説明

検出装置、電子機器およびロボット

【課題】力の方向と大きさとを高い精度で検出することが可能な検出装置、電子機器およびロボットを提供する。
【解決手段】力の方向と大きさとを検出する複数の検出領域を有する第1基板と、基準点と重なる位置に重心が位置するとともに、力によって頂部が検出領域に当接した状態で弾性変形する弾性体突起が配置された第2基板とを備え、検出領域と、その隣り合う検出領域との間に検出領域が配置された第1基板面を基部として突き出す突起体を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、電子機器およびロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
力の方向と大きさとを検出する検出領域に複数の圧力センサーもしくは圧力スイッチを配置された第1基板と、力を受ける面を有する第2基板との間に弾性体を設けた力の検出装置が知られている。この様な検出装置は、第2基板に作用する力によって弾性体が弾性変形(変位)することを利用して第1基板に配置された圧力センサー等に第2基板に作用した力を伝達し、力の方向と大きさとを検出可能な検出装置が提案されている。
例えば特許文献1には、力を受ける面を有する第2基板に対して力が作用した時に、圧力センサーが配置された第1基板と、力を受ける第2基板との間に第1基板における平面視する面内方向に移動可能な球形状を有する弾性体を配置した加重測定センサーが開示されている。また、特許文献2には、圧力センサーが配置された第1基板上に形成された弾性層(弾性体)とカバー層(第2基板)との間に複数の柱状体を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187502号公報
【特許文献2】特許第4364146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に示された検出装置は、第1基板において平面視する面内に対して水平方向の力、換言すると、作用する力の方向と大きさとからなるベクトルを誤検出しやすいという課題がある。例えば、第2基板面に斜め方向に力が加えられた場合、弾性体の弾性変形は隣り合う圧力を検出する領域にはみだし、当該隣り合う圧力を検出する領域において弾性体に作用する力の方向と大きさとが検出されてしまい正しい力の方向と大きさとを検出することができないという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)本適用例に係る検出装置は、基準点に加えられた力の方向と大きさとを検出する検出装置であって、力の方向と大きさとを検出する複数の検出領域を有する第1基板と、基準点と重なる位置に重心が位置するとともに、力によって頂部が検出領域に当接した状態で弾性変形する弾性体突起が配置された第2基板とを備え、検出領域と、その隣り合う検出領域との間に検出領域が配置された第1基板面を基部として突き出た突起体を備えることを特徴とする。
【0007】
このような検出装置によれば、弾性体突起が検出領域に当接した状態ですべり方向(検出領域に平行する方向)に弾性変形した際に、隣り合う検出領域との間に配置された突起体が弾性変形の障壁となり、弾性体突起が隣り合う検出領域へはみ出して弾性変形をすることを抑制できる。このため、隣り合う検出領域へ弾性体突起がはみ出して、その検出領域で力の方向と大きさとが誤検出されることを抑制できる。従って、特許文献1や特許文献2の検出装置に比べて、力の方向と大きさとの検出精度を高めることができる。
【0008】
また、第2基板の表面に力が加えられると、弾性体突起は頂部が第1基板に配置された検出領域に当接した状態で弾性変形する。このとき、第2基板を平面視した水平方向(すべり方向)の力がある場合は、弾性体突起の弾性変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起の重心は基準点からずれてすべり方向に移動する。すると、複数の圧力センサーのうち弾性体突起の重心が移動した部分と重なる割合が相対的に大きくなる。つまり、各圧力センサーで異なる値が検出される。具体的には、弾性体突起の重心と重なる位置の圧力センサーでは相対的に大きい値が検出され、弾性体突起の重心と重ならない位置の圧力センサーでは相対的に小さい値が検出されることとなる。よって、演算装置により、各圧力センサーで検出された値の差分を演算し、力が加えられていない時の圧力値と、力が加えられた時の圧力値との差分を比較演算することで力が加えられた方向と大きさを求めることができる。
【0009】
(適用例2)上記適用例に係る検出装置において、突起体は検出領域の外縁に平行して配置され、隣り合う検出領域に配置される突起体と継合して格子形状に配置されることが好ましい。
【0010】
このような検出装置によれば、突起体は、検出領域の外縁に沿って平行に配置され、隣り合う検出領域に配置された突起体と連続して格子形状に配置されることで、第1基板から起立する突起体の補強と、第1基板を補強するリブの機能とを備えることで、第1基板の薄板化および検出装置の軽量化とをすることができる。
【0011】
(適用例3)上記適用例に係る検出装置において、突起体は、検出領域の外縁と対応して平行に配置され、その突起体がそれぞれ独立して配置されることが好ましい。
【0012】
このような検出装置によれば、突起体は、検出領域の外縁と対応して平行に配置され、それぞれの突起体が独立して配置されることで、第1基板に可撓性を有することができる。第1基板に可撓性を有することで、曲面を有する部位にも検出装置を設けることができる。
【0013】
(適用例4)上記適用例に係る検出装置において、突起体は検出領域毎にその検出領域の外縁と対応して平行に検出領域を囲む形状に独立して配置されていることが好ましい。
【0014】
このような検出装置によれば、検出領域毎にその検出領域を囲む形状に突起体を配置することで、囲む形状に配置された突起体がリブの機能を有し、第1基板を補強することで第1基板の薄板化および検出装置の軽量化を図ることができる。また、第1基板は、検出領域を囲む突起体と、隣接する検出領域を囲む突起体との間を支点に可撓性を有することができるため、曲面を有する部位にも検出装置を設けることができる。
【0015】
(適用例5)上記適用例に係る検出装置において、突起体は、検出領域の外縁と平行に延在配置された突起体に直交する方向の断面形状が、多角形または台形状を有し、基部と反対側の頂部の角が面取りされていることが好ましい。
【0016】
このような検出装置によれば、突起体の断面形状が四角形や三角形等の多角形、または台形や楕円の形状を有し、その頂部の角が面取りされていることで、弾性変形した弾性体突起が突起体に当接した際に、弾性体突起の損傷を抑制しつつ、その弾性変形を抑制することができる。
【0017】
