説明

検査室作業セルで化学検査サンプルおよび凝固検査サンプルを処理する方法

臨床検査室作業セルの入力ステーションでサンプルを自動的に分類し、最新の確立している遠心分離作業プロトコルに適った遠心分離要件を有するサンプルのみを、遠心分離機によって処理し、そして上記作業セルと関連したアナライザによって処理できるようにした方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動コンベヤ・システムで供給されたサンプルを有する2つまたはそれ以上の独立アナライザを備える自動臨床サンプル取り扱い作業セルに関する。一層詳しくは、本発明は、このような自動臨床サンプル取り扱い作業セル(workcell)内でこのようなアナライザにより分析を行う前に遠心分離作業を必要とする予備検定処理にかかわる種々のプロセスを管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な自動化学アナライザがこの技術分野で知られており、分析メニューおよび処理量を増やし、所用時間を短縮し、必要な試料体積を減らすように絶えず改良されている。これらの改良は、それ自体有用でありながら、予備分析サンプル調製・取り扱い領域に充分なそれ相応の進歩がなければ阻まれる可能性がある。サンプル調製・取り扱いとしては、選別、バッチ調製、サンプル成分を分離するためのサンプル・チューブの遠心分離、流体出入りを容易にするキャップ除去などがある。
【0003】
自動サンプル調製システムは、市販されており、一般的に、米国特許第5,178,834号および同第5,209,903号に記載されているような臨床アナライザに被検物を搬送するコンベヤ・システムの使用を含んでいる。これらのコンベヤ・システムの多くは、特殊なアナライザおよび他の取り扱い機器を含む全統合システムの統合された専用部分であるという欠点がある。米国特許第6,060,022号または米国特許出願第10/638,874号(参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、最近ではより汎用的なサンプル取り扱いシステムが導入されている。これらの「作業セル」は、自動的に臨床サンプルを処理し、開いた容器内の予め処理されたサンプルを、独立したスタンドアロン・アナライザと連動して作動するロボット装置に与えるようになっている。
【0004】
一定の検査室臨床化学検査のためには、ほとんどの場合遠心分離によって全血から得た血漿が分析に使用される。凝固を防ぐために、血液被検物を得た直後にクエン酸塩またはヘパリンのような抗凝固剤を添加するか、または患者サンプルを最初に得る場合真空採血チューブ内に抗凝固剤を存在させる。次いで、被検物を遠心分離にかけて血球から血漿を分離する。所望に応じて、その後の分析のためにほとんど無期限に血漿を−80℃以下で凍結してもよい。
【0005】
多くの生化学的な検査の場合、互換性を持って血漿および血清を用いることができる。血清は、組成の点で血漿に類似しているが、凝固因子を欠いている。血清を得るには、遠心分離の前に血液被検物を凝固させる。このために、血清分離チューブを用いることができるが、この血清分離チューブは、凝固を容易にする不活性触媒(たとえば、ガラスビーズまたはガラス粉)を収容しており、さらに分離を便利にするのに遠心分離後にチューブ内の液体層、細胞層間に位置させるように設計した密度を有する一部のゲルを含有する。
【0006】
凝固検査では、すべての凝固因子を保存しなければならない。したがって、血清はこれらの検査には不適当である。通常、クエン酸塩の抗凝固効果は濃度に依存し、検査のために逆にすることができるので、クエン酸塩入り真空採血チューブが使用される。
【0007】
さらに、血漿内の抗凝固物質が時々或る種の分析結果の妨げとなる可能性があるので、血清の方が多くの検査にとって好ましい。種々の抗凝固物質が種々の検査の妨げとなるので、血清を使用するということは、同じサンプルを多くの検査について使用できるということを意味する。タンパク電気泳動法においては、血漿を使用するということは、可視的で付加的なバンドを生じさせ、これがパラプロテインと間違えられる惧れがある。
【0008】
このようなサンプル調製システムと関連した臨床化学診断アナライザは、生物学的サンプル、たとえば尿、血清、血漿、脳脊髄液などについて化学的評価分析(chemical assay)およびイムノアッセイを自動的に実施するようになっている。これらのサンプルは、一般的に、キャップで閉ざされたサンプル・チューブ内に収容されている。キャップで閉ざされた状態で、サンプルを遠心分離操作にかけ、サンプル成分を分離してから検査を行う。患者の生物学的サンプルの被検物質と、評価分析を行うのに用いられる試薬との化学反応が種々の信号を生成し、これらをアナライザによって測定できる。これらの信号から、サンプル内の被検物質の濃度を算出できる。
