説明

検出センサ

【課題】複数のセンサ素子を備えた場合において、検出精度を一層高めることのできる検出センサを提供することを目的とする。
【解決手段】検出センサ10は、センサ素子30A、30Bが、マグネット20における磁束のない領域Aを中心とした位置に、マグネット20による磁界の方向に直交する方向に沿って直列に並べて設けられている。これにより、二つのセンサ素子30A、30Bが、マグネット20の磁力線の分布において同じ位置に配置され、検出対象の部品が操作された場合に、その検出結果に差が生じるのを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を用いた検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等においては、電子制御化が進んでいるのは周知の通りであり、制御のために各種の部品等の動作を検出する検出センサが多用されている。このような検出センサにおいては、磁気等により、部品が所定の位置にあるか否かを検出する。
【0003】
これらの検出センサにおいて、自動車の走行制御そのものに関わる部品等、重要な部品の動作を検出するものにおいては、検出センサの多重化を図ることが行われている(引用文献1、2参照。)。これは、センサ素子を複数、例えば二つ備え、一方のセンサ素子に異常が発生した場合等においても、他のセンサ素子により検出を行ったり、一方のセンサ素子と他方のセンサ素子との検出結果を比較することで、センサ素子の故障診断を行うものである。
【0004】
図6は、本出願人にて製造している検出センサの既製品の構成を示す。この図6に示すように、検出センサ1は、ホルダー2に、例えば断面略U字状のマグネット3と、二つのセンサ素子4A、4Bが保持された構成を有している。
マグネット3は、その一方の側に開口した凹部3aが設けられている。図7に示す磁力線の分布図に示すように、マグネット3においては、凹部3aの内方に、磁束の無い領域Aが存在する。そして、二つのセンサ素子4A、4Bは、この磁束の無い領域Aに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−49575号公報
【特許文献2】特許第3491587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁束の無い領域Aは、厳密には非常に小さく、センサ素子4A、4Bは、この領域Aよりも十分に大きい。これらセンサ素子4A、4Bは、領域Aの中心を対称にして設けられるが、それでも、一方のセンサ素子4Aと、他方のセンサ素子4Bとでは、磁力線の分布において異なる位置に配置されるため、検出対象の部品が操作された場合に、その検出結果に差が生じることがある。その結果、検出センサ1における検出精度を向上させるのが難しいのが現状である。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、複数のセンサ素子を備えた場合において、検出精度を一層高めることのできる検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明の検出センサは、磁界を発生するマグネットと、マグネットにより生じる磁界の変化を検出する複数のセンサ素子と、マグネットおよびセンサ素子を保持するホルダーと、を備え、複数のセンサ素子は、マグネットにより生じる磁界に直交する方向に沿って直列に配置されていることを特徴とする。
このように、複数のセンサ素子を、マグネットにより生じる磁界に直交する方向に沿って直列に配置することで、磁界中における磁界強度が同じ位置に複数のセンサ素子を配置できる。そして、複数のセンサ素子は、磁界中における磁界強度が同じ位置に配置するのであれば、いかなる位置としても良いが、特に、マグネットによる磁界において、磁束がゼロとなる位置を含む領域に配置するのが好ましい。
【0008】
複数のセンサ素子は、互いに突き合わされて設けることができる。また、センサ素子は、少なくとも2個設けられていれば良い。
【0009】
複数のセンサ素子は、それぞれ、素子本体と、素子本体から導出された導線と、を備え、ホルダーに保持された複数のセンサ素子の導線が、ホルダーから同一方向に引き出されるように設けることができる。
そして、複数のセンサ素子の導線は配線パターンに電気的に接続することができる。
【0010】
マグネットの形状はいかなるものとしてもよいが、例えば、断面略U字状とすることができる。
【0011】
このような検出センサは、複数のセンサ素子を、例えば別々の目的に用いる等、いかなる目的に用いても良いが、特に、複数のセンサ素子における検出結果を比較することでその検出精度、検出の確実性を高める冗長系センサとする場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のセンサ素子を、マグネットにより生じる磁界に直交する方向に沿って直列に配置することで、磁界中における磁界強度が同じ位置に複数のセンサ素子を配置できる。これにより、複数のセンサ素子間において、検出結果に差が生じるのを抑えることができる。その結果、複数のセンサ素子を備えた場合においても、検出精度を一層高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態における検出センサの斜視図である。
【図2】検出センサの断面図である。
【図3】ホルダーからセンサ素子を抜いた状態を示す斜視図である。
【図4】マグネットにより発生する磁界中におけるセンサ素子の位置を示す図である。
【図5】センサ素子の組み立て方法の一例を示す断面図である。
【図6】従来の検出センサの斜視図である。
【図7】従来の検出センサにおける、マグネットにより発生する磁界中でのセンサ素子の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1〜図5は、本実施の形態における検出センサ10の構成を説明するための図である。本実施の形態においては、検出センサ10は、自動車を構成する部品が特定の位置にあるか否かを検出するために用いられるものとする。もちろん、検出センサ10の用途はこれに限るものではなく、様々な用途に用いることが可能である。
【0015】
図1、図2に示すように、検出センサ10は、自動車の車体側に固定されて設けられる。この検出センサ10は、ホルダー11と、ホルダー11に保持された例えば断面略U字状のマグネット20と、二個一対のセンサ素子30A、30Bと、基板40と、から構成された冗長系センサである。
【0016】
ホルダー11は、基板40の端部に、その一面40a側に突き当てられて設けられる。ホルダー11には、基板40の一面40aに対向する側に開口した凹部12が形成されている。この凹部12内に、マグネット収容部13と、素子収容部14とが形成されている。
【0017】
