説明

植物管理方法

【課題】 外観では判断できない植物の品種・系統を識別し、植栽植物の成長性等の情報を簡便に誤りなく記録し、土地適応性などを判断できる植物管理方法を提供することである。
【解決手段】 ICタグを植物体に取り付けることによって個体を識別することを特徴とする植物管理方法。植物体が無性繁殖法によって増殖させたものであることが好ましい。個体識別はクローン増殖させた植物体の親子関係を識別するため、或いは品種を識別するために行うために行うことが有効である。ICタグには読み取り専用で書き換え不可能な状態で個体識別番号が記録されていることが好ましく、コンピューター本体の情報格納メモリー領域に、前記個体識別番号及びその個体に対応する個体情報ならびに生育情報を格納することにより管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に植栽植物の管理方法に関する。さらに詳しくは、本発明はICタグを利用した植物の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業や林業に利用される農作物、樹木等の生産性は、その品種によって大きく異なることが知られている。また、同じ品種の農作物または樹木であっても、その生産性は農作物または樹木が植栽される立地条件や気候等の生育環境によって影響を受ける。よって、農作物や樹木の生産性を高めるためには、選抜や譲渡等によって入手した品種について、遺伝的な優秀性および実際に利用する土地への適応性の検定を行い、植栽地に適した作物品種を選出する作業が必要となる。検定には管理された土地で実際に当該植物を植栽し、その成長性等を判断する作業が行われる。
【0003】
特に、植栽する植物体が植林用樹木等の木本植物である場合、これまでは成長性等を判断するために主に次代検定林と呼ばれる試験林を設けていた。しかし、多様な立地条件に応じて多数の次代検定林が必要となるうえ、木本植物は成長が極めて遅いことから、生育の調査に数年から数十年の年月がかかるために、生産性の検定に要する時間および労力は多大なものとなる。
さらに、品種の選出に用いる母集団としては数十から数百種類の品種を植栽することになるが、品種数の増大に伴い、検定に要する試料数も膨大なものとなる。このような多数の試料の検定を行う場合、特に試料の正確で信頼できる追跡と関連情報との管理が不可欠となってくる。
【0004】
同一品種の植物についても、例えば成長性などに優れた優良木を多数本選択し、各優良木を母樹として非常に多数の挿し木苗を取り出してクローン植林する際には、挿し木苗はランダムに植えるため、成長性データなどと母樹の系統との関連を調査するために個体を、どの親のクローンであるかを、識別しておく必要がある。
【0005】
通常、品種・系統の識別には、品種等の個体情報が記載または記録された札、バーコード等のタグを植栽地点もしくは植物体に取り付けることによるが、自然環境中で風雨等によって記載された情報もしくはタグそのものを消失しやすい等の問題がある。
また、近年では植物の品種・系統を識別する方法としてDNAマーカーの利用が有効であることが報告されている(特許文献1、特許文献2参照)。植栽した植物についてDNAを抽出し、その塩基配列の相違から個体の識別を行う方法である。しかしながら、DNAを利用した識別システムでは、識別に時間、労力、コストがかかり、優良木の判断に必要な情報量を十分蓄積できない問題があるほか、システムが有する識別能が100%保証されるわけではなく、試験の再現性も完全ではない点が問題視されている。
【特許文献1】特開2003−079375号公報
【特許文献2】特開2002−291475号公報
【特許文献3】特開2002−319006号公報
【特許文献4】特表平11−513518号公報
【特許文献5】特開2002−169952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、外観では判断できない植物の品種・系統を識別し、植栽植物の成長性等の情報を簡便に誤りなく記録し、土地適応性などを判断できる植物管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(10)の構成を採用する。
(1) ICタグを植物体に取り付けることによって個体を識別することを特徴とする植物管理方法。
(2) 植物体が無性繁殖法によって増殖させたものであることを特徴とする(1)に記載の植物管理方法。
(3) 植物体は植林用苗または植林された樹木であることを特徴とする(1)または(2)に記載の植物管理方法。
(4) 植物体はユーカリ属、アカシア属、ポプラ属、マツ科、スギ科、ヒノキ科、ブナ科からなる群より選択されるいずれか1種に属する樹木であることを特徴とする(3)に記載の植物管理方法。
