構造体の検査方法及び検査装置
【課題】 ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程においてセラミック部材に作用する負荷に起因して生ずる振動波を有効に活用して、当該セラミック部材の損傷の有無を検査するようにした構造体の検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】 ガスセンサの製造工程のうちの滑石押さえ工程において、センサ本体100の滑石リング130を油圧装置300の金型330により押さえ込むことで、センサ本体100から発生する振動波をAEセンサ400により振動波信号として検出し、振動波信号から所定の振動波弁別信号を弁別し、振動波弁別信号のうち油圧装置300の金型300が所定位置になってから待機期間経過した後の計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数してこの計数値に基づき絶縁部材の損傷の有無を検査する。
【解決手段】 ガスセンサの製造工程のうちの滑石押さえ工程において、センサ本体100の滑石リング130を油圧装置300の金型330により押さえ込むことで、センサ本体100から発生する振動波をAEセンサ400により振動波信号として検出し、振動波信号から所定の振動波弁別信号を弁別し、振動波弁別信号のうち油圧装置300の金型300が所定位置になってから待機期間経過した後の計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数してこの計数値に基づき絶縁部材の損傷の有無を検査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記特許文献1に開示されたセラミックス焼結体の検査方法がある。この検査方法では、セラミック焼結体の試験片に負荷を与えて当該試験片に曲げ試験を施し、この曲げ試験に伴い上記試験片から発生する音響放出波信号を計数し、このように計数した音響放出波信号のうち試験片の材質に応じた特定の周波数領域にピーク値をもつ信号に着目して、この信号に基づき試験片の欠陥を検査するようになっている。
【特許文献1】特開昭63−243753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のセラミックス焼結体の検査方法では、上述のように試験片の曲げ試験を行うにあたり、当該試験片に負荷を与えたときに生ずる衝撃に起因して、上記試験片から衝撃波信号が発生する。
【0004】
しかし、この衝撃波信号は、曲げ試験による試験片の曲げに起因して発生する音響放出波信号とは異なり、試験片の欠陥とは無関係なものである。従って、当該試験片に負荷を与えたときに生ずる衝撃に起因して上記試験片から発生する衝撃波信号を計数しても、このような計数結果によっては、試験片の欠陥の検査が正しく行えないという不具合がある。
【0005】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程において、セラミック部材に負荷が加わるように構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を有効に活用して、当該セラミック部材の損傷の有無を検査するようにした構造体の検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る構造体の検査方法では、請求項1の記載によれば、
ハウジング(110)の内部にセラミック部材(121)を固定してなる構造体(100、201)の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段(300)によって構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を振動波信号として検出し、
振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、
振動波信号の計数値に基づきセラミック部材の損傷の有無を検査する。
【0007】
このように構成することで、ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷が加わるように構造体に対して負荷を与えた際に、セラミック部材に損傷が発生したとき、この損傷に伴い発生する振動波を振動波信号として検出し、振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、振動波信号の計数値に基づきセラミック部材の損傷の有無を検査する。
【0008】
ここで、上述のごとく、振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号のみを計数している。従って、上述のように構造体に対して上記負荷を与えたときに生ずる衝撃に基づき衝撃波が発生することで、衝撃波信号を検出することがあっても、この衝撃波信号は、上記待機期間経過前に発生しているため計数されない。
【0009】
このため、構造体に対し負荷を与えたときに生ずる衝撃波信号に起因してセラミック部材に損傷が発生したものと誤認することがない。その結果、上述した一工程において計数される振動波信号の計数数に基づき、セラミック部材の損傷の有無が正しく検査され得る。
【0010】
特に、セラミック部材の損傷が構造体の外部から視認できなくても、セラミック部材に損傷が発生したことが正しく認識され得るという効果も達成され得る。
【0011】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の構造体の検査方法において、
振動波を所定の閾値と比較し、閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、
振動波弁別信号のうち計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
セラミック部材の損傷の有無の検査を、振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かで行うことを特徴とする。
【0012】
このように、振動波信号のうち所定の閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、この振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かでセラミック部材の損傷の有無を検査することで、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は請求項2に記載の構造体の検査方法において、
構造体は、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものであり、
製造工程のうちの一工程は、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を負荷付与手段により圧縮する工程であることを特徴とする。
【0014】
構造体として、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものである場合、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を圧縮する工程においてセラミック部材の損傷が発生しやすい。このため、上記の構成を備えた構造体の製造工程に本発明を適用することで、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項3に記載の構造体の検査方法において、
セラミック部材は、筒形状又は板形状であることを特徴とする。
【0016】
セラミック部材が筒形状又は板形状の場合、セラミック部材をハウジングに固定する際に、セラミック部材の損傷が発生しやすい。このため、このような形状のセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程に本発明を適用することで、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる
【0017】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体の検査方法において、
構造体は、ガスセンサであることを特徴とする。
【0018】
本発明をガスセンサに適用することで、ガスセンサの製造工程において、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる。
【0019】
また、本発明に係る構造体の検査装置は、請求項6の記載によれば、
ハウジング(110)の内部にセラミック部材(121)を固定してなる構造体(100、201)の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷を加わるように負荷付与手段(300)によって構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を振動波信号として検出する振動波検出手段(400)と、
負荷付与手段の位置を検出し位置検出信号を発生する位置検出手段(460)と、
位置検出信号が所定値になったときに、所定時間の間、遅延信号を発生する遅延信号発生手段(470)と、
振動波信号のうち遅延信号の発生期間の経過後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数する計数手段(480)と、
この計数手段の計数値に応じてセラミック部材に損傷があるときこの旨を報知する報知手段(490)とを備えてなる。
【0020】
このように構成することで、請求項1に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0021】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載の構造体の検査装置において、
振動波信号を所定の閾値と比較し、閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別する弁別手段(450)を備え、
計数手段は、弁別手段にて弁別された振動波弁別信号のうち計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
報知手段は、計数手段にて計数された振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにしたことを特徴とする。
【0022】
このように、振動波弁別信号の弁別を、振動波信号を所定の閾値と比較することで行い、かつ、計数手段にて計数された振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにしたことで、請求項6に記載の発明の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0023】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項6又は請求項7に記載の構造体の検査装置において、
構造体は、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものであり、
製造工程のうちの一工程は、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を負荷付与手段により圧縮する工程であることを特徴とする。
【0024】
このように構成することで、請求項3に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0025】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項8に記載の構造体の検査装置において、
セラミック部材は、筒形状又は板形状である。
【0026】
このように構成することで、請求項4に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0027】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の構造体の検査装置において、
構造体は、ガスセンサであることを特徴とする。
【0028】
このように構成することで、請求項5に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形状に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。図1は、本発明に係る検査装置をガスセンサに適用した例について示している。
【0031】
この検査装置の構成を説明するに先立ち、当該検査装置の適用対象であるガスセンサの製造工程について説明する。当該ガスセンサは、複数の工程からなる製造工程を経て製造される。上記製造工程には、主たる工程として、滑石押さえ工程及び熱カシメ工程が含まれている。
【0032】
まず、滑石押さえ工程について説明する。この滑石押さえ工程は、当該ガスセンサの本体100(図2参照)の製造の終了工程に相当する。
【0033】
当該ガスセンサの本体100(以下、センサ本体100ともいう)を製造する工程のうち滑石押さえ工程の前までの工程の処理にあたり、図3にて示すごとく、段付き筒状の主体金具110、長手状の素子中間体120、滑石リング130及び円筒状プロテクタ140を準備する。
【0034】
ここで、素子中間体120は、セラミックからなる円筒状絶縁部材121を板状のセンサ素子ユニット122の中間部位に同軸的に嵌装して形成される。なお、セラミック製センサ素子ユニット122は、板状のセラミックヒータを板状のセラミック製センサ素子に貼り合わせて形成される。
【0035】
従って、これらセラミックヒータ及びセンサ素子の各先端部は、センサ素子ユニット122の先端部123として絶縁部材121の先端部から延出する(図3参照)。
【0036】
上述のような準備の後、板状パッキン124を主体金具110にその基端開口部111から挿入する。その後、素子中間体120をその先端部123にて主体金具110にその基端開口部111から同軸的に挿入する。この挿入により、素子中間体120はその先端部123にて主体金具110を通りその先端開口部112から延出する。
