極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造
【課題】シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造を提供する。
【解決手段】中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、露出させたシールド導体4を極細同軸線1の長手方向に沿って切断するステップS2と、切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含み、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、切断箇所9において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断するものである。
【解決手段】中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、露出させたシールド導体4を極細同軸線1の長手方向に沿って切断するステップS2と、切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含み、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、切断箇所9において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンの本体と液晶ディスプレイとを繋ぐ配線や医療用超音波診断装置の本体と探触子とを繋ぐ配線など、高周波信号、高速信号を伝送して且つ可撓性が大きいケーブルとして、極細同軸線がある。
【0003】
極細同軸線は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットが積層されたものである。極細同軸線を機器に直接接続したり、コネクタに取り付けたりする際には、端末部分の中心導体とシールド導体を露出させる端末処理が施される。
【0004】
従来の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を図16により説明する。
【0005】
図16(a)に示されるように、複数本の極細同軸線1を所望の整列ピッチで整列させ、ケーブルラミネート用の粘着テープ6でその整列状態を固定する。
【0006】
図16(b)に示されるように、端末から所望の距離にある端末処理箇所にて、粘着テープ6と極細同軸線1のジャケット5にレーザ光を上下面から照射することにより粘着テープ6と極細同軸線1のジャケット5を切断し、この端末処理箇所から端末側にある粘着テープ6とジャケット5とを同時に端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までのシールド導体4が露出する。なお、切断とは、切り込みを入れることを言う。
【0007】
図16(c)に示されるように、図16(b)の端末処理箇所より端末に近い端末処理箇所にて、シールド導体4にレーザ光を上下面から照射することによりシールド導体4を切断し、この端末処理箇所から端末側にあるシールド導体4を端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までの内部絶縁体3が露出する。
【0008】
図16(d)に示されるように、図16(c)の端末処理箇所より端末に近い端末処理箇所にて、内部絶縁体3にレーザ光を上下面から照射することにより内部絶縁体3を切断し、この端末処理箇所から端末側にある内部絶縁体3を端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までの中心導体2が露出する。
【0009】
以上の工程を順に行うことにより、シールド導体4、内部絶縁体3、中心導体2がそれぞれ所望の長さで露出した状態となる。
【0010】
特許文献1では、複数のレーザ光を、光軸角度を変えて照射し、内部絶縁体3に巻かれているシールド導体4の全体に均一にレーザパワーが与えられるように工夫している。
【0011】
特許文献2では、複数箇所からなる端末処理箇所において、ジャケット5にレーザ光を表裏面から走査することにより、ジャケット5を切断してシールド導体4を露出させるステップと、露出させたシールド導体4にレーザ光を表裏面から走査することにより、シールド導体4のうち隣接する極細同軸線1、1同士の間隙に位置するシールド導体4は切断せずに、レーザ照射面に位置するシールド導体4を切断するステップと、を含む端末処理方法が記載されている。この方法により、シールド導体4を切断するときの内部絶縁体3へのダメージを軽減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−290013号公報
【特許文献2】特開2010−263698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1の端末処理方法では、複数並べた極細同軸線1をスライド機構によって左右方向にスライドさせながらレーザ光を照射する場合、図17に示すように、焦点深度がシールド導体4の中央部13(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、内部絶縁体3、シールド導体4が含まれる領域)の頂点位置から第1側部11(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域のうち一方の領域)、又は第2側部12(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域のうち他方の領域)までの深さ距離に満たないと、レーザ光の焦点が合う場所と合わない場所ができてしまい、レーザ光の強度にバラツキがでる。また、レーザ光を照射するための機構を構成する部品の数が多く、レーザ光の照射方向、照射強度の調整が難しい。
【0014】
そのため、レーザ光の強度がシールド導体4を切断するのに必要な強度に満たない部分ではシールド導体4の切断不良を引き起こし、レーザ光の強度が強すぎる部分では内部絶縁体3の損傷を引き起こす。
【0015】
また、複数の極細同軸線1が狭ピッチで並べられている場合、隣接する極細同軸線1、1同士の間隙に位置するシールド導体4においては、図18の一例に示すように、レーザ光8が全てのシールド導体4に行き届かず、切断不良となる場合がある。
【0016】
また、特許文献2の端末処理方法では、第1側部11、及び第2側部12にレーザ光8を照射しないように一度に処理するシールド導体4の本数を少なくした場合でも、極細同軸線1の円周上にレーザ光8を照射する限り、レーザ光8の強度にバラツキが生じ、シールド導体4の切断不良や内部絶縁体3の損傷を起こす可能性がある。
【0017】
そこで、本発明の目的は、前述した課題を解決し、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するために創案された本発明は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、前記極細同軸線の端末部分の前記ジャケットを切断して、前記シールド導体を露出させるステップと、露出させた前記シールド導体を前記極細同軸線の長手方向に沿って切断するステップと、切断した前記シールド導体を前記極細同軸線の端末側にストリップ除去して、前記中心導体を露出させるステップと、を含み、前記シールド導体は、前記極細同軸線の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所を有し、前記切断箇所において、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断する極細同軸線の端末処理方法である。
【0019】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記シールド導体のみが含まれる領域であると良い。
【0020】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記内部絶縁体、前記シールド導体とが少なくとも含まれる領域であると良い。
【0021】
