説明

検出システムおよびその使用

分子会合を検出するためのシステムであって:該システムは、i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質と;ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質と:iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質と;iv)モジュレータと;v)検出器とを含んでなり、ここで、前記第1および第2のレポータ成分の接近が前記検出器により検出できる信号を発生し;また前記モジュレータは、前記第2の相互作用基の前記第3の相互作用基との会合をモジュレートし;前記第1および第2のレポータ成分の近接により生じた信号を前記検出器によってモニターすることが前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、分子会合を検出するためのシステムに関する。本発明は、異なる分子の会合を検出すること、従って、ヘテロ二量体および/またはヘテロオリゴマーの形成を検出することに対する特別な応用を有する。
【発明の背景】
【0002】
本発明の背景はタンパク質の会合に関して述べられる。しかし、本発明の範囲がそれに限定されると理解されるべきではない。
【0003】
タンパク質は、細胞内においては単独ではなく、安定なまたは一過性の複合体において作用し、ここではタンパク質−タンパク質相互作用がタンパク質機能の重要な決定因子である(Auerbach et al., (2002), Proteomics, 2, 611-623)。更に、タンパク質およびタンパク質複合体は、DNA、RNAおよび小分子のような他の細胞成分と相互作用する。これら相互作用に含まれる個々のタンパク質およびそれらの相互作用を理解することは、生物学的プロセスをより良く理解するために重要である。
【0004】
インビトロ(細胞表面における架橋の能力を備えた免疫共沈降)、またはインビボ[例えば蛍光RET(FRET)および生物発光RET(BRET)の共鳴エネルギー移動(RET)を含む]の何れかにおいて、タンパク質/タンパク質相互作用を立証するための幾つかのツールが存在する。
【0005】
Gタンパク質結合受容体(GPCRs)の相互作用は、タンパク質、特にヘテロ二量体および/またはヘテロオリゴマーの会合の、生理学的および潜在的には薬理学的な関連性の優れた例を表している。ミリガン(Milligan, (2006), Drug Discovery Today, 11, 541-549)が述べているように、ホモ二量体化およびオリゴマー化は、薬物発見産業のための限られた意味を有する一方、「GCPRへテロ二量体およびオリゴマーの示差薬理学、機能および調節は、GPCRを異なる組織に選択的にターゲッティングするための手段を示唆し、またインビボでは、幾つかの薬理学的物質の作用機構が、単一のGPPCRの異種発現に依存する単純なリガンドスクリーニングプログラムから予測されるものとは異なり得ることのヒントを示唆する」。
【0006】
免疫共沈降は、GPCRヘテロ二量体を同定するために使用されてきた(Jordan BA & Devi LA (1999) G-protein-coupled receptor heterodimerization modulates receptor function Nature 399, 697-700)。しかし、免疫共沈降は、構成的会合とランダム会合との間の区別を可能にするものではない。特に、細胞の溶解および可溶化に続いて、人工的凝集が生じるとの懸念が存在する(Kroeger KM et al. (2003) G-protein coupled receptor oligomerization in neuroendocrine pathways. Front. Neuroendocrinol. 24, 254-278)。更に、免疫共沈降は、自動化または高処理量のスクリーニングには適さない。
【0007】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、インビボでのタンパク質−タンパク質相互作用を検出することができる(Forster, (1948), Ann. Phys. 2, 57-75)。この技術は、緑色蛍光タンパク質(GFP)および異なる分光学的特性を備えた変異体がクローン化されたときに特に魅力的になったものであり、生きた細胞でのアッセイに適用可能である。これは、コードするDNA配列を融合させることによって、GFPおよびその変異体が何れかの標的タンパク質に遺伝子的に結合することを可能にした(Heim et al., (1994), PNAS. USA. 91, 12501-12504)。FRETは、細胞の内側の何処かで生じる相互作用をモニターすることを可能にする。FRETは、何れかの細胞型(哺乳類、酵母、バクテリアなど)または細胞フリー系において決定されることができる。それは、蛍光スペクトロスコピー、蛍光顕微鏡および蛍光活性化細胞分類(FACS)によって検出することができる。
【0008】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)は、インビボタンパク質/タンパク質相互作用を研究するために開発されたもう一つの技術である(Xu et al., (1999), PNAS. USA, 96, 151-156; Eidne et al., (2002), Trends Endocrin. Metabol. 13, 415-421)。FRETと同様に、BRETは、生きた細胞内または細胞フリー系における検出を可能にし、また特定の細胞コンパートメントに限定されない。
【0009】
標識されたタンパク質間の直接の相互作用を評価するために、FRETまたはBRETを使用して、バックグラウンド信号を構成的相互作用から識別することは困難である。更に、RETはエネルギーのドナーおよびアクセプターの相対的な向き、およびそれらの間の距離に依存するので、相互作用親和性は信号強度に直接には関連しない。
【0010】
「飽和」BRET[Mercier JF, Salahpour A, Angers S, Breit A & Bouvier M (2002) Quantitative assessment of beta 1- and beta 2-adrenergic receptor homo- and heterodimerization by bioluminescence resonance energy transfer. J Biol Chem 277, 44925-44931]は、バックグラウンド信号および構成的信号を識別する方法として示唆されてきたが、これは、飽和曲線を発生させるために、供与体で識別されたタンパク質に比較して、増大する濃度のアクセプターで識別されたタンパク質の発現を必要とし、処理能力は決して高くない。
【0011】
以上の議論は、本発明の理解を容易にすることだけを意図したものである。如何なる意味でも、以下の本発明の説明の範囲および適用を制限するものとして解釈されるべきではなく、また議論される如何なる情報も、優先日において当業者の常識の範囲内のものであったとの自白として解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0012】
発明者等は、タンパク質会合の分析において同定された問題の幾つかを克服し、または少なくとも緩和できる検出システムを開発した。
【0013】
より重要なこととして、本発明のシステムは、外部調節に依存する信号を利用し、それによって構成的な会合とランダムな会合との間を識別する能力を可能にすることにより、異なる分子の間で生じる潜在的に構成的な会合(即ち、ヘテロ二量体)、並びに同じ分子の複数のコピーから生じるもの(即ち、オリゴマー)を認識することができる。
【0014】
本発明の第一の側面においては、分子会合を検出するためのシステムが提供され、該システムは、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質と;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた、第2の作用物質と:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質と;
iv)モジュレータと;
v)検出器と
を含んでなり、
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の接近が前記検出器により検出できる信号を発生し、また前記モジュレータは、前記第2の相互作用基の前記第3の相互作用基との会合をモジュレートし、前記第1および第2のレポータ成分の近接により生じた信号を前記検出器によってモニターすることが前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成する。
【0015】
該システムは更に、レポータ成分開始剤を含んでもよく、ここでは前記第1および第2のレポータ成分の近接が、前記レポータ成分開始剤の存在においてのみ前記検出器により検出できる信号を発生する。
【0016】
本発明の第二の側面においては、分子会合の検出のための方法が提供され、該方法は、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質を準備する工程と;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質を準備する工程と:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質を準備する工程と;
iv)モジュレータを準備する工程であって、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータが前記第2の相互作用基と前記第3の相互作用基との会合をモジュレートする工程と;
v)検出器と前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生した何等かの信号を検出および/モニターする工程と
を含んでなり、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生した信号をモニターすることが、前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成する。
【0017】
前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生される何れかの信号を検出および/またはモニターするステップの前に、該方法は更に、レポータ成分開始剤を準備するステップを含んでなり、ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接は、前記レポータ成分開始剤の存在下においてのみ前記検出器によって検出することができる。
【0018】
本発明の一つの形態において、レポータ成分開始剤を準備する工程、およびモジュレータを準備する工程は、前記第1、第2および第3の作用物質を提供する工程の後に行われる。
【0019】
特に、本発明の有利な形態において、前記第1、第2および第3の作用物質は、前記モジュレータが導入される細胞における共発現によって提供される
第三の側面において、本発明は、第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定するための方法を提供するものであり、該方法は、
a)前記試験化合物を、下記を含んでなるシステムと接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基の前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程と、を含んでなるものである。
【0020】
一つの実施形態において、前記第2のタンパク質は受容体であり、本発明の前記第三の側面は、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質のアゴニストであるかどうかを決定するための方法を含んでなるものであり、また第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうかおよび/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程は、より詳細には、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質のアゴニストであるかどうかおよび/またはその程度の決定因子として、前記信号における増大を検出する工程を含んでなるものである。
【0021】
前記第1のタンパク質はまた、受容体であってよい。
【0022】
一つの実施形態において、前記第2のタンパク質は受容体であり、本発明の前記第三の側面は、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうかを決定するための方法を含んでなるものであり、該方法は、
a)前記試験化合物を、下記を含んでなるシステムと接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第2のタンパク質のアゴニスト
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質アンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号における減少を決定する工程と、を含んでなるものである。
【0023】
前記第1のタンパク質は、受容体であってもよい。
【0024】
一つの実施形態において、前記第2のタンパク質は構成的に活性な受容体であり、本発明の前記第三の側面は、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうかを決定するための方法を含んでなるものであり、また第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうかおよび/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程は、より詳細には、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうかの決定因子として、前記信号における減少を検出する工程を含んでなるものである。
【0025】
一つの実施形態において、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、本発明は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマー選択的な活性について試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなり、該方法は、
a)前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
b)前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するならば、前記試験化合物が、前記第1のタンパク質の不存在下において前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり、
前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記第2のタンパク質と相互作用するときにより大きな親和性および/または能力および/または効果を示す試験化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0026】
前記第1および第2のタンパク質が両者共に受容体である一つの実施形態において、本発明は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的アンタゴニズムまたは部分的アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなるものであり、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的アンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定するに工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第1のタンパク質、第2のタンパク質、および/または前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアゴニスト;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであれば、前記第1のタンパク質の不存在下で前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きなアゴニストまたは部分的アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0027】
前記第1および第2のタンパク質が両者共に受容体である一つの実施形態においては、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的なアンタゴニズムまたは部分的アゴニズムについて、試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的アンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)前記第1のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第2のタンパク質、前記第1のタンパク質、および/または前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアゴニスト;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の、および前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きなアゴニストまたは部分的アゴニスト特性を示す試験化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0028】
前記第1および第2のタンパク質が両者共に受容体である一つの実施形態においては、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)構成的に活性な第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の、および前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きな逆アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0029】
前記第1および第2のタンパク質が両者共に受容体である一つの実施形態においては、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第2のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)構成的に活性な第1のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第1のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質の、および前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の逆アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きな逆アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0030】
本発明の第四の側面においては、分子会合の検出のためのキットが提供され、該キットは、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質;
iv)モジュレータ
を含んでなるものであり、
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が検出できる信号を発生し;また前記モジュレータは前記第2の相互作用基と前記第3の相互作用基との会合をモジュレートする。
【0031】
本発明の一つの形態において、前記キットは更にレポータ成分開始剤を含んでなり、前記第1および第2のレポータ成分の近接は、前記レポータ成分開始剤の存在下でのみ検出できる信号を発生する。
【0032】
本発明の一つの形態において、前記モジュレータは、前記第3の相互作用基と会合する前記第2の相互作用基の性向を増大させて、前記第1および第2のレポータ成分の近接によって発生する信号の前記検出器による検出が、前記第1および第3の作用物質の会合の検出を構成するようになっている。
【0033】
前記モジュレータは、第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合をモジュレートするために、前記第1または第3の相互作用基と相互作用してもよく、または第1および第3の相互作用基と同時に、または第2および第3の相互作用基と同時に相互作用してもよい。
【0034】
本発明の別の形態において、前記第1および第2のレポータの近接によって発生される信号減少の前記検出器による検出が、前記第1および第3の作用物質の解離の検出を構成するように、前記モジュレータは、前記第1および第3の前記第2の相互作用基が前記第3の相互作用基と会合する性向を減少させる。
【0035】
本発明の極めて有利な形態においては、前記第1の相互作用基は前記第3の相互作用基とは異なる。従って、この形態では、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号の検出は、前記第1および第3の相互作用基のヘテロ二量体および/またはオリゴマーの検出を構成する。
【0036】
本発明の好ましい形態において、前記第3の作用物質は、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号を、実質的に妨害および/または寄与する信号を発生できる成分を含んでいない。従って、この形態においては、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生された信号の検出が促進される。
【0037】
前記第1および第3の相互作用基が低レベルで発現される場合、および/または前記第1および第2のレポータ成分の選択された組合せが弱い信号を発生する場合のような、幾つかのシステムにおいて、上記で述べた本発明の好ましい形態に従う信号の検出の促進は、アッセイを実行可能にし、更に有利に高処理量のスクリーニングに適用できるようにする可能性がある。
【0038】
本発明の好ましい形態において、前記第3の作用物質は、以下で述べるように、受容体、イオンチャンネル、酵素、キャリア、輸送体、膜一体型タンパク質、細胞骨格タンパク質、粘着分子、情報伝達タンパク質、足場タンパク質、アクセサリータンパク質、輸送タンパク質、転写因子、核共因子、および核酸分子の群から選択される。
【0039】
本発明の好ましい形態において、モジュレータはリガンドまたは酵素である。
【0040】
本発明の好ましい形態において、前記第3の作用物質は、細胞内での発現によって製造される。該第3の作用物質が細胞内での発現によって製造される場合、本発明の方法は、全細胞、細胞フラクション、または細胞フリーシステムにおいて実施されてよい。
【0041】
本発明の特に有利な実施形態において、前記第1および第3の相互作用基は、受容体の形態で提供され、また前記モジュレータは、前記第3の相互作用基の受容体をモジュレートするリガンドの形態で提供されて、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号のモジュレーションが、前記第1および第3の相互作用基のレセプターの会合を示すようになっている。
【0042】
本発明の第五の側面においては、第1のタンパク質および第2のタンパク質のヘテロ二量体に対する選択的活性について試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに、前記試験化合物を増大する濃度で接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が、各濃度において、前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートするかどうかの決定因子として前記信号を決定し、投与量−応答曲線を作成する工程と;
c)前記投与量−応答曲線のヒル勾配(Hill slope)を決定し、ここでの1を越えるヒル勾配は試験化合物と前記へテロ二量体との相互作用を示す工程
を含んでなるものである。
【0043】
本発明の第六の側面では、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定された、第1のタンパク質−第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーが提供される。
【0044】
本発明の第七の側面では、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定された、少なくとも一つの第2の受容体サブユニットと会合した少なくとも一つの第1の受容体サブユニットを含んでなる、ヘテロ二量体もしくはヘテロオリゴマー受容体が提供される。
【0045】
本発明の第八の側面においては、治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストを投与することにより、第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療する方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0046】
一つの実施形態において、前記第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストは、第1の受容体アゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストと共に投与される。
【0047】
本発明の第九の側面においては、治療的に有効な量の第1の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストを投与することにより、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療する方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0048】
一つの実施形態において、前記第1の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストは、第2の受容体アゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストと共に投与される。
【0049】
本発明の第十の側面においては、第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための医薬の製造方法であって、治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストの使用を含んでなり、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0050】
該医薬はまた、第1の受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してよい。
【0051】
本発明の第十一の側面においては、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための医薬の製造方法であって、治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストの使用を含んでなり、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0052】
該医薬はまた、第2の受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してよい。
【0053】
本発明の第十二の側面においては、治療的に有効な量の選択的な第2の受容体アゴニスト、アンタゴニストもしくは逆アゴニスト結合剤、またはその断片を投与することにより、第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0054】
前記選択的な第2の受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニスト結合剤は抗体であってよく、ヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR−移植抗体、および/または抗イディオタイプ抗体が含まれる。
【0055】
本発明の第十三の側面においては、治療的に有効な量の選択的な第1の受容体アゴニスト、アンタゴニストもしくは逆アゴニスト結合剤、またはその断片を投与することにより、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0056】
前記選択的な第1の受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニスト結合剤は抗体であってよく、ヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR−移植抗体、および/または抗イディオタイプ抗体が含まれる。
【0057】
本発明の第十四の側面においては、治療的に有効な量の選択的な第1の受容体アゴニスト、アンタゴニストもしくは逆アゴニスト結合剤、またはその断片を投与することにより、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法が提供される。
【0058】
前記選択的な第1の受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニスト結合剤は抗体であってよく、ヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR−移植抗体、および/または抗イディオタイプ抗体が含まれる。
【0059】
本発明の第十五の側面では、本発明の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの前記第2のタンパク質のアゴニストが提供される。
【0060】
