説明

検体採取用針、検体採取具及び検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法

【課題】 検体採取用容器のフィルタ部材によって検体を採取するにあたり、濾過を確実に完了させるために栓体を取り外すような血液感染のおそれがある作業をなくすことができる検体採取用容器に用いる検体採取用針、検体採取具及び検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法を提供する。
【解決手段】 栓体5を刺通する針先部分12aを有する第1の中空針12と、検体を採取する針先部分13aを有する第2の中空針13と、端部13bにおいて、第2の中空針13が気密的に接合されているハブ14とを備え、端部12bにおいて、第1の中空針12がハブ14に取外し可能に嵌合されており、ハブ14を介して、第1の中空針12と第2の中空針13とが連通されており、第1の中空針12が栓体5を刺通した後の第1の中空針12と栓体5との嵌合力をA、第1の中空針12とハブ14との嵌合力をBとしたときに、A>Bとされている、検体採取用針10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体採取用容器に、例えば血液などの液状の検体を導入するのに用いる検体採取用針、検体採取具及び検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内の減圧を利用して、真空採血針により血液試料を採取し、かつ内部に収納されたフィルタ部材により血液を濾過するように構成された無遠心採血管が種々提案されている。このような採血管は、例えば、下記の特許文献1〜5に開示されている。
【0003】
従来の無遠心型の検体採取容器では、真空採血針を用いて栓体を刺通し、減圧を利用して血液が採取される。そして、採取された血液が、検体採取容器内に配置された、あるいは検体採取容器に組み合わされたフィルタ部材により濾過される。この場合、血液の採取が終了した後には、真空採血針が抜去される。採取された血液は、フィルタ部材の下方、すなわち濾過された血液が収納される部分に残存している減圧を利用することによりフィルタ部材を通過する。すなわち、フィルタ部材の上方と下方の圧力差により、血液が濾過される。
【特許文献1】特開2002−277357号公報
【特許文献2】特許第3015854号公報
【特許文献3】特開平11−290297号公報
【特許文献4】特開平4−20856号公報
【特許文献5】特開2001−321365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルタ部材の上下の圧力が平衡に達すると、濾過の駆動力がなくなり、濾過が停止することになる。そのため、従来、フィルタ部材の上方で上記栓体を取り外し、フィルタ部材の上方を大気圧として、フィルタ部材の下方と上方とに圧力差を発生させ、濾過を進める必要があった。ところが、血液試料が採取されている検体採取容器の栓体を取り外す必要があるため、作業者が血液の付着により汚染されるおそれがあった。また、栓体を検体採取容器から除去した場合、フィルタ部材上方の空間が外部に大きく解放されることになり、異物が混入するおそれもあった。
【0005】
他方、下記の特許文献3に記載の検体採取容器では、フィルタ部材が下方に配置された内管が外管に気密的に挿入されており、内管を外管から引き出す方向に移動させることにより、フィルタ部材の下方の外管内の圧力を低くすることにより、濾過を促進し得る構造が開示されている。しかしながら、この構造では、濾過の駆動力が上記操作による圧力差だけでは不十分であり、濾過の途中で濾過が停止するおそれがあった。
【0006】
また、下記の特許文献4に記載の検体採取容器では、予め栓により封止され、かつ内部が減圧されている濾過済みの検体採取容器と、血液が採取された検体採取容器とフィルタ部材により連結され、濾過済み検体採取容器内の減圧を利用して、検体採取容器内の血液やフィルタ部材を通過するように構成されている。