また、本発明は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理構造において、前記極細同軸線の端末部分の前記中心導体と前記シールド導体が露出され、前記シールド導体は、前記極細同軸線の長手方向に沿って、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さだけ連続的に切断されている極細同軸線の端末処理構造である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(e)は、本発明の極細同軸線の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を示す上面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるシールド導体切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図3】(a),(b)は、図2のA−A’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図4】図2におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図6】(a),(b)は、図5のB−B’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図7】図5におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図9】(a),(b)は、図8のC−C’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図10】図8におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図12】(a),(b)は、図11のD−D’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図13】図11におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図15】極細同軸線の端末処理後に、シールド導体の切断部にはんだ材を塗布した状態を示す上面図である。
【図16】(a)〜(d)は、従来の極細同軸線の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を示す上面図である。
【図17】極細同軸線の横断面を示す断面図である。
【図18】従来の極細同軸線の端末処理方法による課題を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1(a)〜(e)に示されるように、第1の実施の形態に係る極細同軸線の端末処理方法は、中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線(例えば、銅線)からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線1の端末を処理する方法である。
【0026】
具体的には、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、ステップS1で露出させたシールド導体4に極細同軸線1の長手方向に沿ってレーザ光を走査することにより、シールド導体4を切断するステップS2と、ステップS2で切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含む。
【0027】
図2に示されるように、図1(c)におけるシールド導体4の切断箇所となるレーザ光8の照射箇所7(レーザ光8を走査するライン)は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4にあって、レーザ光8の走査方向は、各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/2)Pの長さとなる。なお、第1側部11、及び第2側部12は、各極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上にシールド導体のみが含まれる領域である。
【0028】
図3(a)に示されるように、図2のA−A’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4にあって、図3(b)に示されるように、レーザ光8の照射によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、(1/2)Pの長さに亘り連続的に極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0029】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/2)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を180°取り囲んで巻かれている。
【0030】
すなわち、(1/2)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置する箇所を経由しており、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4を少なくとも(1/2)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を第1側部11、及び第2側部12のどちらかの箇所において、図4に示されるように切断することができる。
【0031】
なお、図5に示されるように、レーザ光8の照射箇所7が各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4にある場合、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して1Pの長さとなる。
【0032】
図6(a)に示されるように、図5のB−B’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4にあって、図6(b)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、少なくとも1Pの長さに亘り連続的に極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0033】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して1P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を360°取り囲んで巻かれている。
【0034】
すなわち、1P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置する箇所を経由しており、第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、1Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を、図7に示されるように切断することができる。
【0035】
なお、照射箇所7、切断箇所9は、シールド導体4の第2側部12でも良く、同様の方法で実施することができる。
【0036】
すなわち、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、その切断箇所において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断する。
【0037】
第1の実施の形態によれば、シールド導体4を切断する強力なレーザ光8の切断軸上、すなわち、光軸上に内部絶縁体3及び中心導体2がなく、レーザ光8がシールド導体4を切断した後に、内部絶縁体3及び中心導体2まで到達することはない。
【0038】
また、第1の実施の形態では、レーザ光8をジャケット5やシールド導体4の切断に用いたが、その切断方法はレーザ光8によるものに限られず、例えば、切削刃による加工法を用いても良い。
【0039】
ここで、端末処理手順を時系列に沿って詳しく説明する。
【0040】
