説明

極細糸の染色方法及びこれによって染色された極細糸で製織または編織された織物

本発明は、極細糸の染色方法に関するもので、より詳細には、ポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の先染方法に関するものである。本発明は、ポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の染色方法において、前記極細糸を糸染色機に巻き、100〜130℃の均一な温度で30〜60分間アルカリを投入して6〜15%減量させる減量段階;減量された糸に70〜80℃の鉄分の除去された水をノズルを介して噴射し、異物質を除去しながら精練剤を投入して精練し、pH4〜5になるように酸処理する水洗段階;100〜130℃で30〜60分間染料と分散剤、均染剤、帯電防止剤及び柔軟剤を投入して加圧染色する染色段階;染色された糸を水洗、乾燥させる段階;とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、極細糸の染色方法に関するもので、より詳細には、ポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の先染方法に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
極細糸とは、1デニア(denier)以下の繊維で、超極細糸が3次元構造からなっており、分割時に生じた無数に多いマイクロ空間があって、水分吸収力、洗濯力、タッチ感、保温性の優れた素材である。極細糸を素材にした布巾、雑巾、タオル、ガウンなどは、優れた洗浄力と高い吸汗速乾性、優れた抗菌性と耐久性などのため良い評価を受けている。しかし、極細糸を利用すればより高い効用価値のあるニット、ファッション靴下などの織物にはまだ極細糸を利用した製品が登場していないのだが、これは極細糸の染色方法上の困難から起因する。
【0003】
染色方法は、織造した状態の織物に染色する方法である後染と、織造する前の糸などに染色する方法である先染とに区分されるのだが、従来の極細糸染色方法は、普通後染方式を利用していた。ところが、極細糸は移染性が大変高いため、後染方法では多様な色に染色することができないため、一つのカラーからなった製織物または編織物だけ生産可能であるという問題点があり、もし極細糸とゴム糸(spandex)を利用して編織された靴下を高温で減量後染色することになると、ゴム糸が解けてしまうので、靴下として機能することができないという問題点がある。従って、多様な色相の極細糸織物または編織物を生産したり、多様な素材及びデザインからなった織物を染色するためには、先染方式で染色しなければならない。
【0004】
ところが、従来は極細糸を先染するにおいて、減量と染色を同時に行う方法を固執してきたため、極細糸の先染方法はよい効果を得られず、実用化されなかった。なぜなら、減量と染色を同時に行うと、極細糸の分割がうまくいかないだけでなく、減量過程で発生した異物質が、染料が繊維の中に浸透するのを妨害することになるので、吸収性及び染色堅牢度が落ちる結果が発生するためである。
【0005】
このような極細糸先染方式の問題点は、減量後に染色する方法を採択することによって解決することができる。従来は、減量後染色前に必要な適切な水洗方法と減量や染色時の適切な加工条件などを把握することができず、減量後に染色する方法を試みることができなかった。
【0006】
〔発明の開示〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、前記の問題点を解決するために案出されたもので、本発明は製織する前に極細糸を減量した後染色する方法を提供することによって、吸収性及び堅牢度の高い先染された極細糸が得られるようにし、これを製織または編織された織物の素材に利用することによって、多様な色相の糸で製織されながらも、極細糸の長所の反映された各種製品が生産できるようにすることをその目的とする。
【0007】
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明による先染極細糸を得る染色方法は、ポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の染色方法において、(1)前記極細糸を糸染色機に巻き、100〜130℃の均一な温度で30〜60分間アルカリを投入して6〜15%減量させる減量段階;(2)減量された糸に70〜80℃の鉄分の除去された水をノズルを介して噴射し、水圧力を加えて異物質を除去しながら精練剤を投入して精練し、pH4〜5になるように酸処理する水洗段階;(3)100〜130℃で30〜60分間染料と分散剤、均染剤、帯電防止剤及び柔軟剤を投入して加圧染色する染色段階;(4)染色された糸を水洗、乾燥させる段階;とを含む。
