説明

植生用容器

【課題】 本発明は、注水時に漏水受け皿を必要とせず、根腐れを防止して植物を良好に生育させることができる植生用容器を提供することを課題とする。
【解決手段】 植栽用土を入れる容器本体3の底部に、水抜き穴2が設けられており、水抜き穴2に連通して排出管5が設けられ、この排出管5が、容器本体の上端部と同レベルにまで上方に向けて立ち上げられている植生用容器。この容器本体3内には、内部に空洞部61が形成された中空状の多孔質セラミック成形体6が収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培に用いられる植生用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を栽培するための植生用容器として、セラミック製や合成樹脂製の植木鉢が用いられている。かかる植木鉢は、植物栽培のための用土を入れる容器の底面に、排水用の水抜き穴が形成されている。
また、容器の底面に水抜き穴を有しない植木鉢も知られている。
水抜き穴が形成された植木鉢は、注いだ水が流れ出るので排水性に優れている。しかしながら、該植木鉢は、注水直後に用土に保持されていた水分が時間の経過に従って水抜き穴から排出されるので、用土が乾燥し易く、頻繁に注水する必要がある。また、容器の底面から水が漏れ出るので、屋内などで用いる場合には、漏水受け皿の上に置かなければならない。
一方、水抜き穴を有しない植木鉢は、漏水受け皿を必要とせず、又、水は植物に吸収及び用土表面からの蒸発によって減少するだけなので、用土が乾燥し難く、頻繁に注水する必要がない。しかしながら、該植木鉢は、多量に注水すると、水が溜まったままとなるので、根腐れを起こし易い。また、該植木鉢は、注水時に水抜き穴から水が漏れ出ないので、適量な注水加減を判断し難く、多量に注水し易い傾向にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、注水時に漏水受け皿を必要とせず、根腐れを防止して良好に植物を生育させることができる植生用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、植栽用土を入れる容器本体の底部に、水抜き穴が設けられており、水抜き穴に連通して排出管が設けられ、この排出管が、上方に向けて立ち上げられている植生用容器を提供する。
ここで、容器本体の底部には、容器本体の底面部や容器本体の周辺部の下方及びその近傍がふくまれる。
【0005】
上記植生容器は、水抜き穴に連通する排出管が上方に向けて立ち上げられているので、注水時に水抜き穴から水が漏れ出ることはない。そして、注水後、容器を傾けることにより、容器本体の底部に溜まった余分な水を、水抜き穴から排出管の上端排出口を通じて簡単に排出することができる。
このように余分な水を簡単に排出することができるので、植物の根腐れを防止できる。
また、注水直後に用土に保持されていた水分が時間の経過に従って下降しても、容器を傾けない限り、その水分は、外部に排出されずに容器本体内に存在する。従って、用土が早期に乾燥することを防止できる。
【0006】
本発明の好ましい態様では、上記排出管が、容器本体の周壁部と一体的に形成されており、排出管の上端排出口が、容器本体の上端部と同レベル又は容器本体の上端部の近傍にまで立ち上げられている上記植生用容器を提供する。
【0007】
また、本発明の好ましい態様では、上記容器本体内に、内部に空洞部が形成された中空状の多孔質セラミック成形体が収納されている上記植生用容器を提供する。かかる植生用容器は、空洞部が形成された多孔質セラミック成形体が収納されているので、該セラミック成形体と排出管が相乗して、容器本体内に於いて空気の対流が生じ、植物の根を活性化することができる。また、多孔質セラミック成形体は、保水性があるため、用土の余分な水分を吸収し、一方、乾燥し始めた用土へ水分を供給する作用も有する。
【0008】