図1(a)に示されるように、先ず、複数本の極細同軸線1を所望の整列ピッチで整列させフラットケーブル状にする。このフラットケーブル状の複数本の極細同軸線1にケーブルラミネート用の粘着テープ6によるラミネートを行う。これにより、複数本の極細同軸線1は整列状態のまま固定される。極細同軸線1は、例えば、外径が0.2mmのAWG46ケーブルであり、シールド導体4はそれぞれ直径0.02mmの20本の導線を横巻きして構成している。
【0041】
その後、図1(b)に示されるように、波長10.6μmのCO2レーザを用いて、ポリマ材料からなるジャケット5にレーザ光8を照射する。レーザ光8が照射されると粘着テープ6とジャケット5は、レーザ光8のエネルギーを吸収し、高温になると共に燃焼、蒸発し、粘着テープ6とジャケット5に穴が生じる。CO2レーザは、シールド導体4を構成している導線(金属線)の表面では反射されるため、シールド導体4や内部絶縁体3にダメージを与えない。
【0042】
CO2レーザは、極細同軸線1の上下面それぞれから照射することにより、極細同軸線1の全周分のジャケット5を切断する。
【0043】
このようにして、ジャケット5にレーザ光8を照射することにより、ジャケット5を切断してシールド導体4を露出させ、シールド導体露出部を形成する。この図1(b)の工程はステップS1である。
【0044】
なお、ジャケット5をダイシングソーなどの他の加工法により切断してシールド導体4を露出させても良い。
【0045】
しかる後、図1(c)に示されるように、極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4に、極細同軸線1の長手方向に沿って、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/2)Pの長さでレーザ光8を走査することにより、レーザ光8が照射された箇所のシールド導体4を切断する。このとき、レーザは、波長1.06μmのYVO4レーザを用いた。
【0046】
このとき、シールド導体4の切断軸となるレーザ光8の光軸上に、内部絶縁体3や中心導体2がないため、シールド導体4が十分に切断できる程度のレーザ強度の強い条件を選定することができる。この図1(c)の工程がステップS2である。
【0047】
従来の極細同軸線の端末処理方法では、上半分に位置するシールド導体4の全てと、下半分に位置するシールド導体4の全てを、レーザ光8を上下面から照射することにより切断していた。
【0048】
そのため、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4を切断できるだけの強力なレーザ条件を用いる必要があり、その条件を用いて中央部13のシールド導体4を切断していたため、中央部13において、レーザ光8が内部絶縁体3や中心導体2まで到達し、内部絶縁体3や中心導体2を損傷させていた。
【0049】
これに対して、第1の実施の形態では、強度の強いレーザ条件を用いても、レーザ光8の光軸上に内部絶縁体3や中心導体2がなく、レーザ光8が内部絶縁体3や中心導体2を損傷することがない。
【0050】
更に、第1の実施の形態では、シールド導体4を切断するためのレーザ光8を上下面から照射する必要がなく、例えば、上面からの照射のみで、全てのシールド導体4の切断が可能である。
【0051】
その後、図1(d)に示されるように、切断されたシールド導体4をストリップ除去し、内部絶縁体3を露出させる。この工程がステップS3である。
【0052】
最後に、図1(e)に示されるように、波長1.06μmのCO2レーザを用いて内部絶縁体3にレーザ光8を照射することにより、内部絶縁体3を切断して端末側に引き抜き、中心導体露出部を形成する。
【0053】
このように、第1の実施の形態によれば、中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、露出させたシールド導体4を極細同軸線1の長手方向に沿って切断するステップS2と、切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含み、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、切断箇所9において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断するため、シールド導体4を切断するときに内部絶縁体3への損傷を軽減することができる。
【0054】
なお、ステップS2において、極細同軸線1の第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置するシールド導体4に、極細同軸線1の長手方向に、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも1Pの長さで、レーザ光8を走査することにより、レーザ光8が照射された箇所のシールド導体4を切断する場合でも、同様の効果が得られる。
【0055】
すなわち、極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域、すなわち、第1側部11及び第2側部12のうち少なくとも一方を切断箇所9とする場合でも、同様の効果が得られる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0057】
第1の実施の形態と同様に、ステップS2において、極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4を、極細同軸線1の上下面から、極細同軸線1の長手方向に、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/2)Pの長さでレーザ光8を走査することにより、内部絶縁体3及び中心導体2の損傷をなくすことができる。
【0058】
図8に示されるように、図1(c)におけるシールド導体4の切断箇所となるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面にあって、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/2)Pの長さとなる。なお、中央部13は、各極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上に内部絶縁体とシールド導体とが少なくとも含まれる領域である。
【0059】
図9(a)に示されるように、図8のC−C’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面にあって、図9(b)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、(1/2)Pの長さだけ連続的に極細同軸線1の中央部13の上面、及び下面に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0060】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/2)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を180°取り囲んで巻かれている。
【0061】
すなわち、(1/2)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の中央部13の上面、及び下面に位置する箇所を経由しており、中央部13の上面、及び下面に位置するシールド導体4を少なくとも(1/2)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を中央部13の上面、及び下面のどちらかの箇所において、図10に示されるように切断することができる。
【0062】
第2の実施の形態によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0063】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、従来の極細同軸線の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0064】
