説明

植物由来ポリエステルの製造方法とその製法により得られるポリエステル

【課題】
現在CO2削減が地球規模の課題となっており、各種の産業分野では、石油原料から、CO2発生抑制効果を有する植物資源への原料転換が極めて重要な課題となっている状況のもと、ポリエステルのバイオマス炭素含有率が4.5%〜100%で、炭酸ガス抑制効果を有するポリエステルを製造する方法とそのポリエステルを提供すること。
【解決手段】
大気中のCO2を吸収し、再生可能な資源である、もみ殻、わら、トウモロコシ穂軸・茎、綿実殻、竹、廃木材など農林業廃棄物等の安価な植物資源から誘導されるフルフラールを原料として化学合成により得られる植物由来のコハク酸、該コハク酸の酸誘導体、1,4−ブタンジオール等のモノマーと第三のモノマー成分を利用して重縮合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス削減効果を有する植物由来ポリエステルの製造方法とそのポリエステルに関するものである。詳しくは、(i)植物由来のコハク酸及び/又は該コハク酸誘導体及び(ii)1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分を利用して重縮合を行い、ポリエステル構造単位中の全炭素に対する植物由来炭素の割合を示す尺度としてのバイオマス炭素含有率(Biobased content)(炭素モル%)(測定法、計算法は後述)が4.5%以上、100%以下(以後、ポリエステルのバイオマス炭素含有率が4.5%〜100%という)含有するポリエステルを製造する方法に関するものである。より詳しくは、非可食性農林業廃棄物等の安価な植物資源から誘導されるフルフラールを原料として化学合成により得られる(i)植物由来のコハク酸と該コハク酸誘導体及び(ii)1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分を利用して重縮合を行い、バイオマス炭素含有率4.5%〜100%のポリエステルを製造する方法とそのポリエステルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コハク酸系ポリエステルは、石油を原料とし我国の企業が世界に先駆けて商業生産した生分解性を有する環境低負荷型プラスチックである。しかし、近年CO2削減が地球規模で重要な課題になっており、各種の産業分野では、石油原料から、CO2発生抑制削減効果を有し再生可能な原料でもある植物資源への原料転換が極めて重要な課題となっている。プラスチック工業分野でも植物資源から効率よくポリ乳酸やコハク酸系ポリエステルを製造する技術開発が注目されている。これまで、ポリ乳酸はデンプンを原料として商業生産されている。コハク酸系プラスチックについても、発酵合成により得られるコハク酸モノマーを利用して植物由来ポリエステル系プラスチックを製造する技術開発が進められている。
【0003】
しかしながら発酵合成は、一般に化学合成法と比較して反応容器単位容積当たりの収率(STY)が低い傾向にあり、またデンプン等の可食性原料が用いられているなどの問題がある。さらにコハク酸発酵合成では、100%植物由来のコハク酸を得るために、他の原料として植物由来のCOを工業規模で確保する必要がある。またコハク酸発酵合成ではコハク酸がコハク酸の塩(例えばコハク酸アンモニウム)として発酵合成されるため、脱塩工程が必要であり、このためポリエステル中に窒素成分が混入する等の問題もある。従って、非可食性の農業廃棄物等安価な植物資源を利用して植物由来ポリエステル系プラスチックを化学合成により効率よく製造する技術開発が必要となっている。
さらに、一般に脂肪族ポリエステルは、熱安定性が低いため、Ti系触媒を用いる従来の重縮合技術では、反応時に最高分子量に達した後、急速に分子量の低下が起こることも知られている。また従来の重縮合技術で到達する最高の数平均分子量は15,000〜17,000くらいであると言われている(非特許文献1)。一方、脂肪族ポリエステルの分子量は用途により異なるが、フィルム、ブロー成形、射出成型等の用途では、30,000〜50,000の数平均分子量が必要である(非特許文献1)。そこで、脂肪族ポリエステルの数平均分子量を高める技術の開発が求められている。
また、ポリエステルの重縮合反応においては、無触媒では重合反応が進みにくいため、触媒を用いることが広く行われている(例えば、特許文献3)。一方、医療、畜産、食品包装材料等の分野でも多くのポリエステル系プラスチック製品が使用されている。この場合、プラスチック製品は、生体と直接接触することや、食品、飲料用品等に接触することから、生体に影響を与える有害作用物質は、プラスチック製品から除去することが不可欠である。このため、無触媒重合など触媒を含まないポリエステル系プラスチックの開発は、医療、畜産、食品包装材料等の分野では重要な課題である。
【0004】
【特許文献1】特開2005-139287号公報
【特許文献2】特願2004-328439号公報
【特許文献3】特願2009-67897号公報
【非特許文献1】滝山栄一郎、藤巻 隆;生分解性プラスチックの実際技術、シーエムシー、P82(2001).
【非特許文献2】RADIOISOTOPES, 58(11), 767-779(2009).
