椎間板プロテーゼ
【課題】プロテーゼの様々な部品相互間の限定された移動を可能にし、プロテーゼの移動を少なくとも一方向に制限するために使用されるコアを備える椎間板プロテーゼを提供する。
【解決手段】上側プレート1と、下側プレート2と、少なくとも下側プレート2に対する可動コア3とを含む少なくとも3つの部品を備える椎間板プロテーゼであって、協働手段23、33は、下側プレート2に実質的に平行な軸まわりおよび下側プレート2に実質的に垂直な軸まわりの、下側プレート2に対するコア3の並進および回転運動のそれぞれを制限しまたは無くし、少なくとも1つのプレートの表面の少なくとも一部は、曲面であり、かつプレートが接触しているコア3の曲面表面と相補的であり、コア3の曲面表面の頂部は、この曲面表面の中心に対して少なくとも一方向に中心がずれている。
【解決手段】上側プレート1と、下側プレート2と、少なくとも下側プレート2に対する可動コア3とを含む少なくとも3つの部品を備える椎間板プロテーゼであって、協働手段23、33は、下側プレート2に実質的に平行な軸まわりおよび下側プレート2に実質的に垂直な軸まわりの、下側プレート2に対するコア3の並進および回転運動のそれぞれを制限しまたは無くし、少なくとも1つのプレートの表面の少なくとも一部は、曲面であり、かつプレートが接触しているコア3の曲面表面と相補的であり、コア3の曲面表面の頂部は、この曲面表面の中心に対して少なくとも一方向に中心がずれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維軟骨板の代用として用いて脊柱の脊椎間を確実に結合することを目的とする、椎間板プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、様々な種類の椎間板プロテーゼが知られている。例えば仏国特許出願第2846550号明細書および国際公開第02089701号パンフレットにおけるような多くのプロテーゼは、中心コアまわりに一種のケージを形成する下側プレートおよび上側プレートに構成されている。これらプロテーゼの一部は、上側プレートを中心コアに対して旋回させることができ、随意には中心コアを下側プレートに対してスライドさせることができる。このように中心コアを下側プレートに対してスライドさせることは、これによりコアの理想位置への自発的な位置決定を可能にして、プロテーゼを装着した患者が運動する間における、プロテーゼに課される圧迫を緩和する必要があるときの基本的な特性である。不均一な表面まわりの少なくともプレートと協働するコアの変位により、プロテーゼのプレート間の傾斜を可能にし、プロテーゼを装着する患者の移動性を容易にする。コアの変位は、また、大きな圧迫を受けたときのクリープの発生を防止する。
【0003】
これに関して、プレート間に恒久的傾斜を生成し、例えば脊柱前弯をもたらすことができるプロテーゼを提供することが重要である。プロテーゼを装着する患者の脊柱の障害に応じて、プロテーゼがこの障害の補正を可能にすることが、好ましい場合もある。外科医の要望に従って、コアの変位は、少なくとも一方向に制限されるべきである。ただし、患者が運動するとき、プロテーゼの構成要素の相対位置は、許容範囲の変位内で変化してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願第2846550号明細書
【特許文献2】国際公開第02089701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態の1つの目的は、プロテーゼの様々な部品相互間の限定された移動を可能にし、プロテーゼの移動を少なくとも一方向に制限するために使用されるコアを備える、椎間板プロテーゼを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
椎間板プロテーゼは、第1のプレートと、第2のプレートと、第1および第2のプレートの少なくとも1つに対して少なくとも回転する可動のコアとを含む、少なくとも3つの部品を備える。コアは、第1のプレートの相補的曲面表面の少なくとも一部に接触する曲面表面と、第2のプレートおよびコアの周辺部近くに置かれた第2のオスおよびメス型協働手段の、実質的に平坦な少なくとも一部に接触する実質的に平坦な表面とを有する。協働手段は、実質的に平坦な表面に実質的に平行な軸に沿って、コアが第2のプレートに対して並進することを制限または防止することを可能にし、また実質的に平坦な表面に実質的に垂直な軸まわりに、コアが第2のプレートに対して回転運動することを制限または防止することを可能にする。コアの曲面表面の頂部は、コアのこの曲面表面の幾何的中心に対して少なくとも一方向に中心がずれている。
【0007】
別の実施形態によれば、患者が運動しないときのコアの静止位置は、コアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向に移動する。この理由は、プレートが脊椎に固定されたときに、第1および第2のプレートの対称軸が整列することと、コアの曲面表面に相補的な第1のプレートの曲面表面が、プレートの対称軸をコアの曲面表面の中心のずれた頂部に整列させ、これにより、コアをコアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向に移動させることとによる。この結果、コアにある協働手段が結合するようになり、第2のプレートにおいて、この結合がコアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向にコアが変位するのを制限する。
【0008】
別の実施形態によれば、同じプレートが、異なるコアと組み合わされることができる。コア間の差は、コアのこの曲面表面の中心に対するそれらコアの曲面表面の頂部の位置の差である。
【0009】
別の実施形態によれば、同じコアは、異なるプレートと組み合わされることができる。プレート間の差は、プレートの上側面と下側面を表す中心平面間の角度の差である。
【0010】
別の実施形態によれば、上側プレートの上側面と第2のプレートの下側面との間の角度は、第2のプレートおよび/または第1のプレートの上側面と下側面を表す中心平面が、角度を生成することによるか、または協働手段によって、プレートの少なくとも1つに傾斜を課す位置のまわりのコアの移動を限定することによるか、のいずれかにより課されることができる。
【0011】
別の実施形態によれば、同じプレートは、様々な厚みおよび/またはサイズのコアと組み合わされることができる。
【0012】
別の実施形態によれば、コアの曲面表面は、コアの凸形上側面であり、第1のプレートの曲面表面は、上側プレートの下側面の凹形部分である。
【0013】
別の実施形態によれば、各オス型協働手段の寸法を、各メス型協働手段の寸法よりわずかに小さくすることにより、コアと第2のプレートとの間に小さい間隙を形成する。
【0014】
別の実施形態によれば、各オス型手段の寸法を、各メス型手段の寸法と実質的に同一とすることにより、コアと第2のプレートとの間のあらゆる間隙をなくしている。
【0015】
別の実施形態によれば、コアは、ポリエチレンで形成される。
【0016】
別の実施形態によれば、第1および第2のプレートは、金属で形成される。
【0017】
別の実施形態によれば、第2のプレートは、コアのオス型手段と協働するメス型手段を備える。
【0018】
別の実施形態によれば、コアのオス型手段は、コアの2つの側端上に配置された2つの接触プレートであり、第2のプレートのメス型手段は、第2のプレートの2つの側方向端それぞれに対で配置された4つの壁面である。
【0019】
別の実施形態によれば、第2のプレートのメス型協働手段を形成する壁面は、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コアのオス型手段の少なくとも一部を覆い、コアが持ち上げるのを防止する。
