説明

植物系天然繊維収束体および植物系天然繊維収束体を用いた複合樹脂

【課題】植物系天然繊維を収束処理することで嵩高さを解消し、複合化に際して取り扱いを容易にする植物系天然繊維収束体を提供すること。
【解決手段】植物系天然繊維を引き揃えた状態で収束を保持するようにバインダー樹脂で固めた後、ペレット状に切断した植物系天然繊維収束体。
【効果】本発明により、複合作業性の良好な植物系天然繊維収束体を得ることが出来、これを各種樹脂と複合化することにより植物系天然繊維強化複合材料を容易に得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物系天然繊維を樹脂で固めた収束体および植物系天然繊維収束体を用いた複合樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源枯渇の問題や炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点より、石油を原料としない非石油系樹脂が注目されてきている。
【0003】
こうした中で、植物由来原料をモノマーとした樹脂が開発されて来ており、既にとうもろこしやイモ類等から得た澱粉を糖化して、更に乳酸菌により乳酸を得、次に、乳酸を環化反応させてラクチドとし、これを開環重合すると言う方法でポリ乳酸樹脂がコマーシャルベースで生産されるようになった。
他に植物由来原料モノマーとしては、植物からの抽出で得ることの出来るグリコール酸や澱粉等を原料に発酵法で得たコハク酸といったジカルボン酸などがある。更にコハク酸を原料として1,4−ブタンジオールといったジオールも合成されている。
【0004】
このようにして得られた植物由来原料の樹脂中の炭素は、大気中の炭酸ガスを光合成により固定化された物であるために、たとえ焼却廃棄しても炭酸ガス総量を増加させる事のない、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料と言える物である。表現を換えると循環型で環境維持可能な「サスティナブル」な材料である。
また、重合原料の一部に植物由来原料モノマーを用いた場合には、完全なカーボンニュートラルな材料とは成らないまでも、焼却廃棄時の環境中への炭酸ガス排出負荷は、全てを石油由来原料に求めた場合に比べ、低い物となる。
【0005】
しかし、これら植物由来原料モノマーを用いて得られる樹脂に関して、強化材や増量剤等としてガラス繊維や各種の無機フィラーを用いた場合には、焼却廃棄後に大量のガラス繊維や無機フィラーが残渣として残り、これの廃棄に関しては、埋め立てる以外に方法が無く、処分に関し問題を抱えている。
【0006】
そこで強化材として天然繊維を用いた生分解性樹脂や(特許文献1参照)、同じく天然繊維とポリオレフィン樹脂やABS樹脂とを複合させた代替木材(特許文献2参照)、更には植物パルプと生分解性樹脂との複合材料(特許文献3参照)等が知られている。
【0007】
また、自然分解性の強化材や増量剤があれば、これを生分解性を有しない一般的な樹脂に添加することによって、その樹脂の分解(崩壊)速度を早くすることもできると考えられる。
【0008】
しかし、天然繊維や天然繊維をアルカリ処理して得られる植物パルプは、非常に嵩高く複合化に際し、作業性が非常に悪いと言う問題点を有していた。
【0009】
【特許文献1】特開2002−356562号公報
【特許文献2】特開平10−235747号公報
【特許文献3】特開平6−345944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解消するため、植物系天然繊維を収束処理することで嵩高さを解消し、複合化に際して取り扱いを容易にする植物系天然繊維収束体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、植物系天然繊維を引き揃えた状態で収束を保持するようにバインダー樹脂で固めた後、ペレット状に切断した植物系天然繊維収束体とする事により解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、複合作業性の良好な植物系天然繊維収束体を得ることが出来、これを各種樹脂と複合化することにより植物系天然繊維強化複合材料を容易に得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いる植物系天然繊維は、ケナフ繊維、竹繊維、さとうきび繊維、とうもろこし繊維、バナナ繊維、綿繊維および麻繊維といった種類の物がある。これらの植物系天然繊維の中でも、ケナフ、さとうきび、とうもろこし、綿および麻は、一年草で生長が早い。特にこの中でもケナフ、さとうきびおよびとうもろこしは、一年で約2mから場合によっては5mもの高さまで成長し、且つ単位面積あたりの生育量が多い為、空気中炭酸ガス固定化量が非常に多い点から地球温暖化防止に寄与する植物として環境面から非常に注目を集めている物である。
【0015】
同じ天然繊維という括りの中でも鉱物系天然繊維である、アスベスト、ロックウールおよびワラストナイトといった物は、複合材として用いた後、これの廃棄に関しては、例え焼却処理を行なっても灰分として残渣が残り、これの処理には埋め立てる以外に方法が無く、処分に関し問題を抱える事となる。
【0016】
ケナフ、竹、さとうきび、とうもろこし、バナナ、綿および麻からの繊維質の取り出しに関しては、特に限定された方法である必要は無い。一般的にケナフ、さとうきび、とうもろこし、バナナおよび麻では、それぞれの茎部(靭皮部)を池、沼といった所に浸漬し、バクテリアの分解作用にて繊維質以外の部分(主にペクチン質)を分解させた後(レッティング処理)、残った繊維部を取り出すと言う方法が行なわれている。また、竹の場合は、薫蒸処理して柔らかくなったところで繊維質を取り出す方法や爆砕と言った方法で繊維を取り出すことが行なわれている。更に綿の場合には、綿実として採取する。