【非特許文献3】ASTM D6866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、CO2削減が地球規模の課題となっており、各種の産業分野では、石油原料から、CO2削減効果を有する植物資源への原料転換が極めて重要な課題となっている。本発明は、大気中のCO2を吸収し成長した再生可能な植物系資源を利用して製造された植物由来のコハク酸又はコハク酸誘導体及び1,4−ブタンジオールの2種のモノマー成分、並びに第三のモノマー成分を利用して重縮合を行い、ポリエステルのバイオマス炭素含有率が4.5%〜100%で、炭酸ガス削減効果を有し、分子量が高い等の物性の改善されたポリエステルを製造する方法とそのポリエステルを提供することを課題とする。また、上記ポリエステルを触媒の非存在下で製造できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分から選ばれる2成分又は3成分以上を、触媒の非存在下又は存在下に重縮合することによりポリエステル構造単位中に、バイオマス炭素含有率が4.5%〜100%の植物由来炭素を含有し、炭酸ガス削減効果を有し、分子量が高い等の物性の改善されたポリエステルの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記の重縮合反応により製造される、炭酸ガス削減効果を有し、分子量が高い等の物性の改善されたポリエステルが提供される。なお、前記炭酸ガス削減効果を有するポリエステルとは、ポリエステル製造に際して大気中の炭酸ガスを利用して育った植物由来の原料を使用するので、当該ポリエステルが生分解又は焼却して炭酸ガスを発生させても大気中の炭酸ガス濃度は抑制されていると考えられるポリエステルを意味する。
また、本発明の植物由来ポリエステルは、分子鎖内の炭素に、後述のように放射性炭素14を含む。従来、放射性炭素14は、14COを用いたトレーサー実験によるウッド-ウエルクマン反応(ピルビン酸と二酸化炭素からオキサル酢酸が生成する反応)の反応機構解明に利用されている例もあり、放射性炭素14を含む本発明のポリエステルは、放射性炭素14を含まない石油由来ポリエステルとは異なり、生分解性プラスチックの微生物分解反応経路解明等の標識化合物としての利用が期待される。
【0007】
即ち、本発明は以下の発明からなる。
(1)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールを、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(2)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールを、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(3)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分を、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。上記第三のモノマー成分は、その由来に制限されないのであるが、例えば植物由来又は石油由来の成分が挙げられる。
(4)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。上記第三のモノマー成分は、その由来に制限されないのであるが、例えば植物由来又は石油由来の成分が挙げられる。
(5)第三のモノマー成分が、植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸そのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトン、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのなかから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする上記(3)又は(4)記載のポリエステルの製造方法。
(6)(A−1)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、又は(A−2)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分に、(B)(i)石油由来のコハク酸及び/又はコハク酸誘導体、又は(ii)石油由来の1,4−ブタンジオールのいずれか、あるいは両方をさらに共存させ、触媒の非存在下に重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステルの製造方法。
(7)(A−1)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、又は(A−2)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分に、(B)(i)石油由来のコハク酸及び/又はコハク酸誘導体、又は(ii)石油由来の1,4−ブタンジオールのいずれか、あるいは両方をさらに共存させ、触媒の存在下に重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステルの製造方法。
(8)(i)植物由来コハク酸及び又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種を、触媒の非存在下、コハク酸ユニットと、テレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットの合計に対するテレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
(9)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種を、触媒の存在下、コハク酸ユニットと、テレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットの合計に対するテレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
(10)モノマーとして(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオール、並びに(iii)第三のモノマー成分として植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸とそのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトンを、触媒の非存在下、植物由来コハク酸ユニットとオキシ酸ユニットの合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
(11)植物由来コハク酸ユニットとグリコール酸ユニット又は乳酸ユニットのオキシ酸の合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0.7以上、1未満の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とする上記(10)記載のポリエステルの製造方法。
(12)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸とそのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトンを、触媒の存在下、植物由来コハク酸ユニットとオキシ酸ユニットの合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
(13)植物由来コハク酸ユニットとグリコール酸ユニット又は乳酸ユニットのオキシ酸の合計に対するグリコール酸又は乳酸ユニットのオキシ酸ユニットのモル比が0.7以上、1未満の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とする上記(12)記載のポリエステルの製造方法。
(14)モノマーとして(i)植物由来1,4−ブタンジオールと(ii)石油由来テレフタル酸もしくはテレフタル酸誘導体を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が30%以上、35%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(15)植物由来及び/又は石油由来1,4−ブタンジオールと(ii)石油由来テレフタル酸及び/又はテレフタル酸誘導体及び第三のモノマー成分としての乳酸、ラクチッド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのなかから選ばれた1種又は2種以上を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、35%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
