説明

検体採取器具

【課題】本発明は採取部位に付着している検体を採取する検体採取器具に関するもので、検体の採取量のばらつきを抑えることができる検体採取器具を提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成する為に、検体の採取部位の表面を所定の状態に保つ枠体2と、この枠体2によって所定状態に保たれた前記採取部位の表面から検体を採取する検体採取部4と、この検体採取部4を前記採取部位の表面に略一定の当接荷重で当接させる弾性結合体3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取部位に付着している検体を採取する検体採取器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検体採取器具の構成は以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、検体が付着した採取部位に押し当てて検体を採取する検体採取部を備え、この検体採取部を回転や振動させることにより定量的に微生物の採取を行う構成となっている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−334059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例における課題は、採取者によって、また、採取する時々で検体の採取量にばらつきが生じてしまうということであった。
【0006】
すなわち、特に口腔内の舌など、被検者の状態によって表面の張りや硬度が変化する採取部位から検体を採取する場合、押圧の力加減によって検体採取部と採取部位の接触面積が変動し易く、また検体採取部の動きに追従して採取部位が動く場合もあり、採取部位の一定幅と一定の長さ(=一定の面積)から検体を採取することが難しいので、検体の採取量にばらつきが生じてしまうのであった。
【0007】
そこで本発明は、検体の採取量のばらつきを抑えることができる検体採取器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために本発明は、検体の採取部位の表面を所定の状態に保つ状態保持部と、この状態保持部によって所定状態に保たれた前記採取部位の表面から検体を採取する検体採取部と、この検体採取部を前記採取部位の表面に略一定の当接荷重で当接させる荷重制御部とを備えた構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、検体の採取部位の表面を所定の状態に保つ状態保持部と、この状態保持部によって所定状態に保たれた前記採取部位の表面から検体を採取する検体採取部と、この検体採取部を前記採取部位の表面に略一定の当接荷重で当接させる荷重制御部とを備えた構成であるので、検体の採取量のばらつきを抑えることができる。
【0010】
すなわち、本発明においては、状態保持部によって採取部位の表面の張りや硬度を所定の状態に保つことができ、しかも、荷重制御部により検体採取部を採取部位表面に略一定の当接荷重で当接させることができるので、採取者の技量や被験者の状態に関わりなく、また、採取する時々によらず検体の採取量のばらつきを抑えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における検体採取器具の外観斜視図
【図2】(a)(b)は、ともに同検体採取器具で検体を採取する状態を示した側面図
【図3】本発明の第2の実施形態における検体採取器具の外観斜視図
【図4】本発明の第3の実施形態における検体採取器具の外観斜視図
【図5】(a)は本発明の第4の実施形態における検体採取器具の外観斜視図(b)は側面図
【図6】(a)は本発明の第5の実施形態における検体採取器具の外観斜視図(b)は側面図
【図7】(a)は本発明の第6の実施形態における検体採取器具の外観斜視図(b)は側面図
【図8】(a)は本発明の第7の実施形態における検体採取器具の外観斜視図(b)は側面図
【図9】本発明の第7の実施形態における要部拡大斜視図
【図10】(a)は本発明の第7の実施形態における要部拡大斜視図(b)は拡大側面図
【図11】(a)は本発明の第7の実施形態における要部拡大斜視図(b)は拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。ここでは口腔内の舌上における検体採取を例に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における検体採取器具の外観斜視図を図1に、検体を採取する状態を図2に示す。
【0014】
図1において、1は本体であり、この本体1の一端には、採取部位に押し当てられ、この押圧により採取部位の表面状態を一定の状態に保持する枠体2(状態保持部の一例)が備えられている。そして、この本体1の枠体2に対する他端には採取者が掴んで検体採取器具全体を保持するための把持部6を備えている。