(適用例6)本適用例に係る検出装置は、力の方向と大きさとを検出する第1の検出領域及び第2の検出領域を有する第1基板と、第1の検出領域の第1基準点と重なる位置に重心が位置するとともに弾性変形する第1弾性突起と、第2の検出領域の第2基準点と重なる位置に重心が位置するとともに弾性変形する第2弾性突起と、が配置された第2基板とを有し、第1基板は、第1の検出領域と第2の検出領域との間に突起体を備えることを
特徴とする。
【0018】
このような検出装置によれば、第1弾性体突起が第1の検出領域に当接した状態ですべり方向(検出領域に平行する方向)に弾性変形した際に、第1の検出領域と第2の検出領域との間に備えられた突起体が、その第1弾性体起体の弾性変形の障壁となり、第2の検出領域にはみ出して弾性変形をすることを抑制できる。このため、第2の検出領域へ第1弾性体突起がはみ出すことによって、第2の検出領域で第1の検出領域に配置された第1弾性体突起に加えられた力の方向と大きさとが誤検出されることを抑制できる。従って、特許文献1や特許文献2の検出装置に比べて、力の方向と大きさとの検出精度を高めることができる。
【0019】
(適用例7)本適用例に係る電子機器は、上記の検出装置を備えることを特徴とする。
【0020】
このような電子機器は、上述した検出装置を備えていることで、力が加えられる部位が曲面を有する電子機器においても、力の大きさと方向とを検出することができる。また、大きな力が加えられた時に力が加えられた方向と直交する方向(水平方向)に作用する力を誤検出することなく力を高い精度で検出することができる電子機器を提供することができる。
【0021】
(適用例8)本適用例に係るロボットは、上記の検出装置を備えることを特徴とする。
【0022】
このようなロボットは、上述した検出装置を備えていることで、力の方向と大きさを検出する部位が曲面を有するロボットにおいても、力の大きさと方向とを検出することができる。また、大きな力が加えられた時に力が加えられた方向と直交する方向(水平方向)に作用する力を誤検出することなく力を高い精度で検出することができるロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図2】第1実施形態に係る弾性体突起の力による弾性変形を示す断面図。
【図3】第1実施形態に係る弾性体突起力による弾性変形を示す平面図。
【図4】第1実施形態に係るセンシング領域の座標系を示す図。
【図5】第1実施形態に係る垂直方向の力による圧力分布を示す図。
【図6】第1実施形態に係る力によるすべり方向の算出例を示す図。
【図7】第2実施形態に係る検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図8】第2実施形態に係る弾性体突起の力による弾性変形を示す断面図。
【図9】第2実施形態に係る弾性体突起の力による弾性変形を示す平面図。
【図10】第3実施形態に係る弾性体突起の力による弾性変形を示す断面図。
【図11】第3実施形態に係る弾性体突起の力による弾性変形を示す平面図。
【図12】電子機器の一例である携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図13】電子機器の一例である携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図14】ロボットの一例であるロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明をする。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際の構成要素とは適宜に異ならせて記載をしている。また、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各構成について説明する。XYZ直交座標系は、X軸およびY軸が図1に示す第1基板10に対して平行な方向に設定され、Z軸が第1基板10に対して直交する方向に設定されている。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る検出装置1の概略構成を示す分解斜視図である。図1において、符号Pは第1基準点及び第2基準点(以下、単に「基準点」と称する。)を示している。また、符号Sは1つの第1弾性体突起、または第2弾性体突起(以下、単に「弾性体突起」と称する)に対応して圧力センサー12が配置された第1の検出領域、または第2の検出領域(以下、単に一単位の「検出領域」と称する。)を示している。
【0026】
検出装置1は、弾性体突起22が配置された面とは反対の第2基板本体21の面に加えられた力の方向と大きさとを検出する圧力センサー方式のタッチパッドである。例えばノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられるものである。
【0027】
なお、「力」とは、第2基板に加えられた外的な力で、例えば、タッチパッドを操作した際に加えられる力である。また、「基準点P」とは、すべり力(第2基板を平面視した水平方向でZ軸をせん断するX軸およびY軸方向に作用する力)が作用していない場合に、弾性体突起22の中心が位置するポイントである。また、圧力センサーの方式については特に限定されることなく、例えば感圧導電方式や静電容量方式やフォトセンサー方式等を用いることができる。
【0028】
図1に示すように、検出装置1は、基準点Pの周りに複数の圧力センサー12から構成される検出領域Sが複数配置された第1基板10を備えている。また、基準点Pに重なる位置に重心が位置するとともに、力によって頂部が検出領域Sに当接した状態で弾性変形する弾性体突起22と、弾性体突起22が配置された第2基板20とを備えている。また、隣り合う検出領域Sとの間には、第1基板から起立する突起体31が配置されている。なお、検出領域Sを構成する圧力センサー12は、縦2行横2列に計4つ配置されているが、4つに限定されることはなく、縦4行横4列などより多数配置されても良い。
【0029】
検出装置1は、力が加えられ弾性体突起22が弾性変形することによって、検出領域Sを構成する複数の圧力センサー12にその力を伝搬する。伝搬された力は、圧力センサー12で圧力として検出され、検出された値のうち、任意に組み合わされた値の差分を演算し、その差分に基づいて力が加えられた方向と大きさとを演算する図示しない演算装置を備えている。
【0030】
第1基板10は、例えばガラス、石英およびプラスチック等の材料で構成された第1基板本体11と、第1基板本体11に配置された複数の圧力センサー12と、その圧力センサー12で構成される検出領域Sとを具備して構成されている。
【0031】
検出領域Sを構成する複数の圧力センサー12は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数の圧力センサー12は、互いに直交する2方向(X方向およびY方向)にマトリックス状に配置されている。これにより、基準点Pと各圧力センサー12との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起22の変形と各圧力センサー12で検出される値との関係が互いに等しくなる。