【0037】
ついで、プロテクタ140を、その開口部にて、センサ素子ユニット122の先端部123を覆うように主体金具110の先端開口部112に溶接により同軸的に固着する。然る後、滑石リング130を、素子中間体120を同軸的に通り、主体金具110内にその基端開口部111から同軸的に嵌装する。
【0038】
この嵌装により、無機粉末からなる滑石リング130は、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に介装される。これによって、図2にて示す滑石押さえ工程前のセンサ本体100の製造が終了する。
【0039】
然る後、上記滑石押さえ工程の処理が行われる。この滑石押さえ工程の処理は、図6にて示す油圧装置300を用いてなされる。
【0040】
ここで、当該油圧装置300の構成について説明する(図6或いは図8参照)。この油圧装置300は、シリンダ310と、ピストン(図示しない)とを備えており、当該ピストンは、シリンダ310内に軸動可能に嵌装されて、当該シリンダ310内に上下両側油圧室を区画形成している。なお、上記上下両側油圧室のうち上側油圧室は、シリンダ310の図6にて図示上側部位に位置しており、上記上下両側油圧室のうち下側油圧室は、シリンダ310の図6にて図示下側部位に位置している。
【0041】
また、上記ピストンはピストンロッド(図示しない)を有しており、このピストンロッドは、上記下側油圧室を通り上記ピストンから同軸的に延出し支持板320に連結されている。また、筒状金型330が、支持板320に同軸的にかつ着脱可能に装着されて位置決め基板340に向けて延出している。この装着は、金型330の環状鍔部331を支持板320にネジ止めすることでなされている。
【0042】
本実施形態において、金型330は、絶縁部材121の外径よりも幾分大きい内径を有するとともに、主体金具110の内径よりも幾分小さな外径を有する。ここで、この金型330は炭素鋼(例えば、SKS3)等の金属材料でもって形成されている。また、位置決め基板340は、図6及び図8にて示すごとく、シリンダ310の直下にて、水平状に設置されており、この位置決め基板340は、炭素鋼(例えば、S45C)等の金属の略正方形状の板材料でもって所定の厚さにて形成されている(図7参照)。
【0043】
また、シリンダ310は、その上下両側油圧室にて、上下両側油圧管311、312を介し切り換え弁350に接続されている。この切り換え弁350は、その切り換えロッド351の一側への切り換え操作に伴い、油圧源(図示しない)からの油圧を上側油圧管311を介し上記上側油圧室に供給するとともに、上記下側油圧室内の油圧を下側油圧管312から排出して上記油圧源に戻す。これに伴い、金型330は、シリンダ310内における上記ピストンの下方への軸動に応じて位置決め基板340に向けて変位する。
【0044】
一方、切り換え弁350は、切り換えロッド351の他側への切り換え操作に伴い、上記油圧源からの油圧を下側油圧管312を介し上記下側油圧室に供給するとともに、上記上側油圧室内の油圧を上側油圧管311から排出して上記油圧源に戻す。これに伴い、金型330は、シリンダ310内における上記ピストンの上方への軸動に応じて位置決め基板340側の上方へ変位する。
【0045】
しかして、このように構成した油圧装置300のもと、上記滑石押さえ工程において、滑石130に対する押さえ処理が次のようになされる。上述のように滑石押さえ工程の前までに製造されたセンサ本体100を、プロテクタ140から、図6にて示すごとく、環状の治具341を通し、位置決め基板340に形成した貫通穴部342に挿通させる。
【0046】
これにより、センサ本体100は、主体金具110の大径部にて、治具341上に同軸的に着座して立設する。このとき、金型330は、絶縁部材121の直上にて当該絶縁部材121と同軸的に位置している。
【0047】
このような状態において、切り換え弁350の切り換えロッド351をその一側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型330が支持板320と共に上記ピストンの下方への軸動に伴い下方へ変位する。
【0048】
このため、金型330は、センサ素子ユニット122の基端部側から絶縁部材121に外方から同軸的に嵌装されながら変位する。この変位に伴い、金型330は、その先端部332にて、主体金具110内に挿入されて、滑石リング130の上端部に衝突する。
【0049】
このとき、滑石リング130及び金型330の少なくとも一方が、上記衝突による衝撃に起因して瞬間的に弾性歪みを発生する。そして、この瞬間的弾性歪みに起因して、衝撃波が、滑石リング130及び金型330の間の衝突部位を中心としてセンサ本体100に発生する。
【0050】
このように金型330が滑石リング130に衝突した後、上述したようにシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出がさらに継続されると、金型330は、その先端部332により、滑石リング130に継続的に加圧する。これにより、滑石リング130は、金型330により主体金具110内にて押さえ込まれる。
【0051】
このように滑石リング130が押さえ込まれた後、切り換え弁350の切り換えロッド351をその他側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の下側油圧室内への油圧の供給及び上記上側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型330が支持板320と共に上記ピストンの上方への軸動に伴い上方へ変位して原位置に復帰する。これにより、滑石押さえ工程が終了し、滑石押さえ工程後のセンサ本体100の製造が終了する。
【0052】
次に、熱カシメ工程について説明する。この熱カシメ工程は、当該ガスセンサの製造工程のうち当該ガスセンサの実質的な完成品200(図9参照)の製造の終了工程に相当する。
【0053】
熱カシメ工程前までの工程の処理にあたり、上述した滑石押さえ工程後のセンサ本体100に加え、カシメリング210、リングパッキン220及び円筒状の外筒230を準備する(図5参照)。
【0054】
このように準備した後、カシメリング210を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100を同軸的に通して主体金具110内に嵌装する。この嵌装により、カシメリング210は、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に介装されて滑石リング130上に着座する。
【0055】
ついで、外筒230を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100に同軸的に通し主体金具110に向けて嵌装する。この嵌装により、外筒230は、その先端部231にて、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に位置してカシメリング210上に着座する。
【0056】
然る後、リングパッキン220を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100に同軸的に通して主体金具110内に嵌装する。この嵌装により、リングパッキン220は、主体金具110の内周壁と外筒230の先端側周壁との間に同軸的に介装されて外筒230の先端部231上に着座する。
【0057】
これにより、熱カシメ前の状態にあるセンサ構造体201が、図4にて示すごとく製造される。
【0058】
然る後、熱カシメ工程の処理が行われる。この熱カシメ工程の処理は、上述した油圧装置300を用いてなされる。但し、新たな金型360が、金型330に代えて、図8にて示すごとく、支持板320に同軸的に装着される。この装着は、金型360の環状鍔部361を支持板320にネジ止めすることでなされている。また、金型360は、外筒230の外径よりも幾分大きな内径を有するとともに、主体金具110の基端開口部111の外径よりも幾分大きな外径を有する。なお、金型360は、硬質ベリリウム銅(例えば、BeA−25)等の金属材料でもって形成されている。
【0059】
しかして、熱カシメ工程においては、滑石工程後のセンサ本体100を治具341から除去した後、上述のように熱カシメ工程前までの工程で製造されたセンサ構造体201を、プロテクタ140側から、図8にて示すごとく、治具341を通し、位置決め基板340の貫通穴部342に挿通させる。
【0060】
これにより、センサ構造体201は、主体金具110の大径部位にて、治具341上に同軸的に着座して立設する。このとき、金型360は、センサ構造体201の外筒230の直上にて当該外筒230と同軸的に位置している。
【0061】
このような状態において、上述と同様に切り換え弁350の切り換えロッド351をその一側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型360が支持板320と共に上記ピストンの下方への軸動に基づき下方へ変位する。このため、金型360は、センサ構造体201の基端部側から外筒230に外方から同軸的に嵌装されながら変位する。この変位に伴い、金型360は、その先端部362にて、主体金具110の基端開口部111に衝突する。
【0062】
このとき、主体金具110及び金型360の少なくとも一方が、上記衝突による衝撃に起因して瞬間的に弾性歪みを発生する。そして、この瞬間的弾性歪みに起因して、衝撃波が、主体金具110と金型360との間の衝突部位を中心としてセンサ構造体201に発生する。なお、熱カシメ工程のときに、主体金具110に通電することによって、センサ構造体201を加熱しておく。
【0063】
このような金型360の主体金具110との衝突後、上述と同様にシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出がさらに継続されると、金型360は、その先端部362により、主体金具110の基端開口部111に継続的に加圧する。これにより、主体金具110の基端開口部111は、図9にて示す円113内にてごとく、熱カシメされ、完成品200の製造が終了する。
【0064】
本実施形態においては、図1にて示す検査装置による検査は、当該ガスセンサの製造工程のうち上述した滑石押さえ工程及び熱カシメ工程に合わせて行われるものである。そこで、当該検査装置の構成について図1を参照して説明する。
【0065】
当該検査装置は、アコースティック・エミッションセンサ400(以下、AEセンサ400ともいう)を備えており、このAEセンサ400は、図6或いは図8にて示すごとく、位置決め基板410に環状ボス420を介し装着されている。ここで、位置決め基板410は、位置決め基板340と同様の形成材料でもって当該位置決め基板340と同一形状に形成されており、この位置決め基板410は、その一端部411にて、位置決め基板340の一端部343に面接触状態にて当接するように当該位置決め基板340と同様に水平状に配設されている(図7参照)。
【0066】
環状ボス420は、フランジ部421から環状ボス部422を同軸的に延出して構成されている。しかして、ボス420は、そのフランジ部421にて、位置決め基板410上に同軸的に位置するように装着されている。
【0067】
AEセンサ400は、図10にて示すごとく、ケーシング430を備えており、このケーシング430は、略円筒状の周壁431と、この周壁431の上端開口部に設けた円板状蓋432と、周壁431の下端開口部に底板として設けた円板状受信板433とでもって、構成されている。しかして、ケーシング430は、その底部にて、図6或いは図8にて示すごとく、ボス420に同軸的に嵌装されている。
【0068】
受信板433は、セラミックでもって形成されており、この受信板433は、位置決め基板410の上面に一様に当接して、後述のように位置決め基板410を介し振動波を受信し板厚方向に振動する。
【0069】
また、当該AEセンサ400は、セラミックからなる圧電体434を備えており、この圧電体434は、ケーシング430内にて受信板433上に立設されている。当該圧電体434は、受信板433の振動に伴い圧電変換作用を発揮して圧電電圧を検出電圧(以下、AEセンサ400の検出電圧ともいう)として発生しリード線435を介し出力する。なお、リード線435は、圧電体434から周壁431の一部に設けた筒部436内に延出している。
【0070】
当該検査装置は、図1に示すごとく、前置増幅器440及び信号弁別ユニット450を備えている。前置増幅器440は、AEセンサ400の検出電圧を増幅し信号弁別ユニット450に出力する。
【0071】
信号弁別ユニット450は、ハイパスフィルタ451(以下、HPF451ともいう)、増幅器452、検波器453及び信号弁別器454を備えている。HPF451は、AEセンサ400からそのリード線435及び前置増幅器440を介し検出電圧を入力されて、当該検出電圧の周波数成分のうち所定の周波数(例えば、20(kHz))以下の低周波数成分を除去し、残りの周波数成分をフィルタ電圧として発生する。本実施形態において、上記低周波数成分は、ノイズ等の外乱の周波数を含む成分をいう。
【0072】
増幅器452は、HPF451からのフィルタ電圧を増幅し増幅電圧として発生する。検波器453は、増幅器452からの増幅電圧から所定の検波成分(即ち、所定の振動波成分)を検波して検波信号を発生する。ここで、上記所定の検波成分は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において金型330或いは360の滑石リング130或いは主体金具110との衝突以後にセンサ本体100或いはセンサ構造体201から生ずる振動波成分に対応する。
【0073】
信号弁別器454は、検波器453からの検波信号から所定の閾値以上の信号成分を順次弁別し弁別信号(振動波弁別信号)を発生する。ここで、上記所定の閾値は、所定の値に設定されており、当該所定の値は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において絶縁部材121に後述のように割れが生じるおそれのあるときの検波信号の値に対応する。