ここでは、検体採取容器内の減圧度が比較的高くされているが、やはり、途中で濾過が停止するおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、検体採取用容器のフィルタ部材によって検体を採取するにあたり、容器内の減圧を利用して、血液などの検体を速やかに濾過し得るだけでなく、濾過を確実に完了させるために栓体を取り外すような血液感染のおそれがある作業をなくすことができる検体採取用容器に用いる検体採取用針、検体採取具及び検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る検体採取用針は、採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、濾過された検体を収納する検体収納部とを有し、予め内部が減圧されている容器と、検体採取部に採取された検体を濾過するために検体採取部に設けられたフィルタ部材と、の開口を気密封止するように開口に圧入された栓体とを備える検体採取用容器に用いる検体採取用針であって、栓体を刺通する針先部分を有する第1の中空針と、検体を採取する針先部分を有する第2の中空針と、針先部分とは反対側の端部において、第2の中空針が気密的に接合されているハブとを備え、針先部分とは反対側の端部において、第1の中空針がハブに取外し可能に嵌合されており、ハブを介して、第1の中空針と第2の中空針とが連通されており、第1の中空針が栓体を刺通した後の第1の中空針と栓体との嵌合力をA、第1の中空針とハブとの嵌合力をBとしたときに、A>Bとされていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明に係る検体採取用針は、採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、濾過された検体を収納する検体収納部とを有し、予め内部が減圧されている容器と、検体採取部に採取された検体を濾過するために検体採取部に設けられたフィルタ部材と、の開口を気密封止するように開口に圧入された栓体とを備える検体採取用容器に用いる検体採取用針であって、内針と外針との2重針構造により構成されており、栓体を刺通する針先部分を有する第1の中空針と、検体を採取する針先部分を有する第2の中空針と、針先部分とは反対側の端部において、第2の中空針が気密的に接合されているハブとを備え、針先部分とは反対側の端部において、内針がハブに接合されており、針先部分とは反対側の端部において、外針がハブに取外し可能に嵌合されており、ハブを介して、内針と第2の中空針とが連通されており、第1の中空針が栓体を刺通した後の外針と栓体との嵌合力をX、外針とハブとの嵌合力をYとしたときに、X>Yとされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る検体採取具は、本発明に従って構成された検体採取用針と、検体採取用容器を挿入可能な開口端を有するホルダーとを備えている。
【0011】
本発明に係る検体濾過方法では、本発明に従って構成された検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法であって、検体採取用針を用いて検体採取部に検体を導入した後に、検体採取部と外部とを連通させて、検体採取部内の圧力を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る検体採取用針が検体採取用容器の栓体を刺通すると、検体採取用容器内部が減圧されているため、検体採取部に血液などの検体が導入される。検体採取部に血液などの検体が導入されると、容器内の検体採取部と検体収納部との圧力差により、フィルタ部材による血液などの検体の濾過が進行する。
【0013】
第1の中空針がハブに取外し可能に嵌合されており、第1の中空針と栓体との嵌合力A>第1の中空針とハブとの嵌合力Bとされているので、検体採取用容器から検体採取用針を抜去すると、第1の中空針がハブから取外されて、第1の中空針が栓体を刺通したまま残存する。従って、栓体から検体採取用針を抜去した後、検体採取部と外部とが連通される。よって、検体採取部が大気開放となり、その圧力が高められるので、検体採取用針を抜去するだけで、検体の濾過が速やかに進行する。本発明に係る検体採取用針を用いれば、他の装置を要することなく、検体の採取から濾過までを速やかにかつ容易に行なうことができる。
【0014】
第2の発明では、第1の中空針が内針と外針との2重針構造により構成されており、外針がハブに取外し可能に嵌合されており、外針と栓体との嵌合力X>外針とハブとの嵌合力Yとされているので、検体採取用容器から検体採取用針を抜去すると、外針がハブから取外されて、外針が栓体を刺通したまま残存する。従って、栓体から検体採取用針を抜去した後、検体採取部と外部とが連通される。よって、検体採取部が大気開放となり、その圧力が高められるので、濾過を途中で停止させることなく、検体の濾過を確実に完了させることができる。栓体を取外すことなく濾過を完了することができるため、作業者が血液の付着により汚染され難く、かつ検体への異物の混入も生じ難い。
