説明

検査シートおよび検査システム

【課題】異なる撮像装置のいずれで検査シートの変色を撮像した場合であっても、皮膚において生じた現象を確実に検知することができるとともに、皮膚の温度を測定する。
【解決手段】本発明に係る検査シートは、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を含む試薬保持部と、試薬保持部と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査シートおよび検査システムに関する。特に、本発明は、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する検査シートおよび検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、R成分、G成分、およびB成分の波長領域の光を受光する受光素子の感度がピークとなる波長帯にピークを有する蛍光を試験片に向けて発光することによって、試験片を分析する分析装置について提案されている。特許文献2には、R成分、G成分、およびB成分の波長領域にピーク強度を持つ光を試薬層に照射することによって試験層の分析をする分析装置について提案されている。
【特許文献1】特許3424009号公報
【特許文献2】特開平05−209836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれに記載の発明であっても、赤外光成分の波長領域の光を測定していないので、被験者の温度を測定することはできない。
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決することができる検査シートおよび検査システムを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、検査シートであって、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を含む試薬保持部と、試薬保持部と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタとを備える。また、赤外線透過フィルタは、検査シートの面内において、試薬保持部の周囲に設けられてよい。
【0006】
また、本発明の第2の形態においては、皮膚に貼り付けられた検査シートを撮像装置で撮像して皮膚の状態を検査する検査システムであって、検査シートは、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を含む試薬保持部と、試薬保持部と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタとを有し、撮像装置は、検査シートからの光のうちの赤外光を遮断する赤外光フィルタと、赤外光フィルタを透過した光を受光して、検査シートを撮像する撮像部と、撮像部が検査シートを撮像する場合に、赤外光フィルタを透過させることなく、赤外光を含む光を撮像部に受光させるフィルタ制御部とを有する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる撮像装置のいずれで検査シートの変色を撮像した場合であっても、皮膚において生じた現象を確実に検知することができるとともに、皮膚の温度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査シート10を用いた検査システムの一例を示す。検査システムは、皮膚40に貼り付けられた検査シート10を撮像装置20で撮像して、皮膚40の状態を検査する。検査システムは、検査シート10、撮像装置20、および解析装置30を備える。そして、検査シート10は、支持体シート100、複数のフィルタ層102、および試薬保持部104とを備える。本実施形態に係る検査シート10および検査システムは、それぞれ異なる複数の撮像装置20のいずれで検査シート10の変色を撮像した場合であっても、皮膚40において生じた現象を確実に検知することを目的とする。
【0011】
まず、検査シート10は、人体の皮膚40に貼付される。試薬保持部104が保持する試薬は、検査シート10が貼付された領域の一部に含まれる皮膚40の表面の水分または皮脂等の存在により変色する。そして、複数のフィルタ層102はそれぞれ、それぞれの分光特性に応じて予め定められた波長領域の光を透過させる。続いて、撮像装置20は、複数のフィルタ層102のそれぞれを透過した波長領域の光を撮像して、撮像した画像を示す撮像画像データを、ネットワーク50を介して解析装置30に送信する。解析装置30は、撮像画像データが示す撮像画像から、皮膚40の状態を解析する。
【0012】
より詳細には、検査シート10の支持体シート100は、試薬保持部104と複数のフィルタ層102とを保持する。支持体シート100は、高分子樹脂シートであってよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリアミド系合成繊維等であってよい。高分子樹脂シートの重合度および平均分子量等は、検査シート10の使用状況、並びに検査シート10に要求される柔軟性、および耐久性等に応じて適宜決定してよい。また、検査シート10が使用される前においては、支持体シート100の皮膚40と接触する面には保護シートが貼付されている。そして、検査シート10を使用するときに保護シートを取り外して、検査シート10を皮膚40に貼付する。
【0013】
検査シート10の試薬保持部104は、皮膚から発生する検査対象物または分泌される検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する。検査対象物は、具体的には、皮膚上の水分、汗、または皮脂等である。そして、試薬保持部104が保持する試薬は、水分、汗、または皮脂等を吸収することによって変色する化合物であってよい。例えば、検査対象が水分である場合、試薬は塩化コバルトであってよい。また、試薬はpH指示薬等であってもよい。更に、試薬保持部104と皮膚40とが接触する面に、試薬保持部104が保持する試薬と皮膚40とが直接に接触することを避けるべく、水分または皮脂を透過するが試薬を透過しない不織布等の層を備えてもよい。
