナット(46)の下端部に下側おねじ軸(47)がねじ嵌められ、下側おねじ軸(47)の下端部にLED灯具(6)を掴む把持部材(29)が設けられたものである。そして、高ナット(46)を回すことによって、把持部材(29)の高さ位置が調整可能となっている。なお、長さ調整ナットとしては、高ナットの代わりに、たとえばターンバックルを用いることが可能である。
【0044】
図8に示すホルダ(50)は、おねじ軸(24)の下端部に伸縮ロッド(51)が取り付けられ、伸縮ロッド(51)の下端部にLED灯具(6)を掴む把持部材(29)が設けられたものである。そして、伸縮ロッド(51)を伸縮させることによって、把持部材(29)の高さ位置が調整可能となっている。
【0045】
図7または図8に示すホルダ(19)を用いた場合、図9に示すように、植物の種類や植物の成育状況に応じて載置棚に対するLED灯具(6)の前後方向の位置を変更するとともに、載置棚に対するLED灯具(6)の高さ位置を個別に変更することが可能になり、植物に照射する光強度を最適に調節することが可能になる。
【0046】
さらに、上述した植物栽培装置(1)において、直管型LED灯具(6)における電源回路が内蔵された側の端部を保持するホルダとして、図10に示すように、放熱機能を有するホルダを用いてもよい。
【0047】
図10に示すホルダ(60)のおねじ軸(24)の下端には、ナット(28)によって、LED灯具(6)を取り付けるブロック状のアルミニウム製灯具取付部材(61)が固定されている。灯具取付部材(61)の下面には、下方に開口した横断面略U字状でありかつ内周面が円筒面となっている灯具嵌め入れ溝(62)が形成されている。灯具取付部材(61)の長さは、少なくとも円筒状カバー内の一端部に内蔵された電源回路におけるLED灯具(6)の長手方向の全体を覆うような長さとなっている。
【0048】
LED灯具(6)は、円筒状カバーの上半部が灯具取付部材(61)の灯具嵌め入れ溝(62)内に嵌め入れられた状態で、両端が灯具取付部材(61)に係脱自在となっている複数の結束具(63)によって灯具取付部材(61)に着脱自在に取り付けられている。LED灯具(6)の円筒状カバーの上半部と灯具嵌め入れ溝(62)の内周面との間の熱伝導性を高めるために、両者間に合成樹脂製の伝熱シートが配置されていてもよい。
【0049】
図10に示すホルダ(60)を用いた場合、円筒状カバーに内蔵された電源回路から発せされる熱が、灯具取付部材(61)に伝わり、灯具取付部材(61)から放熱されるとともに、灯具吊持部材としての左右両枠部材(16)や中桟部材(18)から放熱されることになって、LED灯具(6)の長手方向の温度が均一化される。
【0050】
上記実施形態においては、LED照明装置(5)の灯具吊持部材は、取付枠(15)に設けられているが、これに限定されるものではなく、下端の載置棚(4)を除いた載置棚(4)の下面に固定されていてもよい。この場合、取付枠(15)の左右両枠部材(16)および中桟部材(18)と同一横断面形状を有する灯具吊持部材を、適当な手段で載置棚(4)の下面に固定する。また、載置棚(4)の下面に、取付枠(15)の左右両枠部材(16)および中桟部材(18)と同一横断面形状を有する灯具吊持部材の代わりに、これらを幅方向に2以上に分割した複数の構成部品からなる灯具吊持部材を固定しておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明による植物栽培装置は、LED照明装置を人工光源とする植物工場、野菜工場、育苗装置などにおいて好適に用いられる
【符号の説明】
【0052】
(1):植物栽培装置
(2):栽培槽
(3):栽培ラック
(4):載置棚
(5):LED照明装置
(6):直管型LED灯具
(7):灯具取付部
(8):垂直枠(垂直部)
(11):横部材
(11b):垂直壁
(15):取付枠
(16):左右両枠部材(灯具吊持部材)
(18):中桟部材(灯具吊持部材)
(19)(45)(50)(60):ホルダ
(21):固定部材
(22):ホルダ案内溝
(23):突出片
(24):おねじ軸
(25):回り止め部材
(26):蝶ナット
(29):把持部材
(37):車輪
(38):位置決めピン
(39):移動阻止用切り欠き
(41):位置決め用切り欠き
(46):高ナット(長さ調整ナット)
