説明

楽曲再生装置、楽曲再生方法、及び楽曲再生プログラム

【課題】通話音声やガイド音声をより聞き取りやすくした楽曲再生装置を提供する。
【解決手段】複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生装置において、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲に対し所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する手段(ステップ22)と、ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して(ステップ21)、再生対象を、該楽曲に対し前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替える手段(ステップ23)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生装置並びに該装置に適した楽曲再生方法及び楽曲再生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両運転中における携帯電話での通話による注意力の低下に起因して起こる交通事故を防止するために、ハンズフリー通話を可能にするための種々のアイテムが登場して広く普及し、浸透してきている。これに伴い、オーディオ機器の動作中におけるハンズフリー通話の妨げにならないように、オーディオ機器の出力レベルを調整する技術も知られている。
【0003】
図4はこのような技術を適用したオーディオ装置の構成を示す(たとえば、特許文献1参照)。この装置では、オーディオ再生装置41及びラジオ受信機42の出力のうち、セレクタ43で選択されたものが、イコライザ44、ミキサ45、ボリューム46、及びアンプ47を経て、スピーカ48に出力されるようになっている。また、マイク49からの音声信号が電話機インタフェース50を経て携帯電話機51に入力されるとともに、携帯電話機51からの音声信号が電話機インタフェース50を経てミキサ45に入力され、イコライザ44の出力と混合されるようになっている。装置各部は主制御部55により制御される。主制御部55にはメモリ52、表示部53及び操作部54が接続されている。
【0004】
この装置において、主制御部55は、携帯電話機51によるハンズフリー通話中でない場合には、メモリ52中の標準減衰パターンをイコライザ44にセットするが、ハンズフリー通話中である場合には、標準減衰パターン以外のパターンをイコライザ44にセットし、これにより、オーディオ再生装置41やラジオ受信機42の出力における電話音声帯域での周波数特性を操作して該帯域のレベルを減衰させたり、全周波数帯域を減衰させたりして、通話内容が聞き取りやすくなるようにしている。
【0005】
たとえば、ラジオ受信機42がセレクタ43を介して出力中である場合には、出力内容がアナウンスやスピーチであれば音声が聞き取れなくなるようなミュート減衰パターンをセットし、出力内容が音楽であって受信状態が良好であれば電話音声帯域を減衰させる電話音声帯域減衰パターンをセットし、受信状態が良好でなければ電話音声帯域及び高周波ノイズ帯域減衰パターンをセットするようにしている。また、ハンズフリー通話中で、オーディオ再生装置から出力中である場合には、電話音声帯域減衰パターンをセットするようにしている。
【0006】
図5は同様の技術として、ナビゲーション装置におけるガイド音声や携帯電話の着信音を聞き取りやすくしたオーディオ装置の構成を示す(たとえば、特許文献2参照)。この装置では、MDプレーヤ等からのオーディオ信号及びガイド音声信号を、それぞれのレベル調整部61及び62を経由させてから混合器63により混合し、アンプ64を経て出力するようになっている。レベル調整部61及び62は制御部65により制御される。制御部65はナビゲーション装置からガイド音声が出力されるとき、MDプレーヤ等からのオーディオ信号のレベル及びガイド音声のレベルに基づき、ガイド音声のレベルを所定の上限値及び下限値を超えない範囲で調整し、ガイド音声が聞き取りやすいようにしている。同様にして、ガイド音声の代わりに、携帯電話の着信音を調整し、着信音が聞き取りやすいようにすることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−263872号公報
【特許文献2】特開2001−138821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述図4の従来技術によれば、オーディオ再生装置41等からの音声信号における音声帯域での周波数特性を変化させるようにしているので、その音声信号による楽曲が本来有する雰囲気も変化してしまい、楽曲が不自然に聞こえる可能性がある。そうすると、楽曲によっては却って煩わしく聞えてしまい、ユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0009】