よって、検出領域Sを構成する各圧力センサー12の値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー12で検出された値の差分を演算することが容易となる。なお、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0032】
突起体31は、第1基板本体11から突き出ており、その高さが弾性体突起22の直径の半分程度に形成されている。隣り合う検出領域Sとの間には、突起体31が配置されている。突起体31は、弾性体突起22と比べて硬質の材料、例えば、アクリル樹脂等で形成されている。本実施形態の弾性体突起22をシリコーンRVTゴム(信越シリコーン製KE−12)で形成し、1つの弾性体突起22に10ニュートンの力が加えられると仮定した場合、かかる力が加えられると弾性体突起22は、その直径の33%程度弾性変形する。ここで、力が加えられた時に第2基板20と突起体31が当接すると正しく力を検出領域S(圧力センサー12)に伝搬できなくなる。そのため、突起体31の第1基板本体11から突き出る高さは、弾性体突起22の直径の67%の長さから圧力センサー12の厚み(Z軸方向の長さ)を差し引いた高さ(長さ)以下として形成される。突起体31の高さは、弾性体突起22を形成する材料と、その弾性体突起22に加えられる力によって適宜変更し、第2基板本体21と突起体31が接触しないように形成し配置する。
【0033】
突起体31において検出領域Sの外縁と平行に配置された突起体31に直交する方向の断面形状は、四角形や三角形等の多角形、または台形の形状を有している。また、突起体31の基部と反対側の頂部の角が面取りされていることがより好ましい。頂部の角が面取りされていることによって、弾性体突起22が突起体31に当接した時に、その弾性体突起22を損傷させることなく弾性変形を抑制することができる。本実施形態では、便宜上、四角形の断面形状を備えた突起体31が配置されているが、その頂部の角は面取りされているものとして説明をする。また、以下の実施形態についても同様とする。なお、本実施形態では、第1基板本体11の形成材料としてポリイミドを用い、突起体31の形成材料としてアクリル樹脂を用いている。
【0034】
本実施形態の突起体31は、隣り合う検出領域Sに配置される突起体31と連続して格子形状に配置されている。これにより、力によって弾性体突起22が弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sへ弾性変形した弾性体突起22がはみ出すことを抑制することができる。
【0035】
検出領域Sは、一単位の検出領域S当たり縦2行横2列に4つ配置された圧力センサー12の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。また、単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、本実施形態においては縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。また、検出領域Sを構成する4つの圧力センサー12の各面積がほぼ等しくなっている。圧力センサー12としては、例えば、感圧導電ゴム等の感圧素子を用いることができる。また、圧力センサー12は、弾性体突起22の弾性変形を通じて感圧導電ゴム等に伝搬された力を電気信号に変換する。
【0036】
第2基板20は、第2基板本体21と、第2基板本体21に配置された複数の弾性体突起22とから構成されている。第2基板本体21は、力を受ける部分である。第2基板本体21は、例えばガラス、石英およびプラスチック等の材料や、発泡ウレタン樹脂およびシリコーン樹脂等の樹脂材料で構成することもできる。
なお、本実施形態では、第2基板本体21および弾性体突起22の形成材料としてシリコーン樹脂材料を用いて、第2基板本体21および弾性体突起22を金型で一体形成している。
【0037】
複数の弾性体突起22は、第2基板本体21の平面視する面内において第1基板本体11に配置されている検出領域Sに対応してX方向およびY方向にマトリックス状に配置されている。弾性体突起22は、その頂部が対応する検出領域Sに当接し、第2基板本体21に加えられた力に応じて弾性変形する。
【0038】
弾性体突起22は、その重心が初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。また、複数の弾性体突起22は、互いに離間して配置されている。このため、弾性体突起22が弾性変形したときの第2基板本体21の平面視する面内に、平行な方向(X軸とY軸と方向)の変形を許容することができる。
【0039】
弾性体突起22は、その大きさを任意に設定することができる。本実施形態では、弾性体突起22の基部の径(弾性体突起22が第1基板本体11に接する部分の直径)は2.0mm程度になっている。弾性体突起22の高さ(弾性体突起22のZ方向の距離)は2.0mm程度になっている。また、隣り合う弾性体突起22の離間間隔は1mm程度になっている。なお、本実施形態の弾性体突起22の形状は半球状であるが、円錐台もしくは角錐台形状であっても良い。
【0040】
図2および図3は、基準点Pに作用する力の方向と大きさとを検出する方法の説明図である。図2(a)〜(c)は、本実施形態に係る弾性体突起22の力による弾性変形を示す図で、図1に示す線分A−B間の断面図である。図3(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、本実施形態に係る弾性体突起22の力による弾性変形を示す平面図である。
【0041】
図2(a)および図3(a)は、第2基板本体21の表面に力が加えられる前の状態(力の作用がないとき。)を示している。図2(b)および図3(b)は、第2基板20の表面に向かってZ軸(垂直)方向(すべり力がない状態)の力が加えられた状態を示している。図2(c)および図3(c)は、第2基板本体21の表面に向かって斜め方向(すべり力がある状態)の力が加えられた状態を示している。さらに、図3(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起22の重心を示している。
【0042】
図2(a)および図3(a)に示すように、第2基板本体21の弾性体突起22が形成された面と反対の面に力が加えられる前においては、弾性体突起22の頂部が第1基板本体11に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接し、弾性変形はしない。これにより、第1基板10と第2基板20との間の距離は一定に保たれる。この時、弾性体突起22の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。このときの各圧力センサー12の圧力値は図示しないメモリー部に記憶されている。メモリー部に記憶された各圧力センサー12の圧力値を基準として力の作用する方向や大きさ換言するとベクトルが求められる。