本発明の第十六の側面では、本発明の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニストが提供される。
【0061】
本発明の第十七の側面では、本発明の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの前記第2のタンパク質の逆または部分的アゴニストが提供される。
【0062】
本発明の第十八の側面では、本発明の方法により同定された、前記第1のタンパク質−第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの選択的なアゴニストおよび/またはアンタゴニストおよび/または逆アゴニストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、分子会合を検出するシステムの基礎を形成する作用物質の構成を示している:第1の作用物質は、第1のレポータ成分に結合した第1の相互作用基を含んでなり;第2の作用物質は、第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を含んでなり;第3の作用物質は、第3の相互作用基を含んでなるものである。
【図2】図2は、モジュレータの投与が、好ましくは第3の相互作用基と単独で作用し、またはこれと共に前記第1の相互作用基と同時に作用することにより、第2の相互作用基の会合をモジュレートする仕方を示している。
【図3】図3は、前記第1および第3の相互作用基が会合するならば、前記第2および第3の相互作用基の会合のモジュレーションが、結果的に前記第1および第2のレポータ成分の近接をモジュレートし、それによって検出器により検出され得る信号をモジュレートすることを示している。従って、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生した信号を検出器によりモニターすることが、前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成する。前記第1および第3の相互作用基が会合しなければ、前記第1および第2のレポータ成分は空間的に離間されたままであろうし、検出可能な信号の発生は起こりそうもない。
【図4】図4は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)、RC1としてのRluc、IG2としてのβ−アレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス(Venus)、およびIG3としてのある範囲の異なるGPCRを示している。
【0064】
37℃におけるeBRET測定は、TRHR/Rlucおよびbarr2/Venusを、pcDNA3、オレキシン受容体(OxR2)、CXCケモカイン受容体2(CXCR2)、ヘマグルチニンエピトープをタグ付加したメラノコルチン受容体3もしくは4(HA−MC3RまたはHA−MC4R)、またはドパミンD2受容体の長鎖形態(D2LR)もしくは短鎖形態(D2SR)と共に同時発現するHEK293細胞上において、それらのそれぞれのリガンドを用いて各々を処理した後に実行された。各受容体についての異なるリガンド処理(10−6M)は、TRHR/Rluc(pcDNA3と共に)については甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH);OXR2についてはオレキシンA(OxA);CXCR2についてはインターロイキン8(IL−8);HA−MC3R、HA−MC4Rについてはアルファ−メラニン細胞刺激ホルモン(a−MSH);D2LRおよびD2SRについてはブロモクリプチン(BROM)であった。
【図5】図5は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)をIG1として、RlucをRC1として、ベータ−アレスチン1(barr1)もしくはベータ−アレスチン2(barr2)をIG2として、EGFPをRC2として、またOxR2をIG3として示している。37℃におけるeBRET測定が、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr2をpcDNA3またはOXR2と共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、OxAもしくはTRHのみ、またはOxAおよびTRHの両者の組合せであった。リン酸緩衝食塩液(PBS)を、担体対象として使用した。
【図6】図6は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)をIG1として、RlucをRC1として、ベータ−アレスチン2(barr2)をIG2として、ビーナスをRC2として、並びにOxR1またはOxR2をIG3として示している。
【0065】
eBRET測定は、TRHR/Rlucおよびbarr2/VenusをpcDNA3、OxR1もしくはOxR2の何れかと共に一時的に同時発現するHEK293細胞上において、10−6MのOxR1選択的アンタゴニストであるSB−334867−Aで適切に40分間前処理し、次いで10−6MのOxA(IG3リガンド;モジュレータ)もしくは10−6MのTRH(IG1リガンド)、または両者を添加した後に37℃で行われた。アンタゴニスト予めインキュベートされない場合、細胞はその代りにPBSで同じ時間だけ処理された。
【図7】図7は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)をIG1として、RlucをRC1として、ベータ−アレスチン1(barr1)もしくはベータ−アレスチン2(barr2)をIG2として、EGFPをRC2として、またヘマグルチニンエピトープをタグ付加したOxR2(HA−OxR2)をIG3として示している。37℃でのeBRET測定は、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr2をpcDNA3もしくはHA−OxR2の何れかと共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、OxAまたはTRHだけであった。リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として使用した。
【図8】図8は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)をIG1として、RlucをRC1として、ベータ−アレスチン1(barr1)もしくはベータ−アレスチン1リン酸化非依存性変異体R169E(Barr1R169E)をIG2として、EGFPをRC2として、またOxR2をIG3として示している。37℃でのeBRET測定は、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr1R169EをpcDNA3もしくはOxR2の何れかと共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、OxAまたはTRHだけであった。リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として使用した。
【図9】図9は、アミノ酸335で切断された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR335)をIG1として、RlucをRC1として、ベータ−アレスチン1(barr1)をIG2として、EGFPをRC2として、またOxR2またはTRHRをIG3として示している。37℃でのeBRET測定は、TRHR335/RlucおよびEGFP/barr1をOxR2またはTRHRの何れかと共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、OxAまたはTRHだけであった。
【図10】図10は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)、RC1としてのRluc、IG2としてのベータ−アレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナスについての投与量応答曲線を、IG3の不存在下において示している。37℃でのBRET測定は、TRHの投与量を増大させながら、TRHR335/Rluc、barr2/ビーナスおよびpcDNA3を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。S字状の投与量応答曲線は、Hill勾配が1と仮定して、または可変勾配を許容して、Prism(GraphPad)を使用してプロットされた。可変勾配曲線についてのEC50およびHill勾配の値を、グラフ中の表の中に含めた。
【図11】図11は、IG1としてのOxR2、RC1としてのRluc、IG2としてのbarr2、RC2としてのビーナスについての投与量応答曲線を、IG3の不存在下において示している。37℃でのBRET測定は、OxAの投与量を増大させながら、OxR2/Rluc、barr2/ビーナスおよびpcDNA3を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。S字状の投与量応答曲線は、Hill勾配が1と仮定して、または可変勾配を許容して、Prism(GraphPad)を使用してプロットされた。可変勾配曲線についてのEC50およびHill勾配の値を、グラフ中の表の中に含めた。
【図12】図12は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)、RC1としてのRluc、IG2としてのベータアレスチン2、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのOxR2についての投与量応答曲線を示している。37℃でのBRET測定は、OxAの投与量を増大させながら、TRHR/Rluc、barr2/ビーナス、およびOxR2を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。S字状の投与量応答曲線は、Hill勾配が1と仮定して、または可変勾配を許容して、Prism(GraphPad)を使用してプロットされた。可変勾配曲線についてのEC50およびHill勾配の値を、グラフ中の表の中に含めた。セレンテラジンhおよびEnduRenを二つの形態のRluc基質(レポータ成分開始剤)として使用して作成された曲線が示されている。
【図13】図13は、IG3としてのOxR2の存在下または不存在下における、IG1としてのTRHR、RC1としてのRluc、IG2としてのbarr1、RC2としてのEGFPについての投与量応答曲線を示している。37℃でのBRET測定は、TRHの投与量を増大させながら、OxR2の不存在下において、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1を一時的に同時発現するHEK293細胞上で、並びに10−6MのTRHを伴って、また伴わずに、OxAの投与量を増大させながら、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。10−6MのTRHを用いて発生されたリガンドに誘導された信号(TRHから:TRHR/Rluc+EGFP/barr1曲線)の、OxA:TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2曲線について発生された点の各々への追加により、数学的に発生された曲線もまたプロットされている(TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH(10−6M)+OxA:データは計算された)。
【図14】図14は、IG3としてのOxR2の存在下または不存在下における、IG1としてのTRHR、RC1としてのRluc、IG2としてのbarr1、RC2としてのEGFPについての投与量応答曲線を示している。37℃でのBRET測定は、TRHの投与量を増大させながら、OxR2の不存在下において、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1を一時的に同時発現するHEK293細胞上で、並びにOxAの当伊予量を増大させながら、または10−6MのOxAを伴ってTRHの投与量を増大させながら、OxR2と共にTRHR/RlucおよびEGFP/barr1を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。10−6MのOxAを用いて発生されたリガンドに誘導された信号(OxAから:TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2曲線)の、TRH:TRHR/Rluc+EGFP/barr1曲線について発生された点の各々への追加により、数学的に発生された曲線もまたプロットされている(TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH(10−6M)+OxA:データは計算された)。
【図15】図15は、IG3としてのOxR2の存在下または不存在下における、IG1としてのTRHR335、RC1としてのRluc、IG2としてのbarr2、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのOxR2についての投与量−応答曲線を示している。37℃におけるBRET測定は、TRHおよびOxAの単独、または両者の組み合わせの濃度を増大させながら、TRHR335/Rluc、barr2/VenusおよびOxR2を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行った。
【図16】図16は、受容体の各組合せについての経時的な累積eBRETを示している(IG1およびIG3;83分に亘って捕捉されたデータ)。TRHRはIG1、RlucはRC1、barr1はIG2、EGFPはRC2、またOxR2はIG3である。各々の実験において、同じ量のEGFP/barr1(IG2−RC2)がトランスフェクトされる。TRHR/Rluc(IG1−RC1)は一定の量でトランスフェクトされるのに対して(0.1μgのDNA/ウエル)、OxR2(IG3)は種々の量のDNAでトランスフェクトされる(0、0.01、0.05、0.1、0.5、0.7μgのDNA/ウエル)。37℃でのeBRET測定は、各ウエルに10−6MのOxA(モジュレータ)を添加した後に、HEK293細胞上で行われた。該信号は、OxR2(IG3)が発現されたときにのみ検出される(0μgのOxR2では信号は記録されなかった)。
【図17】図17は、IG1としてのTRHR、RC1としてのRluc、IG2としてのbarr1、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのOxR2についての投与量応答曲線を示している。37℃でのBRET測定は、96ウエルまたは384ウエルのマイクロプレートにおいて、OxAの投与量を増大させながら、TRHR/Rluc、barr2/ビーナス、およびOxR2を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。
【図18】図18は、IG1としてのOxR2、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチニンエピトープをタグ付加されたTRHR(HA−TRHR)を示している。37℃におけるeBRET測定は、OxR2/Rluc8およびbarr2/ビーナスを、pcDNA3またはHA−TRHRと共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、OxAまたはTRHのみであった。リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として使用した。データは、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。
【図19】図19は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRHR)、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチニンエピトープをタグ付加されたOxR2(HA−OxR2)を示している。37℃におけるeBRET測定は、96ウエルプレートの全てのウエルに等分された、TRHR/Rluc8およびbarr2/ビーナスをHA−OxR2と共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。96ウエルプレートの最初の2列および最後の2列(全部で48ウエル)に、リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として加えた。データは、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。データは、蛍光/発光として提示した。
【図20】図20は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRHR)、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチニンエピトープをタグ付加されたOxR2(HA−OxR2)を示している。37℃におけるeBRET測定は、96ウエルプレートの全てのウエルに等分された、TRHR/Rluc8およびbarr2/ビーナスをHA−OxR2と共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。96ウエルプレートの最初の中央の4列(全部で48ウエル)にOxAを加えた。データは、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。データは、蛍光/発光として提示した。
【図21】図21は、IG1としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRHR)、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチニンエピトープをタグ付加されたOxR2(HA−OxR2)についてのz因子データを示している。図19に示したように、37℃におけるeBRET測定は、96ウエルプレートの全てのウエルに等分された、TRHR/Rluc8およびbarr2/ビーナスをHA−OxR2と共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。96ウエルプレートの最初の2列および最後の2列(全部で48ウエル)に、担体対照としてリン酸緩衝食塩水(PBS)を加えた。96ウエルプレートの最初の中央の4列(全部で48ウエル)にはOxAを加えた。データは、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。データは、蛍光/発光として提示した。
【図22】図22は、IG1としてのCCケモカイン受容体5(CCR5)、RC1としてのTopaz(TYFP)、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのRluc、およびIG3としてのCCケモカイン受容体2(CCR2)を示している。37℃におけるeBRET測定は、CCR5(5)TYFP(CCR5とTYFPの間に5アミノ酸のリンカーを含んでいる)およびbarr2/Rlucを、CCR2またはpcDNA3と共に一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リガンド処理は、単球化学誘引タンパク質1(MCP1;CCR2選択的リガンド)、マクロファージ炎症タンパク質1b(MIP1b;CCR5選択的リガンド)、またはMCP1およびMIP1bの両者の組合せであった。リン酸緩衝食塩水(PBS)を対照担体として使用した。
【図23】図23は、IG1としてのCCケモカイン受容体5(CCR5)、RC1としてのTopaz(TYFP)、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのRluc、およびIG3としてのCCケモカイン受容体2(CCR2)についての投与量−応答曲線を示している。37℃におけるeBRET測定は、単球化学誘引タンパク質1(MCP1;CCR2選択的リガンド)の投与量を増大させながら処理された、CCR5(5)TYFP(CCR5とTYFPの間に5アミノ酸のリンカーを含んでいる)、barr2/Rluc、およびCCR2を一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。S字状の投与量応答曲線は、可変勾配を可能にするPrism(GraphPad)を使用してプロットされた。
【図24】図24は、IG1としてのブラジキニンB2受容体(B2R)、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチンエピトープをタグ付加されたアンジオテンシンII受容体1型(HA−AT1R)を示している。37℃におけるeBRET測定は、アンジオテンシンII(AngII)で処理された、B2R/Rluc8、barr2/ビーナスおよびHA−AT1Rを一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として使用した。データを、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。
【図25】図25は、IG1としてのブラジキニンB2受容体(B2R)、RC1としてのRluc8、IG2としてのベータアレスチン2(barr2)、RC2としてのビーナス、およびIG3としてのヘマグルチンエピトープをタグ付加されたアンジオテンシンII受容体1型(HA−AT1R)についての投与量−応答曲線を示している。37℃におけるBRET測定は、増大する濃度のアンジオテンシンII(AngII)で処理された、B2R/Rluc8、barr2/ビーナスおよびHA−AT1Rを一時的に同時発現するHEK293細胞上で行われた。リン酸緩衝食塩水(PBS)を担体対照として使用した。データを、リガンドに誘導されたBRET比として提示した。可変勾配を可能にするPrism(GraphPad)を使用してS字状の投与量応答曲線をプロットした。
【略語】
【0066】
ACE: アンジオテンシン変換酵素
a−MSH: アルファ−メラニン細胞刺激ホルモン
AngII: アンジオテンシンII
AT1R: アンジオテンシンII受容体1型
B2R: ブラジキニンB2受容体
barr: ベータ−アレスチン
BK: ブラジキニン
BRET: 生物発光共鳴エネルギー移動
BROM: ブロモクリプチン
CB: カンナビノイド受容体
CCR: CCケモカイン受容体
CCR5(5)TYFP: 5アミノ酸リンカー領域を介してTYFPに連結された
CCR5
CSF: 脳脊髄液
CXCR: CXCケモカイン受容体
D2LR: ドパミンD2受容体(長鎖形態)
D2SR: ドパミンD2受容体(短鎖形態)
DOP: デルタオピオイド
eBRET: 延長されたBRET:延長期間に亘ってモニターされるBRET
ECFP: エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)緑色蛍光タンパ
ク質遺伝子(GFP)の変異体である強化シアン蛍光タンパク質
EGFP: 野生型GFPの赤色シフトした変異体である、強化緑色蛍光タン
パク質
EYFP: 強化黄色蛍光タンパク質
FRET: 蛍光共鳴エネルギー移動
GPCRs: Gタンパク質結合型受容体
HA: ヘマグルチニンエピトープtag
hES細胞: ヒト退治幹細胞
His(6): 連続的な6ヒスチジン残基からなるヒスチジンtag
IG: 相互作用基
IL−8: インターロイキン8
KOP: カッパオピオイド
MCP1: 単球化学誘引タンパク質1(CCR2選択的リガンド)
MCR: メラノコルチン受容体
MIP1b: マクロファージ炎症タンパク質1b(CCR5選択的リガンド)
mRFP1: モノマー赤蛍光タンパク質
OR: オピオイド受容体
OxA: オレキシンA
OxB: オレキシンB
OxR: オレキシン受容体
PBS: リン酸緩衝食塩水
pcDNA3: 真核性発現ベクター
RC: レポータ成分
REM: 迅速眼球運動
RET: 共鳴エネルギー移動
Rluc: ウミシイタケルシフェラーゼ
Rluc8: 改善されたウミシイタケルシフェラーゼ
SWS: 徐波睡眠
TRH: 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
TRHR: 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体
TYFP: トパーズ黄色蛍光タンパク質
Venus: 改善された黄色蛍光タンパク質
wt: 野生型
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
<一般論>
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、ここに開示された特定の例示された生物発光もしくは蛍光タンパク質、分析、または方法に限定されないことが理解されるべきである。また、ここで使用される用語は、発明の特定の実施形態を記載する目的だけのためのものであり、限定を意図したものではないことが理解されるべきである。
【0068】
上記においてであっても、または以下においてであっても、ここで引用する特許および特許出願を含む全ての刊行物は、それらの全体を本明細書の一部として本願に援用する。しかし、ここで述べる刊行物は、該刊行物に報告されており且つ本発明に関連して使用し得るプロトコール、作用物質およびベクターを記載および開示する目的で引用されるものである。ここでは、本発明が先の発明による斯かる開示に先行する資格がないことを自認するものと解釈されるべきものは何もない。
【0069】
更に、本発明の実施は、他に指示しない限り、当業者の知識の範囲内である従来の分子生物学、化学、および蛍光技術を用いる。このような技術は当業者に周知であり、文献において充分に説明されている。例えば、Coligan, Dunn, Ploegh, Speicher and Wingfield “Current protocols in Protein Science” (1999) Volume I and II (John Wiley & Sons Inc.); および Bailey, J.E. and Ollis, D.F., Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill Book Company, NY, 1986; Lakowicz, J. R. Principles of Fluorescence Spectroscopy, New York: Plenum Press (1983) for fluorescence techniques を参照されたい。
【0070】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、文脈が明らかに別途指示していない限り、単数形(「a」「an」および「the」)は複数形を含むものである。従って、例えば、「単数のタンパク質」への言及は複数の斯かるタンパク質を含むものであり、また「単数のアナライト」への言及は1以上のアナライトへの言及である、等々である。
【0071】
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者に共通に理解されているのと同じ意味を有する。ここに記載されるものに類似した、または等価な材料および方法は、本発明を実施または試験するために使用することができるが、好ましい材料および方法について次に説明する。
【0072】
ここに記載する発明は、1以上の値の範囲の値を含んでいてよい(例えば、サイズ、濃度等)。ある範囲の値は該範囲内の全ての値を含み、また該範囲を定義する値、および該範囲の境界を定義する値に直接隣接した値と同じ結果または実質的に同じ結果を導く範囲に隣接した値を含むと理解されるであろう。
【0073】
この明細書の全体を通して、文脈がそれ以外の意味を要求しなければ、「含んでなる」の語またはその三人称単数形または現在進行形などの変形は、陳述された要素(integer)、または要素の群を包含するが、何れか他の要素または要素の群を排除しないことを意味すると理解されるであろう。
【0074】
<具体論>
先に述べた発明の概要から明らかなように、本発明は二つの作用物質の会合を検出するためのシステム、方法およびキットに関する。ここで使用する「会合」の用語は、何れか既知の直接的もしくは間接的に安定化させる原子もしくは分子レベルの相互作用、またはそれらの何らかの組合せを介して結合された相互作用基の組合せを意味し、ここでの前記相互作用には、限定するものではないが、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合のような結合性相互作用、または何れか他の分子結合性相互作用、静電的相互作用、極性もしくは疎水性相互作用、または何れか他の古典力学的もしくは量子力学的に安定化させる原子もしくは分子的な相互作用が含まれる。
【0075】
「会合」の用語はまた、レポータ成分を充分に近接させて信号を発生させるための相互作用基が関与する、何等かの相互作用またはコンホメーション変化を包含するものである。本発明の好ましい実施形態において、RCの間の距離は、好ましくは1〜10nmの範囲である。当該作用物質のIGまたはRCの間の直接の物理的接触は必要とされず、また1以上の連結分子によって媒介されてよい。
【0076】
これもまた先の発明の概要から明らかなように、主要な興味である会合は、第2および第3の作用物質の会合によって検出される第1および第3の作用物質の会合である。より詳細に言えば、問題の会合は、第2および第3の作用物質の相互作用基の会合(これ自身は前記第1および第2のレポータ成分の近接によって生じる信号により検出される)により検出される、第1および第1および第3の作用物質の相互作用基の会合である。第2および第3の作用物質の会合は、前記モジュレータによりモジュレートされる範囲、従って、第1および第3の作用物質の会合の潜在的に構成的性質を示す範囲において興味あるものである。
【0077】
<第1、第2および第3の作用物質>
第1および第2の作用物質は各々が相互作用基(IG)を含んでおり、ここでのIGは直接的または間接的にレポータ成分(RC)に結合されている。第三の作用物質はIGを含んでいる。
【0078】
これらの作用物質は、有利には、(i)それらの精製を容易にし、および/または(ii)それらを真核ホスト細胞の副細胞区画にターゲッティングし、および/または(iii)それらが細胞を取り囲む培地に添加されたときに真核細胞の細胞膜を貫通することを可能にし、および/または(iv)それらの発現レベルが抗体などの使用によって評価されることを可能にするような、化学基、ペプチド配列、タンパク質または核酸分子を含むように加工もしくは修飾されてよい。
