説明

構造化硬質クロム層の製造方法

構造化硬質クロム層の製造方法を開示する。この方法によって、電解液から加工物の上にクロムを析出させる。電解液は、(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、(c)1g/L〜20g/Lの、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、アルカリ塩、およびアルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、アルカリ塩、およびアルカリ土類金属塩、ならびにジルコン酸アンモニウム塩、アルカリ塩、およびアルカリ土類金属塩から選択される化合物を含有する。さらに本発明は、この方法によって得られる構造化硬質クロム層およびこの方法を実行するための電解液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物の上に構造化硬質クロム層を製造する方法、その方法によって得られる構造化硬質クロム層、およびその方法を実行するための電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的にすなわちガルバニックに析出されるクロム層は、機能および装飾用途の分野において、および導電性と非導電性の加工物をめっきする用途において、長年の間、従来技術と見なされてきた。
【0003】
電気化学的に製造される構造化硬質クロム層の使用は、ここ数年、および特に最近において、重要性を増している。詳細には、機能性構造における使用において強い上昇傾向にある。典型的には、印刷ローラのめっきにおいてインクの濡れ性を改良する用途、エンボス金属板用のローラにおいて自動車産業用の深絞り加工を改良する用途があり、軸受けにおける摩耗防護および摩擦低減の用途もある。
【0004】
しかしながら、従来技術によって設けられる構造化層は全て、顕著な球状層構造を有している。この球状の形状の寸法は、1μm未満から数μmの間と様々である。この球状層構造の占有度または密度は、特定の方法にしたがって幾分変化する。
【0005】
例えば特許文献1〜3によれば、直流電流を変化させることによって、電流勾配および電流インパルスの大きさの変化による影響を受けて成長した構造を有する、構造化クロム層が製造される。
【0006】
特許文献4によっても球状構造が製造される。しかしながら、この場合には、セレンまたはテルル元素の塩をクロムめっき電解液に添加することによって、その成長が可能とされている。
【0007】
特許文献5によると、温度の変化および印加する直流電流の変化と共に、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸イオンを電解液に添加することによっても、やはり球状構造が生じる。
【0008】
前述のそれらの構造化クロム層は同様に、非常に顕著な球状特性を幾分は有するが、しかしながらその特性が全ての用途に対して適切であるとは限らない。それらの構造化クロム層のうち幾つかは均質でなく、それらの析出プロセスは、安全に制御することが可能でない幾つかの作用機序を受ける。
【0009】
特許文献6には材料を電解めっきする方法が開示されており、その方法では、少なくともクロム酸と、硫酸と、イソポリ酸イオンを生成する金属と、短鎖脂肪族硫酸、その塩、およびそのハロゲン誘導体のうちの少なくとも1つと、フッ化物とを含有する電解液からクロム合金を析出させる。この従来技術文献では、構造化硬質クロム層の製造については言及されていない。
【特許文献1】独国特許出願公開第33 077 48号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第42 11 881号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第43 34 122号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第44 32 512号明細書
【特許文献5】独国特許発明第19828545号明細書
【特許文献6】国際公開第02/38835号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題の1つは、従来技術の欠点を有さない構造化硬質クロム層の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、このことは、電解液から加工物の上にクロムを析出させる、構造化硬質クロム層を製造する方法によって達成され、この電解液は、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する。