【0043】
図2(b)および図3(b)に示すように、第2基板20の表面に向かってZ軸(垂直)方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体11に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態でZ方向に弾性変形する。これにより、第2基板20がZ方向に撓み、第1基板10と第2基板20との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー12の圧力値は、力の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー12とも略同じ値となる。弾性体突起22の頂部が各圧力センサー12に当接する面積が等しいためである。
【0044】
図2(c)および図3(c)に示すように、第2基板本体21の表面に向かって斜め方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体11の表面に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態で斜めに傾いて弾性変形する。これにより、第2基板20がZ方向に撓み、第1基板10と第2基板20との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。この時、弾性体突起22の重心Gは、基準点Pから+X方向および+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起22の頂部と4つの圧力センサー12との重なる面積は互いに異なる。具体的には、弾性体突起22の頂部と4つの圧力センサー12との重なる面積は、4つの圧力センサー12のうち−X方向および−Y方向に配置された部分と重なる面積よりも+X方向および+Y方向に配置された部分と重なる面積の方が大きくなる。また、弾性体突起22は、隣り合う検出領域Sにはみ出すように斜めに傾いて弾性変形するが、突起体31が障壁となって隣り合う領域へ弾性変形した弾性体突起22が侵入することを抑制することができる。
【0045】
弾性体突起22は、第2基板本体21の表面に加えられた斜め方向の力によって弾性変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起22の重心は基準点PからずれてZ軸を横切る「すべり方向」(X方向およびY方向)に移動する。すると、検出領域Sを構成する複数の圧力センサー12において異なる値が検出される。具体的には、弾性体突起22の重心と重なる位置の圧力センサー12では相対的に大きい値が検出され、弾性体突起22の重心と重ならない位置の圧力センサー12では相対的に小さい値が検出されることとなる。そして、後述する差分の演算方法に基づいて力が加えられた方向と大きさが求められる。このことによって、力が加えられる前の圧力センサー12で検出される値と、力が加えられた時に各圧力センサー12で検出される値とを比較演算することで、力の方向と大きさとを検出することができる。
【0046】
図4は、本実施形態に係るセンシング領域の座標系を示す図である。図5は、第1実施形態に係る垂直方向の力による圧力分布を示す図である。図6は、本実施形態に係る力によるすべり方向の算出例を示す図である。
【0047】
図4に示すように、検出領域Sを構成する複数の圧力センサー12は、その検出領域S当たり縦2行横2列に計4つ配置されている。ここで、各圧力センサー12をP1,P2,P3,P4とし、その圧力センサーP1〜P4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPs1,Ps2,Ps3,Ps4とすると、力のX方向成分Fx(第2基板本体21へ加えられる力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(1)で表される。
【0048】
【数1】

【0049】
また、力のY方向成分Fy(力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(2)で表される。
【0050】
【数2】

【0051】
また、力のZ方向成分Fz(力の垂直方向成分)は以下の式(3)で表される。
【0052】
【数3】

【0053】
本実施形態では、力によって弾性体突起22が弾性変形することにより圧力センサーP1〜P4で検出された値のうち任意に組み合わされた圧力センサーP1〜P4で検出された値の差分を演算し、その差分に基づいて力が加えられた方向が演算される。
【0054】
式(1)に示すように、力のX方向成分Fxにおいては、圧力センサーP1〜P4で検出された値のうち+X方向に配置された圧力センサーP2およびP4で検出された値が組み合わされるとともに、−X方向に配置された圧力センサーP1およびP3で検出された値が組み合わされる。このように、+X方向に配置された圧力センサーP2およびP4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーP1およびP3の組み合わせによる値との差分に基づいて力のX方向成分が求められる。
【0055】
式(2)に示すように、力のY方向成分Fyにおいては、圧力センサーP1〜P4で検出された値のうち+Y方向に配置された圧力センサーP1およびP2で検出された値が組み合わされるとともに、−Y方向に配置された圧力センサーP3およびP4で検出された値が組み合わされる。このように、+Y方向に配置された圧力センサーP1およびP2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーP3およびP4の組み合わせによる値との差分に基づいて力のY方向成分が求められる。
【0056】
式(3)に示すように、力のZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーP1〜P4の値を足し合わせた合力で求められる。ただし、力のZ方向成分Fzは、力のX方向成分Fx(分力)および力のY方向成分Fy(分力)に比べて検出値が大きく検出される傾向がある。例えば、弾性体突起22の材質として硬いものを用いたり、頂部の形状を先鋭にしたりすると、力のZ方向成分Fzの検出感度が高くなる。しかしながら、弾性体突起22の材質として硬いものを用いると弾性体突起22が変形しにくくなり力の面内方向の検出値が小さくなってしまう。また、弾性体突起22の頂部の形状を先鋭にすると接触面を指で触ったときの「タッチ感」に強い感度(違和感)を与える場合がある。このため、力のZ方向成分Fzの検出値を、力のX方向成分Fxおよび力のY方向成分Fyの検出値と揃えるには、弾性体突起22の材質や形状によって決定される補正係数で検出値を適宜補正する必要がある。
【0057】