【0015】
本発明において、検体採取用針と検体採取用容器を挿入可能な開口端を有するホルダーとを備えている検体採取具を用いた場合には、ホルダーを手指で容易に把持することができる。従って、検体採取用容器から検体採取用針を容易に抜去することができる。
【0016】
本発明に係る検体採取用針と検体採取用容器とを用いた検体濾過方法では、検体採取用針により栓体を刺通し、検体採取用容器の内部の減圧を利用して、血液などの検体を検体採取用容器の検体採取部に導入することができる。そして、検体を導入した後、検体採取用針を抜去するだけで、検体採取部と外部とが連通されて、それによって検体採取部内の圧力を検体収納部の圧力に比べて高めることができる。従って、この圧力差を利用して、液状の検体の濾過までを、他の部材を必要とすることなく、容易にかつ速やかに行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することに、本発明を明らかにする。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検体の濾過に用いられる検体採取用容器1を示す模式的斜視図である。
【0019】
検体採取用容器1は、容器2を有する。容器2は、上端に開口2aを有する有底管状の容器である。
【0020】
容器2は、例えば、合成樹脂またはガラス等の適宜の剛性材料により形成され得る。もっとも、濾過後の状態を外部から確認することが容易となるため、容器2は、透明な材料で構成されていることが望ましい。
【0021】
容器2内には、フィルタ部材3が配置されている。フィルタ部材3は、血液を血球成分と血漿もしくは血清とに分離し得る適宜のフィルタ材料により構成され得る。本実施形態では、フィルタ部材3は、上端に開口4aを有する略円筒状のフィルタ保持容器4内に収納されている。
【0022】
フィルタ部材3は、検体中の固形物を除去する適宜のフィルタ材料により構成される。このようなフィルタ材料としては、例えば、繊維集合体、微粒子などを挙げることができる。
【0023】
フィルタ保持容器4の底部には複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、赤血球が通過しない径を有し、従ってフィルタ部材により分離された血漿または血清が下方に流れ、血球の下方への移動を防止するように構成されている。
【0024】
フィルタ保持容器4の下端には、濾過された検体を濾過するための検体流下部4bが形成されている。検体流下部4bは、フィルタ保持容器4と一体に形成されており、フィルタ保持容器4の底面から下方に突出するように形成されている。検体流下部4bは、濾過された検体を流下するための中空流路を有する。
【0025】
上記フィルタ保持容器4は、合成樹脂またはガラスなどの適宜の材料により構成され得るが、破損が生じ難く、かつ外部からの濾過の確認を容易とするためには、透明な合成樹脂により構成されていることが望ましい。
【0026】
本実施形態の検体採取用容器1において、フィルタ保持容器4の内部の空間が検体採取部2Aであり、フィルタ部材3は検体採取部2A内に配置されている。濾過前及び濾過中の採取された検体は、検体採取部2Aに収納される。また、検体採取用容器1において、フィルタ部材3の下方の容器2の内部の空間が検体収納部2Bである。濾過された検体は、検体収納部2Bに収納される。
【0027】
容器2の開口2aには栓体5が圧入されている。栓体5は、例えば、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、天然ゴムなどのエラストマーやゴムにより構成され得る。
【0028】
栓体5は、容器2の外部に位置している相対的に径の大きな大径部5a、大径部5aの下面から下方に突出された中径部5b、及び中径部5bの下面から下方に突出された小径部5cを有する。中径部5bが容器2の開口2aに圧入されており、小径部5cがフィルタ保持容器4の開口4aに圧入されている。上記容器2内が減圧された状態で栓体5が容器2に圧入されている。本実施形態では、容器2内は、1〜90kPaの圧力に予め減圧されている。
【0029】
図2に、第1の実施形態に係る検体採取用針10を備える検体採取具11の要部を部分切欠正面断面図で示す。
【0030】