また、オーディオ再生装置等からの音声信号における全周波数帯域のレベルをボリュームにより一律に変化させたり、図5の従来技術の場合のように、ガイド音声や着信音のレベルを上げるようにしたりしたとしても、結局、音声帯域の成分は残存するので、通話の妨げを回避するという点では、十分な効果を得ることはできない。
【0010】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、通話音声やガイド音声をより聞き取りやすくした楽曲再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る楽曲再生装置は、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲に対し所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する手段と、ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替える手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
ここで、楽曲再生装置としてはたとえば、CD、MD等の再生装置や、半導体メモリ、ハードディスク等に格納された楽曲ファイルの再生装置が該当する。楽曲データとしてはたとえば、CD、MD等の各トラックに記録されているデータや、半導体メモリ、ハードディスク等に記憶されている音声ファイルが該当する。音声ファイルとしてはたとえば、MP3ファイル、WMAファイル、WAVファイル等の圧縮された又は非圧縮のファイルが該当する。
【0013】
また、各楽曲について予め設定されている所定の情報としては、たとえば、MDのTOC情報や、CDについてインターネットを介して得られるCDDB情報、音声ファイルに付随するメタデータ、ユーザが設定した情報が該当する。所定の関係としてはたとえば、双方の楽曲データのタイトルが同一である関係とか、双方の楽曲が相互に切替え可能である旨をユーザが設定した関係が該当する。所定の入力としては、たとえば、楽曲再生装置に接続された携帯電話における着信の検出信号や、ユーザによる操作入力、音声ガイドの出力開始を示す信号が該当する。
【0014】
この構成において、ボーカルを含む楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があると、これに応答して、再生対象が、該楽曲に対し所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替えられる。したがって、所定の入力として、楽曲再生装置に接続された携帯電話における着信の検出信号の入力や、音声ガイドの出力開始を示す信号の入力があったときには、再生対象がボーカルを含まない楽曲に切り替えられるので、通話音声やガイド音声は、再生楽曲中のボーカル成分に妨げられることなく、聞き手に届くことができる。
【0015】
第2の発明に係る楽曲再生装置は、第1発明において、前記所定の関係は、楽曲の切替えが、切替え前後の楽曲における同一再生位置で行われた場合、楽曲の連続性が失われない関係であり、楽曲切替え手段は楽曲の切替えを、切替え前後の楽曲における同一再生位置で行うものであることを特徴とする。このような、楽曲の連続性が失われない関係にある場合としては、たとえば、両楽曲のメタデータにおけるタイトルが同一で、一方がボーカル有り、他方がボーカル無しである場合が該当する。また、このような関係を有する場合、両楽曲の長さ、すなわち再生に要する時間は同一となる。
【0016】
第3の発明に係る楽曲再生装置は、第1発明において、前記所定の関係は、双方の楽曲に付されたタイトル、アーティスト、又はジャンルが同一である関係であることを特徴とする。
【0017】
第4の発明に係る楽曲再生装置は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記所定の入力は、所定のハンズフリー通話手段における通話の開始又は終了の検出信号、又はユーザによる所定の操作入力であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明に係る楽曲再生装置は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記所定の情報は、各楽曲の楽曲データに付随するメタデータ、又はユーザにより設定された情報であることを特徴とする。
【0019】
第6の発明に係る楽曲再生装置は、第1〜第5のいずれかの発明において、前記所定の入力は、所定のハンズフリーでの電話による通話の開始又は終了の検出信号であり、前記所定の情報には、ユーザが設定した電話番号に関する情報が含まれ、前記ボーカルを含まない楽曲を特定する手段は、前記所定の関係を有するかどうかを決定するに際し、該電話番号と通話相手の電話番号とが一致するかどうかを考慮するものであることを特徴とする。
【0020】
第7の発明に係る楽曲再生装置は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記楽曲の切替えが行われた後、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、前記楽曲の切替え前に再生していたボーカルを含む楽曲に戻す手段を有することを特徴とする。