【0020】
別の実施形態によれば、第2のプレートは、コアのメス型手段と協働するオス型手段を備える。
【0021】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの両端上の相互に対向する2つの接触プレートであり、コアのメス型手段は、2つの凹所である。
【0022】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの両端近くで相互に対向する2つの壁面であり、コアのメス型手段は凹所である。
【0023】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの内側方向に曲がり、かつプロテーゼの両端上の相互に対向する2つのニブであり、コアのメス型手段は2つの凹所である。
【0024】
別の実施形態によれば、ニブの少なくとも1つは、開口に収まる接触プレートに置き換えられ、この接触プレート上に、開口を貫通するピンによってラグを固定する。
【0025】
別の実施形態によれば、第1のプレートは、上側面の少なくとも一部が隆起しており、脊椎の形状に適合している。
【0026】
様々な実施形態の他の特徴および利点は、添付図面を参照した以下の説明において示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の一実施形態によるプロテーゼのコアの側面図である。
【図1B】本発明の一実施形態によるプロテーゼのコアの上面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態におけるプロテーゼの正面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態におけるプロテーゼの側面図である。
【図2C】本発明の第2の実施形態におけるプロテーゼの正面斜視図である。
【図2D】本発明の第2の実施形態におけるプロテーゼの側面図である。
【図3A】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの下側プレートの上面図である。
【図3B】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの下側プレートの、図3Aの平面A−Aで切断した断面図である。
【図3C】コアを有する下側プレートの上面図である。
【図3D】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの上側プレートの上面図である。
【図3E】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの上側プレートの、図3Dの平面B−Bで切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態による椎間板プロテーゼは、図2Aから図2Dで詳細に明らかなとおり、コア(3)によって第2のプレート(2)に対して関節式に結合された第1のプレート(1)として構成されている。以下の説明において、図に示されるプロテーゼに与えられる方向に従って、第1のプレート(1)は上側プレートと称され、第2のプレート(2)は下側プレートと称される。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されるプロテーゼは、脊椎間で逆方向に向けることもでき、その結果、第1のプレート(1)が下側プレートとなり、第2のプレート(2)が上側プレートとなってもよい。以下に述べるとおり、第1のプレートは、中心部の曲面状の相補的表面(凸形または凹形)と協働する曲面表面(凹形または凸形)を備え、第2プレートは、中心部の実質的に平坦な表面と協働する実質的に平坦な表面を備える。ここで記載されるこれらの様々な表面は、本発明の範囲から逸脱することなく、プロテーゼの第1および第2のプレートのいずれにも属することができる。
【0029】
本発明のこの実施形態によるプロテーゼの利点は、脊柱のそれぞれの脊椎に適合する寸法にできる単純な部品を備えることである。
【0030】
コア(3)の厚みは薄い(プロテーゼを間に挿入する脊椎に応じて、3mmから15mm)。圧迫を良好に吸収するために、コア(3)は、例えばポリエチレンなどの、本来の椎間板の弾性の物理特性に類似の圧縮性材料から形成されることができる。
【0031】
好ましくは、コア(3)は、その上側面および下側面の少なくとも1つの少なくとも一部上に凸形部分(30)を有する。好ましくは、コア(3)は、さらに、プレート(1、2)の少なくとも1つの上にあるメス型またはオス型協働手段(23)とそれぞれ相補的なオス型またはメス型協働手段(33)を有する。
【0032】
次に、図1A、図1Bから図3A〜図3Eを参照して、これら実施形態の1つを説明する。この実施形態においては、図1Aで特に明らかなとおり、コア(3)の上側面は凸形部分(30)を有する。コア(3)のこの凸形表面(30)は、図3Dおよび図3Eに特に明らかなとおり、上側プレート(1)の凹形部分(10)と相補的である。この凹形部分(10)により、プロテーゼを装着した患者が体を曲げたとき、上側プレート(1)を傾斜させることができる。コア(3)の下側面および下側プレート(2)の上側面を平面として、下側プレート(2)に実質的に平行な軸に沿う並進、および下側プレート(2)に実質的に垂直な軸まわりの回転の両方における、コア(3)の下側プレート(2)に対する間隙を生成できる。プロテーゼを装着した患者が運動する間、この上側プレート(1)の傾斜およびコアの間隙により、理想位置方向へのコア(3)の変位が可能になり、プロテーゼに加えられる圧迫を吸収できる。このように、上側プレート(1)とコア(3)間との運動、ならびに下側プレート(2)に対するコア(3)の間隙により、患者の移動を可能にし、随意には、プロテーゼの位置合わせの不具合を無くすることができる。同様に、この間隙は、プロテーゼに加えられる圧迫に起因する早期磨耗を防止する利点を有する。
【0033】
いくつかの実施形態による椎間板プロテーゼは、例えば脊柱前弯の不具合を矯正できる。プロテーゼの上側プレート(1)と下側プレート(2)との間に角度が存在することは望ましい。このような角度は、プレートの下側面および上側面を表すその中心平面が角度を生じる、上側プレートによって得られる。別の可能性としては、図2Cおよび図2Dに示されるとおり、プレートの下側面および上側面を表すその中心平面が角度を生じる、下側プレートを含み、この場合、下側プレート(2)の下側面(20)が、その上側面と角度を生じる。このような角度を得るための別の可能性は、本発明の好ましい実施形態のプロテーゼと同一種類のプロテーゼによってのみ可能になり、プロテーゼの中心に対してコアの位置をわずかに偏らせることにある。コアのこのわずかに偏る位置は、例えば、オス型およびメス型協働手段の位置をそれらの間で調整可能にすることにより維持されることができる。外科医が、例えば、プロテーゼがある範囲の値以内の脊柱前弯を誘発することを望む場合、外科医は、コア(3)が、下側プレート(2)に対して並進および回転運動ではわずかな間隙を有するが、位置については、コアと下側プレート(2)との間で協働手段を正確に調整することにより、プレートの少なくとも1つのわずかな恒久的な傾斜を課す、プロテーゼを選択する。
【0034】