【0009】
血友病のような出血状態を診断するには別のタイプのサンプル分析・凝固検査が用いられる。その場合、12の血液凝固因子のうち1つまたはそれ以上に欠損があり得る。普及している診断検査としては、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、プロトロンビン時間(Pt)および活性凝固時間(ACT)がある。普及している検査室凝固検査では、通常、濁度測定技術またはその他の測定技術を使用する。ほとんどの凝固検査の場合、全血サンプルは、クエン酸塩バキュテナー(vacutainer)に集め、遠心分離にかけて血漿サンプルを得る。評価分析は血漿を使って行い、これに充分に過剰なカルシウムを添加してクエン酸塩の作用を中和している。秒単位で知らされるPTは、トロンボプラスチンとカルシウムの混合物を添加した後に血漿サンプルがどのくらいで凝固するかを表している。aPTTは、試薬(シリカやリン脂質のような負電荷アクチベータ)による第XII因子の活性化からフィブリン塊の形成までの血漿の凝固時間を測定する。活性凝固時間(ACT)は、高投与ヘパリン治療の効果をモニタするのに使用する検査である。しかしながら、ACT検査は、ヘパリン注入によって汚染されなかった部位からの未希釈の血液を使用する。全血サンプルは、適切な検査バイアルへ転送し、アクチベータと混合させ、このときACTアナライザのタイマーが起動する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
検査室全体の分析処理量は、種々のタイプのアナライザを相互にリンクさせ、各アナライザが単一の作業セル内で一定の評価分析メニューを実施するようにすることによって増大する可能性がある。しかしながら、臨床化学分析、凝固分析の両方を同じ作業セルにリンクさせた場合、種々タイプの検査のため種々の適切に分離したサンプルを作り出すのに種々の遠心分離プロセスを必要とするかも知れないので、問題が生じる。分析検査を全血、血漿または血清に実施することができ、時には血漿または血清のいずれかを使用できることは、上記の考慮から明らかである。したがって、アナライザのどれでどんな検査を実施しようとするかに応じて、種々のサンプルについて種々の遠心分離プロセスが必要となる可能性がある。種々の回転速度および種々の時間が、種々のサンプルについての「遠心分離プロトコル」と以下で称するものを構成する変数の例である。したがって、自動システムは、高度のサンプル取り扱い・処理量を可能にしてきたが、自動臨床サンプル取り扱い用作業セル内で異なった遠心分離作業、種々の遠心分離プロトコルを必要とするサンプルを取り扱うことに伴う困難に取り組んでこなかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、2つまたはそれ以上の独立した凝固アナライザ、臨床化学アナライザを有する自動臨床サンプル取り扱い作業セルの入力ステーションで分析前に患者サンプルを検出して分類し、最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する分析前遠心分離要件を持つサンプルのみを、遠心分離機および前記作業セルと関連したアナライザによって後で処理することを可能にすることが提供される。もしサンプルが最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を持っていなければ、そのサンプルは遠心分離作業プロトコルが適切に切り替えられるまで入力ステーションに保留される。もしサンプルが最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を持っているならば、そのサンプルは遠心分離機による通常の方法で処理され、次いで遠心分離機が臨床化学検査または凝固検査のための遠心分離プロトコルに従って作動しているかどうかに応じて化学アナライザまたは凝固アナライザのいずれかによって処理される。
【0012】
本発明ならびに他の目的およびさらに別の特徴をより良く理解して貰うため、種々の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を添付図面と関連させながら述べる。
【0013】