【0021】
第8の発明に係る楽曲再生装置は、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲について、該楽曲から他の楽曲へ再生対象の切替えが同一再生位置で行われた場合、楽曲の連続性が失われない関係を有する該他の楽曲を特定する手段と、各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記関係を有する他の楽曲に、同一再生位置において切り替える手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
第9の発明に係る楽曲再生装置は、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲について、該楽曲と所定の関係を有する楽曲を特定する手段と、各楽曲について再生が行われている場合に、所定のハンズフリー通話手段における通話の開始又は終了の検出信号の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲と前記所定の関係を有する楽曲に切り替える手段とを具備することを特徴とする。
【0023】
第10の発明に係る楽曲再生方法は、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生工程と、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲に対し所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する工程と、ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替える工程とを具備することを特徴とする。
【0024】
第11の発明に係る楽曲再生プログラムは、複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段に対し、各楽曲の再生を指令する手順と、各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲に対して所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する手順と、ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対して前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替えるように楽曲再生手段に対して指令する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ボーカルを含む楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替えるようにしたため、通話音声やガイド音声をより聞き取りやすくすることができる。
【0026】
また、各楽曲について、該楽曲から他の楽曲へ再生対象の切替えが同一再生位置で行われた場合、楽曲の連続性が失われない関係を有する該他の楽曲を特定する手段を設け、各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記関係を有する他の楽曲に、同一再生位置において切り替えるようにしたため、楽曲の切替えを、楽曲の連続性を損うことなく行うことができる。これによりボーカル有りと無しの同一楽曲を連続性を損なうことなく切り替えながら、カラオケ練習時の便宜を図ることもできる。
【0027】
また、各楽曲について再生が行われている場合に、所定のハンズフリー通話手段における通話の開始又は終了の検出信号の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し所定の関係を有する楽曲に切り替えるようにしたため、楽曲切替えのための操作を要することなく、ハンズフリー通話に適した楽曲に切り替えて、ハンズフリー通話を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係る車載用のオーディオ装置の構成を示すブロック図である。同図に示すようにこの装置は、必要な情報処理及び装置各部の制御を行うCPU1、CPU1が使用するメモリ2、楽曲の音声信号(以下、「楽曲信号」という。)を出力するプレーヤ部3、CPU1及びユーザ間のインタフェースとして機能するユーザインタフェース部4、携帯電話機5によるハンズフリー通話を可能とするためのハンズフリーインタフェース部6、ハンズフリーインタフェース部6に接続されたマイク7、プレーヤ部3からの楽曲信号を増幅するSP信号増幅部8、SP信号増幅部8によって増幅された音声信号を音波に変換するスピーカ9を備える。
【0029】