【0008】
また、前記染色段階は、ポリエステル染色後ポリアミド染色をする工程で二回染色することもでき、ポリエステル染色及びポリアミド染色が同時になされるように一回の工程にすることもできる。
【0009】
また、前記染色段階で染料と共に抗菌剤を投入するのが好ましい。
【0010】
また、前記方法で染色された極細糸を含む糸または染色する前の極細糸を加工してスラブヤーン(slub yarn)、ネップヤーン(nep yarn)、ループヤーン(loop yarn)、シェニールヤーン(chenille yarn)及びフェザーヤーン(feather yarn)などの装飾糸を製造することができる。
【0011】
本発明による極細糸の染色方法によると、減量によって手触りが柔らかく、望みの色相に染色されたポリエステルとポリアミドとで構成された分割型極細糸を得ることができる。
【0012】
図1に示されているように、本発明で染色の対象となる極細糸は、ポリエステル1とナイロン2とが複合された分割型極細糸(以下、“極細糸”という)である。極細糸は、ポリエステル70%、ポリアミド30%で構成されるのだが、この比率は原糸製造会社によって多少の差がある。
【0013】
極細糸の減量、水洗、染色の各段階は、極細糸をチーズ染色機に巻いた状態で行われる。極細糸の原糸をワインディングする前に撚数が100〜1000tpm(twist per meter)になるようにする撚糸(twisting)工程を経るのが好ましい。前記撚糸工程を経るのが製織物の寿命を延ばし、実験結果染色がよりうまくできる。撚糸をせずに染色することもできるが、この場合は糸の所々が染色されずに白く残る部分があるので作業性が悪い。
【0014】
減量段階は、100〜130℃の温度で30〜60分のあいだ進行される。ここでの減量加工とは、ポリエステル生地の代表的なタッチ感改善加工であるアルカリ減量加工で、試薬は水酸化ナトリウム(NaOH)を使用する。減量加工によってポリエステルは加水分解されて可溶性付産物であるジソジウムテレフタレート(disodium terephthalate、以下“DST”という)とエチレングリコール(ethlene glycol)が生成され、ポリアミドは分割されてその間に空間が生じる。
【0015】
減量率は水酸化ナトリウム(NaOH)の濃度及び処理温度に比例するのだが、特に処理温度が減量率に及ぼす影響が大変大きいので、100〜130℃の温度が均一に維持されるようにしなければならない。減量率は6から15%になるようにするのだが、減量率がこれより高い場合は、毛羽が発生して起毛現象によって他の織物との摩擦によるちぎれが生じ、減量率がこれより低い場合は、吸収性及び速乾性が落ちることになるので、減量加工時減量率のチェックを必ずしなければならない。
【0016】
減量後は、加水分解副産物を除去するために水洗工程をする。水洗は、きれいな水をノズル噴射によって供給することによって行う。ノズル噴射によるシャワーリング(showering)をしなければならないのだが、その理由は、高い水圧で水を噴射しなければ原糸の間に詰まっている副産物を脱落させることができないからである。水洗時は、急冷を避け70〜80℃の温水で温水洗しなければならない。水洗時に供給する水は、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の成分が少なく、鉄(Fe)がないものを使用しなければならない。鉄(Fe)イオンの存在は染色ムラや色相変化の原因となるためである。水洗工程時、糸が伸びないように注意しなければならず、水洗工程での未備で発生した不良は物理的な方法で解消しなければならない。
【0017】
水洗作業中に精練剤を投入して不純物を除去しながら、ディーエスティー(DST)除去のために必要な際は第3燐酸ソーダー(sodium triphosphate)を使用する。また、アルカリを酸処理する時、この処理のために酸処理剤であるアールシーハイドロ(RC cleaning、大韓民国所在ハンソル株式会社製造品)を使用してpHが4.5になるように調整するのが好ましい。これは、アルカリを酸処理せずに高いpHを維持したままの状態だと染色がまともに行われないからである。プラスイオン系調剤はできるだけ使わないのが好ましいのだが、これはマイナスイオン系の分散剤や均染剤、その他オリゴマー(oligomer)と結合すると、不溶性塩を生成してムラが生じるためである。