さらに、本発明の好ましい態様では、上記多孔質セラミック成形体には、空洞部に通じる通気管が植設されている上記植生用容器を提供する。かかる植生用容器は、多孔質セラミック成形体に、空洞部に連通する通気管が植設されているので、空洞部内の空気が多孔質セラミック成形体の外部に流れ易くなる。従って、容器本体内に於いて空気の対流が大きくなり、植物の根をより活性化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る植生用容器は、注水時に漏水受け皿が不要であり、容器又は排出管を傾けるだけで余分な水分を排出管から排出することができる。また、必要な水分が逃げにくく、植物を良好に生育させることができる。
また、空洞部の形成された多孔質セラミック成形体が収納されている植生用容器にあっては、容器本体内に於いて空気の対流が生じ、植物の根を活性化することができる。
従って、本発明に係る植生用容器によれば、根腐れを防止して良好に植物を生育させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1及び図2に於いて、1は、底部に水抜き穴2が設けられ且つ植物栽培用の用土を収納可能な容器本体3と、この容器本体3の水抜き穴2に連通し、且つ上方に向けて立ち上げられた排出管5と、容器本体3内に収納された多孔質セラミック成形体6と、を備える植生用容器を示す。
【0011】
容器本体3は、上方に向かうに従い徐々に径大に形成された筒状の周壁部31と、この周壁部31の下面を閉塞する底面部32と、を有する上面開口型の凹状に形成されている。
この容器本体3の周壁部31の下端部(底面部32との境界部分)には、水抜き穴2が形成されている。
排出管5は、容器本体3の下端部から上端部に向けて立ち上がっており、容器本体3の周壁部31の外側に一体的に形成されている。この排出管5の下端排出口51は、水抜き穴2に連通されている。一方、排出管5の上端排出口52は、容器本体3の上端部と略同じレベルに位置されている。下端排出口51と上端排出口52を繋ぐため、排出管5の内部には通路53が形成されている。
【0012】
容器本体3の大きさや形状は特に限定されず、植えられる植物に応じて適宜の大きさ等に設計される。また、水抜き穴2や排出管5の大きさや形状についても、水が排出できる大きさであれば特に限定されず、容器本体3の大きさに応じて適宜設計することができる。排出管5の上端排出口52の開口面積は、例えば、容器本体3の上面開口面積の1/200〜1/10程度に形成される。
また、容器本体3や排出管5の材質も特に限定されず、合成樹脂製、陶器・磁器などのセラミック製、ガラス製などで形成することができる。
尚、容器本体3に収納される用土が流れ出ないようにするため、水抜き穴2に、メッシュ網を被せてもよい。
また、容器本体3の底面部32の略中央部には、多孔質セラミック成形体6を係止するための係止部33が形成されている。この係止部33は、例えば、多孔質セラミック成形体6の空洞部61に通じる下面開口部に嵌合可能な凸部からなる。従って、多孔質セラミック成形体6は、容器本体3の底面部32の略中央に係止されている。
【0013】
多孔質セラミック成形体6は、図3にも示すように、多孔質状のセラミックを所定形状に成形した塊状の部材である。この多孔質セラミック成形体6の内部には、空洞部61が形成されている。この多孔質セラミック成形体6は、容器本体3内に収納された状態で、多孔質セラミック成形体6の周壁部の外面と容器本体3の周壁部31の内面との間に間隙7を確保できるように形成されている。
多孔質セラミック成形体6の大きさは、容器本体3の容積を100とした場合、容積5〜25程度に形成されていることが好ましい。多孔質セラミック成形体6の占める容積が余りに小さいと、該成形体6を収納した意義がなく、一方、余りに大きいと用土を収納するための空間が少なくなりすぎるからである。
多孔質セラミック成形体6の外形状は、特に限定されず、例えば、図3に示すような円柱状、その他、図示しないが、四角柱状などの多角柱状、円錐状、三角錐状、円錐台状などの各錐状などの規則的な形状、球状と四角柱状が組み合わされた形状などの不規則な形状でもよい。また、多孔質セラミック成形体6の内部に形成される空洞部61の形状も特に限定されず、図示したような円柱状の他、四角柱状などの多角柱状、円錐状、三角錐状、円錐台状などの各錐状などの規則的な形状、球状と四角柱状が組み合わされた形状などの不規則な形状でもよい。