ハンズフリーインタフェース部6は、ユーザの発話に基づいてマイク7により入力される音声信号を携帯電話機5に送るとともに、携帯電話機5が受信した相手側の発話に基づく音声信号をSP信号増幅部8に送る。以下、これらの発話に基づく音声信号を「通話信号」という。ハンズフリーインタフェース部6はまた、携帯電話機5における着信及び発信を示す信号をCPU1に送ることができる。
【0030】
プレーヤ部3は多数の楽曲のデータ(以下、「楽曲データ」という。)を記憶する楽曲記憶部31、及びこれらの楽曲データを再生して楽曲信号を出力する楽曲再生制御部32を備える。ユーザインタフェース部4は、CPU1からのメッセージ等を表示する表示部4a、及びユーザがCPU1に対して操作入力を行うための操作部4bを備える。SP信号増幅部8はプレーヤ部3からの楽曲信号及びハンズフリーインタフェース部6からの通話信号を混合するミキサ81、ミキサ81の出力を増幅してスピーカ9に出力するアンプ82、及びミキサ81及びアンプ82間に設けられたボリューム83を備える。
【0031】
この構成において、通常の楽曲再生に際しては、ユーザインタフェース部4によりユーザが再生対象とする楽曲を指定し、再生指示を行うと、この指示に基づき、CPU1は楽曲再生制御部32に対し、再生指示を行う。楽曲再生制御部32は指示された楽曲の楽曲データを楽曲記憶部31から読み出し、楽曲信号に変換して、ミキサ81に出力する。楽曲信号はミキサ81を経て、ボリューム83及びアンプ82を介し、スピーカ9により音波信号に変換され、出力される。
【0032】
また、楽曲の再生がなされていない場合の携帯電話機5によるハンズフリー通話に際しては、携帯電話機5において着信又は発信があると、その旨をハンズフリーインタフェース部6が認識し、CPU1に伝える。通話の間、携帯電話機5が受けた相手側の発話に基づく通話信号がハンズフリーインタフェース部6を介してミキサ81に送られる。送られた通話信号は楽曲信号の場合と同様にして増幅され、スピーカ9から出力される。一方、ユーザの発話に基づくマイク7からの通話信号は、ハンズフリーインタフェース部6を経て携帯電話機5へ送られ、送信される。
【0033】
プレーヤ部3において楽曲の再生が行われている場合に携帯電話機5による通話がなされるとき、再生中の楽曲は所定の他の楽曲に切り替えられる。これを可能とするために、予め、ボーカルを含む楽曲と含まない楽曲との関連付けが、CPU1により、又はユーザ操作に基づいて行われる必要がある。
【0034】
CPU1がこの関連付けを行う場合、CPU1はまず、楽曲記憶部31が記憶している各楽曲データに付随するメタデータにおける各項目の登録内容を比較し、同一の楽曲であるがボーカル有りのものと無しのものとを抽出し、それらが関連する旨を示す情報を、メモリ2中の関連楽曲テーブルに登録する。
【0035】
同一の楽曲であるかとうかは、たとえばタイトルが同一であるか否かにより判定することができる。また、ボーカル有りか否かは、メタデータ内に「オリジナルカラオケ」、「カラオケ」、「KARAOKE」、「Instrumental」等のボーカルの有無の識別に利用できるキーワードの有無に基づいて判定することができる。たとえば、「AAA」というタイトルの楽曲があり、さらに、「AAA(オリジナル・カラオケ)」というタイトルの楽曲も楽曲記憶部31に存在する場合には、これらはボーカル有り及び無しの同一楽曲であると判定することができる。
【0036】
ユーザが関連付けを行う場合には、CPU1はメモリ2中の各楽曲データに基づき、ユーザインタフェース部4により、所定のメニュー画面等を介し、同一の楽曲であってボーカルを含むものと含まないものの指定を受け入れ、指定された両楽曲が関連する旨を示す情報を関連楽曲テーブルに登録する。
【0037】
図2はCPU1による処理の一部を示すフローチャートである。この処理は、プレーヤ部3においてボーカル有りの楽曲についての楽曲信号が出力されている場合に所定の間隔で繰り返し行われる。すなわちCPU1は、まずステップ21において、ハンズフリーインタフェース部6を介し、携帯電話機5において着信又は発信があり、通話が開始されたか否かを判定する。通話が開始されなかったと判定した場合には図2の処理を終了する。
【0038】
ステップ21において通話が開始されたと判定した場合には、ステップ22において、メモリ2の関連楽曲テーブル中に、再生中のボーカル有りの楽曲に関連するボーカル無しの楽曲を示す関連楽曲情報が存在するか否かを判定する。存在しないと判定した場合にはステップ27へ進み、存在すると判定した場合にはステップ23に進む。
【0039】
ステップ23へ進むと、当該関連楽曲情報に基づき、再生中の楽曲に関連するボーカル無しの楽曲へ再生対象を切り替えるように、楽曲再生制御部32に対して指示する。再生対象の切替えは、切り替えられる双方の楽曲における再生位置が同一となるように行われる。次にステップ24において、通話が継続中であるか否かを判定する。通話が継続中ではない、すなわち通話が終了したと判定した場合には、ステップ25において、再生対象を、ステップ23における切替えの前に再生していたボーカル有りの楽曲に切り替える。その後、図2の処理を終了する。この場合も、再生対象の切替えは、切替え前後における再生位置が同一となるように行われる。これにより、聴感上は、同一楽曲の再生でありながら、通話の間だけボーカル成分が消えたような効果を得ることができる。