また、第1の実施の形態と同様に、ステップS2において、極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4を、極細同軸線1の片面から、極細同軸線1の長手方向に沿って、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも1Pの長さで、レーザ光8を走査することにより、内部絶縁体3及び中心導体2の損傷をなくすことができる。
【0065】
図11に示されるように、図1(c)におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面にあって、図12(a)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、1Pの長さを連続的に極細同軸線1の中央部13の上面に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0066】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して1P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を360°取り囲んで巻かれている。
【0067】
すなわち、1P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の中央部13の上面、又は下面のいずれか一方に位置する箇所を経由しており、中央部13の上面、又は下面のいずれか一方に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、1Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を、中央部13の上面、又は下面において、図13に示されるように切断することができる。
【0068】
なお、照射箇所7、切断箇所9は、シールド導体4の中央部13の下面でも良く、同様の方法で実施することができる。
【0069】
この形態によっても、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0070】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、従来の極細同軸線の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0071】
次に、本発明の第3の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0072】
図14に示されるように、図1(c)におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所にあって、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/3)Pの長さとなる。
【0073】
極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/3)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を120°取り囲んで巻かれている。
【0074】
すなわち、(1/3)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所に位置する箇所を経由しており、上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、少なくとも(1/3)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を切断することができる。
【0075】
第3の実施の形態によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。具体的には、第2の実施の形態で用いたレーザ条件と同じものを用いることができ、内部絶縁体3や中心導体2への損傷が発生しない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0076】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、特許文献2の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0077】
更に、端末処理された極細同軸線1は、露出したシールド導体4にはんだ材10を塗布し、グランドバーを接続することで接地を行う。はんだ材10は、シールド導体4に塗布される際、約220℃の高温となるため、従来の端末処理方法によって端末処理された極細同軸線1のシールド導体4にはんだ材10を塗布すると、はんだ材10が内部絶縁体3に触れて内部絶縁体3を損傷する虞がある。
【0078】
これに対し、第1〜3の実施の形態によって端末処理された極細同軸線1は、図15に示されるように、切断箇所9のシールド導体4の巻き付けを戻し、隣接する極細同軸線1との間にシールド導体4が配置されるようにした後、シールド導体4にはんだ材10を塗布することで、内部絶縁体3上にはんだ材10が落ちることがない。そのため、はんだ材10による内部絶縁体3の損傷を防ぐことができる。
【0079】
以上要するに、本発明によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8の光軸を損傷の虞のある内部絶縁体3及び中心導体2から外したり、たとえレーザ光8の光軸上に内部絶縁体3及び中心導体2が存在したとしても、レーザ光8を内部絶縁体3や中心導体2が損傷しない強度まで低減することができる。
【0080】
これにより、とりわけアレイ化した複数本の極細同軸線1の端末を一斉に加工する際に、内部絶縁体3と中心導体2に対する加工工程に起因したダメージを低減することが可能となり、生産性と信頼性が向上する。
【0081】
なお、シールド導体4の切断に用いるレーザの種類は、特に限定されず、例えば、波長1.06μmのYVO4レーザに限られず、YAGレーザを用いても良い。また、これらのレーザをLBO結晶などの非線形結晶に通すことで、第2高調波である波長532nmのレーザを発生させ、用いても良い。銅を加工するときの銅表面の光吸収率は、波長1.06μmでは2%と低く、波長532nmでは33%と高いため、波長532nmのレーザの方が効率的な加工が行える。
【符号の説明】
【0082】
1 極細同軸線
2 中心導体
3 内部絶縁体
4 シールド導体
5 ジャケット
6 粘着テープ
7 照射箇所
8 レーザ光
9 切断箇所
10 はんだ材
11 第1側部
12 第2側部
13 中央部
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンの本体と液晶ディスプレイとを繋ぐ配線や医療用超音波診断装置の本体と探触子とを繋ぐ配線など、高周波信号、高速信号を伝送して且つ可撓性が大きいケーブルとして、極細同軸線がある。
【0003】
極細同軸線は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットが積層されたものである。極細同軸線を機器に直接接続したり、コネクタに取り付けたりする際には、端末部分の中心導体とシールド導体を露出させる端末処理が施される。
【0004】
従来の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を図16により説明する。
【0005】
図16(a)に示されるように、複数本の極細同軸線1を所望の整列ピッチで整列させ、ケーブルラミネート用の粘着テープ6でその整列状態を固定する。
【0006】
図16(b)に示されるように、端末から所望の距離にある端末処理箇所にて、粘着テープ6と極細同軸線1のジャケット5にレーザ光を上下面から照射することにより粘着テープ6と極細同軸線1のジャケット5を切断し、この端末処理箇所から端末側にある粘着テープ6とジャケット5とを同時に端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までのシールド導体4が露出する。なお、切断とは、切り込みを入れることを言う。
【0007】
