説明

検体処理装置及び検体処理方法

【課題】高い精度で、かつ、効率良く、検体の状態を検出することができる検体処理装置及び検体処理方法を提供する。
【解決手段】検体検出装置10は、試験管25、または試験管25に収容された検体25aに対して、処理を行う検出部50と、処理の前に、試験管25の側部に付されたラベル27の少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体処理装置及び検体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば生化学分析等の各種血液検査などの処理を行う検体処理装置として、採血を行った後の血液から遠心分離処理によって検体として血清を採取し、検体に試薬を注入して反応を検知することで分析処理を行う分析装置などが知られている(例えば、特許文献1参照)。検体容器に収容された検体に対して処理を行う場合において、検体あるいは検体容器内の状態を検査・観察することが求められる場合がある。例えば検体である血清が乳び・溶血状態の場合には、分析処理の前に目視等により予め検体の状態を検出し、あるいは分析処理後に分析装置において検出することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−76185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術には次のような問題がある。すなわち、検体容器の側面には、検体の識別情報等を表示するラベルが付されている場合があり、このような場合には側部からの検出が困難となるため、高い検出精度を維持することが難しいという問題がある。これに鑑みて、例えば検体容器内の検体を分取して検体の状態を検出すること等が考えられるが、処理効率が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高い精度で、かつ、効率良く、検体または検体容器内の状態を検出することができる検体処理装置及び検体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態にかかる検体処理装置は、検体容器、または検体容器に収容された検体に対して、処理を行う処理手段と、前記処理の前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、検体を収容する検体容器の側方から前記検体または前記検体容器内の状態を検出する検出手段と、前記検出の前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、前記検出手段の検出対象は、前記検体容器内に収容された検体、血清、シリコン、及び血餅のうち少なくともいずれかの液面位置であることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、検体を収容する検体容器の側方から前記検体の画像情報を検出する画像検出手段と、検出した前記画像情報に基づき、前記検体の色から前記検体の乳び状態または溶血状態を検出する検出手段と、前記画像情報を検出する前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、前記ラベル剥離手段は、前記検体容器の側部の前記ラベルの接着部分に超音波振動を付与する超音波振動手段と、前記ラベルを削る削り部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、前記ラベル剥離手段は、前記検体容器の側部に接着された前記ラベルを加熱する加熱部と、前記ラベルの剥離対象部を切るカッタと、前記ラベルを削る削り部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、前記ラベル剥離手段は、先鋭形状部を有し前記検体容器の側部に当接された状態で移動することにより前記ラベルを削る削り刃を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の一形態にかかる検体処理装置は、前記検体容器を立位状態で保持して所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段を備え、前記ラベルの情報を読み取るラベル読取手段と、前記ラベル剥離手段と、前記検出手段と、前記検体を試薬と反応させて前記検体を分析する分析処理を行う分析手段とが、前記搬送経路の上流側から下流側に向かって順に設けられたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の一形態にかかる検体処理方法は、検体を収容する検体容器の側部から前記検体の画像情報を検出する工程と、検出した前記画像情報に基づき、前記検体の色から前記検体の乳び状態または溶血状態を検出する工程と、前記画像情報を検出する前に、前記検体容器の側部に配されたラベルの少なくとも一部を剥離する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる検体処理装置、及び検体処理方法によれば、高い精度で、かつ、効率良く、検体の状態を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る乳び・溶血検体検出装置の平面図。