図5は、タッチパッド(検出装置1)の検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合を例示する。かかる場合、力のZ(垂直)方向成分は、力が作用した部分の中心部が最も大きくなる(圧力センサー12の出力電圧90〜120mV程度)。また、力のZ方向成分は、中心部に次いでその周辺部(60〜90mV程度)、最外周部(30〜60mV程度)の順に小さくなる。また、指で押されていない領域は、圧力センサー12の出力電圧が0〜30mV程度となる。なお、タッチパッドには、検出領域S(圧力センサーP1〜P4が縦2行横2列に計4つ配置された領域)がマトリックス状(例えば縦15行×横15列に計225個)に配置されているとする。
【0058】
図6は、本実施形態に係る力によるすべり方向の算出例を示す図である。タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合の押圧力の面内方向成分(すべり方向)の算出方法を例示して説明する。図6に示す例は、指によって加えられた力が、タッチパッドの検出面に配置されている複数の検出領域S(縦15行×横15列)のうち縦3行×横3列に配置された部分の検出領域S部分に作用しているとする。ここで、力の垂直方向成分は、図5で示した様に力が作用した部分の中心部がもっとも大きくなっている(110mV)。
【0059】
ここで力が作用する縦3行×横3列の各検出領域Sは、それぞれ4つの圧力センサーP1〜P4を有しており、各圧力センサーP1〜P4で検出された値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された値の差分を演算し、その差分に基づいて力が加えられた方向が演算される。つまり、各単位検出領域では、上述した式(1)および式(2)に基づいて力のX方向成分Fxおよび力のY方向成分Fyが算出される。ここでは、+X方向を基準として左周りに約123°の方向に力が作用していることが分かる。なお、力の作用する方向の算出にあっては、9つの算出結果の平均値で求める方法、あるいは9つの算出結果のうちの最大値(例えば所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0060】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
このような検出装置1によれば、弾性体突起22が検出領域Sに当接した状態ですべり方向に弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sの間に突起体31が配置されることで、その突起体31が障壁となり、弾性体突起22が隣り合う検出領域Sにはみ出して弾性変形をすることを抑制できる。よって、隣り合う検出領域Sに弾性体突起22がはみ出して、その検出領域Sで力が誤検出されることを抑制できる。従って、特許文献1や特許文献2の検出装置に比べて、力の方向と大きさとの検出精度を高めることができる。
【0061】
また、第2基板本体21に力が加えられると、弾性体突起22は頂部が第1基板に配置された検出領域Sに当接した状態で弾性変形し、第2基板本体21にすべり方向の力が加えられる場合は、弾性体突起22の弾性変形に偏りが生じる。このことによって、弾性体突起22の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向に移動し、複数の圧力センサー12のうち弾性体突起22の重心Gが移動した部分と重なる割合が相対的に大きくなる。つまり、各圧力センサー12で異なる値が検出される。従って、図示しない演算装置により、各圧力センサー12で検出された値の差分を演算し、その差分に基づいて力が加えられた方向と大きさとを求めることができる。
【0062】
このような検出装置1によれば、突起体31は、検出領域Sの外縁に沿って平行に配置され、隣り合う検出領域Sに配置された突起体31と連続して格子形状に配置される。これによって、突起体31は、第1基板本体11から起立する突起体31自体の補強と、第1基板本体11を補強するリブの機能とを備えることができる。従って、第1基板10の薄板化と、検出装置1の軽量化とを実現することができる。
【0063】
(第2実施形態)
図7は、第1実施形態の図1に対応した、本発明の第2実施形態に係る検出装置2の概略構成を示す分解斜視図である。なお、図7において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起22に対応し、複数の圧力センサー12が配置された単位検出領域Sを示している。
【0064】
図7に示すように、検出装置2は、基準点Pの周りに複数の圧力センサー12から構成される検出領域Sが複数配置された第1基板100を備えている。また、基準点Pに重なる位置に重心が位置するとともに、力によって頂部が当該検出領域Sに当接した状態で弾性変形する弾性体突起22と、その弾性体突起22が配置された第2基板200とを備えている。また、隣り合う検出領域Sとの間には第1基板本体110から突き出る突起体32が配置されている。本実施形態の突起体32は、検出領域Sの外縁に対応し、独立して配置されている点が第1実施形態で説明をした検出装置1とは異なっている。なお、第1実施形態と同様に検出領域Sを構成する圧力センサー12は、縦2行横2列に計4つ配置されているが、4つに限定されることはなく、縦4行横4列など多数配置されても良い。
【0065】
図7に示す様に突起体32は、第1基板本体110から突出し、隣り合う検出領域Sとの間に、その検出領域Sの外縁(辺)に対応して配置されている。また、突起体32は、第1実施形態と同様に、弾性体突起22が受ける力によって弾性変形する変形量に基づき、突起体32の高さが弾性体突起22の直径の半分程度に形成されている。また、突起体32は、弾性体突起22と比べて硬質の材料で形成されている。なお、突起体32は、第1実施形態と同様に四角形の断面形状を備え、その頂部の角が面取りされているものとする。
【0066】
第1基板100は、第1実施形態の構成と同様に複数の検出領域Sが配置されている。また、検出領域Sの外縁に対応して突起体32が第1基板本体110から起立して配置されている。突起体32は、それぞれ独立して配置され、第1実施形態の突起体31の様に隣り合う突起体31とは継合(連続)されていない。本実施形態の突起体32は、隣り合う検出領域Sの外縁に対応して配置された他の突起体32とは継合されていないため、第1基板100に可撓性を備えることができる(図8参照)。
【0067】
詳しくは、第1実施形態の第1基板10においては、その第1基板10に配置された検出領域Sを格子形状に囲み、隣り合う連続して突起体31が配置されている。よって、連続して配置され突起体31が第1基板100を補強するため、第1基板100の可撓性を有していない。
【0068】