【0017】
収束を保持する為に用いる収束用バインダー樹脂としては、揮発性を有し且つ植物性天然繊維を溶解しない溶剤に可溶であればどのような樹脂でも用いることが出来る。
これら樹脂の中でも溶剤として水を用いることが出来る樹脂は、繊維に含浸後、乾燥工程での溶剤(水)の大気中への気散が環境負荷とならないため、好ましく用いることが出来る。
【0018】
具体的には、ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、澱粉および酢酸ビニル樹脂等の水溶性樹脂を挙げることが出来る。これらの樹脂は、一般に市販されている樹脂をそのまま用いることが出来る。
【0019】
さらに本来水溶性を有しない樹脂に関しても、ある種の分散安定剤の存在下に水に安定したエマルジョンとして存在できる樹脂は、同様に用いることが出来る。このような樹脂
の中でも、その構成モノマーの全てもしくはその一部が植物原料由来の物であれば、環境負荷が小さいと言う観点から好ましく用いることが出来る。具体的には、とうもろこしや芋といった植物原料由来のグルコースを素原料として発酵法で得た乳酸(ラクチド)を用いるポリ乳酸樹脂、同様にグルコースを素原料として発酵法で得たコハク酸や更にコハク酸を水添して得たブタンジオールをモノマーの少なくとも一つとして用いるポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂等の樹脂、その他にもポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂といった樹脂が挙げられる。
【0020】
上述のように植物原料由来のモノマーを用いた樹脂を用いることは環境負荷低減の観点から好適であるが、本発明で収束用バインダー樹脂として用いるに際しては、石油系原料を用いて得た、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂であっても何ら問題は無い。これらの樹脂は、一般に市販されている樹脂をそのまま用いることが出来る。
【0021】
また、これらの樹脂を水系エマルジョンにする際には、例えば、特開2001−11294号公報に示されているような平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物もしくは平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物の存在下に酢酸エチル等の有機溶媒に溶解させた樹脂を高温下で強剪断を与えて微分散させた後、減圧下に有機溶媒を溜去し、水系エマルジョンを得るといった方法を用いることも出来るし、一般に市販させている上述樹脂の水系エマルジョンを必要に応じて希釈して用いることが出来る。
【0022】
次に、植物系天然繊維に対する収束用バインダー樹脂の割合に関しては、0.05wt%〜3wt%の範囲が好ましい。
【0023】
収束用バインダー樹脂の塗布方法に関しては、特に限定された方法ではなく、一般に溶剤塗布の方法を用いることが出来る。
具体的には、上述の植物系天然繊維を、カード機等を通すことにより繊維をスライバー状に引きそろえた後、溶剤に収束用バインダー樹脂を溶解もしくはエマルジョン化したドープ中に含浸し、余分なドープを絞り除いた後、乾燥させる方法や同ドープをコーターローラーを介して引きそろえられた繊維に付着させた後、乾燥させる方法、更に同ドープをスプレーして引きそろえられた繊維に付着させた後、乾燥させる方法等がある。
また、スライバー状にした後、撚りをかけたロープ状にした後、上述と同様な塗布方法で処理しても良い。
【0024】
天然繊維収束体の形状としては、特に限定される物ではなく、断面が多角形や円形ないしは楕円形でも良い。また、断面の最長径は、10mm以下が好ましく、更には5mm以下がより好ましい。断面の最長径が10mmを超えると得られた天然繊維収束体と樹脂を熔融混練複合させる際に、スクリューに喰い込み難くなる。
【0025】
天然繊維スライバーは、収束用バインダー樹脂をドープと接する前もしくは後で、天然繊維収束体が上述の形状を取れるように必要に応じ分繊させて用いる事も出来る。
【0026】
得られた繊維収束体は、ペレタイザーを用いて定長に切断する。切断長さとしては、2mm〜30mmが必要であり、3mm〜15mmが好ましい。2mm未満への切断は、難しく且つたとえ出来た場合でも収束が解かれ粉状物が増え、取り扱い性が低下する。また、粉状物となった場合には、樹脂に対する複合化効果は無く、かえって物性を低下させる場合もある。切断長が、30mmを超える場合は、単軸もしくは二軸混練機の原料ホッパ
ー内でブリッジを生じ易く、定量供給に問題を生じ易い点と、単軸もしくは二軸混練機のスクリューへの喰い込みが極端に悪くなり、複合化が困難となる点で問題が生じる。
【0027】
植物系天然繊維収束体と複合して用いる樹脂に関しては、植物原料由来のモノマーを少なくとも一部に用いた熱可塑性樹脂を好適に用いることが出来る。
【0028】
複合に用いることの出来る具体的な植物原料由来のモノマーを少なくとも一部に用いた熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂と言った物が挙げられる。
【0029】