(16)コハク酸誘導体が無水コハク酸、コハク酸ジエステル、コハク酸モノエステルの中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2、4、7、9、12、13のいずれか記載のポリエステルの製造方法。
(17)コハク酸誘導体が無水コハク酸、コハク酸モノエステルの中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1、3、6、8、10,11のいずれか記載のポリエステルの製造方法。
(18)上記(1)、(10)、(11)のいずれか記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%以下のポリエステル。
(19)上記(2)、(12)、(13)のいずれか記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%のポリエステル。
(20)上記(3)又は(8)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステル。
(21)上記(4)又は(9)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステル。
(22)上記(6)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステル。
(23)上記(7)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステル。
(24)上記(14)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が30%以上、35%以下のポリエステル。
(25)上記(15)記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、35%以下のポリエステル。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭酸ガス削減効果を有するポリエステルを製造するための主たる原料は、(i)植物由来コハク酸又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールの2種のモノマー成分である。さらに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分が共存してもよい。とくに、農林業廃棄物等から誘導されるフルフラールを原料として化学合成により得られる(i)植物由来コハク酸又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールの2種のモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分であることが好ましい。前記第三のモノマー成分としては、植物由来の第三のモノマー成分が好ましいが、石油由来のモノマー成分等植物由来以外のその他の第三のモノマー成分を使用してもよい。また、第三のモノマー成分を一つ使用してもよいが、2成分以上を使用してもよい。
前記農林業廃棄物等は、農業廃棄物及び林業廃棄物等の安価な植物系資源の総称であり、例えば、トウモロコシ穂軸や茎、サトウキビ絞りかす、綿実殻、廃木材等を例示できるが、それらに制限されない。
本発明では、(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体(以下、コハク酸及び/又はコハク酸誘導体ということがある)及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオール(以下、1,4−ブタンジオールということがある)の2種のモノマーを大気中のCO2を吸収し成長した再生可能な植物系資源を利用して製造し、それらモノマーを出発原料として、本発明で規定するポリエステルを製造することができる。とくに、前記(i)及び(ii)の2種のモノマーを大気中のCO2を吸収し成長した再生可能な植物系資源を利用して化学合成法により製造し、それらモノマーを出発原料として、本発明で規定するポリエステルを製造することができるが、さらに前記植物系資源を利用して製造したフルフラールから化学合成法により製造したモノマーを用いることもできる。
また、前記2種のモノマーと、少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分とを出発原料として、本発明で規定するポリエステルを製造することができる。
ここで、コハク酸誘導体は無水コハク酸やROCOCH2CH2COOR’やROCOCH2CH2COOH等のコハク酸エステルを例示でき、植物由来の化合物が好ましいが、石油由来の化合物でも使用できる。コハク酸エステルの具体例としては、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸モノメチル、コハク酸モノエチル等のエステルが挙げられる。なお、前記、コハク酸エステルのメチル基、エチル基等は植物由来であることが好ましいが、石油由来であってもよい。
前記少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分において、重縮合可能な官能基とは例えば水酸基やカルボキシル基等の前記2種のモノマーと重縮合可能な官能基を例示できるが、それらに限定されない。好ましい第三のモノマー成分としては、植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸そのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はその環状無水物、石油由来や植物由来のテレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのなかから選ばれた1種又は2種以上を例示できる。ここで、テレフタル酸誘導体としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジ1,4−ブタンジオール等の化合物を例示できる。前記第三のモノマー成分の調製法は特に制限されないが、植物由来又は石油由来の化合物からの調製法が好ましく、特に植物由来の化合物からの調製法が好ましい。前記ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートも特に制限されないのであって、分子量や調製法は何ら制限されない。
前記農林業廃棄物等からフルフラールを誘導する方法、及び、当該フルフラールから上記(i)植物由来コハク酸又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールを製造する方法は特に制限されないのであって、最適な方法を適宜選択使用すればよい。
【0009】
本発明で得られた植物由来ポリエステルは、現代大気に由来する放射性炭素14を含んでいるため、米国試験材料規格ASTM D6866(非特許文献2)等の方法等により、加速器質量分析をもちいれば、従前の石油由来ポリエステルと明確に判別することができる。また石油由来/植物由来ポリエステル共重合体の使用割合もバイオマス炭素含有率から判別できる。以下に植物由来炭素含有率の尺度であるバイオマス炭素含有率の測定法とバイオマス炭素含有率計算方法を記載する。
(バイオマス炭素含有率測定法)