【0015】
ここで、枠体2の内方には、ブラシ、綿球などの検体を採取する要素で構成された検体採取部4が形成され、この検体採取部4の下端部は図1に示すように、枠体2が囲む面と垂直方向に距離δだけ離れている。
【0016】
そして、荷重制御部の一例である弾性結合体3が、枠体2の本体1側の一辺2aと検体採取部4とを弾性を有する状態で結合している。ここで、この弾性結合体3は、検体採取部4の下端部が距離δだけ押し上げられ、検体採取部4の下端部が枠体2で囲まれる面に到達するまで弾性結合体3が撓められた状態において、枠体2で囲まれる面内の領域に収納されるよう長さが決められ、かつ枠体2が囲む面と垂直方向に所定の荷重を生じるものであって、例えば弾性結合体3の断面形状や、その材質などによって上記の条件を満たすようにされているものである。
【0017】
以下、この検体採取器具を用いて口腔内の舌上において検体を採取する状態に基づいて詳細を説明する。
【0018】
図2(a)は、本実施形態の検体採取器具を口腔内に挿入した状態を示す側面図であり、図2(b)は本実施形態の検体採取器具で検体を採取している状態を示す側面図である。
【0019】
図2に示すように検体の採取時、採取者23は把持部6を掴んで口腔内21に検体採取器具を挿入し、被験者20の舌22上面に対し、検体採取器具の本体1が略水平になるように押し当てる。
【0020】
この時、最初に検体採取部4が舌22に当接した後、本体1が垂直方向に下降すると、枠体2が舌22に当接し、この状態からさらに舌22上面に向けて枠体2を押圧させる。
【0021】
このような状態において弾性結合体3は、検体採取部4の下端面が距離δだけ押し上げられることによって撓み、この撓みによって、枠体2が囲む面と垂直方向、すなわち舌22の上面に対して垂直下方向に所定の荷重(舌22上への押圧)を生じる。
【0022】
ここで、本体1と把持部6、および枠体2は、高い剛性を有するポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリカーボネイトなどの樹脂で一体形成され、その断面は採取者23が把持部6を掴んで枠体2を被験者20の舌22に押し当てる荷重(一般的には50グラムから500グラム程度)に対する充分な剛性を有し、撓みにくい形状としている。
【0023】
また、弾性結合体3の撓みが増加し、その後、枠体2が舌22に押し当てられることで弾性結合体3は検体採取部4の下端面が距離δだけ押し上げられることによって撓み、所定の荷重(一般的には5グラムから40グラム程度の舌22上への押圧)が発生する形状としている。例えば本体1と弾性結合体3を一体で形成する場合は、弾性結合体3を本体1より小さな断面積と適切な長さとすることで、主に撓みがこの弾性結合体3のみで生じるような構成としている。
【0024】
一般に舌22の状態は各々の被験者によって異なり、舌22が口腔内21に位置する場合と口腔外に突出させた状態では表面の硬さが異なる。特に舌22が口腔内21にある場合は筋肉の緊張が無い為に弛緩して柔らかい。
【0025】
本実施形態の検体採取器具は、枠体2が舌22を押圧することによって枠体2で囲まれた面内の領域の舌表面22aに張力を発生させて、舌表面22aを一定の硬度に保つことができるので、検体採取部4の舌22への埋没を防止できるだけでなく、検体採取部4と舌表面22aの接触面積が採取者23の技量によらず略一定を保つことができ、採取される検体の量が一定になるという効果が得られる。
【0026】
すなわち、従来の検体採取器具のように枠体2を有しない場合は、検体採取器具を舌22に当てても検体採取部4が舌22に深く埋没するため、採取者23の技量によって検体採取部4と舌22の接触面積が異なり、採取される検体の量にばらつきが生じるのである。
【0027】
この従来例について今少し説明すると、従来例でも検体採取部4は、弾性結合体3の端部に、接着剤によって綿糸や化繊を接着させたり、静電植毛によって短い化繊を植接したりすることで構成されている。
【0028】
このため、舌22に押し当て、図2(b)に示す矢印Aの方向に検体採取部4を移動させ検体採取部4と舌表面22aを擦過させたて検体を採取すると、舌22との接触面積の広さの違いによって検体の採取量に大きな違いが生じるのである。
【0029】
これに対して本実施形態では、上述のごとく枠体2を舌表面22a上面に押し付け、この枠体2内に存在する舌表面22a部分に張力を与え、適度に硬化した舌表面22aに検体採取部4の下端面を押し付けるので、上述した距離δにより予め設定していた弾性結合体3の撓みの量を一定化することができる。したがって検体採取部4に安定して所定の荷重を付与できるため、検体採取部4による採取検体量を、ばらつきなく安定させることができるのである。
【0030】
