植物生育設備
【課題】植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった植物生育設備を提供する。
【解決手段】植物生育室1内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口4aと、前記温空気吸込み口4aで吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部5と、前記自然冷却部5で自然冷却された空気A2を前記室内へ吹き出す吹出し口6aと、前記吹出し口6aの近傍に設けた温度センサ7aと、前記温度センサ7aの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部7bとを具備してなるようにした。
【解決手段】植物生育室1内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口4aと、前記温空気吸込み口4aで吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部5と、前記自然冷却部5で自然冷却された空気A2を前記室内へ吹き出す吹出し口6aと、前記吹出し口6aの近傍に設けた温度センサ7aと、前記温度センサ7aの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部7bとを具備してなるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調の効率化を図った植物を生育するための植物生育設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物の生育、収穫の容易化ならびに空調の効率化を図るようにした植物栽培施設が知られている。
【0003】
具体的に、この種の植物栽培施設は、部屋内に隙間を持つ一対の壁材を複数横方向に設置し、この壁材に添って上下方向に設けられる複数の柱材に、横方向に突出するブラケットを上下方向に複数段取付け、このブラケット上に複数の溝形のベッドを横方向に取付け、このベッド上に定植パネルを配し、この定植パネルに植物を栽培するように構成されている。
【0004】
そして、前記一対の壁材間を空調空気が流れる空調通路として利用すると共に、前記壁材に多数の空調空気吹出孔を穿設することで、壁材間の隙間を空調通路として、この空調通路に通した空調空気を、壁材に設けた空調空気吹出孔から各植物に対してスポット送風が可能としてある。
【0005】
この結果、各植物に生育に最適な風速で送風することができ、且つ植物周辺空間の温度のみをその温度むらを無くしながらコントロールし、部屋全体の温度を調節するよりも空調効率が向上する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−021064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがこのような従来の構成では、空調効率が向上すると言うものの、実質的には空調効率がさほど向上するものではない。具体的には、植物の近傍で照明を行うと、その周辺の空気が温められる。そして、温められた空気は、空調空気吹出孔から吹出される空気とともに部屋内へ拡散するため、空調装置の冷却動作を常に要してしまうといった問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった植物生育設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明にかかる植物生育設備は、植物生育室内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口と、前記温空気吸込み口で吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部と、前記自然冷却部で自然冷却された空気を前記室内へ吹き出す吹出し口と、前記吹出し口の近傍に設けた温度センサと、前記温度センサの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部とを具備してなることを特徴とする。
【0009】
ここで、「植物」とは、野菜や果物のように食物として利用できるものに限らず、観賞用の草木をも含む広い概念である。また、生育方法は、水耕栽培が好ましいが、これに限らず土壌栽培などでもよい。また、「室内側冷却部」とは、空気を冷やしてから冷風として吹出すもの(例えば、エアコン)、単に風を起こすもの(例えば、扇風機)、風を起こさずに放射冷却を利用するもの等、室内を電気エネルギーなどを利用して強制的に冷却し得るものであれば良い。また、温度センサと室内側冷却部とは一体的に組み込まれたものであっても良いし、別体のものであってもよい。
【0010】
このようなものであれば、植物生育用の照明によって温められた温空気は、温空気吸込み口から室外へ吸い込まれ、自然冷却部で冷却されてから、吹出し口を介して室内へ吹き出される。そして、自然冷却された空気の温度は、温度センサによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、室内側冷却部が自然冷却された空気をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。また、植物生育室内を、外部の空気を利用することの無い閉鎖系とすることができるので、例えば、外部からの菌の該室内への進入を防止するなど、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0011】
すなわち、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備を提供することができる。
【0012】
本発明の自然冷却部の望ましい態様としては、この自然冷却部が、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものが挙げられる。
【0013】
前記自然冷却部を、建築物の地下湧水槽を利用して構成しているのであれば、自然冷却部を設けるために特別の費用をかける必要がなく、設備投資のコストダウンを図れる。また、冷却用の水を、水道水などを利用せず、湧水を利用できるので、運用コストの削減を図れる。
【0014】
有効な冷却効果を得ながら、運用コストの低減を図るには、前記自然冷却部が、前記温空気を、前記地下湧水槽にある水の水面に沿って案内する通風路を有していることが望ましい。
【0015】
前記通風路を、該通風路の入口から出口の間の少なくとも一部で、屈曲させているのであれば、温空気と水との接触時間を増加させて、温空気を有効に冷却することができる。
【0016】
前記温空気吸込み口と、前記温度センサとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配しているのであれば、かかる別々の空間に、前記温空気吸込み口と前記温度センサとをそれぞれ配することによって、温度センサでは、温空気が検知されることを防止しながら、自然冷却された空気の温度を精度良く検知することができる。したがって、室内側冷却部が、温空気の温度による影響を受けることなく、自然冷却された空気に対してのみ、その温度を下げるように動作するので、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に特に資する。
【0017】
1又は複数の支柱と、この支柱に支持させた1又は複数の植物生育用の棚とを具備する棚ユニットを具備し、棚ユニットごとに前記照明および前記温空気吸込み口を設けているのであれば、かかる照明で温められた温空気を、温空気吸込み口で効率的に吸い込むことができる。
【0018】
前記照明が植物に対して照射する光を遮ることなく該照明を内部空間内に配して成る照明収容部と、この照明収容部と前記温空気吸込み口との間に設けられ前記照明で温められた前記内部空間内の空気を前記温空気吸込み口へと導く温空気導出部とを具備しているのであれば、温空気導出部によって、照明によって温められた空気を、室内に行かせることなく、室外の自然冷却部へと効果的に導くことができるので、室内側冷却部が、その温められた空気によって無用に動作することを防止できるなど有効な省エネに資する。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明に係る植物生育設備は、植物生育用の照明によって温められた温空気は、温空気吸込み口から室外へ吸い込まれ、自然冷却部で冷却されてから、吹出し口を介して室内へ吹き出される。そして、自然冷却された空気の温度は、温度センサによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、室内側冷却部が自然冷却された空気をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。また、植物生育室内を、外部の空気を利用することの無い閉鎖系とすることができるので、例えば、外部からの菌の該室内への進入を防止するなど、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0020】