【0018】
水洗工程を終えたら水分を除去し、できるだけ素早く染色する。染色は高圧分散染料を使用して細心な注意を傾けなければならない。染料は、ポリエステルや、ポリエステルとポリアミド複合極細糸用染料を使用する。このような染料製品としては、ダイアニックスフラバインエックスエフ(dianix fla vaine xf)、ダイアニックスレッド(dianix red)、シービーエヌエックスエフ(cbn xf)(以上は多国籍的企業であるダイスター製造品)などを例に挙げることができる。染色カラーは、薄い色から濃い色まで多様な色が可能である。
【0019】
染色時、100〜130℃の温度で30〜60分のあいだ高圧染色をするのだが、この時染料は昇温を確認しながら投入しなければならない。染料投入時、分散剤、均染剤、繊維柔軟剤、抗菌剤を一緒に投入する。また、ウイルスを除去するのに優れた効果のあるクロキシネロール(chloroxylenol)を一緒に投入するのが好ましい。
【0020】
染色は、一度に染色する方法と、ポリエステル染色後ポリアミドを染色する工程で二回染色する方法とがある。染色を一度に行う場合は、二回に分けて染色する方式に比べ染料が3倍以上消費されることがあり、染色不良が発生する可能性があるという短所があるが、染色を二回行う場合は、時間がかかり、手続きが複雑なので、一度に染色する方法を利用することも考慮することができる。二回染色をする場合は、まず130℃でポリエステルを分散染料を利用して染色した後、100℃でポリアミド用染料を利用して染色する方式で進行される。ポリアミド用染料は、分散染料や酸性染料が利用されることができる。
【0021】
染色工程を終えた後は、染色された糸を水洗して溶け出たポリエステル及び異物質を除去した後乾燥させ、乾燥された染色された糸で望みの織物を製織または編織する。
【0022】
また、染色工程を終えた後、染色された極細糸を材料の全部または一部にしてデザイン効果を有した装飾糸(fancy yarn)を作ることができる。つまり、前記方法で染色された極細糸だけで、または他の糸と共に装飾糸を作ることができる。また染色する前の極細糸を材料にして装飾糸を作った後、その装飾糸を染色することもできる。装飾糸の例としては次のようなものを挙げることができる。
【0023】
シェニールヤーン(chenille yarn)は、刺繍の縁部装飾用糸の一種で、シェニール織物を作る時緯糸に使用される糸で、シェニールヤーンは、縦糸何本かを若干の間隔をおいて配列した後、パイルとなる糸を緯糸に使用して製織し、これを縦方向に切断して撚ることによって毛のついた太い糸を得る。
【0024】
スラブヤーン(slub yarn)は、撚っていない糸に撚った糸を使用して連続的にソフトな節を作りながら撚った糸で、太さが一定でなく、所々節のある糸である。
【0025】
ネップヤーン(nep yarn)は、ネップ、つまり小さな綿毛を所々不規則に入れた意匠効果を有した単糸で、糸の表面に結び目のようなものが間欠的に突出している糸を言う。
【0026】
ループヤーン(loop yarn)は、ブークレ毛糸ともいい、所々ループのある装飾撚糸で、普通ニットや紡毛織物などによく使われる。
【0027】
フェザーヤーン(feather yarn)は、緯糸と縦糸とを針(needle)でいろいろな規格にニッティング(knitting)して製織された反物をナイフを利用して切断して作る。
【0028】
前記のような装飾糸の製造方法は当業者によく知られているので、これに関する詳細な説明は省略する。
【0029】
〔実施例〕
ポリエステル70%とポリアミド30%とが複合構成された分割型極細糸を撚数が250tpmになるように撚糸した後、撚糸された糸をチーズ染色機に巻いた後、130℃の均一な温度で30分間水酸化ナトリウムを投入して7%減量した後、減量された糸にノズル噴射機のついたシャワー機で鉄分(Fe)のない水を噴射して、異物質を除去し、水圧噴射方式で解けでたポリエステルを除去する作業をし、水酸化ナトリウムを投入して精練し、アールシーハイドロ(大韓民国所在ハンソル株式会社製造品)を使用してpH4.5になるように酸処理した後、130℃で30分間黒い染料であるダイアニックスブラック(ダイスター製品)と噴射剤であるDC−505(大韓民国所在シングヮン油化製造品)、帯電防止剤であるアノール25B(大韓民国所在シングヮン油化製造品)、柔軟剤である3M(大韓民国所在シングヮン油化製造品)を投入して染色した後、染色された糸を染色機から除去した後乾燥させてから再び染色機のボビンに巻き取った後、靴下製織機を用いて染色された糸とゴム糸で製織された靴下を対象にして洗濯堅牢度、乾燥速度、吸収速度を測定し、これと対比するために黒い一般綿靴下に対しても洗濯堅牢度、乾燥速度、吸収速度を測定して洗濯堅牢度の結果を表1に、乾燥速度の結果を表2に、吸収速度の結果を表3に示した。