なお、この枠体2は、舌22を押さえることができる程度の大きさであればよく、検体採取部4の下端面が距離δ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に検体採取部4を枠内に収納できるに充分な広さであればよい。
【0031】
したがって、枠体2としては、例えば一辺が2cm前後の矩形や、直径2cm程度の円形や楕円形が好ましい。また、舌表面22aを検体採取部4によって擦過して検体を採取する場合は、枠体2によって検体が排除されないように枠体2の表面は滑らかな状態が好ましく、その端部にエッジを有しない形状が好ましい。
【0032】
さらに本実施形態では、図1に示すように弾性結合体3と枠体2の一辺2aとの結合部の近傍に分離部5を有している。つまり、必要に応じて弾性結合体3を枠体2の一辺2aから分離するようにしているのである。
【0033】
具体的には、上述したように本体1と枠体2および弾性結合体3が一体で形成される場合、分離部5はノッチ形状(切り欠き)など、応力が集中する形状であればよい。
【0034】
その場合、ノッチ形状(切り欠き)による分離部5の強さは、検体採取部4の下端面が距離δ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に生じる応力には十分に耐えることができる程度に強く、一方、弾性結合部3と本体1との分離を意図するときは、検体採取部4の下端面が距離δ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に生じる応力よりも大きな外力を加えることによって容易に破断し、弾性結合体3と本体1とを容易に分離することができるように構成されている。
【0035】
なお、本体1とは別の構成要素で弾性結合体3を構成することも可能である。この場合は弾性結合体3の材料として柔軟性の高いナイロンやポリプロピレン、および各種エラストマーを使うことが好ましく、材料の柔軟性と形状の選択によって、より繊細な荷重の設定が可能となる利点がある。
【0036】
この場合、分離部5はスナップフィットなどの圧入嵌合やねじなどで構成され、検体採取後は弾性結合体3を本体1から抜去する構成にすると好適である。
【0037】
いずれの場合も分離部5で弾性結合部3と本体1とを分離することで、検体の付着部分である検体採取部4と弾性結合体3のみの小さく分離することができる。
【0038】
このため、検体採取器具によって検体を採取した後、検体採取器具の検体採取部4に付着した検体を検量するための検量機器に、前記分離した部分を装着し易くでき、また検体を搬送する為のスピッツ管などへの装填が簡便になる効果が得られる。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における検体採取器具を図3に示す。本実施の形態2の説明では上記実施の形態1における検体採取器具と同一部分については、同一番号を付す事によって、説明を簡略化する。
【0040】
図3は本実施の形態2の検体採取器具の外観斜視図であり、枠体2を構成する4辺において、検体を採取する際に舌を擦過するために検体採取器具を移動させる方向である擦過方向Aと平行な2辺の2c,2dを、これと直交する2辺の2a,2bより舌を押圧する方向(下方向)に突出させている点が、実施の形態1と異なる。
【0041】
すなわち、本実施の形態2では、舌22を擦過して検体を採取する際に、検体採取部4が擦過方向Aに移動するとき、枠体2を構成する2辺2a,2bが舌22に当接することによって検体が排除されることの無いように、検体採取部4が擦過する経路に当接しない2辺2c,2dのみで舌22を押圧し、舌表面に張力を発生させる。
【0042】
また、検体の採取時に枠体2の中央部に、検体採取部4が位置するように弾性結合体3の長さを決めている。
【0043】
しかし、この場合には、採取部位である舌22の表面の全周囲を枠体2で囲むことができないため、舌22表面の硬度ムラが発生するが、その場合でも最も影響を受けにくい位置、すなわち枠体2の中央部に検体採取部4を位置させることによって、その影響を緩和させている。
【0044】
また、枠体2の2辺2c,2dを実施の形態1の場合より長くすることでも、舌22表面の硬度ムラを軽減することが可能である。
【0045】
以上のごとく本実施の形態2では、擦過方向Aと直交する2辺2a,2bによって採取部位である舌の表面を擦過することがないので、採取部位に本来存在していた検体を適切に採取することができる。
【0046】
これにより、採取量と実際に存在する検体の量に誤差が生じることを防止でき、本来、舌22上に存在する検体の量を正確に採取できる。つまり、舌22上に存在する検体を、採取量のばらつきが無い状態で、採取できるという効果を有する。
【0047】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における検体採取器具を図4に示す。