また、本実施形態の第1基板100は、突起体32が独立して配置されているため、第1基板本体110を形成する材料として可撓性を有する材料(例えば、第1実施形態で例示したシリコーン樹脂など。)を用いることで、隣り合う検出領域Sに平行して配置された突起体32との間を支点として第1基板100を可撓させることができる。
【0069】
突起体32は、第1実施形態の突起体31と同様に、力によって弾性体突起22が弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sへその弾性体突起22がはみ出すことを抑制する。なお、本実施形態では、第1基板本体11の形成材料としてポリイミドを用い、突起体31の形成材料としてアクリル樹脂を用いている。
【0070】
第2基板200は、第1実施形態の構成と同様に、第2基板本体210と、第2基板本体210に配置された複数の弾性体突起22とから構成されている。第2基板本体210は、力を受ける部分である。また、第2基板200は、前述の第1基板100の屈曲に沿って配置されるため、屈曲可能な可撓性を有している(図8参照)。なお、本実施形態の第2基板本体210と弾性体突起22とは、金型で一体形成している。また、第2基板本体210、および弾性体突起22の形成材料としてシリコーン樹脂材料を用いている。
【0071】
図8(a)〜(c)は、第1実施形態の図2(a)〜(c)に対応した、本実施形態に係る力による弾性体突起22の弾性変形を示す図で、図7に示す線分C−D間の断面図である。図9(a)〜(c)は、第1実施形態の図3(a)〜(c)に対応した、本実施形態に係る弾性体突起22の力による弾性変形を示す平面図である。
【0072】
図8(a)および図9(a)は第2基板本体210の表面に力が加えられる前の状態(力の作用がないとき)を示している。図8(b)および図9(b)は第2基板本体210の表面にZ軸(垂直)方向の力が加えられた状態を示している。図8(c)および図9(c)は第2基板本体210の表面に斜め方向の力が加えられた状態を示している。さらに、図9(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起22の重心(力の中心)を示している。図8および図9において、第1実施形態の図2および図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
図8(a)および図9(a)に示すように、第2基板本体210の弾性体突起22が形成された面と反対の面に力が加えられる前においては、弾性体突起22の頂部が第1基板本体110に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接し、弾性変形はしない。これにより、第1基板100と第2基板200との間の距離は一定に保たれる。この時、弾性体突起22の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。このときの各圧力センサー12の圧力値は図示しないメモリー部に記憶されている。メモリー部に記憶された各圧力センサー12の検出値を基準として力の作用する方向や大きさ(ベクトル)が求められる。
【0074】
図8(b)および図9(b)に示すように、第2基板本体210の表面に向かってZ軸(垂直)方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体110に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態でZ方向に弾性変形する。これにより、第2基板200がZ方向に撓み、第1基板100と第2基板200との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー12の圧力値は、力の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー12とも略同じ値となる。弾性体突起22の頂部が各圧力センサー12に当接する面積が等しいためである。
【0075】
図8(c)および図9(c)に示すように、第2基板本体210の表面に向かって斜め方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体110の表面に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態で斜めに傾いて弾性変形する。これにより、第2基板200がZ方向に撓み、第1基板100と第2基板200との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。この時、弾性体突起22の重心Gは、基準点Pから+X方向および+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起22の頂部と4つの圧力センサー12との重なる面積は互いに異なる。具体的には、弾性体突起22の頂部と4つの圧力センサー12との重なる面積は、4つの圧力センサー12のうち−X方向および−Y方向に配置された部分と重なる面積よりも+X方向および+Y方向に配置された部分と重なる面積の方が大きくなる。また、弾性体突起22は、隣り合う検出領域Sにはみ出すように斜めに傾いて弾性変形するが、突起体32が障壁となって隣り合う領域へ弾性変形した弾性体突起22が侵入することを抑制することができる。
【0076】
弾性体突起22は、第2基板本体210の表面に加えられた斜め方向の力によって弾性変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起22の重心は基準点PからずれてZ軸を横切る「すべり方向」(X方向およびY方向)に移動する。すると、検出領域Sを構成する複数の圧力センサー12において異なる値の圧力値が検出される。具体的には、弾性体突起22の重心と重なる位置の圧力センサー12では相対的に大きい値が検出され、弾性体突起22の重心と重ならない位置の圧力センサー12では相対的に小さい値が検出されることとなる。そして、第1実施形態で述べた差分の演算方法に基づいて力が加えられた方向と大きさが求められる。このことによって、力が加えられる前の各圧力センサー12で検出される値と、力が加えられた時に圧力センサー12で検出される値とを比較演算することで、力の方向と大きさとを検出することができる。なお、本実施形態に係る垂直方向の力による力分布および力によるすべり方向の算出方法は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0077】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
このような検出装置2によれば、弾性体突起22が検出領域Sに当接した状態ですべり方向に弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sとの間に突起体32が配置されることでその突起体32が弾性変形の障壁となり、弾性体突起22が隣り合う検出領域Sにはみ出して弾性変形をすることを抑制できる。このため、隣り合う検出領域Sに弾性体突起22がはみ出して、その検出領域Sで力の方向と大きさとが誤検出されることを抑制し、力の方向と大きさとを高精度で検出することができる検出装置2を提供することができる。