【図2】同実施形態に係る乳び・溶血検体検出装置を一部切欠して示す正面図。
【図3】同実施形態に係るラベル剥離部の側面図。
【図4】同実施形態に係るラベル剥離処理の前後における試験管を示す側面図。
【図5】同実施形態に係る乳び・溶血検体検出処理を示す説明図。
【図6】同実施形態に係る検体処理ユニットの平面図。
【図7】同実施形態に係る検体処理工程を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る乳び・溶血検体検出装置のラベル剥離部の側面図。
【図9】同実施形態に係るラベル剥離部における削り部、加熱部、及びカッタの構成を示す平面図。
【図10】本発明の第3実施形態に係る検体処理装置のラベル剥離部の平面図。
【図11】本発明の第3実施形態に係る検体処理装置のラベル剥離部の側面図。
【図12】本発明の第4実施形態に係る検体処理装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる検体処理装置としての乳び・溶血検体検出装置10(検体処理装置)について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。各図中の矢印X,Y,Zはそれぞれ直交する3方向を示している。なお、ここではX軸は搬送経路、Y軸は搬送経路の幅方向、Z軸は上下方向にそれぞれ沿うように設定された場合を示している。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる乳び・溶血検体検出装置10を概略的に示す平面図、図2は乳び・溶血検体検出装置10の一部を切欠して概略的に示す正面図、図3はラベル剥離部40を概略的に示す側面図である。
【0019】
乳び・溶血検体検出装置10は、検体の分析処理の際に先立って予め検体の乳び状態及び溶血状態を検出する装置であり、例えば検体の分析処理を行う検体処理装置の前処理部の1つとして用いられる。
【0020】
乳び・溶血検体検出装置10は、装置本体11と、所定の搬送経路20aに沿って試験管(検体容器)25を搬送する搬送部(搬送手段)20と、試験管25に付されたラベル27の識別情報を読み取る読取部30と、試験管25の側部に付されたラベルの一部を剥離するラベル剥離部40(ラベル剥離手段)と、検体の乳び状態及び溶血状態を検出する乳び・溶血検体検出部(検出手段・処理手段)50と、各種情報を記憶する記憶部12(記憶手段)と、検出結果や識別情報などに基づき演算・判定などのデータ処理を行うデータ処理部13と、各部の動作を制御する制御部14(制御手段)と、を備えて構成されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、搬送部20は、装置本体11の上部に設けられたコンベヤ式のホルダ搬送機構であり、図中X軸方向に延びる搬送経路20aに沿って一定幅に設置された一対のガイドレール21と、ガイドレール21の間において搬送経路20aにわたって配置された搬送ベルト22と、搬送ベルト22の裏側で回転駆動して搬送ベルト22を送る搬送ローラ23と、を備えて構成されている。
【0022】
試験管25を保持するホルダ24は一対のガイドレール21間に係合して立位状態に支持され、搬送ベルト22の移動に伴って搬送される。図4(a)に示すように、検体を収容する検体容器としての試験管25は、透明なガラス等から構成され、内部に検体を収容する円柱状の空間を有する円筒形状を成している。試験管25の外周側面に、接着剤で構成される接着層を介して、ラベル27が接着貼付されている。ラベル27には検体25aの識別情報等の各種情報を示す識別情報表示部としてのバーコード27aが表示されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、読取部30は、搬送経路20aの側部に設けられ、搬送部20によって送られる試験管25の側面に貼付されたラベル27のバーコード27aを読み取り、検体に関する各種情報を取得する複数の読取装置(読取手段)31を備えている。読取装置31は、各種情報として、例えばバーコード27aに示される検体25aの識別情報に加え、バーコード27aの位置情報やラベル27の有無の情報を検出する。読取装置31で取得した各種情報は記憶部12に記録され、制御部14の制御に用いられる。