すなわち、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る植物生育設備Zは、例えば鉄筋コンクリート製の建築物(地上部は図示せず)の地下部を利用して構成したものである。
【0023】
植物生育設備Zの具体的な説明を行う前に、まず、地下部について説明しておく。
【0024】
地下部は、図1、図2に示すように、建物の地下1階部分に設けた植物生育用の植物生育室1と、この植物生育室1の床下に設けた地下湧水槽2と、を具備してなるものである。
【0025】
植物生育室1は、床面約10数m×10数m、天井高さ約3mの大きさを有する略方形箱型のものである。なお、この植物生育室1の形状や大きさなどは、本実施形態のものに限られず、実施態様に応じて適宜変更可能である。
【0026】
地下湧水槽2は、複数の立壁21により区切られた、複数の湧水ビットから成るものである。本実施形態では、図3などに示すように、9つの湧水ビット21Ba〜21Bi(以下、「湧水ビット21B」と総称する)を有するようにしている。
【0027】
各湧水ビット21Bは、それぞれ内部高さ約1.5mの略方形箱型状の内部空間を有するものである。そして、地下湧水槽2の周壁22などから該地下湧水槽2内にしみ出てくる湧水Mが、湧水ビット21Bに溜まるようにしている(図4参照、他の図では省略)。なお、ここで「湧水」とは、周壁22などからしみ出てくる水(地下水)に限らず、雨水などをも含む広義の概念である。また、この湧水ビット21に溜まる水は、前記湧水に限らず、例えば水道水を積極的に溜めるようにすることを妨げない。また、湧水ビット21Bの底面は、水が所定の方向へと流れる程度にそれぞれ傾斜させてある。しかして、この傾斜と後述する通水孔Xとを利用して、各湧水ビット21の水が、1つの湧水ビット21に流れ込ませて集められるようにしてある。加えて、その1つの湧水ビット21から、水を外部へ適宜排水することができるようにしてある。より具体的に本実施形態では、図4に示すように、9つの湧水ビット21Bのうち、湧水ビット21Beの底面の高さを、他の湧水ビット21の底面の高さよりも低くなるように設定してあり、この湧水ビット21Beに設けた排水口21Be1から適宜排水することができる。
【0028】
立壁21には、図6、図7などに示すように、通風用の通風孔W1〜W8(以下、通風孔Wと総称する)と、通水用の通水孔X1〜X8(以下、通水孔Xと総称する)とを設けている。具体的に、通風孔Wについては、図3に示すように、湧水ビット21Baと湧水ビット21Bbとの間に通風孔W1を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Beとの間に通風孔W2を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bdとの間に通風孔W3を設けている。また、湧水ビット21Bdと湧水ビット21Bgとの間に通風孔W4を設けている。また、湧水ビット21Bgと湧水ビット21Bhとの間に通風孔W5を設けている。また、湧水ビット21Bhと湧水ビット21Biとの間に通風孔W6を設けている。また、湧水ビット21Biと湧水ビット21Bfとの間に通風孔W7を設けている。また、湧水ビット21Bfと湧水ビット21Bcとの間に通風孔W8を設けている。そして、本実施形態では、この通風孔を人が通れる程度の大きさとしている。具体的には、内法55cmの四角孔としている。
【0029】
一方、通水孔Xについては、図6などに示すように、湧水ビット21Baと湧水ビット21Bbとの間に通水孔X1を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Beとの間に通水孔X2を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bdとの間に通水孔X3を設けている。また、湧水ビット21Bdと湧水ビット21Bgとの間に通水孔X4を設けている。また、湧水ビット21Bhと湧水ビット21Beとの間に通水孔X5を設けている。また、湧水ビット21Bfと湧水ビット21Biとの間に通水孔X6を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bfとの間に通水孔X7を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Bcとの間に通水孔X8を設けている。そして、本実施形態では、この通水孔Xを、通水できる程度の大きさとしている。具体的には、数cm程度の丸孔としている。また、この通水孔Xを、通風孔Wよりも低い位置に配している。
【0030】
次に、植物生育設備Zについて、具体的に説明する。
【0031】
植物生育設備Zは、図1、図2、図5に示すように、植物生育用の棚32などを備えた複数の棚ユニット3と、植物生育室1内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気A1を室外へ吸い込む温空気吸込み口4aと、前記温空気吸込み口4aで吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部5と、前記自然冷却部5で自然冷却された空気A2を植物生育室1内へ吹き出す吹出し口6aと、前記吹出し口6aの近傍に設けた温度センサ7aと、前記温度センサ7aの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部7bとを具備してなるに加え、図示しない温度制御のための温度制御装置、湿度制御のためのミスト噴射装置、CO2濃度制御のためのCO2供給装置、および、肥料を供給する肥料供給装置と、これら各装置を制御するための生育制御主装置とを具備してなるものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0032】
棚ユニット3は、図5などに示すように、植物生育室1の床面11と天井面12との間に立設した複数の支柱31と、この支柱31に支持させた植物生育用の棚32と、棚32で生育する植物を照明するための光照射装置33(本発明の「植物生育用の照明」に相当)とを具備するものである。
【0033】
棚32は、複数の栽培用パレット3Pを一列に並べた状態で載置し得るように、上面を開口させた略箱体状のものである。そして、一端部に液肥を取り入れるための液肥取入口(図示せず)を設け、他端部に内部を循環させた液肥を排出するための液肥排出口(図示せず)を設けている。また、本実施形態では、棚32を、例えば、当該植物生育室1内でレタスVを収穫するに必要な日数と対応させて、12枚の栽培用パレット3Pを一列に並べた状態で載置し得るように構成している。棚32に並べる栽培用パレット3Pの枚数は、栽培する野菜などに応じて、適宜変更することができる。また、各栽培用パレット3Pで、栽培する植物の個数を6個としているが、この個数も任意でよい。
【0034】
光照射装置33は、各棚32の下面にそれぞれ設けたものであって、白色の光を発光する発光ダイオードを光源として、照射周期2μsec〜1msec、デューティ比20〜70%(DT比)の範囲のパルス光を、植物に対して照射し得るように構成して成るものである。そして、本実施形態では、照射周期およびデューティ比を、図示しない生育制御用主装置で制御し得るように構成してある。これにより、それぞれの光照射装置33によって、1段下の棚32で生育中の植物を好適に照明することができる。
【0035】
温空気吸込み口4aは、植物生育室1外(例えば天井裏など)に配した温空気吸込みダクト4内部に、光照射装置33によって温められた温空気A1を吸い込むためのものである。この温空気吸込みダクト4には、温空気A1を吸い込むためのファン(図示せず)を設けてある。そして、この温空気吸込み口4aから導かれた温空気A1は、温空気吸込みダクト4内部を経て、地下湧水槽2へと導かれる。本実施形態では、この温空気吸込みダクト4の全域に亘って所定の風量を確保し得るように、該温空気吸込みダクト4を、長手方向に各部略等断面形状(例えば、矩形状や円形状など)としている。