【0014】
複数のフィルタ層102(例えば、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102B)はそれぞれ、試薬保持部104の皮膚40に接触する側の反対側に、試薬保持部104に沿って異なる位置に設けられ、それぞれ異なる波長領域の光を透過する。具体的には、複数のフィルタ層102のそれぞれは、試薬の色を検出する撮像装置20が備える光検出部204が検出可能な複数の光の波長領域のそれぞれの一部の波長領域をそれぞれ透過する。また、検査シート10は、試薬保持部104と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚40からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタ114を更に備えていてもよい。
【0015】
より具体的には、光検出部204は、光の第1の色成分、第2の色成分、および第3の色成分をそれぞれ検出可能な第1検出素子、第2検出素子、および第3検出素子を有する。なお、第1検出素子、第2検出素子、および第3検出素子はそれぞれ、光を受光する受光面上に予め定められた波長領域の光を透過するフィルタ部206を有する。具体的には、第1検出素子は、第1の色成分を透過する第1のフィルタ部206を有する。同様にして、第2検出素子は、第2の色成分を透過する第2のフィルタ部206を有するとともに、第3検出素子は、第3の色成分を透過する第3のフィルタ部206を有する。
【0016】
そして、複数のフィルタ層102は、第1フィルタ層、第2フィルタ層、および第3フィルタ層を有していてよい。例えば、第1フィルタ層は、第1検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。また、第2フィルタ層は、第2検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。そして、第3フィルタ層は、第3検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。係る場合において、第1フィルタ層は、第1のフィルタ部206が透過可能な波長領域の一部の波長領域を透過してよい。また、第2フィルタ層は、第2のフィルタ部206が透過可能な波長領域の一部の波長領域を透過してよく、第3フィルタ層は、第3のフィルタ部206が透過可能な波長領域の一部の波長領域を透過してもよい。
【0017】
例えば、光検出部204は、光のR成分(例えば、波長600nmから波長750nmの範囲における光)、G成分(例えば、波長490nmから波長600nmの範囲における光)、およびB成分(例えば、波長420nmから波長490nmの範囲における光)をそれぞれ検出可能なR検出素子、G検出素子、およびB検出素子を有する。ここで、複数の撮像装置20が存在する場合、一の撮像装置20が備える光検出部204と、他の撮像装置20が備える光検出部204とは、光のR成分、G成分、およびB成分をそれぞれ検出する分光特性が異なっていてよい。
【0018】
そして、複数のフィルタ層102は、例えば、Rフィルタ層、Gフィルタ層、およびBフィルタ層を含む。Rフィルタ層は、R検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。また、Gフィルタ層は、G検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。そして、Bフィルタ層は、B検出素子が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。すなわち、複数のフィルタ層102はそれぞれ、複数の検出素子がそれぞれ検出可能な光の波長領域より狭い範囲の波長領域をそれぞれ透過する。これにより、R検出素子、G検出素子、およびB検出素子はそれぞれ、Rフィルタ層、Gフィルタ層、およびBフィルタ層のそれぞれが透過する予め定められた光の波長領域の光を検出して検査シート10の画像を撮像できる。
【0019】
また、複数のフィルタ層102は、試薬保持部104が保持する試薬の色が変化する前の試薬の色、または試薬の色が変化した後の試薬の色が示す波長領域の光を透過してもよい。具体的には、複数のフィルタ層102は、第1フィルタ層と第2フィルタ層とを有していてよい。第1フィルタ層は、試薬の色が変化する前の試薬の色を示す波長領域の光を透過する。そして、第2フィルタ層は、試薬の色が変化した後の試薬の色を示す波長領域の光を透過する。
【0020】
なお、試薬が発する光の波長ごとの強度分布を予め測定することにより、複数のフィルタ層102のそれぞれが透過する波長領域を決定してもよい。また、試薬の色が、第1の色から第2の色に変化する場合、第1フィルタ層が、第1の色を示す光の波長領域を透過するとともに、第2フィルタ層が、第2の色を示す光の波長領域を透過すべく設計してもよい。更に、光検出部204が示す分光特性に応じて、複数のフィルタ層102のそれぞれが透過する光の波長領域を決定してもよい。そして、複数のフィルタ層102のそれぞれを透過する波長領域の光を発色する化合物を、試薬として用いてもよい。
【0021】
また、他の実施形態においては、試薬保持部104に対して複数のフィルタ層102の反対側に設けられ、検査対象物を試薬保持部104に透過させるとともに、複数のフィルタ層102から入射した光を反射する光反射部を更に備えてもよい。光反射部を備えることにより、検査シート10に照射される光の光量が小さい場合であっても、撮像装置20は、試薬保持部104が保持している試薬の色を適切に撮像できる。