【0074】
また、当該検査装置は、位置センサ460、遅延回路470、カウンタ480及びブザー回路490を備えている。位置センサ460は、図6或いは図8にて示すごとく、センサ本体100或いはセンサ構造体201の主体金具110の基端開口部111の近傍に支持されている。この位置センサ460は、シリンダ装置300の金型330或いは360がその先端部にて下降端に変位したときこの先端部を検出して位置検出信号を発生する。
【0075】
遅延回路470は位置センサ460からの位置検出信号に基づきハイレベルにて遅延信号を発生する。この遅延信号の信号幅は、所定幅に設定されている。本実施形態では、該所定幅は、後述のように金型330の滑石リング130との衝突或いは金型360の主体金具110の基端開口部111との衝突による衝撃で生ずる衝撃波の発生期間よりも幾分長い所定時間に対応する。なお、遅延回路470からハイレベルの遅延信号が発生している期間が、待機期間に相当する。
【0076】
カウンタ480は、遅延回路470からの遅延信号のローレベルへの低下に基づきリセット始動されて、信号弁別器454から順次発生する弁別信号を計数し、この計数値の所定値への到達時に、計数信号を発生する。なお、遅延回路470からローレベルの遅延信号が発生している期間が、計数期間に相当する。
【0077】
但し、上記所定値は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において絶縁部材121に後述のように割れが生じるおそれのあるときの弁別信号の数に対応する。ブザー回路490は、カウンタ480からの計数信号に基づきブザーを鳴動させる。
【0078】
このように構成した当該検査装置を用いて上述した滑石押さえ工程及び熱カシメ工程における検査について説明する。
【0079】
当該ガスセンサの製造工程が上述のように滑石押さえ工程におかれると、油圧装置300では、図6にて示すごとく、金型330が支持板320に装着されるとともに、滑石押さえ工程前のセンサ本体100が治具341を介し位置決め基板340に立設される。このとき、AEセンサ400を上述のように装着した位置決め基板410は、その一側端部411にて、位置決め基板340の一側端部343に面接触状態にて当接している。
【0080】
このような状態において、上述の滑石押さえ工程にて述べたごとく、金型330が、下方へ変位して、その先端部332にて、滑石リング130の上端部に衝突したとき、当該金型330はその先端部332にて下降端に位置する。従って、位置センサ460は、当該金型330の先端部332を検出し位置検出信号を発生する。
【0081】
これに伴い、遅延回路470が、位置センサ460からの位置検出信号に基づき遅延信号を発生しカウンタ480に入力する。このような状態では、上記遅延信号がハイレベル(待機期間)にあるため、カウンタ480は、リセット始動されない。
【0082】
また、上述のように金型330が滑石リング130に衝突したとき、滑石押さえ工程前のセンサ本体100は、上述のように衝撃波を発生する。このように発生する衝撃波は、滑石押さえ工程前のセンサ本体100から治具341を介し位置決め基板340に伝搬する。
【0083】
このように伝搬した衝撃波は、位置決め基板340から位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に伝搬する。ここで、両位置決め基板340、410は、上述のごとく、面接触状態にあるため、上記衝撃波の位置決め基板340から位置決め基板410への伝搬は良好に行われる。
【0084】
上述のように衝撃波が受信板433に伝搬すると、この受信板433は、当該衝撃波の周波数に応じて板厚方向に振動する。すると、圧電素子434は、受信板433の振動に伴い圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。
【0085】
ついで、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0086】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅されて検波器453に増幅電圧として出力される。すると、当該検波器453は、増幅器452の増幅電圧から上記検波成分を検波して検波信号を発生し信号弁別器454に出力する。
【0087】
このため、この信号弁別器454は、上記検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別する。ここで、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波に対応して検波器453から発生する検波信号に基づき信号弁別器454が弁別信号を発生すれば、この弁別信号はカウンタ480に出力される。
【0088】
このような段階では、上述のようにカウンタ480はリセット始動されていない(待機期間である)から、当該カウンタ480は上記弁別信号を計数することはない。
【0089】
然る後、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波が消滅するとともに、遅延回路470からの遅延信号がローレベルになると、カウンタ480はリセット始動されて計数作動を開始する。
【0090】
また、上述のように金型330が滑石リング130に衝突した後も、金型330には下方に変位する力が継続的に付与されるため、当該滑石リング130は、金型330によりその先端部にて下方に向けて押圧するように押さえ込まれる。
【0091】
このため、絶縁部材121が滑石リング130により径方向に押圧されて弾性歪みを起こす。この弾性歪みは、絶縁部材121に対する押圧力の増大に伴い増大する。そして、当該弾性歪みが絶縁部材121の弾性限界を超えるような歪みに達すると、絶縁部材121が割れることがある。なお、割れの形状としては、円筒状絶縁部材121の周方向の全周に渡って発生するリング状の割れや、部分的な割れがある。
【0092】
このような過程では、絶縁部材121が、その弾性歪みの増大に応じて振動波を発生する。ここで、当該振動波の周波数は、絶縁部材121の弾性歪みに起因して生ずる固有の周波数範囲に属する。
【0093】
また、当該振動波の振幅は、絶縁部材121の弾性歪みの増大に応じて増大する。このことは、当該振動波の振幅は、絶縁部材121に割れを生じたときに最大となることを意味する。
【0094】
上述のように滑石リング130の押さえ込みに起因して発生する振動波は、上述の衝撃波の場合と同様に、滑石押さえ工程中のセンサ本体100から治具341を介し位置決め基板340に伝搬し、さらに、上述と同様に位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に良好に伝搬する。
【0095】
すると、受信板433は、上述のように発生する振動波の周波数に応じて板厚方向に振動し、この振動に伴い、圧電素子434は、圧電作用を発揮して、圧電電圧を発生しリード線435を介し前置増幅器440に出力する。ここで、圧電素子434から発生する圧電電圧は、上述の衝撃波に対応する圧電電圧とは異なる。
【0096】
しかして、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、上述と同様に、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0097】
すると、上述と同様に、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波され検波信号として信号弁別器454に出力される。これに伴い、信号弁別器454は、検波器453からの検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別し、弁別信号を順次発生しカウンタ480に出力する。
【0098】
このとき、上述のようにカウンタ480は、既にリセット始動されて計数状態(計数期間)にある。従って、カウンタ480は、信号弁別器454から順次出力される弁別信号を計数する。
【0099】
このような計数に伴い、カウンタ480の計数値が上記所定値に達すると、カウンタ480は計数信号を発生しブザー回路490に出力する。このため、このブザー回路490はそのブザーを鳴動させる。
【0100】
これにより、滑石押さえ工程後のセンサ本体100は、絶縁部材121の割れ等により、不良品であることが分かる。その結果、このようなセンサ本体100は、熱カシメ工程には用いられないこととなる。
【0101】
一方、信号弁別器454が弁別信号を発生しないか、或いは当該信号弁別器454が弁別信号を発生してもカウンタ480の計数値が上記所定値に達しなければ、カウンタ480は計数信号を発生しない。従って、ブザー回路490のブザーは鳴動しない。これにより、滑石押さえ工程後のセンサ本体100は良品であることが分かる。その結果、このようなセンサ本体100は、熱カシメ工程に用いられる。
【0102】
以上説明したように、滑石押さえ工程において滑石リング130の押さえ込みに起因して絶縁部材121に割れが発生するとき、この割れに伴い発生する振動波を当該検出装置によりAEセンサ400でもって検出し、この検出出力を上述のように信号弁別ユニット450により弁別信号として順次弁別し、これら弁別信号をカウンタ480でもって計数し、かつこの計数値が上記所定値に達したときブザー回路490によりそのブザーを鳴動させる。
【0103】
ここで、上述のように金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波が発生することで、信号弁別ユニット450が弁別信号を発生することがあっても、上述のごとく、遅延回路470が、金型330の下降端への変位時に位置センサ460から発生する位置検出信号に基づき、ハイレベルにて遅延信号を発生しカウンタ480のリセット始動を禁止するので、ブザー回路490のブザーが鳴動することはない。
【0104】
その結果、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波に起因して絶縁部材121の割れと誤認することがない。よって、滑石押さえ工程におけるブザー490の鳴動に基づき、滑石リング130の押さえ込みに起因して絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0105】
特に、絶縁部材121の割れが主体金具110の内部にて発生したために視認できなくても、絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0106】
次に、このようなセンサ本体100を用いた上述の熱カシメ工程の処理において検査を行う例について説明する。
【0107】
上述の熱カシメ工程にて述べたように、油圧装置300では、金型360が金型330に代えて支持板320に装着されるとともに、良品としてのセンサ本体100を用いてなるセンサ構造体201が治具341を介し位置決め基板340に立設される。このとき、AEセンサ400を上述のように装着した位置決め基板410は、上述のごとく、位置決め基板340と面接触状態にある。
【0108】
このような状態において、上述のごとく、金型360が、下方へ変位して、その先端部362にて、主体金具110の基端開口部111に衝突したとき、当該金型360はその先端部にて下降端に位置する。従って、位置センサ460は、当該金型360の先端部362を検出し位置検出信号を発生する。
【0109】
これに伴い、遅延回路470が、位置センサ460からの位置検出信号に基づき遅延信号を発生しカウンタ480に入力する。このような段階では、上記遅延信号がハイレベル(待機期間)にあるため、カウンタ480は、リセット始動されない。
【0110】
また、上述のように金型360が主体金具110の基端開口部111に衝突したとき、センサ構造体201は、上述のように衝撃波を発生する。このように発生する衝撃波は、センサ構造体201から治具341を介し位置決め基板340に伝搬する。
【0111】
このように伝搬した衝撃波は、上述と同様に、位置決め基板340から位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に伝搬する。ここで、両位置決め基板は、上述のごとく、良好に面接触しているため、衝撃波の位置決め基板340から位置決め基板410への伝搬は良好に行われる。
【0112】
上述のように衝撃波が受信板433に伝搬すると、この受信板433は、当該衝撃波の周波数に応じて板厚方向に振動し、圧電素子434は、受信板433の振動に伴い圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。
【0113】
すると、この前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0114】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波されて検波信号として信号弁別器454に出力する。これに伴い、この信号弁別器454は、検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別する。ここで、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波に対応して検波器453から発生する検波信号に基づき信号弁別器454が弁別信号を発生すれば、この弁別信号はカウンタ480に出力される。
【0115】
このとき、上述のようにカウンタ480はリセット始動されていない(待機期間である)から、当該カウンタ480は上記弁別信号を計数することはない。
【0116】
然る後、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波が消滅するとともに、遅延回路470からの遅延信号がローレベルに低下すると、カウンタ480はリセット始動されて計数作動を開始する。
【0117】