【0024】
図1乃至図3に示すラベル剥離部40は、搬送経路20a側部に設置されたベース部41と、ベース部41から搬送経路20aに向かって延びるとともにベース部41に移動可能に支持された一対のアーム部42と、一対のアーム部42の先端にそれぞれ設けられラベル27を削る一対の削り板43(削り部)と、を備えて構成されている。
【0025】
ベース部41は、アーム部42を移動可能に支持するとともに、アーム部42及び削り板43を介してラベル27の接着部分に超音波振動を付与する超音波振動手段として機能する。
【0026】
一対のアーム部42は、互いに対向する位置に設けられ、搬送経路20aの両側部から搬送経路20aに向かって延びている。アーム部42の先端に削り板43が設けられている。削り板43は所定の幅及び長さを有する板状部材からなり、その先端部43aが下方に折曲するとともに、先端側に向かって厚みが薄くなるようにテーパ状を成している。側面視において鋭利に形成された先端部43aがラベル27に当接した状態で下降移動することによりラベル27を削り試験管25から剥離させる。
【0027】
試験管25が搬送経路20aに沿って搬送されて所定の剥離エリアA1において停止されると、読取装置31で取得したバーコード27aの位置情報及びラベル27の有無などの情報に基づき、制御部14の制御に応じてベース部41が駆動し、剥離処理が行われる。剥離処理は対象となる試験管25にラベルが貼付されている場合に行われる。
【0028】
剥離処理として、まず、ベース部41は、アーム部42及び削り板43を移動させ、先端部43aがラベル27のバーコード27a及び印字部分などの情報表示部を避けた剥離対象部位の上端に当接するように位置決めする。そして、削り板43の先端部43aを、ラベル27の表面または試験管25の外側面に当接させた状態で、超音波振動させながら、図3に矢印で示すように剥離対象部位27bに対応する移動範囲を下降移動させる。すると、移動範囲において、超音波振動によりラベル27の接着部分である接着層が破壊され、または接着層の接着力が低下し、ラベル27が削り板43に削られることによって、試験管25から剥離する。
【0029】
移動範囲(剥離対象部位)はラベル27の上下方向全長にわたって設定してもよく、一部のみに設定してもよい。図4(a)はラベル27を剥離する前の試験管25の側面視を示し、図4(b)は、ラベル27の上下方向全長にわたって剥ぎ取った場合の試験管25の側面視を示し、図4(c)はラベル27の上下方向中央の一部分のみを剥ぎ取った場合の試験管25の側面視を示す。図4(b)及び図4(c)に示すように、剥離処理後において、試験管25の側部には、上下方向に延びる剥離対象部27bにおいてラベル27が削り取られ、内部の透明な試験管25の側部が露出した状態となっている。
【0030】
乳び・溶血検体検出部50は、ラベル剥離部40よりも下流側の搬送経路20aの側方に設けられ、試験管25の側部を撮像して検体の画像情報を取得する撮像部51(画像検出手段)と、撮像部51を支持する支持機構52と、を備えて構成されている。
【0031】
撮像部51(画像検出手段)は、例えばカメラなどの画像センサで構成され、搬送経路20aの側方に設けられている。撮像部51は、搬送経路20a上に立位状態に保持された試験管25の側方から検体25aの側面を撮像し、画像情報を取得する。取得した画像情報は、記憶部12に記録され、データ処理部13へ送られる。
【0032】
なお、撮像部51に送られる試験管25の側部は、予め上流側のラベル剥離部40にてラベル27が剥離され、図4(b)または図4(c)に示されるように透明の試験管25の側壁が露出しているので、この透明な試験管25の側壁を透過して側方から内部の検体25aの色情報が取得できるようになっている。
【0033】
データ処理部13は、撮像部51で取得した画像情報に基づき検体25aの色を検出し、検体25aの状態を検出(判定)する。このとき、読取部30で取得した検体25aの識別情報と対応付けてデータ処理を行う。ここでは、一例として、検体の色が黄色の場合を正常状態として設定し、ティーチングにより判定処理を行う。例えば検体の色が赤色、桃色、橙色など、正常状態よりも赤みがかっている場合には溶血状態と判定する。一方、検体の色が桃色や乳白色など、正常状態よりも白濁している場合には乳び状態と判定する。
【0034】