【0022】
撮像装置20は、検査シート10の複数のフィルタ層102を撮像する。撮像装置20は、複数のフィルタ層102を透過した波長領域の光を撮像する。撮像装置20が撮像した撮像画像を示す撮像画像データは、LANおよびインターネット等のネットワーク50を介して、撮像画像を解析して肌状態を判断する解析装置30に送信される。また、撮像装置20は、撮像装置20を電気通信的に接続可能なクレードルに保持されてよい。そして、クレードルはネットワーク50を介して解析装置30と通信可能に接続される。係る場合に、撮像装置20は、クレードルを介して解析装置30に撮像画像データを送信してもよい。
【0023】
解析装置30は、撮像装置20が撮像した検査シート10の撮像画像から、皮膚40の状態を解析する。解析装置30は、PCまたはサーバであってよい。具体的には、解析装置30は、試薬保持部104が保持する試薬が塩化コバルトである場合、複数のフィルタ層102を透過した光の量、例えば、光のR成分を透過するフィルタ層102R、光のG成分を透過するフィルタ層102G、および光のB成分を透過するフィルタ層102Bのそれぞれを透過した光の量を、撮像画像データが示す撮像画像から解析する。そして、解析装置30は、光の量が最も多い成分の色に応じて、皮膚40の表面における水分量を判断する。解析装置30は、解析結果をユーザに通知すべく、通知情報を生成してユーザに通知する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る撮像装置20の機能構成の一例を示す。撮像装置20は、撮像部200、画像取得部210、画像生成部220、温度検出部230、格納部240、出力部250、フィルタ制御部260、およびモード切換部270を備える。また、撮像部200は、レンズ部202および光検出部204を有する。そして、光検出部204は、フィルタ部206および検出素子208を含む。なお、光検出部204は、複数のフィルタ部206および複数の検出素子208を含んでいてよく、複数のフィルタ部206はそれぞれ、複数の検出素子208のそれぞれに対応させて配置されてよい。
【0025】
撮像部200は、検査シート10を撮像する。撮像部200は、検査シート10の可視光画像および赤外光画像を撮像する。具体的には、撮像部200は、撮像範囲から入射する光を、レンズ部202を通して光検出部204に受光させる。そして、光検出部204は、複数の検出素子208において光を受光して、撮像範囲に含まれる検査シート10の撮像画像を撮像する。また、撮像部200は、赤外光フィルタを透過した光を受光して、検査シート10を撮像してもよい。すなわち、撮像部200は、撮像範囲に含まれる検査シート10からの光を、レンズ部202と赤外光フィルタとを通して検出素子208に受光させることにより、検査シート10を撮像する。なお、レンズ部202は、複数のレンズを含むレンズ系であってもよい。
【0026】
なお、可視光画像とは、可視光の波長範囲(例えば、波長400nmから700nmの範囲)において撮像部200の光検出部204が有する検出素子208が受光した光から取得した画像である。また、赤外光画像とは、赤外光の波長範囲(例えば、波長700nmから波長1000nmの範囲、または波長700nmから波長2500nmの範囲)において撮像部200の光検出部204が有する検出素子208が受光した光から取得した画像である。更に、撮像領域とは、撮像部200が、可視光画像および赤外光画像の撮像ができる撮像領域であり、少なくとも検査シート10の複数のフィルタ層102を含む撮像領域である。また、本実施形態における画像は、静止画だけではなく動画を含んでいてよい。そして、動画は、複数の動画構成画像を含み、フレーム画像またはフィールド画像等は動画構成画像の一例である。
【0027】
具体的には、光検出部204は、可視光を受光して撮像する複数の可視光検出素子208、および赤外光を受光して撮像する複数の赤外光検出素子が同一平面状に配列されていてよい。なお、CCDまたは複数のCMOSセンサは、光検出部204の一例である。ここで、フィルタ部206は、複数のフィルタ部206を含む。具体的には、フィルタ部206は、原色フィルタ(例えば、R成分、G成分、およびB成分を透過するフィルタ)または補色フィルタ(例えば、C(シアン)成分、M(マゼンタ)成分、Y(イエロー)成分)、およびG(グリーン)成分を透過するフィルタ)であってよい。更には、フィルタ部206は、原色フィルタと補色フィルタとの双方を含んでいてもよい。
【0028】
また、フィルタ部206は、検査シート10からの光のうちの赤外光を遮断する赤外光フィルタを含んでよい。また、フィルタ部206は、検査シート10からの光のうちの可視光領域の光、および赤外光領域の光のそれぞれを透過するフィルタを含んでいてもよい。なお、光検出部204は、試薬保持部104が検査対象物と接触することによって変化する色成分を示す、複数のフィルタ層102のそれぞれが透過する波長領域より広い波長領域の光を受光可能となるべく設定されていてもよい。
【0029】
また、検査シート10の試薬保持部104が保持する試薬は、少なくとも複数のフィルタ部206がそれぞれ透過する波長領域の中心波長の光を発色する化合物であってもよい。例えば、フィルタ部206がR成分の波長領域を透過するフィルタ部206R、G成分の波長領域を透過するフィルタ部206G、およびB成分の波長領域を透過するフィルタ部206Bを有する場合を考える。係る場合において、試薬保持部104が保持する試薬は、フィルタ部206Rが透過する波長領域の中心波長の光を発色する化合物、フィルタ部206Gが透過する波長領域の中心波長の光を発色する化合物、およびフィルタ部206Bが透過する波長領域の中心波長の光を発色する化合物を含んでいてよい。
【0030】