マグネット収容部13は、凹部12の内周面が複数箇所でマグネット20の外周面に突き当たることで、マグネット20を、凹部12の深さ方向に直交する方向(基板40の一面40aに沿った方向)に移動しないよう固定する。ここで、マグネット収容部13に対し、断面略U字状のマグネット20は、凹部12の深さ方向に同一断面形状を有するよう配置される。さらに、マグネット収容部13には、両端の磁極部20A、20Bがホルダー11の外部に臨むよう、スリット13A、13Bが形成されている。
また、マグネット収容部13に収容されたマグネット20がマグネット収容部13から抜け出るのを防ぐため、凹部12の内周面に突出する突起(図示なし)を備え、この突起がマグネット20の上端部に係合する構成とすることもできる。
【0018】
素子収容部14は、断面略U字状のマグネット20の凹部20aの内方に位置している。この素子収容部14は、凹部20aの外方に向く側がスリット13A、13B間で凹部12の内周面を形成する第一サポート壁15により形成され、凹部20aの奥側を向く側には、マグネット20との間に介在する第二サポート壁16により形成されている。
【0019】
図2、図3に示すように、このような素子収容部14に、センサ素子30A、30Bが収容されている。センサ素子30A、30Bは、素子本体31A、31Bと、素子本体31A、31Bから導出されるそれぞれ複数本の導線32A、32Bとから構成されている。図4に示すように、センサ素子30A、30Bは、素子収容部14に対し、マグネット20における磁束のない領域Aを中心とした位置に、マグネット20で発生する磁界の方向に直交する方向(凹部12の深さ方向)に沿って直列に並べて設けられている。
ここで、素子収容部14において基板40に近接する側のセンサ素子30Aは、導線32Aが、素子収容部14から基板40側に向けて突出するよう設けられている。
また、素子収容部14の底部側に位置するセンサ素子30Bは、導線32Bが折り返し部32cにおいてJ字状に折り返されることで、先端部32dが、素子収容部14から基板40側に向けて突出するよう設けられている。ここで、第二サポート壁16には、センサ素子30Bの複数本の導線32Bの間に位置する仕切壁16aが形成されており、これによって複数本の導線32Bをガイドするとともに、互いの絶縁を図るようになっている。
また、センサ素子30Bの折り返し部32cを通すため、凹部12の底部に開口部17が形成されている。
【0020】
このようにして素子収容部14に収容されたセンサ素子30A、30Bは、導線32A、32Bが、基板40に形成された複数のスルーホール41にそれぞれ挿入され、半田付けがなされることで基板40の配線パターンに電気的に接続されている。
【0021】
このような検出センサ10は、ホルダー11のマグネット収容部13、素子収容部14に予めマグネット20、センサ素子30A、30Bをセットしておくことができる。
そして、このような検出センサ10の素子収容部14から突出した導線32A、32Bを、基板40に形成された複数のスルーホール41にそれぞれ挿入し、しかる後に半田付けを行うことで、検出センサ10を組み立てることができる。
【0022】
また、図5に示すように、検出センサ10は、ホルダー11のマグネット収容部13にマグネット20のみをセットしておき、センサ素子30A、30Bは、基板40側に予め取り付けておくこともできる。
この場合、センサ素子30A、30Bは、基板40のスルーホール41に導線32A、32Bを挿入し、半田付けにより固定する。そして、これらセンサ素子30A、30Bを、ホルダー11の素子収容部14に挿入することで検出センサ10を構成するのである。
【0023】
このような検出センサ10によれば、センサ素子30A、30Bが、マグネット20における磁束のない領域Aを中心とした位置に、マグネット20による磁界の方向に直交する方向に沿って直列に並べて設けられている。これにより、二つのセンサ素子30A、30Bが、マグネット20の磁力線の分布において同じ位置に配置されるため、検出対象の部品が操作された場合に、その検出結果に差が生じるのを抑えることができる。その結果、検出センサ10における検出精度を向上させることができる。
また、センサ素子30A、30Bを直列に設けることで、検出センサ10のコンパクト化を図ることもできる。
【0024】
なお、上記実施の形態では、検出センサ10を自動車を構成する部品の位置検出用としたが、その用途は何ら限るものではない。
また、マグネット20を断面略U字状としたが、これに限るものではなく、適宜他の形状とすることも可能である。
さらに、センサ素子の導線は、基板に接続されることに限られず、バスバー等他の部材の配線パターンに接続されてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10…検出センサ、11…ホルダー、12…凹部、13…マグネット収容部、14…素子収容部、20…マグネット、30A、30B…センサ素子、31A、31B…素子本体、32A、32B…導線、40…基板、41…スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生するマグネットと、
前記マグネットにより生じる前記磁界の変化を検出する複数のセンサ素子と、
前記マグネットおよび前記センサ素子を保持するホルダーと、を備え、
複数の前記センサ素子は、前記マグネットにより生じる前記磁界に直交する方向に沿って直列に配置されていることを特徴とする検出センサ。
【請求項2】
複数の前記センサ素子は、前記マグネットによる前記磁界において、磁束がゼロとなる位置を含む領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
【請求項3】
複数の前記センサ素子は、互いに突き合わせて設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の検出センサ。
【請求項4】
前記センサ素子は2個であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出センサ。
【請求項5】
複数の前記センサ素子は、それぞれ、素子本体と、前記素子本体から導出された導線と、を備え、
前記ホルダーに保持された複数の前記センサ素子の前記導線が、前記ホルダーから同一方向に引き出されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出センサ。
【請求項6】
複数のセンサ素子の前記導線が配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出センサ。
【請求項7】
前記マグネットは断面略U字状であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の検出センサ。
【請求項8】
冗長系センサであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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