好ましい実施形態によるプロテーゼは、患者の脊椎間に正しい位置に置かれると、その挙動を改良する特性を有する。この特徴は、コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)、すなわちこの曲面表面の最高点(31)(側面図における)が、コア(3)の曲面表面(30)の幾何中心(32)に対して、すなわち曲面表面の周辺部におけるあらゆる点から等距離の点(32)(上面図における)、またはコア(3)の対称の縦軸および横軸の交点に対して、中心がずれている。図示された例において、コア(3)の曲面表面(30)は凸形であり、第1のプレートの曲面表面は、上側プレート(1)の下側面の凹形部分(10)であるが、本発明のプロテーゼの様々な構成要素を配置変更して、凸形表面がプレートの1つにあり、凹形表面がコアにあるようにすることができるのは明らかである。この凸形表面(30)と相補的な上側プレート(1)の凹形部分(10)の中心は、凸形表面(30)のこの頂部(31)まわりに旋回する。この頂部(31)まわりに可動であるが、これにより、上側プレート(1)は、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)に平均中心を置く。2つの隣接した脊椎の中心を通る垂直軸は、患者の運動に応じて、または脊柱の問題となるゾーンに応じてわずかに傾斜することがあるとしても、実質的に整列している。したがって、プレート(1、2)の中心およびコアの凸形表面(30)の頂部(31)を通る垂直軸も整列していることが重要である。これらの軸が整列するためには、コア(3)の凸形表面(30)の中心のずれた頂部(31)が、プレートの中心、したがって下側プレート(2)に対して中心のずれているコア(3)の中心の、軸内になければならない。このように、コア(3)の静止位置は、プロテーゼの中心に対して中心がずれている。上側プレート(1)が明瞭化の理由で図示されていない図3Cに示されるとおり、コアは、プロテーゼの中心に対して中心がずれており、コア(3)の協働手段(33)は、点線で囲まれたゾーン内で下側プレート(2)の協働手段(23)と接触している。図2Bは、プロテーゼの中心の側面図に対するコア(3)のこの移動を強調して示す。コア(3)の移動、ならびに協働手段(33)と下側プレート(23)の協働手段との間の接触は、また、凸形表面(30)の頂部(31)の中心のずれた方向と反対方向へのコア(3)の移動を制限する。次に、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)の移動の方向および大きさを選択することにより、移動の所望の減少を達成できる。次に、コア(3)を、例えば、コア(3)の凸形表面(30)の中心(32)に対して、頂部(31)の移動方向にだけ移動できる。この実施形態によるプロテーゼを装着した患者が、頂部(31)のこの移動と反対方向に体を曲げたとき、コア(3)は、頂部(31)のこの移動の方向に動くことができ、これにより、プレートの中心を通る垂直軸間の移動を減少でき、これは、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)が中心からずれていない場合に発生する。したがって、この形態の重要な結果は、患者が体を曲げたときであっても、脊椎の中心を通る垂直軸間の移動を恒久的に制限できることである。例えば、凸形表面(30)の頂部(31)が後方向に中心のずれているコア(3)を選択することにより、静止位置において、コア(3)が、プロテーゼの前方向に完全に中心がずれ、前方にさらに移動できないようにすることができる。したがって、このようなコアは、コアの前方への移動を制限し、患者が後方に体を曲げることができる角度を減少させる。ただし、患者が前方に体を曲げる場合、上側プレート(1)は前方に傾斜し、これにより、下側プレート(2)の中心を通る垂直軸に対するプレートの中心を通る垂直軸の移動を発生させる。しかし、この移動は、プロテーゼの後方へのコア(3)の移動により除去される。この移動は、上側プレートがコア(3)の凸形表面(30)の中心のずれた頂部(31)まわりに移動するとき、より良好に除去される。次に、中心のずれた頂部(31)を有するコア(3)が、プロテーゼの開口の背面に押し込まれ、中心のずれた頂部を有するコアに比べて、プレートの中心を通る垂直軸の正確な整列を可能にする。
【0035】
いくつかの実施形態の別の利点は、移植患者の脊椎間にプロテーゼを植え込むことに関する。可動コアを有するプロテーゼを植え込む間、プロテーゼのコアは、プロテーゼの開口内の移動範囲の遠端に移動する傾向にある。このように、患者は、脊柱に対してわずかに傾斜させたプロテーゼを装着される。この傾斜は、患者が手術から回復すると直ぐに患者が運動することにより取り除かれることができる。しかし、この傾斜は、患者の著しい不快感を引き起こす。好ましい実施形態によるプロテーゼのコア(3)の頂部(31)の中心位置がずれているために、コア(3)は、中心のずれた静止位置に移動する傾向となり、頂部(31)が、上側および下側プレートの軸に対して整列される。プロテーゼの軸のこの自発的な整列によって、プレートの傾斜は、静止位置では発生せず、患者は、不快感を生じないプロテーゼを装着することになる。
【0036】
図1A、図1Bから図3A〜図3Eの実施形態においては、コア(3)は、下側プレート(2)上にあるメス型協働手段(23)と相補的なオス型協働手段(33)を有する。コア(3)のオス型協働手段(33)は、例えば、図1Aおよび図1Bで詳細に分かるとおり、実質的に平行六面体形状の掛金である。図3Aおよび図3Bで詳細に分かるとおり、メス型協働手段(23)は、例えば、下側プレート(2)の2つの側端それぞれに対で配置された4つの壁面である。これらの壁面は、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コア(3)のオス型協働手段(33)の少なくとも一部を覆い、コア(3)および上側プレート(1)が持ち上がるのを防止する。図1A、図1Bから図3A〜図3Eに示されるこの実施形態において、コア(3)の各オス型手段(33)の寸法を、下側プレート(2)の各メス型手段(23)の寸法よりわずかに小さくすることにより、下側プレート(2)に対するコア(3)の限定された間隙が、下側プレート(2)に実質的に平行な軸に沿った並進と、下側プレート(2)に実質的に垂直な軸まわりの回転との両方における、限定された間隙を可能にする。これらの協働手段(23、33)は、さらに、プロテーゼに過大な圧迫が掛かった場合に、コア(3)がプロテーゼから外れるのを防止する。
【0037】
図示されていない別の実施形態において、コア(3)の各オス型協働手段(33)の寸法を、下側プレート(2)の各メス型協働手段(23)の寸法と実質的に同一にすることにより、下側プレート(2)に対する、並進および回転の両方におけるコア(3)の間隙を無くする。回転の場合において、プロテーゼの許容される移動は、コア(3)に対する上側プレート(1)の移動だけである。
【0038】
図示されていない別の実施形態において、コア(3)はメス型協働手段を有し、このメス型協働手段は、例えば下側プレート(2)上にあるオス型協働手段の相補的な凹所である。下側プレート(2)のこれらオス型協働手段は、例えばプロテーゼの内側方向に曲がり、かつ下側プレート(2)の両端上で相互に対向する2つの接触プレートまたは2つのニブであってもよい。
【0039】
図示されていない別の実施形態において、下側プレート(2)はドエル(dowel)を有する。コア(3)は、相補の目的で、下側面に2つのウェル(well)を有する。下側プレート(2)のドエルの寸法およびコア(3)のウェルの寸法は、コアの並進および回転におけるわずかの間隙または任意の間隙の所望の結果に従って、選択により適合される。
【0040】
図示されていない別の実施形態において、上側プレート(1)の上側面の一部は隆起しており、これにより、プロテーゼを配置する脊椎の形状に優れた適合を示す。脊椎の下側面は中空である。このとき、上側プレート(1)の隆起部分は、上側プレートの前部分に位置する。下側プレート(2)は、脊椎の上側面が実質的に平坦であるため、下側面が隆起するまたは中空である必要がないときは実質的に平面である。