バイオマス由来プラスチックは、分子式が同じであれば、原料がバイオマスという以外に物理化学的性質は、石油由来のプラスチックと全く差がない。また、消費者にとっては、見たり、さわっただけでは全く区別が出来ない。前述したように、プラスチック中、植物由来のプラスチックだけが排出二酸化炭素量の削減に貢献する。そのため、日本バイオプラスチック協会は“バイオマスプラ”マーク認証制度を運営している。これは、プラスチック製品の25重量%以上がバイオマスプラスチックであれば、“バイオマスプラ”マークを表示することが許諾されるシステムである。これらのシステムの信頼性の確保、証拠のためにバイオマス炭素含有率の測定法の規格化が一部行われている。バイオマス由来の炭素と石油由来の炭素は、極微量の放射性炭素14が含まれているか、含まれていないかの違いがある。炭素年代測定にもちいられる方法を応用したもので、バイオマス由来炭素は現代炭素であり、大気圏の窒素が宇宙線の照射により放射化したごく微量の放射性炭素14を含んでいる。一方、石油由来炭素は非常に昔に作られた炭素化合物であるために、半減期が5730年の放射性炭素14は全て放射性崩壊してしまい、全く含まれていない。バイオマス炭素に含まれている放射性炭素の割合は、一般的な炭素12の1×10−12である。このため、この極微量の放射性炭素14を測定するためには、サンプルの炭素濃度を化学反応等により濃縮したサンプルを液体シンチレーションカウンターで計る方法や、サンプルから転換したグラファイトを加速器質量分析により、測定する方法などがある。これらの方法は、プラスチック材料に最適化はされていないが、米国試験材料規格(ASTM) D6866に測定法が規格化されている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0010】
(バイオマス炭素含有率計算方法)
ASTMでは、バイオマス炭素含有率を、サンプルの炭素の同位体率をシンチレーションカウンターや加速器質量分析で求めた年代測定で常用されている「現代炭素率」に0.93を乗じることにより、バイオベースコンテント(Biobased content)と定義している。この値は、プラスチックサンプルに含まれる全部の炭素のモル数あたりの植物由来の炭素のモル数の割合となる。本特許ではバイオベースコンテントという単語はわかりにくい単語であるので、ASTM D6866に基づいて求めたバイオベースコンテントを「バイオマス炭素含有率」と呼ぶ。プラスチック業界は、プラスチック製品の組成を表すとき、慣例的にその割合を“重量%”や“部”で表すことが多い。日本バイオプラスチック協会も、バイオマスプラスチックの認証制度である“バイオマスプラ”マーク認証制度において、製品重量あたりのバイオマスプラスチックの割合が25重量%以上である製品へのマーク使用を許諾している。2種類以上のモノマーを含む共重合体で、一部のモノマーのみが植物原料由来である場合のバイオマス含有率(重量ベース)の計算方法は未だ規定されていない。モノマー組成をモル%で表すのか、重量%で表すかによって、計算値が異なってしまう。例えば、本特許の実施例で示す。ポリブチレンテレフタレートのブチレン部分のみが植物原料由来であるとすると、モル%ベースでは、炭素数のみで計算するため、全体の12個の炭素のうち、4個の炭素が植物由来となるので、バイオマス炭素含有率は33.33%となる。一方、重量%の場合、ブチレンユニット(-O-(CH2)4-O-)の分子量は、88で、テレフタル酸ユニット(-CO-C6H4-CO-)の分子量は132となり、バイオマス原料率(重量%)としては、40重量%となる。このように、正確には、バイオマス炭素含有率(炭素モル%)をバイオマス原料率(重量%)に変換するには、プラスチック製品に含まれる各成分の分子量と炭素含有率の数値をもちいた変換が必要である。本特許では、主にバイオマス炭素含有率(炭素モル%)をもちいて、合成したモノマー及びポリマーのバイオマスの含有率を記述する。
【0011】
石油由来ポリエステルの原料として人工的に製造した放射性炭素14標識化合物を混入することによっても、植物由来ポリエステルと同等のバイオマス炭素含有率を有するポリエステルが得られるが、人工的に放射性炭素14を製造する際の安全性やコストの面で植物由来の原料から植物由来ポリエステルを製造する方が優位である。また、人工的に放射性炭素14を混入したことが明らかになった際の社会的な反響を考慮すると、植物由来のポリエステル以外に放射性炭素14を含むポリエステルを製造することの優位性は存在しない。
【0012】
日本有機資源協会は、バイオマス製品の利活用を進めるために、“バイオマス”マーク認証制度を運営している。この制度は、消費者が購入する製品中に、その原料が植物原料から生産されることを簡単に識別することを目的とする制度で、使用割合の下限値は設定されていないが、植物の原料が使用されている割合を整数で、マーク下に印刷することが可能である制度である。つまり、植物原料を製品重量の数%以上含むものは、“バイオマス”マークを表示することができ、石油原料からのみ生産されている製品と差別化することができる。
【0013】
植物由来のプラスチックの認証制度である“バイオマスプラ”マークを取得するには、プラスチック製品中の25重量%以上の植物由来プラスチック量が必要である。
【0014】
本発明で提供されるポリエステルは、バイオマス炭素含有量が4.5%以上、100%以下まで任意の値で調整可能であり、25%以上のバイオマス炭素含有量になるように調整すれば“バイオマスプラ”マークの取得が可能である。
【0015】
現在、植物由来のエチレングリコールは製造可能であり、当該植物由来のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレート(通称バイオPET)には、エチレングリコールユニットの分子量が60で、テレフタル酸ユニットの分子量が132なので、31.25%の植物由来プラスチックを含んでいるために、“バイオマスプラ”マーク認証基準を上回っている。
【0016】
植物由来の1,4−ブタンジオールと石油由来のテレフタル酸から得られるポリブチレンテレフタレートには植物由来炭素4個で分子量88をもつブタンジオールユニットと石油由来炭素8個で分子量132をもつテレフタル酸ユニットからなり、40%の植物由来プラスチックが含まれることになり、前述のバイオPET以上のバイオマス炭素含有率を持ち単体で“バイオマスプラ”マーク認証制度の基準を上回ることが可能である。
【0017】
第三のモノマー成分は生成するポリエステルの生分解性や物性の制御を目的として用いることができる。第三のモノマー成分の利用により各種用途に適合した物性の制御が可能となる。
【0018】
本発明で用いる植物由来コハク酸と植物由来1,4−ブタンジオールの重縮合反応において、1,4−ブタンジオールの使用割合は、コハク酸1モル当たり1〜2モルの割合である。植物由来コハク酸の代わりにコハク酸無水物、コハク酸ジエステル、コハク酸モノエステル等のコハク酸誘導体を使用することができる。植物由来のコハク酸ジエステルやコハク酸モノエステル等のエステルのアルコール部位としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の二価アルコールが挙げられる。これらの一価アルコール及び二価アルコールは、石油由来のアルコール又は植物由来のアルコールのいずれも使用できる。
【0019】
また、第三のモノマー成分の使用割合は、重縮合反応が可能である限り、又はポリエステルの機能、性能向上等の所期の効果を奏する限りとくに制限されないのであって、用いる出発材料の種類と量割合により最適な使用割合を選択すればよい。なお、第三のモノマー成分の使用割合を強いて記載すれば、コハク酸と第三のモノマー成分の合計モルに対して0.01〜0.3モルの割合を示すことができる。但し、第三のモノマー成分が乳酸及び/又はラクチッドの場合は、コハク酸ユニットと乳酸ユニットの合計に対する乳酸ユニットのモル比が0.7以上で1未満の仕込み比の条件で重縮合することもできる。モノマーや第三のモノマー成分は、本発明の所期の効果を満たす範囲内で使用できる。なお、ラクチッドは乳酸2分子から生成されるので、ラクチッドの量は乳酸ユニットとして換算できる。
【0020】
本発明で用いるテレフタル酸と植物由来1,4−ブタンジオールの重縮合反応において、1,4−ブタンジオールの使用割合は、テレフタル酸1モル当たり1〜2モルの割合である。テレフタル酸の代わりにテレフタル酸誘導体を使用することができる。また、上記重縮合反応において、コハク酸又はコハク酸誘導体モノマー又はテレフタル酸以外の第三のモノマー成分の使用割合は、本発明のポリエステルの機能、性能向上等の所期の効果を満たす範囲内で使用できるが、例えば、テレフタル酸と該反応成分の合計モルに対し0.01〜0.3モルの割合を示すことができる。
【0021】
本発明では、前記反応原料を重合させる場合は、触媒の非存在下又は公知の触媒、助触媒、着色防止剤等の存在下に行うことができる。なお、触媒の非存在下で前記コハク酸-1,4−ブタンジオール系から高分子量ポリエステルが得られる理由は解明されてはいないが、当該重合系に於けるコハク酸由来のフリーの酸が重合反応に関与し、高分子量重合体が生成されると考えられる。
医療、畜産、食品包装材料等の分野では、多くのポリエステル系プラスチック製品が使用されている。この場合、プラスチック製品は、生体と直接接触することや、食品、飲料用品等に接触することから、生体に影響を与える有害作用物質は、プラスチック製品から除去することが不可欠である。このため、無触媒重合など触媒を含まないポリエステル系プラスチックの開発は、医療、畜産、食品包装材料等の分野では重要な課題である。医療、畜産、食品包装材料等の分野では生体に影響を与える触媒、助触媒、着色防止剤等を含まないプラスチックは有利に使用される。