【0079】
<相互作用基>
ここで使用される「相互作用基」または「IG」の用語は、もう一つのIGと直接的または間接的に相互作用する分子または分子複合体を意味する。従って、第1、第2および第3の作用物質の相互作用基またはIGは、化合物、タンパク質、タンパク質ドメイン、タンパク質ループ、タンパク質末端、ペプチド、ホルモン、タンパク質−脂質複合体、脂質、糖鎖、糖鎖含有化合物、核酸、オリゴヌクレオチド、医薬、医薬ターゲット、抗体、抗原性物質、ウイルス、バクテリア、および細胞、またはそれらの何れかの複合体であってよい。
【0080】
更に、または代替的に、各相互作用基は何れかのタイプの受容体、イオンチャンネル、酵素、キャリア、輸送体、および必須膜タンパク質細胞骨格タンパク質、接着分子、信号伝達タンパク質、足場タンパク質、アクセサリータンパク質、輸送タンパク質、転写因子、核共因子、または以下で定義される核酸散分子である。
【0081】
第1、第2および第3の相互作用基の何れかまたは各々が核酸分子であるときは、如何なる形態の核酸分子を使用してもよい。例えば、核酸分子にはゲノムデオキシ核酸(DNA)、組換えDNA、相補型DNA(cDNA)、ペプチド核酸(PNA)、リボ核酸(RNA)、ヘテロ核RNA(hnRNA)、転移RNA、スモール干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、またはリボゾームRNA(rRNA)、およびそれらのハイブリッド分子が含まれてよい。
【0082】
本質的には、相互作用基は1以上の他の要素と複合体を形成できる要素である。例えば、本発明の関係において、抗体は、抗原と復号体を形成できる第1のIGであろうし、ここでの抗原は第2のIGであろう(下記参照)。本発明のIGのもう一つの例は、受容体と複合体を形成できるリガンドであろう。更なる例は、酵素とその基質の相互作用であろう。
【0083】
加えて、IGは同じ分子の一部であってもよい。従って、例えば、Gタンパク質結合型受容体(GPCR)の第3の細胞内ループは第1のIGであることができ、また同じ受容体のC末端は、該受容体が活性化または不活性化されるときに会合する第2のIGであることができるであろう。
【0084】
<モジュレータ>
モジュレータは、第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合を、直接的(例えばリガンド)または間接的に(例えばpHまたは温度を変化させることによる)モジュレートする。
【0085】
該モジュレータは、第1、第2または第3の相互作用基の1以上と相互作用することによって、第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合をモジュレートする。しかし、本発明の好ましい形態においては、該モジュレータは第3の相互作用基と単独で、または同時に第1の相互作用基と相互作用することによって、第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合をモジュレートしてよい。
【0086】
本発明のもう一つの有利な形態においては、1以上のモジュレータが組合せて加えられる。これは、第3の相互作用基と相互作用することにより第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合をモジュレートするモジュレータを、第1の相互作用基と相互作用することによって前記第2の相互作用基と第3の相互作用基との会合をモジュレートするモジュレータと組合わせて加えることを含んでよい。
【0087】
<レポータ成分:IGへの結合>
発明の概要から明らかなように、第1および第2の作用物質は、相互作用基に結合したレポータ成分を備えている。ここで使用される「結合した」、「直接結合した」および「間接的に結合した」の用語は、レポータ成分がIGと結合し、または会合して、分析または検出できる作用物質を形成することを意味する。結合させる好ましい方法は、IGおよびRCの性質によって決定される。
【0088】
第1および第2のレポータ成分は、検出可能な信号を放出できる有機もしくは無機の、タンパク質もしくは非タンパク質の、またはそれらの複合体の、何れか既知の化合物であることができる。幾つかの実施形態において、レポータ成分は酵素、発光分子またはその部分、蛍光分子またはその部分、および相互作用基に結合された転写因子または他の分子からなる群から選択される。
【0089】
第1および第2の受容体成分の、それぞれ第1および第2の相互作用基への直接的または間接的結合は、二つの分子を結合する何れか既知の共有結合手段または非共有結合手段によるものであってよく、これには化学的架橋、タンパク質の化学修飾、アミノ酸の化学修飾、核酸の化学修飾、糖鎖の化学修飾、脂質の化学修飾、何れか他の有機もしくは無機分子の化学修飾、ビオチン−アビジン相互作用、抗原−抗体相互作用、および核酸ハイブリダイゼーションが含まれる。
【0090】
本発明の一つの形態において、第1および/または第2のレポータ成分は、それぞれ第1および/または第2の相互作用基にリンカーによって間接的に結合される。幾つかの実施形態において、該リンカーは酵素開裂部位を備えている。
【0091】
タンパク質IGとタンパク質RCを結合させる直接法の一例は遺伝子融合であり、ここでは、IGおよび生物発光もしくは蛍光タンパク質をコードする遺伝子が、単一のポリペプチド鎖を産生するように融合される。
【0092】
直接結合法のもう一つの例は共役であり、ここではIGとフルオロフォアとの結合は酵素、例えばリガーゼ、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エラスターゼおよびグルコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼを使用する。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態において、第1および/第2の相互作用基および第1および/または第2のレポータ成分は、それぞれ、各々が単一のポリペプチド鎖を形成する追加の官能基が、同じポリペプチド鎖の一部を形成してもよい。例えば、第1および/または第2の相互作用基と、第1および/または第2のレポータ成分はそれぞれ、更に下記を備えてなる単一のポリペプチド鎖の一部を形成して、前記相互作用基、前記レポータ成分および前記追加のペプチドの融合タンパク質を産生する:
(i)融合構築物のアフィニティー精製に使用されるペプチド配列をコードする配列;および/または
(ii)前記融合構築物を真核細胞の副細胞区画に向けさせるペプチド配列をコードする配列;および/または
(iii)真核細胞膜の貫通を容易にするペプチド配列をコードする配列;および/または
(iv)抗体等の使用により発現レベルが評価されることを可能にする配列。
【0094】
<適切なレポータ成分>
第1および第2のレポータ成分の近接は、検出器により検出できる信号を発生させる。該第1および第2のRCは、本発明の機能にさほどの影響を及ぼすことなく、第1のRCが第2のRCと相互に交換され得る点(即ち、第2のIGに結合された第1のRC、および第1のIGに結合された第2のRC)において、相補的な一対を構成する。
【0095】
従って、レポータ成分は、酵素開裂部位を組み込んだリンカーにより相互作用基に結合された酵素、発光もしくは生物発光分子、蛍光分子および転写因子または他の分子を含むことができる。手短じかに言えば、それらの空間的近接の結果として検出可能な信号を放出できる、既知の有機もしくは無機の分子、タンパク質もしくは非タンパク質分子またはそれらの複合体である。
【0096】
本発明の好ましい形態において、第3の作用物質は、第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号を実質的に妨害し、および/または該信号に寄与する信号を発生できるレポータ成分を含んでいない。従って、この形態においては、第1および第2のレポータ成分の近接により発生された信号の検出が促進される。
【0097】
好ましくは、レポータ成分開始剤の存在において第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号は、発光、蛍光および色の変化からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、発光は、ルシフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、ラクタマーゼ、ペルオキシダーゼ、または適切な基質の存在において発光することができる何れかのタンパク質からなる群から選択される生物発光タンパク質によって生じる。
【0098】
第1および第2のレポータ成分の好ましい組み合わせは、蛍光レポータ成分を備えた発光レポータ成分、非蛍光消光剤を備えた発光レポータ成分、非蛍光消光剤を備えた蛍光レポータ成分、共鳴エネルギー移動できる第1および第2の蛍光レポータ成分が含まれる。
【0099】
しかし、第1および第2のレポータ成分の有用な組み合わせは、決してこれらに限定されるものではない。
【0100】
本発明によって利用され得る第1および第2のレポータ成分の別の組み合わせには、US6893827(Applera Corporation);US6800445(Applera Corporation);US7049076(Sentigen Biosciences,Inc.,and The Trustees of Columbia University of the City of New York);US6110693(Duke University);US5891646(Duke University);およびWO/2005/031309(ODYSSEY THERA INC.)に例示されたものが含まれる
本発明の幾つかの側面において、検出システムには、ドナーおよび/またはアクセプタ分子であることができるRC対の組み合わせが含まれる。従って、本発明に従って使用できるRCは、共鳴エネルギー移動(RET)の技術において知られているように、その物理的特性に基づいて選択することができ、これら二つの分子は、それらが一緒になってRET対のドナーおよびアクセプタ分子を構成するように選択される。RET対内のRCの一つが生物発光タンパク質であるならば、該RETは生物発光RET(BRET)として知られている。RET対を形成する両方のRCがフルオロフォアであれば、得られるRETは蛍光RET(FRET)として知られている。既知の適切なドナーおよびアクセプタの例には次のものが含まれる:
レニラ・ルシフェラーゼ(Renilla luciferase)および黄色蛍光タンパク質;
レニラ・ルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質;
シアン蛍光タンパク質および黄色蛍光タンパク質;
フルオレセインおよびテトラメチルローダミン;
5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸
(EDANS)およびフルオレセイン;
一般的には、既知文献(R. Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (Sixth Ed. 1995))を参照されたい。フルオロフォアの一方または両方が、緑色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質であることができ、またIGがタンパク質またはペプチドであるときは、IGおよび蛍光タンパク質の融合タンパク質を調製することにより、フルオロフォアとして蛍光タンパク質を用いるのが特に有利である。
【0101】
相補的な第1および第2のレポータ成分は、酵素またはフルオロフォアのように単一のタンパク質の相補的部分の形態で提供されてよく、これら相補的部分が近接して配置されるときにその機能が修復される。例えば、Split−Rluc相補性(Paulmurugan, R. & Gambhir, S.S. Monitoring protein-protein interactions using split synthetic Renilla luciferase protein-fragment-assisted complementation. Anal. Chem. 75, 1584-1589 (2003))、およびsplit−GFP相補性(Hu, CD. & Kerrpola, T.K. Simultaneous visualisation of multiple protein interactions in living cells using multicolour fluorescence complementation analysis Nat. Biotechnol. 21 , 539-545 (2003))を参照のこと。
【0102】
一つの実施形態において、第1および第2のレポータ成分のうちの一方は、非蛍光性消光剤である。該非蛍光性消光剤は、光を吸収して蛍光および/または発光を失活する能力を備えた、何れか既知の非蛍光性発色団であることができる。この非蛍光性消光剤は、従って、タンパク質もしくは非タンパク質の何れか既知の分子であることができる。好ましくは、該非蛍光性消光剤は、dabcy;非蛍光性のポシロポリン類(pocilloporins)、QSY−7、QSY−9、QSY−21、QSY−35、BHq−1、BHQ−2およびBHQ−3からなる群から選択される。
【0103】
ここで使用する「発光性分子」の用語は、発光を生じることができる何れかの分子を意味する。生物発光タンパク質にはルシフェラーゼが含まれ、これはバクテリア、真菌、昆虫および海洋生物の中に発見されてきた。それらは、光放出の下で、特定の基質(一般にはルシフェリンとして知られる)の酸化を触媒する(Hastings (1996) Gene 173, 5-11 )。最も広く知られた基質は、刺胞動物(cnidarians)、コペポッド(copepods)、カエトグナス(chaetgnaths)、有櫛動物(ctenophores)、十脚類エビ(decapod shrimps)、アミエビ(mysid shrimps)、放散虫(radiolarians)および幾つかの魚類の中に存在するセレンテラジンである(Greer & Szalay, (2002), Luminescence, 17, 43-74)。最も広く使用されるルシフェラーゼのうちの二つは、
(i)ウミシイタケ・ルシフェラーゼ(R. reniformis由来)、35kDaのタンパク質、セレンテラジンを基質として使用し、480nmで光を放出する(Lorenz et a/., (1991 ), PNAS. USA, 88, 4438-4442);および
(ii)ホタル・ルシフェラーゼ(Photinus pyralis由来)、61kDaのタンパク質、基質としてルシフェリンを使用し、560nmで光を放出する(de Wet et al., (1987), MoI. Cell. Biol., 2987, 725-737)。
【0104】
ウミシイタケ・ルシフェラーゼの変異体が、生物発光を含むアッセイでの特性を改善するために開発されてきた。ヒト化されたコドンの使用が、ルシフェラーゼDNAを哺乳類転写機構に対する異種性を小さくし、最大の遺伝子発現を保証するために用いられてきた。点変異コドン−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼの例は、Rluc2(C124A/M185V)およびRluc[デルタ](A55T/C124A/S130A/K136R/A143M/M185V/M253L/S287L)であり、これらは非変異型のルシフェラーゼに比較して顕著にに改善された性質を示し、それにはセレンテラジン類似体と共に使用した時の増大した光出力、および37℃の血清中でのより良好な安定性が含まれる(Loening et al. (2006) Protein Eng Des Se/ 19, 391-400; Loening et al. (2007) Nat Methods 4, 641-643; De et al. (2007) Cancer Res 67, 7175-7183)。
【0105】
ガウス・ルシフェラーゼ(Gaussia princeps由来)もまた、生化学アッセイにおいて使用されてきた(Verhaegen et al., (2002), Anal. Chem., 74: 4378-4385)。ガウス・ルシフェラーゼは20kDaのタンパク質であり、セレンテラジンを迅速な反応で酸化して、470nmの明るい光放出をもたらす。
【0106】
望ましくは、本発明と共に使用される生体発光タンパク質は、基質が存在する限り、強くかつ一定の光放出を示す。
【0107】
生体発光タンパク質はIGに結合されるので、小分子量の生体発光タンパク質を使用して、立体障害によりIGの間の相互作用を阻害する可能性を低減するのが好ましい。
【0108】
加えて、生体発光タンパク質は、第1および第2の作用物質の容易な製造を促進するために、好ましくは単一のポリペプチド鎖からなっている。
【0109】
加えて、生体発光タンパク質は、好ましくはオリゴマーもしくは凝集体を形成せず、そうでなければ、それに結合したIGの機能を阻害することになる。
【0110】
生体発光タンパク質のウミシイタケ・ルシフェラーゼ、ガウス・ルシフェラーゼ、およびホタル・ルシフェラーゼは、これら基準の全部または殆どに合致する。
【0111】
<蛍光RC>
ここで使用する「蛍光分子」の用語は、蛍光または燐光を生じることができる何れかの分子を意味し、タンパク質を含む。本発明において用いることができる多くの蛍光タンパク質が存在する。例えば、分子生物学および細胞生物学において最も広範に使用される蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)である(Tsien, (1998), Annu. Rev. Biochem., 67, 509-544)、およびその配列から誘導される変異体である。「強化された」蛍光タンパク質(例えばEGFP)が、溶解度および蛍光を増大し、且つタンパク質の折り畳みを加速させる点突然変異によって開発された(Zemicka-Goetz et al., (1997), Development, 124, 1133-1137)。64位におけるPheからLeuへの点突然変異は、37℃での該タンパク質の溶解度を増大させ、また65位におけるSerからThrへの突然変異は増大した蛍光をもたらす(Okabe et al., (1997), FEBS Letters, 407, 313-319; Clontech Palo Alto, Calif.)。クローンテック社から商業的に入手可能なEGFPは、哺乳類転写機構に対する異質性を小さくし、且つ最大の遺伝子発現を保証するヒト化コドンの使用を組込んでいる。加えて、緑色蛍光タンパク質のスペクトル特性は、特定のアミノ酸の部位指向性突然変異によって変化されることができ、例えばEGFPの青(EBFP)、シアン(ECFP)および黄色(EYFP)突然変異が製造されている(Zhang et al., (2002), Nat. Rev. MoI. Cell Biol., 3, 906- 918)。もう一つの重要な分類の蛍光タンパク質は、サンゴ種のDiscosoma(DsRed)(Matz et al., (1999), Nat. Biotechnol. 17, 969-973)およびHeteractis・crispa(HcRed)(Gurskaya et al., (2001), FEBS Lett. 507, 16-20)由来の赤色蛍光タンパク質(RFP)である。
【0112】
幾つかの実施形態においては、高い蛍光量子収率をもった蛍光タンパク質が本発明と共に使用される。
【0113】
幾つかの実施形態において、本発明と共に使用される蛍光タンパク質の分子量は、IGの間の立体障害を回避するために十分に小さいであろう。
【0114】
好ましくは、凝集および結合されたIGの機能妨害を回避するために、モノマータンパク質が使用される。GFPは弱い二量体を形成するが、その二量体化する傾向は、二量体化界面における疎水性アミノ酸の突然変異によって最小化することができる(Zacharias et al., (2002), Science, 296, 913-916)。該赤色蛍光タンパク質DsRedは、偏性四量体タンパク質である。最近、DsRedを二量体タンパク質(二量体2)にする、DsRed配列の17の点突然変異が記載された。該二量体のサブユニットはペプチドリンカーを介して結合され、物理的にはモノマーとして作用する連結された二量体(t−二量体2(12))を形成することができる。追加の16の点突然変異は、二量体2をモノマー変異体(mRFP1)に変換する(Campbell et ai., (2002), PNAS. USA, 99, 7877-7882)。赤色蛍光タンパク質HcRedは二量体タンパク質であり、またモノマーとしては蛍光性ではない。しかし、二つのサブユニットは、最初のサブユニットのC末端を第2のサブユニットのN末端に結合する短いペプチドリンカーによって融合することができる。この融合タンパク質(t−HcRed)は、t−二量体2(12)と同様に、モノマーユニットとして有効に作用する(Fradkov et ai, (2002), Biochem. J., 368, 17-21)。
【0115】
好ましくは、本発明と共に使用される蛍光タンパク質は、それらのフルオロフォアの形成について短い成熟時間を示す。これら分子におけるフルオロフォアは、ポリペプチド鎖の特異的な再配置によって形成される。このプロセスは、1時間未満から24時間以上で生じることができる(Zhang et al., (2002), Nat. Rev. MoI. Cell Biol., 3, 906-918)。遅い成熟プロセスは、機能的RCの利用可能性および濃度を制限するので、迅速に成熟するタンパク質を使用するが好ましい。迅速に成熟する蛍光タンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質EGFPおよびその色変異体、並びに赤色蛍光タンパク質t−二量体2およびmRFPLである。遅く成熟するタンパク質は、例えば、DsRedおよびHcRedである。
【0116】
幾つかの実施形態において、蛍光は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその変異体、GFPの青色蛍光性変異体(BFP)、GPFのシアン蛍光変異体(CFP)、GFPの黄色蛍光変異体(YFP)、強化GFP(EGFP)、強化CFP(ECFP)、強化YFP(EYFP)、GFPS65T、エメラルド、トパーズ(TYFP)1、ビーナス、シトリン、mシトリン、GFPuv、不安定化されたEGFP(dEGFP)、不安定化されたECFP(dECFP)、不安定化されたEYFP(dEYFP)、mCFPm、紺碧、T−サファイア、CyPet、YPet、mKO、HcRed、t−HcRed、DsRed、DsRed2、DsRed−モノマー、J−Red、二量体2、t−二量体(12)、mRFP1、ポチロポリン(pocilloporin)、ウミシイタケGFP、モンスターGFP、paGFP、カエデ(Kaede)タンパク質、およびキンドリングタンパク質、フィコビリンタンパク質、およびフィコビリンタンパク質複合体(B−フィコエリスリン、R−フィコエリスリン、およびアロフィコシアンからなる群から選択される蛍光タンパク質によって生じる。蛍光タンパク質の他の例には、mHoneydew、mBanana、mOrange、dTomato、tdTomato、mTangerine、mStrawberry、mCherry、mGrapel、mRaspberry、mGrape2、mPlum(Shaner et al. (2005) Nat. Methods, 2, 905-909)、並びにTsien・R等により産生され果実の後に命名された他の何れかのタンパク質;およびサンゴにおいて発現された何れかの蛍光分子およびその誘導体が含まれる。
【0117】
ルシフェラーゼに対する相補的レポータ成分として有用な、特に有利な蛍光タンパク質は、ビーナスである(Nagai, T et al., A variant of yellow fluorescent protein with efficient maturation for cell-biological applications, Nat. Biotechnol. (2002) 20, 87-90; and Hamdan, F. et al. (2005) High-Throughput Screening of G Protein-Coupled Receptor Antagonists Using a Bioluminescence Resonance Energy Transfer 1 -Based Beta-Arrestin2 Recruitment Assay, Journal of Biomolecular Screening 10, 463-475)。
【0118】
ここで用いる「蛍光性部分」またはその複数形は互換的に使用され、また、蛍光を生じることができる非タンパク質分子を意味する。非タンパク質の蛍光性部分は、通常は他の分子に結合できる小分子である。各々の非タンパク質蛍光性分子は、特異的なスペクトル的特徴を有する。本発明で用いることができる多くの異なる蛍光分子が存在する。非限定的例には、ローダミン、ローダミン誘導体、ダンシル、ウムベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、オレゴン緑、テキサス赤、Alexa蛍光色素、およびCy色素が含まれる。本発明に関して非常に魅力的な分類の蛍光性部分は、蛍光性ナノ結晶である(Bruchez et al., (1998), Science, 281 , 2013-2016)。蛍光性ナノ結晶は強い蛍光を示し、またそれらの蛍光は結晶サイズにより1000nmの波長範囲に亘って調節することができる。全てのナノ結晶の励起は、それらの蛍光放出とは独立に、同じ波長で生じる。従って、種々のナノ結晶は同じ光源によって、または同じ生体発光タンパク質または蛍光性分子からのRETを介して励起されることができる。
【0119】
好ましくは、高い蛍光量子収率をもった蛍光性部分が使用される。
【0120】
幾つかの実施形態において、蛍光は、Alexa蛍光色素および誘導体、Bodipy色素および誘導体、Cy色素および誘導体、フルオレセインおよび誘導体、ダンシル、ウムベリフェロン、蛍光性および発光性マイクロスフィア、蛍光性ナノ結晶、マリン青、カスケード青、カスケード黄色、パシフィック青、オレゴン緑および誘導体、テトラメチルローダミンおよび誘導体、ローダミンおよび誘導体、テキサス赤および誘導体、希土類元素キレート、またはそれらの何れかの組合せもしくは誘導体、或いは蛍光特性を持った何れか他の分子からなる群から選択される蛍光性部分によって発生される。
【0121】
新たなタイプの蛍光性部分が最近報告され、これにはタンパク質成分および非タンパク質成分の両方が含まれている(Griffin et al., (1998), Science, 281, 269-272; Adams et al., (2002), J. Am. Chem. Soc, 124, 6063-6076)。二砒素−テトラシステイン系は、短いテトラシステインを含むペプチドを標的タンパク質に融合させる。このペプチドは、細胞透過性の非蛍光発生の二砒素色素との安定な蛍光性複合体を形成する。色素の分子構造に応じて、異なるフルオロフォアが得られる。
【0122】
<レポータ成分開始剤>
幾つかの実施形態においては、少なくとも一つのレポータ成分開始剤が、レポータ成分からの信号を発生させるために利用されるであろう。ここで使用する「レポータ成分開始剤」の用語は、近接しているときに第1および第2のレポータ成分の組合せを可能にして検出可能な信号を生じさせる分子、条件および/またはエネルギー源を意味する。
【0123】
幾つかの実施形態において、該レポータ成分開始剤は直接作用するのに対して、他の実施形態において該作用は間接的である。
【0124】
好ましくは、該レポータ成分開始剤は、何れか既知の有機もしくは無機の化合物、タンパク質もしくは非タンパク質、基質、リガンド、抗体、酵素、核酸、糖鎖、脂質、薬物化合物、アゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニスト、または化合物もしくはその複合体を含む作用物質であり、或いは温度、イオン強度もしくはpH、または光を含むエネルギー源を含んだ条件の変化である。該レポータ成分開始剤は、レポータ遺伝子であってよい。
【0125】
幾つかの実施形態において、該レポータ成分開始剤は、酵素、転写因子、蛍光性もしく生体発光性の分子と共に使用して信号を発生できる何れかの分子である。
【0126】
レポータ成分開始剤の例には、生体発光反応のための基質、フルオロフォアのための励起光、レポータ成分に応答するレポータ遺伝子(転写因子を含む)、バッファ、適切な培地、UV放射線のような篭分子の開放のために必要な条件、または内因性酵素活性を利用するための生きた細胞、酵素およびフルオロフォアを含むタンパク質の適切な機能を可能にするための適切な温度、イオン強度およびpH、並びにバッファおよび/またはCO灌流の使用を含む標本の生活力を維持するための適切な条件が含まれる。生体発光に関しては、レポータ成分開始剤は基質であろう。生体発光に関して、基質の選択は、生体発光タンパク質により発生される光の波長、強度および持続時間に影響することができる。ウミクラゲ・ルシフェラーゼについては、例えば、418〜512nmの光放出を生じるセレンテラジン類似体が利用可能である(Inouye et al., (1997), Biochem. J., 233, 349-353)。セレンテラジン類似体(400A, 'DeepBlueC')は、ウミクラゲ・ルシフェラーゼを用いた場合に400nmの光を放出すると記載されている(PCT出願WO01/46691)。
【0127】
望ましくは、基質の半減期は、その間に測定するのに充分な時間だけ発光を可能にするものである。特に望ましいのは、モジュレータを添加する前に定常状態が樹立されるのを可能にするために、充分な半減期を提供する基質である。EnduRen(例えば、Pfleger et al., Extended bioluminescence Resonance Energy Transfer (eBRET) for monitoring prolonged protein-protein interactions in live cells (2006) Cellular Signalling, 18, 1664-1670参照)は、特に高処理量スクリーニングの 観点から、極めて望ましい代替物であることが見出されている。
【0128】
最近作製されたビスデオキシセレンテラジン(DeepBlueC)の保護された誘導体は、この基質の分光学的性質が有利であるが崩壊速度がその効果的な使用を制限する状況において、DeepBlueCよりも好ましい(Levi et al. (2007) J Am Chem Soc 129, 11900-11901)。