【0040】
ステップ24において、通話が継続中であると判定した場合には、ステップ26において、ステップ23の切替えによる切替え後のボーカル無しの楽曲の再生中であるか否かを判定する。該楽曲の再生中であると判定した場合にはステップ24へ戻り、該楽曲の再生中ではない、すなわち該楽曲の再生が終了したと判定した場合にはステップ27へ進む。
【0041】
ステップ27では、今まで再生していた楽曲と同じアーティスト又はジャンルの楽曲であってボーカル無しのものを検索し、それを再生するように、楽曲再生制御部32に指示する。この後、図2の処理を終了する。
【0042】
図3はステップ23、25、及び27における再生対象楽曲の切替えの例を示す図である。図中の「楽曲」の欄には、例として用いる各楽曲を区別するために各楽曲に仮に付した番号が記載されている。「メタデータ」の欄には、各楽曲の楽曲データに付随するメタデータの内容の一部が記載されている。「ボーカル成分」の欄には各楽曲がボーカル成分を含むか否かを示す「有り」又は「無し」が記載されている。「楽曲長さ(再生時間)と楽曲切替えの位置関係」の欄には、各楽曲の長さ及び楽曲1と他の楽曲との間の切替え位置が例示されている。「楽曲同士の関連性」の欄には、各楽曲間の関連性が記載されている。
【0043】
同図に示すように、楽曲1及び2については、タイトルがともに「AAA」であり、ボーカル成分が有るものと無いものであるから、相互に関連を有する旨を示す関連楽曲情報がメモリ2の関連楽曲テーブルに登録されている。この場合、ボーカル有りの楽曲1が再生されているとき、再生開始から1分30秒が経過した「1:30」の位置で着信が検出され、ハンズフリー通話が開始されたとすると(ステップ21)、再生対象はその時点で楽曲2に切り替えられ、楽曲2は同一の位置「1:30」から再生が開始される(ステップ23)。
【0044】
その1分後に通話の終了が検出されると(ステップ24)、再生対象は楽曲2における「2:30」の位置において楽曲1に切り替えられ、楽曲1は「2:30」の位置から再生が開始される(ステップ25)。つまり、タイトル「AAA」の楽曲が、通話の間(1:30〜2:30)だけボーカル無しで再生され、聴感上は通話の間だけボーカル成分が消えたような効果を得ることができる。これにより通話中は、通話の妨げとなるボーカル成分が無くなるので、ユーザは快適に楽曲を聴きながら、通話を行うことができる。
【0045】
楽曲2が存在せず、楽曲1について関連楽曲情報が登録されていない場合には、楽曲1の再生中に、「1:30」の位置で着信があり、ハンズフリー通話が開始されたとすると(ステップ21)、楽曲1のアーティスト「XXX」又はジャンル「KKK」と同一のアーティスト又はジャンルの楽曲4又は5に切り替えられる(ステップ27)。この場合、切替え前後の楽曲については関連楽曲情報が登録されておらず、切替え前後の楽曲同士は同一の楽曲ではないので、切替え後の楽曲4又は5については、最初から再生が開始される。
【0046】
本実施形態によれば、車内でのハンズフリー通話の開始時に、それまで聴いていたボーカル入り楽曲をボーカル無しの楽曲に切り替えるようにしたため、通話の支障となるボーカル成分を排除することができる。これにより、ユーザは快適に連続して楽曲を楽しみながらハンズフリー通話を行うことができる。
【0047】
また、楽曲の切替えに際し、楽曲の周波数特性を変更しないので、楽曲の有する本来の雰囲気を損なうことはない。したがって切替え後も、ユーザは自然に楽曲を聴くことができる。
【0048】
また、楽曲の切替えを、同一の楽曲であってボーカル有りのものと無しのものとの間で同一の再生位置において行うようにしたため、実質的に楽曲の連続性を損なうことなくボーカルのみを除いたり加えたりすることができる。したがってユーザは、通話中は単にボーカル成分のみが消え、楽曲自体は連続しているように感じることができる。
【0049】
また、各楽曲データに付随するメタデータを利用して、同一の楽曲であってボーカル有りと無しの楽曲を予め関連付けるようにしたため、ユーザによる関連付けのための操作を省くことができる。また、かかる関連付けの結果が登録されている関連楽曲テーブルに基づいて楽曲の切替えを行うようにしたため、ユーザは自ら操作することなく、同一楽曲であってボーカル有りと無しの楽曲間での切替えを享受することができる。
【0050】
また、ボーカル有りと無しの楽曲間で切替えを行うことによりボーカル成分を除くようにしたため、イコライザを使用することなく、比較的簡便な構成によりボーカル成分のみの抑制を可能としたオーディオ再生装置を提供することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、ボーカル有りと無しの同一楽曲について関連付けを行う関連楽曲情報を登録するようにしているが、ユーザが、まったく関係のない楽曲同士についても、一方を通話時専用の楽曲として用いるために、関連楽曲情報を登録することができるようにしてもよい。たとえば、図3における楽曲1及び楽曲6をユーザが関連付ける場合である。この場合、両楽曲は同一楽曲ではないため、切替え位置は同一とせず、切替え先の楽曲6は最初から再生されることになる。またこの場合、関連楽曲情報の登録に際し、ユーザに対して、両楽曲1と6が同一でないことや、切替先の楽曲6が最初から再生されることを確認させ、登録意思を確認したうえで登録を確定するようにしてもよい。