【0014】
多孔質セラミック成形体6の材質は、液体や気体が通過可能な多孔質状のものであれば特に限定されず、例えば、粘土及び/又はシャモットを焼成したセラミック材、セラミックを砕いたセラミック粒状物と珪藻土などの多孔質物を焼成したセラミック材などを用いることができる。多孔質セラミック成形体6の成型方法は、予め所定形状に成形したものを焼成してもよいし、焼成して得られたセラミック材を所定形状に成形してもよい。
粘土及び/又はシャモットを焼成したセラミック材は、例えば耐火粘土及び/又は耐火シャモットに気孔付与材を添加して成形した後、1,000〜1,700℃程度の高温で焼成して得られるものが好ましい。また、セラミック粒状物と多孔質物を焼成したセラミック材は、廃タイルなどを砕いて得られるセラミック粒状物と珪藻土、新島長石などの多孔質物を混合し成形した後、約800〜1,200℃程度で焼成して得られるものが好ましい。
上記セラミック材は、全体的に数μm〜数千μmの連続気孔が形成され、その気孔率としては45%以上のものを用いることが好ましい。このようなセラミック材を用いることにより、多孔質セラミック成形体6内を水や空気が良好に通過することができ、透水性、保水性、通気性等に優れた多孔質セラミック成形体6を得ることができる。
【0015】
上記植生用容器1は、例えば、下記のような植生方法に用いられる。
図4(a)に示すように、多孔質セラミック成形体6が収納された状態で、容器本体3内に用土10を入れる。用土10としては、自然土壌の他、木炭、腐植土、ピートモス、珪藻土焼成粒、パーライト、人工ゼオライト、バーミュキュライト、有機肥料、若しくはバクテリア含有肥料等を適宜組み合わせた人工用土でもよい。
この用土に、セントポーリア、洋ラン、東洋ラン、山野草、観葉植物、水耕栽培植物、つる植物、ハーブ類、多肉植物、一年草、宿根草花、水性植物、低木類等々の所望の植物の苗を植え付ける。
【0016】
そして、用土10の表面から注水を行うが、用土10の保水力を超えた余分な水は、容器本体3から漏れ出ることはなく、容器本体3の底面部32に溜まる。注水は、用土10全体に水分を十分に行き渡らせるという点から、用土10の表面から水が滲み出す程度(容器本体内に水を充満させる程度)まで水を入れることが好ましい。
尚、注水は、排出管5の上端排出口52から行うこともできる。用土10の表面、つまり容器本体3の上面開口部から注水すると、用土表面から生える植物の葉に水が付着することがあり、葉などに水が付着すると生育に悪影響を受ける植物もある。この点、排水管5を通じて注水できる上記容器1は、葉などに水が付着することを防ぎつつ注水することができる。
【0017】
注水後、図4(b)に示すように、排出管5が斜めになるように上記植生用容器1を傾けることにより、容器本体3の底面部32に溜まった余分な水を、水抜き穴2から排出管5の上端排出口52を通じて、簡単に排出することができる。
従って、多量に注水しても、余分な水を簡単に排出することができるので、植物の根腐れを防止できる。従来の水抜き穴植木鉢では、注水時、水は下降して水抜き穴から流れ出る。従って、従来の水抜き穴植木鉢の用土全体に水を保水させるには多量の水を必要とする。この点、本発明の植生用容器1では注水時に充填された用土10よりも少ない水量(例えば、該用土の約1/2の水量)で用土10や植物の根に水を行き渡せることもできる。このように全体に水を行き渡らせた後、排水管5を通じて余分な水を排水することにより、植物の生育に有害となる植物の根からでる根酸や微生物や細菌類から生じた腐敗物などを確実に外部へと排出することができる。これにより、用土10の酸性化腐敗防止や連作障害防止の効果があり、用土10のPh調整を行うことができる。また、従来の水抜き穴植木鉢に比して、外部へ排出される水量が少ないため、用土養分・肥料の外部への流出防止にも効果がある。また、少量注水で良いため、注水作業の効率化や節水効果もある。
また、注水直後に用土10に保持されていた水分が時間の経過に従って下降しても、その水分は、外部に排出されずに容器本体3内に存在するため、用土10が早期に乾燥することを防止できる。
【0018】
