説明

植物育成用基板

【課題】使用する木材チップの形状や画分比率の設定、混入される種皮によって、均一な空隙を形成することができて保水力を向上し、植物の根の生育を促進することができる植物育成用基板を提供する。
【解決手段】接着剤7を除く原料の全量に対し、木材チップ2が50〜90重量%含まれており、前記木材チップ2の全量に対し、長さまたは径が20mm以下の木材チップ2が、97重量%以上、10メッシュのふるいを通過しない大きさの木材チップ2が70重量%以上、10メッシュのふるいを通過する大きさのチップが10重量%以上含まれており、接着剤7を用いて、連続した空隙を有するボード状に成形された植物育成用基板1である。また、接着剤7を除く原料の全量に対し、さらに植物の種皮またはそれを砕いた種皮片3を5〜40重量%含むようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップを使用し、種皮や植物由来の肥料を加えた植物育成用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地球温暖化の防止や都市部におけるヒートアイランド現象の緩和が必要とされており、アスファルトやコンクリート等人工地盤の緑化が着目されている。緑化するための植栽用の基板に木材チップや植物性の廃棄物を用いられることがあり、例えば、特許文献1〜4記載の発明がある。
【0003】
特許文献1には、混在した杉及び桧の細片樹皮間に空隙を存じ、しかも細片樹皮相互を接着剤で繋いでなる植栽床が記載されている。
【0004】
特許文献2には、粒状に粉砕されたスギのチップに、樹脂を混ぜ合わせて加熱押圧してなる植栽用、路石用、床面用または園芸用品用ブロックが記載されている。
【0005】
特許文献3には、セルロースを主体とし、破砕又は粉砕された植物性の廃棄物を、生分解性接着剤で固めているボード材が記載されている。セルロースを含むものとして、植物の葉、種子の皮、古紙、廃木材等が挙げられている。
【0006】
特許文献4には、三層または多層パーティクルボードにおいて、内層用チップとして16メッシュを超える粗いチップが0〜10wt%、16〜100メッシュのチップが40〜82wt%、100メッシュ未満の極めて細かいチップが18〜50wt%の範囲の分布を有するチップを用いるパーティクルボードの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−255267号公報
【特許文献2】実用新案登録第3125460号
【特許文献3】特開2005−319755号公報
【特許文献4】特許第2613000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の発明は、混在した杉及び桧の細片樹皮を使用しており、立体的な形状ではないため、連続した空隙を形成することは難しく、植物の根が生育しにくい。
【0009】
特許文献2記載の発明は、粉状に粉砕したスギのチップに樹脂を混ぜ合わせて加熱押圧したブロック体であるが、材料・製造面において従来のパーティクルボード等と特に変わることがなく、植物の生育促進の面では効果が少なく、特許文献1と同様に連続した空隙を形成することは難しい。
【0010】
また、特許文献3、4記載の発明は、植栽用ではなく、強度を有する建築用のボード等を対象とするものであり、植物の生育を図ったものではない。
【0011】
本発明は、従来技術の植生用のボードにおける課題の解決を図ったものであり、使用する木材チップの形状や画分比率の設定、混入される種皮によって、均一な空隙を形成することができて保水力を向上し、植物の根の生育を促進することができる植物育成用基板を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、接着剤を用いて、連続した空隙を有するボード状に成形された植物育成用基板であって、接着剤を除く原料の全量に対し、木材チップが50〜90重量%含まれており、前記木材チップの全量に対し、長さまたは径が20mm以下の木材チップが、97重量%以上、10メッシュのふるいを通過しない大きさの木材チップが70重量%以上、10メッシュのふるいを通過する大きさのチップが10重量%以上含まれていることを特徴とするものである。尚、メッシュはJIS規格に準ずる。