図1は、本発明を有利に使用できるいくつかの化学分析前処理装置およびいくつかのアナライザと協働して制御されるコンベヤを含む自動サンプル取り扱いシステムの簡略化した概略平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、アナライザ32、38または42による分析の前に複数のサンプル・ラック18に収容された複数のサンプル容器20、一般的にはサンプル試験管20を自動的に前処理できる自動臨床化学サンプル取り扱い作業セル10を示している。一般的には、自動的に処理しようとする被検物は、キャップで閉ざされた容器20内に収容されてサンプル取り扱い作業セル10に供給される。サンプル容器20の各々は、センサ19によって機械読み取り可能であり、患者の識別ならびにその中のサンプルに対して行おうとする評価分析作業を示す識別マーク、たとえばバーコードを備えている。容器20は、一般的には、付加的な識別マークを有するラック18内に保持される。
【0015】
サンプル取り扱い作業セル10は、作業ベース12を含み、この作業ベース上で、ベルト様コンベヤトラック14が、サンプル容器キャリヤ22に担持された個々のサンプル・チューブ容器20を、後述の理由のために複数のラック18を有し、ならびに作動中の入力レーンを有するサンプル容器装填・取り出しステーション16から自動遠心分離機24に移送し、そこからキャップで閉ざされたサンプル容器20からキャップを自動的に取り外すための自動チューブキャップ取り外し器30に移送し、そして、そこから1つまたはそれ以上のアナライザ32、38および42に移送し、その後各サンプル容器20をサンプル・チューブ装填・取り出しロボット・ステーション16に戻す。ここで、4つ以上のアナライザ32、38、42(説明を簡単にするために3つしか示していない)をコンベヤ・トラック14によってリンクできることは勿論である。遠くに離れたアナライザ43は、作業セル10に直接リンクされていなくても、たとえば独立ロボット・システムを介して作業セル10によって使用され得る。サンプル取り扱い作業セル10は、各サンプル・チューブ・キャリア22上またはその中に置かれた識別マークによってサンプル・チューブ容器20の位置を検出するための多数のセンサ19を有する。このような追跡作業で従来のバーコード・リーダを使用してもよい。
【0016】
遠心分離機24および各アナライザ38、42、32は、一般的に、それぞれ、種々のロボット機構26、28、40、44、またはトラック34および36を備えており、サンプル・チューブ・キャリア22をトラック14から取り出し、それを遠心分離機24に、またはそこからそれぞれのアナライザ38、42、32に、およびそこから、またはその内外へ移動させることができる。典型的には、装填・取り出しステーション16は、従来通りにロボット・クランピング・ハンドを備える少なくとも2つのX−Y−Zロボットアーム21を含む。
【0017】
サンプル取り扱い作業セル10は、従来通りにプログラムされたコンピュータ15(好ましくはマイクロプロセッサ・ベースの中央演算処理装置CPU15)によって制御される。コンピュータ15は、システム10の一部としてまたはそれとは別体に収容してあって、各作業ステーション24、30、32、38、42、16へのサンプル・チューブ・キャリア22の移動を制御する。各作業ステーションのところで、後述するように、種々タイプの評価分析処理が行われる。CPU15は、イリノイ州ディアフィールドのDade Behring Inc.の販売するDimension(R)型臨床化学アナライザで使用され、コンピュータ・ベースの電気機械制御プログラミングの当業者に一般的であるソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェア・コマンドまたは回路などに従ってサンプル取り扱いシステム10を制御する。
【0018】
本発明は、サンプル調製のためにおよび患者の生物学的サンプルの臨床分析のために使用される複数の相互関係のある自動装置を充分に表示する種々の制御スクリーンおよび状態情報表示スクリーンに使用者が容易かつ迅速にアクセスできるようにするコンピュータ・インタフェース・モジュールCIMを使用して実現できる。このようなCIMは、好ましくは複数の相互関係のある自動装置の作動状態についてのオンライン情報ならびに任意特定のサンプルおよびこのサンプルに行おうとする臨床検査の状態を示す情報を含む複数の追加の表示スクリーンに直接リンクした第1の表示スクリーンを使用する。したがって、CIMは、操作者と自動臨床分析システム10との相互作用を容易にするようになっている。この場合、モジュールは、操作者を臨床分析システムと結びつけることができる、アイコン、スクロールバー、ボックスおよびボタンを含むメニューを表示するようになっている視覚タッチスクリーンを含み、メニューは、臨床分析システムの機能的な特徴を表示するようにプログラムされた多数の機能ボタンを含む。
【0019】