触媒の存在下にポリエステルを製造する場合は、Ti系、Zn系、Ge系、Ca−Sb系などの触媒が使用できる。
【0022】
本発明でのコハク酸系重合体を製造する方法を具体的に説明する。
本発明によりコハク酸系重合体を製造するための1つの方法においては、反応原料を無触媒または触媒の存在下にかき混ぜながら重合反応を実施する。反応は、通常回転バー、回転羽根、高粘度用ねじり格子翼等のかき混ぜ機を用いかき混ぜながら実施する。反応温度は、200℃〜270℃、好ましくは230〜260℃である。その反応圧は、減圧下で行われるが、好ましくは1.33kPa(10mmHg)以下である。より好ましくは0.27kPa(2mmHg)以下である。触媒の非存在下に重合を行う場合は、0.13kPa(1mmHg)以下の高真空で行うほか、副生物の効率的除去が不可欠である。重合反応は、回分式や連続式又はそれらの組み合わせで行ってもよい。
重合反応は数時間〜30時間程度で行われる。
【0023】
重合反応させた後、得られた重合体をそのまま取り出しても良い。また必要に応じクロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の良溶媒とメタノール、エタノール等の貧溶媒を用いて精製することもできる。
【0024】
本発明のポリエステルは、下記一般式(1)に示すように植物由来コハク酸ユニット-CO(CH2)2CO-(A)と植物由来1,4−ブタンジオールユニット-O(CH2)4O-(B)から構成される脂肪族系ポリエステルである。ここでnは3〜900程度である。また本発明の他のポリエステルとして、下記一般式(2)に示すようにテレフタル酸ユニット-CO-C6H4-CO-(C)とジオールユニット-ORO-(D)から構成される芳香族系ポリエステルが挙げられる。ここでテレフタル酸ユニット(C)は石油由来テレフタル酸であり、ジオールユニット(D)は植物由来又は石油由来のエチレングルコール、1、3―プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールであり、nは3〜900程度である。
本発明の他のポリエステルとして、式(1)の脂肪族系ポリエステルに第三のモノマー成分としてテレフタル酸ユニット(C)、ジオールユニット(D)、石油由来コハク酸ユニット-CO(CH2) 2CO-(E)、植物由来乳酸ユニット-COCH(CH3)O-(F)、石油由来又は植物由来グリコール酸ユニット-COCHO-(I)、石油由来カプロラクトンユニット-CO(CH2)5O- (J)を共重合させたポリエステルを例示することができる。なお、式(1)の植物由来コハク酸の代わりに、前記のコハク酸誘導体を使用することができる。第三のモノマー成分の使用割合は、コハク酸と第三のモノマー成分の合計モルに対して0.01〜0.3モルの割合である。但し、第三のモノマー成分が乳酸及び/又はラクチッドの場合は、コハク酸ユニットと乳酸ユニットの合計に対する乳酸ユニットのモル比が0.7以上で1未満の仕込み比の条件で重縮合して得たポリエステルである。
ここで、当該ポリエステルは実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-] (1)
(A) (B)
[-CO-C6H4-CO-ORO-] (2)
(C) (D)
[-CO(CH2)2CO-] (3)
(E)
[-COCH(CH3)O-] (4)
(F)
[-COCHO-] (5)
(I)
[-CO(CH2)O-] (6)
(J)
【0025】
本発明の他のポリエステルとして、前記式(2)の芳香族系ポリエステルに第三のモノマー成分として植物由来コハク酸ユニット(A)、石油由来コハク酸ユニット(F)、植物由来乳酸ユニット(E)、石油由来又は植物由来グリコール酸ユニット(I)、石油由来カプロラクトンユニット(J)を共重合させたポリエステルを例示することができる。なお、式(2)のテレフタル酸ユニット代わりに、前記のテレフタル酸誘導体を使用することができる。
第三のモノマー成分の使用割合は、テレフタル酸と第三のモノマー成分の合計モルに対して0.01〜0.3モルの割合である。但し、第三のモノマー成分が乳酸及び/又はラクチッドの場合は、テレフタル酸ユニットと乳酸ユニットの合計に対する乳酸ユニットのモル比が0.7以上で1未満の仕込み比の条件で重縮合して得たポリエステルである。
ここで、当該ポリエステルは実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。
なお、本発明の植物由来ポリエステルは、その機能、性能、炭酸ガス削減効果など使用目的に合わせて、ポリエステル製造時に植物由来モノマーと石油由来モノマー種類、使用割合、触媒の種類・有無、反応条件等が選択される。このため、ポリエステル構造単位中のバイオマス炭素含有率は4.5%以上、100%以下が選ばれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、数平均分子量が数百から15万程度の分子量を有し、且つ触媒を含まない脂肪族系ポリエステルが得られるため、高分子材料、高分子製造原料等として広い用途に有利に使用することができる。例えば、食品包装材料、農業用フィルム、医療・畜産・ペット用品等の材料、可塑剤等のブレンド剤、ポリマー原料などに使用することができる。特に、食品包装材料、飲料品パックのコーティング材料、医療・畜産・ペット用品のように生体に影響を与える製品の場合は、重合触媒の除去は不可欠であり、本発明の触媒を含まない植物由来ポリエステルは、そのポリエステル材料が生体に直接又は間接的に影響を与える用途に有利に利用できる。
また、本発明の植物由来ポリエステルは、ポリエステル製品の利用後の廃棄処理まで考慮すると、炭酸ガス削減効果を有する。
さらに、本発明の植物由来ポリエステルは放射性炭素14を含んでいる。従来、放射性炭素14は、14COを用いたトレーサー実験によるウッド-ウエルクマン反応(ピルビン酸と二酸化炭素からオキサル酢酸が生成する反応)の反応機構解明に利用されている例もあり、放射性炭素14を含む本発明のポリエステルは、放射性炭素14を含まない石油由来ポリエステルとは異なり、生分解性プラスチックの微生物分解反応経路解明等の標識化合物としての利用が期待される。
また枯渇性資源である石油価格の高騰が続く現在、植物資源からポリエステル系プラスチック製品を製造できることは、地球温暖化対策や循環型社会の構築に向けて寄与が大きい。
さらに、繊維業界や家電・自動車業界にとって、植物由来の材料を使用することは至上命題になっており、盛んに開発がされており、一部ではバイオマス由来材料として、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸などが使用されているが、既存のプラスチックとは性質が異なるために、広く使われるに至っていないが、本発明により、“バイオマスプラ”マークが取得可能なバイオマス由来のポリブチレンサクシネートを提供することで、繊維業界、家電・自動車業界にとって、新たな植物由来材料を手に入れるということに留まらず、即座に既存のプラスチックに置き換えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。植物由来ポリエステル及び植物由来ポリエステル共重合体の種々の物性値は下記の方法によって測定した。
(分子量及び分子量分布)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。クロロホルム可溶のポリエステルの場合は、GPC-0020
model II(東ソー社製)によって、溶離液としてクロロホルムを用い、校正曲線は標準ポリスチレンを用い測定した。クロロホルム不溶及びヘキサフルオロイソプロパノールに可溶なポリエステルの場合は、同様のGPC装置で、溶離液としてヘキサフルオロイソプロパノール(5mM トリフルオロ酢酸ナトリウム塩含有)校正曲線は標準ポリメタクリル酸メチルを用い測定した。
(熱的性質)
示差走査熱量分析装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ製DSC5800)により融解温度を求めた。
(バイオマス炭素含有率)
生成重合体のバイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は、加速器質量分析による放射性炭素14濃度の測定(非特許文献3)により求めた。
(構造解析)
プロトンNMR(日本分光製JNM-ECX400)によりポリエステルの合成の確認及び、モノマーユニットの組成解析を行った。