(5) 個体識別はクローン増殖させた植物体を識別するために行うことを特徴とする(2)に記載の植物管理方法。
(6) 個体識別は品種を識別するために行うことを特徴とする(2)に記載の植物管理方法。
(7) ICタグには読み取り専用で書き換え不可能な状態で個体識別番号が記録されていることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の植物管理方法。
(8) コンピューター本体の情報格納メモリー領域に、前記個体識別番号及びその個体に対応する個体情報ならびに生育情報を格納することにより管理することを特徴とする(7)に記載の植物管理方法。
(9) 個体情報が植物の品種または遺伝子型である(8)に記載の植物管理方法。
(10) 無線通信機能を有する携帯端末にICタグ読み取り機能を付設し、植物個体から個体識別番号を読み取り、更に該植物個体を観測した結果の情報を携帯端末に入力すると共に、無線通信機能によりコンピューター本体に送信することを特徴とする(8)または(9)に記載の植物管理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、植林の現場あるいは採穂園などの現場で膨大な数の植物の成長情報等をコンピューターで管理し解析することが可能となる。成長状態を計測し記録する際に手間が殆どかからずに行うことができ、データ記入を間違える可能性が非常に少なくなる。
【0009】
識別する情報が品種である場合には、現地で高度な技術および知識を必要としなくとも、多数の植栽地にランダムに植栽した品種を正確に識別することが可能となる。識別した品種情報を植栽地での成長性と関連付けることによって、多様な立地条件と品種の交互作用に関する詳細な情報を得て、優良品種を判断することができる。優良品種を選択して、農地、林地等に植栽することによって高い生産性を確保することができる。さらに、選ばれた優良品種について、植栽地の立地要因と生育データを関連付けることによって、当該優良品種の生育における立地要因の影響を明らかにすることで、新規の土地に当該優良品種を植栽する際の成長予測を立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、植物体に取り付けるICタグの種類としては、既知のどんなICタグであってもよく、接触式ICタグ及び無線ICタグ(Radio Frequency Identification、RFID)等の非接触式ICタグのどちらでも利用できる。植林に適用する場合には、背丈が高い樹木の上にICタグが存在することも想定されるので、非接触方式が好ましい。
ICタグの形状としては、超小型チップ、カード型、ボタン型、切手サイズ等が挙げられるが、それに限定されるものではない。
データ授受に際して起電力を発生させる方式として、電磁誘導方式と静電結合方式があるが、本発明では、そのいずれでも使用できる。
静電結合方式は、モトローラ社が開発し、特許文献4に開示されている技術が使用できる。この方式では、拡張アンテナを広げることで電波の飛距離を伸ばすことができる。
【0011】
ICタグから情報を発信するためには、外部からの電波により起電力を発生するパッシブ方式とICタグに電源を保有するアクティブ方式がある。アクティブ方式では、免許不要の300MHz帯域の電波が使用できる、ICタグと受信機の距離が測定できる、電波の飛距離が30m以上も可能である、などのメリットもあり特定のケースでは植林に使用可能である。

【0012】
以下、最も良く使用される電磁誘導型で、パッシブ方式の無線で交信するタイプについて説明する。
ICタグの交信に利用する無線周波数としては、特に制限はなく、短波(13.56 MHz)、中波(135 KHz以下)、UHF(860 960 MHz)、マイクロ波(2.45 GHz)等のいずれも利用できる。中でも、樹木の背丈が大きくなる場合には、飛距離が長いUHFあるいはマイクロ波が好ましく、特にはタグの小型化という点からもマイクロ波が好ましい。
タグあるいは材料のチップは、ドイツのインフィニオン社、オーストラリアのマゼランテクノロジー社、アメリカのマトリックス社、日本のNECエレクトロニクス社などから市販されているものが使用できる。上記のものはいずれも1cm〜5cm程度の大きさとなるので、樹木に埋め込んだり、極めて小さな苗木に取り付けたりする用途では、更に小型のタグが必要である。
近年、ミューチップ(商標:日立製作所)、MMチップ(商標:株式会社エフ・イー・シー)など、0.5mm角あるいは0.4mm角のICチップも出ており、この大きさであれば、小さな苗木に取り付けても問題がない。
また、前記したモトローラ社の静電結合方式のICチップ(Bistatixs:登録商標)も非常に軽量で小型であるので、小さな苗木に取り付けることができる。
【0013】