上述したように、アナライザ32が、たとえば臨床化学アナライザ32であり、アナライザ38が凝固アナライザである上記の例においては、種々の遠心分離プロトコルが遠心分離機24内で確定されて、化学アナライザ32または凝固アナライザ38による検査のための適切に予備評価分析処理されたサンプルを提供しなければならない。前述のように、サンプル容器20は、センサ19で読み取ることができ、その中に入っているサンプルについて行おうとする評価分析作業を示す識別マークを備えている。コンピュータ15は、評価分析が臨床化学分析であるか凝固分析であるかどうか、アナライザ32、38、42のどれがこのような分析を実施するようになっているか決定するようにプログラムされている。
【0020】
本発明は、臨床サンプル取り扱い作業セル10内で種々の遠心分離作業プロトコルを必要とするサンプルを取り扱うのに関係する種々のプロセスを管理する方法である。先に説明したように、単一の作業セル10上で臨床化学検査サンプル、凝固検査サンプルの両方を組み合わせるには、種々の回転速度もしくは時間またはこれら両方を含む上記の遠心分離作業プロトコルによる、サンプル調製プロセス中の臨床化学サンプルと凝固サンプルの分離が必要である。一つの実施形態においては、これらの必要性は、後の臨床化学分析のためのサンプルを予備処理するための第1遠心分離機と、後の凝固分析のためのサンプルを予備処理するための第2遠心分離機とを設けることによって満たすことができる。代替として、それぞれが後の臨床化学分析、凝固分析のために調節された第1、第2の作業プロトコルを有する単一の遠心分離機24内で個別のサンプル・バッチを処理してもよい。もう一つの代替は化学分析サンプル、凝固サンプルの両方を適切に分離する一連の遠心分離プロトコルを有効にするための検査室用である。本発明は、上記の代替状況のうちのいずれかで適用できる。
【0021】
本発明の方法は、作業セル10の装填・取り出しステーション16で凝固サンプル、化学分析サンプルの検出および分類を行うことができ、最新式で確定されており、化学および/または凝固のためのサンプルを調製するように調節された遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を有する容器20内のサンプルのみを処理および分析のためにロボットアーム21によってベルト14上に置くことができる。容器20のサンプルが最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を持たない場合、容器20は、ステーション16で利用可能な入力ラック18に戻され、遠心分離作業プロトコルが適切に切り替えられるまでそこに保持される。容器20のサンプルが最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を有する場合、サンプル容器20は、装填・取り出しステーション16によってベルト14上へ置かれ、遠心分離機24が化学検査または凝固検査のために遠心分離プロトコルに従って作動しているかどうかに応じて、遠心分離機24によって次いで化学アナライザ32または凝固アナライザ38のいずれかによって通常の方法でその後処理される。容器20が最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を有するかどうかを決定するためには、その中のサンプルについて行おうとする評価分析作業を示す、サンプル容器上の識別マークをセンサ19で読み取り、この情報を使用してこのような決定を行う。
【0022】
ラック18内の容器20内のすべてのサンプルは、最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致する遠心分離要件を有する場合は本発明に従ってベルト14上に置かれ、または最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致しない遠心分離要件を有する場合の結果として、同様に本発明に従ってラック18内に戻される。ベルト14上に置かれた容器20は、ベルト14によって遠心分離機24まで搬送され、そこにおいて適切な遠心分離プロトコルが容器20内のサンプルに対して行われる。最新の確定している遠心分離作業プロトコルに合致しない遠心分離要件を有する結果としてラック18に戻されたあらゆる容器20は、遠心分離作業プロトコルが適切に調節された後にのみ遠心分離にかけられる予定の次のサンプル・バッチ内に含まれることになる。こうして、本発明は、相反する遠心分離要件が存在する場合達成できる限り先入れ先出しに近い処理オーダーを創り出す。
【0023】
明らかに、化学アナライザおよび凝固アナライザが共通の遠心分離要件を持つ場合には、サンプルの分離は不要であり、臨床化学サンプルおよび凝固サンプルの両方が単一の遠心分離バッチ内で混ざり合ってもよい。
【0024】