図16(c)に示されるように、図16(b)の端末処理箇所より端末に近い端末処理箇所にて、シールド導体4にレーザ光を上下面から照射することによりシールド導体4を切断し、この端末処理箇所から端末側にあるシールド導体4を端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までの内部絶縁体3が露出する。
【0008】
図16(d)に示されるように、図16(c)の端末処理箇所より端末に近い端末処理箇所にて、内部絶縁体3にレーザ光を上下面から照射することにより内部絶縁体3を切断し、この端末処理箇所から端末側にある内部絶縁体3を端末方向に引き抜く。これにより、この端末処理箇所から端末までの中心導体2が露出する。
【0009】
以上の工程を順に行うことにより、シールド導体4、内部絶縁体3、中心導体2がそれぞれ所望の長さで露出した状態となる。
【0010】
特許文献1では、複数のレーザ光を、光軸角度を変えて照射し、内部絶縁体3に巻かれているシールド導体4の全体に均一にレーザパワーが与えられるように工夫している。
【0011】
特許文献2では、複数箇所からなる端末処理箇所において、ジャケット5にレーザ光を表裏面から走査することにより、ジャケット5を切断してシールド導体4を露出させるステップと、露出させたシールド導体4にレーザ光を表裏面から走査することにより、シールド導体4のうち隣接する極細同軸線1、1同士の間隙に位置するシールド導体4は切断せずに、レーザ照射面に位置するシールド導体4を切断するステップと、を含む端末処理方法が記載されている。この方法により、シールド導体4を切断するときの内部絶縁体3へのダメージを軽減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−290013号公報
【特許文献2】特開2010−263698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1の端末処理方法では、複数並べた極細同軸線1をスライド機構によって左右方向にスライドさせながらレーザ光を照射する場合、図17に示すように、焦点深度がシールド導体4の中央部13(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、内部絶縁体3、シールド導体4が含まれる領域)の頂点位置から第1側部11(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域のうち一方の領域)、又は第2側部12(極細同軸線1の長手方向に直交する光軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域のうち他方の領域)までの深さ距離に満たないと、レーザ光の焦点が合う場所と合わない場所ができてしまい、レーザ光の強度にバラツキがでる。また、レーザ光を照射するための機構を構成する部品の数が多く、レーザ光の照射方向、照射強度の調整が難しい。
【0014】
そのため、レーザ光の強度がシールド導体4を切断するのに必要な強度に満たない部分ではシールド導体4の切断不良を引き起こし、レーザ光の強度が強すぎる部分では内部絶縁体3の損傷を引き起こす。
【0015】
また、複数の極細同軸線1が狭ピッチで並べられている場合、隣接する極細同軸線1、1同士の間隙に位置するシールド導体4においては、図18の一例に示すように、レーザ光8が全てのシールド導体4に行き届かず、切断不良となる場合がある。
【0016】
また、特許文献2の端末処理方法では、第1側部11、及び第2側部12にレーザ光8を照射しないように一度に処理するシールド導体4の本数を少なくした場合でも、極細同軸線1の円周上にレーザ光8を照射する限り、レーザ光8の強度にバラツキが生じ、シールド導体4の切断不良や内部絶縁体3の損傷を起こす可能性がある。
【0017】
そこで、本発明の目的は、前述した課題を解決し、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するために創案された本発明は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、前記極細同軸線の端末部分の前記ジャケットを切断して、前記シールド導体を露出させるステップと、露出させた前記シールド導体を前記極細同軸線の長手方向に沿って切断するステップと、切断した前記シールド導体を前記極細同軸線の端末側にストリップ除去して、前記中心導体を露出させるステップと、を含み、前記シールド導体は、前記極細同軸線の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所を有し、前記切断箇所において、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断する極細同軸線の端末処理方法である。
【0019】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記シールド導体のみが含まれる領域であると良い。
【0020】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記内部絶縁体、前記シールド導体とが少なくとも含まれる領域であると良い。
【0021】
また、本発明は、中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理構造において、前記極細同軸線の端末部分の前記中心導体と前記シールド導体が露出され、前記シールド導体は、前記極細同軸線の長手方向に沿って、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さだけ連続的に切断されている極細同軸線の端末処理構造である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールド導体を切断するときに内部絶縁体への損傷を軽減する極細同軸線の端末処理方法及び端末処理構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(e)は、本発明の極細同軸線の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を示す上面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるシールド導体切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図3】(a),(b)は、図2のA−A’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図4】図2におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図6】(a),(b)は、図5のB−B’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図7】図5におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図9】(a),(b)は、図8のC−C’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図10】図8におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図12】(a),(b)は、図11のD−D’面におけるシールド導体切断面の詳細を示した断面図である。
【図13】図11におけるシールド導体切断後に、切断されたシールド導体をストリップ除去した後を示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態におけるシールド切断時にレーザ光が走査する箇所の詳細を示した斜視図である。
【図15】極細同軸線の端末処理後に、シールド導体の切断部にはんだ材を塗布した状態を示す上面図である。
【図16】(a)〜(d)は、従来の極細同軸線の端末処理方法による複数本の極細同軸線の端末処理の手順を示す上面図である。
【図17】極細同軸線の横断面を示す断面図である。
【図18】従来の極細同軸線の端末処理方法による課題を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1(a)〜(e)に示されるように、第1の実施の形態に係る極細同軸線の端末処理方法は、中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線(例えば、銅線)からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線1の端末を処理する方法である。