【0041】
当業者には当然明らかなように、本発明は、特許請求項に規定された本発明の出願の範囲から逸脱することなく、多数の他の特定形態の実施形態を可能にする。したがって、各実施形態は、例証と考えるべきであり、添付の特許請求の範囲で規定される範囲内で変更が可能であって、本発明は、上述の細部に限定されないものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維軟骨板の代用として用いて脊柱の脊椎間を確実に結合することを目的とする、椎間板プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、様々な種類の椎間板プロテーゼが知られている。例えば仏国特許出願第2846550号明細書および国際公開第02089701号パンフレットにおけるような多くのプロテーゼは、中心コアまわりに一種のケージを形成する下側プレートおよび上側プレートに構成されている。これらプロテーゼの一部は、上側プレートを中心コアに対して旋回させることができ、随意には中心コアを下側プレートに対してスライドさせることができる。このように中心コアを下側プレートに対してスライドさせることは、これによりコアの理想位置への自発的な位置決定を可能にして、プロテーゼを装着した患者が運動する間における、プロテーゼに課される圧迫を緩和する必要があるときの基本的な特性である。不均一な表面まわりの少なくともプレートと協働するコアの変位により、プロテーゼのプレート間の傾斜を可能にし、プロテーゼを装着する患者の移動性を容易にする。コアの変位は、また、大きな圧迫を受けたときのクリープの発生を防止する。
【0003】
これに関して、プレート間に恒久的傾斜を生成し、例えば脊柱前弯をもたらすことができるプロテーゼを提供することが重要である。プロテーゼを装着する患者の脊柱の障害に応じて、プロテーゼがこの障害の補正を可能にすることが、好ましい場合もある。外科医の要望に従って、コアの変位は、少なくとも一方向に制限されるべきである。ただし、患者が運動するとき、プロテーゼの構成要素の相対位置は、許容範囲の変位内で変化してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願第2846550号明細書
【特許文献2】国際公開第02089701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態の1つの目的は、プロテーゼの様々な部品相互間の限定された移動を可能にし、プロテーゼの移動を少なくとも一方向に制限するために使用されるコアを備える、椎間板プロテーゼを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
椎間板プロテーゼは、第1のプレートと、第2のプレートと、第1および第2のプレートの少なくとも1つに対して少なくとも回転する可動のコアとを含む、少なくとも3つの部品を備える。コアは、第1のプレートの相補的曲面表面の少なくとも一部に接触する曲面表面と、第2のプレートおよびコアの周辺部近くに置かれた第2のオスおよびメス型協働手段の、実質的に平坦な少なくとも一部に接触する実質的に平坦な表面とを有する。協働手段は、実質的に平坦な表面に実質的に平行な軸に沿って、コアが第2のプレートに対して並進することを制限または防止することを可能にし、また実質的に平坦な表面に実質的に垂直な軸まわりに、コアが第2のプレートに対して回転運動することを制限または防止することを可能にする。コアの曲面表面の頂部は、コアのこの曲面表面の幾何的中心に対して少なくとも一方向に中心がずれている。
【0007】
別の実施形態によれば、患者が運動しないときのコアの静止位置は、コアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向に移動する。この理由は、プレートが脊椎に固定されたときに、第1および第2のプレートの対称軸が整列することと、コアの曲面表面に相補的な第1のプレートの曲面表面が、プレートの対称軸をコアの曲面表面の中心のずれた頂部に整列させ、これにより、コアをコアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向に移動させることとによる。この結果、コアにある協働手段が結合するようになり、第2のプレートにおいて、この結合がコアの曲面表面の頂部の中心ずれの方向と反対方向にコアが変位するのを制限する。
【0008】
別の実施形態によれば、同じプレートが、異なるコアと組み合わされることができる。コア間の差は、コアのこの曲面表面の中心に対するそれらコアの曲面表面の頂部の位置の差である。
【0009】
別の実施形態によれば、同じコアは、異なるプレートと組み合わされることができる。プレート間の差は、プレートの上側面と下側面を表す中心平面間の角度の差である。
【0010】
別の実施形態によれば、上側プレートの上側面と第2のプレートの下側面との間の角度は、第2のプレートおよび/または第1のプレートの上側面と下側面を表す中心平面が、角度を生成することによるか、または協働手段によって、プレートの少なくとも1つに傾斜を課す位置のまわりのコアの移動を限定することによるか、のいずれかにより課されることができる。
【0011】
別の実施形態によれば、同じプレートは、様々な厚みおよび/またはサイズのコアと組み合わされることができる。
【0012】
別の実施形態によれば、コアの曲面表面は、コアの凸形上側面であり、第1のプレートの曲面表面は、上側プレートの下側面の凹形部分である。
【0013】
別の実施形態によれば、各オス型協働手段の寸法を、各メス型協働手段の寸法よりわずかに小さくすることにより、コアと第2のプレートとの間に小さい間隙を形成する。
【0014】
別の実施形態によれば、各オス型手段の寸法を、各メス型手段の寸法と実質的に同一とすることにより、コアと第2のプレートとの間のあらゆる間隙をなくしている。
【0015】
別の実施形態によれば、コアは、ポリエチレンで形成される。
【0016】
別の実施形態によれば、第1および第2のプレートは、金属で形成される。
【0017】
別の実施形態によれば、第2のプレートは、コアのオス型手段と協働するメス型手段を備える。
【0018】
別の実施形態によれば、コアのオス型手段は、コアの2つの側端上に配置された2つの接触プレートであり、第2のプレートのメス型手段は、第2のプレートの2つの側方向端それぞれに対で配置された4つの壁面である。
【0019】
別の実施形態によれば、第2のプレートのメス型協働手段を形成する壁面は、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コアのオス型手段の少なくとも一部を覆い、コアが持ち上げるのを防止する。
【0020】
別の実施形態によれば、第2のプレートは、コアのメス型手段と協働するオス型手段を備える。
【0021】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの両端上の相互に対向する2つの接触プレートであり、コアのメス型手段は、2つの凹所である。
【0022】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの両端近くで相互に対向する2つの壁面であり、コアのメス型手段は凹所である。
【0023】
別の実施形態によれば、第2のプレートのオス型手段は、プロテーゼの内側方向に曲がり、かつプロテーゼの両端上の相互に対向する2つのニブであり、コアのメス型手段は2つの凹所である。
【0024】
別の実施形態によれば、ニブの少なくとも1つは、開口に収まる接触プレートに置き換えられ、この接触プレート上に、開口を貫通するピンによってラグを固定する。
【0025】
別の実施形態によれば、第1のプレートは、上側面の少なくとも一部が隆起しており、脊椎の形状に適合している。