検体採取用針10は、一端に針先部分12aを有する第1の中空針12と、一端に針先部分13aを有する第2の中空針13とで構成されている。図2では、第2の中空針13が上側、第1の中空針12が下側となるように上下に重なるように示されている。また、第1の中空針12の針先部分12が下向きとなるように、第2の中空針13の針先部分13aが上向きとなるように示されている。
【0031】
第2の中空針13の針先部分13aとは反対側の端部13b付近において、第2の中空針13がハブ14に気密的に接合されている。第2の中空針13の端部13bは、ハブ14の下面14aに至らないように、ハブ14に挿入されている。なお、第2の中空針13の端部13bは、ハブ14の下面14aに至ってもよい。
【0032】
第1の中空針12の針先部分12aとは反対側の端部12b付近には、嵌合部材15が取付けられている。嵌合部材15の上面15aには、逆円錐台形状の凹部15bが設けられている。第1の中空針12の端部12bは、嵌合部材15の凹部15bの底面に位置している。
【0033】
上記嵌合部材15の凹部15bに、下端部分が凹部15bの形状よりも若干大きい円錐台形状であるハブ14が下面14aから圧入されて、第1の中空針12がハブ14に取外し可能に嵌合されている。従って、ハブ14を介して、第1の中空針12の端部12bは、第2の中空針13の端部13bと一定間隔を隔てて向い合っている。ハブ14を介して、第1の中空針12と第2の中空針13とは連通されており、血液などの検体の流路16が形成されている。なお、ハブ14の下端部分及び、嵌合部材15の凹部15bの形状は、圧入・取外し可能であれば、円錐台以外の形状であってもよい。
【0034】
ハブ14及び嵌合部材15は、本実施形態では、ゴムやエラストマーなどの弾性材料により構成されているが、硬質の樹脂や金属などの剛性材料により構成されてもよい。
【0035】
検体採取具11には、手指で容易に把持することができる円筒状のホルダー17が検体採取用針10に取付けられている。ホルダー17の内径は、上記検体採取用容器1の容器2の外径よりもわずかに大きくされている。上記検体採取用容器1を挿入可能とするために、ホルダー17の下端17aは、開口されている。ホルダー17の上面17b中央に、ハブ14部分で検体採取用針10が固定されている。従って、ホルダー17の内側の空間の中央上下に、第1の中空針12が配置されている。
【0036】
ホルダー17は、例えば、合成樹脂またはガラス等の適宜の剛性材料により形成され得る。もっとも、第1の中空針12が栓体5を刺通するのを外部から確認することが容易となるため、ホルダー17は、透明な材料で構成されていることが望ましい。
【0037】
次に、検体採取用針10を備える検体採取具11と検体採取用容器1とを用いた検体採取方法を、図3の部分切欠正面断面図を参照して説明する。
【0038】
採血に際しては、検体採取具11の第2の中空針13の針先部分13aを被採血者の血管に刺入するとともに、図3に示されているように、ホルダー17の下端17aより検体採取用容器1を挿入する。検体採取用容器1を挿入すると、第1の中空針12の針先部分12aが栓体5を貫通し、検体採取部2Aに至る。本実施形態では、血液を容器2内の減圧を利用して検体採取部2A内に液状の検体を導入することができる。すなわち、液状の検体としての血液は、被採血者の血管から第2の中空針13、ハブ14、及び第1の中空針12により連通された流路16を通り、第1の中空針12の針先部分12aから容器2内の検体採取部2Aへと導かれる。
【0039】
図4に、血液などの検体を採取した後に、検体採取用容器1から検体採取具11を抜去したときの検体採取容器1と、検体採取具11との状態を部分切欠正面断面図で示す。
血液を導入した後には、ホルダー17を手指などで把持して、検体採取用容器1から検体採取具11を抜去する。このとき、第1の中空針12と栓体5との嵌合力Aが、第1の中空針とハブとの嵌合力Bよりも大きくされている。従って、検体採取用容器1から検体採取具11を抜去すると、嵌合部材15の嵌合部分で第1の中空針12がハブ5から取外されて、第1の中空針12が栓体5に刺通したまま残存する。栓体5に残存した第1の中空針12により検体採取部2Aと外部とが連通されることになる。
【0040】
従って、検体採取用容器1内では、検体採取部2Aにおける圧力が高くなり、検体採取部2Aの圧力と検体収納部2Bとの圧力差により血液がフィルタ部材3により速やかに濾過される。よって、フィルタ部材3の上方の検体採取部2A内と、フィルタ部材3の下方の検体収納部2B内との間の圧力差が高くなり、濾過が再度進行する。このようにして、フィルタ部材3による濾過が確実に完了される。