【0129】
本発明と共に使用される基質は、好ましくは細胞透過性であり、また細胞膜を通過して細胞内分子に利用可能になる。セレンテラジンおよびその誘導体の殆どは、高度に細胞透過性であるのに対して(Shimomura et al., (1997), Biochem. J., 326: 297-298)、ルシフェリンは哺乳類細胞の膜を効率的に横切らない。しかし、篭構造に封入されたルシフェリン化合物が開発されており、これは細胞膜を通過し、且つ一旦細胞質の内側に導入されると細胞酵素またはUV光によって放出される(Yang et ai., (1993), Biotechniques, 15, 848-850)。
【0130】
ここで使用される「エネルギー源」の用語は、特定のフルオロフォアを活性化できる何れかのエネルギー源を意味する。幾つかの実施形態において、該エネルギー源は光である。この光源の非限定的な例には、レーザ、Hgランプ、またはXeランプが含まれる。該光源は更に、放出された光を特定の波長または特定の波長範囲に限定する手段を有している。これは、単一波長の光だけを生じる、例えばフィルタホイール、またはフィルタスライド、モノクロメータ、二色性ミラーまたはレーザに搭載された適切なフィルタであることができる。
【0131】
上記で述べたように、相互作用基は、第1および第2の作用物質におけるレポータ成分に直接的または間接的に結合されてよい。レポータ成分が生体発光性または蛍光性のタンパク質である場合、該生体発光タンパク質または蛍光タンパク質は、直接的に(例えば共有結合される)または間接的に(例えばリンカー基を介して)、適切なIGに結合されてよい。生体発光性もしくは蛍光性のタンパク質を作用物質に結合させるための手段は、当該技術において周知である。タンパク質IGおよびタンパク質RCを結合させるための直接的な方法の例は遺伝子融合であり、ここでは、IGおよび生体発光性もしくは蛍光性タンパク質をコードする遺伝子が融合されて、単一のポリペプチド鎖が産生される。
【0132】
直接結合方法のもう一つの例は接合であり、ここでは、IGとフルオロフォアとを結合させるために、リガーゼ、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エラスターゼおよびグルコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼのような酵素が使用される。
【0133】
蛍光性部分および非タンパク質の非蛍光性消光剤は、タンパク質IGに遺伝子的に融合できるタンパク質の蛍光性部分とは対照的に、それらのタンパク質IGへの結合がより困難であり、また生きた細胞内では頻繁には生じないという欠点を有している。非タンパク質の蛍光性部分および非蛍光性の消光剤のIGへの直接的な結合の一例は、反応性基に共有結合された部分を含んでおり、これらはIGの特定の化学基との共有結合を形成することができる。その例は、システイン残基のSH基と反応するヨードアセタミドおよびマレイミド、並びにリジン残基のNH3+基と反応するスクシンイミジルエステル、カルボン酸および塩化スルホニルである(Ishii et al., (1986), Biophys. J. 50, 75-89; Staros et al., (1986), Anal. Biochem. 156, 220-222; Lefevre et al., (1996), Bioconjug. Chem. 7, 482-489)。
【0134】
蛍光性部分をIGに結合するためのもう一つの既知の方法は、典型的には、蛍光性部分をIG上にグラフトすること、または該蛍光性部分を、その合成の際にIGの中に組込むことによるものが含まれる。ラベルされたIGは、受容体または核酸への選択的結合、特定の酵素の活性化または阻害、または生物学的膜の中に一体化する能力のような、ラベルされていないIGの重要な性質を保持することが重要である。例えば、二フッ化ジピロメテンボロン色素、ローダミン、ローダミン誘導体、テキサス赤、ダンシル、ウムベリフェロンを含む、入手可能な広範な種々の蛍光性部分が存在する。種々のラベリングまたは信号生成系の概観のためには、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0135】
蛍光性部分をタンパク質または核酸のようなIGに結合するための直接的方法の一例は、蛍光性部分のタンパク質、例えばビオチンに結合できるアビジンへの共有結合を含んでおり、この場合はビオチンがIGに共有結合され、IGおよび蛍光性部分はビオチンおよびアビジンの間の相互作用を介して間接的に一緒に結合されるようになっている。
【0136】
前記IGと、生体発光性もしくは蛍光性のタンパク質とを結合させる間接的な方法のもう一つの例は、リンカー基を介するものである。リンカー基は、結合能力の妨害を回避するために、生体発光性もしくは蛍光性タンパク質を該作用物質から離間させるためのスペーサとして機能することができる。リンカー基はまた、作用物質上の置換基の化学反応性を増大させ、従って結合効率を増大させるように働くことができる。化学反応性における増大はまた、そうでなければ可能でないような、作用物質または作用物質上の官能基の使用を容易にする。
【0137】
両者共にホモ官能性およびヘテロ官能性の種々の二官能性または多官能性の作用物質(例えば、the Pierce Chemical Co., Rockford, IllinoisのカタログIに記載されているもの)が、リンカー基として用いられてよいことは当業者に明らかであろう。結合は、例えばアミノ基、カルボキシ基、スルフヒドリル基または酸化された糖鎖残基を介して行われてよい。このような方法を記載した参照文献は無数に存在する。例えば、米国特許第4,671,958号を参照されたい。
【0138】
幾つかの実施形態において、タンパク質RCまたはタンパク質IGは、当業者に周知の標準的な分子生物学的技術によって、RCまたはIGをコードするDNA配列を発現ベクターの中に挿入することによって組換え的に製造される。該DNA配列は、適切な転写もしくは転写調節要素に動作可能に連結される。DNAの発現に重要な役割を果たす調節要素は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列に対して5’位にのみ位置する。同様に、転写を終了させるために必要な停止子ドンおよび転写停止信号は、第2のポリペプチドをコードするDNA配列に対して3’にのみ存在する。融合されたRCおよびIGのポリペプチドは適切な宿主において発現される。
【0139】
当業者に既知の種々の発現ベクターの何れかを、本発明の組換えポリペプチドを発現するために用いてよい。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターを形質転換またはトランスフェクトされた、何れか適切なホスト細胞において達成されてよい。適切なホスト細胞には、原核細胞、酵母および高等な真核細胞が含まれる。好ましくは、用いられるホスト細胞は、大腸菌(E.coli)、酵母、哺乳類細胞株、例えばCHO細胞、HEK293細胞またはCOS−7細胞である。
【0140】
もう一つの実施形態において、タンパク質IG−RC作用物質は、融合構築物として組み替え的に製造される。タンパク質RCポリペプチドおよびIGポリペプチドをコードする別々のDNA配列を適切な発現ベクターの中に組立てるために、本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列は、既知の組換えDNA技術を使用して構築される。第1のDNA配列の3’末端は、ペプチドリンカーを伴って、または伴わずに第2のDNA配列の5’末端にライゲートされ、RCおよびIGの生物学的活性を保持する単一の融合タンパク質への二つのDNA配列のmRNA翻訳を可能にするように、両配列の読取り枠がインフレームであるようになっている。融合構築物内でのRCおよびIGの向きは、その機能または発現を増大するように取り替えられてもよい。
【0141】
ペプチドリンカー配列は、生体発光タンパク質およびIGポリペプチドを、各ポリペプチドがその二次構造および三次構造に折り畳まれることを保証するために、充分な距離だけ離間させるように用いられる。このようなペプチドリンカー配列は、当業者に周知の標準的な技術を使用して融合タンパク質の中に組込まれる。適切なリンカー配列は次の因子に基づいて選択されてよい:(1)可撓性の伸長したコンホメーションを取るそれらの能力;(2)生体発光性タンパク質またはIG上の機能的エピトープと相互作用できる二次構造をとることができない;および(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応でき、または融合タンパク質の溶解度を減少させることができる疎水性もしくは帯電した残基の欠失。好ましいペプチドリンカー配列は、GIy、AsnおよびSer残基を含んでいる。他の近隣の天然アミノ酸、例えばThrおよびAlaもまた、リンカー配列に使用されてよい。通常はリンカーとして使用されてよいアミノ酸配列は、Maratea et al., (1985), Gene, 40, 39-46; Murphy et al., (1986), PNAS. USA, 83, 8258-8262; 米国特許第4,935,233号および同第4,751,180号に開示されている。該リンカー配列は、1〜約50アミノ酸の長さであってよい。生体発光性のタンパク質もしくはIGが、機能的ドメインを分離し且つ立体障害を防止するために使用できる非必須N末端アミノ酸領域を有していないときは、ペプチド配列は要求されない。
【0142】
リガンドDNA配列は、適切な転写もしくは転写調節要素に対して動作可能に連結される。DNAの発現に重要な役割を果たす該調節要素は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列に対して5’にのみ位置する。同様に、翻訳を終了するために必要とされる停止コドンおよび転写停止信号は、第2のポリペプチドをコードするDNA配列に対して3’のみに位置する。
【0143】
幾つかの実施形態において、組換えポリペプチドをコードする配列は更に、アフィニティークロマトグラフィーを介して該融合構築物の精製を容易にするペプチドをコードする配列に対して、遺伝子的に融合される。その例には、ヒスチジンタグ、マルトース結合性タンパク質タグ、セルロース結合性タンパク質タグ、インテイン(intein)タグ、S−タグ、およびGSTタグが含まれる。
【0144】
もう一つの実施形態において、当該組換えポリペプチドをコードする配列は、真核ホスト細胞の特定の副細胞区画への当該融合構築物のターゲッティング、または当該融合構築物の周囲媒質中への分泌を容易にするペプチドをコードする配列に、遺伝子的に融合される。その例には、核局在化信号、ミトコンドリア移入信号、小胞体をターゲッティングするKDEL配列、および搬出信号が含まれる。
【0145】
更にもう一つの実施形態において、組換えポリペプチドをコードする配列は、真核細胞膜の貫通を容易にし、従って、融合構築物の細胞内への取り込みを容易にするペプチドをコードする配列に対して遺伝的に融合される(Schwartz et al., (2000), Curr. Opin. MoI. Ther., 2, 162-167)。その例には、HIV・Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22、およびカポシFGF−4が含まれる。
【0146】
組換え法の代わりとして、ポリペプチドおよびオリゴペプチドは化学的に合成することができる。このような方法は、典型的には固体状態のアプローチを含んでいるが、溶液に基づく化学、並びに固体状態および溶液アプローチの組合せを利用することもできる。タンパク質を合成するための固体状態方法は、Merrifield, (1964), J. Am. Chem. Soc, 85, 2149; and Houghton, (1985), PNAS. USA., 82, 5132によって記述されている。
【0147】
相互作用基およびレポータ成分が上記で述べたようにして形成されたら、それらは本発明の方法において利用することができる。
【0148】
幾つかの実施形態において、第1、第2および第3の作用物質の各々はタンパク質であり、第1および第2の作用物質は、適切なホスト細胞中においてIG第3の作用物質と共にIG−RC融合構築物を発現するように、遺伝子融合によって結合される。RCの活性化および検出並びにIGの会合は、生きたホスト細胞の内部、細胞オルガネラの内部、その細胞膜の内部、またはその表面で生じる。
【0149】
もう一つの実施形態において、IG−RC作用物質のサブセットはタンパク質であり、適切なホスト細胞中においてIG−RC融合構築物を発現するように、遺伝子融合によって結合される。タンパク質、非タンパク質またはそれらの組合せであるIG−RC作用物質のもう一つのサブセットは、ホスト細胞を貫通する任意的能力を備えて、該ホスト細胞に加えられる。該RCの活性化および検出、並びにIGの会合は、生きたホスト細胞の内部、細胞オルガネラの内部、その細胞膜の内部、またはその表面において生じる。
【0150】
更にもう一つの実施形態においては、IG−RCが、その性質および調製方法とは無関係に、適切なバッファ物質を含有してよい溶液中に提供される。IG−RC作用物質は、細胞抽出物、細胞画分または合成混合物の一部であってよく、または少なくとも約90%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、最も好ましくは少なくとも約99%純粋であってよい。精製は、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、イオン交換および/またはサイズ排除、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー、HPLC、FPLC、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動等を含む、当該技術の標準的手順に従って生じる(一般的には、Scopes, (1982), Protein Purification, Springer-Overflag, N.Y., Deutsche, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照されたい)。
【0151】
<信号>
ここで使用する「信号」の用語は、吸収度における変化として測定される発光、蛍光、および色変化が含まれる。これは、レポータ成分の酵素活性、および/またはレポータ成分として作用する転写因子によりモジュレートされるレポータ遺伝子の上方調節もしくは下方調節からもたらされてよい。この信号はまた、レポータ成分間のエネルギー移動に依存してよい。
【0152】
幾つかの実施形態において、該信号は「放出された光」であり、ここで該信号を検出するステップは、光の特定の波長の光子の光検出器による検出であろう。光検出器の例には、光電子増倍管またはCCDカメラが含まれる。該検出器は更に、検出される光を特定の波長、または特定の範囲の波長に限定する手段を含んでいる。これは、例えばフィルタホイール、またはフィルタスライド、モノクロメータ、二色性ミラーまたはレーザに搭載された適切なフィルタであることができる。
【0153】
幾つかの実施形態において、第1のRCは、該RCに特異的な励起光によって活性化され、また該RCにより放出される光は第2のRCによって吸収される。次いで、その結果として得られる第2のRCからの蛍光が検出され、または第2のRCが消光剤であれば、第1のRCからの蛍光の低下が検出される。
【0154】
幾つかの実施形態において、第1のRCは、このRCに特異的な基質の添加によって活性化され、該RCにより放出される光は第2のRCによって吸収される。次いで、その結果として得られる該第2のRCからの蛍光が検出され、または該第2のRCが消光剤であれば、第1のRCからの蛍光の低下が検出される。
【0155】
本発明の応用は、リガンドによってモジュレートされる受容体の相互作用に限定されないことは明らかであろう。本発明の一実施形態において、第2の相互作用基は酵素開裂部位によって第3の相互作用基に結合され、またモジュレータは該酵素開裂部位に作用するように適合された酵素であり、その結果、第1および第2のレポータ成分の近接により発生された信号の低下の検出器による検出は、第2および第3の作用物質の解離の検出を構成し、結局は、第1および第3の作用物質の解離のモニタリングを構成する。
【0156】
<本発明による分析に適用できるシステムの例>
本発明の応用の一例は、サイトカイン受容体信号伝達の分析である。サイトカイン受容体は、それらのリガンドの結合によって活性化されたときに、膜結合したサブユニットのヘテロ二量体を形成する。一方のサブユニットは、通常は該リガンドに特異的であるのに対して、他方は信号伝達の原因であり、他のリガンド特異的サブユニットに共有されている。活性化された受容体は細胞間におけるタンパク質様の信号トランスジューサおよび転写アクチベータ(STAT)タンパク質と相互作用する(Ishihara et al. (2002), Biochim. Biophys. Acta, 1592, 281-296)。従って、サイトカイン受容体信号の伝達は、多くの重畳する冗長な機能を備えた信号伝達分子および受容体分子のネットワークを含んでいる。特定の効果を特定の分子または受容体の作用に帰することは困難なことが多い。第1の作用物質は信号伝達受容体サブユニット(RC1-IG1)から誘導されてよく、第2の作用物質は、適切なRET対(RC1−IG1:IG2−RC2)を形成する信号伝達タンパク質(RC2−IG2)から誘導されてよく、また第3の作用物質は、リガンド特異的な受容体サブユニットから誘導されてよい。
【0157】
リガンドが、リガンド特異的受容体サブユニット形態の第3の作用物質と相互作用するときに、信号伝達タンパク質形態の第2の相互作用基は第3の作用物質と会合する。信号伝達受容体サブユニットがリガンド特異的受容体サブユニットと会合すれば、第1および第2のレポータ成分が近接して、検出可能な信号を発生するであろう。
【0158】
もう一つの例は、ホモもしくはヘテロ二量体を形成するGタンパク質結合型受容体(GPCR)の分析である。最近の研究は、GPCRがモノマーとして作用するだけでなく、変化したリガンド結合、信号伝達およびエンドサイトーシスを生じるホモおよびヘテロ二量体としても作用することを示している(Rios et al. (2000) Pharmacol. Ther. 92, 71-87)。従って、特定の受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する薬物の効果は、この受容体の結合性パートナーに依存する可能性がある。特異的な受容体二量体に媒介される細胞応答に対する薬物の効果を制限することが望ましいかもしれない。本発明によって提供されるシステムは、特異的なGPCRヘテロ二量体の活性をモニターすることができる。
【0159】
GPCR自身はIGとして作用する。一つのGPCRはRC(IG1−RC1、IG3)に結合する。第2のIG(IG2−RC2)は、リガンド結合の際にGPCRと相互作用する分子から誘導される(例えばベータアレスチン、またはその変異体)。検出システムは、受容体ヘテロ二量体の形成を検出するだけでなく、リガンドまたは薬物が受容体ヘテロ二量体におけるアゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニストまたは部分的逆アゴニストとして作用するかどうかを識別することができる。
【0160】
もう一つの例は、遺伝子発現の転写調節である。転写因子は多重タンパク質−DNA複合体において作用し、これら複合体の組成はそれらの特異性および活性を決定する(Wolberger et al. (1999) Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 28, 29-56)。例えば、転写因子Fosは、Jun転写因子ファンリーのメンバーとのヘテロ二量体としてのみ活性である(Chinenov et al. (2001 ) Oncogene 20, 2438-2452)。このFos/Jun二量体は、多くの遺伝子の転写を活性化または抑制することができる。該複合体の特異性および活性は、ETS転写因子、NF−ATまたはSmadタンパク質のような該二量体と相互作用する追加のタンパク質によって調節される(Wang et al. (1994) MoI. Cell Biol. 14, 1153-1159; Stranick et al. (1994) J. Biol. Chem. 272, 16453-16465; Zhang et al. (1998) Nature 394, 909-913)。IGは、一方がレポータ成分に結合されたFosおよびJunタンパク質から誘導されることができる。更なるIGは、Fos/Jun複合体と相互作用する転写レギュレータから誘導される。このIGは、FosまたはJunタンパク質に結合されたRCから移動された光を放出または消光する第2のRCに結合される。この信号は、Fos/Junタンパク質の特別な組み合わせを含む三量体複合体の活性について特異的である。他のレギュレータとの相互作用によるFos/Junの活性化、または同じレギュレータを用いた異なるFos/Jun複合体の活性化は、それらが第1および第2のIG会合に起因して生じるものであるか、または第2および第3のIGの会合から生じる第1および第2のRCの近接に起因するものであるか、或いは両者の組み合わせに起因するものであるかに応じて、異なる信号を生じるであろう。
【0161】
もう一つの例は、新規な抗ウイルス薬物の開発である。HIVおよび他のウイルスの治療の主要な問題は、全ての薬物に対して徐々に耐性になるウイルスタンパク質の点突然変異が広範に発生することによる、ウイルスの順応性である。従って、ウイルスのライフサイクルにおける複数の事象を標的にする療法は最も成功を収めるものであり、また異なる薬物の混合物、所謂併用療法は広範な臨床的使用が認められている。有望な新規抗ウイルス薬は、ウイルスの侵入阻害剤である(Starr-Spires et al. (2002), CHn. Lab. Med. 22, 681-701)。HIVビリオンの侵入は、ウイルス株に応じて、二つの細胞受容体CD4およびCXCR4またはCCR5を介して媒介される。ウイルス−CD4の相互作用をブロックするだけに過ぎない抗体または薬物は、ウイルス表面の変化に伴って急速にその効力を失う。本発明によって提供されるシステムは、両方の受容体に結合するウイルスの同時検出を可能にする。該二つの受容体の一方は、ウイルス表面タンパク質がそうであるようにRCで標識され、三量体複合体が形成されるときに特異的信号を生じる。従って、ウイルス蛋白質の相互作用を効率的にブロックし、または両方の受容体に結合するために必要とされるウイルスタンパク質のコンホメーション変化を阻害する化合物を同定することができる。二つの重要な相互作用が同時にターゲッティングされるので、耐性ウイルスの出現の可能性は低い。
【0162】
もう一つの例において、本発明は大きく且つ安定な分子複合体の組成、コンホメーション、アセンブリーまたは解離を分析するために使用される。RET信号の存在または不存在は、複合体のアセンブリーおよび機能性、または該複合体もしくは複合体の成分内におけるコンホメーション変化/移動を示す。複合体の例には、転写因子複合体、リボゾーム、プロテアソーム、シャペロン、オリゴマー受容体、イオンチャンネル等が含まれる。
【0163】
異なる組織におけるヘテロ二量体のレパートリーは独特であり、それらは「新規な」薬物標的である可能性がある。例えば、6’−グアニジノアルトリンドール、即ち、周知のKOP受容体リガンドの類似体は、脊髄選択的な鎮痛剤としての薬効をもったDOP−KOPヘテロ二量体選択的アゴニストとして同定されており、DOP−KOPヘテロ二量体は脳ではなく脊髄で発現されるとの結論を導いた(Waldhoer, M. et al. (2005) A hetero-dimer selective agonist shows in vivo relevance of G-protein coupled receptor dimers. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 9050-9055)。従って、本発明は新規な薬物標的の動的を可能にする。
【0164】
多くの場合に、文献で説明されていない知見が、本発明により解明されたヘテロ二量体の対によって明らかにされる可能性がある。例えば、次のオピオイド受容体の変種が知られている:2muOR、2デルタOR、および3カッパOR。しかし、各々のための一つだけの遺伝子が存在する。該ファミリーの内または外でのヘテロ二量体の形成は、これらの結果を説明するかもしれないことが示唆されている。
【0165】
薬理学が遺伝子よりも多い標的を示唆する他の例には、Beta−AR4受容体、カルシトニン遺伝子関連のペプチド1および2、C5A受容体サブタイプ、ETB受容体サブタイプ、ガラニン受容体サブタイプ、ニューロペプチドY3サブタイプ、および血小板活性化因子受容体サブタイプが含まれる。多くの場合、追加の受容体は本発明のヘテロ二量体対の存在によって説明することができ、その同定は本発明によって可能にされるであろう。
【0166】
特にGPCRについてみると、最も良く売れているGPCRを標的とした薬物には、クラリチン(ヒスタミン受容体/アレルギー適応);コザール(Cozarr)、テベテン(Teveten)(アンジオテンシン受容体/高血圧適用)、およびクロザピン(ドパミン/統合失調症)、並びに以下の表において強調された他の薬物(GPCR薬)が含まれる。
【表1】

【表2】

【0167】
これら薬物の多くは複数のGPCRと相互作用し、その効果の幾つかはヘテロ二量体標的を含む可能性がある。本発明は、ヘテロ二量体を通して誘発された効果を確認する体系的なアプローチを可能にし、また作用および/または副作用についての説明の推論を可能にすると共に、これらは医薬化合物の治療的利益を最適化する戦略の開発を可能にする。
【0168】
6’−グアニジノアルトリンドール(6’-guanidinoaltrindole)の場合のように、既知のリガンドが、ヘテロ二量体受容体をトリガーする異なる能力を示す可能性があり、これは既に存在する分子の新たな応用を明らかにする可能性がある:
・Hilairet et al. 2003 (J. Biol. Chem. 278, 23731-23737)は最近、CB1アンタゴニストが、CB1/OxR1ヘテロ二量体対を介して作用することにより食欲を抑制することを示した。
【0169】
・ソマトスタチンSSTR5受容体は、ドパミンD2受容体と共にヘテロ二量体化するであろうことが示された(Rocheville et al. (2000) Science 288, 154-157)。
【0170】
アンジオテンシンAT1受容体(AT1R)/ブラジキニンB2受容体(B2R)ヘテロ二量体は、妊婦における子癇前症の原因であると信じられている。証拠は、該ヘテロ二量体がアンジオテンシンIIに対してより敏感であることを示唆している(AngII; AbdAlla et al. (2001) Nat. Med. 7, 1003-1009) 。アンジオテンシンIIおよびブラジキニン(BK)は、逆の調節的役割を果たし、AngIIは心血管系における一次血管収縮剤として作用し、またBKは血管拡張を誘起することによってこれらの効果を打ち消す。一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞を使用することにより、B2RおよびAT1Rのヘテロ二量体化が生じること、また存在する受容体の相対的量に依存することが示された(AbdAlla et al. (2000) Nature 407, 94-98)。加えて、Gi媒介性およびGq媒介性の信号伝達の程度が増強され、また受容体の内部化プロファイルは、受容体が結合する条件において変化した。それは主にGiタンパク質およびGqタンパク質に結合するので、向上した信号伝達はAT1Rの増大した活性化に帰せられた。B2Rと会合したときのAT1Rの感作は、これがインビボで有し得る潜在的な効果を研究する継続的な研究を実施するように著者を導いた。以前のデータは、AT1Rの増大した発現が子癇前症と相関しなかったこと(Obstet Gynecol 91, 591-595)、およびアンジオテンシンIIの循環レベルは対照患者に比較して有意に異ならなかったこと(Masse et al. (1998) Clin Biochem 31, 251-255; Pouliot et al. (1998) Clin Perinatol 8, 683-711)を示唆したので、Abdalla et al.(2001, Nat. Med. 7, 1003-1009)は、子癇前症の女性に見られるAngIIへの過敏症(Abul-Kaim & Assalin (1961) Am J Obstet Gynecol 142, 17-20)が、AT1RおよびB2Rの間のヘテロ二量体化に幾分関連している可能性があると仮定した。実際に、この研究は、過敏性の子癇前症症候群が、血小板上での増大したB2R発現レベルと強く相関し、その結果としてAT1Rとの増大したヘテロ二量体化およびAngIIの循環レベルに対する向上した感受性をもたらすることを示すことができた(AbdAlla et al. (2001) Nat. Med. 7, 1003-1009)。更に、それらは、ヘテロ二量体化がAngII感受性を悪化させる遊離ラジカル不活性化に対してAT1Rを耐性にすることを示すことができ、不規則なGPCRヘテロ二量体化に関連した最初の疾患モデルを樹立することができた(最近の概説については、Quitterer et al. (2004) Semin Nephrol 24, 115-119; Shah (2005) Am J Physiol Renal Physiol 288, F614-625参照)。
【0171】
同じ組織タイプにおけるAT1RおよびB2Rの同時発現を裏付けるデータは、アブダラ(Abdalla)およびその同僚たちによる仕事に限定されない。ヒト胎児肝細胞(hES)は、これら細胞を上皮系統にコミットするために、特異的成長因子で処理され、次いでRT-PCRによりGPCRの発現について評価された(Huang et al. (2007) J Cell Physiol 211, 816-825)。面白いことに、分化したhESおよび未分化のhES(レンチウイルスによりAT1RおよびB2Rをトランスフェクトされたもの)は、両者共にこれらGPCRを発現したが、分化した細胞のみが、アゴニスト暴露にもかかわらず、Gタンパク質に媒介された信号伝達経路を活性化することができた。
【0172】