【0026】
様々な実施形態の他の特徴および利点は、添付図面を参照した以下の説明において示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の一実施形態によるプロテーゼのコアの側面図である。
【図1B】本発明の一実施形態によるプロテーゼのコアの上面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態におけるプロテーゼの正面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態におけるプロテーゼの側面図である。
【図2C】本発明の第2の実施形態におけるプロテーゼの正面斜視図である。
【図2D】本発明の第2の実施形態におけるプロテーゼの側面図である。
【図3A】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの下側プレートの上面図である。
【図3B】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの下側プレートの、図3Aの平面A−Aで切断した断面図である。
【図3C】コアを有する下側プレートの上面図である。
【図3D】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの上側プレートの上面図である。
【図3E】本発明の一実施形態におけるプロテーゼの上側プレートの、図3Dの平面B−Bで切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態による椎間板プロテーゼは、図2Aから図2Dで詳細に明らかなとおり、コア(3)によって第2のプレート(2)に対して関節式に結合された第1のプレート(1)として構成されている。以下の説明において、図に示されるプロテーゼに与えられる方向に従って、第1のプレート(1)は上側プレートと称され、第2のプレート(2)は下側プレートと称される。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されるプロテーゼは、脊椎間で逆方向に向けることもでき、その結果、第1のプレート(1)が下側プレートとなり、第2のプレート(2)が上側プレートとなってもよい。以下に述べるとおり、第1のプレートは、中心部の曲面状の相補的表面(凸形または凹形)と協働する曲面表面(凹形または凸形)を備え、第2プレートは、中心部の実質的に平坦な表面と協働する実質的に平坦な表面を備える。ここで記載されるこれらの様々な表面は、本発明の範囲から逸脱することなく、プロテーゼの第1および第2のプレートのいずれにも属することができる。
【0029】
本発明のこの実施形態によるプロテーゼの利点は、脊柱のそれぞれの脊椎に適合する寸法にできる単純な部品を備えることである。
【0030】
コア(3)の厚みは薄い(プロテーゼを間に挿入する脊椎に応じて、3mmから15mm)。圧迫を良好に吸収するために、コア(3)は、例えばポリエチレンなどの、本来の椎間板の弾性の物理特性に類似の圧縮性材料から形成されることができる。
【0031】
好ましくは、コア(3)は、その上側面および下側面の少なくとも1つの少なくとも一部上に凸形部分(30)を有する。好ましくは、コア(3)は、さらに、プレート(1、2)の少なくとも1つの上にあるメス型またはオス型協働手段(23)とそれぞれ相補的なオス型またはメス型協働手段(33)を有する。
【0032】
次に、図1A、図1Bから図3A〜図3Eを参照して、これら実施形態の1つを説明する。この実施形態においては、図1Aで特に明らかなとおり、コア(3)の上側面は凸形部分(30)を有する。コア(3)のこの凸形表面(30)は、図3Dおよび図3Eに特に明らかなとおり、上側プレート(1)の凹形部分(10)と相補的である。この凹形部分(10)により、プロテーゼを装着した患者が体を曲げたとき、上側プレート(1)を傾斜させることができる。コア(3)の下側面および下側プレート(2)の上側面を平面として、下側プレート(2)に実質的に平行な軸に沿う並進、および下側プレート(2)に実質的に垂直な軸まわりの回転の両方における、コア(3)の下側プレート(2)に対する間隙を生成できる。プロテーゼを装着した患者が運動する間、この上側プレート(1)の傾斜およびコアの間隙により、理想位置方向へのコア(3)の変位が可能になり、プロテーゼに加えられる圧迫を吸収できる。このように、上側プレート(1)とコア(3)間との運動、ならびに下側プレート(2)に対するコア(3)の間隙により、患者の移動を可能にし、随意には、プロテーゼの位置合わせの不具合を無くすることができる。同様に、この間隙は、プロテーゼに加えられる圧迫に起因する早期磨耗を防止する利点を有する。
【0033】
いくつかの実施形態による椎間板プロテーゼは、例えば脊柱前弯の不具合を矯正できる。プロテーゼの上側プレート(1)と下側プレート(2)との間に角度が存在することは望ましい。このような角度は、プレートの下側面および上側面を表すその中心平面が角度を生じる、上側プレートによって得られる。別の可能性としては、図2Cおよび図2Dに示されるとおり、プレートの下側面および上側面を表すその中心平面が角度を生じる、下側プレートを含み、この場合、下側プレート(2)の下側面(20)が、その上側面と角度を生じる。このような角度を得るための別の可能性は、本発明の好ましい実施形態のプロテーゼと同一種類のプロテーゼによってのみ可能になり、プロテーゼの中心に対してコアの位置をわずかに偏らせることにある。コアのこのわずかに偏る位置は、例えば、オス型およびメス型協働手段の位置をそれらの間で調整可能にすることにより維持されることができる。外科医が、例えば、プロテーゼがある範囲の値以内の脊柱前弯を誘発することを望む場合、外科医は、コア(3)が、下側プレート(2)に対して並進および回転運動ではわずかな間隙を有するが、位置については、コアと下側プレート(2)との間で協働手段を正確に調整することにより、プレートの少なくとも1つのわずかな恒久的な傾斜を課す、プロテーゼを選択する。
【0034】
好ましい実施形態によるプロテーゼは、患者の脊椎間に正しい位置に置かれると、その挙動を改良する特性を有する。この特徴は、コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)、すなわちこの曲面表面の最高点(31)(側面図における)が、コア(3)の曲面表面(30)の幾何中心(32)に対して、すなわち曲面表面の周辺部におけるあらゆる点から等距離の点(32)(上面図における)、またはコア(3)の対称の縦軸および横軸の交点に対して、中心がずれている。図示された例において、コア(3)の曲面表面(30)は凸形であり、第1のプレートの曲面表面は、上側プレート(1)の下側面の凹形部分(10)であるが、本発明のプロテーゼの様々な構成要素を配置変更して、凸形表面がプレートの1つにあり、凹形表面がコアにあるようにすることができるのは明らかである。この凸形表面(30)と相補的な上側プレート(1)の凹形部分(10)の中心は、凸形表面(30)のこの頂部(31)まわりに旋回する。この頂部(31)まわりに可動であるが、これにより、上側プレート(1)は、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)に平均中心を置く。2つの隣接した脊椎の中心を通る垂直軸は、患者の運動に応じて、または脊柱の問題となるゾーンに応じてわずかに傾斜することがあるとしても、実質的に整列している。したがって、プレート(1、2)の中心およびコアの凸形表面(30)の頂部(31)を通る垂直軸も整列していることが重要である。これらの軸が整列するためには、コア(3)の凸形表面(30)の中心のずれた頂部(31)が、プレートの中心、したがって下側プレート(2)に対して中心のずれているコア(3)の中心の、軸内になければならない。