ICタグを取り付ける植物としては、特に制限はないが、例えば、草本性単子葉植物としては、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、タマネギ、トウモロコシ、モロコシ等が、草本性双子葉植物としては、ダイズ、エンドウ、インゲン、アルファルファ等のマメ科植物、タバコ、トマト、ジャガイモ等のナス科植物、ナタネ、キャベツ、カラシナ等のアブラナ科植物、メロン、キュウリ、カボチャ等のウリ科植物、ニンジン、セロリ等のセリ科植物、シロイヌナズナ等が、木本性植物としては、ユーカリ、アカシア、ポプラ、マツ、スギ、ヒノキ、ブナ等が挙げられる。
【0014】
ICタグの取り付け方法としては、植物体の表面に接着剤で接着させる方法、ICタグを取り付けた紐を植物体に結わえる方法、植物体内に埋め込む方法等が挙げられるが、これらに限定されない。ICタグを取り付けた紐としては、2枚の細幅のプラスチックテープの間にICタグを挟んだ状態のものが、ICタグの保護という観点から好ましい。
【0015】
ICタグには、1つの植物個体に対して1つの番号が対応する個体識別番号を付与することが望ましい。ICタグは個体識別番号のみを記録している状態でも良い。個体識別番号の情報は書き換え不能の状態としておくことが好ましい。電波により書き換えることが可能なICタグはその便利さの反面、長い年月の間に意図しない電波を受けて情報が変化してしまう危険性があり、特に個体識別番号が変化することは不都合である。
【0016】
本発明の植物管理方法においては、ICタグに記録されている情報を読み取るリーダー装置、コンピユーター本体が必要である。リーダー装置は好ましくは携帯タイプであるが、採穂園、栽培ハウスの中で使用する場合には、携帯タイプでなくても使用できる。
【0017】
植林地を歩いて樹木の生育状況を観察し、その情報をコンピューター本体に記録する際には、無線通信機能を有する携帯端末(例えば携帯電話)にICタグ読み取り機能を付設し、植物個体から個体識別番号を読み取り、更に該植物個体を観測した結果の情報を携帯端末に入力すると共に、無線通信機能によりコンピューター本体に送信することが好ましい(特許文献5参照)。このようにすることにより、情報の記入ミスも無くなるし、情報を転記する手間も省ける。
【0018】
コンピューター本体は情報を格納するメモリー領域を有し、該領域には、一つの植物体に対応する個体識別番号、個体情報、その他の情報が一つのレコードとして認識されて格納され、管理対象である全ての植物体について上記情報が格納される。生育情報以外のその他の情報も同様に格納される。
【0019】
ここで個体情報とは、植物個体に固有の情報であって、植栽したときから不変の情報である。例えば、品種、系統(母樹)、遺伝子、塩基配列などが挙げられる。また植栽前の施肥等の管理履歴、病虫害等の被害履歴等も挙げられる。
その他の情報の代表的な情報は、重量、体積、樹高、材積、果実または穀物の収穫量等の生育情報である。
生育情報以外のその他の情報は、個体に固有な情報以外の環境に関する情報であり、GPS(Global Positioning System)等によって求められる植栽地の位置情報、降水量、降雨時期、地形、傾斜、土壌理学性(土性、土色、粒度分布、岩盤の存在等)、土壌化学性(pH、電気伝導度、有機物量とその組成、無機物量、無機イオン量等)等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
個体情報またはその他の情報は、コンピューター本体のみに格納されていても良いが、その一部はICタグにも格納されていても良い。ICタグに格納されていることにより、現地で参照することができるので便利である。
【0020】
ICタグに個体識別情報を書き換え不可能な形で記録する際には、紙あるいはプラスチックテープなどに一定間隔に貼り付けてあるか、挟まれている状態で巻き取り形態で、ライター装置に供給することが好ましい。あるいは、所謂電子部品キャリアテープと称される、紙あるいはプラスチックテープにICチップが入るキャビティを一定間隔に形成し、その中にICチップを収納した後に、テープで蓋をしたものでも良い。
【0021】
ライターはコンピューターで制御され、個体識別情報とそれに対応する個体情報をあらかじめテーブルとして保有し、それに従ってICタグに個体識別番号と個体情報を記録することが好ましく、更には、テープのICタグ近傍の位置に個体識別番号をインクジェット方式などで印字したり、粘着ラベルを添付しておくことが好ましい。個体識別番号が表示されていることにより、植物体に取り付ける際に、ICタグの中身を読み出して確認する必要がなくなる。
また、別の方法として、ICタグ製造時にICタグを個別に識別するID領域と記録されたID記号を有するタグの場合、そのID記号を本発明の個体識別番号として利用することができる。その場合には、別途、1から連続する個体番号を付与し、コンピューター本体上で、ID記号と個体番号の対応が取れるようにしておけば、色々な照合作業に便利である。