図5に、検体識別情報としての識別番号、検出結果としての検体の色、及び判定結果としての検体の状態の対応関係の一例を示す。例えば検体1〜3のように黄色の場合には正常、検体4,5のように橙色の場合には弱溶血、検体6のように赤色の場合には溶血、検体7のように乳白色の場合には乳び、検体8のように桃色の場合には乳び及び溶血と判定される。なお、これらの検出結果及び判定結果は予め読取部30で取得した試験管25の識別情報と対応付けて記憶部12に記録され、制御部14での制御に用いられる。
【0035】
図6に、本実施形態にかかる乳び・溶血検体検出装置10を前処理装置の1つとして備える検体処理ユニット1(検体処理装置)を示す。検体処理ユニット1は、搬入された検体の反応を分析する分析装置(分析手段)61と、分析処理に先立って各種前処理を行う前処理装置で構成される前処理ユニット62とが連結路70を介して接続されている。記憶部12、データ処理部13及び制御部14は検体処理ユニット1の各装置に接続されている。
【0036】
前処理ユニット62は、所定の搬送経路20aの上流側から下流側に向かって、搬入装置63、乳び・溶血検体検出装置10、仕分装置(仕分手段)64、分取・分注装置(分取・分注手段)65、及び搬出装置66が、処理順に配置されて構成されている。それぞれの処理装置10、63〜66に、試験管25を搬送するコンベヤ式の搬送部20が設けられ、各前処理装置10、63〜66に設けられた複数の搬送部20の搬送経路20aが連続するように配置されている。前処理ユニット62の下流側と分析装置61は搬送経路20aに連続する連結路70を介して接続されている。
【0037】
搬入装置63はロボットアーム等の移載機構67を備えている。搬送経路20aの側部には、複数の試験管25を収容した試験管ラック68aが複数載置されたラック架設部68が設けられている。搬入装置63の移載機構67よりも下流側には開栓部69が設けられている。開栓部69は、試験管25の上部の開口に挿入されている栓体26を抜き取る開栓処理を行う。
【0038】
仕分装置64は、ホルダ24を搬送する搬送部20と、制御部14の制御に応じてホルダ24の搬送方向を案内する案内手段としてのゲート部71と、を備えている。搬送経路20aの途中には分岐部20bが設けられ、搬送経路20aから分岐して異なる経路を構成する分岐路20cが設けられている。ゲート部71は、制御部14の制御に応じて、乳び・溶血状態と判定された試験管25を分岐路20cに振り分けるよう切り替え動作をする。例えば、データ処理部13において乳び状態あるいは溶血状態と判別された検体25aを収容する試験管25については分岐路20cへ案内し、乳び状態でも溶血状態でもない正常な試験管25は搬送経路20aに沿って下流側の分取・分注装置65に送られるように案内される。
【0039】
分取・分注装置65は、搬送経路20aに沿ってホルダ24を搬送する搬送部20と、試験管25の開口に対向するように配置された昇降可能な分取・分注チップを備えている。搬送経路20a上の所定位置に検体入り試験管25が配置され停止したとき、分取・分注チップによって検体入り試験管25から所定量の血清を分取し、別に送られてきたサンプルカップに分注する。血清が分注されたサンプルカップは、搬出装置66から搬出され、下流側の連結路70を通って分析装置61に搬入され、分析処理が行われる。
【0040】
以下、図7を参照して検体処理ユニット1における処理手順を説明する。図7は検体処理ユニット1全体の処理の流れを示す。まず、上流側に設けられた搬入装置63により、移載機構67によって試験管ラック68aに収納されている検体入り試験管25を把持し搬送経路20a上に移載する搬入処理が行われる。搬送経路20a上にはホルダ24が待機しており、試験管25はホルダ24にセットされる。移載された試験管25はホルダ24に保持された状態で、搬送経路20aに沿って下流側に設けられた乳び・溶血検体検出装置10の読取部30に送られる。
【0041】
読取部30において、試験管25の側面に貼付されているラベル27に表示されたバーコード27aに示される識別情報やバーコード27aの位置情報等の各種情報を取得する読取処理が行われる。取得した情報は記憶部12に記録される。読取処理が終了した試験管25は搬送経路20aに沿って下流側のラベル剥離部40に送られる。
【0042】
ラベル剥離部40において、試験管25の側面に貼付されているラベル27が剥離される。まず、ベース部41は、先端部43aがラベル27のバーコード27a及び印字部分等の情報表示部を避けた剥離対象部位の上端に当接するように削り板43を位置決めし、超音波振動させながら、下降移動させる。すると、移動範囲において、超音波振動により接着層が破壊され、または接着層の接着力が低下し、ラベル27が削り板43に削られる。以上により所定の剥離対象部においてラベル27が剥離され、試験管25が露出する。剥離処理が終了した試験管25は搬送経路20aに沿って下流側の乳び・溶血検体検出部50に送られる。