また、ポリ乳酸樹脂においては、構成するL−乳酸およびD−乳酸の比率に関し、特に限定されることなく用いることが出来る。しかし、ポリ乳酸樹脂を結晶化させる事により耐熱性を高める必要がある場合には、L−乳酸とD−乳酸の比率が100:0〜90:10、好ましくはL−乳酸とD−乳酸の比率が100:0〜95:5、更に好ましくはL−乳酸とD−乳酸の比率が100:0〜97:3であるポリ乳酸樹脂を用いる。
【0030】
本発明の植物系天然繊維収束体は上述のような植物原料由来のモノマーを少なくとも一部に用いた熱可塑性樹脂に特に有用に用いられるもであるが、その他の一般的な熱可塑性樹脂に用いることもできる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂と言った物が挙げられる。また、石油を原料として作られたポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂であっても何ら問題はない。
【0031】
複合化の方法に関しては、一般的な単軸混練機や二軸混練機を用いて熔融混練で複合化し、複合樹脂を得ることが出来る。
【0032】
複合樹脂を作製する際の植物系天然繊維収束体の複合化比率に関しては、5wt%〜35wt%が好ましく、10wt%〜20wt%であることが更に好ましい。この範囲であると、繊維複合の添加効果が特に顕著に現れる。
【0033】
また、本発明の複合樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱剤(例えばヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキノン系、チオエーテル系、ホスファイト類およびこれらの置換体およびその組合せを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)および離型剤(例えばモンタン酸およびその塩、ステアリン酸およびその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド、シリコン樹脂、蜜ロウ等)、染料(例えばニトロシン等)および顔料(例えばカーボンブラック、硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤展着液(例えばシリコンオイル等)の1種以上を添加することが出来る。
【0034】
本発明の複合樹脂は、射出成形や押出成形により各種の成形体とすることが出来る。また、得られた成形体は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、機械部品、日用品などとして利用することができる。
【0035】
具体的な成形体の用途例としては、電気・電子部品としてはコピー機、パソコン、プリ
ンター、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品等として、建築部材としては、カーテン部品、ブラインド部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具等として、自動車部品としては各種レバー、各種ハンドル、内装ガーニッシュ、ホイールキャップ、各種ファスナー、各種グロメット等として、機械部品では、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、カム、ラチェット、ローラー等として、日用品では、各種カトラリー、各種トイレタリー部品等である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。尚、収束化、複合化ならびに各種測定・評価は以下の方法で実施した。
【0037】
収束化方法
規定目付けのスライバー状態の植物系天然繊維を樹脂ドープ(収束用バインダー樹脂の水溶液もしくは水分散エマルジョン)に含浸し、十分にドープを染み込ませた後、2本のゴムローラー間で過剰な樹脂ドープを搾り除いた。得られたドープ含浸スライバーを乾燥炉中で乾燥させ、これをペレタイザーで長さ4mmに切断し、植物系天然繊維収束体を得た。
【0038】
(1)収束用バインダー含浸量測定
ドープ含浸前の乾燥スライバー目付けとドープ含浸スライバーを乾燥後、切断前に目付け重量を測定し、その差より収束用バインダー樹脂含浸量を測定した。
【0039】
(2)見掛け密度測定
内容量2リットルの容器に試料を擦切り充填し、その内容物重量を測定した値を2000で除し、見掛け密度(g/cm)を算出した。
【0040】
(3)安息角測定
直径130mm、高さ50mmの円筒形状の台座に上部より試料を静かに落下させ堆積した円錐体の母線と水平面のなす角度を円錐体の高さと台座半径より算出した。
【0041】
(4)ホッパーブリッジ試験
下部に切り出しスクリューを有する、傾斜角68°のホッパー(内容積50リットル)を用い、試料を満載状態より下部スクリューで切り出しを行い、ブリッジ発生の有無を確認した。
【0042】
複合化方法
所定の組成を二軸混練機(日本製鋼所製 TEX−30α)にて溶融混練を行い、ペレット化を行なった。この際、複合ベース樹脂は、ホッパーより重量フィーダーを用い投入し、植物系天然繊維もしくは植物系天然繊維収束体は、サイドフィーダーを用いて投入した。
【0043】
(5)曲げ弾性率
ISO178に準拠して曲げ弾性率の測定を行なった。尚、試験片は、射出成形法にて得た。
【0044】
[実施例1]
バングラディシュ産ケナフ繊維スライバー(目付け:170g/m)を用い、3%ポリビニルアルコール樹脂水溶液をドープとして収束を行なった。得られた植物系天然繊維収束体の見掛け密度、安息角およびホッパーブリッジ試験結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