このように、コア(3)の静止位置は、プロテーゼの中心に対して中心がずれている。上側プレート(1)が明瞭化の理由で図示されていない図3Cに示されるとおり、コアは、プロテーゼの中心に対して中心がずれており、コア(3)の協働手段(33)は、点線で囲まれたゾーン内で下側プレート(2)の協働手段(23)と接触している。図2Bは、プロテーゼの中心の側面図に対するコア(3)のこの移動を強調して示す。コア(3)の移動、ならびに協働手段(33)と下側プレート(23)の協働手段との間の接触は、また、凸形表面(30)の頂部(31)の中心のずれた方向と反対方向へのコア(3)の移動を制限する。次に、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)の移動の方向および大きさを選択することにより、移動の所望の減少を達成できる。次に、コア(3)を、例えば、コア(3)の凸形表面(30)の中心(32)に対して、頂部(31)の移動方向にだけ移動できる。この実施形態によるプロテーゼを装着した患者が、頂部(31)のこの移動と反対方向に体を曲げたとき、コア(3)は、頂部(31)のこの移動の方向に動くことができ、これにより、プレートの中心を通る垂直軸間の移動を減少でき、これは、コア(3)の凸形表面(30)の頂部(31)が中心からずれていない場合に発生する。したがって、この形態の重要な結果は、患者が体を曲げたときであっても、脊椎の中心を通る垂直軸間の移動を恒久的に制限できることである。例えば、凸形表面(30)の頂部(31)が後方向に中心のずれているコア(3)を選択することにより、静止位置において、コア(3)が、プロテーゼの前方向に完全に中心がずれ、前方にさらに移動できないようにすることができる。したがって、このようなコアは、コアの前方への移動を制限し、患者が後方に体を曲げることができる角度を減少させる。ただし、患者が前方に体を曲げる場合、上側プレート(1)は前方に傾斜し、これにより、下側プレート(2)の中心を通る垂直軸に対するプレートの中心を通る垂直軸の移動を発生させる。しかし、この移動は、プロテーゼの後方へのコア(3)の移動により除去される。この移動は、上側プレートがコア(3)の凸形表面(30)の中心のずれた頂部(31)まわりに移動するとき、より良好に除去される。次に、中心のずれた頂部(31)を有するコア(3)が、プロテーゼの開口の背面に押し込まれ、中心のずれた頂部を有するコアに比べて、プレートの中心を通る垂直軸の正確な整列を可能にする。
【0035】
いくつかの実施形態の別の利点は、移植患者の脊椎間にプロテーゼを植え込むことに関する。可動コアを有するプロテーゼを植え込む間、プロテーゼのコアは、プロテーゼの開口内の移動範囲の遠端に移動する傾向にある。このように、患者は、脊柱に対してわずかに傾斜させたプロテーゼを装着される。この傾斜は、患者が手術から回復すると直ぐに患者が運動することにより取り除かれることができる。しかし、この傾斜は、患者の著しい不快感を引き起こす。好ましい実施形態によるプロテーゼのコア(3)の頂部(31)の中心位置がずれているために、コア(3)は、中心のずれた静止位置に移動する傾向となり、頂部(31)が、上側および下側プレートの軸に対して整列される。プロテーゼの軸のこの自発的な整列によって、プレートの傾斜は、静止位置では発生せず、患者は、不快感を生じないプロテーゼを装着することになる。
【0036】
図1A、図1Bから図3A〜図3Eの実施形態においては、コア(3)は、下側プレート(2)上にあるメス型協働手段(23)と相補的なオス型協働手段(33)を有する。コア(3)のオス型協働手段(33)は、例えば、図1Aおよび図1Bで詳細に分かるとおり、実質的に平行六面体形状の掛金である。図3Aおよび図3Bで詳細に分かるとおり、メス型協働手段(23)は、例えば、下側プレート(2)の2つの側端それぞれに対で配置された4つの壁面である。これらの壁面は、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コア(3)のオス型協働手段(33)の少なくとも一部を覆い、コア(3)および上側プレート(1)が持ち上がるのを防止する。図1A、図1Bから図3A〜図3Eに示されるこの実施形態において、コア(3)の各オス型手段(33)の寸法を、下側プレート(2)の各メス型手段(23)の寸法よりわずかに小さくすることにより、下側プレート(2)に対するコア(3)の限定された間隙が、下側プレート(2)に実質的に平行な軸に沿った並進と、下側プレート(2)に実質的に垂直な軸まわりの回転との両方における、限定された間隙を可能にする。これらの協働手段(23、33)は、さらに、プロテーゼに過大な圧迫が掛かった場合に、コア(3)がプロテーゼから外れるのを防止する。
【0037】
図示されていない別の実施形態において、コア(3)の各オス型協働手段(33)の寸法を、下側プレート(2)の各メス型協働手段(23)の寸法と実質的に同一にすることにより、下側プレート(2)に対する、並進および回転の両方におけるコア(3)の間隙を無くする。回転の場合において、プロテーゼの許容される移動は、コア(3)に対する上側プレート(1)の移動だけである。
【0038】
図示されていない別の実施形態において、コア(3)はメス型協働手段を有し、このメス型協働手段は、例えば下側プレート(2)上にあるオス型協働手段の相補的な凹所である。下側プレート(2)のこれらオス型協働手段は、例えばプロテーゼの内側方向に曲がり、かつ下側プレート(2)の両端上で相互に対向する2つの接触プレートまたは2つのニブであってもよい。
【0039】
図示されていない別の実施形態において、下側プレート(2)はドエル(dowel)を有する。コア(3)は、相補の目的で、下側面に2つのウェル(well)を有する。下側プレート(2)のドエルの寸法およびコア(3)のウェルの寸法は、コアの並進および回転におけるわずかの間隙または任意の間隙の所望の結果に従って、選択により適合される。
【0040】
図示されていない別の実施形態において、上側プレート(1)の上側面の一部は隆起しており、これにより、プロテーゼを配置する脊椎の形状に優れた適合を示す。脊椎の下側面は中空である。このとき、上側プレート(1)の隆起部分は、上側プレートの前部分に位置する。下側プレート(2)は、脊椎の上側面が実質的に平坦であるため、下側面が隆起するまたは中空である必要がないときは実質的に平面である。
【0041】
当業者には当然明らかなように、本発明は、特許請求項に規定された本発明の出願の範囲から逸脱することなく、多数の他の特定形態の実施形態を可能にする。したがって、各実施形態は、例証と考えるべきであり、添付の特許請求の範囲で規定される範囲内で変更が可能であって、本発明は、上述の細部に限定されないものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプレート(1)と、第2のプレート(2)と、少なくとも第1および第2のプレート(1、2)の1つに対して少なくとも回転する可動のコア(3)とを含む、少なくとも3つの部品を備える椎間板プロテーゼであって、
コア(3)が、第1のプレート(1)の相補的曲面表面の少なくとも一部に接触する曲面表面と、第2のプレート(2)およびコア(3)の周辺部近くに置かれた、第2のオスおよびメス型協働手段(23、33)の実質的に平坦な少なくとも一部に接触する実質的に平坦な表面とを有し、
協働手段が、実質的に平坦な表面に実質的に平行な軸に沿って、コアが第2のプレートに対して並進することを制限または防止することを可能にし、かつ実質的に平坦な表面に実質的に垂直な軸まわりに、コアが第2のプレートに対して回転運動することを制限または防止することを可能にし、
コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)が、コア(3)の曲面表面(30)の幾何的中心(32)に対して少なくとも一方向に中心がずれている、椎間板プロテーゼ。
【請求項2】
患者が運動しないときのコア(3)の静止位置が、プレートが脊椎に固定されたときに、第1のプレート(1)および第2のプレート(2)の対称軸が整列することと、コア(3)の曲面表面(30)に相補的な第1のプレート(1)の曲面表面(10)が、第1および第2のプレート(1、2)の対称軸をコア(3)の曲面表面(30)の中心のずれた頂部(31)に整列させ、これにより、コア(3)をコアの曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に移動させることとにより、コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に移動させ、
この結果、コア(3)にある協働手段(33)と、第2のプレート(2)にある協働手段(23)が結合するようになり、該結合が、コア(3)をコアの曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に変位するのを制限する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項3】
同じプレート(1、2)が、異なるコア(3)と組み合わせ可能であり、コア(3)間の差が、コア(3)の曲面表面(30)の中心(32)に対する曲面表面(30)の頂部(31)の位置の差である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項4】
同じコア(3)が異なるプレート(1、2)と組み合わせ可能であり、プレート間の差は、プレートの上側面と下側面を表す中心平面間の角度の差である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項5】
上側プレート(1)の上側面と第2のプレート(2)の下側面との間の角度が、第2のプレート(2)および/または第1のプレート(1)の上側面と下側面を表す中心平面が角度を生成することによるか、または協働手段(23、33)によって、プレート(1、2)の少なくとも1つに傾斜を課す位置のまわりのコア(3)の移動を限定することによるかのいずれかにより課されることができる、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項6】
同じプレート(1、2)が、様々な厚みおよび/またはサイズのコア(3)と組み合わせ可能である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項7】
コア(3)の曲面表面(30)が、コア(3)の凸形上側面であり、第1のプレート(1)の曲面表面(10)が、上側プレート(1)の下側面の凹形部分である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項8】
各オス型協働手段(33)の寸法を、各メス型協働手段(23)の寸法よりわずかに小さくすることにより、コア(3)と第2のプレート(2)との間に小さい間隙を形成する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項9】
各オス型手段(33)の寸法を、各メス型手段(23)の寸法と実質的に同一にすることにより、コア(3)と第2のプレート(2)との間の間隙をなくす、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項10】
コア(3)が、ポリエチレンで形成される、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項11】
第1のプレート(1)および第2のプレート(2)が、金属で形成される、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項12】
第2のプレート(2)が、コア(3)のオス型手段(33)と協働するメス型手段(23)を備える、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項13】
コア(3)のオス型手段(33)が、コア(3)の2つの側端に配置された2つの接触プレートであり、第2のプレート(2)のメス型手段(23)が、第2のプレート(2)の2つの側方向端それぞれに対で配置された4つの壁面である、請求項12に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項14】
第2のプレート(2)のメス型協働手段(23)を形成する壁面が、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コア(3)のオス型手段(33)の少なくとも一部を覆い、かつコアが持ち上がるのを防止する、請求項13に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項15】
第2のプレート(2)が、コア(3)のメス型手段と協働するオス型手段を備えている、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項16】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの両端上の相互に対向する2つの接触プレートであり、コア(3)のメス型手段が、2つの凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項17】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの両端近くで相互に対向する2つの壁面であり、コア(3)のメス型手段が、凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項18】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの内側方向に曲がりかつプロテーゼの両端上で相互に対向する2つのニブであり、コア(3)のメス型手段が、2つの凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項19】
ニブの少なくとも1つが、開口に収まる接触プレートに置き換えられ、接触プレートに、開口を貫通するピンによってラグを固定する、請求項18に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項20】
第1のプレート(1)は、上側面の少なくとも一部が隆起しており、脊椎の形状に適合する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項1】
第1のプレート(1)と、第2のプレート(2)と、少なくとも第1および第2のプレート(1、2)の1つに対して少なくとも回転する可動のコア(3)とを含む、少なくとも3つの部品を備える椎間板プロテーゼであって、
コア(3)が、第1のプレート(1)の相補的曲面表面の少なくとも一部に接触する曲面表面と、第2のプレート(2)およびコア(3)の周辺部近くに置かれた、第2のオスおよびメス型協働手段(23、33)の実質的に平坦な少なくとも一部に接触する実質的に平坦な表面とを有し、
協働手段が、実質的に平坦な表面に実質的に平行な軸に沿って、コアが第2のプレートに対して並進することを制限または防止することを可能にし、かつ実質的に平坦な表面に実質的に垂直な軸まわりに、コアが第2のプレートに対して回転運動することを制限または防止することを可能にし、
コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)が、コア(3)の曲面表面(30)の幾何的中心(32)に対して少なくとも一方向に中心がずれている、椎間板プロテーゼ。