(参考例1)
【0028】
以下の実施例で使用した植物由来のコハク酸及び1,4-ブタンジオール及びそれらの出発合成原料であるフルフラール(和光純薬社製の試薬一級品を蒸留しもの)について、加速器重量分析による炭素14濃度を測定したところ、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は、それぞれコハク酸:99.43±0.34%、1,4−ブタンジオール:99.02±0.34%、フルフラール:101.42±0.35%の値が得られ、実施例で使用したコハク酸モノマー、1,4−ブタンジオール及びその合成出発原料フルフラールの炭素は100%植物由来であることが確認された。
【実施例1】
【0029】
攪拌機付き内容積10mlのフラスコに植物由来コハク酸30ミリモルと植物由来1,4−ブタンジオール33ミリモルを仕込み、窒素雰囲気下、無触媒条件下、室温(28℃)で反応を開始し、徐々に243℃まで昇温し、水を流出させた(1.5時間)。次いで、かき混ぜながら徐々に減圧にして、最終到達真空度53Pa(0.4 mmHg)
で6時間反応を続けた。得られた重合体の分子量を測定したところ、数平均分子量Mnは49,500であった。また重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mnは3.54であった。また重合体の融点は114.5℃であった。
得られた重合体のバイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)を測定したところ、101.28±0.37の値が得られ、重合体の炭素は100%植物由来であることが確認された。また、プロトンNMR分析によりこの重合体はコハク酸ユニット1モルに対し1,4−ブタンジオールを1モル有するポリブチレンサクシネートであることが確認された。
【実施例2】
【0030】
攪拌機付き内容積10mlのフラスコに植物由来コハク酸30ミリモルと植物由来1,4−ブタンジオール33ミリモル、触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.014ミリモルを仕込み、窒素雰囲気下、室温(30℃)で反応を開始し、徐々に243℃まで昇温し、水を流出させた(1.5時間)。次いで、かき混ぜながら徐々に減圧にして、最終到達真空度0.3
mmHg で2.1時間反応を続けた。得られた重合体の分子量を測定したところ、数平均分子量Mnは84,800であった。また重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mnは2.61であった。また重合体の融点は114.5℃であった。
得られた重合体のバイオマス炭素含有率(%)(Biobased
content)を測定したところ、100.03±0.37の値が得られ、重合体の炭素は100%植物由来であることが確認された。また、プロトンNMR分析により重合体はコハク酸ユニット1モルに対し1,4−ブタンジオールを1モル有するポリブチレンサクシネートであることが確認された。
【実施例3】
【0031】
攪拌機付き内容積10mlのフラスコに石油由来無水コハク酸30ミリモルと植物由来1,4−ブタンジオール33ミリモルを仕込み、窒素雰囲気下、室温(30℃)で反応を開始し、徐々に243℃まで昇温し、水を流出させた(1.5時間)。次いで、かき混ぜながら徐々に減圧にして、最終到達真空度0.1mmHg で10時間反応を続けた。得られた重合体の分子量を測定したところ、数平均分子量Mnは33,100であった。また重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mnは2.55であった。また重合体の融点は115.8℃であった。
得られた重合体のバイオマス炭素含有率(%)(Biobased
content)を測定したところ、49.96±0.23の値が得られ、重合体の炭素は50%植物由来であることが確認された。また、プロトンNMR分析により重合体はコハク酸ユニット1モルに対し1,4−ブタンジオールユニットを1モル有するポリブチレンサクシネートであることが確認された。
【実施例4】
【0032】
マグネチック撹拌子を有する内容積10mlのガラス製反応容器に植物由来と石油由来を任意の割合で配合したコハク酸ジメチル2.0ミリモルと、植物由来と石油由来を任意の割合で配合した1,4−ブタンジオール2.08ミリモルを加え、触媒として、チタンテトライソプロポキシド1マイクロモルを加え、窒素雰囲気化、215℃で1時間撹拌し、メタノールを流出させた。その後、1mmHg以下に減圧し、215℃で4時間撹拌した。得られた重合体のプロトンNMR分析から、コハク酸ユニット1モルに対し1,4−ブタンジオールユニットを1モル有するポリブチレンサクシネートであること、分子量測定から高分子化合物であることを確認した。また、加速器質量分析による炭素14濃度を測定し、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased
content)を測定した。そのバイオマス炭素含有率はモノマー配合の段階の含有率と一致した。
結果を以下の表1に示す。
表1

バイオマス炭素含有率(%) 数平 重量 バイオマス バイオマス
コハク酸ジメ 1,4-ブタン 均分 平均 炭素含有率 炭素含有率
チル(コハク ジオール 子量 分子 (理論値) (測定値)
酸部分) 量 (%) (%)
100 100 43000 88000 100 99.65±0.33
100 0 75000 164000 50 49.99±0.23
0 100 35000 92000 50 49.11±0.21
50 50 31000 81000 50 49.21±0.20
0 10 28000 88000 5 4.88±0.07
10 0 30000 89000 5 5.08±0.07
【実施例5】
【0033】
マグネチック撹拌子を有する内容積10mlのガラス製反応容器にテレフタル酸1.37ミリモルと植物由来1,4−ブタンジオール2.32ミリモルを加え、触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド1マイクロモルを加え、220℃で3時間撹拌した。その後、1mmHg以下に減圧し、250 ℃で3時間撹拌した。得られた重合体について、分子量分布測定をしたところ、その重量平均分子量は19,400であり、また、熱量分析から、融点が224℃であり、高分子化合物であることが確認された。また、加速器重量分析による炭素14濃度を測定したところ、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は33.7±0.18%の値が得られた。つまり、ポリブチレンテレフタレートの1,4−ブタンジオールユニット部分の炭素数4個がバイオマス炭素であり、石油由来のテレフタル酸を原料とするテレフタル酸ユニット部分の炭素8個が石油由来であり、バイオマス炭素含有率の理論値は、4/12で33.33%となる。このことから、実測値と理論値は一致しており、本重合体にはバイオマス植物由来の炭素を3分の1含んでいることが確認された。
【実施例6】
【0034】
マグネチック撹拌子を有する内容積10mlのガラス製反応容器にテレフタル酸ジメチル1.37ミリモルと植物由来1,4−ブタンジオール2.32ミリモルを加え、触媒として、チタンテトライソプロポキシド1マイクロモルを加え、220℃で3時間撹拌した。その後、1mmHg以下に減圧し、250℃で3時間撹拌した。得られた重合体について、分子量測定をしたところ、その重量平均分子量は23,400であり、また、熱分析から、融点が222℃であり、高分子化合物であることが確認された。また、加速器質量分析による炭素14濃度を測定したところ、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は33.7±0.18%の値が得られた。つまり、ポリブチレンテレフタレートの1,4−ブタンジオールユニット部分の炭素数4個が植物由来炭素であり、石油由来のテレフタル酸を原料とするテレフタル酸ユニット部分の炭素8個が石油由来であり、バイオマス炭素含有率の理論値は、4/12で33.33%となる。このことから、実測値と理論値は一致しており、本重合体には植物由来の炭素を3分の1含んでいることが確認された。
【0035】
本発明の好ましいポリエステルを次のように記載できる。すなわち、下記ユニットからなるポリエステルである。
-[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]- (1)
-[-COCH(CH3)O-]- (2)