【0030】
前記の実施例で使用される構成成分と使用量などは、この発明の属する技術分野で公知されている通常の方法による。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
〔産業上の利用可能性〕
本発明による極細糸の染色方法によると、減量によって手触りが柔らかく、望む色相に染色されたポリエステルとポリアミドとで構成された分割型極細糸を得ることができ、これを利用して多様な色相の極細糸で製織された織物を生産することができて、極細糸で製織された織物及び編織物は高級感と多様なカラーと機能性が付与されることによって、多様な製品生産が可能であり、高付加価値を創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の染色対象であるポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の数千倍拡大された様子を示した概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルとポリアミドの複合された分割型極細糸の染色方法において、
(1)前記極細糸を糸染色機に巻き、100〜130℃の均一な温度で30〜60分間アルカリを投入して6〜15%減量させる減量段階;
(2)減量された糸に70〜80℃の鉄分の除去された水をノズルを介して噴射し、水圧力を加えて異物質を除去しながら精練剤を投入して精練し、pH4〜5になるように酸処理する水洗段階;
(3)100〜130℃で30〜60分間染料と分散剤、均染剤、帯電防止剤及び柔軟剤を投入して加圧染色する染色段階;
(4)染色された糸を水洗、乾燥させる段階;
とを含むことを特徴とする極細糸の染色方法。
【請求項2】
前記染色段階は、ポリエステル染色後ポリアミド染色をする工程で二回染色することを特徴とする請求項1に記載の極細糸の染色方法。
【請求項3】
前記染色段階は、ポリエステル染色及びポリアミド染色が同時になされるように一回の工程で行なわれることを特徴とする請求項1に記載の極細糸の染色方法。
【請求項4】
前記染色段階で染料と共に抗菌剤を投入することを特徴とする請求項1に記載の極細糸の染色方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法で染色された極細糸を含む糸を加工して製造された装飾糸(fancy yarn)。
【請求項6】
前記装飾糸はスラブヤーン(slub yarn)、ネップヤーン(nep yarn)、ループヤーン(loop yarn)、シェニールヤーン(chenille yarn)及びフェザーヤーン(feather yarn)とから成った群から選択される一つの装飾糸であることを特徴とする請求項5に記載の装飾糸。
【請求項7】
前記極細糸の減量段階前に前記極細糸を装飾糸に加工することを特徴とする請求項1に記載の極細糸の染色方法。
【請求項8】
前記装飾糸は、スラブヤーン(slub yarn)、ネップヤーン(nep yarn)、ループヤーン(loop yarn)、シェニールヤーン(chenille yarn)及びフェザーヤーン(feather yarn)とから成った群から選択される一つの装飾糸であることを特徴とする請求項7に記載の極細糸の染色方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で染色された極細糸で製織または編織された織物。
【請求項10】
請求項5または7に記載の装飾糸で製織または編織された織物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−509290(P2008−509290A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524749(P2007−524749)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002530
【国際公開番号】WO2006/014077
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507037426)
【Fターム(参考)】