なお、本実施形態において、検査シート10に照射されている光は、例えば、室内においては蛍光灯および白熱灯から発せられる白色光であり、また、屋外においては太陽光などの白色光である。ここで、光源は、例えば、R成分、G成分、およびB成分のそれぞれの波長領域の光を個別に発する光源であってもよい。係る場合において、撮像装置20は、R成分の光を照射した場合、G成分の光を照射した場合、およびB成分の光を順次照射した場合のそれぞれにおいて、同一の検査シート10を予め定められた時間内に撮像してもよい。
【0031】
そして、撮像装置20は、撮像した複数の撮像画像の差異から、検査シート10の複数のフィルタ層102を透過した波長範囲を特定する情報を生成してもよい。例えば、撮像装置20は、R成分の波長領域の光を発する光源で検査シート10を照射しているときに検出素子208が捉えた光が示すアナログ電気信号と、G成分の波長領域の光を発する光源で検査シート10を照射しているときの検出素子が捉えた光が示すアナログ電気信号との差異をとることにより、試薬の色を示す情報を生成してもよい。係る方法を採用することにより、光検出部204は、フィルタ部206を有する必要がなくなる。なお、光源は、例えば発光ダイオード(LED)であり、検査シート10から所定の距離を隔てて、R成分、G成分、およびB成分のそれぞれの波長領域の光を順次発光する。
【0032】
これにより、例えば、検査シート10のフィルタ層102の近傍に皮膚40が直接外部に曝される開口部を設けておけば、撮像装置20は、複数のフィルタ層102を透過した光の検出だけでなく、皮膚40の高精細な撮像画像を撮像することもできる。
【0033】
モード切換部270は、検査シート10を撮像する検査撮像モード、および検査シート10以外を撮像する通常撮像モードのいずれかを選択する。具体的には、モード切換部270は、ユーザの指示に応じて検査撮像モードおよび通常撮像モードのいずれかを選択する。そして、モード切換部270は、選択されたモードに応じてフィルタ制御部260を制御する。フィルタ制御部260は、撮像部200が検査シート10を撮像する場合に、赤外光フィルタを透過させることなく、赤外光を含む光を撮像部200に受光させる。具体的には、モード切換部270が検査撮像モードを選択した場合に、赤外光フィルタを透過させることなく、赤外光を含む光を撮像部200に受光させる。なお、フィルタ部206は、波長可変フィルタであってよい。例えば、フィルタ部206は、波長可変フィルタはファブリペロー型干渉フィルタであってよく、他の実施形態においては、回折格子、または複数の狭帯域フィルタを有するフィルタであってもよい。
【0034】
画像取得部210は、光検出部204が含む複数の検出素子208からアナログ電気信号を読み出す。そして、画像取得部210は、読み出したアナログ電気信号をデジタル信号に変換して、撮像範囲の撮像画像を撮像画像データとして取得する。具体的には、画像取得部210は、光検出部204において発生するノイズを軽減する処理を光検出部204から読み出したアナログ電気信号に施すことにより、撮像部200が撮像した撮像範囲の撮像画像を示すアナログ電気信号を抽出する。そして、画像取得部210は、抽出した電気信号の高低部分を予め定められたレベルまでに補正する。続いて、画像取得部210は、補正後のアナログ電気信号をデジタル信号に変換することにより撮像画像データを取得する。画像取得部210は、取得した撮像画像データを、画像生成部220および温度検出部230に供給する。
【0035】
なお、画像取得部210は、アナログ電気信号のデジタル信号への変換処理をガンマ変換後に実行してもよい。そして、画像取得部210は、アナログ電気信号からRGB各色のアナログ電気信号だけを取り出してデジタル信号へ変換してもよい。また、画像取得部210は、デジタル信号のデータ量を低減すべくデータ圧縮処理を実行する場合、撮像画像における白の基準値を決定すべくホワイトバランス処理を実行してもよい。そして、画像取得部210は、RGB信号から輝度成分および色差信号の画像を生成する。続いて、画像取得部210は、信号変化が予め定められた基準値よりも大きい部分を生成した画像から抽出して、シャープネス処理を実行する。そして、画像取得部210は、シャープネス処理を施した後の画像に対してデータ圧縮処理を実行してもよい。
【0036】
画像生成部220は、可視光検出素子が受光した可視光から検査シート10の画像を生成する。すなわち、画像生成部220は、画像取得部210が取得した撮像画像データのうち、可視光検出素子が受光した可視光によって生じたアナログ電気信号を画像取得部210が変換して生成した撮像画像データを用いて、画像を生成する。同様にして、画像生成部220は、赤外光検出素子が受光した赤外光から画像を生成してもよい。画像生成部220は、生成した画像を示す画像データを格納部240に供給する。
【0037】
温度検出部230は、赤外光検出素子が受光した赤外光から、皮膚40の温度を検出する。具体的には、温度検出部230は、撮像装置20が撮像した赤外光画像から皮膚40の温度を算出する。これにより、皮膚40の温度によって試薬保持部104が保持する試薬の色が変化する場合において、皮膚40の状態をより的確に判断する場合に資することができる。温度検出部230は、算出した温度を示す情報を格納部240に供給する。格納部240は、画像生成部220が生成した画像を、温度検出部230が検出した温度に対応づけて格納する。出力部250は、格納部240が格納している画像を示す画像データを、当該画像が撮像されたときの皮膚40の温度を示す情報とともに、ネットワーク50を介して解析装置30に送信する。
【0038】
解析装置30は、撮像装置20が撮像した撮像画像に基づいて皮膚40の状態を判定する。解析装置30は、撮像装置20が撮像した検査シート10の撮像画像から検出される試薬の色から皮膚40の状態を判定してよい。具体的には、解析装置30は、試薬の色と皮膚40の状態とを予め対応づけて記録している。そして、解析装置30は、撮像装置20が撮像した撮像画像に含まれる検査シート10の複数のフィルタ層102を透過した光の色を判断して、当該色から皮膚40の状態を判断する。また、解析装置30は、皮膚40の温度と試薬の色とを対応づけて予め記録していてもよい。そして、解析装置30は、皮膚40の温度と試薬の色とから皮膚40の状態を判断してもよい。