本実施の形態3の説明では、上記実施の形態1における検体採取器具と同一部分については、同一番号を付す事によって、説明を簡略化する。
【0048】
図4は本実施の形態3の検体採取器具の外観斜視図であり、弾性結合体3の断面形状を、方向Z(=厚さ方向)に対して方向X(=幅方向)を大きくさせている点が実施の形態1と異なる。
【0049】
すなわち、本実施の形態3では弾性結合体3を、その撓み方向と直交する方向に扁平な板状とすることで、弾性結合体3が撓んだ際に図4に示す方向Xへの変形を生じにくくし、方向Zのみの変形を起こし易くすることで、弾性結合体3の撓みによる押圧が正確に精度良く舌22上に伝わるようにしている。
【0050】
これは検体採取器具で舌22上を擦過して使用するときには極めて有効であり、舌22上の摩擦の変動や舌22の表面の凹凸などによって検体採取部4が方向Xに振れて本来発生するべき舌22上への押圧が方向Xへの変形の力に使われ、分散されて舌22上への押圧が減少することを防ぐことができ、安定して舌22を押圧する荷重をかけることができる。このため、舌22上に存在する検体を、ばらつきなく採取できるという効果を有する。
【0051】
なお、検体採取部4は、弾性結合体3の端部全周囲、あるいは舌22と接する面のみを覆う場合でも良く、どちらも同等の効果を奏することができる。
【0052】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における検体採取器具を図5(a),(b)に示す。本実施形態4の説明では、上記実施の形態1における検体採取器具と同一部分については、同一番号を付す事によって、説明を簡略化する。
【0053】
図5(a)は本実施の形態4の検体採取器具の外観斜視図であり、図5(b)はその側面図である。
【0054】
本実施の形態4の検体採取器具は、固定部分と可動部分を有している点が実施の形態1と異なる。
【0055】
すなわち、図5に示すごとく、本体1は、その一端側には状態保持部である枠体2が設けられ、他端側には把持部6が一体に形成された固定部分と、検体採取部4を有する弾性結合体3と分離部5を介して結合されている可動体7で形成される可動部分から成る。
【0056】
固定部分は可動部分を可動自在な状態で保持する嵌合部を備え、可動部分は検体を採取する際に舌22を擦過するために検体採取部4を移動させる方向である擦過方向Aに摺動自在に嵌合する。
【0057】
ここで、本実施の形態4では図5に示すように、固定部分と嵌合している部分における可動体7の断面を四角形とし、また、この可動体7の四角形断面部と組み合わされる固定部分の嵌合部を四角形の貫通孔とすることで、可動部分を固定部分に対して回転不能に、かつ摺動可能に組み合わせている。これにより、検体採取部4の所定の面、すなわち検体採取部4の下面が確実に舌22の表面に当接するようにできる。
【0058】
なお、可動部分を固定部分に対して回転不能に、かつ摺動可能に組み合わせる方法はこれに限定されるものでは無く、円柱と、円形の貫通孔の組み合わせでも良い。
【0059】
可動体7の分離部5と結合されている方向と反対側には採取者が掴んで摺動させることのできる操作部8が形成されている。そして、可動体7の中央部には柱状の凸部であるストッパ7aを有し、本体1を貫通して設けられた角孔である規制孔1aを有している。この規制孔1aは擦過方向Aに直交する両端面を有しており、可動体7を擦過方向Aに摺動させたときに、この両端面にストッパ7aが当接することで、検体採取部4を擦過方向Aに所定の長さだけ移動させることを可能としている。
【0060】
以下、この検体採取器具を用いて口腔内の舌22上において検体を採取する状態に基づいて詳細を説明する。本実施の形態4においても上記実施の形態1と同様に、まず、片手で前記把持部6を掴んで被験者の口腔内21に挿入し、検体採取部4を舌22に対して検体採取器具が略水平になるように押し当てる。
【0061】
そして、最初に検体採取部4が舌22に当接した後、本体1を垂直に下降させ、枠体2を舌22に当接させ、さらに押圧する。このとき弾性結合体3は、検体採取部4の下端面が距離δだけ押し上げられることによって撓み、この撓みによって、枠体2が囲む面と垂直方向、すなわち舌22の上面に対して垂直下方向に所定の荷重(舌22上への押圧)が発生する。
【0062】
次に、もう片方の手で操作部8を掴んで図5に示す矢印A(擦過方向)の方向に可動体7を動かし、ストッパ7aが規制孔1aによって規制される長さだけ移動させることで検体を採取する。
【0063】
これにより、枠体2で舌22の表面に張力を与え、表面の硬度を保持した舌22に、所定の押圧で検体採取部4を当接し、所定の長さだけ検体採取部4で舌22の表面を擦過することを可能としている。
【0064】