【0013】
接着剤を除く原料の全量に対し、木材チップを50〜90重量%としたのは、木材チップを植物育成用基板の主原料としつつ、植物育成用基板の性能改善やコスト低減のために加えられる他の混合物との配合を考慮したものである。
【0014】
使用する木材チップは、植物育成用基板内に適度な空隙を作りやすくするため、薄平板や薄片状では無く、立体状が好ましい。木材チップは、接着剤を除く原料の全量に対し、70重量%以上にした場合は植物育成用基板内に十分な空隙が得られ、均一で連続した空隙を形成するため、充分な空気の流通が得られ、水分を過剰に保持すること無い。また、水はけも良いため根付がよい。
【0015】
一方、粒度の細かい画分は水分保持のために用いており、10メッシュのふるいを通過する大きさのチップが10重量%未満となると、十分な保水性が得られず、植物の育成に適さなくなるおそれがある。
【0016】
本発明においては、前記木材チップの全量に対し、5mmの目開き(4メッシュ程度)のふるいを通過しない大きさの木材チップが20重量%以上含まれていることが望ましい。
【0017】
5mmのふるいを通過しない大きさの粒度の粗い木材チップは、適度な空隙を形成するために必要であり、植物の根の伸長を妨げないため、木材チップの全量に対し、20重量%以上含んだ方が好ましい。
【0018】
木材チップは本発明の植物育成用基板の主原料であり、木材は杉,檜,唐松などの針葉樹や樺,楢,欅などの広葉樹に限定されるものでは無く、間伐材,家屋の廃材,合板や木工での端材など植物の生育を阻害するものが含まれていなければ特に限定されない。これら木材をチップ製造機で破砕し、そのまま或いはふるい等で分級し、本発明の粒度分布を得る。
【0019】
また、植物育成用基板はアスファルトやコンクリート等人工地盤の緑化を含め、駐車場や公園,グラウンド,庭,屋上,屋根,道路等の中央分離帯や歩道など緑化の用途は広く、人や車の往来や風雨等で容易に破壊されてはならない。従って、前述の粒度の粗い画分は、植物育成用基板の強度を維持するために必要となる。
【0020】
また、本発明において、接着剤を除く原料の全量に対し、さらに植物の種皮またはそれを砕いた種皮片を5〜40重量%含むようにすることができる。
【0021】
従来、廃棄物として処理されていた植物の種皮、またはそれを砕いた種皮片を使用することができ、空隙の形成といった面で有効である。
【0022】
種皮、またはそれを砕いた種皮片は、種の表面を覆い、胚や胚乳を保護するために硬く、十分な強度を有しているため、植物育成用基板に適度な硬さを与えることができ、植物にとって良い養分も多く含まれる。また、植物育成用基板への抗菌作用や植物の害虫などによる被害を軽減させる効果が期待できる。
【0023】
植物の種皮またはそれを砕いた種皮片を、接着剤を除く原料の全量に対し、5重量%以上にした場合、種皮による上述の効果を発揮することができるが、木材チップとのバランスや適度な空隙・保水力を考慮すると、40重量%未満にした方がよい。
【0024】
そのため、木材チップの比率も考慮し、植物の種皮またはそれを砕いた種皮片は、接着剤を除く原料の全量に対し、5〜40重量%が好ましい。
【0025】
植物育成用基板の材料として用いる種皮または種皮片は、カカオハスク、ピーナッツ殻、ソバ殻、モミ殻、コーンハル、綿実粕および焙煎コーヒー抽出粕等を用いることができ、それらを組合せて使用してもよい。
【0026】
上記の種皮および種皮片は、防虫性や抗菌性を持った天然素材であり、各種アミノ酸やミネラル、ポリフェノール等を含むため、耐病性の効果が期待でき、植物の生長に効果がある栄養素を保持している。
【0027】
なお、種皮の中でも、柔らかいものや平たいもの等、廃棄しやすいものより、むしろそれ以外のある程度の硬さを有し、嵩張るなど、廃棄しにくい種皮片が適し、不要物の有効利用というメリットもある。
【0028】
本発明は、接着剤を除く原料の全量に対し、さらに植物由来の肥料を30重量%以内含んでもよい。植物由来の肥料を、接着剤を除く原料の全量に対し、30重量%以内とすることで、過剰肥料による植物の障害や植物育成用基板の空隙が細かくなったり、強度が弱くなったりすることを防ぐ。