【0041】
濾過が完了した後には、栓体5の把持部5aを手で掴み、検体採取用容器1から、栓体5及びフィルタ保持容器4を引き抜く。このようにして、容器2内の検体収納部2Bから濾過された検体としての血漿または血清を得ることができる。従って、直ちに検体収納部2B内の血漿または血清を自動分析装置に供したり、あるいは検体収納部2B内の血漿または血清をスポイトやピペットなどにより採取することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、第1の中空針12に取付けられた嵌合部材15に凹部15bを設けて、この凹部15bにハブ14を圧入することで第1の中空針12とハブ14とを嵌合させたが、ハブ14の下面14aに凹部を設けて、この凹部に嵌合部材を圧入してもよい。また、嵌合部材を取付けずに、第1の中空針12の端部12bを直接ハブ14に挿入するなどして、取外し可能に嵌合させてもよい。すなわち、検体採取用容器1から検体採取具11を抜去した際に、第1の中空針12が栓体5を刺通したまま残存するように構成されていればよい。
【0043】
また、本実施形態においては、第1の中空針12の端部12bと第2の中空針13の端部13bとが必ずしも一定間隔を隔てている必要はなく、接するように配置されて、第1の中空針12と第2の中空針13とが連通されていてもよい。
【0044】
図5に、本発明の第2の実施形態に係る検体採取用針20を備える採取用針具21の要部を部分切欠正面断面図で示す。
【0045】
検体採取用針20は、第1の中空針22と、一端に針先部分23aを有する第2の中空針23とで構成されている。第1の中空針22は、一端に針先部分22Aaを有する内針22Aと、一端に針先部分22Baを有する外針22Bとの2重針構造により構成されている。ここでは、内針22Aの径と、第2の中空針23の径とが同じ大きさとされている。外針22Bの内径は、内針22Aの外径よりもわずかに大きくされている。図5では、第2の中空針23が上側、第1の中空針22が下側となるように上下に重なるように示されている。また、内針Aの針先部分22Aa及び外針22Bの針先部分22Baが下向きとなるように、第2の中空針23の針先部分23aが上向きとなるように示されている。
【0046】
第2の中空針23の針先部分23aとは反対側の端部23bにおいて、第2の中空針23がハブ24の上面24aより挿入されて、ハブ24と第2の中空針23とが気密的に接合されている。内針Aの針先部分22Aaとは反対側の端部22Abにおいて、内針22Aがハブ24の下面24bより挿入されて、ハブ24と内針22Aとが接合されている。ハブ24を介して、内針22Aの端部22Abと第2の中空針の端部23bとが一定間隔を隔てて向い合っている。ハブ24を介して、内針22Aと第2の中空針23とは連通されており、血液などの検体の流路25が形成されている。
【0047】
外針22Bの針先部分22Baとは反対側の端部22Bbにおいて、外針22Bがハブ24の下面24aより挿入されて、ハブ24と外針22Bとが取外し可能に嵌合されている。
【0048】
検体採取具21には、検体採取具11と同様に円筒状のホルダー17が検体採取用針20取付けられている。ホルダー17の内側の空間の中央上下に、内針22Aと外針22Bとの2重針構造により構成されている第1の中空針22が配置されている。
【0049】
次に、検体採取用針20を備える検体採取具21と検体採取用容器1とを用いた検体採取方法を図6の部分切欠正面断面図を参照して説明する。
【0050】
採血に際しては、検体採取具21の第2の中空針23の針先部分23aを被採血者の血管に刺入するとともに、図6に示されているように、ホルダー17の下端17aより検体採取用容器1を挿入する。検体採取用容器1を挿入すると、第1の中空針22の針先部分22aが栓体5を貫通し、検体採取部2Aに至る。本実施形態では、血液を容器2内の減圧を利用して検体採取部2A内に液状の検体を導入することができる。すなわち、液状の検体としての血液は、被採血者の血管から第2の中空針23、ハブ24、及び内針22により連通された流路25を通り、内針22の針先部分22Aaから容器2内の検体収納部2Aへと導かれる。
【0051】
図7に、血液などの検体を導入した後に、検体採取用容器1から検体採取具21を抜去したときの検体採取容器1と、検体採取具21との状態を部分切欠正面断面図で示す。