【0022】
ICタグを保有するテープをそのまま植物体に接着、あるいは縛り付けて使用する場合は、上記記録作業は、2枚のプラスチックテープにICタグが挟まれて保護されているものを使用することが便利である。また、導電性インクでプラスチックテープに印刷することで、拡張アンテナを形成することができ、電波の飛距離を伸ばすこともできる。
プラスチックテープには、例えば、樹高測定用のマーカーとなる金属板を付設したり、樹高測定用の電波発信機を付設しても良い。
また、ICタグを一つずつ取り出して植物体に埋め込む場合には、上記の電子部品キャリアテープに格納した形で運搬して使用することが便利である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
<実施例1>
木本植物のアカシア・マンギウム(Acacia mangium)とアカシア・アウリカリフォルミス(Acacia auriculiformis A. Conn. ex Benth.)の種間雑種(以下、アカシア雑種と略称する)の中で成長性を指標に選抜された20品種について、品種を特定するための品種名・クローン品種番号・選抜地データ・成長性データ・材質データをコンピューターに記録し、ICタグをキーとした照合用データとした。
各母樹から、その年の春以降新しく伸長成長して固くなった枝を切り出し、下葉を除去して穂先に対となる2枚の葉のみを残した長さ5〜15cmの挿し穂を夫々150本ずつ調製した。
挿し穂が含む2枚の葉の先端側約半分を切除して、挿し穂の基部をナイフで切り返した。合計3000本の挿し穂を予めプラグトレーに詰めて湿らせておいたバーミキュライトへ挿し付けた。
プラグトレーを温度(23〜25℃)と照度(15,000ルクス)を制御した部屋内のベンチに置き、プラグトレー全体をアクリル製の容器で覆って高い湿度を保った。潅水は2日に1回15分間の底面給水で行った。挿し付け後7週間が経過した時点で発根し、問題なく成長している苗木を各母樹について100本ずつ選択して、植林試料とした。
前記植林試料計2000本に、前記品種特定情報を記録したICタグを取り付けた紐を結わえた。植林地は5個所設定し、それぞれの植林地には品種毎に20本ずつ計400本のクローン苗を、苗木を混合した状態でランダムに植栽した。なお、ICタグとしては下記のものを使用した。
ICタグを取り付けたアカシア雑種木を植栽した植林地で、植栽4年後に、取り付けられたICタグからICタグリーダーで品種情報を読み取ることによって、同一の植林地で検定する品種毎に少なくとも10本の植栽木を特定する。
【0025】
この際に当該アカシア雑種木の植栽位置をGPSによって計測し、事前に取得した立地環境情報から当該植栽木の植栽地点間に大きな立地環境上の差異がないことを確認する。差異がある植栽木は調査対象から外すことによって、立地環境要因の影響を低減した。特定した各品種の植栽木について樹高を樹高計によって測定する。同一の植林地について、測定した樹高データから各品種別の樹高の平均値を算出することで、当該植林地に適するアカシア雑種木品種を特定する。さらに、各品種について特定した植栽木の樹高平均値を、植栽した植林地の降水量、地形の傾斜、土性、土壌中における窒素および燐の含量のデータと統計的解析を行い、アカシア雑種木品種の生育におけるこれらの影響を明らかにする。
【0026】
<ICタグの作成>
インフィニオン社のインレイ(PET基材上にアルミ製のアンテナ回路を設け、それにインフィニオン社のSRF55V02P型のICチップを接続して構成されている)を薄いポリエステルシートで表裏から挟み接着剤で貼り合わせたRFIDタグを使用。
リーダ/ライタ装置:タカヤ社製リーダ/ライタモジュールのアンテナ部 TR3−A301、外形約50mm×15mm、厚さ10mmと同社製同モジュールの制御部TR3−C201を組み合わせて使用した。
【0027】
<実施例2>
ユーカリ・グランディス(Eucalyptus grandis)の比較的成長性が高い樹木個体(精鋭樹)を10本選定した。この10本を母樹とし、1〜10番までの母樹番号を付与した。
各母樹から、その年の春以降新しく伸長成長して固くなった枝を切り出し、下葉を除去して穂先に対となる2枚の葉のみを残した長さ2〜10cmの挿し穂を夫々20本ずつ調製した。
挿し穂が含む2枚の葉の先端側約半分を切除して、挿し穂の基部をナイフで切り返した。挿し穂の基部を、ショ糖の濃度が2%、ベノミル[メチル−1−( ブチルカルバモイル)−2−ベンゾイミダゾールカーバメート]水和剤(商品名:ベンレート、デュポン社)の濃度が500倍である水溶液に24時間浸漬した。合計200本の挿し穂を予めプラグトレーに詰めて湿らせておいたバーミキュライトへ挿し付けた。