【0043】
乳び・溶血検体検出部50に試験管25を保持するホルダ24が搬送され、撮像部51に対向する検出処理エリアA2にセットされると、側方に位置する撮像部51において試験管25の側部の画像を撮像し、画像情報を取得する。取得した画像情報は記憶部12に記録され、データ処理部13に送られる。
【0044】
データ処理部13は、取得した画像情報から検体の色を示すデータを算出し、検体の色に基づいて、乳び状態か否かの判定を行う。例えば検体の色が通常の血清の色を示す所定範囲よりも白濁している数値を示す場合には乳び状態と判定し、通常の血清の色を示す場合には正常状態と判定する。
【0045】
さらに、データ処理部13は、検体の色に基づいて検体が溶血状態か否かの判定を行う。検体の色が通常の血清の色を示す所定範囲よりも赤みがかっている数値を示す場合には溶血状態と判定し、通常の血清の色を示す場合には正常状態と判定する。データ処理部13にて取得された検出結果及び判定結果は予め読取部30で取得した試験管25の識別情報と対応付けて記憶部12に記録され、この判定結果に基づいてその後の処理動作が制御される。
【0046】
動作制御の一例として、下流側に設けられた仕分装置64において、制御部14の制御により、判定結果に応じてゲート部71が切り替えられ、試験管25を振り分ける処理が成される。例えば、データ処理部13において乳び状態あるいは溶血状態と判別された検体25aを収容する試験管25は、ゲート部71が切り替えられることにより、分岐路20cへ案内される。分岐路20cの下流側は乳び・溶血状態の検体用に正常な検体とは別工程を行う処理部へ連続している。一方、乳び状態でも溶血状態でもない正常な検体は、搬送経路20aに沿って下流側の分取・分注装置65に案内される。
【0047】
分取・分注装置65では、分取・分注チップによって正常な検体入りの試験管25から所定量の血清を分取し別に送られてきたサンプルカップに分注する分取・分注処理が行われる。血清が分注されたサンプルカップは、下流側の搬出装置から搬出され、下流側の連結路70を通って分析装置61に搬入される。そして、分析装置61において各種反応を検査する分析処理が行われる。
【0048】
本実施形態にかかる乳び・溶血検体検出装置10及び検体処理ユニット1によれば以下のような効果が得られる。すなわち、撮像部51の上流側にラベル剥離部40を設け、予め試験管25の側部のラベル27を剥離することにより、側方から確実に検体の画像情報を取得することができ、高い検出精度を維持することが出来る。
【0049】
また、ラベル27全体を剥がすのではなく、一部の剥離対象部のみを剥ぎ取ることとしたため、処理時間を短縮できる。剥離対象部位をバーコード27a及び印字部分等の情報表示部を避けた位置に設定することにより、後の処理においてバーコード27a等の情報表示を損なうことなく、画像検出を可能とすることができる。また、剥離対象部を上下方向に沿って設定することにより、検体の量に限定されることなく適用できる。ラベル27を削り取る処理に際して、超音波振動により接着力を低下させることとしたので、剥離処理の精度向上及び効率化が図れる。
【0050】
さらに、本実施形態では、乳び・溶血検体検出装置10によって分析処理に先立って乳び・溶血検体の検出を自動で行うため高精度かつ高効率で検体の状態を検出することができる。したがって、作業者の目視により検査する方法と比べ、作業者への負担が少なく、高い検出精度を維持すること可能である。また、多数の検体について高速で処理できるため、処理効率が良い。さらに、検体が試薬と反応する前に乳び・溶血の状態を検出するため、既に試薬と反応された後に分析装置により検出する方法と比べ、再度分析処理をやり直す必要がないので、処理及び試薬の無駄が防止できる。
【0051】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態にかかる検体処理装置10について図8及び図9を参照して説明する。なお、本実施形態においてラベル剥離部80以外の構成は上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。図9(a)は削り部81の平面図、図9(b)は加熱部82の平面図であり、図9(c)はカッタ83の平面図をそれぞれ示している。
【0052】