(51):伸縮ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が植えられた栽培槽を載せる載置棚を有する栽培ラックと、載置棚の上方に間隔をおいて配置されたLED照明装置とを備えた植物栽培装置において、
LED照明装置が、複数のLED灯具と、載置棚に対するLED灯具の前後方向の位置を変更しうるようにLED灯具を取り付ける灯具取付部とを備えている植物栽培装置。
【請求項2】
LED照明装置の灯具取付部が、長手方向を前後方向に向けた複数の灯具吊持部材と、灯具吊持部材に前後方向に移動自在に取り付けられかつLED灯具を保持するホルダと、ホルダを前後方向の任意の位置で灯具吊持部材に固定する固定部材とを有している請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部にねじ嵌められた長さ調整ナット、長さ調整ナットの下端部にねじ嵌められた下側おねじ軸、下側おねじ軸の下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項5】
灯具吊持部材に前後方向にのびかつ下方に開口したホルダ案内溝が設けられ、ホルダ案内溝の両側面の下縁部に溝内方に突出した突出片が設けられ、ホルダが、上端部がホルダ案内溝内に位置するとともに下端部が灯具吊持部材の下方に位置するおねじ軸、ホルダ案内溝内においておねじ軸の上端部に設けられるとともにホルダ案内溝内を前後方向に移動自在であり、かつおねじ軸の軸線周りの回転を阻止する回り止め部材、おねじ軸における灯具吊持部材よりも下方に突出した部分にねじ嵌められ、かつ回り止め部材とともに突出片を挟着するナット、おねじ軸の下端部に取り付けられた伸縮ロッド、伸縮ロッドの下端部に設けられかつLED灯具を掴む把持部材とよりなり、おねじ軸、回り止め部材およびナットにより固定部材が構成されている請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項6】
LED照明装置の灯具取付部が、長手方向を前後方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された左右両枠部材と、長手方向を左右方向に向けた状態で前後方向に間隔をおいて配置され、かつ左右両端部が左右両枠部材に固定された前後両枠部材とを備えており、左右両枠部材が灯具吊持部材となっている請求項2〜5のうちのいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項7】
灯具取付部の前後両枠部材の長さの中間部において、長手方向を前後方向に向けた中桟部材が配置され、中桟部材の前後両端部が、左右方向の任意の位置において固定、解除自在に前後両枠部材に取り付けられている請求項6記載の植物栽培装置。
【請求項8】
栽培ラックが、左右方向に間隔をおいて配置されかつ前後方向に所定の奥行きを有する複数の垂直部を備え、栽培ラックの垂直部に、長手方向を前後方向に向けるとともに全長にわたる垂直壁を有する横部材が設けられており、灯具取付部の左右両枠部材の後端部外面に、それぞれ左右方向にのびる軸線の周りに回転自在の車輪が取り付けられ、灯具取付部の左右両枠部材の前端部外面に、それぞれ左右方向外方に突出した位置決めピンが設けられ、栽培ラックの垂直部における横部材の垂直壁の後端部に、車輪を嵌め入れる移動阻止用切り欠きが形成されるとともに、同じく前端部に、車輪が移動阻止用切り欠き内に嵌った際に位置決めピンが嵌る位置決め用切り欠きが形成されている請求項6または7記載の植物栽培装置。
【請求項9】
栽培ラックの垂直部における横部材の垂直壁の後端部に形成された移動阻止用切り欠きの前側縁部が、下方に向かって後方に傾斜している請求項8記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−66455(P2013−66455A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258718(P2011−258718)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(505014052)昭和電工アルミ販売株式会社 (9)
【Fターム(参考)】