或る研究は、部分的な肝臓切除に続くラットでの肝臓再生を向上させる、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の能力に寄与する機構を決定しようと試みた(Yayama et al. (2007) Biol Pharm Bull 30, 591-594)。ACEはAngIIの形成を触媒し、従って、この酵素の阻害はAT1Rアゴニストの合成を効果的にブロックする。肝臓再生は、対照に比較すると、ACE阻害剤で処理された動物において有意に大きく、またAT1RAT1との組み合わせにおいて、肝臓再生の範囲は更に改善された。この効果は、B2R特異的アンタゴニストによって部分的に阻害され、B2R活性化およびACE阻害剤によるAT1R阻害が斯かる化合物の再生特性の基礎をなしていることを示した。
【0173】
オピオイド系の一つの特色は受容体がリサイクルできないことであり、この結果は、オピオイド効果の脱感作をもたらす。これは、リガンド刺激に際して内部化できない受容体によるものである。本発明は、オピオイド受容体と共にヘテロ二量体化する受容体の同定を可能にするものであり、その場合、この相手方の受容体のリガンドの同時投与は、受容体へテロ二量体の内部化をトリガーし、それによってオピオイド受容体の脱感作を回避できるであろう。
【0174】
オーファン受容体は未知の機能を有し、それらの夫々のリガンドに関する情報は入手できない。多くのCPCRはオーファン受容体である。本発明は、何れのオーファン受容体が、GPCRを含む潜在的な求婚者受容体のパネルとのヘテロ二量体対を形成できるかを試験するために利用されてよい。既知のアゴニストおよびアンタゴニストを用いて該オーファン受容体をトリガーする能力は、同時発現研究によって試験することができる。この最近の例は、MrgEオーファン受容体に関するものであり、それはMrgD受容体と共にヘテロ二量体化し、MrgDアゴニストのB−アラニンの能力を向上させることが見出された。
【0175】
一般に、高スループットのスクリーニングおよび薬物発見について、この種類のアッセイは、特定の多成分分子会合内のその環境において、分子の機能を阻害または活性化する化合物を発見するために使用することができる。もう一つの会合における同じ分子の機能は、影響されないかもしれない。
【0176】
上記で述べた分子相互作用の側面は多くの細胞機能において重要な役割を果たし、ここでの例に記載したものに限定されないことは、当業者に明らかであろう。
【0177】
<甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体/オレキシン受容体・ヘテロ二量体/オリゴマー>
以下の例から明らかなように、本発明は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合を同定および特徴付けするために、本発明のシステムに適用された。
【0178】
「甲状腺刺激ホルモン受容体」または「TRHR」の用語は、少なくとも、脳下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン産生細胞における甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によって活性化されるものに類似したGタンパク質結合型受容体、並びに中枢神経系における多くの構造体(Riehl et al. (2000) Neuropsychopharmacology 23, 34-45)を含むように解釈されるべきであり、この構造体は、他の役割の中でも特に、甲状腺刺激ホルモン(甲状腺刺激ホルモン;TSH)の合成および分泌の刺激における調節の役割を有し、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(TRHR1)と同義語である(Gershengorn (2003) Thyrotropin-releasing hormone 受容体 signaling, in Encyclopedia of hormones. Eds Henry HL and Norman AW. Academic Press. Vol 3; 502-510)。「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体」または「TRHR2」の用語はまた、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体2またはTRHR2、即ち、少なくともラットおよびマウスにおいて発現することが知られており、且つその機能は未だ明確に解明されていない甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体の第2のサブタイプ(Gershengorn (2003) Thyrotropin-releasing hormone 受容体 signaling, in Encyclopedia of hormones. Eds Henry HL and Norman AW. Academic Press. Vol 3; 502-510)をも意味すると理解されるべきである。「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体」または「TRHR」の用語は、更に、新たに発見されたTRHRファミリーのメンバーを含むものと理解されるべきである。実施例の全体を通して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体および題字語のTRHRは、TRHR1を意味する。
【0179】
「オレキシン受容体」または「OxR」の用語は、オレキシン受容体1(OxR1;OXR1;OXR;ヒポクレチン−1−受容体;hcrtr1)またはオレキシン受容体2(OxR2;OXR2;OXR;ヒポクレチン−2−受容体;hctr2)の何れかを意味すると理解されるべきであり、これらはサクライ等によって、オレキシンA(OxA;ヒポクレチン−1;Hcrt−1)またはオレキシンB(OxB;ヒポクレチン−2;Hcrt−2)により活性化されると記載されたものに類似するGタンパク質結合型受容体である(Sakurai et al. (1998) Cell 92, 573-585)。「オレキシン受容体」または「OxR」は更に、新たに発見されたオレキシン受容体ファミリーのメンバーを含むように解釈されるべきである。
【0180】
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との会合は、一方の受容体のリガンド(それらはアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストである)を他の受容体に関連した病気の治療において使用することを可能にする。
【0181】
従って、本発明は、治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを投与することにより、オレキシン関連の病気に罹患している患者を治療するための方法を包含する。
【0182】
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストは、オレキシン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストと共に同時投与されてもよい。
【0183】
本発明は更に、治療的に有効な量のオレキシン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを投与することにより、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンに関連した病気に罹患している患者を治療するための方法を包含する。
【0184】
本発明は更に、治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを投与することによりオレキシン関連の病気に罹患している患者を治療するための、医薬を製造する方法を包含する。
【0185】
前記医薬は更に、オレキシン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してもよい。
【0186】
本発明は更に、治療的に有効な量のオレキシン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを投与することにより甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体関連の病気に罹患している患者を治療するための、医薬を製造する方法を包含する。
【0187】
前記医薬は更に、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してもよい。
【0188】
従って、本発明は、治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン選択的な結合剤、またはその断片を投与することにより、オレキシン関連の病気に罹患している患者を治療するための方法を包含する。
【0189】
前記甲状腺刺激ホルモン選択的結合剤は抗体であってよく、これにはヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、および/または抗イディオタイプ抗体が含まれる。
【0190】
本発明は更に、治療的に有効な量のオレキシン選択的結合剤またはその断片を投与することにより、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン関連の病気に罹患した患者を治療する方法を包含する。
【0191】
前記オレキシン選択的結合剤は抗体であってよく、これにはヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、および/または抗イディオタイプ抗体が含まれる。
【0192】
中枢神経系(CNS)における甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の機能は、一緒になって一般のTRHホメオスタシス系を構成する四つの解剖学的に異なる成分、即ち、1)視床下部−下垂体刺激神経内分泌系、2)脳幹/中脳/脊髄系、3)辺縁/皮質系、および4)時間生物学的系として、グレイによって報告されている(Gary, Keith A., et al., The Thyrotropin-Releasing Hormone (TRH) Hypothesis of Homeostatic Regulation: Implications for TRH-Based Therapeutics, JPET 305:410-416, 2003)。
【0193】
グレイは更に、「CNS活性をモジュレートおよび正規化するTRHのグローバルな機能の評価は、治療剤としてのTRH自身の本来の制限の評価と共に、顕著に広い臨床状態のスペクトルにおいて、単味剤療法および他の治療剤に対する補助剤の療法として、代謝的に安定なTRH擬似薬からの治療的利益の合理的な予測に導く」と述べている。
【0194】
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン関連の病気には、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの増大もしく減少した産生、および/または甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する増大もしくは減少した細胞応答に関連する病気が含まれる。以下のリスト(Gary, Keith A., et al., The Thyrotropin-Releasing Hormone (TRH) Hypothesis of Homeostatic Regulation: Implications for TRH-Based Therapeutics, JPET 305:410-416, 2003)は、TRH関連の病気の幾つかの例を提供する:
・鬱病、特に過眠症を伴うもの;
・慢性疲労症候群;
・過剰な昼間の眠気(睡眠発作を含む)、神経衰弱症、および嗜眠;
・薬物、化学療法、または放射線療法に対する二次的な沈静
・鎮静剤中毒/呼吸困難(ER設定)
・全身麻酔からの回復
・注意力欠乏/機能更新障害;
・概日リズム障害(例えば、時差ぼけ)
・気分安定剤として、二極性情動障害
・不安障害
・アルツハイマー病、および認識力不足を伴う他の痴呆
・癲癇発作障害;および
・運動神経障害
併用療法として特に有効である
しかし、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン関連の病気はそれらに限定されないことが理解されるべきである。
【0195】
オレキシン関連の病気には、オレキシンの増大もしくは減少した産生、および/またはオレキシンに対する増大もしくは減少した細胞応答に関連する病気が含まれる。オレキシン関連の病気の主要な例は、睡眠発作である。これは、約90%の患者において、低レベルまたは検出不能なレベルの脳脊髄液(CSF)オレキシンAレベルに関連している(Baumann and Bassetti (2005) Sleep Medicine Reviews 9, 253-268)。オレキシン受容体2遺伝子の突然変異は、家族性のイヌ睡眠発作を導き、またオレキシンニューロンの喪失および低CSFオレキシンAが、散発性のイヌ睡眠発作と共に観察された。急性外傷性脳傷害、ギラン・バレー症候群および進行性パーキンソン氏症候群から生じる神経学的障害はまた、幾つかの場合に、低レベルまたは検出不能なレベルのCSFオレキシンAレベルと関連付けられる。オレキシンニューロンの活性はグルコースおよびレプチンによって阻害され、摂食を促進する胃由来のペプチドであるグレリンによって刺激されるので、サクライは、摂食およびエネルギーホメオスタシスにおけるオレキシン系の役割を仮定した(Sakurai (2005) Sleep Medicine Reviews 9, 231-241)。
【0196】
しかし、オレキシン関連の病気はこれらに限定されないことが理解されるべきである。
【0197】
既知のオレキシン受容体モジュレータには、オレキシンA(OxA; hypocretin-1; Hcrt-1)、オレキシンB(OxB; hypocretin-2; Hcrt-2)およびそれらの断片(Lang et al. (2004) J Med Chem 47, 1153-1160)が含まれる。
【0198】
OxR1およびOxR2の両者についての既知のアンタゴニストには、6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン類似体(Hirose M et al. (2003) Bioorg. Med. Chem. Lett. 13, 4497-4499)、アルモレキサント((2R)−2−{(1S)−6,7−ジメトキシ−1−[2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−エチル]−3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−2−イル}−N−メチル−2−フェニル−アセタミド; ACT-078573; Actelion Pharmaceuticals Ltd., Allschwil, Switzerland; Brisbare-Roch et al. (2007) Nature Medicine 13, 150-155)が含まれる。既知のOxR1アンタゴニストには、SB−334867−A(1−(2−メチルベンゾオキサゾール−6−イル)−3−[1,5]ナフチリジン−4−イル尿素塩酸塩)、SB−674042(1−(5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−イル)−1−((S)−2−(5−フェニル−(1,3,4)オキサジアゾール−2イルメチル)−ピロリジン−1−イル)−メタノン)、SB−408124(1−(6,8−ジフルオロ−2−メチル−キノリン−4−イル)−3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−尿素)、およびSB−410220(1−(5,8−ジフルオロ−キノリン−4−イル)−3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−尿素)が含まれる(Haynes et al. (2000) Regulatory Peptides 96, 45-51; Langmead et al. (2004) British Journal of Pharmacology 141, 340-346)。
【0199】
既知のOxR2アンタゴニストには、N−アリールメチル−tert−ロイシル・6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン類似体、およびN−アシル・6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン類似体(Hirose M et al. (2003) Bioorg. Med. Chem. Lett. 13, 4497-4499)、および置換4-フェニル−[1,3]ジオキサン類、特に、1−(2,4−ブロモ−フェニル)−3−((4S,5S)−2,2−ジメチル−4−フェニル−[1,3]ジオキサン−5−イル)−尿素(McAtee LC et al. (2004) Bioorg. Med. Chem. Lett. 14, 4225-4229)が含まれる。
【0200】
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体の既知のモジュレータには、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH;チロリベレリン;TRF;pGlu−His−Pro−NH)、[Glu2]TRH、アミノ末端プログルタミル残基がピリジニウム部分で置換された[Glu2]TRH(Prokai-Tatrai et al. (2005) Med. Chem. 1, 141-152)、メチル−TRH、(3−メチル−His2)TRH、モンチレリン((3R,6R)−6−メチル−5−オキソ−3−チオモルホルニル・カルボニル−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド四水和物;CG−3703;Grunenthal GmbH, Aachen, Germany)、CNK−602A(N−[(6−メチル−5−オキソ−3−チオモルホリニル)・カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド;Renming et al. (1992) Eur. J. Pharmacol. 223, 185-192)、タルチレリン((−)−N−[(S)−ヘキサヒドロ−1−メチル−2,6−ジオキソ−4−ピリミジニルカルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド四水和物;Ceredist; TA-0910; Tanabe Seiyaku Co., Ltd., Osaka, Japan)、JTP−2942(Nα−[(1S,2R)−2−メチル−4−オキソシクロペンチルカルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド一水和物;Japan Tobacco, Inc., Tokyo, Japan)、アゼチレリン(YM−14673;Yamanouchi Pharmaceutical Co., Ltd, Tokyo, Japan)、DN−1417(ガンマ−ブチロラクトン−ガンマ−カルボニル−ヒスチジル−プロリンアミドクエン酸塩;Miyamoto M et al. (1981) Life Sci. 28, 861-869)、RX−77368(pGlu−His−(3,3’−ジメチル)−Pro−NH;Ferring Pharmaceuticals, Feltham, Middlesex, UK)、CG−3509(Grunenthal GmBH, Stolberg, Germany)、MK−771(1−ピロ−2−アミノアジピジル−L−ヒスチジル−L−チアゾリジン−4−カルボキサミド; Merck, Rahway, NJ)、ポサチレリン(RGH2202;L−6−ケトピペリジン−2−カルボニル−L−ロイシル−L−プロリンアミド;Gedeon Richter Pharmaceuticals, Budapest, Hungary)、Ro24−9975(1S,3R,5(2S),5S)−5−[(5−オキソ−1−フェニルメチル)−2−ピロリジニル]−メチル]−5−[(1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−シクロヘキサンアセタミド;Hoffman-La Roche, Basel, Switzerland)、プロチレリン(5−オキソ−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド;チレール(登録商標)TRH;Ferring Pharmaceuticals, Tarrytown, NY)、ミダゾランム、ジアゼパム、およびクロルジアゼポキシド(逆アゴニスト;Jinsi-Parimoo A and Gershengorn MC (1997) Endocrinology 138, 1471-1475)が含まれる。
【0201】
オレキシン系と脱力発作を伴う睡眠発作との間の強い関連性が確立されている(Sakurai (2005) Sleep Medicine Reviews 9, 231-241)。更に、ニシノ等は、TRH類似体が睡眠発作における過剰な昼間眠気の治療のために有用である可能性があることを示唆した(Nishino et al. (1997) The Journal of Neuroscience 17, 6401-6408)。TRH類似体であるCG−3703およびTA−0910は、遅延波睡眠(SWS)および迅速眼球運動(REM)睡眠を、投与量依存および時間依存的に顕著に低減した。更に、TRH類似体は、研究された動物の殆どにおいて脱力発作を完全に抑制した。血清TおよびTは有意に変化せず、「抗睡眠発作およびTRHおよびおよびTRH類似体の警告作用は、神経モジュレートCNS特性によって媒介され、甲状腺軸に対する間接的な影響によっては媒介されないことを示唆する」(Nishino et al. (1997) The journal of neuroscience 17, 6401-6408)。これらの所見は、2000年の更なる研究(Riehl et al. (2000) Neuropsychopharmacology 23, 34-45)によって裏付けられた。睡眠発作の病態生理学におけるTRHおよびオレキシン(およびそれらの類似体)の作用モードは解明されるべく残されているが、本発明において同定されたヘテロ二量体/オリゴマー相互作用は、これら受容体系の統合に寄与する。Riehl等は、『睡眠発作の病態生理学におけるヒポクレチン系の関与の基礎をなす機構は不明瞭なままである。しかし、ヒポクレチン[オレキシン]含有ニューロンは、専ら視床下部外側野(Sakurai et al. 1998 [Cell, 92, 573-585]; Peyron et al. 1998 [J. Neurosc. 18, 9996-10015])、即ち、TRHニューロンに富む領域(Kreider et al. 1985 [Peptides 6, 997-1000)に局在化することに注目することは興味深い。加えて、ヒポクレチン[オレキシン]、およびTRH受容体は、ニューロペプチドについてのGタンパク質結合型受容体であり、またTRH受容体は、ヒポクレチン[オレキシン]受容体(Sakurai et al. 1998 [Cell, 92, 573-585])に対する第二の最も高い(25%)ホモロジーを有し(Y2ニューロペプチドY受容体は最も高いホモロジーを有する)、TRHはヒポクレチン[オレキシン]システムとの未知の特異的相互作用を介して、睡眠発作の病態生理学において重要な役割を果たし得ることを示唆する』と述べている。この著者等は、斯かる統合が本発明において同定された受容体のヘテロ二量体化/オリゴマー化の結果として生じ得るであろうことを同定することなく、TRHおよびオレキシン系の統合の可能性を同定した。
【0202】
睡眠発作に加えて、TRHおよびオレキシン受容体系は、摂食および代謝ホメオスタシスの制御に関連して統合されてよい。甲状腺ホルモン分泌は飢餓の際に抑制されるのに対して、プレプロヒポクレチン(オレキシンペプチドの前駆体)mRNAは、視床下部外側野で上方調節される。斯かる所見は、Kok等をして、TRFおよびオレキシン系の統合を研究するように導いた。「ヒポクレチン[オレキシン]および甲状腺刺激ホルモン神経回路のトポグラフィーは、TRFニューロン活性がヒポクレチン[オレキシン]入力によって支配されることを示唆するが、信号の性質(即ち、励起または阻害)は不明瞭なままである」(Kok et al. (2005) AJP - Endocrinology and Metabolism 288, 892-899)。この研究は、オレキシン欠乏性睡眠発作のヒトにおいて、対照に比較して有意に低い平均血漿TSH濃度を示した。フィードフォワード信号伝達と同様に、ホルモン/神経伝達物質を分泌するニューロンまたはその局所に発現された受容体を介した自己分泌および傍分泌フィードバックを含む複合フィードバック経路は、このような系に共通している可能性があり、またこれら受容体がヘテロ二量体/オリゴマーを形成する系統合において生理学的もしくは病態生理学的役割を果たす可能性がある。
【0203】
本発明は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体/オレキシン受容体のへテロ二量体/オリゴマー選択的な活性について試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなり、該方法は、
a)オレキシン受容体が甲状腺刺激ホルモン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記オレキシン受容体と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
b)前記オレキシン受容体が前記甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記オレキシン受容体と相互作用するならば、前記試験化合物が、前記甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体の不存在下において前記オレキシン受容体と相互作用するかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり、
前記オレキシン受容体が前記甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体と会合する間、前記オレキシン受容体と相互作用するときにより大きな親和性および/または能力および/または効果を示す試験化合物が、前記甲状腺刺激ホルモン受容体/第オレキシン受容体のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0204】
本発明は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体/オレキシン受容体のへテロ二量体/オリゴマー選択的な活性について試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなり、該方法は、
a)甲状腺刺激ホルモン受容体がオレキシン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記甲状腺刺激ホルモン受容体と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
b)前記甲状腺刺激ホルモン受容体が前記オレキシン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記甲状腺刺激ホルモン受容体と相互作用するならば、前記試験化合物が、前記オレキシン受容体の不存在下において前記甲状腺刺激ホルモン受容体と相互作用するかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり、
前記甲状腺刺激ホルモン受容体が前記オレキシン受容体と会合する間、前記甲状腺刺激ホルモン受容体と相互作用するときにより大きな親和性および/または能力および/または効果を示す試験化合物が、前記甲状腺刺激ホルモン受容体/オレキシン受容体のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的である。
【0205】
本発明の好ましい実施形態において、甲状腺刺激ホルモン受容体がオレキシン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記甲状腺刺激ホルモン受容体と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程;および/またはオレキシン受容体が甲状腺刺激ホルモン受容体と会合する間、前記試験化合物が前記オレキシン受容体と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程は、本発明の方法によって行われる。
【0206】
本発明は更に、甲状腺刺激ホルモン関連の病気またはオレキシン関連の病気に罹患している患者を治療するための方法であって、治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体/オレキシン受容体のヘテロ二量体/オリゴマー選択的なアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを投与することによる方法を包含する。
【0207】
本発明は更に、甲状腺刺激ホルモン関連の病気またはオレキシン関連の病気に罹患している患者を治療するための医薬を製造するための、治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体/オレキシン受容体のヘテロ二量体/オリゴマー選択的なアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストの使用を包含する。
【0208】
本発明は、甲状腺刺激ホルモン受容体/オレキシン受容体のヘテロ二量体/オリゴマーの選択的なアゴニストおよび/またはアンタゴニストおよび/または逆アゴニストを含む。
【0209】
ここで使用する「患者」の用語は、オレキシンまたは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンに関連した病気の一以上に罹患している可能性のある何れかの動物を意味する。最も好ましくは、該動物は哺乳類である。この用語は、例えばヒト、家畜(即ち、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、および家庭用ペット(即ち、ネコおよびイヌ)等を含むものと理解されるであろう。
【0210】