以上のように、舌22の表面に対する押圧だけでなく、検体採取部4で舌22の表面を擦過する長さも所定の値に規制できるため、検体採取部4が被験者の舌22上を擦過する面積、および舌22の表面に対する押圧荷重が略一定となり、採取者の技量に関わらず、舌22上に存在する検体の量をばらつきなく安定して採取ができるという効果を奏する。
【0065】
さらに、枠体2を舌22上に固定した状態で、検体採取部4を舌22の表面を擦過させることができ、枠体2を舌22上で動かす必要がないので、舌22上の張りや硬度の状態を一定に保持し易いという効果を奏する。
【0066】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5における検体採取器具を図6(a),(b)に示す。本実施の形態5の説明では、上記実施形態4における検体採取器具と同一部分については、同一番号を付す事によって、説明を簡略化する。
【0067】
図6(a)は本実施の形態5の検体採取器具の外観斜視図であり、図6(b)はその側面図である。
【0068】
上記実施形態4と異なる点は、固定部分に対して可動部分が回動自在に嵌合する点である。
【0069】
すなわち、図6に示すごとく本体1は、その一端側の状態保持部である枠体2と、その他端側の把持部6が一体に形成された固定部分と、検体採取部4を有する弾性結合体3と分離部5を介して結合されている可動体7で形成される可動部分から成る。
【0070】
また、可動体7の一端には採取者が掴んで回転させることのできる操作部8と、可動体7が回転した角度を確認できるように、把持部6の近傍に柱状の凸部である目印7bを有する。
【0071】
検体採取部4を一端に持つ弾性結合体3は、可動体7と同軸を成し、他端において分離部5を介して可動体7と結合している。枠体2は、本体1との境界近傍に屈曲部1cを設けて本体1と所定の角度を成している。そして、枠体2の下面から検体採取部4を突出させている。このとき、この検体採取部4の下端部は図6(b)に示すように、枠体2が囲む面と垂直方向に距離δだけ離れている。
【0072】
この検体採取器具を用いて口腔内21の舌22上において検体を採取する状態は、ほぼ上記実施の形態4と同様であるが、操作部8を、目印7bを確認しながら所定量回転させることで、舌22上に押し付けられた検体採取部4が所定の量、回転をして検体を採取する点のみが異なる。
【0073】
このとき弾性結合体3は、枠体2が舌22の表面に当接する状態、すなわち検体採取部4の下端面が距離δだけ押し上げられる状態まで撓み、この撓みによって、枠体2が囲む面と垂直方向、すなわち舌22の上面に対して垂直下方向に所定の荷重(舌上への押圧)を生じる点は上記実施の形態4と同様である。
【0074】
以上のように、本実施の形態5は、押圧だけでなく回転する角度も所定の値に規制できるため、検体採取部4が被験者の舌22上を回転方向に当接する面積が略一定となり、採取者の技量に関わらず、ばらつきなく安定した検体の採取ができるという効果を奏する。
【0075】
そして、枠体2を舌22上に固定した状態で、検体採取部4で舌の表面を擦過することができ、枠体2を舌22上で動かす必要がないので、舌22上の張りや硬度の状態を一定に保持し易いという効果を奏する。
【0076】
さらに、検体採取部4が舌22上を移動することなく一箇所で回転することから、枠体2の小型化が可能であり、器具の小型化を実現できるとともに、舌22の小さな被験者に対して検体の採取が行い易いという効果を奏する。
【0077】
なお、本実施の形態5では、回転量を規制する手段として目印7bを用いたがこれに限定されるものではない。上記実施の形態4と同様に可動体7が回転方向に一定量回転したときに固定部分と接触することによって回転を規制されるストッパを可動部分に設けることによって回転量を一定に規制することによっても同様の効果が得られる。
【0078】
(実施の形態6)
本発明の実施形態6における検体採取器具を図7(a),(b)に示す。本実施の形態6の説明では、上記実施形態4における検体採取器具と同一部分については、同一番号を付す事によって、説明を簡略化する。
【0079】
図7(a)は本実施形態6の検体採取器具の外観斜視図であり、図7(b)はその側面図である。
【0080】
上記実施形態4と異なる点は、把持部6と枠体2の間において可動体7の一部に一体形成(別体を結合させても良い)した操作部8を有する点である。
【0081】
また、把持部6の一部に、操作部8を摺動可能に保持する孔6aを設け、採取者23が片手で操作部8を操作しながら把持部6も保持できるように把持部6の長さを伸長させている。
【0082】
以下、この検体採取器具を用い、口腔21内の舌22上において、検体を採取する状態に基づいて詳細を説明する。
【0083】
まず採取者23の片手で前記把持部6を掴み、その中の1本の指23a(本実施の形態6では人差し指)を操作部8に当接させる。その状態を保ちながら被験者の口腔内21に枠体2を挿入し、検体採取部4を舌22に当てながら本体1を略垂直に移動し、枠体2を舌22上に略水平に押し付ける。