【0029】
植物由来の肥料として、例えば炭が挙げられ、炭本来の土壌改良効果、微細孔による吸着、脱臭効果や調湿、根腐れ防止、病害虫予防などの効果が期待でき、ミネラルを補給する効果も考えられる。
【0030】
また、本発明における肥料は、竹または竹加工品からなるものを使用することが望ましい。
【0031】
竹には、ケイ素が含まれており、ケイ素の働きで植物育成用基板に植える芝生などの植物が丈夫になる。竹加工品とは、例えば竹肥のことであり、孟宗竹等を切削、発酵させたもので、竹由来の乳酸菌や酵母、アミノ酸などの働きにより植物の生育を促進する効果が得られる。
【0032】
上記竹類としては、孟宗竹,マダケ,ハチク,メダケ,ネマガリダケ等イネ科多年草竹類に属するものであればいずれでも良い。また、発酵する際、米糠等の栄養剤や畜糞,発酵促進剤等を混ぜても良い。
【0033】
本発明の接着剤は、接着剤を除く原料100重量部に対し、5〜25重量部加えて成形することが望ましい。
【0034】
接着剤は、植物育成用基板に用いる材料間の接着力に問題がなく、植物育成用基板としての強度が保持できる程度でよいため、接着剤を除く原料100重量部に対し、5〜25重量部加えるのが好ましい。
【0035】
接着剤の種類は問わないが、熱硬化性樹脂が好ましい。特に、硬化温度の低いウレタン樹脂(イソシアネート樹脂)やメラニン・ユリア樹脂、レゾルシノール樹脂は温度負荷が低いため、種皮に含まれる生理機能を維持することができ、養分が崩れない。また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との併用も可能である。
【0036】
本発明の植物育成用基板において、忌避剤を加えてもよい。忌避剤は、植物由来のものを使用し、植物育成用基板の強度に支障がない程度に適量加えることで、植物育成用基板から犬や猫などの動物を遠ざけ、動物の糞尿等による病害を軽減させる。
【0037】
植物由来の忌避剤とは、例えばトウガラシ、柑橘系、ネギ系などの成分を有する加工品、成分合成品等であり、そのまま添加するだけでなく、例えばゼオライトのような多孔質なものに一旦吸着させて混合し、持続効果を高めることも考えられる。
【0038】
また、種皮や忌避剤を植物育成用基板に混入することによって、耐病性を維持し、ピシウム菌、フザリウム、リゾクトニヤ菌などの雑菌による立枯病や葉枯れ病、葉腐(パッチ)病、赤焼病、炭そ病などの被害を防止し、薬剤の使用を軽減させるとともに、ナメグジや幼虫被害を軽減させる。
【発明の効果】
【0039】
(1)木材チップの粗い画分と混入される種皮により、均一で連続した空隙を形成することができ、木材チップの細かい画分により保水力が向上するため、植物の根の生育を促進することができる。
【0040】
(2)廃棄物として処理されていた植物の種皮、またはそれを砕いた種皮片を有効に活用することができる。
【0041】
(3)種皮または種皮片は、植物育成用基板を適度な硬さにすることができ、植物に養分を与えることができる。また、抗菌作用や害虫などによる被害を軽減させる効果が期待できる。
【0042】
(4)竹または竹加工品からなる肥料を用いることにより、丈夫で高密度な硬い芝生を育成することができる。
【0043】
(5)忌避剤を入れることによって、植物育成用基板から犬や猫などの動物を遠ざけ、動物の糞尿等による病害を軽減させる。耐病性を維持し、ピシウム菌、フザリウム、リゾクトニヤ菌などの雑菌による立枯病や葉枯れ病、葉腐(パッチ)病、赤焼病、炭そ病などの被害を防止し、薬剤の使用を軽減させるとともに、ナメグジや幼虫被害を軽減させる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る植物育成用基板の一実施形態を示したものであり、(a)は材料の説明図、(b)は(a)の実施形態における概略断面図、(c)は(b)を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