また、上述のように金型360が主体金具110に衝突した後も、金型360には下方に変位する力が継続的に付与されるため、主体金具110の基端開口部111は、金型360によりその先端部362にて内側に向けて熱カシメされる(図9にて図示円113内参照)。
【0118】
このとき、絶縁部材121が、上述したカシメ力に起因して主体金具110の基端開口部111により径方向に押圧されて弾性歪みを起こす。この弾性歪みは、絶縁部材121に対する押圧力の増大に伴い増大する。そして、当該弾性歪みが絶縁部材121の弾性限界を超えるような歪みに達すると、絶縁部材121が割れることがある。
【0119】
このような過程では、絶縁部材121が、上記カシメ力に起因する弾性歪みの増大に応じて振動波を発生する。ここで、当該振動波の周波数は、絶縁部材121の弾性歪みに起因して生ずる上記固有の周波数範囲に属する。
【0120】
また、当該振動波の振幅は、上記カシメ力に起因する絶縁部材121の弾性歪みの増大に応じて増大する。このことは、当該振動波の振幅は、絶縁部材121に割れを生じたときに最大となることを意味する。
【0121】
上述のようにカシメ力に起因して発生する振動波は、上述の衝撃波と同様に、センサ構造体201から治具341を介し位置決め基板340に伝搬し、さらに位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に良好に伝搬する。
【0122】
すると、受信板433は、上述のようにカシメ力に起因して発生する振動波の周波数に応じて板厚方向に振動する。このような振動に伴い、圧電素子434は圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。ここで、圧電素子434から発生する圧電電圧は、上述のカシメ力に起因した衝撃波に対応する圧電電圧とは異なる。
【0123】
しかして、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0124】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波されて検波信号として信号弁別器454に出力される。これに伴い、この信号弁別器454は、検波器453からの検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別し、弁別信号を順次発生しカウンタ480に出力する。
【0125】
このとき、上述と同様に、カウンタ480は、既にリセット始動されて計数状態(計数期間)にある。従って、カウンタ480は、信号弁別器454から順次出力される弁別信号を計数する。
【0126】
このような計数に伴い、カウンタ480の計数値が上記所定値に達すると、当該カウンタ480は計数信号を発生しブザー回路490に出力する。このため、このブザー回路490はそのブザーを鳴動させる。これにより、完成品200は、絶縁部材121の割れ等により、不良品であることが分かる。
【0127】
一方、信号弁別器454が弁別信号を発生しないか、或いは当該信号弁別器454が弁別信号を発生してもカウンタ480の計数値が上記所定値に達しなければ、カウンタ480は計数信号を発生しない。従って、ブザー回路490のブザーは鳴動しない。これにより、センサ構造体201は上記熱カシメの処理に基づき良品の完成品200となる。
【0128】
以上説明したように、熱カシメ工程において主体金具110の熱カシメに起因して絶縁部材121に割れが発生するとき、この割れに伴い発生する振動波を当該検出装置によりAEセンサ400でもって検出し、この検出出力を上述のように信号弁別ユニット450により弁別信号として順次弁別し、これら弁別信号をカウンタ480でもって計数し、かつこの計数値が上記所定値に達したときブザー回路490によりそのブザーを鳴動させる。
【0129】
ここで、上述のように金型360の主体金具110との衝突による衝撃波が発生することで、信号弁別ユニット450が弁別信号を発生することがあっても、上述のごとく、遅延回路470が、金型360の下降端への変位時に位置センサ460から発生する位置検出信号に基づき、ハイレベルにて遅延信号を発生しカウンタ480のリセット始動を禁止するので、ブザー回路490のブザーが鳴動することはない。
【0130】
その結果、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波に起因して絶縁部材121の割れと誤認することがない。よって、熱カシメ工程におけるブザー490の鳴動に基づき、主体金具110の熱カシメに起因して絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0131】
特に、絶縁部材121の割れが主体金具110の内部にて発生したために視認できなくても、絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0132】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。例えば、図11に示すように、信号弁別ユニット450から出力される弁別信号(振動波弁別信号)を記録するための記録装置500を設けることができる。この記録装置500は、カウンタ480にて発生した計数信号が入力されるようになっている。また、記録装置500は、信号弁別ユニット450から出力される弁別信号を計数期間毎に一次的に記憶する一次記憶部と、カウンタ480からの計数信号が記録装置500に入力されたときに一次記憶部に記憶されていた弁別信号を保存する信号保存部とを備えている。つまり、記録装置500は、カウンタ480が計数信号を出力したときの(換言すれば、絶縁部材121に割れが発生したときの)弁別信号波形のみを記録することができるように構成されている。
【0133】
このような記録装置500を設けることにより、信号保存部に保存された弁別信号波形を詳細に解析できるようになる。具体的には、弁別信号波形のうち振幅の大きな波形が計数期間内のどのタイミングで発生しているか解析することにより、絶縁部材121の割れ発生位置を特定することが可能となる。また、振幅の大きな波形の連続性を解析することにより、絶縁部材121に割れが発生したか或いはノイズによってカウンタ480が誤って計数信号を発生しているのかを正確に区別できるようになる。また、記録装置500はカウンタ480が計数信号を出力したときの弁別信号波形のみを記録するように構成されているため、記録装置500に記録されるデータ容量を小さくすることができ、記録装置500を簡易なシステムにて構築することが可能となる。
【0134】
また、本発明の実施にあたり、位置決め基板340を列状に並べてベルトコンベアを構成し、上記検出装置を、上述の滑石押さえ工程及び熱カシメ工程毎に配設して、ガスセンサの自動的な製造工程の中で自動的に検査するようにしてもよい。
【0135】
また、本発明の実施にあたり、ブザー回路490に限ることなく、ランプや表示装置等の各種の報知手段でもって、カウンタ480の計数出力に基づき報知するようにしてもよい。
【0136】
また、本発明の実施にあたり、油圧装置300に限らず、例えば、空圧装置を採用してもよく、また、リニアアクチュエータ等の直線的な往復動機構その他の負荷を与える機構を採用してもよい。
【0137】
また、本発明の実施にあたり、絶縁部材121における割れの検出に限ることはなく、例えば、板状センサ素子ユニット122における割れの検出に適用してもよい。
【0138】
また、本発明の実施にあたり、ガスセンサとしては、上述のガスセンサに限ることはなく、筒状の主体金具内に筒状或いは板状のセンサ素子を配置し、主体金具とセンサ素子との間に配置した無機粉末等を加圧充填することで、センサ素子を主体金具に固定したガスセンサの製造工程に適用してもよい。
【0139】
また、本発明の実施にあたり、遅延回路470は位置センサ460からの位置検出信号に基づきハイレベル或いはローレベルの遅延信号を発生していたが、これに限られず、例えば、遅延回路470が、油圧装置300の切り換え弁350の切り換え操作により発生する切り換え信号に基づいて遅延信号を発生するようにしてもよい。
【0140】
また、本発明の実施にあたり、ガスセンサに限らず、例えば、スパークプラグに適用してもよい。ここで、スパークプラグは、筒状の主体金具と、先端部が突出するようにその主体金具内に嵌め込まれた絶縁体と、先端部を突出させた状態で絶縁体の内側に設けられた中心電極と、主体金具に一端が結合され、他端側が中心電極の先端と対向するように配置された接地電極とを備えている。このうち、主体金具における接地電極の結合された前方側とは反対側の後方側開口部内面と、絶縁体の軸方向中間部位に形成されたフランジ状の突出部との間には、前方側から順に、リング状のパッキン、タルク等の充填層及びリング状のパッキンが配置されており、主体金具の後方側開口縁を内側に加締めることにより、主体金具と絶縁体とが固定される。
【0141】
ところで、スパークプラグにおける主体金具と絶縁体とを上述のようにカシメ固定する工程においては、絶縁体に割れが発生する可能性がある。そこで、本発明をスパークプラグの製造工程に適用することにより、絶縁体に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る検査装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】滑石押さえ工程前のセンサ本体を示す側面図である。
【図3】図2のセンサ本体の分解図である。
【図4】熱カシメ工程前のセンサ構造体を示す側面図である。
【図5】図4のセンサ構造体の分解図である。
【図6】図2のセンサ本体に対する滑石押さえ工程の処理に合わせて検査装置による検査を行うための概略構成側面図である。
【図7】図6の両位置決め基板の配設状態を示す拡大平面図である。
【図8】図4のセンサ構造体に対する熱カシメ工程の処理に合わせて検査装置による検査を行うための概略構成側面図である。
【図9】熱カシメ工程後のセンサ構造体である完成品を示す拡大側面図である。
【図10】図1のAEセンサの拡大断面図である。
【図11】記録装置を備えた検査装置の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0143】
100…センサ本体、121…絶縁部材、201…センサ構造体、
340、410…位置決め基板、400…AEセンサ、450…信号弁別ユニット、460…位置センサ、470…遅延回路、480…カウンタ、490…ブザー回路、500…記録装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記特許文献1に開示されたセラミックス焼結体の検査方法がある。この検査方法では、セラミック焼結体の試験片に負荷を与えて当該試験片に曲げ試験を施し、この曲げ試験に伴い上記試験片から発生する音響放出波信号を計数し、このように計数した音響放出波信号のうち試験片の材質に応じた特定の周波数領域にピーク値をもつ信号に着目して、この信号に基づき試験片の欠陥を検査するようになっている。
【特許文献1】特開昭63−243753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のセラミックス焼結体の検査方法では、上述のように試験片の曲げ試験を行うにあたり、当該試験片に負荷を与えたときに生ずる衝撃に起因して、上記試験片から衝撃波信号が発生する。
【0004】
しかし、この衝撃波信号は、曲げ試験による試験片の曲げに起因して発生する音響放出波信号とは異なり、試験片の欠陥とは無関係なものである。従って、当該試験片に負荷を与えたときに生ずる衝撃に起因して上記試験片から発生する衝撃波信号を計数しても、このような計数結果によっては、試験片の欠陥の検査が正しく行えないという不具合がある。
【0005】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程において、セラミック部材に負荷が加わるように構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を有効に活用して、当該セラミック部材の損傷の有無を検査するようにした構造体の検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る構造体の検査方法では、請求項1の記載によれば、
ハウジング(110)の内部にセラミック部材(121)を固定してなる構造体(100、201)の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段(300)によって構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を振動波信号として検出し、
振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、
振動波信号の計数値に基づきセラミック部材の損傷の有無を検査する。
【0007】
このように構成することで、ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷が加わるように構造体に対して負荷を与えた際に、セラミック部材に損傷が発生したとき、この損傷に伴い発生する振動波を振動波信号として検出し、振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、振動波信号の計数値に基づきセラミック部材の損傷の有無を検査する。
【0008】
ここで、上述のごとく、振動波信号のうち負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号のみを計数している。従って、上述のように構造体に対して上記負荷を与えたときに生ずる衝撃に基づき衝撃波が発生することで、衝撃波信号を検出することがあっても、この衝撃波信号は、上記待機期間経過前に発生しているため計数されない。
【0009】
このため、構造体に対し負荷を与えたときに生ずる衝撃波信号に起因してセラミック部材に損傷が発生したものと誤認することがない。その結果、上述した一工程において計数される振動波信号の計数数に基づき、セラミック部材の損傷の有無が正しく検査され得る。
【0010】