-[-CO-C6H4-CO-ORO-]- (3)
-[-CO(CH2)2CO] -[-O(CH2)4O-]- (4)
式中、Rは-(CH2)2-又は-(CH2)4-基を示す。ユニット(1)の-CO(CH2)2CO-は植物由来コハク酸ユニット(A)、-O(CH2)4O-は植物由来1,4−ブタンジオールユニット(B)であり、ユニット(2)の-COCH(CH3)O-は植物由来乳酸ユニット(F)が好ましく、ユニット(3)の-CO-C6H4-CO-はテレフタル酸ユニット(C)であり、-ORO-はジオールユニット(D)であり、[-CO(CH2) 2CO-]の- CO(CH2) 2CO-は石油由来コハク酸ユニット(G)、ユニット(4)の-O(CH2)4O-は石油由来1,4−ブタンジオールユニット(H)である。また、nは3〜900、q、及びsは0又は整数、p+q+sは0〜200、n+p+q+sは5〜900と例示できる。
請求項18や19に属するポリエステルとしては例えば、上記ユニット(1)(以下、上記を省略することがある)からなるポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。
請求項18や19に属する他のポリエステルとしては例えば、ユニット(1)及びユニット(2)からなるポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。ここで、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルは触媒等の不純物が存在しないという特徴がある。 上記ポリエステルは下記一般式で表すことができる。
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]-[-COCH(CH3)O-]-
この式は、
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの及び[-COCH(CH3)O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したものがランダムに重合しており、[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニットがn個、[-COCH(CH3)O-]からなるユニットがp個で構成されることを意味する。nやpは上記分子量を満足するだけの数を有する。ただし、pは0でもよい。
請求項20や21に属するポリエステルとしては例えば、ユニット(1)及びユニット(2)及び/又はユニット(3)からなるポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。ここで、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルは触媒等の不純物が存在しないという特徴がある。
上記ポリエステルは下記一般式で表すことができる。
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]-[-COCH(CH3)O-]--[-CO-C6H4-CO-ORO-]-
この式は、
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの、[-COCH(CH3)O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの及び/又は[-CO-C6H4-CO-ORO-]ユニット単独あるいは複数個結合したものがランダムに重合しており、[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニットがn個、[-COCH(CH3)O-]からなるユニットがp個及び[-CO-C6H4-CO-ORO-]からなるユニットがp個から構成されることを意味する。nやpやqは上記分子量を満足するだけの数を有する。ただし、pやqは0でもよいが共に0ではない。
請求項22や23に属するポリエステルとしては例えば、ユニット(1)及びユニット(2)及び/又はユニット(3)さらにユニット(4)からなるポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。ここで、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルは触媒等の不純物が存在しないという特徴がある。
上記ポリエステルは下記一般式で表すことができる。
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]-[-COCH(CH3)O-]--[-CO-C6H4-CO-
ORO-]--[-CO(CH2)2CO]-[-O(CH2)4O-]
この式は、
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの、[-COCH(CH3)O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの及び/又は[-CO-C6H4-CO-ORO-]ユニット単独あるいは複数個結合したもの、さらに[-CO(CH2) 2CO]-[-O(CH2)4O-]ユニット単独あるいは複数個結合したものがランダムに重合しており、[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニットがn個、[-COCH(CH3)O-]からなるユニットがp個、[-CO-C6H4-CO-ORO-]からなるユニットがq個及び[-CO(CH2) 2CO]-[-O(CH2)4O-]がs個から構成されることを意味する。nやpやqやsは上記分子量を満足するだけの数を有する。ただし、pやqは0でもよいが共に0ではない。
請求項24に属するポリエステルとしては例えば、ユニット(3)からなり、-ORO-は植物由来の1,4−ブタンジオールに基くポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が30%以上、35%以下であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。 上記ポリエステルは下記一般式で表すことができる。
-[-CO-C6H4-CO-ORO-]-
この式は、
[-CO-C6H4-CO-ORO-]ユニットq個から構成されることを意味する。qは上記分子量を満足するだけの数を有する。
請求項25に属するポリエステルとしては例えば、ユニット(3)及びユニット(2)からなり、-O(CH2)4O-は植物由来及び/又は石油由来1,4−ブタンジオールに基き、-COCH(CH3)O-は植物由来の乳酸に基き、-ORO-は1,4−ブタンジオールやエチレングリコールに基くポリエステルであって、ポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、35%以下であり、実質的に線状構造を有し、数平均分子量が600から15万程度の分子量を有し、より好ましくは数平均分子量が2000から15万程度の分子量を有する。
上記ポリエステルは下記一般式で表すことができる。
-[-CO-C6H4-CO-O(CH2)4O-]--[-COCH(CH3)O-]--[-CO-C6H4-CO-ORO-]-
この式は、
[-CO(CH2)2CO-O(CH2)4O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの、[-COCH(CH3)O-]からなるユニット単独あるいは複数個結合したもの及び/又は[-CO-C6H4-CO-ORO-]ユニット単独あるいは複数個結合したものがランダムに重合しており、[-CO-C6H4-CO-O(CH2)4O-]からなるユニットがq個、[-COCH(CH3)O-]からなるユニットがp個、[-CO-C6H4-CO-ORO-]からなるユニットがt個から構成されることを意味する。pやqやtは上記分子量を満足するだけの数を有する。ただし、pやtは0でもよいが共に0ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールを、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールを、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項3】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分を、触媒の非存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項4】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項5】