表1は、本発明に係る植物育成用基板1の配合割合例を示したものである。また、表2には、木材チップとして使用した杉チップ2の粒度分布の一例を示す。図1は、表1の実施形態を示したものであり、(a)は材料の説明図、(b)は(a)の実施形態における概略断面図、(c)は(b)の拡大図を示したものである。図1において、符号1は植物育成用基板、符号2〜7はそれぞれ植物育成用基板1に配合した杉チップ、カカオハスク、竹肥、炭(竹炭)、忌避剤を吸着させたゼオライト、接着剤のイメージを図示したものである。
【0047】
この例においては、表1に示されるように、1枚につき、杉チップ2760g、カカオハスク680g、竹肥80g、炭40g、忌避剤40gを配合し、これに接着剤400gを加え、植物育成用基板を作成した。
【0048】
木材チップは、杉チップ2を使用しており、接着剤を除く原料100重量部に対し、76.7重量%(内割り重量)となっている。
【0049】
使用した杉チップ2の粒度は、10メッシュのふるいを通過しないものが85.9%である。10メッシュのふるいに残る粒径の大きいものを入れることによって、植物育成用基板1内に均一な空隙が形成され、植物の根の生育を妨げることなく、根付が良くなる。その中でも5mmのふるいを通過しない大きさの杉チップ2を33.9%混入している。また、これら分画の粗いチップは、植物育成用基板そのものの強度を維持する。
【0050】
一方、10メッシュのふるいを通過するものが14.2%である。10メッシュのふるいを通過する粒径の小さいものは、植物育成用基板1内に水分を保持させるために必要である。
【0051】
明細書内では杉チップ2を使用した配合例を示しているが、強度や安全面などを考慮し、植物育成用基板1に与える影響に問題がなければ、木材の種類は問わない。
【0052】
種皮は、カカオハスク3を使用しており、接着剤を除く原料100重量部に対し、内割り重量で18.9%となっている。種皮または種皮片は、カカオハスク3以外にも、ピーナッツ殻、ソバ殻、モミ殻、コーンハル、綿実粕、焙煎コーヒー抽出粕などを用いることができ、これらを組み合わせて使用することも考えられる。
【0053】
カカオハスク3などの種皮は、種の表面を覆い、胚や胚乳を保護するための硬いものであり、防虫性や抗菌性を持った天然素材で、各種アミノ酸やミネラル、ポリフェノールなどの栄養分を含む。
【0054】
よって、種皮を植物育成用基板1に用いることによって、空隙形成効果の他、強度や耐病性、栄養分を有することができる。
【0055】
肥料は、接着剤を除く原料100重量部に対し、竹肥4を2.2%、炭5を1.1%となっている。竹肥4は、孟宗竹を切削し、発酵させたものであり、竹由来の乳酸菌や酵母、アミノ酸などの働きにより、植物の生育を促進させる効果が得られる。
【0056】
炭5は、炭本来の性質である微細孔による吸着、脱臭効果や調湿効果を与え、ミネラルも補給することができる。
【0057】
忌避剤6は、忌避剤6および接着剤を除く原料100重量部に対し、1.1%となっている。忌避剤6は特に使用しなくてもよいが、動物の糞尿等による病害をできるだけ軽減させるために使用した方が好ましい。忌避剤6は、効果の持続性や使用上の安全面を考慮し、ゼオライト等に吸着させて使用することもできる。
【0058】
接着剤7は、接着剤7を除く原料100重量部に対し、外割りで11.1重量部となっている。接着剤7の種類は限定しないが、温度負荷が低く、種皮に含まれる生理機能を維持できるものがよい。
【0059】
例えば、熱硬化性樹脂の中で、特に硬化温度の低いウレタン樹脂(イソシアネート樹脂)やメラニン・ユリア樹脂、レゾルシノール樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂との併用も可能である。
【0060】
植物育成用基板を形成する時は、プレス機などを用いて形を固める。プレス機はホットプレスを用い、高周波プレスまたは蒸気プレス(スチームインジェクションプレス)と併用してもよい。また、熱可塑性樹脂の接着剤を使用して、冷圧プレスを用いて、植物育成用基板を固めることも可能である。
【0061】
植物育成用基板1の密度は、植栽する植物が根付しやすく、さらに強度を保持することのできる0.2〜0.4g/cm3程度が好ましい。
【0062】
また、従来のウレタンマットの様な吸水性が高い素材は水分を多く保持しすぎるため、植物の根腐れに注意が必要であったが、一方で、屋上や屋根等の重量制限がある場所では、吸水時の重量により制限される場合があった。