特に、セラミック部材の損傷が構造体の外部から視認できなくても、セラミック部材に損傷が発生したことが正しく認識され得るという効果も達成され得る。
【0011】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の構造体の検査方法において、
振動波を所定の閾値と比較し、閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、
振動波弁別信号のうち計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
セラミック部材の損傷の有無の検査を、振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かで行うことを特徴とする。
【0012】
このように、振動波信号のうち所定の閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、この振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かでセラミック部材の損傷の有無を検査することで、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は請求項2に記載の構造体の検査方法において、
構造体は、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものであり、
製造工程のうちの一工程は、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を負荷付与手段により圧縮する工程であることを特徴とする。
【0014】
構造体として、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものである場合、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を圧縮する工程においてセラミック部材の損傷が発生しやすい。このため、上記の構成を備えた構造体の製造工程に本発明を適用することで、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項3に記載の構造体の検査方法において、
セラミック部材は、筒形状又は板形状であることを特徴とする。
【0016】
セラミック部材が筒形状又は板形状の場合、セラミック部材をハウジングに固定する際に、セラミック部材の損傷が発生しやすい。このため、このような形状のセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程に本発明を適用することで、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる
【0017】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体の検査方法において、
構造体は、ガスセンサであることを特徴とする。
【0018】
本発明をガスセンサに適用することで、ガスセンサの製造工程において、セラミック部材の損傷の有無を確実に検査できる。
【0019】
また、本発明に係る構造体の検査装置は、請求項6の記載によれば、
ハウジング(110)の内部にセラミック部材(121)を固定してなる構造体(100、201)の製造工程のうちの一工程において、セラミック部材に負荷を加わるように負荷付与手段(300)によって構造体に対して負荷を与えたときに、構造体から発生する振動波を振動波信号として検出する振動波検出手段(400)と、
負荷付与手段の位置を検出し位置検出信号を発生する位置検出手段(460)と、
位置検出信号が所定値になったときに、所定時間の間、遅延信号を発生する遅延信号発生手段(470)と、
振動波信号のうち遅延信号の発生期間の経過後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数する計数手段(480)と、
この計数手段の計数値に応じてセラミック部材に損傷があるときこの旨を報知する報知手段(490)とを備えてなる。
【0020】
このように構成することで、請求項1に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0021】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載の構造体の検査装置において、
振動波信号を所定の閾値と比較し、閾値以上の振動波信号を振動波弁別信号として弁別する弁別手段(450)を備え、
計数手段は、弁別手段にて弁別された振動波弁別信号のうち計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
報知手段は、計数手段にて計数された振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにしたことを特徴とする。
【0022】
このように、振動波弁別信号の弁別を、振動波信号を所定の閾値と比較することで行い、かつ、計数手段にて計数された振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにしたことで、請求項6に記載の発明の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0023】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項6又は請求項7に記載の構造体の検査装置において、
構造体は、セラミック部材の周囲を取り囲むようにハウジングが配置され、ハウジングとセラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することによりハウジングとセラミック部材とが固定されるものであり、
製造工程のうちの一工程は、ハウジングとセラミック部材との間に充填された無機粉末を負荷付与手段により圧縮する工程であることを特徴とする。
【0024】
このように構成することで、請求項3に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0025】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項8に記載の構造体の検査装置において、
セラミック部材は、筒形状又は板形状である。
【0026】
このように構成することで、請求項4に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0027】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の構造体の検査装置において、
構造体は、ガスセンサであることを特徴とする。
【0028】
このように構成することで、請求項5に記載の発明と実質的に同様の作用効果を達成し得る構造体の検査装置の提供が可能となる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形状に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。図1は、本発明に係る検査装置をガスセンサに適用した例について示している。
【0031】
この検査装置の構成を説明するに先立ち、当該検査装置の適用対象であるガスセンサの製造工程について説明する。当該ガスセンサは、複数の工程からなる製造工程を経て製造される。上記製造工程には、主たる工程として、滑石押さえ工程及び熱カシメ工程が含まれている。
【0032】
まず、滑石押さえ工程について説明する。この滑石押さえ工程は、当該ガスセンサの本体100(図2参照)の製造の終了工程に相当する。
【0033】
当該ガスセンサの本体100(以下、センサ本体100ともいう)を製造する工程のうち滑石押さえ工程の前までの工程の処理にあたり、図3にて示すごとく、段付き筒状の主体金具110、長手状の素子中間体120、滑石リング130及び円筒状プロテクタ140を準備する。
【0034】
ここで、素子中間体120は、セラミックからなる円筒状絶縁部材121を板状のセンサ素子ユニット122の中間部位に同軸的に嵌装して形成される。なお、セラミック製センサ素子ユニット122は、板状のセラミックヒータを板状のセラミック製センサ素子に貼り合わせて形成される。
【0035】
従って、これらセラミックヒータ及びセンサ素子の各先端部は、センサ素子ユニット122の先端部123として絶縁部材121の先端部から延出する(図3参照)。
【0036】
上述のような準備の後、板状パッキン124を主体金具110にその基端開口部111から挿入する。その後、素子中間体120をその先端部123にて主体金具110にその基端開口部111から同軸的に挿入する。この挿入により、素子中間体120はその先端部123にて主体金具110を通りその先端開口部112から延出する。
【0037】
ついで、プロテクタ140を、その開口部にて、センサ素子ユニット122の先端部123を覆うように主体金具110の先端開口部112に溶接により同軸的に固着する。然る後、滑石リング130を、素子中間体120を同軸的に通り、主体金具110内にその基端開口部111から同軸的に嵌装する。
【0038】
この嵌装により、無機粉末からなる滑石リング130は、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に介装される。これによって、図2にて示す滑石押さえ工程前のセンサ本体100の製造が終了する。
【0039】
然る後、上記滑石押さえ工程の処理が行われる。この滑石押さえ工程の処理は、図6にて示す油圧装置300を用いてなされる。
【0040】
ここで、当該油圧装置300の構成について説明する(図6或いは図8参照)。この油圧装置300は、シリンダ310と、ピストン(図示しない)とを備えており、当該ピストンは、シリンダ310内に軸動可能に嵌装されて、当該シリンダ310内に上下両側油圧室を区画形成している。なお、上記上下両側油圧室のうち上側油圧室は、シリンダ310の図6にて図示上側部位に位置しており、上記上下両側油圧室のうち下側油圧室は、シリンダ310の図6にて図示下側部位に位置している。
【0041】
また、上記ピストンはピストンロッド(図示しない)を有しており、このピストンロッドは、上記下側油圧室を通り上記ピストンから同軸的に延出し支持板320に連結されている。また、筒状金型330が、支持板320に同軸的にかつ着脱可能に装着されて位置決め基板340に向けて延出している。この装着は、金型330の環状鍔部331を支持板320にネジ止めすることでなされている。
【0042】
本実施形態において、金型330は、絶縁部材121の外径よりも幾分大きい内径を有するとともに、主体金具110の内径よりも幾分小さな外径を有する。ここで、この金型330は炭素鋼(例えば、SKS3)等の金属材料でもって形成されている。また、位置決め基板340は、図6及び図8にて示すごとく、シリンダ310の直下にて、水平状に設置されており、この位置決め基板340は、炭素鋼(例えば、S45C)等の金属の略正方形状の板材料でもって所定の厚さにて形成されている(図7参照)。
【0043】
また、シリンダ310は、その上下両側油圧室にて、上下両側油圧管311、312を介し切り換え弁350に接続されている。この切り換え弁350は、その切り換えロッド351の一側への切り換え操作に伴い、油圧源(図示しない)からの油圧を上側油圧管311を介し上記上側油圧室に供給するとともに、上記下側油圧室内の油圧を下側油圧管312から排出して上記油圧源に戻す。これに伴い、金型330は、シリンダ310内における上記ピストンの下方への軸動に応じて位置決め基板340に向けて変位する。
【0044】
一方、切り換え弁350は、切り換えロッド351の他側への切り換え操作に伴い、上記油圧源からの油圧を下側油圧管312を介し上記下側油圧室に供給するとともに、上記上側油圧室内の油圧を上側油圧管311から排出して上記油圧源に戻す。これに伴い、金型330は、シリンダ310内における上記ピストンの上方への軸動に応じて位置決め基板340側の上方へ変位する。
【0045】
しかして、このように構成した油圧装置300のもと、上記滑石押さえ工程において、滑石130に対する押さえ処理が次のようになされる。上述のように滑石押さえ工程の前までに製造されたセンサ本体100を、プロテクタ140から、図6にて示すごとく、環状の治具341を通し、位置決め基板340に形成した貫通穴部342に挿通させる。
【0046】
これにより、センサ本体100は、主体金具110の大径部にて、治具341上に同軸的に着座して立設する。このとき、金型330は、絶縁部材121の直上にて当該絶縁部材121と同軸的に位置している。
【0047】
このような状態において、切り換え弁350の切り換えロッド351をその一側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型330が支持板320と共に上記ピストンの下方への軸動に伴い下方へ変位する。
【0048】
このため、金型330は、センサ素子ユニット122の基端部側から絶縁部材121に外方から同軸的に嵌装されながら変位する。この変位に伴い、金型330は、その先端部332にて、主体金具110内に挿入されて、滑石リング130の上端部に衝突する。
【0049】
このとき、滑石リング130及び金型330の少なくとも一方が、上記衝突による衝撃に起因して瞬間的に弾性歪みを発生する。そして、この瞬間的弾性歪みに起因して、衝撃波が、滑石リング130及び金型330の間の衝突部位を中心としてセンサ本体100に発生する。
【0050】
このように金型330が滑石リング130に衝突した後、上述したようにシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出がさらに継続されると、金型330は、その先端部332により、滑石リング130に継続的に加圧する。これにより、滑石リング130は、金型330により主体金具110内にて押さえ込まれる。
【0051】