二つ以上の遠心分離機24が作業セル10内にある場合、たとえば装置42も遠心分離機である場合には、本発明は、複数の遠心分離機の各々について専用の遠心分離バッチを創り出し、各遠心分離機24が、異なった遠心分離機ごとの上記のプロセスを繰り返すことによって臨床化学サンプルまたは凝固サンプルを適切に調製するようになっている。したがって作業セル10に与えられているサンプルの多様性に応じて任意組み合わせの遠心分離バッチを形成できる。たとえば、装置24、42の両方が遠心分離機である場合には、したがって2つの遠心分離作業セルを創り出す場合には、ほんの一例として、遠心分離機24を臨床化学サンプルを処理するようにセットアップし、遠心分離機42を凝固サンプルを処理するようにセットアップしてもよいし、または遠心分離機24、42の両方を臨床化学サンプルを処理するようにセットアップしてもよいし、または遠心分離機24、42の両方を凝固サンプルを処理するようにセットアップしてもよいし、または遠心分離機24を凝固サンプルを処理するようにセットアップし、遠心分離機42を化学サンプルを処理するようにセットアップしてもよい。このような融通性は、装入サンプル負荷で化学サンプルまたは凝固サンプルのいずれかの含量がかなり大きい場合作業セル10の処理量を最大にする。明らかに、このような配置は、単一の遠心分離機の故障による影響を最小限に抑える。
【0025】
ここで、本発明の一例として、各装置32、38および48をセットアップし、コンピュータ15によって制御して、サンプルが処理のために適切に調製されるように必要とされる「遠心分離プロトコルセット」を定める例を考える。例示の値は、「化学」および「凝固」である。従来の臨床化学アナライザが「化学」としてセットアップされることになり、従来の凝固アナライザが値「凝固」を割り当てられることになる。したがって、遠心分離パラメータ・セット={化学、凝固}が定義される。
【0026】
したがって、遠心分離機24は、コンピュータ15によってセットアップ、制御されて各「遠心分離パラメータ・セット」に対して個別の遠心分離プロトコルを維持することになる。たとえば、「化学遠心分離パラメータ・セット」は、10分間の2,700回転数/分の回転速度を特定し、「凝固遠心分離パラメータ・セット」は、12分間の3,000回転数/分の回転速度を特定するかもしれない。
【0027】
さらに、尿被検物対血清/血漿被検物について種々の遠心分離プロトコルを持つことが望ましい場合がある。したがって、遠心分離要件は、処理されている種々のサンプル流体で異なる可能性がある。たとえば、尿対血清/血漿被検物についての種々の遠心分離プロトコルを有すると望ましいかも知れないこともさらに予想される。また、この遠心分離プロトコルがアナライザ32、38、42、43から選ばれた使用者定義のアナライザで処理しようとするサンプル用であってよい可能性もあり得る。
【0028】
さらにまた、タンパクSのような敏感な凝固評価分析、およびこのカテゴリ内にある他の評価分析の場合には、分析のためにサンプルを分析装置に与える前に一定の凝固サンプルを2回以上遠心分離することが必要な場合がある。したがって、その遠心分離プロトコルは、特殊なオーダーの評価分析に応じて種々のサンプル流体で異なる可能性がある。
【0029】
前述したように、本発明によれば、化学および凝固のための遠心分離プロトコルが互いに合致しない場合、たとえば化学アナライザ32または凝固アナライザ38によって処理しようとするサンプルは、遠心分離機24によって同時に遠心分離され得ないことになる。
【0030】
容器20内のサンプル・バッチをベルト24によって遠心分離機24に移送したとき、ロボット装置26、28は、容器を遠心分離機バケット・インサート内に置き、このインサートを遠心分離機24内に置く。最新定義の「凝固遠心分離プロトコル」は、コンピュータ15に保存され、容器20が処理されている間に操作者によって要求される作業プロトコルの変化の原因となるどのような潜在的なエラーをも排除することになる。同様に、遠心分離バッチが開始したときにはいつでも、手動で維持されるかまたはコンピュータ15内に自動的に記録される「プロセス・ログ」は、化学プロトコルまたは凝固プロトコルが使用されているかどうかを示しているエントリを含むことになる。化学、凝固遠心分離条件が同一である場合には、この「遠心分離パラメータ・セット」ログ・エントリは省略してもよい。
【0031】
本発明のより詳細な例証として、ここで必要な化学、凝固遠心分離プロトコルが異なっている例を考える。入力ラック18は、装填/取り出しロボット・ステーション16に押し込まれたとき、順番に待ち行列に入れられる。処理しようとする第1のラック18は、化学遠心分離バッチまたは凝固遠心分離バッチを開始することになるかどうかをその中味に基づいて確定する。操作者は、化学サンプル容器20のみまたは凝固サンプル容器20のみを備えた各ラック18のみを装填して全体の処理効率を改善する。以下の処理工程が、コンピュータ15により実現され、制御される。