【0084】
このとき弾性結合体3は、検体採取部4の下端面が距離δだけ押し上げられることによって撓み、この撓みによって、枠体2が囲む面と垂直方向、すなわち舌22の上面に対して垂直下方向に検体採取部4が所定の押圧で接触する。
【0085】
次に、操作部8に当接させた指23aをA方向(擦過方向)に動かして操作部8を摺動させると、可動体7と一体である検体採取部4が舌22を擦過することで検体を採取できる。
【0086】
なお、検体採取部4が舌22を擦過する長さは、ストッパ7aが規制孔1aに規制される長さによって所定の値に決められる点は上記実施の形態4と同様である。
【0087】
ここで図7に示す操作部8の擦過方向Aの両端面と操作部8を摺動可能に保持する孔6aの擦過方向Aの両端面とで可動部分の移動量を規制しても良い。これにより、ストッパ7aが規制孔1aを設けることなく、可動部分の移動量を規制することができるので器具の小型化を実現できる。
【0088】
以上のように、本実施の形態6では、枠体2で、表面の硬度を保持した舌22に、検体採取部4が所定の押圧で当接し、規制された長さだけ擦過することで、略一定の面積から検体を採取できるので、採取者の技量に関わらず、ばらつきなく安定した検体の採取ができるという効果に加えて、採取を行う全ての工程が採取者の片手で実施できる。
【0089】
これにより検体採取器具で採取を行う際、他方の手で被験者の口腔を開けて保持できるため、検体を採取し易くなるという効果を奏する。
【0090】
また、検体採取部4が被験者の舌22上を擦過する面積が略一定となり、採取者の技量に関わらず、安定した検体の採取ができるという効果と、枠体2が舌22上から動かないので、舌22上の張りや硬度の状態を一定に保持し易いという効果については上記実施形態4と同様である。
【0091】
なお、本実施の形態6では操作部8を本体1の上面側に設けて人差し指などにて操作するものとして説明したが、これに限定されるものではない。操作部を本体1の側面側に設け、親指などにて操作することによっても同様の効果を奏することができる。
【0092】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7における検体採取器具を図8に示す。なお、図8(a)は、その外観斜視図であり、図8(b)は、その側面図である。
【0093】
この実施形態においては、図7における可動体7(可動部)を板体で構成し、弾性結合体3(荷重制御部)を、弾性を有する板体で構成したものである。そして、この弾性結合体3は、図9に示すごとく、先端側の検体採取部4側から後端側に向かって、それに直交する方向の断面積が徐々に大きくなる三角板形状としている。
【0094】
なお、弾性結合体3の後端には、結合突起5aが設けられており、この結合突起5aが、可動体7の分離部5に設けられた結合穴5bと嵌合することにより、弾性結合体3は可動体7に着脱自在に結合している。
【0095】
そして、この可動体7の後方側に設けた操作部8を、図8に示すごとく、指23aでA方向(擦過方向)に摺動させることにより、可動体7に結合した弾性結合体3先端の検体採取部4を、枠体2に対して相対的に可動させることができる。
【0096】
また、状態保持部である枠体2は、図8(b)に示すごとく、その先端側を上方に向けて持ち上げ、この下面2aよりも下方において、検体採取部4が、枠体2の後端側から先端側方向に摺動する構成としている。
【0097】
ここで、検体採取時においては、図8(a)に示すごとく、枠体2により所定状態に保たれた採取部位(舌22)の表面上で検体採取部4を摺動させることで、採取部位を擦過し、検体を採取することになる。
【0098】
つぎに、検体採取の終了時においては、枠体2内で摺動させていた検体採取部4を、弾性結合体3とともに、可動体7から前方に向けて引き抜くことにより、枠体2から分離し、その後、検査装置(図示せず)にて、検体採取部4で採取した検体を検査することとなる。
【0099】
以上の説明により本実施形態における基本的な構成と動作が理解された所で、以下本実施形態における最も大きな特徴点について説明する。
【0100】
本実施形態においては、まず、弾性結合体3として、先端側から後端側にかけて、その断面積が徐々に大きくなる三角形状をした板体を用いて、検体採取部4への当接荷重を略一定にし、つぎに、枠体2の先端側を上方に向けて持ち上げることにより、検体採取部4への当接荷重を、さらに略一定とし、これにより、検体の採取量のばらつきを抑えるようにしたものである。これを以下に説明する。
【0101】
まず、弾性結合体3と検体採取部4について詳細に説明する。
【0102】