【0052】
また、上述においては言及しなかったが、関連楽曲情報の登録に際してはボーカル有り楽曲に関連付けられるボーカル無し楽曲を電話番号と対応付けて登録できるようにしておき、着信又は発信に基づいて楽曲の切替えを行うに際しては、再生中の楽曲に関連付けられている楽曲中に、着信時の発信者番号通知により通知された通話相手の電話番号や、発信のために押下した通話相手の電話番号に対応するものがあれば、その楽曲を優先して切替え先の楽曲とするようにしてもよい。これによれば、通話相手が電話番号を登録しておいた特定の相手である場合には、その電話番号に対応する楽曲に優先的に切り替わり、通話時のムード作りを演出することができる。
【0053】
また、上述においては、ハンズフリー通話の開始及び解除を検出したことに応答して楽曲の切替えを行うようにしているが、この代わりに、ユーザ操作に応答して楽曲の切替えを行うようにしてもよい。これによれば、ハンズフリー通話の場合の利点のみならず、同一楽曲のボーカル有り楽曲とボーカル無し楽曲(カラオケ)とを任意に切り替えることにより、カラオケのパート練習等を行うこともできる。このような利点は、本発明を、ハンズフリー通話を可能にする車載用のオーディオ再生装置に適用する場合のみならず、家庭用機器やポータブル機器に適用する場合においても享受することができる。
【0054】
また、上述においては、関連楽曲テーブルにおいて、ボーカル有り及び無しの同一楽曲であって、アーティストも同一である楽曲同士を関連付けて登録するようにしているが、この代わりに又はこれに加え、双方ともボーカル有りの同一楽曲であってアーティストが異なる楽曲、つまり一方がいわゆるカバー曲である場合の楽曲同士を関連付けるようにしてもよい。この場合も両楽曲を任意の同一位置において切り替えることができる。
【0055】
たとえば図3における楽曲1及び楽曲3の場合である。楽曲1及び3はタイトルが共に「AAA」である点においては同一楽曲であり、アーティストは楽曲1が「XXX」で楽曲3が「YYY」であるが、相互に関連するものとして関連楽曲テーブルに登録することができる。そしてユーザは、楽曲1及び3を任意の再生位置において、かつ連続性を損なうことのない同一の再生位置において、相互に切替えることができる。
【0056】
この場合の利点も、ハンズフリー通話を可能にする車載機を使用する場合のみならず、家庭用機器やポータブル機器を使用する場合においても享受することができる。また、その場合、嗜好に応じ、ユーザは、演奏タイミングが異なる複数のボーカルのパート毎に切替えを行い、あるパートについては楽曲1で聴取し、別のパートについては楽曲3で聴取することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用オーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置におけるCPUによる処理の一部を示すフローチャートである。
【図3】図2の処理における再生対象楽曲の切替えの例を示す図である。
【図4】従来例に係るオーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来例に係る別のオーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1:CPU、2:メモリ、3:プレーヤ部、4:ユーザインタフェース部、5:携帯電話機、6:ハンズフリーインタフェース部、7:マイク、8:SP信号増幅部、9:スピーカ、31:楽曲記憶部、32:楽曲再生制御部、4a:表示部、4b:操作部、41:オーディオ再生装置、42:ラジオ受信機、43:セレクタ、44:イコライザ、45:ミキサ、46:ボリューム、47:アンプ、48:スピーカ、49:マイク、50:電話機インタフェース、51:電話機、52:メモリ、53:表示部、54:操作部、55:主制御部、61:オーディオ信号レベル調整部、62:ガイド信号レベル調整部、63:混合器、64:アンプ、65:制御部、81:ミキサ、82:アンプ、83:ボリューム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、
各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲に対し所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する手段と、
ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替える手段とを具備することを特徴とする楽曲再生装置。
【請求項2】