本実施形態に係るラベル剥離部80は、図8に示すように、搬送経路20aの両側部に昇降移動可能に設けられた一対の支持部80aと、支持部80aの上部に支持された一対の削り部81と、支持部80aの上下方向中央部分に支持されラベルを加熱する一対の加熱部82と、支持部80aの下部に支持されラベル27の剥離対象部27bの境界に切り込みを入れる一対のカッタ83と、を備えている。一対の削り部81、一対の加熱部82、及び一対のカッタ83は、上下方向に並列して支持部80aに一体に取り付けられている。
【0053】
削り部81は、2枚の削り板84,84が所定の間隔を介在して重ねて配置される挟み部85を有している。削り板84,84は所定の幅及び長さを有する板状部材からなり、その先端部84aが下方に折曲するとともに、先端側に向かって厚みが薄くなるようにテーパ状を成している。上側の削り板84は先端部84aが試験管25の側部に当接し、下側の削り板84の先端部84a試験管25の側部から僅かに退避して配置されている。削り工程において、側面視において鋭利に形成された上側の削り板84の先端部84aがラベル27に当接した状態で下降移動することによりラベル27を削り試験管25から剥離させ、さらに2枚の削り板84,84の間にてラベル27を挟み取ることにより、ラベル27を試験管から剥ぎ取る。
【0054】
加熱部82は、支持部80aにX方向に延びる回転軸86を中心として回転可能に支持された加熱ローラ87を有している。加熱ローラ87の外周面87aは高温に設定されている。加熱工程において、外周面87aが剥離対象部のラベルに当接した状態で、支持部80aの下降に伴い、加熱ローラ87が回転しながらラベル27の表面を下降移動してラベル27を加熱することにより、ラベルを試験管に接着している接着材を溶融し、ラベル27を剥ぎ取りやすくする。
【0055】
カッタ83は、支持部80aにX方向に延びる回転軸89を中心として回転可能に支持されたカットローラ90を有している。カット工程において、カットローラ90の外周縁に突出した2つのカット片90aがラベル27の表面に押し当てられた状態でカットローラ90が回転しながらラベル27の表面を下降移動してラベル27をカットすることにより、剥離対象部27bと、剥離対象部27b以外の部位との境界に切り込みを入れ、後の削り工程にて剥離対象部を剥離しやすくする。
【0056】
剥離部80では、支持部80aを下降すると、支持部80aに一体に支持されたカッタ83、加熱部82、削り部81が順次試験管25の側部のラベル27の剥離対象部の表面を通過しながら下方に移動し、ラベル27に対するカット処理、加熱処理、削り処理が順次行われる。
【0057】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、削り部81に加え、加熱部82で加熱することにより接着層の接着力を低下させるため、剥離処理の精度向上及び効率化が図れる。さらに、カッタ83で切り込みを入れることにより剥離対象部27bを削りやすくすることが出来る。
【0058】
[第3実施形態]
以下に、本発明の第3実施形態にかかる検体処理装置10について図10及び図11を参照して説明する。なお、本実施形態においてラベル剥離部100以外の構成は上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。図10は削り部101の平面図、図11は削り部101の側面図をそれぞれ示している。
【0059】
本実施形態に係るラベル剥離部100は、図10及び図11に示すように、搬送経路20aの両側部に昇降移動可能に設けられた一対の支持部102と、支持部102の上部に支持された一対のアーム103と、一対のアーム103の先端にそれぞれ設けられた削り部としての一対の削り刃104とを備えている。尖鋭形状部を有する一対の削り刃104は、上下方向に移動可能である。
【0060】
削り刃104は、先端部105が尖鋭な細長い形状であり、一対の削り刃104によって試験管25の側部を両側から挟むように配置されている。削り刃104の先端部105は先端側に向かって細くなるテーパ状となっている。削り刃104の下側面が先端側に向かって上方に位置するように傾斜し、側面視において鋭利に形成されている。
【0061】
削り工程において、削り刃104の先端部105の下側縁105aがラベル27に当接した状態で下降移動することにより、ラベル27の一部を削り試験管25から剥離させ、ラベル27を試験管から剥ぎ取る。このとき、上記実施形態と同様に、バーコード27aを含む情報表示部を避けた余白部分を剥離の対象として設定することで、識別情報の機能を維持できる。
【0062】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、削り刃104によれば、超音波振動を付与することなくラベル27を剥離可能であるため、削り部の構成を単純化することができる。
【0063】