【0039】
また、解析装置30は、光検出部204が検出した光の光量に基づいて、検査対象物の量を算出する量算出部を備えていてよい。具体的には、解析装置30は、試薬保持部104からの一部の波長領域の光の光量と、検査対象物の量との間の相関を示す相関情報を格納する量格納部を更に備えていてよい。そして、解析装置30の量算出部は、光検出部204が検出した光の光量および量格納部が格納している相関情報に基づいて、検査対象物の量を決定する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る複数のフィルタ層102における光透過特性の概念の一例を示す。試薬保持部104が保持する試薬は、例えば、波長420nmから波長490nmの波長領域の光を発色する。そして、皮膚40から発生した検査対象物との接触により、波長490nmから波長600nmの波長領域の色、または波長600nmから波長750nmの波長領域の色を発色する。なお、波長600nmから波長750nmの波長領域の光を発色するとともに、皮膚40から発生した検査対象物が接触すると、波長420nmから波長490nmの波長領域の色を発色する試薬であってもよい。
【0041】
係る場合において、第1フィルタ層(例えば、Rフィルタ層)は、試薬が発色する光の波長領域に含まれる一部の波長領域の色だけを透過する。例えば、第1フィルタ層は、波長領域350に含まれる光だけを透過する。また、第2フィルタ層(例えば、Gフィルタ層)は、試薬が発色する光の波長領域に含まれる一部の波長領域の色だけを透過する。例えば、第2フィルタ層は、波長領域330に含まれる光だけを透過する。そして、第3フィルタ層(例えば、Bフィルタ層)は、試薬が発色する光の波長領域に含まれる一部の波長領域の色だけを透過する。例えば、第3フィルタ層は、波長領域310に含まれる光だけを透過する。
【0042】
なお、第1フィルタ層、第2フィルタ層、および第3フィルタ層はそれぞれ、試薬が発色する光のピーク波長を中心として、予め定められた波長領域の光を透過してもよい。係る場合において、第1フィルタ層、第2フィルタ層、および第3フィルタ層のそれぞれが透過する光の波長領域は、それぞれ重複させずに設計されることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る複数のフィルタ層102は、R成分、G成分、およびB成分の各波長領域のうち、所定の波長領域だけを透過する。これにより、撮像装置20が備える光検出部204が有するフィルタ部206の分光特性が、複数の撮像装置20のそれぞれで異なっていた場合であっても、フィルタ部206の違いに関わらず試薬の色が変化したことを確実に検出できる。すなわち、B成分の波長領域の光とG成分の波長領域(例えば、波長領域320)の光、またはG成分の波長領域の光とR成分の波長領域の光とが混同した波長領域(例えば、波長領域340)の光を検査シート10の複数のフィルタ層102は透過しないので、解析装置30は、試薬の色が変化する途中の試薬の色は検出せず、試薬の色が確実に変化したことを検出できる。従って、本実施形態に係る検査シート10を用いることにより、皮膚40の状態を判断する場合に、判断のあいまいさを排除できる。
【0044】
図4は、本実施形態に係る検査シート10の一例を示す。検査シート10の複数のフィルタ層102はそれぞれ、R成分の波長領域の光を透過するフィルタ層102R、G成分の波長領域の光を透過するフィルタ層102G、およびB成分の波長領域の光を透過するフィルタ層102Bを有する。そして、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bはそれぞれ、検査シート10において隣接した位置に配置される(例えば、図4の(a)参照)。なお、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bの並び順は図示した場合に限られず、他の並び順であってもよい。
【0045】
また、支持体シート100は、透明層106と粘着層108とを含む。透明層106は、図1の上記説明における支持体シート100の説明において述べた材料と同様な高分子樹脂シートであって、可視光領域の光および赤外光領域の光の双方を透過する材料であってよい。また、粘着層108は、例えば、アクリル系粘着剤であってよい。そして、透明層106の上部表面にフィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bがそれぞれ隣接して貼付されていてよい。また、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bに対向する位置の粘着層108の表面に、試薬保持部104が貼付されていてよい(例えば、図4の(b)参照)。
【0046】
また、検査シート10のフィルタ層102は、複数のフィルタ層102R、複数のフィルタ層102G、および複数のフィルタ層102Bを有していてもよい。具体的には、フィルタ層102は、予め定められた行数および予め定められた列数によって構成される格子形状を有していてよく、各格子にフィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bのいずれかが設けられていてよい。例えば、行1列1の位置にフィルタ層102R、行1列2の位置にフィルタ層102G、行2列1の位置にフィルタ層102G、および行2列2の位置にフィルタ層102Bを設けた単位ユニットを設定する。フィルタ層102は、複数の単位ユニットにより構成されていてよい。なお、単位ユニットに含まれるフィルタ層の数および種類は上記の例に限られず、より多くのフィルタ層102から構成されてもよい。
