説明

極低蛋白パン及びその製造方法

【課題】 小麦粉パンの1/10以下の蛋白含有量とした極低蛋白パンを提供する。
【解決手段】パン生地として、低蛋白米粉又は低蛋白米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、少なくとも粉生地量に対して膜形成材として1.5%重量以上の増粘多糖類を加え、また硬化抑制材として、適宜量のα化澱粉(α化低蛋白米粉又は粳米α粉)と、βアミラーゼを添加してなる生地を使用して、常法通り製パンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低蛋白パン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腎臓病患者用の食品として低蛋白食品が提供されており、その製造手段として従前より種々提案されている。
【0003】
例えばパン用小麦粉に澱粉(小麦粉澱粉、馬鈴薯澱粉)を配合して、その含有蛋白量を6.5〜7.5%とした低蛋白パン用穀粉組成物を主原料とし、常法手段で製パンしたり(特許文献1)また、低蛋白小麦粉を55〜80重量%の割合でパン用小麦粉に配合し、小麦粉組成物100重量部に対し3〜30重量部の糖質、5〜30重量部の油脂を配合し、0.4〜1.2重量部の食塩を配合することを特徴とする低塩低蛋白パンの製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
またパンの主原料である小麦粉の50%以上を澱粉に置換し、増粘多糖類と食物繊維とを併用添加することにより、発酵及び焼成中に発生するガスを生地中に保持させて、ソフトな食感を有する製パン手段が提案されており(特許文献3)、更に小麦粉25〜50質量部、α化澱粉を除く澱粉45〜70質量部及びα化澱粉5〜15質量部を含むことで低蛋白パンを製造する手段が提案されている(特許文献4)。また小麦澱粉を混合するに際して、大粒澱粉を採用することも提案されている(特許文献5)。
【0005】
更に米粉を用いてパンを製造する手段も知られている(特許文献6)。しかし前記のパン生地は、気泡が内在しふっくらとしたパンにするために活性グルテンを添加しており、低蛋白パンとはならない。
【0006】
前記の低蛋白パンは、パン生地となる小麦粉の一部を、小麦澱粉や馬鈴薯澱粉に置き換えることを基本手段としている。しかし澱粉の添加はパンのうま味を損ない、砂糖や油脂などの調整食材を添加しても、充分な改善はなされない。そこで本発明者は、澱粉を使用したパンより、米粉を使用したパンの方がパンのうま味を醸し出すことに着目し、小麦粉に替えて低蛋白米パウダーを使用する低蛋白パンの製造方法を提案した(特許文献7)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−7448号公報。
【特許文献2】特開平9−168362号公報。
【特許文献3】特開平11−155467号公報。
【特許文献4】特開2001−224300号公報。
【特許文献5】特開2002−169号公報。
【特許文献6】特開平11−132706号公報。
【特許文献6】特開平11−132706号公報。
【特許文献7】特開2004−290160号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の低蛋白米粉を使用する低蛋白パンは確かに食味の良いパンを提供できるか、小麦粉の一部を低蛋白米粉に置き替えるので、通常の小麦粉パンに比較して蛋白量を1/3以下とした場合には、グルテンによる網状構造の形成(発酵ガスを包む膜の形成)が困難で、パンの風味を得ることができない。
【0009】
そこで本発明は、所定量の増粘多糖類を使用することでグルテンに代わる生地の膜形成が可能であることを見出し、小麦粉を全く使用しない極低蛋白パンの製造手段を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る極低蛋白パンの製造方法は、パン生地として、低蛋白米粉又は低蛋白米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、少なくとも粉生地量に対して膜形成材として1.5%重量以上の増粘多糖類を加えた生地で、常法通りの製パンを行ってなることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記生地において、硬化抑制材として、適宜量のα化澱粉(α化低蛋白米粉又は粳米α粉)と、βアミラーゼを添加してなることを特徴とするものである。
【0012】
低蛋白米粉は、米を乳酸発酵処理や酵素処理、或いは乳酸発酵処理及び酵素処理を併用して低蛋白化し、低蛋白化米を粉化処理して粉状としたものであり、この低蛋白米粉や、低蛋白米粉と小麦澱粉を生地の主成分とし、増粘多糖類によって膜形成を行って発酵ガスを内在させることで、常法通りの製パンで、低蛋白を実現したパンを提供できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり本発明は、パン生地として、低蛋白米粉又は低蛋白米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、少なくとも粉生地量に対して膜形成材として1.5%重量以上の増粘多糖類を加えた生地で製パンしたもので、蛋白量を小麦粉パンの1/10以下まで低減させ、且つ食味の良いパンを提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について説明する。本発明の第一実施形態は、パン生地の主成分を低蛋白米粉としたものである。