[第4実施形態]
以下に、本発明の第4実施形態にかかる検体処理装置10について図12を参照して説明する。なお、本実施形態においては処理手段の処理内容と検出対象が異なること以外は上記第1実施形態と同様であるため、図1乃至図6を参照し、共通部分の説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る検体処理装置10は、図1乃至図6に示すように、装置本体11と、所定の搬送経路20aに沿って試験管(検体容器)25を搬送する搬送部(搬送手段)20と、試験管25に付されたラベル27の識別情報を読み取る読取部30と、試験管25の側部に付されたラベルの一部を剥離するラベル剥離部40と、検体25aの液面の状態を検出する検出部50(処理手段)と、各種情報を記憶する記憶部12(記憶手段)と、検出結果や識別情報などに基づき演算・判定などのデータ処理を行うデータ処理部13と、各部の動作を制御する制御部14(制御手段)と、を備えて構成されている。すなわち、本実施形態においては、処理手段として、乳び・溶血検出部50の代わりに液面検出を行う検出部50を備えている。
【0065】
図12は本実施形態に係る検体処理装置10の検出対象を説明する説明図である。本実施形態において、試験管25の内部に、検体25aとして、血餅25b、シリコン(分離剤)25c、及び血清25dの3層が収容されている。そして、検出対象となる試験管25内の状態として、血餅面25e、シリコン面25f、血清面25gの位置を検出する。
【0066】
具体的には、撮像部51で取得した試験管25の側方からの画像情報に基づき、データ処理部13において、検体25aの血餅面25e、シリコン面25f、及び血清面25gの位置を検出する。すなわち、上記第1実施形態では検体25aの色情報を検出して乳び・溶血状態を判定するものであったが、ここでは、乳び・溶血状態を判定する処理(図7の乳び・溶血検出処理)の代わりに、各層の液面位置を検出する処理を行う。
【0067】
本実施形態に係る検体処理装置10及び検体処理方法では、上流側に設けられた剥離部40にてラベルを剥離した後、下流側の撮像部51にて検体の側部の画像情報を取得し、データ処理部13において画像情報に基づき検体25aの各層の液位を検出する。
【0068】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を得られる。すなわち、予め剥離部40により試験管25の側部のラベル27を剥ぎ取るで、高い精度で、かつ、効率良く、試験管25内の状態を検出することが可能となる。
【0069】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、検出する対象は上述の例に限られるものではない。また、前処理ユニット62を構成する処理装置は上述したものに限られるものではない。例えば試験管25の上部を栓体26によって閉口する場合に、撮像部51よりも上流側に別途開栓装置を配置して開栓処理を行うこととしてもよい。上述の実施形態では1つの試験管25毎に検体処理を行う場合について例示したが、複数の試験管25について同時に処理を行ってもよい。
【0070】
さらに、上記各実施形態では、削り板43、削り部81、加熱部82、カッタ83を搬送経路20aの両側部それぞれ設け、対称となる2箇所において同時に処理を行う場合について例示したが、これに限られるものではなく、例えば一方のみであっても適用可能である。
【0071】
また、第1実施形態の削り板43に代えて第2実施形態の削り部81を適用してもよいし、第2実施形態の削り部81に代えて第1実施形態の削り板43を適用してもよい。
【0072】
上記第4実施形態においては、データ処理部13にて第1実施形態の乳び・溶血状態の判定の代わりに液位の検出を行うことを例示したが、これらの実施形態を組み合わせてもよく、例えば乳び・溶血状態の判定に加えて液位の検出も行うようにしてもよい。
【0073】
上記各実施形態では検体25aまたは試験管25内の状態を検出する検出処理の前にラベル剥離手段を設けた場合について例示したが、これに限られるものではなく、例えば分取・分注処理など検体に各種処理を行う処理部の前にラベル剥離手段を設け、各種処理の前にラベルを剥離することも可能である。この場合にも、処理の前に検体容器の側部のラベルを剥離することにより、処理精度を向上するという効果が得られる。
【0074】
また、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0075】
1…検体処理ユニット(検体処理装置)、10…乳び・溶血検体検出装置(検体処理装置)、11…装置本体、20…搬送部、20a…搬送経路、20b…分岐部、20c…分岐路、