【0078】
また、突起体32は、検出領域Sの外縁と対応して平行に配置され、それぞれの突起体32が独立して配置されることで、第1基板10に可撓性を備えることができる。従って、検出装置2は曲面を有する部位に設けることができる。
【0079】
(第3実施形態)
図10は、第2実施形態の図8に対応した、本発明の第3実施形態に係る検出装置3の概略構成を示す分解斜視図である。なお、図10において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起22に対応し、複数の圧力センサー12が配置された単位検出領域Sを示している。
【0080】
図10に示すように、検出装置3は、基準点Pの周りに複数の圧力センサー12から構成される検出領域Sが複数配置された第1基板100を備えている。また、基準点Pに重なる位置に重心が位置するとともに、力によって頂部が当該検出領域Sに当接した状態で弾性変形する弾性体突起22と、その弾性体突起22が配置された第2基板20とを備えている。また、隣り合う検出領域Sとの間には、第1基板本体110から突き出る突起体33が配置されている。本実施形態の突起体33は、検出領域S毎に独立してその検出領域Sを囲む形状に配置されている点が前述の第2実施形態で説明をした検出装置2とは異なっている。なお、第2実施形態と同様に検出領域Sを構成する圧力センサー12は、縦2行横2列に計4つ配置されているが、4つに限定されることはなく、縦4行横4列など多数配置されても良い。
【0081】
図10に示す様に突起体33は、第1基板本体110から突き出し、隣り合う検出領域Sとの間に、その検出領域Sの外縁に対応して囲む形状に配置されている。また、突起体33は、上述した第1実施形態と同様に、その高さが弾性体突起22の直径の半分程度に形成されている。また、突起体33は、弾性体突起22と比べて硬質の材料で形成されている。
【0082】
突起体33は、第2実施形態と同様に、力によって弾性体突起22が弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sへ弾性変形した弾性体突起22がはみ出すことを抑制する。また、突起体33が第1実施形態の突起体31の様に連続して配置されていないため、本実施形態の第1基板100は屈曲させることができる(図11参照)。さらに、突起体33が囲む形状に配置されるため第1基板本体110を補強するリブ構造を有し、第1基板100を補強する。よって、第1基板100の薄板化と、屈曲とが容易にでき、また検出装置1の軽量化を図ることができる。なお、本実施形態では、第1基板本体11の形成材料としてポリイミドを用い、突起体31の形成材料としてアクリル樹脂を用いている。
【0083】
第2基板200は、第2基板本体210と、第2基板本体210に配置された複数の弾性体突起22とから構成されている。本実施形態の第2基板200は、前述の第2実施形態の第2基板200と同様の構成のため、説明を省略する。
【0084】
図11(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に対応した、本実施形態に係る力による弾性体突起22の弾性変形を示す図で、図10に示す線分E−F間の断面図である。
【0085】
図11(a)は第2基板本体210の表面に力が加えられる前の状態(力の作用がないとき)を示している。図11(b)は第2基板本体210の表面にZ軸(垂直)方向の力が加えられた状態を示している。図11(c)は第2基板本体210の表面に斜め方向の力が加えられた状態を示している。図11において、図8と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
図11(a)に示すように、第2基板本体210の弾性体突起22が形成された面と反対の面に力が加えられる前においては、弾性体突起22は頂部が第1基板本体110に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接し、弾性変形はしない。これにより、第1基板100と第2基板20との間の距離は一定に保たれる。
【0087】
図11(b)に示すように、第2基板本体210の表面に向かってZ軸(垂直)方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体110に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態でZ方向に弾性変形する。これにより、第2基板200がZ方向に撓み、第1基板100と第2基板200との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。
【0088】
図11(c)に示すように、第2基板本体210の表面に向かって斜め方向の力が加えられた時には、弾性体突起22は頂部が第1基板本体110の表面に配置された検出領域S(圧力センサー12)に当接した状態で斜めに傾いて弾性変形する。これにより、第2基板200がZ方向に撓み、第1基板100と第2基板200との間の距離が力の作用がないときに比べて小さくなる。また、弾性体突起22は、隣り合う検出領域Sに斜めに傾いてはみ出すように弾性変形するが、突起体33によってその弾性変形を抑制することができる。なお、圧力センサー12で検出される値と、その値に基づいて力の方向と大きさとを求める演算方法は、第1実施形態および第2実施形態と同様のため説明を省略する。
【0089】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
このような検出装置3によれば、検出領域S毎にその検出領域Sを囲む形状に突起体33を配置することで、突起体33がリブの機能を有し、第1基板100の薄板化および検出装置3の軽量化を図ることができる。
このような検出装置3によれば、弾性体突起22が検出領域Sに当接した状態ですべり方向に弾性変形した際に、隣り合う検出領域Sとの間に突起体33が配置されることでその突起体33が弾性変形の障壁となり、弾性体突起22が隣り合う検出領域Sにはみ出して弾性変形をすることを抑制できる。このため、隣り合う検出領域Sに弾性体突起22がはみ出して、その検出領域Sで力の方向と大きさとが誤検出されることを抑制し、力の方向と大きさとを高精度に検出することができる検出装置3を提供することができる。また、第1基板100は、検出領域Sを囲む突起体33と、隣接する検出領域Sを囲む突起体33との間を支点に可撓性を有するため、曲面を有する部位にも検出装置3を設けることができる。
【0090】
(電子機器)