【0063】
しかし、本発明で用いる木材チップや種皮,種皮片は過剰な水分を吸水することは無く、上記の様な重量制限のある場所でも使用可能である。
【0064】
さらに、本発明の植物育成用基板1の材料は、接着剤を除くと全て天然素材であり、最終的には自然に分解されていくものであるが、吸水性が特に必要な場合はウレタンや吸水性ポリマーなどの吸水材料や紙,セルロース,綿,ポリノジック,ポリエステル,ポリプロピレン等の繊維質材量を加えて植物育成用基板1を作製しても良い。
【0065】
また、本発明の植物育成用基板1に植える植物としては、庭園やグランドカバー等で使用されている高麗芝等の日本芝、バミューダグラス,ベントグラス等の西洋芝、芝桜やハーブ,コケ類,多肉植物等の地被植物などがあり、植物育成用基板1の上で平面上に養生する場合や、部分的に穴を開けポット苗を植栽する方法など様々に活用することができる。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
〔作製手順〕
以下に、本発明に係る植物育成用基板1の作製手順の一例を示したが、この手順に限らないことは言うまでもない。
1.接着剤を除く原料を全て混ぜ、攪拌する。
2.撹拌しながら、接着剤を均一にスプレーする。
3.枠体に入れてならす。
4.ホットプレスにセットする。
5.ホットプレスにより、熱盤加圧する。
6.ホットプレスから取り出す。
7.枠体から取り外す
8.植物育成用基板を冷ます。
9.適当な大きさにカットする。
【実施例2】
【0069】
木材チップとして杉チップ2を使用し、杉チップ2の割合は70%、杉チップ2の粒度分布を変えて植物育成用基板1を作製した結果を表3に示した。
【0070】
種皮片は、カカオハスク3、コーヒー抽出粕、ピーナッツ殻の3種類を混ぜて使用し、カカオハスク3,コーヒー抽出粕,ピーナッツ殻,竹肥4,竹炭の添加割合は、全試験区で同じ比率とした。杉チップ2、カカオハスク3、コーヒー抽出粕、ピーナッツ殻、竹肥4、竹炭の合計に対して、忌避剤を吸着させたゼオライト6は2.5%、接着剤7はイソシアネート樹脂接着剤を用い、接着剤以外の材料の合計に対して12%(外割り)添加した。
【0071】
植物育成用基板1の作製手順は実施例1に示した手順と同じであり、H50cm×W50cm×D5cmの大きさで,密度0.3g/cm3の植物育成用基板1を作製した。
【0072】
強度試験として、作製した植物育成用基板1を地面に敷き詰め、駐車場の使用を想定して小型車を往来させ、1ヶ月後に植物育成用基板1の状態を観察した。
【0073】
配合例Aでは、植物育成用基板1に割れが見られ、配合例Bにおいても植物育成用基板1の四隅の一部が割れる、または欠ける現象が見られ、配合例A・Bは強度不足と判断された。
【0074】
次に、30cm×30cmの大きさに切り出した芝を植物育成用基板1に載せ、毎日散水しながら芝の根付き状態を観察し、芝と植物育成用基板1の両方を引っ張っても充分に離れない状態に達した日数(週単位)を比較した。
【0075】
配合例Aは、10メッシュのふるいを通過した杉チップ2の割合が多いため、植物育成用基板1が緻密となり、根の喰い込みが弱く、根付きまでに時間を必要とした。
【0076】
また、配合例A及びBは水抜けが悪く、根腐れの症状が予見されたため、散水を控えながら試験を続けた。配合例Eでは、日中温度が上がった際に水不足が起こり、芝の一部が枯れた。
【0077】
配合例C及びDでは、植物育成用基板1の強度は十分であり、芝の根付きが早く、散水時の問題は起こらず、芝が良好に生育した。
【0078】
これらの結果は、10メッシュのふるいを通過しない大きさの木材チップが70重量%以上であり、かつ10メッシュのふるいを通過する大きさのチップが10重量%以上含まれている範囲が望ましいことと対応している。
【0079】
【表3】

【実施例3】
【0080】
杉チップ2、竹肥4、竹炭の割合を変えて、芝の養生状態を比較した結果を表4に示した。杉チップ2の粒度は10メッシュのふるいを通過しないものが85%、10メッシュを通過するものが15%であり、その他カカオハスク3を10%添加した。忌避剤を吸着させたゼオライト6は、5%添加した。