さらに、容器本体3の底面部32上には、空洞部61を有する多孔質セラミック成形体6が収納されているので、容器本体3内に於いて、空洞部61に起因する大きな空間が確保される。この多孔質セラミック成形体6は気体が通過可能な多孔質体からなるので、容器本体3に設けられた排出管5と相乗して、容器本体3内に於いて空気の対流が生じ、酸素供給によって、植物の根を活性化することができる。
また、該多孔質セラミック成形体6は、その気孔内に水を保持することができるため、用土の余分な水分を吸収し、一方、乾燥し始めた用土10へ水分を供給する吸放水材としての作用も有する。
【0019】
また、多孔質セラミック成形体6は、容器本体3の周壁部31との間に間隙7を確保した状態で収納されているので、この間隙7に植物の根が入り込み、多孔質セラミック成形体6の周壁面を取り囲むように根が伸びる。従って、植物の根が、多孔質セラミック成形体6を中心にして略均等に張り巡らされ、該植物の水や養分の吸収性が向上する他、風雨などを受けても倒れにくく、自立性に優れた植物を育てることができる。
【0020】
次に、本発明の変形例を示す。但し、下記変形例の説明では、上記各実施形態と異なる部分について主として説明し、同様の構成についてはその説明を省略し、用語及び図番を援用することがある。
上記実施形態では、排出管5は、その上端排出口52が容器本体3の上端部と略同じレベルに位置するように立ち上げられているが、例えば、図5(a)に示すように、排出管5の上端排出口52が、容器本体3の上端部の近傍下位置に立ち上げられている態様でもよい。また、図5(b)に示すように、排出管5の上端排出口52が、容器本体3の中途位置に立ち上げられている態様などでもよく、又、特に図示しないが、排出管5の上端排出口52が、容器本体3の上端部よりも上方へ立ち上げられている態様などでもよい。
但し、排出管5の立ち上げ長さを低くし過ぎると、注水量が十分でないにも拘らず上端排出口52から水が漏れ出る虞があるため、排出管5の上端排出口52は、容器本体3の上端部以上の高さ又は容器本体3の上端部の近傍にまで立ち上げられていることが好ましい。
【0021】
また、上記実施形態では、排出管5は、容器本体1と一体的に形成されているが、排出管5と容器本体1を別体で作製し、接着などして両者を組立ててもよい。さらに、排水管5を可僥性のある部材で形成し、容器本体1に対し可動するように設けられてもよい。このような排出管5として簡便なものは、塩化ビニルなどの合成樹脂製の可撓性の管を用い、該管の一端部を容器本体3の水抜き穴2へ接続し、且つ他端部を容器本体1の上方へ立ち上げ、容器本体1に係止しておいても本発明と同様の効果を奏する。尚、このような可撓性のある管を排出管5として用いれば、容器1を傾けなくても該管のみを下げるだけで、余分な水を排出することができる。
さらに、上記実施形態では、水抜き穴2は、周壁部31の下端部に形成されているが、例えば、図6に示すように、容器本体3の底面部32に水抜き穴2を形成してもよい。
【0022】
さらに、図7に示すように、上記実施形態で例示した多孔質セラミック成形体6に、通気管8を植設するとより好ましい。この通気管8は、多孔質セラミック成形体6の外部から空洞部61へ通じて設けられる。通気管8は、例えば硬質合成樹脂などのチューブ体などで形成され、1本でも良いが、複数本設けることが好ましく、通気管8は一端部が空洞部61内に通じるように設けられており、その他端部は、図8に示すように、用土10の表面から外部に露出する程度に延設されていることが好ましい。また、通気管8の他端部が上方へ向くように設けることがより好ましい。通気管8の他端部が上方へ向くようにするには、図示したように、通気管8を湾曲させる、或いは、多孔質セラミック成形体6の上面部に直線状の通気管8を植設すればよい。
このように多孔質セラミック成形体6に、空洞部61に連通する通気管8が植設されていることにより、空洞部61内の空気が多孔質セラミック成形体6外へと流れ易くなる。従って、通気管8の設けられていない上記多孔質セラミック成形体6に比して、外部から空洞部61に空気が出入りし、その結果、容器本体3内での空気の対流が大きくなって、植物の根をより活性化することができる。
【0023】