【0036】
自然冷却部5は、前記地下湧水槽2を利用して構成したものである。本実施形態では、この自然冷却部5を、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものとしている。具体的には、図7に示すように、この自然冷却部5が、温空気吸込みダクト4から該地下湧水槽2の導入口2x(本発明の「通風路の入口」に相当)に取り入れた温空気A1を、湧水ビット21に溜まった水の水面に沿って案内し、該地下湧水槽2の導出口2y(本発明の「通風路の出口」に相当)から吹出しダクト6に対して導出する通風路Pを有するようにしている。なお、地下湧水槽2の導入口2xは、湧水ビット21Baの周壁に形成してある。また、地下湧水槽2の導出口2yは、湧水ビット21Bcの周壁に形成してある。
【0037】
加えて本実施形態では、この通風路Pが、湧水ビット21Ba→(通風孔W1)→湧水ビット21Bb→(通風孔W2)→湧水ビット21Be→(通風孔W3)→湧水ビット21Bd→(通風孔W4)→湧水ビット21Bg→(通風孔W5)→湧水ビット21Bh→(通風孔W6)→湧水ビット21Bi→(通風孔W7)→湧水ビット21Bf→(通風孔W8)→湧水ビット21Bcの経路を有するようにしている。したがって、該通風路Pを通過する温空気A1は、5箇所の湧水ビット(21Bb、21Be、21Bd、21Bg、21Bi)内で略直角に屈曲しながら、それぞれの湧水ビット21を通り抜けていくこととなる。
【0038】
吹出し口6aは、植物生育室1外(例えば壁裏など)に配した吹出しダクト6に設けてなるものであって、該吹出しダクト6を介して送られてくる、地下湧水槽2で冷やされた空気を、該吹出し口6aから植物生育室1内へと吹き出すようにしてある。本実施形態では、この吹出しダクト6には、地下湧水槽2で冷やされた空気を吹き出すためのファン(図示せず)を設けてある。また、この吹出しダクト6を、前記温空気吸込みダクト4と同様に、全域に亘って所定の風量を確保し得るように、長手方向に各部略等断面形状(例えば、矩形状や円形状など)としている。
【0039】
温度センサ7aと室内側冷却部7bとは、一般的な業務用のエアコン7に組み込まれてなるものであって、室内側冷却部7bは、温度センサ7aの出力値が設定値以上であれば、自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように、ルーバー状の冷風吹出し口7b1から冷風を吹き出す一方、設定値未満であれば、冷風を吹き出すのを停止するかあるいは前記自然冷却された空気A2の温度が上昇しない程度に冷気を吹き出すように動作する。
【0040】
温度制御装置は、詳細は図示していないが、一つの装置で加温又は冷却を行えるようにペルチェ素子を利用したものであって、棚32の下面に取り付けている。すなわち上段の棚32に設けたペルチェ素子を利用する。なお、加温又は冷却の一方のみを行えるように構成することを妨げない。そして、本実施形態では、ペルチェ素子の動作時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0041】
ミスト噴射装置は、詳細は図示していないが、水道パイプから取り入れた水を、水蒸気ミストにしてミスト噴射口から噴射することで、植物近傍の湿度保持および植物への補助的な水分補給を行えるようにしたものであって、ミスト噴射口を棚32の下面に設けている。すなわち上段の棚32に設けたミスト噴射口を利用する。そして、本実施形態では、水蒸気ミストの噴射時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0042】
CO2供給装置は、詳細は図示していないが、炭酸ガスボンベに接続した炭酸ガス供給口から二酸化炭素を噴射することで、植物の光合成を促進するようにしたものであって、炭酸ガス供給口を棚32の下面に設けている。すなわち上段の棚32に設けた炭酸ガス供給口を利用する。そして、本実施形態では、二酸化炭素の供給時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0043】
肥料供給装置は、詳細は図示していないが、例えば、窒素、リン酸、カリウム、石灰、硫黄、鉄、ホウ素、マンガン、亜鉛、モリブデン、銅、塩素、ケイ素、コバルト、バナジウム、アルミニウム、セレンなどの各栄養素を、水に適宜混合して得た液肥を、肥料供給口から棚32内に供給するようにしたものである。そして、本実施形態では、液肥の供給量および各栄養素の成分比を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0044】
以上のように構成される植物生育設備Zについて、その使用方法を以下に述べる。
【0045】
光照射装置33から棚32の植物に対して光を照射すると、その周囲の空気が温められる。温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから温空気吸込みダクト4内部へと吸い込まれる。そして、この温空気吸込み口4aから導かれた温空気A1は、温空気吸込みダクト4内部を経て、地下湧水槽2に導かれる。
【0046】
地下湧水槽2に導かれた温空気A1は、通風路Pを通って、すなわち、湧水ビット21Ba→(通風孔W1)→湧水ビット21Bb→(通風孔W2)→湧水ビット21Be→(通風孔W3)→湧水ビット21Bd→(通風孔W4)→湧水ビット21Bg→(通風孔W5)→湧水ビット21Bh→(通風孔W6)→湧水ビット21Bi→(通風孔W7)→湧水ビット21Bf→(通風孔W8)→湧水ビット21Bcの順に通って、吹出しダクト6に導入され、その後、吹出し口6aから植物生育室1内に吹き出される。
【0047】
この際、該通風路Pは、湧水ビット21Bなどにある水Mの水面に沿って形成されているため、通風路Pを通過する温空気A1は、その水Mによって冷却される。
【0048】
しかして、植物生育用の照明によって温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから室外へ吸い込まれ、自然冷却部5で冷却されてから、吹出し口6aを介して室内へ吹き出されることとなる。
【0049】
本実施形態では、図8に示すように、自然冷却部5で最大5℃程度の冷却効果を得ることができた。
【0050】
そして、自然冷却された空気A2の温度は、温度センサ7aによって検知される。
【0051】
ここで、室内側冷却部7bは、温度センサ7aの出力値が設定値以上であれば、自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように冷風を吹き出すように動作する一方、設定値未満であれば、冷気を吹き出すのを停止するかあるいは前記自然冷却された空気A2の温度が上昇しない程度に冷気を吹き出すように動作する。
【0052】
本実施形態では、図示はしていないが、自然冷却部5を用いることで、自然冷却部5を用いない場合と比べて、エアコン7について約8kWhの電力を削減することができた。
【0053】
このように本実施形態にかかる植物生育設備Zによれば、光照射装置33が照射する光によって温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから温空気吸込みダクト4へ吸い込まれ、自然冷却部5である地下湧水槽2で冷却されてから、吹出しダクト6の吹出し口6aを介して植物生育室1内へ吹き出される。
【0054】
そして、自然冷却された空気A2の温度は、エアコン7の温度センサ7aによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、エアコン7の室内側冷却部7bが自然冷却された空気A2をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部5の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。
【0055】
また、植物生育室1は、地下湧水槽2とダクトを介して接続されているだけであり、温空気A1の冷却に、外部の空気を利用することの無い閉鎖系となっている。したがって、外部からの菌の該室内への進入を防止して、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0056】
また、温空気A1を冷却する際に、湧水ビット21Bにある水を利用して自然冷却を行っているので、吹出し口6aから吹き出される自然冷却された空気A2が、適度な湿気を含むものとなり、植物生育室1内で生育する植物に適度な湿気を与えられ好適である。