プラグトレーを温度(23〜25℃)と照度(15,000ルクス)を制御した部屋内のベンチに置き、プラグトレー全体をアクリル製の容器で覆って高い湿度を保った。潅水は2日に1回15分間の底面給水で行った。挿し付け後7週間が経過した時点で発根し、問題なく成長している苗木を各母樹について10本ずつ選択して、植林試料とした。
【0028】
コンピューター本体に、苗木個体番号、母樹番号、植林地、苗木の背丈をフィールドとするレコードを100レコード作成した。個体番号の欄には、連続番号で1から100の個体番号を入力し、母樹番号の欄には、母樹番号1〜10のデータを各10レコードづつ配置した。植林地は2個所とし、各植林地について、各母樹からの苗木を5本づつ割り当て、植林地A、Bのデータを入力した。
次に、下記の方法で作成した幅2cm、長さ10cmのプラスチックテープ(ICタグテープ)を、糸で各苗木に結合した。
かくして、AB両植林地に50本づつ振り分けて植林し、一定期間ごとに、携帯式リーダー/ライターを持参しながら、木の背丈、幹の太さなどを測定し、ICタグに記録したり、コンピューター本体に転送したりして管理することが可能となる。
【0029】
<ICタグテープの作成>
ICタグとしては、NETLABEL(商標:NECエレクトロニクス社、EEPROM1024bits)を使用し、ICタグ自身の個別ID領域に格納されているID記号(書き換え不可能なROMデータ)をそのまま個体識別番号として採用した。ヒートシール層として厚さ5μmのエチレン・酢酸ビニル共重合体層を有する全厚さ25μmの高密度ポリエチレンフィルムを幅2cm長さ10cmに切断して短冊とし、前記ICチップをヒートシール層側中央に置き、その上から、同じ短冊をヒートシール層同士が対面するように置いて、ICタグの部分以外をアイロン掛けでシールして、ICタグテープを100個作成した。
各ICタグテープについて、NECエレクトロニクス製のリーダー/ライター(2.45GHzマイクロ波使用、読み取り距離約1.3m)で読み取り、そのID記号をコンピューター本体のレコードに記録した。また、それに対応するコンピューター本体の個体番号をICタグに記録した。更に、1〜100までの数字が1枚づつ印字されている粘着ラベルを、個体番号と合うようにICタグテープに貼り付けた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態による森林情報システムに係る処理手順を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを植物体に取り付けることによって個体を識別することを特徴とする植物管理方法。
【請求項2】
植物体が無性繁殖法によって増殖させたものであることを特徴とする請求項1に記載の植物管理方法。
【請求項3】
植物体は植林用苗または植林された樹木であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物管理方法。
【請求項4】
植物体はユーカリ属、アカシア属、ポプラ属、マツ科、スギ科、ヒノキ科、ブナ科からなる群より選択されるいずれか1種に属する樹木であることを特徴とする請求項3に記載の植物管理方法。
【請求項5】
個体識別はクローン増殖させた植物体を識別するために行うことを特徴とする請求項2に記載の植物管理方法。
【請求項6】
個体識別は品種を識別するために行うことを特徴とする請求項2に記載の植物管理方法。
【請求項7】
ICタグには読み取り専用で書き換え不可能な状態で個体識別番号が記録されていることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の植物管理方法。
【請求項8】
コンピューター本体の情報格納メモリー領域に、前記個体識別番号及びその個体に対応する個体情報ならびに生育情報を格納することにより管理することを特徴とする請求項7に記載の植物管理方法。
【請求項9】
個体情報が植物の品種または遺伝子型である請求項8に記載の植物管理方法。
【請求項10】
無線通信機能を有する携帯端末にICタグ読み取り機能を付設し、植物個体から個体識別番号を読み取り、更に該植物個体を観測した結果の情報を携帯端末に入力すると共に、無線通信機能によりコンピューター本体に送信することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の植物管理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−115768(P2006−115768A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307470(P2004−307470)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】