【0047】
図5は、本実施形態に係る検査シート10の一例を示す。検査シート10の複数のフィルタ層102はそれぞれフィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bを有する。そして、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bはそれぞれ、検査シート10において予め定められた距離だけ隔離されて配置される(例えば、図5の(a)参照)。なお、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bの並び順は図示した場合に限られず、他の並び順であってもよい。また、図5の(a)においては、検査シート10の長軸方向に沿って複数のフィルタ層102を配置しているが、他の実施形態においては検査シート10の短軸方向に沿って複数のフィルタ層102を配置してもよい。
【0048】
そして、透明層106の上部表面にフィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bが予め定められた距離だけ隔離されて貼付されていてよい。また、フィルタ層102R、フィルタ層102G、およびフィルタ層102Bに対向するそれぞれの位置の粘着層108の表面に、複数の試薬保持部104がそれぞれ貼付されていてよい(例えば、図5の(b)参照)。これにより、解析装置30は、皮膚40の複数の位置におけるそれぞれの状態について、一度に解析できる。
【0049】
図6は、本実施形態に係る検査シート10の断面の一例を示す。本実施形態に係る検査シート10は、試薬保持部104とフィルタ層102とを備える。フィルタ層102は、試薬保持部104の皮膚40に接触する側の反対側に設けられ、試薬の色を検出する光検出部204が検出可能な光の波長領域の一部の波長領域を透過する。ここで、光検出部204は、光の第1の色成分を検出可能な第1検出素子(例えば、R検出素子)と、第2の色成分を検出可能な第2検出素子(例えば、G検出素子)と、第3の色成分を検出可能な第3検出素子(例えば、B検出素子)とを有する。
【0050】
そして、本実施形態に係るフィルタ層102は、第1検出素子および第2検出素子の双方が検出可能な光の波長領域を透過しない。すなわち、フィルタ層102は、第1の色成分と第2の色成分とが重なる波長領域の光を透過しない。また、フィルタ層102は、第2検出素子および第3検出素子の双方が検出可能な光の波長領域を透過しない。すなわち、フィルタ層102は、第2の色成分と第3の色成分とが重なる波長領域の光を透過しない。
【0051】
具体的には、フィルタ層102は、試薬保持部104の上に重ねて設けられた上層フィルタ110および下層フィルタ112を有する。上層フィルタ110は、第1検出素子および第2検出素子の双方が検出可能な光の波長領域を透過しない。例えば、上層フィルタ110は、R検出素子およびG検出素子の双方が検出可能な光の領域を透過しない。そして、下層フィルタ112は、第2検出素子および第3検出素子の双方が検出可能な光の波長領域を透過しない。例えば、下層フィルタ112は、G検出素子およびB検出素子の双方が検出可能な光の領域を透過しない。例えば、上層フィルタ110は、図3の上記説明におけるグラフ300に示した波長領域340の光を遮断する。また、下層フィルタ112は、図3の上記説明におけるグラフ300に示した波長領域320の光を遮断する。
【0052】
これにより、R成分の光とG成分の光とが混合した波長領域、またはG成分の光とB成分の光とが混合した波長領域の双方について撮像装置20が撮像することがなくなり、撮像装置20は、試薬の色が確実に変化した撮像画像だけ撮像できる。従って、解析装置30は、微妙な色の変化に基づいて皮膚40の状態を判断することがなくなり、より確実に皮膚40の状態を判断することができる。
【0053】
図7は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10を用いた検査システムの一例を示す。検査システムは、皮膚40に貼り付けられた検査シート10を撮像装置20で撮像して、皮膚40の状態を検査する。検査システムは、検査シート10、撮像装置20、および解析装置30を備える。そして、検査シート10は、支持体シート100、フィルタ層102、試薬保持部104、および赤外線透過フィルタ114とを備える。
【0054】
なお、本実施形態に係る検査シート10は、赤外線透過フィルタ114を更に備えた点を除き、図1から図6の上記説明における検査シート10と略同一の機能および構成を有する。従って、以下の説明においては、赤外線透過フィルタ114を除く他の構成要素についての詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係る撮像装置20および解析装置30についても、図1から図6の上記説明における撮像装置20および解析装置30と略同一の機能および構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0055】
赤外線透過フィルタ114は、試薬保持部104と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚40からの赤外光を透過する。赤外線透過フィルタ114は、検査シート10の面内において試薬保持部104に隣接して設けられる。赤外線透過フィルタ114は、検査シート10の面内において試薬保持部104から予め定められた距離だけ隔離して設けてもよい。また、赤外線透過フィルタ114は、検査シート10の面内において、試薬保持部104の周囲に設けられてもよい。
【0056】