【0057】
すなわち、植物の好適な光環境などを実現しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備Zを提供することができる。
【0058】
また、本実施形態では、自然冷却部5を、建築物の地下湧水槽2を利用して構成しているので、自然冷却部5を設けるために特別の費用をかける必要がなく、設備投資のコストダウンを図れる。また、冷却用の水を、水道水などを利用せず、湧水を利用できるので、運用コストの削減を図れる。
【0059】
また、前記自然冷却部5が、前記温空気A1を、前記地下湧水槽2にある水の水面に沿って案内する通風路Pを有しているので、有効な冷却効果を得ながら、運用コストの低減を図れる。
【0060】
また、前記通風路Pを、該通風路Pの導入口2xから導出口2yの間で、5箇所の湧水ビット(21Bb、21Be、21Bd、21Bg、21Bi)で屈曲させているので、温空気A1を該通風路Pの入口から出口に直線状に導く場合と比べて、温空気A1と水との接触時間を増加させて、温空気A1を有効に冷却することができる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
例えば、本実施形態では、植物生育設備Zを、地下部を利用して構成しているが、この地上部を利用して構成することを妨げない。また、地下部と地上部との両方を利用して構成するといった実施態様も考えられる。
【0063】
また、植物生育室1に設けた棚32や支柱31の構成も本実施形態に限られるものではない。
【0064】
また、図9に示すように、前記温空気吸込み口4aと、前記温度センサ7aとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配するといった実施態様も考えられる。
【0065】
ここで、かかる間仕切りを実現するには、図9に示すように、例えば、隣接する各棚ユニット3の間に、合成樹脂性の間仕切りカーテンCを、植物生育室1の天井から床近傍まで、垂れ下がらせるといった態様とすればよい。
【0066】
このような構成とすれば、間仕切りカーテンCで区切られた別々の空間に、前記温空気吸込み口4aと前記温度センサ7aとをそれぞれ配することによって、温度センサ7aでは、カーテンによって温空気A1が直接的に検知されることを防止しながら、自然冷却された空気A2の温度を精度良く検知することができる。したがって、室内側冷却部7bが、温空気A1の温度による影響を受けることなく、自然冷却された空気A2に対してのみ、その温度を下げるように動作するので、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に特に資する。
【0067】
具体的な間仕切りカーテンCによる省エネの効果を、図10、図11を用いて説明する。
【0068】
図10は、間仕切りカーテンCがないとき、図11は、間仕切りカーテンCを用いたときの、棚ユニット3の上段、中段、下段の3箇所の温度の測定結果をそれぞれ示すものであって、縦軸は温度、横軸は時刻である。ここで、各図において、上段、中段、下段の温度が、一様に上昇したり下降したりしているのは、光照射装置33の動作の有無などによる。
【0069】
図10、図11によれば、下段では、間仕切りカーテンCの有無による温度の差異は、ほとんど無いことがわかる。中段では、間仕切りカーテンCを用いることで、約5℃の温度低下(時刻21:00´01近傍)が見られる。上段では、間仕切りカーテンCを用いることで、約4℃の温度低下(時刻21:00´01近傍)が見られる。
【0070】
すなわち、間仕切りカーテンCを用いることで、間仕切りカーテンCで区切られた空間内の温度を下げることができ、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、省エネの実現を行うことができる。
【0071】
また、図12に示すように、光照射装置33を、例えば、透明で筒状の照明収容部3X内に配し、この光照射装置33で温められた照明収容部3X内の温空気A1を、筒状の温空気導出部3Yによって温空気吸込み口4aへと導くように構成するといった実施態様も考えられる。
【0072】
このような構成とすれば、温空気導出部3Yによって、光照射装置33によって温められた温空気A1を、室内に行かせることなく、室外の自然冷却部5へと効果的に導くことができるので、エアコン7が、温空気A1によって無用に動作することを防止できるなど有効な省エネに資する。
【0073】
また、光照射装置33、温度制御装置、ミスト噴射装置、CO2供給装置、および肥料供給装置を全て備えるように構成しているが、少なくとも、光照射装置33を備えていればよい。
【0074】
また、生育環境制御部が制御する装置は、上述した各装置に限られない。例えば、霧を発生させる霧発生装置や、風を起こす風発生装置、日照状態を照明の点滅により実現する照明制御装置などのように、自然現象として現れる現象を起こさせる装置であればよい。ただし、自然環境を実現するようなコントロールであるか否かを問わない。
【0075】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態における植物生育設備を適用した建築物の地下部の構成を模式的に示す正面図。
【図2】同側面図。
【図3】同平面図。
【図4】図3のD1−D2における地下湧水槽の構造断面図。
【図5】同実施形態における棚部分を拡大して示す図。
【図6】同実施形態における水の流れを示す図。
【図7】同実施形態における温空気の流れを示す図。
【図8】同実施形態における自然冷却部による冷却効果を示す図。
【図9】本発明の他の実施形態における植物生育設備を適用した建築物の地下部の構成を模式的に示す図。
【図10】同実施形態における間仕切りカーテンの効果を説明するための図(カーテンなし)。
【図11】同実施形態における間仕切りカーテンの効果を説明するための図(カーテンあり)。
【図12】本発明の他の実施形態における植物生育設備の要部拡大図。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・植物生育室
2・・・・地下湧水槽
2x・・・導入口(通風路の入口)
2y・・・導出口(通風路の出口)
4a・・・温空気吸込み口
5・・・・自然冷却部
6a・・・吹出し口
7a・・・温度センサ
7b・・・室内側冷却部
31・・・支柱
32・・・棚
33・・・植物生育用の照明(光照射装置)
3X・・・照明収容部
3Y・・・温空気導出部
A1・・・温空気
A2・・・自然冷却された空気
P・・・・通風路
Z・・・・植物生育設備
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調の効率化を図った植物を生育するための植物生育設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物の生育、収穫の容易化ならびに空調の効率化を図るようにした植物栽培施設が知られている。
【0003】
具体的に、この種の植物栽培施設は、部屋内に隙間を持つ一対の壁材を複数横方向に設置し、この壁材に添って上下方向に設けられる複数の柱材に、横方向に突出するブラケットを上下方向に複数段取付け、このブラケット上に複数の溝形のベッドを横方向に取付け、このベッド上に定植パネルを配し、この定植パネルに植物を栽培するように構成されている。
【0004】
そして、前記一対の壁材間を空調空気が流れる空調通路として利用すると共に、前記壁材に多数の空調空気吹出孔を穿設することで、壁材間の隙間を空調通路として、この空調通路に通した空調空気を、壁材に設けた空調空気吹出孔から各植物に対してスポット送風が可能としてある。
【0005】
この結果、各植物に生育に最適な風速で送風することができ、且つ植物周辺空間の温度のみをその温度むらを無くしながらコントロールし、部屋全体の温度を調節するよりも空調効率が向上する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−021064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがこのような従来の構成では、空調効率が向上すると言うものの、実質的には空調効率がさほど向上するものではない。具体的には、植物の近傍で照明を行うと、その周辺の空気が温められる。そして、温められた空気は、空調空気吹出孔から吹出される空気とともに部屋内へ拡散するため、空調装置の冷却動作を常に要してしまうといった問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった植物生育設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明にかかる植物生育設備は、植物生育室内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口と、前記温空気吸込み口で吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部と、前記自然冷却部で自然冷却された空気を前記室内へ吹き出す吹出し口と、前記吹出し口の近傍に設けた温度センサと、前記温度センサの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部とを具備してなることを特徴とする。