3%カルボキシメチルセルロース水溶液を用いる以外は実施例1と同様に試験を行い、その結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
5%酢酸ビニル樹脂水溶液を用いる以外は実施例1と同様に試験を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
[実施例4]
ポリ乳酸エマルジョン(ミヨシ油脂製 ランディーPL−1010)の固形分を10%になるように水で希釈したドープを用い用いる以外は実施例1と同様に試験を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
[実施例5]
ポリ乳酸エマルジョン(ミヨシ油脂製 ランディーPL−1515)の固形分を10%になるように水で希釈したドープを用い用いる以外は実施例1と同様に試験を行い、その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例1]
実施例1で用いたケナフ繊維スライバーをそのまま4mm長さに切断して、見掛け密度測定、安息角測定およびホッパーブリッジ試験測定を実施し、その結果を表1に合わせて示した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示した結果より明らかなように収束処理することで、見掛け密度が高くなり、安息角が小さくなり、ホッパーでのブリッジが生じないようになった。
【0052】
[実施例6]
実施例1で作製したケナフ繊維収束体とポリ乳酸樹脂(カネボウ合繊製、ラクトロン200DA)をケナフ繊維収束体比率が20wt%となるように複合化し、複合樹脂を得ることが出来た。得られた複合樹脂を用い射出成形で試験片を得、これの曲げ弾性率を測定し、その結果を表2に示した。
【0053】
[実施例7]
実施例4で作製したケナフ繊維収束体とポリ乳酸樹脂(カネボウ合繊製、ラクトロン200DA)をケナフ繊維収束体比率が20wt%となるように複合化し、複合樹脂を得ることが出来た。実施例6と同様に弾性率を測定し、表2に合わせて示した。
【0054】
[実施例8]
実施例2で作製したケナフ繊維収束体とポリブチレンサクシネート樹脂(三菱化学製、GS−Pla)をケナフ繊維収束体比率が20wt%となるように複合化し、複合樹脂を得ることが出来た。
【0055】
[比較例2]
比較例1で作製したケナフ繊維カット品を用いて実施例1と同様に複合化を実施したが、ケナフ繊維がブリッジを生じ、規定量の複合が出来なかった。また、サイドフィーダー内にもブリッジが生じていた。
【0056】
[比較例3]
実施例6および7で得られた弾性率の比較として、何も複合していないポリ乳酸樹脂(カネボウ合繊製、ラクトロン200DA)の弾性率を測定し、その結果を合わせて表2に示した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示した実施例6および7の複合樹脂では、植物性天然繊維複合による弾性率の向上が認められた。
【0059】
[実施例9]
実施例6、7および8の複合樹脂を用い、射出成形法によりカップ状の成形体を得、容器として用いる事が出来た。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の植物系天然繊維収束体は、ハンドリングに優れ、複合樹脂材料を作ることが容易になる。得られた複合樹脂は電気・電子部品や各種部品、雑貨用成形品に用いる事が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物系天然繊維を引き揃えた状態で収束を保持するように樹脂で固めた後、ペレット形状に切断した植物系天然繊維収束体。
【請求項2】
植物系天然繊維がケナフ繊維、竹繊維、さとうきび繊維、とうもろこし繊維、バナナ繊維、綿繊維および麻繊維の内、少なくとも一つよりなる事を特徴とする請求項1に記載の植物系天然繊維収束体。
【請求項3】
植物系天然繊維を引き揃えた状態で収束を保持する為に用いるバインダー樹脂が、ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、澱粉および酢酸ビニル樹脂の内、少なくとも一つよりなることを特徴とする請求項1ないしは2に記載の植物系天然繊維収束体。
【請求項4】
植物系天然繊維を引き揃えた状態で収束を保持する為に用いるバインダー樹脂が、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂の内、少なくとも一つの樹脂を分散安定剤の存在下に水に分散安定化したエマルジョンとして含浸させた後、水分を揮発させることで固まることを特徴とする請求項1ないしは2に記載の植物系天然繊維収束体。
【請求項5】
請求項1ないしは4いずれかに記載の植物系天然繊維収束体と熱可塑性樹脂からなる複合樹脂。
【請求項6】
熱可塑性樹脂がポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびポリグリコール酸樹脂の内、少なくとも一つを含むことを特徴とする
請求項5に記載の複合樹脂。
【請求項7】
請求項5ないしは6に記載の複合樹脂からなる成形体。

【公開番号】特開2006−96836(P2006−96836A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283314(P2004−283314)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】