ここで使用される「治療的に有効な量」の語句は、オレキシン受容体アゴニスト、逆アゴニスト、もしくはアゴニストとオレキシン受容体との相互作用、または甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアゴニストと甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体との相互作用、またはオレキシン受容体/甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のヘテロ二量体/オリゴマーに特異的なアゴニスト逆アゴニストもしくはアンタゴニストとオレキシン受容体/甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体のヘテロ二量体/オリゴマーとの相互作用に関連した、生物学的活性をモジュレートするのに十分な量を意味する。本発明の一つの側面に関連して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニスト、およびオレキシン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニストが組み合わせて投与される場合、組合せにおける治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニストまたは治療的に有効な量のオーレキシン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニストは、単独で投与されるときの治療的に有効な量の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニスト、または治療的に有効な量のオレキシン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニストよりも低い可能性がある。即ち、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアゴニスト、およびオレキシン受容体アゴニスト、逆アゴニストもしくはアンタゴニストを組み合わせて投与することは、そうでなければ各々の治療的投与量未満である量で治療的効果を生じる可能性がある。
【0211】
本発明の医薬は注射によって投与されてよく、または経口、経肺、経鼻もしくは何れか他の投与形態のために調製されてよい。好ましくは、該医薬は、例えば静脈内、皮下、筋肉内、眼窩内、眼球内、脳室内、頭蓋内、嚢内、脊髄内、大槽内、腹腔内、頬、直腸内、膣内、経鼻、またはエアロゾル投与によって投与されてよい。
【0212】
しかし、投与モードは、少なくとも当該医薬が調製された形態に適していなければならない。最も効果的な応答のための投与モードは経験的に決定される必要があり、以下に記載する投与手段は例として与えられるもので、如何なる意味でも本発明の組成物の送達方法を限定するものではない。全ての上記製剤は、製薬工業において普通に使用されるものであり、適切な資格をもった実務者に普通に知られたものである。
【0213】
アゴニストおよび/または逆アゴニストおよび/またはアンタゴニストに加えて、本発明の医薬は、医薬的に許容可能な無毒の賦形剤およびキャリアを含有してよく、また皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射のような何れかの非経腸的技術によって投与されてよい。加えて、当該製剤は任意に1以上のアジュバントを含有してよい。
【0214】
使用に適した注射可能な医薬形態には、滅菌水溶液(水溶性の場合)もしくは分散液、または滅菌注射可能な溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。或いは、本発明の化合物は、それらの細胞膜を横切る輸送を補助するために、リポソームの中に封入されて注射可能な溶液中に送出されてよい。その代わりに、またはそれに加えて、細胞膜を横切る輸送を容易にするために、このような製剤は自己集合性孔構造の成分を含有してよい。キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒質であってよい。例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合の必要な粒子サイズの維持によって、および表面活性剤の使用によって、適正な流動性が維持されてよい。注射可能な組成物の延長された吸収は、当該組成物中に、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収遅延剤を使用することによってもたらすことができる。
【0215】
滅菌注射溶液は、活性化合物を、上記で挙げた種々の他の成分と共に必要な量の適切な溶媒の中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製されてよい。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基礎分散媒質および上記で列記したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌単体の中に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調整のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、先に述べた滅菌−濾過溶液から、活性成分プラス何れか追加の望ましい成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0216】
ここでの使用について想定されるのは経口固体投与量形態であり、これは本明細書の一部として援用するマーチン、レミングトンの医薬サイエンス第18版(1990 Mack Publishing Co. Easton PA 18042)の第89章に一般的に記載されている。固体投与量形態には、錠剤、カプセル、丸薬、トローチまたはロゼンジ、サシェーまたはペレットが含まれる。また、リポソームもしくはプロテイノイド封入が、本組成物を処方するために使用されてよい(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されたプロテイノド微小球)。リポソーム封入が使用されてよく、リポソームは種々のポリマー(例えば、米国特許第5,013,566号)を用いて誘導されてよい。治療のための可能な固体投与量形態の記載は、本明細書に一部として援用する文献(Marshall, in Modern Pharmaceutics, Chapter 10, Banker and Rhodes ed., (1979))に与えられている。一般に、該製剤は本発明の一部として記載された化合物(またはその化学修飾形態)、および胃環境に対する保護および腸での生物学的活性物質の放出を可能にする不活性成分を含むであろう。
【0217】
本発明のアゴニスト、アンタゴニストおよび逆アゴニストについて、放出の位置は胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)、または大腸であってよい。当業者は、胃では溶けないが、十二指腸または腸のどこかで物質を放出する入手可能な製剤を有している。好ましくは、この放出は、該組成物の保護により、または腸の中のように胃環境を越えて組成物を放出することにより、胃環境の有害な効果を回避するであろう。
【0218】
完全な胃耐性を保証するために、少なくともpH5.0までは不浸透性のコーティングが不可欠である。腸溶性コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は、トリメリット酸酢酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、フタル酸酢酸ポリビニル(PVAP)、ユードラギットL30D、アクアテリック(Aquateric)、フタル酸酢酸セルロース(CAP)、ユードラギットL、ユードラギットS、およびセラックである。これらのコーティングは混合フィルムとして使用されてよい。
【0219】
コーティングまたはコーティングの混合物は、胃に対する保護を意図しない錠剤に対しても使用することができる。これは糖コーティング、または錠剤を飲み込み易くするコーティングを含むことができる。カプセルは、乾燥した治療剤、即ち粉末の送達のためには硬質殻(例えばゼラチン)からなってよく;液状形態については軟質ゼラチン殻が使用されてよい。サシェーの殻材料は、濃厚澱粉または他の食用紙であることができるであろう。丸薬、ロゼンジ、モールドされた錠剤または錠剤の粉薬については、水分凝集技術を使用することができる。
【0220】
治療剤は、約1mmの粒子サイズの顆粒もしくはペレットの形態で、微細多粒子として製剤に含めることができる。カプセル投与のための材料の処方は、軽く圧縮されたプラグまたは更には錠剤であることもできるであろう。該治療剤は圧縮によって調製できるであろう。
【0221】
着色剤および風味剤もまた含められてよい。例えば、化合物は処方されてよく(例えばリポソームもしくは微小球封入)、次いで、更に着色剤および風味剤を含有する冷蔵飲料のような食品内に含有されてよい。
【0222】
治療剤の容積を、不活性物質を用いて希釈または増大させてもよい。これらの希釈剤は糖鎖、特にマンニトール、アルファ−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、蔗糖、修飾されたデキストランおよびデンプンを含むことができるであろう。一定の無機塩もまた充填材として使用してよく、これには三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および塩化ナトリウムが含まれる。幾つかの商業的に入手可能な希釈剤は、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx1500、Emcompressおよびアビセルである。
【0223】
崩壊剤は、治療剤を固体投与形態に処方するときに含められてよい。崩壊剤として使用される材料には、澱粉に基づく商業的崩壊剤であるExplotabを含むデンプンが含まれるが、これに限定されない。グリコール酸デンプンナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジ果皮、酸カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ、およびベントナイトは全て使用されてよい。崩壊剤のもう一つの形態は、不溶性陽イオン交換樹脂である。粉末ガムは崩壊剤として、およびバインダとして使用されてよく、またこれらは寒天、カラヤ、またはトラガカンスのような粉末ガムを含むことができる。アルギン酸およびそのナトリウム塩はまた、崩壊剤としても有用である。
【0224】
バインダは、治療剤化合物を一緒に保持して硬質の錠剤を形成するために使用されてよく、またアカシア、トラガカンス、澱粉およびゼラチンのような天然産物由来の材料を含んでよい。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロス(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、両者共、治療剤を顆粒化するためにアルコール溶液中で使用することができるであろう。
【0225】
抗摩擦剤は、製剤化プロセスの際の固着を防止するために、治療剤処方の中に含められてよい。潤滑剤は、治療剤とダイ壁の間の層として使用されてよく、これはマグネシウムおよびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油およびワックスを含むことができるが、これらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、およびガルボワックス(Garbowax)4000および6000のような、可溶性の潤滑剤もまた使用されてよい。
【0226】
製剤化の際に化合物の流動特性を改善し、また圧縮の際の再構成を補助し得るギルダント(Glidants)を添加してもよい。ギルダントはデンプン、タルク、発熱性シリカ、および水和した珪素アルミン酸塩を含んでよい。
【0227】
治療剤の水生環境中への溶解を補助するために、表面活性剤を湿潤剤として添加してもよい。表面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびスルホン酸ナトリウムのような陰イオン性洗浄剤が含まれてよい。陽イオン性洗浄剤が使用されてよく、また塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含むことができるであろう。表面活性剤として製剤の中に含めることができる潜在的な非イオン性洗浄剤のリストは、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ひまし油10、50および60、ステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、脂肪酸蔗糖エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。これらの表面活性剤は、単独でまたは異なる比率での混合物として、化合物の処方の中に存在することができるであろう。
【0228】
化合物の取り込みを潜在的に向上させる添加剤は、脂肪酸のオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0229】
放出を制御された製剤が望ましいかもしれない。化合物は、拡散または浸出機構によって放出を可能にする不活性なマトリックス、即ち、ガムの中に組み込まれる。徐々に変性するマトリックスもまた、処方の中に組み込まれてよい。この治療剤の制御放出のもう一つの形態は、オロス(Oros)治療剤システム(Alza・Corp社)に基づく方法によるものである。即ち、薬物は半透膜の中に閉じ込められ、該膜は水の浸入を許容して、浸透圧により単一の小さい開口を通して薬物を押し出す。幾つかの腸溶性コーティングもまた、遅延放出効果を有する。
【0230】
最適なフィルムコーティングを提供するために、材料の混合が用いられてよい。フィルムコーティングは、パンコーティング機または流動床で、または圧縮コーティングによって行われてよい。
【0231】
また、ここでは化合物の肺送達も想定される。化合物は吸入の間に哺乳類の肺に送達され、肺上皮ライニングを横切って血流の中に導入されてよい。
【0232】
本発明の実施に使用するために、治療剤製品の肺送達用に設計された広範囲の機械的装置が想定され、これにはネブライザ、計量投与量吸入器、および粉末吸入器が含まれるが、これらは全て当業者が精通しているものである。本発明の実施に適した商業的に入手可能な装置の幾つかの特定の例は、マリンクロット社(Mallinckrodt, Inc., St. Louis, Missouri)により製造されたウルトラベント(Ultravent)ネブライザ;マルケスト・メディカル・プロダクツ社(Marquest Medical Products, Englewood, Colorado)により製造されたアクロンII(Acorn II)ネブライザ;グラクソ社(Glaxo Inc., Research Triangle Park, North Carolina)によって製造されたベントリン(Ventolin)計量投与量吸入器;ファイソンズ社(Fisons Corp., Bedford, Massachusetts)により製造されたスピンヘイラー(Spinhaler)粉末吸入器である。
【0233】
全ての斯かる装置は、化合物の分散に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は用いる装置のタイプに特異的なものであり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアに加えて、適切な噴射剤物質の使用を含んでよい。また、リポソーム、マイクロカプセル、マイクロスフィア、包摂複合体、または他のタイプのキャリアの使用も想定される。
【0234】
ジェットもしくは超音波のネブライザと共に使用するのに適した製剤は、典型的には水中に懸濁された化合物を含んでなるものである。該製剤はまた、バッファまたは糖(例えばタンパク質の安定化および浸透圧の調整のため)を含有してよい。ネブライザ製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧により生じる化合物の表面誘導型凝集を低減または防止するために、表面活性剤を含有してもよい。
【0235】
計量投与量型吸入器を用いて使用するための製剤は、一般に、表面活性剤の助剤と共に噴射剤の中に懸濁された化合物を含有する、微細に分割された粉末を含むであろう。噴射剤は、この目的のために用いられる何れかの従来の材料であってよく、例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、または炭化水素であり、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン、またはそれらの組み合わせが含まれる。適切な表面活性剤には、三オレイン酸ソルビタンおよび大豆レシチンが含まれる。オレイン酸はまた、表面活性剤としても有用である。
【0236】
粉末吸入器からの分注は、当該化合物を含有する微細に分割された乾燥粉末を含んでなり、また乳糖、ソルビトール、蔗糖、またはマンニトールのような充填剤を、前記装置からの前記粉末の分注を容易にする量、例えば当該製剤の50〜90重量%の量で含有してよい。該化合物(または誘導体)は、最も有利には、遠位肺への最も効果的な送達のために、10ミクロン未満、最も好ましくは0.5〜5ミクロンの平均粒子サイズの粒状形態で調製されるべきであろう。
【0237】
当該化合物の鼻送達もまた想定される。鼻送達は、治療剤製品を鼻に投与した後に、該製品の肺での沈着を必要とすることなく、タンパク質の血流への直接の通過を可能にする。鼻送達のための製剤は、デキストランまたはシクロデキストランと共にこれらを含有する。
【0238】
本発明の医薬は、単一投与量スケジュールで、或いは、好ましくは多重投与量スケジュールで与えられてよいと理解されるであろう。多重投与量スケジュールは、主要なコースの送達は1〜10回の別々の投与で行われ、これに続いて、治療を維持または強化するために必要とされる所定の時間間隔で与えられる他の投与量で行われるものである。この投与量管理はまた、少なくとも一部は、個々人の必要により、また臨床医の判断により決定されるであろう。
【0239】
次に、以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明を更に説明する。しかし、以下の実施例は例示に過ぎないものであり、如何なる意味でも、上記で述べた本発明の一般性に対する限定として解釈されるべきではない。特に、特定の相互作用基の使用に関して本発明を詳細に説明するが、ここでの発見はこれら相互作用基に制限されないことが明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0240】
<一般方法>
細胞は、約630,000細胞/ウェル(HEK293FT)または約150,000細胞/ウェル(COS−7)の密度で6ウェルプレートに蒔かれ、10% ウシ胎児血清(FCS;Gibco)が補充された完全培地(0.3mg/mlグルタミン,100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(Gibco))において37℃,5%COに維持された。一過性のトランスフェクションは、製造業者の説明書に従ってジーンジュース(GeneJuice:Novagen)またはメタフェクテン(Metafectene:Biontex)を用いて蒔いた24時間後に行われた。トランスフェクションの24時間後、細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン/0.53mMのEDTAを用いて脱離し、5%FCSを含有するHEPES−緩衝されたフェノールレッドを含まない完全培地に再懸濁し、ポリ−L−リジンコートホワイトマイクロプレート(Nunc)に加えた。トランスフェクションの48時間後、最終濃度30〜40μM、37℃,5%COで2時間、エンデュレン(EnduRen)(登録商標:Promega)を用いて細胞をプレインキュベーションした後、eBRET分析を行った。最初のBRET研究に対して、HEPES−緩衝されたフェノールレッドを含まない完全培地はPBSで置換され、セレンテラジンh(分子プローブ)は、分析を開始する直前に最終濃度5μMで加えられた。BRET測定は、ワラク(Wallac)1420ソフトウェアを有するビクターライトプレートリーダー(Victor Light plate reader)(Perkin−Elmer)を用いて37℃で行われた。濾過された発光は、「ドナー波長窓」(400〜475nm)および「アクセプター波長窓」(EGFPに対して>500nm、またはEYFP、Topaz(TYFP)またはVenusに対して520〜540nm)のそれぞれにおいて、3〜5秒間経時的に測定された。相互作用タンパク質の間で観察されるBRET信号は、バックグラウンドBRET比を減算することにより標準化される。これは、2つの方法のうちの1つで行われてよい(Pfleger et al. (2006) Cell Signal 18, 1664-1670; Pfleger et al. (2006) Nat Protoc 1, 336-344を参照されたい):1)ドナー構築物のみを含む細胞サンプルに対するアクセプター波長窓を通る400〜475nmの発光の比は、相互作用アクセプターおよびドナー融合タンパク質を含むサンプルに対する同じ比から減算される;2)溶媒で処理された細胞に対する「アクセプター波長窓」を通る400〜475nmの発光の比は、リガンドで処理された同じ細胞サンプルの第2のアリコートに対する同じ比から減算される。以下の実施例においては、信号が「リガンド誘導BRET比」として記載されない限り、第1の計算が使用される。あるいは、および特に、z因子データを説明する場合(Zhang et al. (1999) J Biomol Screen 4, 67-73)、相互作用タンパク質の間で観察されるBRET信号は、バックグラウンドBRET比との組み合わせ(減算の反対)において見られ、相互作用タンパク質の間で観察されるBRET信号に伴うエラーおよびバックグラウンドBRET比に伴うエラーを独立に評価する。この場合、データは、「蛍光/発光」として表され、特定の細胞サンプルに対する「アクセプター波長窓」を通る400〜475nmの発光の比である。特に言及しない限り、BRET信号は、96ウェルマイクロプレートにおいて測定した。
【0241】
実施例1:甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図4を参照すると、eBRET信号は、それぞれ各々のリガンドで処理した後、pcDNA3、OxR2、CXCR2、HA−MC3R、HA−MC4R、D2LRまたはD2SRと共にTRHR/Rlucおよびbarr2/Venusを一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0242】
リガンド処理の前に(0分において添加)、ベースラインeBRET信号が各受容体の組み合わせについて記録された。最初の時間において、TRHR/Rlucおよびbarr2/Venusと共にpcDNA3TRHを同時発現している細胞の処理により、eBRET信号は0.17より高いピークに急速に到達し、この信号は、記録する全期間に渡って維持された(2時間近く)。TRHR/Rluc、barr2/VenusおよびOxR2Aを同時発現している細胞のOxA処理の後にも、信号は観察された。しかしながら、この信号は、約0.07〜0.08に到達するために30分かかった。他の受容体の組み合わせについては、リガンド誘発eBRET信号は観察されなかった。
【0243】
この実施例は、RC1とRC2の近接により生じる信号は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)がIG1であり、RlucがRC1であり、β−アレスチン2(barr2)がIG2であり、VenusがRC2であり、OxR2がIG3である組み合わせであり、モジュレータ(この場合はOxA)がIG3との特異的な相互作用の結果としてIG2とIG3の会合を修飾する場合に、特異的に検出されることを示す。IG3がCXCR2、HA−MC3R、HA−MC4R、D2LRまたはD2SRであり、これらIG3に対して特異的なアゴニストがIG2とIG3の会合を修飾する場合には信号は検出されず、IG3としてのOxR2との会合に対する信号の特異性を示す。
【0244】
一般的に、この実施例は、特異的な相互作用基間の特異的な分子会合を同定および/またはモニターする本発明の方法の可能性を示し、発明者らは、本発明に記載されている方法を用いて、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合を確認した。
【0245】
この実施例は、更に、IG2とIG3の会合の修飾によりRC1とRC2の近接から生じる信号について観察される動力学的なプロフィールは、IG1−IG2会合がIG1と特異的に相互作用するリガンド(この場合はTRH)により修飾される場合に、IG1とIG2の会合によりRC1とRC2の近接から生じるeBRET信号について観察される動力学的なプロフィールとは異なることを示す。前者のプロフィールは、実質的に、後者のプロフィールと比較して遅延する。
【0246】
実施例2:甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合を示す付加的な検出可能な信号の測定
図5を参照すると、eBRET信号は、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr2と共にpcDNA3またはOXR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。リガンド処理は、OxAもしくはTRHのみ、またはOxAおよびTRHの両方の組み合わせであった。
【0247】
リガンド処理の前に(0分に添加される)、ベースラインeBRET信号が、各受容体の組み合わせに対して記録された。各組み合わせを発現しているPBS処理された細胞は、全記録時間(70分間)、ベースラインeBRET信号のみを示した。OxAでの処理の後、OxR2およびEGFP/barr1(×)またはEGFP/barr2(グレーの反転した三角)を発現している細胞は、10分以上後にプラトーに到達するeBRET信号を示した。TRHR/Rlucのみ(OxR2なし)と共にbarrの何れかを発現している細胞において、TRH処理は、eBRET信号の急速な刺激を生じた。barr2(黒丸)による信号は、barr1(グレーの三角)より大きいが、OxAが存在する場合、何れのアレスチンにおいても違いは見られなかった(barr2,黒三角;barr1,グレーのマル)。TRHR/RlucとOxR2(barr1,グレーの四角;barr2,黒四角)の両方を発現している細胞において、両方のリガンドの添加は、OxAまたはTRHを単独で加えた後に見られたものを超える増大したeBRET信号を示した。
【0248】
この実施例は、RC1とRC2の近接から生じる信号が、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)がIG1であり、RlucがRC1であり、β−アレスチン1(barr1)またはβ−アレスチン2(barr2)がIG2であり、EGFPがRC2であり、OxR2がIG3である組み合わせであり、モジュレータOxAがIG3と特異的に相互作用する結果としてIG2とIG3との会合を修飾する場合に検出されることを示す。
【0249】
それ故、この実施例は、異なるIG2およびRC2を試用する場合を含む、実施例1に示されるものとは異なる組み合わせを使用する信号検出を示す。
【0250】
実施例1のように、この実施例は、この場合はOxAによりIG2とIG3の会合が修飾されることによりRC1とRC2との近接から生じる信号について観察される遅延した動力学的プロフィールを示し、このIG1−IG2会合がIG1と特異的に相互作用するリガンド(TRH)により修飾される場合に、IG1とIG2の会合によるRC1とRC2の近接から生じるeBRET信号について観察されるより早い動力学的プロフィールとは区別される。しかしながら、実施例1に示されたことに加えて、この実施例は、IG1リガンド(TRH)およびIG3リガンド(OxA;モジュレータ)の組み合わせの処理の付加的な効果を示す。
【0251】
それ故、この実施例は、更に、特異的な相互作用基間の特異的な分子会合を同定および/またはモニターするための本発明の方法の別の可能性、並びに、本発明において述べられている方法を用いて、甲状腺刺激ホルモンン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合についての更に別の証拠を提供し、この付加的な効果は、IG2−IG3−IG1会合に加えてIG1−IG2会合の結果としてRC1とRC2が近接することを示す。このことは、IG1特異的なリガンドの非存在下で、非特異的なIG1−IG2会合から生じる信号に対する証拠を提供する。理論による結合を望むことなく、この付加的な効果は、部分的に、モジュレータとして作用するIG1リガンドによるものであってよく、IG3におけるアロステリックな効果を介してIG2とIG3の会合を修飾する。更に、この付加的な効果は、部分的に、信号産生に対してより有利な活性IGコンファメーション(アゴニストに結合するもの)によるものであってよく、RC1とRC2の近接を増大させる可能性があり、また、RC1とRC2のより有利な相対的な配向性を可能にし得る。
【0252】
実施例3:モジュレータの結合に対して競合するアンタゴニストの信号産生における効果の測定
図6を参照すると、eBRET信号は、10−6MのOxA(IG3リガンド;モジュレータ)もしくは10−6MのTRH(IG1リガンド)または両方の添加の前に、10−6MのOxR1−選択性アンタゴニストであるSB−334867−Aで約40分間前処理した後、TRHR/Rlucおよびbarr2/Venusと共にpcDNA3、OxR1またはOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。アンタゴニストで前処理されない細胞は、代わりにPBSで同じ時間前処理された。
【0253】
アゴニスト処理の前に(0分で加える)、ベースラインeBRET信号は、受容体の組み合わせのそれぞれに対して記録された。小さなeBRET信号は、OxA−処理されたTRHR/Rlucおよびbarr2/VenusおよびOxR1(グレーのダイヤ)について観察された。この信号は、アンタゴニストの存在下で減少した(オープンスクエア)。OxR1発現細胞へのTRHおよびOxA両方の添加は、結果としてずっと大きな信号を生じ(白い三角形)、この信号の大きさは、アンタゴニストの存在下で減少した(グレーのマル)。eBRET信号は、TRHR/Rluc、barr2/VenusおよびOxR2を同時発現している細胞のOxA処理の後で観察された(黒いダイヤ)。この信号は、アンタゴニストの前処理により影響されなかった(白い四角)。OxR2発現細胞に対するTRHおよびOxAの両方の添加は、結果として、アンタゴニストの存在下(黒丸)または非存在下(グレーの三角)において異ならない信号を生じた。