【0026】
具体的には、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、ステップS1で露出させたシールド導体4に極細同軸線1の長手方向に沿ってレーザ光を走査することにより、シールド導体4を切断するステップS2と、ステップS2で切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含む。
【0027】
図2に示されるように、図1(c)におけるシールド導体4の切断箇所となるレーザ光8の照射箇所7(レーザ光8を走査するライン)は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4にあって、レーザ光8の走査方向は、各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/2)Pの長さとなる。なお、第1側部11、及び第2側部12は、各極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上にシールド導体のみが含まれる領域である。
【0028】
図3(a)に示されるように、図2のA−A’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4にあって、図3(b)に示されるように、レーザ光8の照射によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、(1/2)Pの長さに亘り連続的に極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0029】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/2)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を180°取り囲んで巻かれている。
【0030】
すなわち、(1/2)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置する箇所を経由しており、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4を少なくとも(1/2)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を第1側部11、及び第2側部12のどちらかの箇所において、図4に示されるように切断することができる。
【0031】
なお、図5に示されるように、レーザ光8の照射箇所7が各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4にある場合、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して1Pの長さとなる。
【0032】
図6(a)に示されるように、図5のB−B’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4にあって、図6(b)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、少なくとも1Pの長さに亘り連続的に極細同軸線1の第1側部11に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0033】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して1P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を360°取り囲んで巻かれている。
【0034】
すなわち、1P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置する箇所を経由しており、第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、1Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を、図7に示されるように切断することができる。
【0035】
なお、照射箇所7、切断箇所9は、シールド導体4の第2側部12でも良く、同様の方法で実施することができる。
【0036】
すなわち、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、その切断箇所において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断する。
【0037】
第1の実施の形態によれば、シールド導体4を切断する強力なレーザ光8の切断軸上、すなわち、光軸上に内部絶縁体3及び中心導体2がなく、レーザ光8がシールド導体4を切断した後に、内部絶縁体3及び中心導体2まで到達することはない。
【0038】
また、第1の実施の形態では、レーザ光8をジャケット5やシールド導体4の切断に用いたが、その切断方法はレーザ光8によるものに限られず、例えば、切削刃による加工法を用いても良い。
【0039】
ここで、端末処理手順を時系列に沿って詳しく説明する。
【0040】
図1(a)に示されるように、先ず、複数本の極細同軸線1を所望の整列ピッチで整列させフラットケーブル状にする。このフラットケーブル状の複数本の極細同軸線1にケーブルラミネート用の粘着テープ6によるラミネートを行う。これにより、複数本の極細同軸線1は整列状態のまま固定される。極細同軸線1は、例えば、外径が0.2mmのAWG46ケーブルであり、シールド導体4はそれぞれ直径0.02mmの20本の導線を横巻きして構成している。
【0041】
その後、図1(b)に示されるように、波長10.6μmのCO2レーザを用いて、ポリマ材料からなるジャケット5にレーザ光8を照射する。レーザ光8が照射されると粘着テープ6とジャケット5は、レーザ光8のエネルギーを吸収し、高温になると共に燃焼、蒸発し、粘着テープ6とジャケット5に穴が生じる。CO2レーザは、シールド導体4を構成している導線(金属線)の表面では反射されるため、シールド導体4や内部絶縁体3にダメージを与えない。
【0042】
CO2レーザは、極細同軸線1の上下面それぞれから照射することにより、極細同軸線1の全周分のジャケット5を切断する。
【0043】
このようにして、ジャケット5にレーザ光8を照射することにより、ジャケット5を切断してシールド導体4を露出させ、シールド導体露出部を形成する。この図1(b)の工程はステップS1である。
【0044】
なお、ジャケット5をダイシングソーなどの他の加工法により切断してシールド導体4を露出させても良い。
【0045】
しかる後、図1(c)に示されるように、極細同軸線1の第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4に、極細同軸線1の長手方向に沿って、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/2)Pの長さでレーザ光8を走査することにより、レーザ光8が照射された箇所のシールド導体4を切断する。このとき、レーザは、波長1.06μmのYVO4レーザを用いた。
【0046】
このとき、シールド導体4の切断軸となるレーザ光8の光軸上に、内部絶縁体3や中心導体2がないため、シールド導体4が十分に切断できる程度のレーザ強度の強い条件を選定することができる。この図1(c)の工程がステップS2である。
【0047】
従来の極細同軸線の端末処理方法では、上半分に位置するシールド導体4の全てと、下半分に位置するシールド導体4の全てを、レーザ光8を上下面から照射することにより切断していた。
【0048】
そのため、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4を切断できるだけの強力なレーザ条件を用いる必要があり、その条件を用いて中央部13のシールド導体4を切断していたため、中央部13において、レーザ光8が内部絶縁体3や中心導体2まで到達し、内部絶縁体3や中心導体2を損傷させていた。