赤外線透過フィルタ114は、皮膚40が発する赤外線を透過する。そして、撮像装置20は、フィルタ層102を透過した波長領域の画像を撮像するとともに、皮膚40の赤外光画像も撮像する。撮像装置20は、フィルタ層102の領域を撮像した撮像画像の撮像画像データと赤外光画像を示す赤外光画像データを、ネットワーク50を介して解析装置30に送信する。そして、解析装置30は、撮像画像データが示す撮像画像から皮膚40の状態を解析するとともに、赤外光画像データが示す赤外光画像から皮膚40の温度を解析する。
【0057】
これにより、試薬保持部104が保持している試薬の色の変化と皮膚40の温度とを同時に測定できる。そして、解析装置30は、皮膚40の温度と試薬が接触する検査対象物の量とに対応づけて、試薬の色を示す色情報を予め格納しておくことにより、皮膚40の状態を正確に解析できる。
【0058】
図8は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10の一例を示す。本実施形態に係る検査シート10においては、赤外線透過フィルタ114は、検査シート10の面内において、試薬保持部104の周囲に設けられる。すなわち、支持体シート100に試薬保持部104が設けられ、試薬保持部104が皮膚40と接触する面の反対側における支持体シート100に、フィルタ層102が設けられる。そして、フィルタ層102の周囲であって、検査シート10の領域を超えない範囲に赤外線透過フィルタ114が設けられる。なお、赤外線透過フィルタ114の外形は、四角形状、円状、多角形状、および星形状等のいかなる形状であってもよい。
【0059】
図9は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10の断面の一例を示す。検査シート10は支持体シート100、フィルタ層102、試薬保持部104、および赤外線透過フィルタ114を備える。そして、支持体シート100は透明層106および粘着層108とが重ね合わされた構造となっている。なお、図9においては、説明を簡略化する関係上、試薬保持部104の直上に存在するフィルタ層102を省略している。
【0060】
具体的には、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114はそれぞれ、粘着層108の皮膚40と接触する面に設置される。従って、本実施形態に係る検査シート10においては、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114はそれぞれ、皮膚40と接触する配置となる。なお、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114が皮膚40と直接接触することを避けるべく、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114と皮膚40との間に、検査対象物を透過するシートを更に設けてもよい。
【0061】
図10は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10の断面の一例を示す。検査シート10は、透明層106、粘着層108、フィルタ層102、試薬保持部104、および赤外線透過フィルタ114を備える。そして、透明層106と粘着層108とは、互いに重ね合わされた構造となっている。なお、図10においては、説明を簡略化する関係上、試薬保持部104の直上に存在するフィルタ層102を省略している。
【0062】
具体的には、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114はそれぞれ、粘着層108の内部に備えられる。すなわち、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114はそれぞれ、少なくとも皮膚40に接触する予め定められた領域を残して、粘着層108および透明層106に囲まれる。そして、粘着層108が皮膚40と接触することにより、試薬保持部104および赤外線透過フィルタ114もそれぞれ皮膚40と接触することになる。係る構造を有することにより、検査シート10の全体の厚みをより薄くすることができる。
【0063】
図11は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10の断面の一例を示す。検査シート10は、透明層106、粘着層108、フィルタ層102、試薬保持部104、および赤外線透過フィルタ114を備える。そして、透明層106と粘着層108とは、互いに重ね合わされた構造となっている。なお、図11においては、説明を簡略化する関係上、試薬保持部104の直上に存在するフィルタ層102を省略している。
【0064】
具体的には、試薬保持部104は、粘着層108の内部に設けられる。そして、粘着層108が皮膚40と接触することにより、試薬保持部104も皮膚40と接触することになる。一方、赤外線透過フィルタ114は、粘着層108の皮膚40と接触する面とは反対側の透明層106の上に設けられる。係る構造を有することにより、撮像装置20は、粘着層108を透過および/または散乱する、皮膚40からの赤外光を強調した撮像画像を撮像できる。
【0065】
図12は、本発明の他の実施形態に係る検査シート10の一例を示す。本実施形態に係る検査シート10は、図1から図11の上記説明におけるフィルタ層102の他に、R透過フィルタ116とG透過フィルタ118とを更に備える。R透過フィルタ116は、フィルタ層102およびG透過フィルタ118と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚40からの光のうち、R成分の光を透過する。例えば、R透過フィルタ116は、ヘモグロビン色のうちのR成分の光を透過するフィルタであってよい。また、G透過フィルタ118は、フィルタ層102およびR透過フィルタ116と同時に外部から視認可能に配置され、皮膚40からの光のうち、G成分の光を透過する。例えば、G透過フィルタ118は、ヘモグロビン色のうちのG成分の光を透過するフィルタであってよい。