このように滑石リング130が押さえ込まれた後、切り換え弁350の切り換えロッド351をその他側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の下側油圧室内への油圧の供給及び上記上側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型330が支持板320と共に上記ピストンの上方への軸動に伴い上方へ変位して原位置に復帰する。これにより、滑石押さえ工程が終了し、滑石押さえ工程後のセンサ本体100の製造が終了する。
【0052】
次に、熱カシメ工程について説明する。この熱カシメ工程は、当該ガスセンサの製造工程のうち当該ガスセンサの実質的な完成品200(図9参照)の製造の終了工程に相当する。
【0053】
熱カシメ工程前までの工程の処理にあたり、上述した滑石押さえ工程後のセンサ本体100に加え、カシメリング210、リングパッキン220及び円筒状の外筒230を準備する(図5参照)。
【0054】
このように準備した後、カシメリング210を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100を同軸的に通して主体金具110内に嵌装する。この嵌装により、カシメリング210は、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に介装されて滑石リング130上に着座する。
【0055】
ついで、外筒230を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100に同軸的に通し主体金具110に向けて嵌装する。この嵌装により、外筒230は、その先端部231にて、主体金具110の内周壁と絶縁部材121の周壁先端部との間に同軸的に位置してカシメリング210上に着座する。
【0056】
然る後、リングパッキン220を、滑石押さえ工程後のセンサ本体100に同軸的に通して主体金具110内に嵌装する。この嵌装により、リングパッキン220は、主体金具110の内周壁と外筒230の先端側周壁との間に同軸的に介装されて外筒230の先端部231上に着座する。
【0057】
これにより、熱カシメ前の状態にあるセンサ構造体201が、図4にて示すごとく製造される。
【0058】
然る後、熱カシメ工程の処理が行われる。この熱カシメ工程の処理は、上述した油圧装置300を用いてなされる。但し、新たな金型360が、金型330に代えて、図8にて示すごとく、支持板320に同軸的に装着される。この装着は、金型360の環状鍔部361を支持板320にネジ止めすることでなされている。また、金型360は、外筒230の外径よりも幾分大きな内径を有するとともに、主体金具110の基端開口部111の外径よりも幾分大きな外径を有する。なお、金型360は、硬質ベリリウム銅(例えば、BeA−25)等の金属材料でもって形成されている。
【0059】
しかして、熱カシメ工程においては、滑石工程後のセンサ本体100を治具341から除去した後、上述のように熱カシメ工程前までの工程で製造されたセンサ構造体201を、プロテクタ140側から、図8にて示すごとく、治具341を通し、位置決め基板340の貫通穴部342に挿通させる。
【0060】
これにより、センサ構造体201は、主体金具110の大径部位にて、治具341上に同軸的に着座して立設する。このとき、金型360は、センサ構造体201の外筒230の直上にて当該外筒230と同軸的に位置している。
【0061】
このような状態において、上述と同様に切り換え弁350の切り換えロッド351をその一側方向に切り換え操作すると、上述したシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出に伴い、金型360が支持板320と共に上記ピストンの下方への軸動に基づき下方へ変位する。このため、金型360は、センサ構造体201の基端部側から外筒230に外方から同軸的に嵌装されながら変位する。この変位に伴い、金型360は、その先端部362にて、主体金具110の基端開口部111に衝突する。
【0062】
このとき、主体金具110及び金型360の少なくとも一方が、上記衝突による衝撃に起因して瞬間的に弾性歪みを発生する。そして、この瞬間的弾性歪みに起因して、衝撃波が、主体金具110と金型360との間の衝突部位を中心としてセンサ構造体201に発生する。なお、熱カシメ工程のときに、主体金具110に通電することによって、センサ構造体201を加熱しておく。
【0063】
このような金型360の主体金具110との衝突後、上述と同様にシリンダ310の上側油圧室内への油圧の供給及び上記下側油圧室からの油圧の排出がさらに継続されると、金型360は、その先端部362により、主体金具110の基端開口部111に継続的に加圧する。これにより、主体金具110の基端開口部111は、図9にて示す円113内にてごとく、熱カシメされ、完成品200の製造が終了する。
【0064】
本実施形態においては、図1にて示す検査装置による検査は、当該ガスセンサの製造工程のうち上述した滑石押さえ工程及び熱カシメ工程に合わせて行われるものである。そこで、当該検査装置の構成について図1を参照して説明する。
【0065】
当該検査装置は、アコースティック・エミッションセンサ400(以下、AEセンサ400ともいう)を備えており、このAEセンサ400は、図6或いは図8にて示すごとく、位置決め基板410に環状ボス420を介し装着されている。ここで、位置決め基板410は、位置決め基板340と同様の形成材料でもって当該位置決め基板340と同一形状に形成されており、この位置決め基板410は、その一端部411にて、位置決め基板340の一端部343に面接触状態にて当接するように当該位置決め基板340と同様に水平状に配設されている(図7参照)。
【0066】
環状ボス420は、フランジ部421から環状ボス部422を同軸的に延出して構成されている。しかして、ボス420は、そのフランジ部421にて、位置決め基板410上に同軸的に位置するように装着されている。
【0067】
AEセンサ400は、図10にて示すごとく、ケーシング430を備えており、このケーシング430は、略円筒状の周壁431と、この周壁431の上端開口部に設けた円板状蓋432と、周壁431の下端開口部に底板として設けた円板状受信板433とでもって、構成されている。しかして、ケーシング430は、その底部にて、図6或いは図8にて示すごとく、ボス420に同軸的に嵌装されている。
【0068】
受信板433は、セラミックでもって形成されており、この受信板433は、位置決め基板410の上面に一様に当接して、後述のように位置決め基板410を介し振動波を受信し板厚方向に振動する。
【0069】
また、当該AEセンサ400は、セラミックからなる圧電体434を備えており、この圧電体434は、ケーシング430内にて受信板433上に立設されている。当該圧電体434は、受信板433の振動に伴い圧電変換作用を発揮して圧電電圧を検出電圧(以下、AEセンサ400の検出電圧ともいう)として発生しリード線435を介し出力する。なお、リード線435は、圧電体434から周壁431の一部に設けた筒部436内に延出している。
【0070】
当該検査装置は、図1に示すごとく、前置増幅器440及び信号弁別ユニット450を備えている。前置増幅器440は、AEセンサ400の検出電圧を増幅し信号弁別ユニット450に出力する。
【0071】
信号弁別ユニット450は、ハイパスフィルタ451(以下、HPF451ともいう)、増幅器452、検波器453及び信号弁別器454を備えている。HPF451は、AEセンサ400からそのリード線435及び前置増幅器440を介し検出電圧を入力されて、当該検出電圧の周波数成分のうち所定の周波数(例えば、20(kHz))以下の低周波数成分を除去し、残りの周波数成分をフィルタ電圧として発生する。本実施形態において、上記低周波数成分は、ノイズ等の外乱の周波数を含む成分をいう。
【0072】
増幅器452は、HPF451からのフィルタ電圧を増幅し増幅電圧として発生する。検波器453は、増幅器452からの増幅電圧から所定の検波成分(即ち、所定の振動波成分)を検波して検波信号を発生する。ここで、上記所定の検波成分は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において金型330或いは360の滑石リング130或いは主体金具110との衝突以後にセンサ本体100或いはセンサ構造体201から生ずる振動波成分に対応する。
【0073】
信号弁別器454は、検波器453からの検波信号から所定の閾値以上の信号成分を順次弁別し弁別信号(振動波弁別信号)を発生する。ここで、上記所定の閾値は、所定の値に設定されており、当該所定の値は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において絶縁部材121に後述のように割れが生じるおそれのあるときの検波信号の値に対応する。
【0074】
また、当該検査装置は、位置センサ460、遅延回路470、カウンタ480及びブザー回路490を備えている。位置センサ460は、図6或いは図8にて示すごとく、センサ本体100或いはセンサ構造体201の主体金具110の基端開口部111の近傍に支持されている。この位置センサ460は、シリンダ装置300の金型330或いは360がその先端部にて下降端に変位したときこの先端部を検出して位置検出信号を発生する。
【0075】
遅延回路470は位置センサ460からの位置検出信号に基づきハイレベルにて遅延信号を発生する。この遅延信号の信号幅は、所定幅に設定されている。本実施形態では、該所定幅は、後述のように金型330の滑石リング130との衝突或いは金型360の主体金具110の基端開口部111との衝突による衝撃で生ずる衝撃波の発生期間よりも幾分長い所定時間に対応する。なお、遅延回路470からハイレベルの遅延信号が発生している期間が、待機期間に相当する。
【0076】
カウンタ480は、遅延回路470からの遅延信号のローレベルへの低下に基づきリセット始動されて、信号弁別器454から順次発生する弁別信号を計数し、この計数値の所定値への到達時に、計数信号を発生する。なお、遅延回路470からローレベルの遅延信号が発生している期間が、計数期間に相当する。
【0077】
但し、上記所定値は、上述の滑石押さえ工程或いは熱カシメ工程において絶縁部材121に後述のように割れが生じるおそれのあるときの弁別信号の数に対応する。ブザー回路490は、カウンタ480からの計数信号に基づきブザーを鳴動させる。
【0078】
このように構成した当該検査装置を用いて上述した滑石押さえ工程及び熱カシメ工程における検査について説明する。
【0079】
当該ガスセンサの製造工程が上述のように滑石押さえ工程におかれると、油圧装置300では、図6にて示すごとく、金型330が支持板320に装着されるとともに、滑石押さえ工程前のセンサ本体100が治具341を介し位置決め基板340に立設される。このとき、AEセンサ400を上述のように装着した位置決め基板410は、その一側端部411にて、位置決め基板340の一側端部343に面接触状態にて当接している。
【0080】
このような状態において、上述の滑石押さえ工程にて述べたごとく、金型330が、下方へ変位して、その先端部332にて、滑石リング130の上端部に衝突したとき、当該金型330はその先端部332にて下降端に位置する。従って、位置センサ460は、当該金型330の先端部332を検出し位置検出信号を発生する。
【0081】
これに伴い、遅延回路470が、位置センサ460からの位置検出信号に基づき遅延信号を発生しカウンタ480に入力する。このような状態では、上記遅延信号がハイレベル(待機期間)にあるため、カウンタ480は、リセット始動されない。
【0082】
また、上述のように金型330が滑石リング130に衝突したとき、滑石押さえ工程前のセンサ本体100は、上述のように衝撃波を発生する。このように発生する衝撃波は、滑石押さえ工程前のセンサ本体100から治具341を介し位置決め基板340に伝搬する。
【0083】
このように伝搬した衝撃波は、位置決め基板340から位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に伝搬する。ここで、両位置決め基板340、410は、上述のごとく、面接触状態にあるため、上記衝撃波の位置決め基板340から位置決め基板410への伝搬は良好に行われる。
【0084】
上述のように衝撃波が受信板433に伝搬すると、この受信板433は、当該衝撃波の周波数に応じて板厚方向に振動する。すると、圧電素子434は、受信板433の振動に伴い圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。
【0085】
ついで、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0086】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅されて検波器453に増幅電圧として出力される。すると、当該検波器453は、増幅器452の増幅電圧から上記検波成分を検波して検波信号を発生し信号弁別器454に出力する。
【0087】
このため、この信号弁別器454は、上記検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別する。ここで、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波に対応して検波器453から発生する検波信号に基づき信号弁別器454が弁別信号を発生すれば、この弁別信号はカウンタ480に出力される。
【0088】
このような段階では、上述のようにカウンタ480はリセット始動されていない(待機期間である)から、当該カウンタ480は上記弁別信号を計数することはない。
【0089】
然る後、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波が消滅するとともに、遅延回路470からの遅延信号がローレベルになると、カウンタ480はリセット始動されて計数作動を開始する。
【0090】
また、上述のように金型330が滑石リング130に衝突した後も、金型330には下方に変位する力が継続的に付与されるため、当該滑石リング130は、金型330によりその先端部にて下方に向けて押圧するように押さえ込まれる。