【0049】
これに対して、第1の実施の形態では、強度の強いレーザ条件を用いても、レーザ光8の光軸上に内部絶縁体3や中心導体2がなく、レーザ光8が内部絶縁体3や中心導体2を損傷することがない。
【0050】
更に、第1の実施の形態では、シールド導体4を切断するためのレーザ光8を上下面から照射する必要がなく、例えば、上面からの照射のみで、全てのシールド導体4の切断が可能である。
【0051】
その後、図1(d)に示されるように、切断されたシールド導体4をストリップ除去し、内部絶縁体3を露出させる。この工程がステップS3である。
【0052】
最後に、図1(e)に示されるように、波長1.06μmのCO2レーザを用いて内部絶縁体3にレーザ光8を照射することにより、内部絶縁体3を切断して端末側に引き抜き、中心導体露出部を形成する。
【0053】
このように、第1の実施の形態によれば、中心から外側へ順に中心導体2、内部絶縁体3、シールド導体4、ジャケット5を有し、シールド導体4が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、極細同軸線1の端末部分のジャケット5を切断して、シールド導体4を露出させるステップS1と、露出させたシールド導体4を極細同軸線1の長手方向に沿って切断するステップS2と、切断したシールド導体4を極細同軸線1の端末側にストリップ除去して、中心導体2を露出させるステップS3と、を含み、シールド導体4は、極細同軸線1の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所9を有し、切断箇所9において、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断するため、シールド導体4を切断するときに内部絶縁体3への損傷を軽減することができる。
【0054】
なお、ステップS2において、極細同軸線1の第1側部11、又は第2側部12のいずれか一方に位置するシールド導体4に、極細同軸線1の長手方向に、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも1Pの長さで、レーザ光8を走査することにより、レーザ光8が照射された箇所のシールド導体4を切断する場合でも、同様の効果が得られる。
【0055】
すなわち、極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上に、シールド導体4のみが含まれる領域、すなわち、第1側部11及び第2側部12のうち少なくとも一方を切断箇所9とする場合でも、同様の効果が得られる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0057】
第1の実施の形態と同様に、ステップS2において、極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4を、極細同軸線1の上下面から、極細同軸線1の長手方向に、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも(1/2)Pの長さでレーザ光8を走査することにより、内部絶縁体3及び中心導体2の損傷をなくすことができる。
【0058】
図8に示されるように、図1(c)におけるシールド導体4の切断箇所となるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面にあって、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/2)Pの長さとなる。なお、中央部13は、各極細同軸線1の長手方向に直交する切断軸上に内部絶縁体とシールド導体とが少なくとも含まれる領域である。
【0059】
図9(a)に示されるように、図8のC−C’面におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面にあって、図9(b)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上下面のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、(1/2)Pの長さだけ連続的に極細同軸線1の中央部13の上面、及び下面に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0060】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/2)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を180°取り囲んで巻かれている。
【0061】
すなわち、(1/2)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の中央部13の上面、及び下面に位置する箇所を経由しており、中央部13の上面、及び下面に位置するシールド導体4を少なくとも(1/2)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を中央部13の上面、及び下面のどちらかの箇所において、図10に示されるように切断することができる。
【0062】
第2の実施の形態によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0063】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、従来の極細同軸線の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0064】
また、第1の実施の形態と同様に、ステップS2において、極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4を、極細同軸線1の片面から、極細同軸線1の長手方向に沿って、シールド導体4の巻きピッチPに対して少なくとも1Pの長さで、レーザ光8を走査することにより、内部絶縁体3及び中心導体2の損傷をなくすことができる。
【0065】
図11に示されるように、図1(c)におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面にあって、図12(a)に示されるように、レーザ光8によるシールド導体4の切断箇所9は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面のみとなり、極細同軸線1の長手方向に沿って、1Pの長さを連続的に極細同軸線1の中央部13の上面に位置するシールド導体4が切断されている構造となる。
【0066】
ところで、極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して1P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を360°取り囲んで巻かれている。
【0067】
すなわち、1P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の中央部13の上面、又は下面のいずれか一方に位置する箇所を経由しており、中央部13の上面、又は下面のいずれか一方に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、1Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を、中央部13の上面、又は下面において、図13に示されるように切断することができる。
【0068】
なお、照射箇所7、切断箇所9は、シールド導体4の中央部13の下面でも良く、同様の方法で実施することができる。
【0069】
この形態によっても、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0070】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、従来の極細同軸線の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0071】
次に、本発明の第3の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0072】