【0066】
ここで、血液中のヘモグロビンは、動脈流中では酸化ヘモグロビンとして存在する。また、血液中のヘモグロビンは、静脈流中では還元ヘモグロビンとして存在する。そして、酸化ヘモグロビンの反射ピーク波長の一部の波長領域はG成分に含まれる(例えば、波長540nmの波長領域等)。一方、還元ヘモグロビンの反射ピーク波長の一部の波長領域はR成分に含まれる(例えば、波長660nmの波長領域等)。従って、検査シート10のR透過フィルタ116およびG透過フィルタ118を透過した光の波長領域を解析することで、皮膚40の領域における血流を判断できる。
【0067】
具体的には、撮像装置20は、R透過フィルタ116およびG透過フィルタ118の双方を含む撮像画像を撮像する。撮像装置20は、撮像画像を示す撮像画像データを解析装置30に送信する。解析装置30は、撮像画像データが示す撮像画像を解析して、皮膚40の領域における血行の状態を解析する。例えば、解析装置30は、R成分の波長領域における光の強度とG成分の波長領域における光の強度との強度差と、血行の状態を示す情報とを予め記録している血行状態情報格納部を備えていてよい。そして、解析装置30は、撮像装置20から受け取った撮像画像データを解析して、R成分の波長領域における光の強度とG成分の波長領域における光の強度との強度差を算出する。
【0068】
続いて、解析装置30は、算出した強度さに対応づけて血行状態情報格納部が格納している血行状態を示す情報を抽出することにより、皮膚40の領域の血行状態を判断する。これにより、皮膚40の領域が日焼け状態である旨、皮膚の炎症状態、あるいは風呂上り等により皮膚40表面が赤くなっている状態等を判断することができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】検査システムの概要図である。
【図2】撮像装置20の機能構成を示すブロック図である。
【図3】複数のフィルタ層102の透過特性の概念図である。
【図4】検査シート10を示す図である。
【図5】検査シート10を示す図である。
【図6】検査シート10の断面図である。
【図7】検査システムの概要図である。
【図8】検査シート10を示す図である。
【図9】検査シート10の断面図である。
【図10】検査シート10の断面図である。
【図11】検査シート10の断面図である。
【図12】検査シート10を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 検査シート
20 撮像装置
30 解析装置
40 皮膚
50 ネットワーク
100 支持体シート
102 フィルタ層
104 試薬保持部
106 透明層
108 粘着層
110 上層フィルタ
112 下層フィルタ
114 赤外線透過フィルタ
116 R透過フィルタ
118 G透過フィルタ
200 撮像部
202 レンズ部
204 光検出部
206 フィルタ部
208 検出素子
210 画像取得部
220 画像生成部
230 温度検出部
240 格納部
250 出力部
260 フィルタ制御部
270 モード切換部
300 グラフ
310、320、330、340、350 波長領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を含む試薬保持部と、
前記試薬保持部と同時に外部から視認可能に配置され、前記皮膚からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタと
を備える検査シート。
【請求項2】
前記赤外線透過フィルタは、当該検査シートの面内において、前記試薬保持部の周囲に設けられる請求項1に記載の検査シート。
【請求項3】
皮膚に貼り付けられた検査シートを撮像装置で撮像して前記皮膚の状態を検査する検査システムであって、
前記検査シートは、
前記皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を含む試薬保持部と、
前記試薬保持部と同時に外部から視認可能に配置され、前記皮膚からの赤外光を透過する赤外線透過フィルタと
を有し、
前記撮像装置は、
前記検査シートからの光のうちの赤外光を遮断する赤外光フィルタと、
前記赤外光フィルタを透過した光を受光して、前記検査シートを撮像する撮像部と、
前記撮像部が前記検査シートを撮像する場合に、前記赤外光フィルタを透過させることなく、赤外光を含む光を前記撮像部に受光させるフィルタ制御部と
を有する検査システム。
【請求項4】
前記撮像装置は、
前記検査シートを撮像する検査撮像モード、および前記検査シート以外を撮像する通常撮像モードのいずれかを選択するモード切換部
を更に有し、
前記フィルタ制御部は、前記モード切換部が前記検査撮像モードを選択した場合に、前記赤外光フィルタを透過させることなく、赤外光を含む光を前記撮像部に受光させる請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記撮像部は、
可視光を受光して撮像する可視光検出素子、および赤外光を受光して撮像する赤外光検出素子が同一平面上に配列された光検出部
を有し、
前記撮像装置は、
前記可視光検出素子が受光した可視光から前記検査シートの画像を生成する画像生成部と、
前記赤外光検出素子が受光した赤外光から前記皮膚の温度を検出する温度検出部と、
前記画像生成部が生成した画像を、前記温度検出部が検出した温度に対応づけて格納する格納部と
を有する請求項3に記載の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−298482(P2008−298482A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142490(P2007−142490)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】