【0081】
作製手順は実施例1に従って行い、H50cm×W50cm×D5cm,密度0.25g/cm3の植物育成用基板1を作製した。
【0082】
敷地を平坦にならした後、有孔シートを敷き、その上に植物育成用基板1を並べ、粘土質を混ぜた砂を薄く広げた後、切り出した芝を広げ、養生を2ヶ月間行った。
【0083】
評価は2ヶ月後の芝の状態を、芝刈り後の上から押さえた硬さ、葉の密度(混み具合)、葉の色の濃淡で比較した。
【0084】
配合例Fは肥料分が無いため、葉の色合いが薄く、密度もやや少なく、上から押さえた時の硬さも弱かった。また、配合例Jでは、密度は高いものの葉の色合いに濃淡のバラツキが見られ、硬さもやや弱く、過剰な肥料成分が生育にバラツキを与え、均一な色合いにならなかったと判断された。
【0085】
配合例G〜Iは葉の密度が高く、色合いは濃いグリーンで、所謂硬い芝が生育した。
【0086】
これらの結果は、芝の生育状況について、竹肥、竹炭の配合が有効であること、および接着剤を除く原料の全量に対し、木材チップが50重量%以上配合されることが望ましいことなどを示している。
【0087】
【表4】

【符号の説明】
【0088】
1…植物育成用基板
2…杉チップ、
3…カカオハスク、
4…竹肥、
5…炭、
6…忌避剤を吸着させたゼオライト、
7…接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を用いて、連続した空隙を有するボード状に成形された植物育成用基板であって、接着剤を除く原料の全量に対し、木材チップが50〜90重量%含まれており、前記木材チップの全量に対し、長さまたは径が20mm以下の木材チップが97重量%以上、10メッシュのふるいを通過しない大きさの木材チップが70重量%以上、10メッシュのふるいを通過する大きさのチップが10重量%以上含まれていることを特徴とする植物育成用基板。
【請求項2】
請求項1記載の植物育成用基板において、前記木材チップの全量に対し、5mmのふるいを通過しない大きさの木材チップが20重量%以上含まれていることを特徴とする植物育成用基板。
【請求項3】
請求項1または2記載の植物育成用基板において、接着剤を除く原料の全量に対し、さらに植物の種皮またはそれを砕いた種皮片を5〜40重量%含むことを特徴とする植物育成用基板。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の植物育成用基板において、前記種皮または種皮片は、カカオハスク、ピーナッツ殻、ソバ殻、モミ殻、コーンハル、綿実粕および焙煎コーヒー抽出粕のいずれかまたはその組合せであることを特徴とする植物育成用基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物育成用基板において、接着剤を除く原料の全量に対し、さらに植物由来の肥料を30重量%以内含むことを特徴とする植物育成用基板。
【請求項6】
請求項5記載の植物育成用基板において、前記肥料は、竹または竹加工品からなることを特徴とする植物育成用基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物育成用基板において、接着剤を、接着剤を除く原料100重量部に対し、5〜25重量部加えて成形したことを特徴とする植物育成用基板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物育成用基板において、さらに動物を排除するための植物由来の忌避剤を加えてあることを特徴とする植物育成用基板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35224(P2013−35224A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173585(P2011−173585)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(507395728)ジャパンアグリテック株式会社 (3)
【出願人】(511122547)ジェイ・グリーン日本緑環境株式会社 (1)
【Fターム(参考)】