【0254】
この実施例は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)がIG1であり、RlucがRC1であり、β−アレスチン2(barr2)がIG2であり、VenusがRC2であり、OxR1またはOxR2がIG3である組み合わせであり、モジュレータOxAが、IG3と特異的に相互作用する結果としてのIG2とIG3の会合を修飾する場合に検出される、RC1とRC2の近接の結果として生じる信号を示す。
【0255】
この実施例は、モジュレータ結合の特異的なアンタゴニズム(この場合は、OxR1−選択的なアンタゴニストであるSB−334867−AによりOxR1において作用するOxAの特異的アンタゴニズム)が、モジュレータ(この場合はOxA)により修飾されるRC1とRC2の近接による信号におけるその効果の結果として検出され得ることを示す。
【0256】
実施例4:レポータ成分を構成しないIG3における標識の使用
図7を参照すると、eBRET信号は、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr2と共にpcDNA3またはHA−OxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。リガンド処理は、OxAまたはTRHのみであった。
【0257】
リガンド処理の前に(0分において添加される)、ベースラインeBRET信号は、それぞれの受容体の組み合わせについて記録された。それぞれの組み合わせを発現しているPBS処理された細胞は、全記録時間(80分間)でベースラインのeBRET信号のみを示した(データは示さない)。OxAで処理した後、HA−OxR2および何れかのEGFP/barrsを発現している細胞は、10分以上後にプラトーに到達するeBRET信号を示した(EGFP/barr1,黒いダイヤ、EGFP/barr2,黒マル)。TRHR/Rlucのみ(HA−OxR2なし)を発現している細胞において、TRHは、最初の数分間でピークに到達するeBRET信号における急速な増大を刺激し、信号はその後、記録時間の残り時間に亘ってわずかに下降した(グレーの四角)。eBRET信号においてベースライン以上の増加がないことは、HA−OxR2を欠く細胞にOxAが添加された後に観察された(グレーの三角)。
【0258】
この実施例は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)がIG1であり、RlucがRC1であり、β−アレスチン1(barr1)またはβ−アレスチン2(barr2)がIG2であり、EGFPがRC2であり、ヘマグルチン(HA)エピトープ標識OxR2(HA−OxR2)がIG3である組み合わせであり、モジュレータであるOxAが、IG3との特異的な相互作用の結果としてIG2およびIG3の会合を修飾する場合に検出される、RC1とRC2の会合の結果として生じる信号を示す。
【0259】
この実施例は、IG3は、例えばヘマグルチン(HA)エピトープ−標識の添加により標識され得るが、この標識はレポータ成分を構成せず、RC1とRC2の近接により生じる信号を妨害する、および/または該信号に寄与することを示す。そのような標識化は、例えばIG3の相対的な発現レベルのような付加的な情報を確かめることを可能にする。
【0260】
実施例5:相互作用基としての変異型β-アレスチンの使用
図8を参照すると、eBRET信号は、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1またはEGFP/barr1リン酸化非依存性の変異型R169E(EGFP/barr1R169E)と共に、pcDNA3またはOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。リガンド処理は、OxAまたはTRHのみであった。
【0261】
リガンド処理の前に(0分において添加した)、ベースラインeBRET信号が、それぞれの受容体の組み合わせについて記録された。それぞれの組み合わせを発現しているPBS処理された細胞は、全記録時間(100分間)に亘ってベースラインeBRET信号のみを示した(白い四角、白いダイヤおよび黒いダイヤ)。OxAによる処理の後、OxR2およびEGFP/barr1(黒マル)またはEGFP/barr1R169E(黒い三角)を発現している細胞は、EGFP/barr1の場合、10分以上後にプラトーに到達するeBRET信号を示し、一方、EGFP/barr1R169Eは、20分までにプラトーに到達するより低い信号を示した。TRHR/Rlucのみ(OxR2なし)を何れかのbarrsと共に発現している細胞において、TRHは、最初の数分間にピークに到達するeBRET信号における急速な増大を刺激し、信号はその後、記録時間の残り時間に亘ってわずかに下降した。EGFP/barr1R169Eに対する信号(白い三角)は、EGFP/barr1に対する信号(白マル)よりも低く、このタンパク質のより低い発現レベルを反映する。
【0262】
この実施例は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR)がIG1であり、RlucがRC1であり、barr1またはbarr1R169EがIG2であり、EGFPがRC2であり、OxR2がIG3である組み合わせに対して検出される、RC1とRC2の近接の結果として生じる信号を示す。
【0263】
この実施例は、β−アレスチン1リン酸化非依存性変異型R169Eのような変異型β−アレスチンを相互作用基の1つとして使用した場合に、検出可能な信号が産生することを示す。
【0264】
実施例6:C末端が切断された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図9を参照すると、eBRET信号は、TRHR335/RlucおよびEGFP/barr1をOxR2またはTRHRと共に一過性に同時発現している細胞から測定された。リガンド処理は、OxAまたはTRHのみであった。
【0265】
リガンド処理の前に(0分において添加)、ベースラインeBRET信号は、それぞれの受容体の組み合わせに対して記録された。OxAによる処理の後、OxR2を発現している細胞(黒マル)は、約20分後にプラトーに到達するeBRET信号を示した。対照的に、OxAで処理された場合のTRHRを発現している細胞(白い三角)またはTRHで処理された場合のOxR2を発現している細胞(黒い四角)からは、ベースライン以上のeBRET信号は観察されなかった。
【0266】
この実施例は、アミノ酸335において切断された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(TRHR335)がIG1であり、RlucがRC1であり、β−アレスチン1(barr1)がIG2であり、EGFPがRC2であり、OxR2またはTRHRがIG3である組み合わせについて検出される、RC1とRC2の近接の結果として生じる信号を示す。
【0267】
この実施例は、IG1がIG2と相互作用しない場合(この場合は、barr1と相互作用しない切断されたTRHR(Heding et al. (2000) Endocrinology 141, 299-306))、検出可能な信号が産生しないことを示す。TRHR335/Rluc+EGFP/barr1+OxR2をTRHで処理した場合に図9において観察される信号の欠如は、この薬剤の組み合わせをOxA処理した場合に観察される信号がIG1−IG2会合によるものではないことを示す。
【0268】
それ故、この実施例は更に、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合に対する別の証拠を提供し、IG1がIG2と相互作用しないことは、IG1−IG2会合ではなくIG2−IG3−IG1会合の結果としてのRC1とRC2の近接を示す。このことは、IG1特異的なリガンドの非存在下での非特異的なIG1−IG2会合から生じる信号に対するさらなる証拠を提供する。
【0269】
更に、この実施例は、IG3活性化がIG1のトランス活性化を引き起こし、その後IG2と会合し、IG2とIG3が会合することなくRC1とRC2を近づける場合とは対照的に、信号がIG2−IG3−IG1の結果として生じることを示す。
【0270】
実施例7:TRHRとOxR2の分子会合を示す特徴的な用量依存性の様式の検出可能な信号の測定
図10、11および12を参照すると、BRET信号は、TRHR/Rlucおよびbarr2/Venus並びにpcDNA3(増大する用量のTRHで処理;図10);OxR2/Rlucおよびbarr2/Venus並びにpcDNA3(増大する用量のOxAで処理;図11);TRHR/Rlucおよびbarr2/Venus並びにOxR2(増大する用量のOxAで処理;図12)を一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0271】
この実施例は、IG1としてTRHR、RC1としてRluc、IG2としてbarr2、RC2としてVenusを用い、IG3が存在しない場合(図10)のTRH投与量応答曲線; IG1としてOxR2、RC1としてRluc、IG2としてbarr2、RC2としてVenusを用い、IG3が存在しない場合のOxA投与量応答曲線(図11);およびIG1としてTRHR、RC1としてRluc、IG2としてbarr2、RC2としてVenus、IG3としてOxR2を使用した場合のOxA投与量応答曲線(図12)を示す。
【0272】
この実施例は、信号が用量依存性の態様で検出され得ることを示す。更に、IG3(OxR2)におけるモジュレータ(OxA)の作用およびその結果のIG1−RC1(TRHR/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus; 図12)の近接の結果として生じる信号に対するEC50値は、IG1−RC1(OxR2/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus;図11)との近接を結果として生じるIG1(OxR2)のOxA活性化に由来するものに匹敵し、IG1−RC1(TRHR/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus;図10)の近接を結果として生じるIG1(TRHR)のTRH活性化に由来するものとは異なる。
【0273】
それ故、この実施例は更に、信号が、IG1−IG2の会合ではなく、IG2−IG3−IG1の会合の結果として生じることを示す。
【0274】
IG1−RC1(OxR2/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus;図11)の近接を結果として生じるIG1(OxR2)のOxA活性化;およびIG1−RC1(TRHR/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus;図10)の近接を結果として生じるIG1(TRHR)のTRH活性化に対する投与量応答ヒル(Hill)勾配は、共にほぼ同じである。対照的に、IG1−RC1(TRHR/Rluc)とIG2−RC2(barr2/Venus;図12)の近接を結果として生じるIG3(OxR2)において作用するモジュレータ(OxA)に対する投与量応答ヒル勾配は、実質的に1より大きい。
【0275】
それ故、この実施例は、指標としてヒル勾配を使用して特異的な分子会合を同定およびモニタリングする可能性を示す。
【0276】
この実施例は更に、異なる形態のRluc基質(レポータ成分開始剤)(この場合、セレンテラジンhおよびEnduRen)が、同様のEC50値を生じるために使用できることを示す(図12)。
【0277】
実施例8:TRHRとOXR2の分子会合を示す用量依存性の態様の付加的な検出可能な信号の測定
図13および14を参照すると、BRET信号は、OxR2の非存在下、TRHの量を増大させながら、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1を一過性に同時発現している細胞から、並びに10−6MのTRHなしでOxAの量を増大させながら、または10−6MのOxAと共にTRHの用量を増大させながら、TRHR/RlucおよびEGFP/barr1と共にOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0278】
この実施例は、10−6MのTRHにより産生されるリガンド誘発信号(TRHに由来:TRHR/Rluc+EGFP/barr1曲線)を、OxA:TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2曲線から生じる点に加えることにより機械的に生じる曲線を示し(TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH(10−6M)+OxA:計算されたデータ)、TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH(10−6M)+OxAの組み合わせについて観察されるデータから生じる曲線の上にくる(図13)。
【0279】
更に、この実施例は、10−6MのOxAにより生じるリガンド誘発信号(OxA:TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2曲線に由来)を、TRH:TRHR/Rluc+EGFP/barr1曲線(TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH+OxA(10−6M):計算されたデータ)について生じる点のそれぞれに加えることにより機械的に生じる曲線を示し、TRHR/Rluc+EGFP/barr1+OxR2:TRH+OxA(10−6M)の組み合わせについて観察されるデータから生じる曲線の上にくる(図14)。
【0280】
それ故、この実施例は、用量依存性の態様でIG1リガンド(TRH)およびIG3リガンド(OxA;モジュレータ)を組み合わせて処理した場合の相加的な効果を明確に示す。
【0281】
それ故、この実施例は、甲状腺刺激ホルモンン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合に対するさらなる証拠を提供し、この相加的な効果は、IG1−IG2会合およびIG2−IG3−IG1会合の結果としてのRC1とRC2との近接の指標となる。これは、IG1特異的なリガンドの非存在下において、非特異的なIG1−IG2会合から生じる信号に対するさらなる証拠を提供する。理論により結合することを望むことなく、この相加的な効果は、IG3におけるアロステリック効果を介してIG2とIG3の会合を修飾するモジュレータとして作用するIG1リガンドに部分的に起因し得る。更に、この相加的な効果は、信号産生に対してより都合よく、RC1とRC2との近接またはRC1とRC2のより有利な相対的配向を可能にする、活性IG構造(アゴニストに結合)に部分的に起因し得る。
【0282】
実施例9:TRHR335とOXR2の分子会合を示す用量依存性の態様の付加的な検出可能な信号の測定
図15を参照すると、BRET信号は、TRHおよびOxAの用量を単独または組み合わせて増大させながら、TRHR335/Rluc、barr2/VenusおよびOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0283】
この実施例は、投与量応答曲線を用いて、TRHの添加は、IG1(TRHR335)がIG2(barr2)と相互作用できない場合、IG1(TRHR335)との相互作用の結果として生じるRC1(Rluc)とRC2(Venus)との近接に由来するBRET信号を生じないことを示した。しかしながら、IG3(OxR2)との相互作用の結果として生じるRC1(Rluc)とRC2(Venus)との近接に由来するBRET信号は観察され、IG1(TRHR335)とIG3(OxR2)との会合を示す。このことは、実施例6におけるデータで確認される。
【0284】
この実施例は、更に、TRHの添加により生じるBRET信号の欠如にも関わらず、TRHおよびOxAの両方を添加した場合に、OxAを単独で添加したときに観察されるよりも高い信号が観察されることを示す。
【0285】
このことは、IG1−IG2TRHR335−barr2)会合に寄与できないにも関わらず、IG1(TRHR335)の活性化が信号産生に影響することを示す。理論に拘泥することを望むものではないが、これは、アロステリックなメカニズムによりIG1がIG3に影響を及ぼすことを意味する。これは、活性IGコンフォメーション(アゴニストと結合する)が信号産生に対してより好ましく、RC1とRC2の会合を増大させることを可能にし、またはRC1とRC2のより好ましい相対的な配向を可能にし得ることを示す。
【0286】
それ故、この実施例は、更に、IG1とIG3の共処理により、IG3単独の処理と比較して付加的な信号産生および/または情報を生じること、およびそのような共処理が本発明に包含されることを示す。
【0287】
実施例10:種々の発現レベルでのTRHRとOXR2の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図16を参照すると、eBRET信号は、10−6MのOxAを添加した後、TRHR/Rluc、EGFP/barr1およびOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0288】
この実施例は、累積的なeBRETは、受容体のそれぞれの組み合わせについて長時間に亘って読み取ることを示す(IG1およびIG3;データは、83分間に渡って読み取られた)。同じ量のEGFP/barr1 (IG2−RC2)が、各実施例に対して形質移入された。TRHR/Rluc(IG1−RC1)が一定量(0.1μg DNA/ウェル)で形質移入される一方、OxR2(IG3)は異なる量のDNA(0,0.01,0.05,0.1,0.5,0.7μgのDNA/ウェル)で形質移入される。信号は、OxR2(IG3)が発現する場合にのみ検出される(0μgのOxR2においては信号は記録されなかった)。
【0289】
この実施例は、OxR2のDNA濃度が0.01μgのDNA/ウェル程度の場合に信号が検出されることを示す。
【0290】
更に、この実施例は、各形質移入におけるOxR2のDNAの量を増大させることにより、検出可能な信号の増大を生じることを示す。最も大きな検出可能な信号は、1:1比のDNA濃度(0.1:0.1μgのDNA/ウェル)において観察される。TRHR/RlucのDNAの量より高いレベルでのOxR2のDNA濃度におけるさらなる増大は(0.5または0.7μgのDNA/ウェル)、検出される信号の低下を生じる。
【0291】
この実施例は、IG3分子(OxR2)の数を増大させることにより、IG1分子(TRHR)の数がヘテロダイマー/オリゴマーの形成に対する制限となる点を越えて到達する点へと導く。結果的に、モジュレータ(OxA)との相互作用の下、信号が産生されることなく、IG3分子(OxR2)がIG1分子(TRHR)と会合せず、IG2−RC2(EGFP/barr1)と会合する傾向が増大する。それ故、信号産生は、IG2−RC2(EGFP/barr1)会合に対する競合により阻害され得る。
【0292】
それ故、この実施例は、本発明に述べられている方法を用いて、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合に対するさらなる別の証拠を提供し、IG1濃度を超えるIG3濃度における増大に伴う信号の減少は、信号がIG1とIG3の特定の分子会合に依存しない場合には生じないと思われる。
【0293】
実施例11:384ウェルプレートにおけるTRHRとOXR2の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図17を参照すると、BRET信号は、96ウェルおよび384ウェルマイクロプレートにおいて、OxAの量を増大させながら、TRHR/Rluc、barr2/VenusおよびOxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0294】
BRET測定は、同じ濃度の薬剤、同じ濃度のRluc基質(レポータ成分開始剤)および同じ濃度のリガンド(モジュレータ)を発現している同じ濃度の細胞を用いて行われた。384ウェルプレートの各ウェルに加えられた全容量は、96ウェルプレートの各ウェルに加えられた容量の約半分であった。
【0295】
この実施例は、384ウェルプレートおよび96ウェルプレートにおいて、用量依存性の態様で、TRHRとOxR2との分子会合を示す検出可能な信号を測定することを示す。
【0296】
それ故、この実施例は、本発明において述べられている方法は、規模を小さくすることが可能であり、それによりハイスループットスクリーニングの適用に従わせることができる。
【0297】
実施例12:IG3としての甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とIG1としてのオレキシン受容体との分子会合を示す検出可能な信号の測定
図18を参照すると、eBRET信号は、OxR2/Rluc8およびbarr2/Venusと共にHA−TRHRまたはpcDNA3を一過性に同時発現している細胞から測定された。リガンド処理は、OxAまたはTRHであった。
【0298】
リガンドまたは媒体処理(0分において加えられる)の前に、ベースラインeBRET信号が、受容体の各組み合わせについて記録された。最初の5分以内において、OxR2/Rluc8およびbarr2/Venusと共にHA−TRHRを同時発現している細胞を処理することにより、eBRET信号は急速に0.1のピークに到達し、この信号は、全記録期間(1時間以上)に亘って高いままであった。信号は、OxR2/Rluc8,barr2/VenusおよびHA−TRHRを同時発現している細胞のTRH処理の後にも観察された。しかしながら、この信号は時間をかけて段階的に増大し、0.05に到達した。OxR2/Rluc8およびbarr2/Venusと共にpcDNA3を同時発現している細胞をTRH処理した後には、リガンド誘発eBRET信号は観察されなかった。
【0299】
この実施例によると、RC1とRC2との近接により生じる信号は、OxR2がIG1であり、Rluc8がRC1であり、β−アレスチン2(barr2)がIG2であり、VenusがRC2であり、HA−TRHRがIG3である組み合わせであり、モジュレータ(この場合はTRH)がIG3との特異的な相互作用の結果としてIG2とIG3との会合を修飾する場合に、特異的に検出されることを示す。
【0300】
この実施例によると、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合は、IG3として甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体、IG1としてオレキシン受容体を使用した場合に検出されることを示す。これは、以前に示した実施例と比較して異なるIGの配置を用いたこれらの受容体の分子会合の検出を示す。
【0301】
この実施例は、第2のタイプのルシフェラーゼ,Rluc8の使用についても示し、この場合、RC1として使用され、RC2としてVenusが使用される。
【0302】
この実施例は更に、Pfleger et al., 2006 (Cell Signal 18, 1664-1670)およびPfleger et al., 2006 (Nat Protoc 1, 336-344)に記載されているeBRET信号を計算する代替の方法を、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合を示す検出可能な信号の測定において使用できることを示す。
【0303】
実施例4に示すように、この実施例は、IG3は例えばヘマグルチン(HA)エピトープ標識の添加により標識化され得るが、この標識は、レポータ成分を構成せず、RC1とRC2との近接により産生される信号を阻害せず、および/または寄与しないことを示す。そのような標識化は、本発明に述べられている方法を用いて、例えばIG3の相対的な発現レベルのような付加的な情報を確認することを可能にする。
【0304】
実施例13:甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合(0.6を超えるz因子)を示す検出可能な信号の測定
図19、20および21を参照すると、eBRET信号は、96ウェルプレートの全てのウェルに分注された、TRHR/Rluc8およびbarr2/Venusと共にHA−OxR2を一過性に同時発現している細胞から測定された。リン酸緩衝食塩水(PBS)は、溶媒対照として、96ウェルプレートの最初の2列および最後の2列(全部で48ウェル)に添加された。OxAは、96ウェルプレートの真ん中の4列(全部で48ウェル)に加えられた。データは、蛍光/発光として示された。
【0305】
リガンドまたは溶媒処理(0分で添加される)の前に、ベースライン読み取り値が記録された。TRHR/Rluc8およびbarr2/Venusと共にHA−OxR2を同時発現している細胞のOxA処理は、蛍光/発光比の増大を生じ(図20)、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶媒対照で処理した場合は観察されなかった(図19)。OxAで処理された48ウェルと比較した蛍光/発光の分析(z因子の算出に関して「信号」と定義される)およびPBSで処理された48ウェル(z因子の算出に関して「バックグラウンド」と定義される)は、Zhang et al., 1999により述べられた計算(J Biomol Screen 4, 67-73)を用いて、0.67のz因子を生じる。平均値は実線で示され、平均値に由来する3つの標準偏差は点線で示されている。
【0306】
この実施例では、RC1とRC2との近接により生じる信号は、TRHRがIG1であり、Rluc8がRC1であり、β−アレスチン2(barr2)がIG2であり、VenusがRC2であり、HA−OxR2がIG3である組み合わせであり、モジュレータ(この場合はOxA)が、IG3との特異的な相互作用の結果としてIG2とIG3との会合を修飾する場合に特異的に検出されることを示す。
【0307】
この実施例では、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体の分子会合は、0.6を超えるz因子を生じる様式で検出され、それ故、ハイスループットスクリーニングに適用できることを示す。
【0308】
この実施例では、更に、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体とオレキシン受容体との分子会合を示す検出可能な信号を表すために使用されるBRETデータを表す第3の方法を示す。
【0309】
実施例4および12に示すように、この実施例は、例えばヘマグルチン(HA)エピトープ標識の添加によりIG3が標識されることを示すが、この標識はレポータ成分を構成せず、RC1とRC2との近接により生じる信号を阻害せず、および/または信号に寄与しない。そのような標識化は、本発明において述べられている方法を用いて、IG3の相対的な発現レベルのような付加的な情報を確認することを可能にする。
【0310】
実施例14:CCR2とCCR5との既知の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図22および23を参照すると、eBRET信号は、CCR5(5)TYFPおよびbarr2/Rlucと共にCCR2またはpcDNA3を一過性に同時発現している細胞から測定され(リガンド処理は、MCP1、MIP1bまたはMCP1およびMIP1bの両方;図22);リガンド誘発BRET信号は、単球化学誘引タンパク質1(MCP1;CCR2選択的なリガンド)の量を増大させながら、CCR5(5)TYFP、barr2/RlucおよびCCR2を一過性に同時発現している細胞から測定され、BRET比として表された(%最大値;図23)。
【0311】
リガンド処理の前に(0分において添加される)、ベースラインeBRET信号が、各受容体の組み合わせについて記録された(図22)。CCR2選択的なリガンドであるMCP1は、CCR5(5)TYFPと共にbarr2/RlucおよびpcDNA3を発現している細胞において、eBRET信号を誘発せず(開いたマル)、一方、CCR5選択的なリガンドであるMIP1bは、強い信号を産生した(黒い四角)。MCP1の添加は、この信号に対する違いを生じなかった(開いた四角)。MCP1は、CCR2の存在下において、barr2/RlucとCCR5(5)TYFPの間に信号を生じさせることはできなかった(黒マル)。これらの細胞をMIP1b処理することによっても、信号が産生された(グレーのマル)。これは、CCR2の非存在下において産生される信号よりも低く、3つのタンパク質を同時発現している場合に受容体発現レベルが低くなることに起因し、および/またはヘテロダイマー化における受容体のコンホメーションの変化の結果に起因し得る。両方の受容体を発現している細胞における両方のリガンドでの処理は、最も高いeBRET信号を産生した(黒い逆三角形)。それぞれの組み合わせを発現しているPBS処理された細胞 (開いた三角形およびグレーの四角)は、全記録時間(95分間)に亘って、ベースラインのeBRET信号のみを示した。
【0312】
この実施例は更に、IG1としてCCケモカイン受容体5(CCR5)、RC1としてトパーズ(Topaz)(TYFP)、IG2としてbarr2、RC2としてRluc、およびIG3としてCCケモカイン受容体2(CCR2)を用いた場合のMCP1投与量応答曲線を示す(図23)。
【0313】
この実施例は、CCR5がIG1であり、トパーズ(Topaz)(TYFP)がRC1であり、β−アレスチン2(barr2)がIG2であり、RlucがRC2であり、CCR2がIG3である組み合わせについて、モジュレータであるMCP1(CCR2選択的なリガンド)がIG3と特異的に相互作用する結果としてIG2とIG3との会合を修飾する場合に、RC1とRC2との近接の結果として生じる信号が検出されることを示す。
【0314】
それ故、機能的なヘテロダイマー/オリゴマーを形成するとして文献(Mellado et al. (2001) EMBO Journal 20, 2497-2507)に開示されているGPCRとしてIG1およびIG3を用いた信号検出は、実施例1に記載されている新規のヘテロダイマー/オリゴマーとは異なるため、この実施例は、本発明の方法の独立した実証を提供することを示す。