【0015】
低蛋白米粉は、乳酸発酵処理や酵素処理或いは両者を併用して低蛋白化した米を粉化処理したものである。具体的には、洗米を乳酸発酵させると、発酵過程で蛋白質の変性が認められ、低蛋白化する。また、洗米を蛋白分解酵素液に所定環境下で浸漬すると、米組織内の蛋白質が分解して低蛋白化する。
【0016】
これらの低蛋白処理を行った米粉に図1に示した比率でα化低蛋白米粉(前記低蛋白米粉を一旦熱処理してアルファ化し、乾燥させたもの)を加え、更に図1で示した添加物を、粉状生地100に対する所定重量比率で添加混合して生地とするものである。
【0017】
増粘多糖類は、発酵ガスを内在させる膜生成物であり、α化低蛋白米粉並びにβアミラーゼは、パンの硬化抑制のために添加し、また必要とする加水量が多いため、油脂の分離を抑え、パンのボリュームを良くし、焼成後にも優れたパン組織を維持するために、親水性の高い乳化剤を添加する。
【0018】
そして全材料をミキシング(ビータM10分)して捏ね上げ(捏上温度27℃)、1時間程度発酵させる(28℃、湿度75%の雰囲気下で行う)。
【0019】
発酵後にガス抜き(ミキシング2分)を行い、所定の大きさに分割型詰め(比容積2.0)し、ホイロ工程(35℃、湿度80%雰囲気下で50分放置)後、焼成(上220℃、下220から240℃、45分)する。
【0020】
製出されたパンは、焼き色が良く外観は通常のパンと変わらず、しっとり感がある独特の風味を有する美味なパンにできあがった。
【0021】
前記の製出されたパンの蛋白含有量は、0.54%であった。五訂食品成分表に記載されている市販食パンの蛋白含有量9.3%に比較して1/10以下となり、しかも小麦を全く使用しないものであるから、小麦アレルギーの患者にも対応できるパンを提供できたものである。
【0022】
また図2の表は、本発明の第二実施形態の材料表であり、低蛋白米粉量の半分を小麦澱粉に置き換え、小麦風味を備えた極低蛋白パンを製造するものである。
【0023】
その製造手順を説明すると、全材料をミキシング(ビータM10分)して捏ね上げ(捏上温度27℃)、1時間程度発酵させる(28℃、湿度75%の雰囲気下で行う)。
【0024】
発酵後にガス抜き(ミキシング2分)を行い、所定の大きさに分割型詰め(比容積2.0)し、ホイロ工程(35℃、湿度80%雰囲気下で50分放置)後、焼成(上220℃、下当初240〜250℃で後220℃、45分)する。
【0025】
製出されたパンは、前記第一実施形態と同様に、焼き色が良く外観は通常のパンと変わらず、しっとり感がある独特の小麦風味を有する美味なパンにできあがった。
【0026】
前記の第二実施形態の製出されたパンの蛋白含有量は、0.69%であった。
【0027】
本発明は前記各実施形態に限定されず、例えば使用する澱粉やα化澱粉の種別は任意であるし、またその添加比率も、第二実施形態に示した比率以下でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態の使用材料表。
【図2】本発明の第二実施形態の使用材料表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地として、低蛋白米粉又は低蛋白米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、少なくとも粉生地量に対して膜形成材として1.5%重量以上の増粘多糖類を加えた生地で、常法通りの製パンを行ってなることを特徴とする極低蛋白パンの製造方法。
【請求項2】
生地に、硬化抑制材として、適宜量のα化澱粉(α化低蛋白米粉又は粳米α粉)と、βアミラーゼを添加してなる請求項1記載の極低蛋白パンの製造方法。
【請求項3】
低蛋白米粉又は低蛋白米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、少なくとも粉生地量に対して膜形成材として1.5%重量以上の増粘多糖類を加えた生地で製パンしたことを特徴とする極低蛋白パン。
【請求項4】
生地に、硬化抑制材として、適宜量のα化澱粉(α化低蛋白米粉又は粳米α粉)と、βアミラーゼを添加してなる請求項3記載の極低蛋白パン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−158298(P2006−158298A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354799(P2004−354799)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(595093049)株式会社バイオテックジャパン (15)
【Fターム(参考)】