血液を導入した後には、ホルダー17を手指などで把持して、検体採取用容器1から検体採取具21を抜去する。このとき、外針22Bと栓体5との嵌合力Xが、外針22Bとハブ24との嵌合力Yよりも大きくされている。従って、検体採取用容器1から検体採取具21を抜去すると、外針22Bがハブ5から取外されて、外針22Bが栓体5に刺通したまま残存する。従って、栓体5に残存した外針22Bにより検体採取部2Aと外部とが連通されることになる。
【0052】
よって、検体採取具21においても、栓体5を管状容器2から取外すことなく、濾過を確実に完了させることができる。栓体5を取外す必要がないため、作業者が血液に付着し、汚染されるおそれがない。また、検体採取部2Aの上方が大きく開口された解放状態とならないため、異物の混入のおそれもない。
【0053】
なお、本実施形態においては、外針22Bをハブ24に圧入することで、外針22Bとハブ24とを嵌合させたが、外針22Bの端部22Bbに嵌合部材を取付けて、外針22Bとハブ24とを嵌合させてもよい。また、外針22Bの端部22Bbに接着剤などを塗り、外針22Bとハブ24とを嵌合させてもよい。すなわち、検体採取用容器1から検体採取具21を抜去した際に、外針22Bが栓体5を刺通したまま残存するようにされていればよい。
【0054】
また、本実施形態においても、内針22Aの端部22Abと第2の中空針23の端部23bとが必ずしも一定間隔を隔てている必要はなく、接するように配置されて、内針22Aと第2の中空針23とが連通されていてもよい。
【0055】
図8は、前述した第1の実施形態に係る検体採取用針10を示す正面断面図である。図8に示す検体採取用針10では、図2に示したホルダー17が設けられていない。また、図9は、第2の実施形態に係る検体採取用針20を示す正面断面図である。図9に示す検体採取用針20では、図5に示したホルダー17が設けられていない。このように、本発明では、ホルダー17は必ずしも必須ではない。
【0056】
なお、第1,第2の実施形態においては、検体採取用容器1内の圧力と血管の圧力がほぼ等しくなった時点で採血が終了する。採血終了後には、検体採取具111を検体採取用容器1から引き抜き、駆血帯を取り外す。しかしながら、誤って、先に駆血帯が取り外されると、血管内の圧力が急激に低くなるため、検体採取用容器1内の血液が血管側に向かって逆流するおそれがある。また、検体採取用容器1の配置されている位置が血管よりも高い場合には、位置エネルギーによっても逆流の生じるおそれがある。他方、検体採取用容器内1には、抗凝固剤や薬剤などが収納されていることが多い。従って、逆流が生じると、薬剤や抗凝固剤が血管側に移行し、悪影響を及ぼすおそれがある。従って、誤って血液が検体採取用容器内から血管側に移動する恐れを無くすため、検体採取用針には、例えばハブ内に逆流防止構造を設けてもよい。
【0057】
なお、上記第1,第2の実施形態では二重管構造の検体採取用容器1を用いたが、検体採取用容器1は、上記のように、圧力差により検体を濾過する構造に特徴を有するものであり、その他の構造については、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検体の濾過に用いられる検体採取用容器を説明するための模式的斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る検体採取用針を備える検体採取具の要部を示す部分切欠正面断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る検体採取用針を備える検体採取具と検体採取用容器とを用いて、検体を採取するのを説明するための部分切欠正面断面図。
【図4】血液などの検体を採取した後に、検体採取用容器から検体採取用針を抜去した後の検体採取容器と、検体採取用針との状態を示す部分切欠正面断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る検体採取用針を備える検体採取具の要部を示す部分切欠正面断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る検体採取用針を備える検体採取具と検体採取用容器とを用いて、検体を採取するのを説明するための部分切欠正面断面図。
【図7】血液などの検体を採取した後に、検体採取用容器から検体採取具を抜去した後の検体採取容器と、検体採取具との状態を示す部分切欠正面断面図。