【0009】
ここで、「植物」とは、野菜や果物のように食物として利用できるものに限らず、観賞用の草木をも含む広い概念である。また、生育方法は、水耕栽培が好ましいが、これに限らず土壌栽培などでもよい。また、「室内側冷却部」とは、空気を冷やしてから冷風として吹出すもの(例えば、エアコン)、単に風を起こすもの(例えば、扇風機)、風を起こさずに放射冷却を利用するもの等、室内を電気エネルギーなどを利用して強制的に冷却し得るものであれば良い。また、温度センサと室内側冷却部とは一体的に組み込まれたものであっても良いし、別体のものであってもよい。
【0010】
このようなものであれば、植物生育用の照明によって温められた温空気は、温空気吸込み口から室外へ吸い込まれ、自然冷却部で冷却されてから、吹出し口を介して室内へ吹き出される。そして、自然冷却された空気の温度は、温度センサによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、室内側冷却部が自然冷却された空気をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。また、植物生育室内を、外部の空気を利用することの無い閉鎖系とすることができるので、例えば、外部からの菌の該室内への進入を防止するなど、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0011】
すなわち、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備を提供することができる。
【0012】
本発明の自然冷却部の望ましい態様としては、この自然冷却部が、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものが挙げられる。
【0013】
前記自然冷却部を、建築物の地下湧水槽を利用して構成しているのであれば、自然冷却部を設けるために特別の費用をかける必要がなく、設備投資のコストダウンを図れる。また、冷却用の水を、水道水などを利用せず、湧水を利用できるので、運用コストの削減を図れる。
【0014】
有効な冷却効果を得ながら、運用コストの低減を図るには、前記自然冷却部が、前記温空気を、前記地下湧水槽にある水の水面に沿って案内する通風路を有していることが望ましい。
【0015】
前記通風路を、該通風路の入口から出口の間の少なくとも一部で、屈曲させているのであれば、温空気と水との接触時間を増加させて、温空気を有効に冷却することができる。
【0016】
前記温空気吸込み口と、前記温度センサとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配しているのであれば、かかる別々の空間に、前記温空気吸込み口と前記温度センサとをそれぞれ配することによって、温度センサでは、温空気が検知されることを防止しながら、自然冷却された空気の温度を精度良く検知することができる。したがって、室内側冷却部が、温空気の温度による影響を受けることなく、自然冷却された空気に対してのみ、その温度を下げるように動作するので、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に特に資する。
【0017】
1又は複数の支柱と、この支柱に支持させた1又は複数の植物生育用の棚とを具備する棚ユニットを具備し、棚ユニットごとに前記照明および前記温空気吸込み口を設けているのであれば、かかる照明で温められた温空気を、温空気吸込み口で効率的に吸い込むことができる。
【0018】
前記照明が植物に対して照射する光を遮ることなく該照明を内部空間内に配して成る照明収容部と、この照明収容部と前記温空気吸込み口との間に設けられ前記照明で温められた前記内部空間内の空気を前記温空気吸込み口へと導く温空気導出部とを具備しているのであれば、温空気導出部によって、照明によって温められた空気を、室内に行かせることなく、室外の自然冷却部へと効果的に導くことができるので、室内側冷却部が、その温められた空気によって無用に動作することを防止できるなど有効な省エネに資する。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明に係る植物生育設備は、植物生育用の照明によって温められた温空気は、温空気吸込み口から室外へ吸い込まれ、自然冷却部で冷却されてから、吹出し口を介して室内へ吹き出される。そして、自然冷却された空気の温度は、温度センサによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、室内側冷却部が自然冷却された空気をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部の冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。また、植物生育室内を、外部の空気を利用することの無い閉鎖系とすることができるので、例えば、外部からの菌の該室内への進入を防止するなど、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0020】
すなわち、植物の好適な生育環境(特に光環境)を確保しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る植物生育設備Zは、例えば鉄筋コンクリート製の建築物(地上部は図示せず)の地下部を利用して構成したものである。
【0023】
植物生育設備Zの具体的な説明を行う前に、まず、地下部について説明しておく。
【0024】
地下部は、図1、図2に示すように、建物の地下1階部分に設けた植物生育用の植物生育室1と、この植物生育室1の床下に設けた地下湧水槽2と、を具備してなるものである。
【0025】
植物生育室1は、床面約10数m×10数m、天井高さ約3mの大きさを有する略方形箱型のものである。なお、この植物生育室1の形状や大きさなどは、本実施形態のものに限られず、実施態様に応じて適宜変更可能である。
【0026】
地下湧水槽2は、複数の立壁21により区切られた、複数の湧水ビットから成るものである。本実施形態では、図3などに示すように、9つの湧水ビット21Ba〜21Bi(以下、「湧水ビット21B」と総称する)を有するようにしている。
【0027】
各湧水ビット21Bは、それぞれ内部高さ約1.5mの略方形箱型状の内部空間を有するものである。そして、地下湧水槽2の周壁22などから該地下湧水槽2内にしみ出てくる湧水Mが、湧水ビット21Bに溜まるようにしている(図4参照、他の図では省略)。なお、ここで「湧水」とは、周壁22などからしみ出てくる水(地下水)に限らず、雨水などをも含む広義の概念である。また、この湧水ビット21に溜まる水は、前記湧水に限らず、例えば水道水を積極的に溜めるようにすることを妨げない。また、湧水ビット21Bの底面は、水が所定の方向へと流れる程度にそれぞれ傾斜させてある。しかして、この傾斜と後述する通水孔Xとを利用して、各湧水ビット21の水が、1つの湧水ビット21に流れ込ませて集められるようにしてある。加えて、その1つの湧水ビット21から、水を外部へ適宜排水することができるようにしてある。より具体的に本実施形態では、図4に示すように、9つの湧水ビット21Bのうち、湧水ビット21Beの底面の高さを、他の湧水ビット21の底面の高さよりも低くなるように設定してあり、この湧水ビット21Beに設けた排水口21Be1から適宜排水することができる。
【0028】