【請求項2】
患者が運動しないときのコア(3)の静止位置が、プレートが脊椎に固定されたときに、第1のプレート(1)および第2のプレート(2)の対称軸が整列することと、コア(3)の曲面表面(30)に相補的な第1のプレート(1)の曲面表面(10)が、第1および第2のプレート(1、2)の対称軸をコア(3)の曲面表面(30)の中心のずれた頂部(31)に整列させ、これにより、コア(3)をコアの曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に移動させることとにより、コア(3)の曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に移動させ、
この結果、コア(3)にある協働手段(33)と、第2のプレート(2)にある協働手段(23)が結合するようになり、該結合が、コア(3)をコアの曲面表面(30)の頂部(31)の中心ずれの方向と反対方向に変位するのを制限する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項3】
同じプレート(1、2)が、異なるコア(3)と組み合わせ可能であり、コア(3)間の差が、コア(3)の曲面表面(30)の中心(32)に対する曲面表面(30)の頂部(31)の位置の差である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項4】
同じコア(3)が異なるプレート(1、2)と組み合わせ可能であり、プレート間の差は、プレートの上側面と下側面を表す中心平面間の角度の差である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項5】
上側プレート(1)の上側面と第2のプレート(2)の下側面との間の角度が、第2のプレート(2)および/または第1のプレート(1)の上側面と下側面を表す中心平面が角度を生成することによるか、または協働手段(23、33)によって、プレート(1、2)の少なくとも1つに傾斜を課す位置のまわりのコア(3)の移動を限定することによるかのいずれかにより課されることができる、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項6】
同じプレート(1、2)が、様々な厚みおよび/またはサイズのコア(3)と組み合わせ可能である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項7】
コア(3)の曲面表面(30)が、コア(3)の凸形上側面であり、第1のプレート(1)の曲面表面(10)が、上側プレート(1)の下側面の凹形部分である、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項8】
各オス型協働手段(33)の寸法を、各メス型協働手段(23)の寸法よりわずかに小さくすることにより、コア(3)と第2のプレート(2)との間に小さい間隙を形成する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項9】
各オス型手段(33)の寸法を、各メス型手段(23)の寸法と実質的に同一にすることにより、コア(3)と第2のプレート(2)との間の間隙をなくす、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項10】
コア(3)が、ポリエチレンで形成される、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項11】
第1のプレート(1)および第2のプレート(2)が、金属で形成される、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項12】
第2のプレート(2)が、コア(3)のオス型手段(33)と協働するメス型手段(23)を備える、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項13】
コア(3)のオス型手段(33)が、コア(3)の2つの側端に配置された2つの接触プレートであり、第2のプレート(2)のメス型手段(23)が、第2のプレート(2)の2つの側方向端それぞれに対で配置された4つの壁面である、請求項12に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項14】
第2のプレート(2)のメス型協働手段(23)を形成する壁面が、プロテーゼの中心方向に曲がっており、これにより、コア(3)のオス型手段(33)の少なくとも一部を覆い、かつコアが持ち上がるのを防止する、請求項13に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項15】
第2のプレート(2)が、コア(3)のメス型手段と協働するオス型手段を備えている、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項16】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの両端上の相互に対向する2つの接触プレートであり、コア(3)のメス型手段が、2つの凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項17】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの両端近くで相互に対向する2つの壁面であり、コア(3)のメス型手段が、凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項18】
第2のプレート(2)のオス型手段が、プロテーゼの内側方向に曲がりかつプロテーゼの両端上で相互に対向する2つのニブであり、コア(3)のメス型手段が、2つの凹所である、請求項15に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項19】
ニブの少なくとも1つが、開口に収まる接触プレートに置き換えられ、接触プレートに、開口を貫通するピンによってラグを固定する、請求項18に記載の椎間板プロテーゼ。
【請求項20】
第1のプレート(1)は、上側面の少なくとも一部が隆起しており、脊椎の形状に適合する、請求項1に記載の椎間板プロテーゼ。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【公開番号】特開2012−115681(P2012−115681A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−4188(P2012−4188)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2007−510151(P2007−510151)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502415364)エル・デ・エール・メデイカル (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4188(P2012−4188)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2007−510151(P2007−510151)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502415364)エル・デ・エール・メデイカル (14)
【Fターム(参考)】
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