第三のモノマー成分が、植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸そのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトン、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのなかから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3又は4記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
(A−1)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、又は(A−2)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分に、(B)(i)石油由来のコハク酸及び/又はコハク酸誘導体、又は(ii)石油由来の1,4−ブタンジオールのいずれか、あるいは両方をさらに共存させ、触媒の非存在下に重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステルの製造方法。
【請求項7】
(A−1)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、又は(A−2)(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)少なくとも重縮合可能な官能基を有する第三のモノマー成分に、(B)(i)石油由来のコハク酸及び/又はコハク酸誘導体、又は(ii)石油由来の1,4−ブタンジオールのいずれか、あるいは両方をさらに共存させ、触媒の存在下に重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステルの製造方法。
【請求項8】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種を、触媒の非存在下、コハク酸ユニットと、テレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットの合計に対するテレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
【請求項9】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として、テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種を、触媒の存在下、コハク酸ユニットと、テレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットの合計に対するテレフタル酸ユニット、テレフタル酸誘導体ユニット、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリブチレンテレフタレートユニットから選ばれる少なくとも1種のユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
【請求項10】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸とそのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトンを、触媒の非存在下、植物由来コハク酸ユニットとオキシ酸ユニットの合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
【請求項11】
植物由来コハク酸ユニットとグリコール酸ユニット又は乳酸ユニットのオキシ酸の合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0.7以上、1未満の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とする請求項10記載のポリエステルの製造方法。
【請求項12】
(i)植物由来コハク酸及び/又はコハク酸誘導体及び(ii)植物由来1,4−ブタンジオールからなるモノマー成分、並びに(iii)第三のモノマー成分として植物由来又は石油由来のグリコール酸とそのグリコリド、植物由来の乳酸とそのラクチッド、石油由来ε-カプロラクトン等のオキシ酸又はそのラクトンを、触媒の存在下、植物由来コハク酸ユニットとオキシ酸ユニットの合計に対するオキシ酸ユニットのモル比が0より大で0.3以下の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とするポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステルの製造方法。
【請求項13】
植物由来コハク酸ユニットと乳酸ユニットの合計に対する乳酸ユニットのモル比が0.7以上、1未満の仕込み比の条件で重縮合することを特徴とする請求項12記載のポリエステルの製造方法。
【請求項14】
(i)植物由来1,4−ブタンジオールと(ii)石油由来テレフタル酸及び/又はテレフタル酸誘導体を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が30%以上、35%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項15】
植物由来及び/又は石油由来1,4−ブタンジオールと(ii)石油由来テレフタル酸及び/又はテレフタル酸誘導体及び第三のモノマー成分としての乳酸、ラクチッド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのなかから選ばれた1種又は2種以上を、触媒の存在下に重縮合することにより得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、35%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項16】
コハク酸誘導体が無水コハク酸、コハク酸ジエステル、コハク酸モノエステルの中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2、4、7、9、12、13のいずれか記載のポリエステルの製造方法。
【請求項17】
コハク酸誘導体が無水コハク酸、コハク酸モノエステルの中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1、3、6、8、10、11のいずれか記載のポリエステルの製造方法。
【請求項18】
請求項1、10、11のいずれか記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%のポリエステル。
【請求項19】
請求項2、12,13のいずれか記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が100%のポリエステル。
【請求項20】
請求項3又は8記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステル。
【請求項21】
請求項4又は9記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%以下のポリエステル。
【請求項22】
請求項6記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステル。
【請求項23】
請求項7記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、100%未満のポリエステル。
【請求項24】
請求項14記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が30%以上、35%以下のポリエステル。
【請求項25】
請求項15記載のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルの構造単位中のバイオマス炭素含有率が4.5%以上、35%以下のポリエステル。


【公開番号】特開2011−122144(P2011−122144A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252361(P2010−252361)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】