立壁21には、図6、図7などに示すように、通風用の通風孔W1〜W8(以下、通風孔Wと総称する)と、通水用の通水孔X1〜X8(以下、通水孔Xと総称する)とを設けている。具体的に、通風孔Wについては、図3に示すように、湧水ビット21Baと湧水ビット21Bbとの間に通風孔W1を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Beとの間に通風孔W2を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bdとの間に通風孔W3を設けている。また、湧水ビット21Bdと湧水ビット21Bgとの間に通風孔W4を設けている。また、湧水ビット21Bgと湧水ビット21Bhとの間に通風孔W5を設けている。また、湧水ビット21Bhと湧水ビット21Biとの間に通風孔W6を設けている。また、湧水ビット21Biと湧水ビット21Bfとの間に通風孔W7を設けている。また、湧水ビット21Bfと湧水ビット21Bcとの間に通風孔W8を設けている。そして、本実施形態では、この通風孔を人が通れる程度の大きさとしている。具体的には、内法55cmの四角孔としている。
【0029】
一方、通水孔Xについては、図6などに示すように、湧水ビット21Baと湧水ビット21Bbとの間に通水孔X1を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Beとの間に通水孔X2を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bdとの間に通水孔X3を設けている。また、湧水ビット21Bdと湧水ビット21Bgとの間に通水孔X4を設けている。また、湧水ビット21Bhと湧水ビット21Beとの間に通水孔X5を設けている。また、湧水ビット21Bfと湧水ビット21Biとの間に通水孔X6を設けている。また、湧水ビット21Beと湧水ビット21Bfとの間に通水孔X7を設けている。また、湧水ビット21Bbと湧水ビット21Bcとの間に通水孔X8を設けている。そして、本実施形態では、この通水孔Xを、通水できる程度の大きさとしている。具体的には、数cm程度の丸孔としている。また、この通水孔Xを、通風孔Wよりも低い位置に配している。
【0030】
次に、植物生育設備Zについて、具体的に説明する。
【0031】
植物生育設備Zは、図1、図2、図5に示すように、植物生育用の棚32などを備えた複数の棚ユニット3と、植物生育室1内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気A1を室外へ吸い込む温空気吸込み口4aと、前記温空気吸込み口4aで吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部5と、前記自然冷却部5で自然冷却された空気A2を植物生育室1内へ吹き出す吹出し口6aと、前記吹出し口6aの近傍に設けた温度センサ7aと、前記温度センサ7aの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部7bとを具備してなるに加え、図示しない温度制御のための温度制御装置、湿度制御のためのミスト噴射装置、CO2濃度制御のためのCO2供給装置、および、肥料を供給する肥料供給装置と、これら各装置を制御するための生育制御主装置とを具備してなるものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0032】
棚ユニット3は、図5などに示すように、植物生育室1の床面11と天井面12との間に立設した複数の支柱31と、この支柱31に支持させた植物生育用の棚32と、棚32で生育する植物を照明するための光照射装置33(本発明の「植物生育用の照明」に相当)とを具備するものである。
【0033】
棚32は、複数の栽培用パレット3Pを一列に並べた状態で載置し得るように、上面を開口させた略箱体状のものである。そして、一端部に液肥を取り入れるための液肥取入口(図示せず)を設け、他端部に内部を循環させた液肥を排出するための液肥排出口(図示せず)を設けている。また、本実施形態では、棚32を、例えば、当該植物生育室1内でレタスVを収穫するに必要な日数と対応させて、12枚の栽培用パレット3Pを一列に並べた状態で載置し得るように構成している。棚32に並べる栽培用パレット3Pの枚数は、栽培する野菜などに応じて、適宜変更することができる。また、各栽培用パレット3Pで、栽培する植物の個数を6個としているが、この個数も任意でよい。
【0034】
光照射装置33は、各棚32の下面にそれぞれ設けたものであって、白色の光を発光する発光ダイオードを光源として、照射周期2μsec〜1msec、デューティ比20〜70%(DT比)の範囲のパルス光を、植物に対して照射し得るように構成して成るものである。そして、本実施形態では、照射周期およびデューティ比を、図示しない生育制御用主装置で制御し得るように構成してある。これにより、それぞれの光照射装置33によって、1段下の棚32で生育中の植物を好適に照明することができる。
【0035】
温空気吸込み口4aは、植物生育室1外(例えば天井裏など)に配した温空気吸込みダクト4内部に、光照射装置33によって温められた温空気A1を吸い込むためのものである。この温空気吸込みダクト4には、温空気A1を吸い込むためのファン(図示せず)を設けてある。そして、この温空気吸込み口4aから導かれた温空気A1は、温空気吸込みダクト4内部を経て、地下湧水槽2へと導かれる。本実施形態では、この温空気吸込みダクト4の全域に亘って所定の風量を確保し得るように、該温空気吸込みダクト4を、長手方向に各部略等断面形状(例えば、矩形状や円形状など)としている。
【0036】
自然冷却部5は、前記地下湧水槽2を利用して構成したものである。本実施形態では、この自然冷却部5を、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものとしている。具体的には、図7に示すように、この自然冷却部5が、温空気吸込みダクト4から該地下湧水槽2の導入口2x(本発明の「通風路の入口」に相当)に取り入れた温空気A1を、湧水ビット21に溜まった水の水面に沿って案内し、該地下湧水槽2の導出口2y(本発明の「通風路の出口」に相当)から吹出しダクト6に対して導出する通風路Pを有するようにしている。なお、地下湧水槽2の導入口2xは、湧水ビット21Baの周壁に形成してある。また、地下湧水槽2の導出口2yは、湧水ビット21Bcの周壁に形成してある。
【0037】
加えて本実施形態では、この通風路Pが、湧水ビット21Ba→(通風孔W1)→湧水ビット21Bb→(通風孔W2)→湧水ビット21Be→(通風孔W3)→湧水ビット21Bd→(通風孔W4)→湧水ビット21Bg→(通風孔W5)→湧水ビット21Bh→(通風孔W6)→湧水ビット21Bi→(通風孔W7)→湧水ビット21Bf→(通風孔W8)→湧水ビット21Bcの経路を有するようにしている。したがって、該通風路Pを通過する温空気A1は、5箇所の湧水ビット(21Bb、21Be、21Bd、21Bg、21Bi)内で略直角に屈曲しながら、それぞれの湧水ビット21を通り抜けていくこととなる。
【0038】
吹出し口6aは、植物生育室1外(例えば壁裏など)に配した吹出しダクト6に設けてなるものであって、該吹出しダクト6を介して送られてくる、地下湧水槽2で冷やされた空気を、該吹出し口6aから植物生育室1内へと吹き出すようにしてある。本実施形態では、この吹出しダクト6には、地下湧水槽2で冷やされた空気を吹き出すためのファン(図示せず)を設けてある。また、この吹出しダクト6を、前記温空気吸込みダクト4と同様に、全域に亘って所定の風量を確保し得るように、長手方向に各部略等断面形状(例えば、矩形状や円形状など)としている。
【0039】
温度センサ7aと室内側冷却部7bとは、一般的な業務用のエアコン7に組み込まれてなるものであって、室内側冷却部7bは、温度センサ7aの出力値が設定値以上であれば、自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように、ルーバー状の冷風吹出し口7b1から冷風を吹き出す一方、設定値未満であれば、冷風を吹き出すのを停止するかあるいは前記自然冷却された空気A2の温度が上昇しない程度に冷気を吹き出すように動作する。
【0040】
温度制御装置は、詳細は図示していないが、一つの装置で加温又は冷却を行えるようにペルチェ素子を利用したものであって、棚32の下面に取り付けている。すなわち上段の棚32に設けたペルチェ素子を利用する。なお、加温又は冷却の一方のみを行えるように構成することを妨げない。そして、本実施形態では、ペルチェ素子の動作時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0041】