また、図9に示すように、容器本体3の周壁部31の上端に、内側に突出した板状の突出壁部35を形成してもよい。この突出壁部35は、排出管5の上端排出口52に対応する周壁部31に少なくとも設けられていればよい。特に、図10に示すように、周壁部31の上端内周全体から内側に突出した鍔状(リング状)の突出壁部35を形成することが好ましい。
このように排出管5の上端排出口52に対応する周壁部31の上端に、内側に突出した突出壁部35を形成することにより、植生用容器1を傾けて排出管5から水を排出する際、用土10が流れ出ることを防止できる。また、かかる突出壁部35(特に、周壁部31の内周全体に形成された突出壁部35)を設けることにより、容器本体3の上面開口面積が小さくなるので、用土10表面の露出面積を狭くすることができる。従って、用土10表面からの水分の蒸発を抑制することができ、頻繁に注水しなくても植物を良好に生育させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
周壁上端内周に鍔状の突出壁部が形成された容器本体の周壁外面に排出管が設けられ、この排出管は、その下端部が容器本体の周壁下端部に形成された水抜き穴に繋がり、且つその上端部が容器本体の上端部と略同じレベルに位置されている容器を使用した(図10に示すものと略同構成)。
この容器は、上面開口部(鍔状の突出壁部の先端縁によって囲われる部分。但し、突出壁部の内側への突出長約5mm)の直径Lが約30mm、容積約110cm、且つ排出管の直径が約3mmであり、磁器製のものを使用した。
この容器の底面中央部に、多孔質セラミック成形体を入れた。多孔質セラミック成形体は、図3に示す形状と略同構成のもので、その外形が直径約25mm、高さ約30mmの円柱状の内部に、直径約12mm、高さ約20mmの円柱状の空洞部が形成されたものを用いた。この多孔質セラミック成形体は、耐火物用粘土とおがくずの混合物を約1,300℃で焼成して得られたもので、おがくず部分が微細な連通気孔となったものである。
上記多孔質セラミック成形体が入れられた容器内に、用土(ピートモス主体)を充填することにより、実施例1の植生容器を準備した。
【0025】
(実施例2)
容器として、上面開口部(同上)の直径Lが約40mm、容積約180cmで、且つ排出管の直径約4mmの容器を使用し、外形の直径約30mm、高さ約35mmの円柱状の内部に直径約18mm、高さ約25mmの空洞部が形成された多孔質セラミック成形体を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の植生容器を準備した。
【0026】
(実施例3)
容器として、上面開口部(同上)の直径Lが約60mm、容積370cmで、且つ排出管の直径約6mmの容器を使用し、外形の直径約50mm、高さ約30mmの円柱状の内部に直径約40mm、高さ約20mmの空洞部が形成された多孔質セラミック成形体を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の植生容器を準備した。
【0027】
(試験例)
上記実施例1〜3の植生容器の上面開口部に、セントポーリア苗(3.0cmのプラグ苗)をそれぞれ植え付けた。
実施例1〜3の植生容器に、排出管を通じて、上面開口部に露出する用土表面から水が滲み出してくるまで水を入れた後、数分間静置させ、容器を傾けることにより、排出管から自然に排出される余分な水を容器外へと排出した。
注水後の上記実施例1〜3の植生容器を、北向きの窓辺に載置し、セントポーリアの生育状況などを観察した。
【0028】
実施例1〜3の植生容器は、初日の注水後、18日間、全く水を与えなくても、セントポーリアは萎れることなく、良好に生育していた。
また、初日から18日間に亘って実施例1〜3の水分蒸発量を測定したところ、実施例1では、18日間の総蒸発量26cm(平均約1.4cm/日)、実施例2では、同蒸発量37cm(平均約2.1cm/日)、実施例3では、同蒸発量67cm(平均約3.7cm/日)であった。尚、この総蒸発量は、便宜上、下記の式から求めた。
総蒸発量=(初日に於いて排出管から排水した後の容器全体の重量)−(第18日目の容器全体の重量)。