【0091】
このため、絶縁部材121が滑石リング130により径方向に押圧されて弾性歪みを起こす。この弾性歪みは、絶縁部材121に対する押圧力の増大に伴い増大する。そして、当該弾性歪みが絶縁部材121の弾性限界を超えるような歪みに達すると、絶縁部材121が割れることがある。なお、割れの形状としては、円筒状絶縁部材121の周方向の全周に渡って発生するリング状の割れや、部分的な割れがある。
【0092】
このような過程では、絶縁部材121が、その弾性歪みの増大に応じて振動波を発生する。ここで、当該振動波の周波数は、絶縁部材121の弾性歪みに起因して生ずる固有の周波数範囲に属する。
【0093】
また、当該振動波の振幅は、絶縁部材121の弾性歪みの増大に応じて増大する。このことは、当該振動波の振幅は、絶縁部材121に割れを生じたときに最大となることを意味する。
【0094】
上述のように滑石リング130の押さえ込みに起因して発生する振動波は、上述の衝撃波の場合と同様に、滑石押さえ工程中のセンサ本体100から治具341を介し位置決め基板340に伝搬し、さらに、上述と同様に位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に良好に伝搬する。
【0095】
すると、受信板433は、上述のように発生する振動波の周波数に応じて板厚方向に振動し、この振動に伴い、圧電素子434は、圧電作用を発揮して、圧電電圧を発生しリード線435を介し前置増幅器440に出力する。ここで、圧電素子434から発生する圧電電圧は、上述の衝撃波に対応する圧電電圧とは異なる。
【0096】
しかして、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、上述と同様に、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0097】
すると、上述と同様に、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波され検波信号として信号弁別器454に出力される。これに伴い、信号弁別器454は、検波器453からの検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別し、弁別信号を順次発生しカウンタ480に出力する。
【0098】
このとき、上述のようにカウンタ480は、既にリセット始動されて計数状態(計数期間)にある。従って、カウンタ480は、信号弁別器454から順次出力される弁別信号を計数する。
【0099】
このような計数に伴い、カウンタ480の計数値が上記所定値に達すると、カウンタ480は計数信号を発生しブザー回路490に出力する。このため、このブザー回路490はそのブザーを鳴動させる。
【0100】
これにより、滑石押さえ工程後のセンサ本体100は、絶縁部材121の割れ等により、不良品であることが分かる。その結果、このようなセンサ本体100は、熱カシメ工程には用いられないこととなる。
【0101】
一方、信号弁別器454が弁別信号を発生しないか、或いは当該信号弁別器454が弁別信号を発生してもカウンタ480の計数値が上記所定値に達しなければ、カウンタ480は計数信号を発生しない。従って、ブザー回路490のブザーは鳴動しない。これにより、滑石押さえ工程後のセンサ本体100は良品であることが分かる。その結果、このようなセンサ本体100は、熱カシメ工程に用いられる。
【0102】
以上説明したように、滑石押さえ工程において滑石リング130の押さえ込みに起因して絶縁部材121に割れが発生するとき、この割れに伴い発生する振動波を当該検出装置によりAEセンサ400でもって検出し、この検出出力を上述のように信号弁別ユニット450により弁別信号として順次弁別し、これら弁別信号をカウンタ480でもって計数し、かつこの計数値が上記所定値に達したときブザー回路490によりそのブザーを鳴動させる。
【0103】
ここで、上述のように金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波が発生することで、信号弁別ユニット450が弁別信号を発生することがあっても、上述のごとく、遅延回路470が、金型330の下降端への変位時に位置センサ460から発生する位置検出信号に基づき、ハイレベルにて遅延信号を発生しカウンタ480のリセット始動を禁止するので、ブザー回路490のブザーが鳴動することはない。
【0104】
その結果、金型330の滑石リング130との衝突による衝撃波に起因して絶縁部材121の割れと誤認することがない。よって、滑石押さえ工程におけるブザー490の鳴動に基づき、滑石リング130の押さえ込みに起因して絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0105】
特に、絶縁部材121の割れが主体金具110の内部にて発生したために視認できなくても、絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0106】
次に、このようなセンサ本体100を用いた上述の熱カシメ工程の処理において検査を行う例について説明する。
【0107】
上述の熱カシメ工程にて述べたように、油圧装置300では、金型360が金型330に代えて支持板320に装着されるとともに、良品としてのセンサ本体100を用いてなるセンサ構造体201が治具341を介し位置決め基板340に立設される。このとき、AEセンサ400を上述のように装着した位置決め基板410は、上述のごとく、位置決め基板340と面接触状態にある。
【0108】
このような状態において、上述のごとく、金型360が、下方へ変位して、その先端部362にて、主体金具110の基端開口部111に衝突したとき、当該金型360はその先端部にて下降端に位置する。従って、位置センサ460は、当該金型360の先端部362を検出し位置検出信号を発生する。
【0109】
これに伴い、遅延回路470が、位置センサ460からの位置検出信号に基づき遅延信号を発生しカウンタ480に入力する。このような段階では、上記遅延信号がハイレベル(待機期間)にあるため、カウンタ480は、リセット始動されない。
【0110】
また、上述のように金型360が主体金具110の基端開口部111に衝突したとき、センサ構造体201は、上述のように衝撃波を発生する。このように発生する衝撃波は、センサ構造体201から治具341を介し位置決め基板340に伝搬する。
【0111】
このように伝搬した衝撃波は、上述と同様に、位置決め基板340から位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に伝搬する。ここで、両位置決め基板は、上述のごとく、良好に面接触しているため、衝撃波の位置決め基板340から位置決め基板410への伝搬は良好に行われる。
【0112】
上述のように衝撃波が受信板433に伝搬すると、この受信板433は、当該衝撃波の周波数に応じて板厚方向に振動し、圧電素子434は、受信板433の振動に伴い圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。
【0113】
すると、この前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0114】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波されて検波信号として信号弁別器454に出力する。これに伴い、この信号弁別器454は、検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別する。ここで、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波に対応して検波器453から発生する検波信号に基づき信号弁別器454が弁別信号を発生すれば、この弁別信号はカウンタ480に出力される。
【0115】
このとき、上述のようにカウンタ480はリセット始動されていない(待機期間である)から、当該カウンタ480は上記弁別信号を計数することはない。
【0116】
然る後、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波が消滅するとともに、遅延回路470からの遅延信号がローレベルに低下すると、カウンタ480はリセット始動されて計数作動を開始する。
【0117】
また、上述のように金型360が主体金具110に衝突した後も、金型360には下方に変位する力が継続的に付与されるため、主体金具110の基端開口部111は、金型360によりその先端部362にて内側に向けて熱カシメされる(図9にて図示円113内参照)。
【0118】
このとき、絶縁部材121が、上述したカシメ力に起因して主体金具110の基端開口部111により径方向に押圧されて弾性歪みを起こす。この弾性歪みは、絶縁部材121に対する押圧力の増大に伴い増大する。そして、当該弾性歪みが絶縁部材121の弾性限界を超えるような歪みに達すると、絶縁部材121が割れることがある。
【0119】
このような過程では、絶縁部材121が、上記カシメ力に起因する弾性歪みの増大に応じて振動波を発生する。ここで、当該振動波の周波数は、絶縁部材121の弾性歪みに起因して生ずる上記固有の周波数範囲に属する。
【0120】
また、当該振動波の振幅は、上記カシメ力に起因する絶縁部材121の弾性歪みの増大に応じて増大する。このことは、当該振動波の振幅は、絶縁部材121に割れを生じたときに最大となることを意味する。
【0121】
上述のようにカシメ力に起因して発生する振動波は、上述の衝撃波と同様に、センサ構造体201から治具341を介し位置決め基板340に伝搬し、さらに位置決め基板410を通りAEセンサ400の受信板433に良好に伝搬する。
【0122】
すると、受信板433は、上述のようにカシメ力に起因して発生する振動波の周波数に応じて板厚方向に振動する。このような振動に伴い、圧電素子434は圧電電圧を発生してリード線435を介し前置増幅器440に出力する。ここで、圧電素子434から発生する圧電電圧は、上述のカシメ力に起因した衝撃波に対応する圧電電圧とは異なる。
【0123】
しかして、前置増幅器440は、圧電素子434からの圧電電圧を増幅して信号弁別ユニット450に出力する。これに伴い、当該信号弁別ユニット450においては、前置増幅器440の増幅電圧のうちの上記所定の低周波数成分が、HPF451により除去されて、残りの周波数成分がフィルタ電圧として増幅器452に出力される。
【0124】
これに伴い、当該フィルタ電圧が増幅器452により増幅された後検波器453により検波されて検波信号として信号弁別器454に出力される。これに伴い、この信号弁別器454は、検波器453からの検波信号を上記所定の閾値と比較して弁別し、弁別信号を順次発生しカウンタ480に出力する。
【0125】
このとき、上述と同様に、カウンタ480は、既にリセット始動されて計数状態(計数期間)にある。従って、カウンタ480は、信号弁別器454から順次出力される弁別信号を計数する。
【0126】
このような計数に伴い、カウンタ480の計数値が上記所定値に達すると、当該カウンタ480は計数信号を発生しブザー回路490に出力する。このため、このブザー回路490はそのブザーを鳴動させる。これにより、完成品200は、絶縁部材121の割れ等により、不良品であることが分かる。
【0127】
一方、信号弁別器454が弁別信号を発生しないか、或いは当該信号弁別器454が弁別信号を発生してもカウンタ480の計数値が上記所定値に達しなければ、カウンタ480は計数信号を発生しない。従って、ブザー回路490のブザーは鳴動しない。これにより、センサ構造体201は上記熱カシメの処理に基づき良品の完成品200となる。
【0128】
以上説明したように、熱カシメ工程において主体金具110の熱カシメに起因して絶縁部材121に割れが発生するとき、この割れに伴い発生する振動波を当該検出装置によりAEセンサ400でもって検出し、この検出出力を上述のように信号弁別ユニット450により弁別信号として順次弁別し、これら弁別信号をカウンタ480でもって計数し、かつこの計数値が上記所定値に達したときブザー回路490によりそのブザーを鳴動させる。
【0129】
ここで、上述のように金型360の主体金具110との衝突による衝撃波が発生することで、信号弁別ユニット450が弁別信号を発生することがあっても、上述のごとく、遅延回路470が、金型360の下降端への変位時に位置センサ460から発生する位置検出信号に基づき、ハイレベルにて遅延信号を発生しカウンタ480のリセット始動を禁止するので、ブザー回路490のブザーが鳴動することはない。
【0130】
その結果、金型360の主体金具110との衝突による衝撃波に起因して絶縁部材121の割れと誤認することがない。よって、熱カシメ工程におけるブザー490の鳴動に基づき、主体金具110の熱カシメに起因して絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0131】
特に、絶縁部材121の割れが主体金具110の内部にて発生したために視認できなくても、絶縁部材121に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【0132】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。例えば、図11に示すように、信号弁別ユニット450から出力される弁別信号(振動波弁別信号)を記録するための記録装置500を設けることができる。この記録装置500は、カウンタ480にて発生した計数信号が入力されるようになっている。また、記録装置500は、信号弁別ユニット450から出力される弁別信号を計数期間毎に一次的に記憶する一次記憶部と、カウンタ480からの計数信号が記録装置500に入力されたときに一次記憶部に記憶されていた弁別信号を保存する信号保存部とを備えている。つまり、記録装置500は、カウンタ480が計数信号を出力したときの(換言すれば、絶縁部材121に割れが発生したときの)弁別信号波形のみを記録することができるように構成されている。
【0133】