23…搬送ローラ、24…ホルダ、25…試験管、27…ラベル、27a…バーコード、30…読取部、31…読取装置、40…ラベル剥離部(ラベル剥離手段)、41…ベース部、42…アーム部、43…削り板(削り部)、43a…先端部、
50…乳び・溶血検体検出部(乳び・溶血検出手段)、51…撮像部(画像検出手段)、
12…記憶部(記憶手段)、13…データ処理部(判定手段)、14…制御部(制御手段)、61…分析装置(分析手段)、62…前処理ユニット、64…仕分装置(仕分け手段)、
65…分取・分注装置(分取・分注手段)、80…ラベル剥離部(ラベル剥離手段)、
80a…支持部、81…削り部、82…加熱部、83…カッタ、84…削り板、
84a…先端部、85…挟み部、87…加熱ローラ、90…カットローラ、
90a…カット片、100…ラベル剥離部(ラベル剥離手段)、101…削り部、102…支持部、103…アーム、104…削り刃、105…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器、または検体容器に収容された検体に対して、処理を行う処理手段と、
前記処理の前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする検体処理装置。
【請求項2】
検体を収容する検体容器の側方から前記検体または前記検体容器内の状態を検出する検出手段と、
前記検出の前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする検体処理装置。
【請求項3】
前記検出手段の検出対象は、前記検体容器内に収容された検体、血清、シリコン、及び血餅のうち少なくともいずれかの液面位置であることを特徴とする請求項2記載の検体処理装置。
【請求項4】
検体を収容する検体容器の側方から前記検体の画像情報を検出する画像検出手段と、
検出した前記画像情報に基づき、前記検体の色から前記検体の乳び状態または溶血状態を検出する検出手段と、
前記画像情報を検出する前に、前記検体容器の側部に付されたラベルの少なくとも一部を剥ぎ取るラベル剥離手段と、を備えたことを特徴とする検体処理装置。
【請求項5】
前記ラベル剥離手段は、
前記検体容器の側部の前記ラベルの接着部分に超音波振動を付与する超音波振動手段と、
前記ラベルを削る削り部と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記ラベル剥離手段は、
前記検体容器の側部に接着された前記ラベルを加熱する加熱部と、
前記ラベルの剥離対象部を切るカッタと、
前記ラベルを削る削り部と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記ラベル剥離手段は、前記検体容器の側部に当接された状態で移動することにより前記ラベルを削る削り刃を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記検体容器を立位状態で保持して所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段を備え、
前記ラベルの情報を読み取るラベル読取手段と、前記ラベル剥離手段と、前記検出手段と、前記検体を試薬と反応させて前記検体を分析する分析処理を行う分析手段とが、前記搬送経路の上流側から下流側に向かって順に設けられたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか記載の検体処理装置。
【請求項9】
検体を収容する検体容器の側部から前記検体の画像情報を検出する工程と、
検出した前記画像情報に基づき、前記検体の色から前記検体の乳び状態または溶血状態を検出する工程と、
前記画像情報を検出する前に、前記検体容器の側部に配されたラベルの少なくとも一部を剥離する工程と、を備えたことを特徴とする検体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132939(P2012−132939A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88207(P2012−88207)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2009−230740(P2009−230740)の分割
【原出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(309007184)あおい精機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】