前記所定の関係は、前記楽曲の切替えが、切替え前後の楽曲における同一再生位置で行われた場合、楽曲の連続性が失われない関係であり、前記楽曲切替え手段は前記楽曲の切替えを、切替え前後の楽曲における同一再生位置で行うものであることを特徴とする請求項1に記載の楽曲再生装置。
【請求項3】
前記所定の関係は、双方の楽曲に付されたタイトル、アーティスト、又はジャンルが同一である関係であることを特徴とする請求項1に記載の楽曲再生装置。
【請求項4】
前記所定の入力は、所定のハンズフリー通話手段における通話の開始又は終了の検出信号、又はユーザによる所定の操作入力であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の楽曲再生装置。
【請求項5】
前記所定の情報は、各楽曲の楽曲データに付随するメタデータ、又はユーザにより設定された情報であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の楽曲再生装置。
【請求項6】
前記所定の入力は、所定のハンズフリーでの電話による通話の開始又は終了の検出信号であり、前記所定の情報には、ユーザが設定した電話番号に関する情報が含まれ、前記ボーカルを含まない楽曲を特定する手段は、前記所定の関係を有するかどうかを決定するに際し、該電話番号と通話相手の電話番号とが一致するかどうかを考慮するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の楽曲再生装置。
【請求項7】
前記楽曲の切替えが行われた後、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、前記楽曲の切替え前に再生していたボーカルを含む楽曲に戻す手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の楽曲再生装置。
【請求項8】
複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、
各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲について、該楽曲から他の楽曲へ再生対象の切替えが同一再生位置で行われた場合、楽曲の連続性が失われない関係を有する該他の楽曲を特定する手段と、
各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記関係を有する他の楽曲に、同一再生位置において切り替える手段とを具備することを特徴とする楽曲再生装置。
【請求項9】
複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段と、
各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲について、該楽曲に対し所定の関係を有する楽曲を特定する手段と、
各楽曲について再生が行われている場合に、所定のハンズフリー通話手段における通話の開始又は終了の検出信号の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲に対し前記所定の関係を有する楽曲に切り替える手段とを具備することを特徴とする楽曲再生装置。
【請求項10】
複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生工程と、
各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲と所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する工程と、
ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲と前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替える工程とを具備することを特徴とする楽曲再生方法。
【請求項11】
複数の楽曲データに基き各楽曲の再生を行うことができる楽曲再生手段に対し、各楽曲の再生を指令する手順と、
各楽曲について予め設定されている所定の情報に基づき、各楽曲のうち、ボーカルを含む各楽曲について、該楽曲と所定の関係を有し、かつボーカルを含まない楽曲を特定する手順と、
ボーカルを含む各楽曲について再生が行われている場合に、所定の入力があったことに応答して、再生対象を、該楽曲と前記所定の関係を有するボーカルを含まない楽曲に切り替えるように前記楽曲再生手段に対して指令する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする楽曲再生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−128587(P2007−128587A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319308(P2005−319308)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】