【0032】
1.システム10はアイドルにある(作業セル10上にラック18がない)。
2.操作者は、容器20のいくつかのラック18を装填/取り出しロボット・ステーション16内の動的レーンに挿入する。
3.ラックIDが読まれ、ラック18が処理のための待ち行列に入れられる。
4.入力ラック18から取り出された第1のコンテナ20が識別されて化学サンプルとして分類される。
5.第1のラック18は化学遠心分離バッチに属することになる。
6.引き続いての容器20がラック18から取り出され、遠心分離機24に送られる。
7.第1のラック18が空になったとき、次の待ち行列に入れられた入力ラック18が取り出される。
i.前記次の待ち行列の入力ラック18から取り出された第1のコンテナ20が化学サンプルでない場合(すなわち、すべての依頼された検査が凝固検査であると識別された場合)、容器20はラック18に戻され、故にラック18は凝固遠心分離バッチに属することになる。
ii.前記次の待ち行列の入力ラック18から取り出された第1のコンテナ20が化学サンプルである場合、それはコンベヤ・トラック14上に置かれ、遠心分離機24に送達され、次いでそのラック18からの連続した各容器20が同様に処理される。
8.すべての化学容器20が待ち行列にある入力ラック18から取り出されたときまたは遠心分離機バケットが満たされたとき、遠心分離バッチが回転させられる。
9.遠心分離バッチが開始する毎に、装填/取り出しロボット・ステーション16は、コンピュータ15により制御されて最も古い待ち行列の入力ラック18に移り、新しい遠心分離バッチを調製する。
i.凝固サンプルを入れたラック18が先に検査を受けていた場合、このラック18が装填されて凝固遠心分離バッチを形成する。
ii.ラック18または容器20が先に検査を受けておらず、バイパスされていなかった場合、次の遠心分離バッチは、処理のためにピックアップされた次の待ち行列の入力容器20により決定されることになる。
【0033】
本発明の上記の具体例に従えば、この順序で装填/取り出しロボット・ステーション16に挿入された7つのラック18を含む例の結果は次の通りである。
1)48の化学サンプルを有するラック1
2)36の凝固サンプルを有するラック2
3)48の化学サンプルを有するラック3
4)48の化学サンプルを有するラック4
5)48の凝固サンプルを有するラック5
6)30の化学サンプルを有するラック6
7)10の凝固サンプルを有するラック7
【0034】
本発明によれば、システム10は以下の通りに作動することになる。
1)遠心分離バッチ1
80の化学サンプル
−ラック1からの48
−ラック2(凝固サンプル)からの00
−ラック3からの32
2)遠心分離バッチ2
80の凝固サンプル
−ラック2からの36
−ラック3(化学サンプル)からの00
−ラック4(化学サンプル)からの00
−ラック5からの44
3)遠心分離バッチ3
80の化学サンプル
−ラック3からの16
−ラック4からの48
−ラック5(凝固サンプル)からの00
−ラック6からの18
4)遠心分離バッチ4
14の凝固サンプル
−ラック5からの04
−ラック6(凝固サンプル)からの00
−ラック7からの10
5)遠心分離バッチ5
12の化学サンプル
−ラック6からの12
【0035】
操作者が動的入力レーン18に置かれた単一のラック18内で化学容器、凝固容器20を混ぜた場合、ラック所属に合致しない(化学/凝固)としてラック18に戻されるいずれの容器20も後に処理されることになる。上記の例において、2つの化学容器20がラック5の容器20とともにその中に混ぜられた場合、遠心分離バッチ結果は以下の通りに変わることになる。
【0036】
代わりの工程4)遠心分離バッチ4
12の凝固サンプル
−ラック5からの02
−ラック5内の残っている02サンプルは化学サンプルである
−ラック6(化学サンプル)からの00
−ラック7からの10
代わりの工程5)遠心分離バッチ5
14の化学サンプル
−ラック5からの02
−ラック6からの12
【0037】
装填/取り出しロボット・ステーション16内に優先入力(Priority Input)の特徴がある場合、本発明は同じように作動する。STATラック18が挿入されるとき、ロボット21は正規の入力ラック18からの容器20の処理を中断することになる。STATサンプルが最新の遠心分離バッチに合致する場合、それは遠心分離機24に送られる。合致しない場合には、それは、次の利用できる遠心分離バッチで処理するために優先入力STATラック18に戻されることになる。化学、凝固容器20の両方が次の遠心分離バッチのための優先入力ラック内で待機することが可能である。この場合、優先入力ラック内の最も古いチューブが、次に開始する遠心分離バッチを確定することになる。