【0315】
barr2/Rluc+CCR(5)TYFP+CCR2の組み合わせについて、MCP1およびMIP1bを用いた共処理は、MCP1およびMIP1bを単独で用いた場合に生じる信号の和よりも高い信号を生じた(図22)。
【0316】
それ故、この実施例は、IG1およびIG3を両方用いたリガンドの共処理による信号の増強は、IG1−IG2会合およびIG2−IG3−IG1会合の相加的な効果により完全には説明できないことを示す。それ故、理論により結合したいと望むことなく、この実施例は、IG1リガンドが、IG3におけるアロステリックな効果を介して、IG2とIG3との会合を修飾するモジュレータとしても作用することを示す。更に、活性IGコンフォメーション(アゴニストに結合)は、信号産生に対してより有利であり、RC1とRC2との近接を増大させる可能性があり、またはより都合のRC1とRC2の相対的な配向を生じ得る。
【0317】
それ故、この実施例は、IG1とIG3の共処理が、IG3単独での処理と比較して付加的な信号産生および/または情報を提供し、そのような共処理が本発明に包含されることを示す。
【0318】
この実施例は、第3のタイプのフルオロフォアであるトパーズ(Topaz)(TYFP)の使用についても示し、この場合、RC1として使用され、RlucがRC2として使用される。
【0319】
例15:B2RとAT1Rの既知の分子会合を示す検出可能な信号の測定
図24および25を参照すると、eBRET信号(図24)および投与量応答曲線(図25)は、B2R/Rluc8、barr2/VenusおよびアンギオテンシンII(AngII)で処理されたHA−AT1Rを一過性に同時発現している細胞から測定された。
【0320】
リガンド処理の前に(0分において添加する)、ベースラインeBRET信号が記録された(図24)。AngII処理は、eBRET信号において強い増大を生じた。
【0321】
この実施例は、更に、IG1としてブラジキニンB2受容体(B2R)、RC1としてRluc8、IG2としてbarr2、RC2としてVenus、IG3としてヘマグルチンエピトープ標識アンギオテンシンII受容体タイプ1(HA−AT1R)を用いた場合のAngII投与量応答曲線を示す(図23)。
【0322】
この実施例は、B2RがIG1であり、Rluc8がRC1であり、barr2がIG2であり、VenusがRC2でありHA−AT1RがIG3である組み合わせについて、モジュレータであるAngIIがIG3と特異的に相互作用する結果としてIG2とIG3との会合を修飾する場合に、RC1とRC2との近接の結果として生じる信号が検出されることを示す。
【0323】
それ故、機能的なヘテロダイマー/オリゴマーを形成するとして文献(AbdAlla et al. (2000) Nature 407, 94-98; AbdAlla et al. (2001) Nat. Med. 7, 1003-1009)に開示されている、GPCRの第2の組み合わせとしてIG1およびIG3を用いた信号検出は、実施例1に記載されている新規のヘテロダイマー/オリゴマーとは異なるため、この実施例は、本発明の方法の独立した実証を提供することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子会合を検出するためのシステムであって、該システムは、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質と;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質と:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質と;
iv)モジュレータと;
v)検出器と
を含んでなり、
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の接近が前記検出器により検出できる信号を発生し;また前記モジュレータは、前記第2の相互作用基の前記第3の相互作用基との会合をモジュレートし;前記第1および第2のレポータ成分の近接により生じた信号を前記検出器によってモニターすることが、前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成するシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、更にレポータ成分開始剤を含んでなり、ここでは前記第1および第2のレポータ成分の近接が、前記レポータ成分開始剤の存在においてのみ前記検出器により検出できる信号を発生することを特徴とするシステム。
【請求項3】
分子会合の検出のための方法であって、該方法は、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質を準備する工程と;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質を準備する工程と:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質を準備する工程と;
iv)モジュレータを準備する工程であって、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータが前記第2の相互作用基と前記第3の相互作用基との会合をモジュレートする工程と;
v)検出器と前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生した何等かの信号を検出および/モニターする工程と
を含んでなり、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生した信号をモニターすることが、前記第1および第3の作用物質の会合をモニターすることを構成する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生する何れかの信号を検出および/またはモニターするステップの前に、該方法は更に、レポータ成分開始剤を準備するステップを含んでなり、ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接は、前記レポータ成分開始剤の存在下においてのみ前記検出器によって検出することができることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記レポータ成分開始剤を準備する工程、および前記モジュレータを準備する工程は、前記第1、第2および第3の作用物質を提供する工程の後に行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のシステムまたは方法であって、前記第1、第2および第3の作用物質は、前記モジュレータが導入される細胞における共発現によって提供されることを特徴とするシステムまたは方法。
【請求項7】
第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定するための方法であって、該方法は、
a)前記試験化合物を、下記を含んでなるシステムと接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基の前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程と、を含んでなる方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記第2のタンパク質は受容体であり、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定するための方法は、第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質のアゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する方法を含んでなり、また第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程は、より詳細には、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質のアゴニストであるかどうかおよび/またはその程度の決定因子として、前記信号における増大を検出する工程を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記第1のタンパク質もまた受容体であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、前記第2のタンパク質は受容体であり、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/または程度を決定するための方法は、第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質のアゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうかを決定する方法であって、該方法は、
a)前記試験化合物を、下記を含んでなるシステムと接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第2のタンパク質のアゴニスト
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号における減少を決定する工程と、を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記第1のタンパク質もまた受容体であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、前記第2のタンパク質は構成的に活性な受容体であり、第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定するための前記方法は、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうかを決定するための方法を含んでなるものであり、また第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうかおよび/またはその程度の決定因子として前記信号を決定する工程は、より詳細には、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合するときに、前記試験化合物が前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうかの決定因子として、前記信号における減少を検出する工程を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記第1のタンパク質もまた受容体であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法であって、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、また第2のタンパク質が第1のタンパク質と会合するときに、試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定するための方法は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマー選択的な活性について試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなり、該方法は、
a)前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
b)前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するならば、前記試験化合物が、前記第1のタンパク質の不存在下において前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり、
前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合する間、前記第2のタンパク質と相互作用するときにより大きな親和性および/または能力および/または効果を示す試験化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法であって、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、また前記方法は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的アンタゴニズムまたは部分的アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなるものであり、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定することと;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第1のタンパク質、第2のタンパク質、および/または前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアゴニスト;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出することと;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであれば、前記第1のタンパク質の不存在下で前記試験化合物が前記第2のタンパク質と相互作用するかどうか、またはその程度を決定することとを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きなアゴニストまたは部分的アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項7に記載の方法であって、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、また前記方法は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的なアンタゴニズムまたは部分的アゴニズムについて、試験化合物をスクリーニングする方法を含んでなり、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的アンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)前記第1のタンパク質を備えた第3の作用物質;
iv)前記第2のタンパク質、前記第1のタンパク質、および/または前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアゴニスト;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第1のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーのアンタゴニストまたは部分的アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の、および前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きなアゴニストまたは部分的アゴニスト特性を示す試験化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項7に記載の方法であって、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、また前記方法は、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)構成的に活性な第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の、および前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質の逆アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きな逆アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項7に記載の方法であって、前記第1および第2のタンパク質は両者共に受容体であり、また第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニズムについて試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに前記試験化合物を接触させることにより、前記試験化合物が、第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー選択的な逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度を決定する工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第2のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)構成的に活性な第1のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第1のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のへテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであるかどうか、および/またはその程度の決定因子として、前記信号の減少を検出する工程と;
c)前記試験化合物が前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの逆アゴニストであれば、前記試験化合物が、前記第1のタンパク質の不存在下で前記第2のタンパク質の、および前記第2のタンパク質の不存在下で前記第1のタンパク質の逆アゴニストであるかどうか、またはその程度を決定する工程とを含んでなり;
前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーと相互作用するときに、より大きな逆アゴニスト特性を示す化合物が、前記第1のタンパク質/第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーについて選択的であることを特徴とする方法。
【請求項19】
分子会合の検出のためのキットであって、該キットは、
i)第1のレポータ成分に結合された第1の相互作用基を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された第2の相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第3の相互作用基を備えた第3の作用物質;
iv)モジュレータ
を含んでなり、
前記第1および第2のレポータ成分の近接が検出できる信号を発生し;また前記モジュレータは、前記第2の相互作用基と前記第3の相互作用基との会合をモジュレートするキット。
【請求項20】
請求項19に記載のキットであって、前記キットは更にレポータ成分開始剤を含んでなり、前記第1および第2のレポータ成分の近接は、前記レポータ成分開始剤の存在下でのみ検出できる信号を発生することを特徴とするキット。
【請求項21】
第1のタンパク質および第2のタンパク質のヘテロ二量体に対する選択的活性について試験化合物をスクリーニングする方法が提供され、該方法は、
a)下記を含んでなるシステムに、前記試験化合物を増大する濃度で接触させる工程と;
i)第1のレポータ成分に結合された第1のタンパク質を備えた第1の作用物質;
ii)第2のレポータ成分に結合された相互作用基を備えた第2の作用物質:
iii)第2のタンパク質を備えた第3の作用物質;
ここで、前記第1および第2のレポータ成分の近接が信号を発生し;また前記モジュレータは前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートする;
b)前記試験化合物が、各濃度において、前記相互作用基と前記第2のタンパク質との会合をモジュレートするかどうかの決定因子として前記信号を決定し、投与量−応答曲線を作成する工程と;
c)前記投与量−応答曲線のヒル勾配(Hill slope)を決定し、ここでの1を越えるヒル勾配が、前記試験化合物と前記へテロ二量体との相互作用を示す工程
を含んでなる方法。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記モジュレータは、前記第1および第2のレポータ成分の近接によって発生する信号の前記検出器による検出が前記第1および第3の作用物質の会合の検出を構成するように、前記第3の相互作用基と会合する前記第2の相互作用基の性向を増大させることを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第1および第2のレポータの近接によって発生する信号の減少の前記検出器による検出が前記第1および第3の作用物質の解離の検出を構成するように、前記モジュレータは、前記第2の相互作用基が前記第3の相互作用基と会合する性向を減少させることを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項24】
請求項1〜23の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第1および第2のレポータ成分の近接によって発生する信号の検出が、前記第1および第3の相互作用基のヘテロ二量体および/またはオリゴマーカの検出を構成するように、前記第1の相互作用基が前記第3の相互作用基とは異なることを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項25】
請求項1〜24の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生された信号の検出が促進されるように、前記第3の作用物質は、前記第1および第2のレポータ成分の近接により発生される信号を実質的に妨害および/または寄与する信号を発生できる成分を含んでいないことを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項26】
請求項1〜25の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第3の作用物質は、受容体、イオンチャンネル、酵素、キャリア、輸送体、膜一体型タンパク質、細胞骨格タンパク質、粘着分子、情報伝達タンパク質、足場タンパク質、アクセサリータンパク質、輸送タンパク質、転写因子、核共因子、および核酸分子の群から選択されることを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項27】
前記モジュレータはリガンドまたは酵素であることを特徴とする、請求項1〜26の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキット。
【請求項28】
請求項1〜27の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第3の作用物質は、全細胞、細胞フラクション、または細胞フリーシステムを含む細胞内での発現によって産生されることを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項29】
請求項1〜28の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットであって、前記第1および第3の相互作用基は受容体の形態で提供され、また前記もモジュレータは、前記第3の相互作用基の受容体をモジュレートするリガンドの形態で与えられ、前記モジュレータによる前記第1および第2の受容体成分の近接により発生した信号のモジュレーションが、前記第1および第3の相互作用基の受容体の構成的会合を示すことを特徴とするシステム、方法、またはキット。
【請求項30】
請求項1〜29の何れか1項に記載のシステム、方法、またはキットによって同定された、第1のタンパク質−第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマー。
【請求項31】
ヘテロ二量体もしくはヘテロオリゴマー受容体であって、請求項1〜30の何れか1項のシステム、方法、またはキットによって同定された、少なくとも一つの第2の受容体サブユニットと会合した少なくとも一つの第1の受容体サブユニットを含んでなる受容体。
【請求項32】
治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストを投与することにより、第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療する方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストは、第1の受容体アゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストと共に投与されることを特徴とする方法。
【請求項34】
治療的に有効な量の第1の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストを投与することにより、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療する方法であって、前記第1および第2の受容体は、本発明のシステム、方法またはキットの何れか一つにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記第1の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストは、第2の受容体アゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストと共に投与されることを特徴とする方法。
【請求項36】
第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための医薬の製造方法であって、治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストの使用を含んでなり、前記第1および第2の受容体は、請求項1〜35の何れか1項に記載のシステム、方法またはキットにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記医薬は第1の受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してよいことを特徴とする方法。
【請求項38】
第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための医薬の製造方法であって、治療的に有効な量の第2の受容体アゴニスト、逆アゴニスト、またはアンタゴニストの使用を含んでなり、前記第1および第2の受容体は、請求項1〜37の何れか1項に記載のシステム、方法またはキットにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記医薬は第2の受容体のアゴニスト、逆アゴニストまたはアンタゴニストを含有してよいことを特徴とする方法。
【請求項40】
治療的に有効な量の選択的な第2の受容体アゴニスト、アンタゴニストもしくは逆アゴニスト結合剤、またはその断片を投与することにより、第1の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための方法であって、前記第1および第2の受容体は、請求項1〜39の何れか1項に記載ののシステム、方法またはキットにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記選択的な第2の受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニスト結合剤は、ヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR−移植抗体、および/または抗イディオタイプ抗体を含む抗体である方法。
【請求項42】
治療的に有効な量の選択的な第1の受容体アゴニスト、アンタゴニストもしくは逆アゴニスト結合剤、またはその断片を投与することにより、第2の受容体に関連した疾患に罹患している患者を治療するための方法であって、前記第1および第2の受容体は、請求項1〜41の何れか1項に記載のシステム、方法またはキットにより同定されるヘテロ二量体/オリゴマーを形成する方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記選択的な第2の受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニスト結合剤は、ヒト化抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR−移植抗体、および/または抗イディオタイプ抗体を含む抗体である方法。
【請求項44】
請求項8または9の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの、前記第2のタンパク質のアゴニスト。
【請求項45】
請求項10または11の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの、前記第2のタンパク質のアンタゴニストまたは部分的アゴニスト。
【請求項46】
請求項12または13の方法により同定された、前記第2のタンパク質が前記第1のタンパク質と会合されるときの、前記第2のタンパク質の逆アゴニスト。
【請求項47】
請求項12または13の方法により同定された、前記第1のタンパク質−第2のタンパク質のヘテロ二量体/オリゴマーの選択的なアゴニストおよび/またはアンタゴニストおよび/または逆アゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−509572(P2010−509572A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535526(P2009−535526)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001722
【国際公開番号】WO2008/055313
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509131029)ディメリックス・バイオサイエンス・ピーティーワイ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】