図14に示されるように、図1(c)におけるレーザ光8の照射箇所7は、各極細同軸線1の中央部13に位置するシールド導体4の上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所にあって、レーザ光8の走査方向が各極細同軸線1の長手方向であり、レーザ光8の走査長さがシールド導体4の巻きピッチPに対して(1/3)Pの長さとなる。
【0073】
極細同軸線1のシールド導体4は、巻きピッチPに対して(1/3)P分の長さの間で、内部絶縁体3の表面上を120°取り囲んで巻かれている。
【0074】
すなわち、(1/3)P分の長さの間で、シールド導体4は全て、極細同軸線1の上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所に位置する箇所を経由しており、上面中央と、上面中央を0°とすると、極細同軸線1の外周廻りに120°、240°の3箇所に位置するシールド導体4を長手方向に沿って、少なくとも(1/3)Pの長さに亘って連続的に切断することにより、全てのシールド導体4を切断することができる。
【0075】
第3の実施の形態によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8として、第1の実施の形態とは異なり、第1側部11、及び第2側部12に位置するシールド導体4の全てを切断するほどの強力なレーザ条件を用いる必要がない。具体的には、第2の実施の形態で用いたレーザ条件と同じものを用いることができ、内部絶縁体3や中心導体2への損傷が発生しない。また、従来の極細同軸線の端末処理方法のように、レーザ光8を円周方向に照射しないため、レーザからの距離が一定で焦点がずれることがない。
【0076】
そのため、焦点ずれを考慮してレーザ光8の強度を上げる必要がなく、特許文献2の端末処理方法よりも弱く、且つ一定の強度のレーザ光8で照射することができ、内部絶縁体3及び中心導体2を損傷することがない。
【0077】
更に、端末処理された極細同軸線1は、露出したシールド導体4にはんだ材10を塗布し、グランドバーを接続することで接地を行う。はんだ材10は、シールド導体4に塗布される際、約220℃の高温となるため、従来の端末処理方法によって端末処理された極細同軸線1のシールド導体4にはんだ材10を塗布すると、はんだ材10が内部絶縁体3に触れて内部絶縁体3を損傷する虞がある。
【0078】
これに対し、第1〜3の実施の形態によって端末処理された極細同軸線1は、図15に示されるように、切断箇所9のシールド導体4の巻き付けを戻し、隣接する極細同軸線1との間にシールド導体4が配置されるようにした後、シールド導体4にはんだ材10を塗布することで、内部絶縁体3上にはんだ材10が落ちることがない。そのため、はんだ材10による内部絶縁体3の損傷を防ぐことができる。
【0079】
以上要するに、本発明によれば、シールド導体4を切断するためのレーザ光8の光軸を損傷の虞のある内部絶縁体3及び中心導体2から外したり、たとえレーザ光8の光軸上に内部絶縁体3及び中心導体2が存在したとしても、レーザ光8を内部絶縁体3や中心導体2が損傷しない強度まで低減することができる。
【0080】
これにより、とりわけアレイ化した複数本の極細同軸線1の端末を一斉に加工する際に、内部絶縁体3と中心導体2に対する加工工程に起因したダメージを低減することが可能となり、生産性と信頼性が向上する。
【0081】
なお、シールド導体4の切断に用いるレーザの種類は、特に限定されず、例えば、波長1.06μmのYVO4レーザに限られず、YAGレーザを用いても良い。また、これらのレーザをLBO結晶などの非線形結晶に通すことで、第2高調波である波長532nmのレーザを発生させ、用いても良い。銅を加工するときの銅表面の光吸収率は、波長1.06μmでは2%と低く、波長532nmでは33%と高いため、波長532nmのレーザの方が効率的な加工が行える。
【符号の説明】
【0082】
1 極細同軸線
2 中心導体
3 内部絶縁体
4 シールド導体
5 ジャケット
6 粘着テープ
7 照射箇所
8 レーザ光
9 切断箇所
10 はんだ材
11 第1側部
12 第2側部
13 中央部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、
前記極細同軸線の端末部分の前記ジャケットを切断して、前記シールド導体を露出させるステップと、
露出させた前記シールド導体を前記極細同軸線の長手方向に沿って切断するステップと、
切断した前記シールド導体を前記極細同軸線の端末側にストリップ除去して、前記中心導体を露出させるステップと、
を含み、
前記シールド導体は、前記極細同軸線の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所を有し、前記切断箇所において、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断することを特徴とする極細同軸線の端末処理方法。
【請求項2】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記シールド導体のみが含まれる領域である請求項1に記載の極細同軸線の端末処理方法。
【請求項3】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記内部絶縁体、前記シールド導体とが少なくとも含まれる領域である請求項1に記載の極細同軸線の端末処理方法。
【請求項4】
中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理構造において、
前記極細同軸線の端末部分の前記中心導体と前記シールド導体が露出され、
前記シールド導体は、前記極細同軸線の長手方向に沿って、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さだけ連続的に切断されていることを特徴とする極細同軸線の端末処理構造。
【請求項1】
中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理方法において、
前記極細同軸線の端末部分の前記ジャケットを切断して、前記シールド導体を露出させるステップと、
露出させた前記シールド導体を前記極細同軸線の長手方向に沿って切断するステップと、
切断した前記シールド導体を前記極細同軸線の端末側にストリップ除去して、前記中心導体を露出させるステップと、
を含み、
前記シールド導体は、前記極細同軸線の周方向に沿ってn(nは1以上の整数)箇所の切断箇所を有し、前記切断箇所において、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さを切断することを特徴とする極細同軸線の端末処理方法。
【請求項2】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記シールド導体のみが含まれる領域である請求項1に記載の極細同軸線の端末処理方法。
【請求項3】
前記切断箇所は、前記極細同軸線の長手方向に直交する切断軸上に、前記内部絶縁体、前記シールド導体とが少なくとも含まれる領域である請求項1に記載の極細同軸線の端末処理方法。
【請求項4】
中心から外側へ順に中心導体、内部絶縁体、シールド導体、ジャケットを有し、前記シールド導体が導線からなる横巻き又は編組巻きのいずれかで形成された極細同軸線の端末処理構造において、
前記極細同軸線の端末部分の前記中心導体と前記シールド導体が露出され、
前記シールド導体は、前記極細同軸線の長手方向に沿って、前記シールド導体の巻きピッチPに対して少なくとも(1/n)Pの長さだけ連続的に切断されていることを特徴とする極細同軸線の端末処理構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−5525(P2013−5525A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132420(P2011−132420)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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