このような記録装置500を設けることにより、信号保存部に保存された弁別信号波形を詳細に解析できるようになる。具体的には、弁別信号波形のうち振幅の大きな波形が計数期間内のどのタイミングで発生しているか解析することにより、絶縁部材121の割れ発生位置を特定することが可能となる。また、振幅の大きな波形の連続性を解析することにより、絶縁部材121に割れが発生したか或いはノイズによってカウンタ480が誤って計数信号を発生しているのかを正確に区別できるようになる。また、記録装置500はカウンタ480が計数信号を出力したときの弁別信号波形のみを記録するように構成されているため、記録装置500に記録されるデータ容量を小さくすることができ、記録装置500を簡易なシステムにて構築することが可能となる。
【0134】
また、本発明の実施にあたり、位置決め基板340を列状に並べてベルトコンベアを構成し、上記検出装置を、上述の滑石押さえ工程及び熱カシメ工程毎に配設して、ガスセンサの自動的な製造工程の中で自動的に検査するようにしてもよい。
【0135】
また、本発明の実施にあたり、ブザー回路490に限ることなく、ランプや表示装置等の各種の報知手段でもって、カウンタ480の計数出力に基づき報知するようにしてもよい。
【0136】
また、本発明の実施にあたり、油圧装置300に限らず、例えば、空圧装置を採用してもよく、また、リニアアクチュエータ等の直線的な往復動機構その他の負荷を与える機構を採用してもよい。
【0137】
また、本発明の実施にあたり、絶縁部材121における割れの検出に限ることはなく、例えば、板状センサ素子ユニット122における割れの検出に適用してもよい。
【0138】
また、本発明の実施にあたり、ガスセンサとしては、上述のガスセンサに限ることはなく、筒状の主体金具内に筒状或いは板状のセンサ素子を配置し、主体金具とセンサ素子との間に配置した無機粉末等を加圧充填することで、センサ素子を主体金具に固定したガスセンサの製造工程に適用してもよい。
【0139】
また、本発明の実施にあたり、遅延回路470は位置センサ460からの位置検出信号に基づきハイレベル或いはローレベルの遅延信号を発生していたが、これに限られず、例えば、遅延回路470が、油圧装置300の切り換え弁350の切り換え操作により発生する切り換え信号に基づいて遅延信号を発生するようにしてもよい。
【0140】
また、本発明の実施にあたり、ガスセンサに限らず、例えば、スパークプラグに適用してもよい。ここで、スパークプラグは、筒状の主体金具と、先端部が突出するようにその主体金具内に嵌め込まれた絶縁体と、先端部を突出させた状態で絶縁体の内側に設けられた中心電極と、主体金具に一端が結合され、他端側が中心電極の先端と対向するように配置された接地電極とを備えている。このうち、主体金具における接地電極の結合された前方側とは反対側の後方側開口部内面と、絶縁体の軸方向中間部位に形成されたフランジ状の突出部との間には、前方側から順に、リング状のパッキン、タルク等の充填層及びリング状のパッキンが配置されており、主体金具の後方側開口縁を内側に加締めることにより、主体金具と絶縁体とが固定される。
【0141】
ところで、スパークプラグにおける主体金具と絶縁体とを上述のようにカシメ固定する工程においては、絶縁体に割れが発生する可能性がある。そこで、本発明をスパークプラグの製造工程に適用することにより、絶縁体に割れが発生したことが正しく認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る検査装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】滑石押さえ工程前のセンサ本体を示す側面図である。
【図3】図2のセンサ本体の分解図である。
【図4】熱カシメ工程前のセンサ構造体を示す側面図である。
【図5】図4のセンサ構造体の分解図である。
【図6】図2のセンサ本体に対する滑石押さえ工程の処理に合わせて検査装置による検査を行うための概略構成側面図である。
【図7】図6の両位置決め基板の配設状態を示す拡大平面図である。
【図8】図4のセンサ構造体に対する熱カシメ工程の処理に合わせて検査装置による検査を行うための概略構成側面図である。
【図9】熱カシメ工程後のセンサ構造体である完成品を示す拡大側面図である。
【図10】図1のAEセンサの拡大断面図である。
【図11】記録装置を備えた検査装置の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0143】
100…センサ本体、121…絶縁部材、201…センサ構造体、
340、410…位置決め基板、400…AEセンサ、450…信号弁別ユニット、460…位置センサ、470…遅延回路、480…カウンタ、490…ブザー回路、500…記録装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、前記セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段によって前記構造体に対して負荷を与えたときに、前記構造体から発生する振動波を振動波信号として検出し、
前記振動波信号のうち前記負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、
前記振動波信号の計数値に基づき前記セラミック部材の損傷の有無を検査する
ことを特徴とする構造体の検査方法。
【請求項2】
前記振動波信号を所定の閾値と比較し、該閾値以上の前記振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、
前記振動波弁別信号のうち前記計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
前記セラミック部材の損傷の有無の検査を、前記振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かで行う
ことを特徴とする請求項1に記載の構造体の検査方法。
【請求項3】
前記構造体は、前記セラミック部材の周囲を取り囲むように前記ハウジングが配置され、前記ハウジングと前記セラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することにより前記ハウジングと前記セラミック部材とが固定されるものであり、
前記製造工程のうちの一工程は、前記ハウジングと前記セラミック部材との間に充填された前記無機粉末を前記負荷付与手段により圧縮する工程である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造体の検査方法。
【請求項4】
前記セラミック部材は、筒形状又は板形状である
ことを特徴とする請求項3に記載の構造体の検査方法。
【請求項5】
前記構造体は、ガスセンサである
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体の検査方法。
【請求項6】
ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、前記セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段によって前記構造体に対して負荷を与えたときに、前記構造体から発生する振動波を振動波信号として検出する振動波信号検出手段と、
前記負荷付与手段の位置を検出し位置検出信号を発生する位置検出手段と、
前記位置検出信号が所定値になったときに、所定時間の間、遅延信号を発生する遅延信号発生手段と、
前記振動波信号のうち前記遅延信号の発生期間の経過後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数する計数手段と、
この計数手段の計数値に応じて前記セラミック部材に損傷があるときこの旨を報知する報知手段と
を備えてなる構造体の検査装置。
【請求項7】
前記振動波信号を所定の閾値と比較し、該閾値以上の前記振動波信号を振動波弁別信号として弁別する弁別手段を備え、
前記計数手段は、前記弁別手段にて弁別された前記振動波弁別信号のうち前記計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
前記報知手段は、前記計数手段にて計数された前記振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにした
ことを特徴とする請求項6に記載の構造体の検査装置。
【請求項8】
前記構造体は、前記セラミック部材の周囲を取り囲むように前記ハウジングが配置され、前記ハウジングと前記セラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することにより前記ハウジングと前記セラミック部材とが固定されるものであり、
前記製造工程のうちの一工程は、前記ハウジングと前記セラミック部材との間に充填された前記無機粉末を前記負荷付与手段により圧縮する工程である
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の構造体の検査装置。
【請求項9】
前記セラミック部材は、筒形状又は板形状である
ことを特徴とする請求項8に記載の構造体の検査装置。
【請求項10】
前記構造体は、ガスセンサである
ことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の構造体の検査装置。
【請求項1】
ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、前記セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段によって前記構造体に対して負荷を与えたときに、前記構造体から発生する振動波を振動波信号として検出し、
前記振動波信号のうち前記負荷付与手段が所定位置になってから所定の待機期間経過した後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数し、
前記振動波信号の計数値に基づき前記セラミック部材の損傷の有無を検査する
ことを特徴とする構造体の検査方法。
【請求項2】
前記振動波信号を所定の閾値と比較し、該閾値以上の前記振動波信号を振動波弁別信号として弁別し、
前記振動波弁別信号のうち前記計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
前記セラミック部材の損傷の有無の検査を、前記振動波弁別信号の計数値が所定値に達したか否かで行う
ことを特徴とする請求項1に記載の構造体の検査方法。
【請求項3】
前記構造体は、前記セラミック部材の周囲を取り囲むように前記ハウジングが配置され、前記ハウジングと前記セラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することにより前記ハウジングと前記セラミック部材とが固定されるものであり、
前記製造工程のうちの一工程は、前記ハウジングと前記セラミック部材との間に充填された前記無機粉末を前記負荷付与手段により圧縮する工程である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造体の検査方法。
【請求項4】
前記セラミック部材は、筒形状又は板形状である
ことを特徴とする請求項3に記載の構造体の検査方法。
【請求項5】
前記構造体は、ガスセンサである
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造体の検査方法。
【請求項6】
ハウジングの内部にセラミック部材を固定してなる構造体の製造工程のうちの一工程において、前記セラミック部材に負荷が加わるように負荷付与手段によって前記構造体に対して負荷を与えたときに、前記構造体から発生する振動波を振動波信号として検出する振動波信号検出手段と、
前記負荷付与手段の位置を検出し位置検出信号を発生する位置検出手段と、
前記位置検出信号が所定値になったときに、所定時間の間、遅延信号を発生する遅延信号発生手段と、
前記振動波信号のうち前記遅延信号の発生期間の経過後の所定の計数期間内に検出された振動波信号を計数する計数手段と、
この計数手段の計数値に応じて前記セラミック部材に損傷があるときこの旨を報知する報知手段と
を備えてなる構造体の検査装置。
【請求項7】
前記振動波信号を所定の閾値と比較し、該閾値以上の前記振動波信号を振動波弁別信号として弁別する弁別手段を備え、
前記計数手段は、前記弁別手段にて弁別された前記振動波弁別信号のうち前記計数期間内に検出された振動波弁別信号を計数し、
前記報知手段は、前記計数手段にて計数された前記振動波弁別信号の計数値が所定値に達したときに報知するようにした
ことを特徴とする請求項6に記載の構造体の検査装置。
【請求項8】
前記構造体は、前記セラミック部材の周囲を取り囲むように前記ハウジングが配置され、前記ハウジングと前記セラミック部材の間に無機粉末を圧縮充填することにより前記ハウジングと前記セラミック部材とが固定されるものであり、
前記製造工程のうちの一工程は、前記ハウジングと前記セラミック部材との間に充填された前記無機粉末を前記負荷付与手段により圧縮する工程である
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の構造体の検査装置。
【請求項9】
前記セラミック部材は、筒形状又は板形状である
ことを特徴とする請求項8に記載の構造体の検査装置。
【請求項10】
前記構造体は、ガスセンサである
ことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の構造体の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−343324(P2006−343324A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131943(P2006−131943)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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