ミスト噴射装置は、詳細は図示していないが、水道パイプから取り入れた水を、水蒸気ミストにしてミスト噴射口から噴射することで、植物近傍の湿度保持および植物への補助的な水分補給を行えるようにしたものであって、ミスト噴射口を棚32の下面に設けている。すなわち上段の棚32に設けたミスト噴射口を利用する。そして、本実施形態では、水蒸気ミストの噴射時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0042】
CO2供給装置は、詳細は図示していないが、炭酸ガスボンベに接続した炭酸ガス供給口から二酸化炭素を噴射することで、植物の光合成を促進するようにしたものであって、炭酸ガス供給口を棚32の下面に設けている。すなわち上段の棚32に設けた炭酸ガス供給口を利用する。そして、本実施形態では、二酸化炭素の供給時間を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0043】
肥料供給装置は、詳細は図示していないが、例えば、窒素、リン酸、カリウム、石灰、硫黄、鉄、ホウ素、マンガン、亜鉛、モリブデン、銅、塩素、ケイ素、コバルト、バナジウム、アルミニウム、セレンなどの各栄養素を、水に適宜混合して得た液肥を、肥料供給口から棚32内に供給するようにしたものである。そして、本実施形態では、液肥の供給量および各栄養素の成分比を、生育制御用主装置で制御するように構成している。
【0044】
以上のように構成される植物生育設備Zについて、その使用方法を以下に述べる。
【0045】
光照射装置33から棚32の植物に対して光を照射すると、その周囲の空気が温められる。温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから温空気吸込みダクト4内部へと吸い込まれる。そして、この温空気吸込み口4aから導かれた温空気A1は、温空気吸込みダクト4内部を経て、地下湧水槽2に導かれる。
【0046】
地下湧水槽2に導かれた温空気A1は、通風路Pを通って、すなわち、湧水ビット21Ba→(通風孔W1)→湧水ビット21Bb→(通風孔W2)→湧水ビット21Be→(通風孔W3)→湧水ビット21Bd→(通風孔W4)→湧水ビット21Bg→(通風孔W5)→湧水ビット21Bh→(通風孔W6)→湧水ビット21Bi→(通風孔W7)→湧水ビット21Bf→(通風孔W8)→湧水ビット21Bcの順に通って、吹出しダクト6に導入され、その後、吹出し口6aから植物生育室1内に吹き出される。
【0047】
この際、該通風路Pは、湧水ビット21Bなどにある水Mの水面に沿って形成されているため、通風路Pを通過する温空気A1は、その水Mによって冷却される。
【0048】
しかして、植物生育用の照明によって温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから室外へ吸い込まれ、自然冷却部5で冷却されてから、吹出し口6aを介して室内へ吹き出されることとなる。
【0049】
本実施形態では、図8に示すように、自然冷却部5で最大5℃程度の冷却効果を得ることができた。
【0050】
そして、自然冷却された空気A2の温度は、温度センサ7aによって検知される。
【0051】
ここで、室内側冷却部7bは、温度センサ7aの出力値が設定値以上であれば、自然冷却された空気A2の温度をさらに低下させるように冷風を吹き出すように動作する一方、設定値未満であれば、冷気を吹き出すのを停止するかあるいは前記自然冷却された空気A2の温度が上昇しない程度に冷気を吹き出すように動作する。
【0052】
本実施形態では、図示はしていないが、自然冷却部5を用いることで、自然冷却部5を用いない場合と比べて、エアコン7について約8kWhの電力を削減することができた。
【0053】
このように本実施形態にかかる植物生育設備Zによれば、光照射装置33が照射する光によって温められた温空気A1は、温空気吸込み口4aから温空気吸込みダクト4へ吸い込まれ、自然冷却部5である地下湧水槽2で冷却されてから、吹出しダクト6の吹出し口6aを介して植物生育室1内へ吹き出される。
【0054】
そして、自然冷却された空気A2の温度は、エアコン7の温度センサ7aによって検知され、空気が設定温度にまで冷却されていない場合には、その自然冷却しきれなかった温度の分だけが下がるように、エアコン7の室内側冷却部7bが自然冷却された空気A2をさらに冷却するように動作する。したがって、自然冷却部5の冷却能力を最大限に発揮させることができる一方、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資する。
【0055】
また、植物生育室1は、地下湧水槽2とダクトを介して接続されているだけであり、温空気A1の冷却に、外部の空気を利用することの無い閉鎖系となっている。したがって、外部からの菌の該室内への進入を防止して、衛生面などにおいて植物の生育に好適な環境の実現に有効である。
【0056】
また、温空気A1を冷却する際に、湧水ビット21Bにある水を利用して自然冷却を行っているので、吹出し口6aから吹き出される自然冷却された空気A2が、適度な湿気を含むものとなり、植物生育室1内で生育する植物に適度な湿気を与えられ好適である。
【0057】
すなわち、植物の好適な光環境などを実現しながら、自然冷却を可及的に利用することで、空調装置による冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に資するといった、優れた植物生育設備Zを提供することができる。
【0058】
また、本実施形態では、自然冷却部5を、建築物の地下湧水槽2を利用して構成しているので、自然冷却部5を設けるために特別の費用をかける必要がなく、設備投資のコストダウンを図れる。また、冷却用の水を、水道水などを利用せず、湧水を利用できるので、運用コストの削減を図れる。
【0059】
また、前記自然冷却部5が、前記温空気A1を、前記地下湧水槽2にある水の水面に沿って案内する通風路Pを有しているので、有効な冷却効果を得ながら、運用コストの低減を図れる。
【0060】
また、前記通風路Pを、該通風路Pの導入口2xから導出口2yの間で、5箇所の湧水ビット(21Bb、21Be、21Bd、21Bg、21Bi)で屈曲させているので、温空気A1を該通風路Pの入口から出口に直線状に導く場合と比べて、温空気A1と水との接触時間を増加させて、温空気A1を有効に冷却することができる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
例えば、本実施形態では、植物生育設備Zを、地下部を利用して構成しているが、この地上部を利用して構成することを妨げない。また、地下部と地上部との両方を利用して構成するといった実施態様も考えられる。
【0063】
また、植物生育室1に設けた棚32や支柱31の構成も本実施形態に限られるものではない。
【0064】
また、図9に示すように、前記温空気吸込み口4aと、前記温度センサ7aとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配するといった実施態様も考えられる。
【0065】
ここで、かかる間仕切りを実現するには、図9に示すように、例えば、隣接する各棚ユニット3の間に、合成樹脂性の間仕切りカーテンCを、植物生育室1の天井から床近傍まで、垂れ下がらせるといった態様とすればよい。
【0066】
このような構成とすれば、間仕切りカーテンCで区切られた別々の空間に、前記温空気吸込み口4aと前記温度センサ7aとをそれぞれ配することによって、温度センサ7aでは、カーテンによって温空気A1が直接的に検知されることを防止しながら、自然冷却された空気A2の温度を精度良く検知することができる。したがって、室内側冷却部7bが、温空気A1の温度による影響を受けることなく、自然冷却された空気A2に対してのみ、その温度を下げるように動作するので、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、有効な省エネの実現に特に資する。
【0067】
具体的な間仕切りカーテンCによる省エネの効果を、図10、図11を用いて説明する。
【0068】
図10は、間仕切りカーテンCがないとき、図11は、間仕切りカーテンCを用いたときの、棚ユニット3の上段、中段、下段の3箇所の温度の測定結果をそれぞれ示すものであって、縦軸は温度、横軸は時刻である。ここで、各図において、上段、中段、下段の温度が、一様に上昇したり下降したりしているのは、光照射装置33の動作の有無などによる。
【0069】
図10、図11によれば、下段では、間仕切りカーテンCの有無による温度の差異は、ほとんど無いことがわかる。中段では、間仕切りカーテンCを用いることで、約5℃の温度低下(時刻21:00´01近傍)が見られる。上段では、間仕切りカーテンCを用いることで、約4℃の温度低下(時刻21:00´01近傍)が見られる。