図12は、上述した実施形態に係る検出装置1から検出装置3を適用した携帯電話機1000の概略構成を示す模式図である。携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003およびスクロールボタン1002、並びに表示部としての検出装置1から検出装置3を適用した液晶パネル1001を備えている。スクロールボタン1002を操作することによって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューボタン(図示省略)が表示される。例えば、メニューボタンを指で触れると電話帳が表示されたり、携帯電話機の電話番号が表示されたりする。
【0091】
図13は、上述した実施形態に係る検出装置1から検出装置3を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000の概略構成を示す模式図である。携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002および電源スイッチ2003、並びに表示部としての検出装置1から検出装置3を適用した液晶パネル2001を備えている。電源スイッチ2003を操作すると、液晶パネル2001にはメニューボタンが表示される。例えば、メニューボタン(図示省略)を指で触れると住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。
【0092】
このような電子機器によれば、上述した検出装置1から検出装置3を備えていることで、力が加えられる部位が曲面を有する電子機器においても、力の大きさと方向とを検出することができる。また、大きな力が加えられた時も力が加えられた方向と直交する方向(水平方向)に作用する力を誤検出することなく力を高い精度で検出することができる電子機器を提供することができる。
【0093】
なお、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチールカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、上述の各実施形態に係る検出装置を適用させることができる。
【0094】
(ロボット)
図14は、上記各実施形態に係る検出装置1から検出装置3を適用したロボットハンド3000の概略構成を示す模式図である。図14(a)に示すように、ロボットハンド3000は、本体部3003および一対のアーム部3002、並びに検出装置1から検出装置3を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0095】
図14(b)に示すように、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。このとき、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した検出装置1から検出装置3を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(すべり力の成分)を検出することが可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じて力を加減しながら持つことができる。
【0096】
このようなロボットは、上述した検出装置1から検出装置3を備えていることで、力の方向と大きさを検出する部位が曲面を有するロボットにおいても、力の大きさと方向とを検出することができる。また、大きな力が加えられた時も力の加えられる方向と直交する方向(水平方向)に作用する力を誤検出することなく力を高い精度で検出することができるロボットを提供することができる。
【符号の説明】
【0097】
1〜3…検出装置、10,100…第1基板、11,110…第1基板本体、12…圧力センサー、20,200…第2基板、21,210…第2基板本体、22…弾性体突起、31,32,33…突起体,1000…携帯電話機、1001…液晶パネル、1002…スクロールボタン、1003…操作ボタン、2000…携帯情報端末、2001…液晶パネル、2002…操作ボタン、2003…電源スイッチ、3000…ロボットハンド、3001…把持部、3002…アーム部、3003…本体部、3010…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置であって、
基準点に加えられた力の方向と大きさとを検出する複数の検出領域を有する第1基板と、
前記基準点と重なる位置に重心が位置するとともに前記力によって頂部が前記検出領域に当接した状態で弾性変形する弾性体突起が配置された第2基板と、を備え、
前記検出領域とその隣り合う前記検出領域との間に、前記第1基板面を基部として突き出る突起体を備えること、
を特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記突起体は、前記検出領域の外縁に平行して配置され、隣り合う前記検出領域に配置される前記突起体と継合して格子形状に配置されること、
を特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記突起体は、前記検出領域の外縁と対応して平行に配置され、前記突起体がそれぞれ独立して配置されること、
を特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記突起体は、前記検出領域毎に前記検出領域の外縁と対応して平行に前記検出領域を囲む形状に独立して配置されていること、
を特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の検出装置であって、
前記突起体は、前記検出領域の外縁と平行に延在配置された前記突起体に直交する方向の断面形状が、多角形または台形状を有し、前記基部と反対側の頂部の角が面取りされていること、
を特徴とする検出装置。
【請求項6】
検出装置であって、
力の方向と大きさとを検出する第1の検出領域及び第2の検出領域を有する第1基板と、
前記第1の検出領域の第1基準点と重なる位置に重心が位置するとともに弾性変形する第1弾性突起と、前記第2の検出領域の第2基準点と重なる位置に重心が位置するとともに弾性変形する第2弾性突起と、が配置された第2基板と、を有し、
前記第1基板は、前記第1の検出領域と前記第2の検出領域との間に突起体を備えること、
を特徴とする検出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の検出装置を備えること、を特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の検出装置を備えること、を特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−101062(P2013−101062A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245220(P2011−245220)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】