【0038】
当業者であれば、本発明が広範囲にわたる有用性および用途に適用可能であることは容易に理解できよう。本明細書に開示したもの以外の本発明の多くの実施形態および適合、ならびに多くの変更、修正および均等な配置が、本発明の本質または範囲から逸脱することなく本発明およびその前記の説明から明らかであり、またそれらによって合理的に示唆されている。たとえば、コンピュータ15の機能は、本発明の本質または範囲から逸脱することなく、独立して作動可能な装置16、24、32、38、42の間で割り当てることも可能であり、例示の遠心分離条件を変えることも可能であり、作業セル10などのレイアウトを変えることもできる。遠心分離プロトコルによって作業セル10に接続していない遠くに離れたアナライザ43でサンプルを処理し、作業セル10からそれを取り出し、遠くに離れたアナライザ43で分析するということも本発明では想定される。さらに、遠心分離要件を、特定の評価分析分類を可能にする検査オーダーを持たないサンプル用とすることも本発明では想定される。
【0039】
したがって、本発明を特定の実施形態に関連して詳細に本明細書で説明してきたが、当然ながらこの開示は、本発明の実例、例示にすぎず、単に本発明の十分かつ可能にする開示を提供するために行ったにすぎない。前述の開示が、本発明を限定したり、または他のあらゆるこのような実施形態、適合、変更、修正、均等配置を排除することを意図したり、解釈されるべきではなく、本発明は本明細書に添付した特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を有利に使用できるいくつかの化学分析前処理装置と協働して制御されるコンベヤを含む自動サンプル取り扱いシステムの簡略化した概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つまたはそれ以上のアナライザおよび第1遠心分離プロトコルによって作動する少なくとも1つの遠心分離機をサンプル入力ステーションに接続するサンプル・コンベヤを有する自動臨床サンプル作業セルを操作する方法であって、実施しようとする検査および関連した遠心分離要件に従って入力ステーションでサンプルを分類すること;第1遠心分離プロトコルと同じ遠心分離要件を有するサンプルのみを遠心分離機に移動すること;および第1遠心分離プロトコルに従って遠心分離機によってサンプルを遠心分離することによる方法。
【請求項2】
さらに、第1プロトコルに合致しない第2プロトコルに従って遠心分離要件を有するサンプルを入力ステーションに保持すること;遠心分離作業を第2プロトコルに切り替えること;保持されたサンプルを遠心分離機に移送すること;および第2プロトコルに従って遠心分離機によってサンプルを遠心分離することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1遠心分離プロトコルが化学アナライザで処理しようするサンプル用である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第2遠心分離プロトコルが凝固アナライザで処理しようとするサンプル用である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
第1、第2の遠心分離プロトコルが同一である請求項2記載の方法であって、該方法がコンベヤ上にすべてのサンプルを置くこと;および遠心分離機によってすべてのサンプルを遠心分離することを含む方法。
【請求項6】
さらに、実施しようとする検査を実施するように適合されたアナライザにサンプルを送達するためにコンベヤを作動させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
2つまたはそれ以上のアナライザおよび第1遠心分離プロトコルで作動する2つまたはそれ以上の遠心分離機をサンプル入力ステーションに接続するサンプル・コンベヤを有する自動臨床サンプル作業セルを操作する方法であって、実施しようとする検査および関連した遠心分離要件に従ってサンプルを入力ステーションで分類すること;第1遠心分離プロトコルと同じ遠心分離要件を有するサンプルのみを遠心分離機のうちいずれか1つに移送すること;および第1遠心分離プロトコルに従って遠心分離機によって、サンプルを遠心分離することによる方法。
【請求項8】