図10、図11は、この検体採取時における弾性結合体3、および検体採取部4の動きを説明するための図であり、本体1には、その前方に、板体である弾性結合体3の板厚よりわずかに大きい開口寸法を有する摺動口24が設けられており、この摺動口24に対して、弾性結合体3が矢印A方向に摺動自在に保持されている。
【0103】
ここで、操作部8(図8)を後方側に引いたときには、操作部8に連動して弾性結合体3も後方側に引かれ、図10(a)に示すごとく、その大部分が本体1内に引き込まれた状態となり、弾性結合体3の先端が、本体1の摺動口24から枠体2の内部に向けて、有効長L1だけ突出することになる。
【0104】
一方、操作部8を前方側に伸ばしたときには、操作部8に連動して弾性結合体3は本体1から押し出され、図11(a)に示すごとく、弾性結合体3が、本体1の摺動口24から枠体2の内部に向けて、有効長L2だけ突出することになる。
【0105】
ここで、弾性結合体3の先端に設けた検体採取部4においては、通常であれば、弾性結合体3の有効長がL1からL2と長くなるに従って、検体採取部4を押し上げるために必要な力は、徐々に小さくなっていく。つまり、検体採取部4への当接荷重は変化していく。
【0106】
しかしながら、本実施形態においては、弾性結合体3は、先端側の検体採取部4側から後端側に向かって断面積が徐々に大きくなるように、その幅が徐々に大きくなる三角板形状としている。
【0107】
そのため、弾性結合体3の有効長は、L1からL2まで徐々に長くなるのであるが、それに伴って、弾性結合体3の断面積も徐々に大きくなっていき、その結果、弾性結合体3の曲げ強度は徐々に強くなっていく。
【0108】
すなわち、検体採取部4を有する弾性結合体3は、その有効長が短いときには弾性結合体3の曲げ強度を弱くでき、その有効長が長くなるに従って曲げ強度を強くすることができるので、その結果として、弾性結合体3の有効長に関わらず、検体採取部4への当接荷重を略一定とすることができ、検体の採取量のばらつきを抑えることができるものとなる。
【0109】
なお、本実施形態においては、弾性結合体3として、先端側から後端側にかけて、その断面積が徐々に大きくなるように、その幅が徐々に大きくなる三角形状をした板体を用いたのであるが、先端側から後端側にかけて、その断面積が徐々に大きくなるように、つまり、弾性結合体3の強度を徐々に高めるような形状であれば、本実施形態と同様の効果を有するものとなる。
【0110】
例えば、先端側の検体採取部4側から後端側に向かって断面積が徐々に大きくなるように、太さが徐々に大きくなる棒体を、弾性結合体3として用いても、検体採取部4への当接荷重を、略一定とすることができ、検体の採取量のばらつきを抑えることができる。
【0111】
つぎに、枠体2(状態保持部)と検体採取部4について詳細に説明する。
【0112】
枠体2は、図10(b)、図11(b)に示すごとく、その先端側が上方に向けて持ち上がっており、枠体2の後端側から先端側にかけて、その高さが徐々に高くなるようにしている。そして、この持ち上がった枠体2の下面2aよりも下方において、検体採取部4が、枠体2の後端側から先端側方向に向けて摺動する構成としている。
【0113】
ここで、検体採取時においては、弾性結合体3の前方に設けた検体採取部4は、図10(b)、図11(b)に示すごとく、枠体2の下面2aまで押し上げられ、枠体2の後端側から先端側方向に、枠体2の下面2aに沿って摺動する。この時、持ち上がった枠体2の下面2aは、検体採取部4の押し上げ量を制御するようになっている。
【0114】
つまり、弾性結合体3の有効長がL1と短い時には、図10(b)に示すごとく、検体採取部4は、当接部位(舌22)からの当接荷重により、枠体2の下面2aに向かって、初期位置25aから押し上げ位置25bまでδ1分だけ小さく押し上げられる。
【0115】
そしてまた、弾性結合体3の有効長がL2と長くなるに従って、図11(b)に示すごとく、検体採取部4は、当接部位(舌22)からの当接荷重により、枠体2の下面2aに向かって、初期位置26aから押し上げ位置26bまでδ2分だけ大きく押し上げられる。
【0116】
すなわち、検体採取部4を有する弾性結合体3は、その有効長が短いときには小さく曲げられ(押し上げられ)、その有効長が長くなるに従って大きく曲げられ(押し上げられ)ることになるので、その結果として、弾性結合体3の有効長に関わらず、検体採取部4への当接荷重を略一定とすることができ、検体の採取量のばらつきを抑えることができるものとなる。
【0117】
なお、この枠体2の下面2aは、当接部位から検体採取部4への当接荷重が略一定となるように、平面あるいは曲面で構成されている。本実施形態においては、この持ち上がった枠体2の下面2aの形状は、先端側に向けて湾曲しながら上方に持ち上がる形状(例えば今回は、2次曲線状の曲面)としている。これにより、検体採取部4の押し上げ量、すなわち検体採取部4への当接荷重を、さらに適切に制御できるものとなる。
【0118】