【0012】
本発明による方法は、構造化硬質クロム層を製造する用途に最も適切である。
本発明による方法にしたがって、電気化学的な金属析出の間に形成されるカソード皮膜に選択的に影響を与えることによって、構造化硬質クロム層が得られるが、この層はカップ形状(naepfchenfoermig)、迷路状(labyrinthartig)、および柱形状(saeulenfoermig)のうちの少なくとも1つである。
【0013】
塩は水中で溶解された場合、カチオンおよびアニオンに解離する。同時に、これらの解離イオンは水和物の覆いで自身を囲む、すなわち、水分子がカチオンまたはアニオンの周囲にそれぞれ(双極子として)付加する。水和の間にイオンの価数は変化しない。水和された金属イオンは、電流の影響下で移動を開始すると、電解液とカソードとの間の境界領域のカソード付近に来る。
【0014】
このいわゆるカソード皮膜は、加工物が電気的に負に接続されているため、めっきされる加工物の表面に直に位置する。この相境界においては、カソードからの電流によって与えられる電子を受取ることによって、電解液中に存在する金属イオンが最初に配列される。拡散領域より下で加工物の表面に直に位置するのは電気化学的な二重層であり、「ヘルムホルツ(Helmholtzsche )二重層」とも称される。この語は、電解液/電極界面の、ほぼ数個の原子または分子の層の厚さを有する帯電領域に関する。この領域は、イオン、電子、または配列した双極性分子によって形成される。一方の面は正に、他方の面は負に帯電しており、非常に極板距離が小さな極板コンデンサのようにふるまう。このようにして生成した金属原子は、加工物の表面に存在する。しかしながら、その状態はまだ金属内部の原子の状態と同等ではない。いわゆる成長点が存在する場合には、生成した原子は、存在する金属格子中にのみ位置するであろう。
【0015】
化学組成、温度、流体動力学、および電流など、電解液における析出条件は、通常では、析出する金属で基材が均質に被覆されるように選択される。すなわち、存在するイオンに対するカソード皮膜の透過性が可能な限り均質であるように、カソード皮膜はそのような処置により影響を及ぼされる。
【0016】
クロム元素は、電気化学的に析出させることが可能である大抵の元素とは対照的に、水
溶液中で負に帯電したイオン錯体として存在し、強酸性溶液中では主に二クロム酸として存在する。
【0017】
この錯体では、クロムの酸化数は6である。電解液は少量のクロム(III )化合物もさらに含有する。
そのような水溶液を電解する場合、クロム析出を妨げる丈夫な皮膜がカソード上に形成される。水素は半径が小さいので、丈夫なカソード皮膜を通過することが可能であるため、水素のみが生成し、大きな二クロム酸イオンは生成しない。異種アニオン、例えば、硫酸イオンおよび塩化物イオンなどを添加することによってのみ、カソード皮膜はクロムイオンに対して透過性となり、種々の酸化数を経てクロムの析出が起こる(「電気めっきの化学(Chemie fuer die Galvanotechnik)」、第2版、ロイツェ・フェアラーク(Leutze
Verlag )、1993年、を参照)。
【0018】
密なカソード皮膜を形成する少なくとも1つの化合物を電解液に添加することによって、クロムイオンに対して透過性となるようにカソード皮膜の形成が制御され、その結果、めっきのために印加した電流密度によって、まず非常に密なバリア層が形成され、続いてこのバリア層が透過されて、異なる強度または層厚を有する金属構造が形成されることが可能である。このようにして、カップ形状、迷路状、および柱形状のうちの少なくとも1つである構造化クロム層が得られる。
【0019】
本発明の方法によって得られるクロム層は、高い耐摩耗性と耐腐食性、優れた滑り性、および耐侵食性を有し、他の如何なるめっきによっても達成されない美的に好適な外観をも有する。カップ形状、迷路状、および柱形状のうちの少なくとも1つであるその構造のため、硬質クロム層を多くの機能用途に用いることが可能であり、装飾用途にまで用いることが可能である。このようにして、例えば、この層の特定の構造によって液体吸収能の改良が保証される。さらに、ガスパッド(Gaspolsters )を形成することが可能であると共に、例えばプラスチック材料、染料、金属、セラミック材料、電子素子、身体特異的な組織などの物がインプラントの皮膜として析出されるように能力の改良を達成することが可能である。さらに、その表面の形態のため、例えば放射光および放射熱に対する高い吸収能などの光学的な効果を、この特定の構造に意図的に与えて太陽熱集熱器に用いることが可能であり、また、意匠分野における装飾用途にも用いることが可能である。