【図8】本発明の第1の実施形態と同様に構成されている検体採取用針を示す正面断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態と同様に構成されている検体採取用針を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0059】
1…検体採取用容器
2…容器
2a…開口
2A…検体採取部
2B…検体収納部
3…フィルタ部材
4…フィルタ保持容器
4a…開口
4b…検体流下部
5…栓体
5a…把持部
5b…大径部
5c…小径部
10…検体採取用針
11…検体採取具
12…第1の中空針
12a…針先部分
12b…端部
13…第2の中空針
13a…針先部分
13b…端部
14…ハブ
14a…下面
15…嵌合部材
15a…上面
15b…凹部
16…流路
17…ホルダー
17a…下端
17b…上面
20…検体採取用針
21…検体採取具
22…第1の中空針
22A…内針
22Aa…針先部分
22Ab…端部
22B…外針
22Ba…針先部分
22Bb…端部
23…第2の中空針
23a…針先部分
23b…端部
24…ハブ
24a…上面
24b…下面
25…流路
A…第1の中空針と栓体との嵌合力
B…第1の中空針とハブとの嵌合力
X…外針と栓体との嵌合力
Y…外針とハブとの嵌合力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、
濾過された検体を収納する検体収納部とを有し、予め内部が減圧されている容器本体と、
前記検体採取部に採取された検体を濾過するために該検体採取部に設けられたフィルタ部材と、
前記本体の前記開口を気密封止するように該開口に圧入された栓体とを備える検体採取用容器に用いる検体採取用針であって、
前記栓体を刺通する針先部分を有する第1の中空針と、
検体を採取する針先部分を有する第2の中空針と、
針先部分とは反対側の端部において、前記第2の中空針が気密的に接合されているハブとを備え、
針先部分とは反対側の端部において、前記第1の中空針が前記ハブに取外し可能に嵌合されており、
前記ハブを介して、前記第1の中空針と前記第2の中空針とが連通されており、
前記第1の中空針が前記栓体を刺通した後の前記第1の中空針と前記栓体との嵌合力をA、前記第1の中空針と前記ハブとの嵌合力をBとしたときに、A>Bとされていることを特徴とする、検体採取用針。
【請求項2】
採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、
濾過された検体を収納する検体収納部とを有し、予め内部が減圧されている容器本体と、
前記検体採取部に採取された検体を濾過するために該検体採取部に設けられたフィルタ部材と、
前記本体の前記開口を気密封止するように該開口に圧入された栓体とを備える検体採取用容器に用いる検体採取用針であって、
内針と外針との2重針構造により構成されており、前記栓体を刺通する針先部分を有する第1の中空針と、
検体を採取する針先部分を有する第2の中空針と、
針先部分とは反対側の端部において、前記第2の中空針が気密的に接合されているハブとを備え、
針先部分とは反対側の端部において、前記内針が前記ハブに接合されており、
針先部分とは反対側の端部において、前記外針が前記ハブに取外し可能に嵌合されており、
前記ハブを介して、前記内針と前記第2の中空針とが連通されており、
前記第1の中空針が前記栓体を刺通した後の前記外針と前記栓体との嵌合力をX、前記外針と前記ハブとの嵌合力をYとしたときに、X>Yとされていることを特徴とする、検体採取用針。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検体採取用針と、前記検体採取用容器を挿入可能な開口端を有するホルダーとを備える、検体採取具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の検体採取用針と、前記検体採取用容器とを用いた検体の濾過方法であって、
検体採取用針を用いて前記検体採取部に検体を導入した後に、検体採取部と外部とを連通させて、検体採取部内の圧力を高めることを特徴とする、検体の濾過方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−259(P2007−259A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182108(P2005−182108)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】