【0070】
すなわち、間仕切りカーテンCを用いることで、間仕切りカーテンCで区切られた空間内の温度を下げることができ、室内側冷却部7bの冷却動作を最小限にして、省エネの実現を行うことができる。
【0071】
また、図12に示すように、光照射装置33を、例えば、透明で筒状の照明収容部3X内に配し、この光照射装置33で温められた照明収容部3X内の温空気A1を、筒状の温空気導出部3Yによって温空気吸込み口4aへと導くように構成するといった実施態様も考えられる。
【0072】
このような構成とすれば、温空気導出部3Yによって、光照射装置33によって温められた温空気A1を、室内に行かせることなく、室外の自然冷却部5へと効果的に導くことができるので、エアコン7が、温空気A1によって無用に動作することを防止できるなど有効な省エネに資する。
【0073】
また、光照射装置33、温度制御装置、ミスト噴射装置、CO2供給装置、および肥料供給装置を全て備えるように構成しているが、少なくとも、光照射装置33を備えていればよい。
【0074】
また、生育環境制御部が制御する装置は、上述した各装置に限られない。例えば、霧を発生させる霧発生装置や、風を起こす風発生装置、日照状態を照明の点滅により実現する照明制御装置などのように、自然現象として現れる現象を起こさせる装置であればよい。ただし、自然環境を実現するようなコントロールであるか否かを問わない。
【0075】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態における植物生育設備を適用した建築物の地下部の構成を模式的に示す正面図。
【図2】同側面図。
【図3】同平面図。
【図4】図3のD1−D2における地下湧水槽の構造断面図。
【図5】同実施形態における棚部分を拡大して示す図。
【図6】同実施形態における水の流れを示す図。
【図7】同実施形態における温空気の流れを示す図。
【図8】同実施形態における自然冷却部による冷却効果を示す図。
【図9】本発明の他の実施形態における植物生育設備を適用した建築物の地下部の構成を模式的に示す図。
【図10】同実施形態における間仕切りカーテンの効果を説明するための図(カーテンなし)。
【図11】同実施形態における間仕切りカーテンの効果を説明するための図(カーテンあり)。
【図12】本発明の他の実施形態における植物生育設備の要部拡大図。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・植物生育室
2・・・・地下湧水槽
2x・・・導入口(通風路の入口)
2y・・・導出口(通風路の出口)
4a・・・温空気吸込み口
5・・・・自然冷却部
6a・・・吹出し口
7a・・・温度センサ
7b・・・室内側冷却部
31・・・支柱
32・・・棚
33・・・植物生育用の照明(光照射装置)
3X・・・照明収容部
3Y・・・温空気導出部
A1・・・温空気
A2・・・自然冷却された空気
P・・・・通風路
Z・・・・植物生育設備
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生育室内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口と、
前記温空気吸込み口で吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部と、
前記自然冷却部で自然冷却された空気を前記室内へ吹き出す吹出し口と、
前記吹出し口の近傍に設けた温度センサと、
前記温度センサの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部とを具備してなることを特徴とする植物生育設備。
【請求項2】
前記自然冷却部が、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものであることを特徴とする請求項1記載の植物生育設備。
【請求項3】
前記自然冷却部を、建築物の地下湧水槽を利用して構成していることを特徴とする請求項2記載の植物生育設備。
【請求項4】
前記自然冷却部が、前記温空気を、前記地下湧水槽にある水の水面に沿って案内する通風路を有していることを特徴とする請求項2または3記載の植物生育設備。
【請求項5】
前記通風路を、該通風路の入口から出口の間の少なくとも一部で、屈曲させていることを特徴とする請求項4記載の植物生育設備。
【請求項6】
前記温空気吸込み口と、前記温度センサとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配していることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の植物生育設備。
【請求項7】
1又は複数の支柱と、この支柱に支持させた1又は複数の植物生育用の棚とを具備する棚ユニットを具備し、棚ユニットごとに前記照明および前記温空気吸込み口を設けていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の植物生育設備。
【請求項8】
前記照明が植物に対して照射する光を遮ることなく該照明を内部空間内に配して成る照明収容部と、この照明収容部と前記温空気吸込み口との間に設けられ前記照明で温められた前記内部空間内の空気を前記温空気吸込み口へと導く温空気導出部とを具備していることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の植物生育設備。
【請求項1】
植物生育室内に設けた植物生育用の照明によって温められた温空気を室外へ吸い込む温空気吸込み口と、
前記温空気吸込み口で吸い込まれた前記温空気を自然冷却する自然冷却部と、
前記自然冷却部で自然冷却された空気を前記室内へ吹き出す吹出し口と、
前記吹出し口の近傍に設けた温度センサと、
前記温度センサの出力値に基づいて、前記自然冷却された空気の温度をさらに低下させるように動作する室内側冷却部とを具備してなることを特徴とする植物生育設備。
【請求項2】
前記自然冷却部が、湧水などの自然水による冷却作用を利用した水冷式のものであることを特徴とする請求項1記載の植物生育設備。
【請求項3】
前記自然冷却部を、建築物の地下湧水槽を利用して構成していることを特徴とする請求項2記載の植物生育設備。
【請求項4】
前記自然冷却部が、前記温空気を、前記地下湧水槽にある水の水面に沿って案内する通風路を有していることを特徴とする請求項2または3記載の植物生育設備。
【請求項5】
前記通風路を、該通風路の入口から出口の間の少なくとも一部で、屈曲させていることを特徴とする請求項4記載の植物生育設備。
【請求項6】
前記温空気吸込み口と、前記温度センサとを、空気の出入りを完全に妨げない程度に間仕切りされた別々の空間に、それぞれ配していることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の植物生育設備。
【請求項7】
1又は複数の支柱と、この支柱に支持させた1又は複数の植物生育用の棚とを具備する棚ユニットを具備し、棚ユニットごとに前記照明および前記温空気吸込み口を設けていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の植物生育設備。
【請求項8】
前記照明が植物に対して照射する光を遮ることなく該照明を内部空間内に配して成る照明収容部と、この照明収容部と前記温空気吸込み口との間に設けられ前記照明で温められた前記内部空間内の空気を前記温空気吸込み口へと導く温空気導出部とを具備していることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の植物生育設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−39002(P2009−39002A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205418(P2007−205418)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(505302502)株式会社フェアリーエンジェル (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(505302502)株式会社フェアリーエンジェル (11)
【Fターム(参考)】
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