したがって、採取者の技量に関わらず、適切な当接加重にて検体を採取できるので、検体の採取量のばらつきを抑えることができるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
そしてこの目的を達成するために本発明は、検体の採取部位の表面を所定の状態に保つ状態保持部と、この状態保持部によって所定状態に保たれた前記採取部位の表面から検体を採取する検体採取部と、この検体採取部を前記採取部位の表面に略一定の当接荷重で当接させる荷重制御部とを備えた構成であるので、検体の採取量のばらつきを抑えることができる。
【0120】
すなわち、本発明においては、状態保持部によって採取部位の表面の張りや硬度を所定の状態に保つことができ、しかも、荷重制御部により検体採取部を採取部位表面に略一定の当接荷重で当接させることができるので、採取者の技量や被験者の状態に関わりなく、また、採取する時々によらず検体の採取量のばらつきを抑えることができるのである。
【0121】
つまり、例えば口腔内細菌数の測定において、菌の採取作業が採取者の技量に頼ることなく一定に採取できるため、被検者の口腔内細菌総数をばらつきなく正確に把握することが可能となる。
【0122】
このため、近年、健康の指標として重要性が高まってきている口腔内ケアのための細菌数測定に活用でき、広く普及することが期待できる。
【符号の説明】
【0123】
1 本体
2 枠体(状態保持部)
3 弾性結合体(荷重制御部)
4 検体採取部
5 分離部
5a 結合突起
5b 結合穴
6 把持部
7 可動体
8 操作部
20 被験者
21 口腔内
22 舌
22a 舌表面
23 採取者
24 摺動口
25a 初期位置
25b 押し上げ位置
26a 初期位置
26b 押し上げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の採取部位の表面を所定の状態に保つ状態保持部と、この状態保持部によって所定状態に保たれた前記採取部位の表面から検体を採取する検体採取部と、この検体採取部を前記採取部位の表面に略一定の当接荷重で当接させる荷重制御部とを備えた検体採取器具。
【請求項2】
前記状態保持部は、前記検体採取部が前記採取部位の表面に当接する領域の周囲を略水平に囲う枠体を備え、前記荷重制御部は前記検体採取部と前記枠体とを結合している弾性結合体である請求項1に記載の検体採取器具。
【請求項3】
前記検体採取部は、前記状態保持部の下面よりも下方に向けて突出する構成とした請求項1または2に記載の検体採取器具。
【請求項4】
前記検体採取部を前記状態保持部に対して相対的に可動させる可動部を備えている請求項1から3のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項5】
状態保持部の前記検体採取部の反対側に把持部を設け、この把持部に可動部を設け、この可動部は、指の動作によって検体採取部を操作する操作部を備えている請求項4に記載の検体採取器具。
【請求項6】
前記状態保持部から荷重制御部を分離させる構成とした請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項7】
前記荷重制御部は、弾性を有する棒体で構成し、先端側の検体採取部側から後端側に向かって断面積が大きくなる形状とした請求項4から6のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項8】
前記荷重制御部は、弾性を有する板体で構成し、先端側の検体採取部側から後端側に向かって断面積が大きくなる形状とした請求項4から6のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項9】
前記荷重制御部は、先端側の検体採取部側から後端側に向かって断面積が大きくなる三角板形状とした請求項8に記載の検体採取器具。
【請求項10】
前記状態保持部の先端側は、上方に向けて持ち上がる形状とした請求項4から9のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項11】
前記状態保持部の下面は、先端側に向けて湾曲しながら上方に持ち上がる形状とした請求項10に記載の検体採取器具。
【請求項12】
前記検体採取部は、口腔内から検体を採取する構成とした請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の検体採取器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−204083(P2010−204083A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219996(P2009−219996)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】