【0029】
第18日目以降、約8ヶ月間に亘って、セントポーリアの生育観察を行った。尚、その間、セントポーリアの葉が萎れ出した日に注水を行った。その注水頻度は、実施例1が、約3週間毎に1回、実施例2が、約4週間毎に1回、実施例3が、約4週間毎に1回のペースであった。また、実施例1〜3について、約6週間に1回ずつ、市販の液肥を少量を滴下した。
【0030】
実施例1〜3の植生容器では、所定時期も開花し、8ヶ月間を通じてセントポーリアが良好に生育した。
実施例1〜3の植生容器では、注水後、余分な水は外部に排出されるので、容器内が過湿にならず、これにより根腐れなどが防止される。また、長期間に亘って注水しなくてもよいことから、用土は、適度な保水状態を維持していることがわかる。また、同植生容器について、水分平均蒸発量(1日当たり)が比較的少ないにも拘らず、セントポーリアが良好に生育しているから、植生容器内では空気が対流し、セントポーリアの根に適度な酸素が供給されているものと推察される。
【0031】
従って、本発明の植生用容器によれば、1)漏水受けのための受け皿を必要とせず清潔感がある、2)一度の注水作業で用土全体に保水させることができる、3)通気性機能が働き容器内が過湿にならない、つまり、容器内の水分と通気の良いバランス状態が持続しているので植物の根の発達が促進される、4)容器内に十分に水分を行き渡らせる注水をした後、余分な水分を排水することで、植物の根からでる酸化物や腐敗を容器の外に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】植生用容器の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線縦断面図。
【図3】多孔質セラミック成形体の一実施形態を示し、(a)は、上面図、(b)は、その正面図、(c)は、同B−B線縦断面図。
【図4】(a)、(b)共に、植生用容器の使用例を示す縦断面図。
【図5】(a)、(b)共に、植生用容器の変形例を示す縦断面図。
【図6】植生用容器の変形例を示す縦断面図。
【図7】多孔質セラミック成形体の一実施形態を示し、(a)は、上面図、(b)は、同C−C線縦断面図(但し、通気管の一部を省略している)。
【図8】図7の多孔質セラミック成形体が収納された植生用容器の他実施形態を示す縦断面図。
【図9】植生用容器の他実施形態を示し、(a)は、斜視図、(b)は、同D−D線縦断面図。
【図10】植生用容器の他実施形態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
1…植生用容器、2…水抜き穴、3…容器本体、31…周壁部、32…底面部、35…突出壁部、5…排出管、51…下端排出口、52…上端排出口、53…通路、6…多孔質セラミック成形体、61…空洞部、7…間隙、8…通気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽用土を入れる容器本体の底部に、水抜き穴が設けられた植生用容器に於いて、
前記水抜き穴に連通して排出管が設けられており、前記排出管が、上方に向けて立ち上げられていることを特徴とする植生用容器。
【請求項2】
前記排出管が、容器本体の周壁部と一体的に形成されており、排出管の上端排出口が、容器本体の上端部と同レベル又は容器本体の上端部の近傍にまで立ち上げられている請求項1記載の植生用容器。
【請求項3】
前記容器本体内に、内部に空洞部が形成された中空状の多孔質セラミック成形体が収納されている請求項1又は2記載の植生用容器。
【請求項4】
前記多孔質セラミック成形体には、前記空洞部に通じる通気管が植設されている請求項3記載の植生用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−89454(P2007−89454A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282370(P2005−282370)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(395003143)
【Fターム(参考)】