さらに、第1プロトコルと合致しない第2プロトコルに従う遠心分離要件を有するサンプルを入力ステーションに保持すること;1つの遠心分離機の遠心分離作業を第2プロトコルに切り替えること;保持されたサンプルを上記1つの遠心分離機に移送すること;および第2プロトコルに従って上記1つの遠心分離機によって、サンプルを遠心分離することを包含する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
2つまたはそれ以上のアナライザ、第1遠心分離プロトコルによって作動する第1遠心分離機および第2プロトコルによって作動する第2遠心分離機をサンプル入力ステーションに接続するサンプル・コンベヤを有する自動臨床サンプル作業セルを操作する方法であって、実施しようとする検査および関連した遠心分離要件に従ってサンプルを入力ステーションで分類すること;第1遠心分離プロトコルと同じ遠心分離要件を有するサンプルのみを第1遠心分離機に移送すること;第2遠心分離プロトコルと同じ遠心分離要件を有するサンプルのみを第2遠心分離機に移送すること;第1遠心分離プロトコルに従って第1遠心分離機によって、サンプルを遠心分離すること;および第2遠心分離プロトコルに従って第2遠心分離機によってサンプルを遠心分離することによる方法。
【請求項10】
サンプル容器装填・取り出しステーションと、第1および第2の遠心分離プロトコルを有する少なくとも1つの遠心分離機と、少なくとも2つのアナライザと、上記サンプル容器装填・取り出しステーションから上記遠心分離機へ、そして上記遠心分離機から上記アナライザへサンプル容器を移送するように適合されたコンベヤと、上記サンプル容器内に収容されたサンプルについて実施しようとする検査を決定する識別手段と、上記サンプル容器内に収容されたサンプルについて実施しようとする検査のための遠心分離要件を決定する手段と、遠心分離要件が上記第1または第2の遠心分離プロトコルに合致するかどうかを決定する制御手段と、遠心分離機を上記第1または第2の遠心分離プロトコルに合致するように上記第1および第2の遠心分離プロトコル間で変換する手段とを含む、自動臨床サンプル作業セル。
【請求項11】
サンプル容器装填・取り出しステーションが、第1または第2の遠心分離プロトコルと合致するように上記第1および第2の遠心分離プロトコル間で遠心分離機が変換されるまで、サンプル容器を保持するように適合された、請求項10記載の作業セル。
【請求項12】
サンプル容器装填・取り出しステーションと、第1遠心分離プロトコルを有する第1遠心分離機と、第2遠心分離プロトコルを有する第2遠心分離機と、少なくとも2つのアナライザと、上記サンプル容器装填・取り出しステーションから上記遠心分離機へ、そして上記遠心分離機から上記アナライザへサンプル容器を移送するように適合されたコンベヤと、上記サンプル容器内に収容されたサンプルについて実施しようとする検査を決定する識別手段と、上記サンプル容器内に収容されたサンプルについて実施しようとする検査のための第1および第2の遠心分離要件を決定する手段と、第1遠心分離要件を有するサンプルを第1遠心分離機に移送し、第2遠心分離要件を有するサンプルを第2遠心分離機に移送する制御手段とを含む、自動臨床サンプル作業セル。
【請求項13】
遠心分離要件が、処理されているサンプル流体に基づくサンプルについての要件である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
遠心分離要件が、サンプルについて実施しようとする評価分析に基づくサンプルについての要件である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
遠心分離要件が、作業セルに接続されていないアナライザで処理しようとするサンプルについての要件である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
遠心分離要件が、使用者定義のアナライザで処理しようとするサンプルについての要件である、請求項1記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−515140(P2009−515140A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522814(P2008−522814)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/026781
【国際公開番号】WO2007/018897
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508147326)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】