【0020】
本発明における意味では、「電解液」の語は、その導電性がイオンへの電離によって生じる水溶液に関する。したがって電解液は、成分(a)〜(d)および任意でさらに存在する添加剤に加え、残余として水を含有する。
【0021】
上述の成分(a)〜(d)の量は電解液に関する。
成分(a)としては、好適にはCrOが用いられるが、これはクロムの電解析出に関して特に好適であることが判明している。
【0022】
成分(c)として好適に用いられる脂肪族スルホン酸は、メタンスルホン酸である。この酸は、上述の特性を有する構造化硬質クロム層の形成に、特に好適であることが判明している。
【0023】
成分(d)のアルカリイオンとしては、Li,Na,およびKが用いられ得る。アルカリ土類金属イオンの例は、Mg2+およびCa2+である。好適な実施態様においては、成分(d)は、(NHMo24・4HOであり、これは、上述の特性を有する構造化硬質クロム層の形成に特に好適であることが判明している。
【0024】
上述においてより詳細に言及されている電解液は、特に好適な実施態様においては、実
質的にフッ化物を含有しない。本明細書ではフッ化物は、単純なフッ化物および複雑なフッ化物の両方を指す。フッ化物が電解液中に存在する場合、それによって構造化硬質クロム層の形成に干渉し得る。したがって、「実質的にフッ化物を含有しない」の語は、電解液中のフッ化物の量は許容可能な量であって構造化硬質クロム層の形成に影響を与えないことを意味する。当業者は、許容可能なフッ化物の量を容易に決定することが可能である。電解液中に0.1g/Lより多く存在しない場合には、好適であることが判明している。
【0025】
電解液は、SO2−およびClのうちの少なくとも1つなど、クロムの析出を補助する通常の触媒をさらに含有してもよい。これらの化合物は電解液中に通常量で存在し得る。
【0026】
本発明による方法を用いて、上述においてより詳細に説明されている種類の構造化硬質クロム層を加工物の上に形成する。これに関して、「加工物」の語は、構造化クロム層が設けられる任意の種類の物体を指す。この物体は、金属または非金属であり得る。構造化硬質クロム層を非金属物体の上に形成する場合には、最初に薄い金属層を設けることによって、その物体を導電性とする。
【0027】
構造化硬質クロム層を加工物の上に形成するため、加工物をカソードに接続し、電解液中に浸漬する。直流電流、例えば、1000Hzまでの周波数を有する直流電流パルスを、加工物に対して印加する。クロムを析出させる温度は45℃〜95℃であり得るが、特に約55℃である。析出の継続時間は、構造化硬質クロム層の所望の厚さによって選択され、析出の継続時間が長くなるにつれて層の厚さは大きくなる。
【0028】
本発明の好適な実施態様では、20A/cm〜200A/cmの電流密度が使用される。このようにして、特に好適な構造の硬質クロム層が得られる。さらに高い電流密度を選択すると、構造化硬質クロム層の凸部分は、さらに密になるであろう。
【0029】
本発明の方法による構造化硬質クロム層の製造において、カソード電流収率は12%以下である。電流収率がより高い場合には、所望の構造の硬質クロム層は得られないであろう。
【0030】
加工物の上に、上述の構造化硬質クロム層および従来技術の電解液によって形成される層が交互に析出され得るように、複数の層を析出させることが可能である。例えば、本発明の方法によって得られる構造化硬質クロム層を加工物の上に最初に設け、続いてその上に、従来技術のクロム層、黒色クロム層、銅層、ニッケル層、またはスズ層から選択される層を析出させることが可能である。さらに、従来技術のクロム層、銅層、およびニッケル層のうちの少なくとも1つを加工物の上に最初に析出させて、続いてその上に、上述においてより詳細に説明されている硬質クロム層を析出させてもよい。
【0031】
さらに、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、セラミック、プラスチック、固体潤滑剤、染料など、クロムを含有しない皮膜を、本発明の方法によって得られる硬質クロム層の上に直に析出させてもよい。
【0032】
本発明のさらなる課題の1つは、上述においてより詳細に説明されている本発明の方法によって得られる種類の構造化硬質クロム層である。
従来技術による顕著な球状層構造を有する硬質クロム層と対照的に、構造化硬質クロム層は、カップ形状、迷路状、および柱形状のうちの少なくとも1つである構造を有する。本発明による構造化硬質クロム層は、本発明の方法に関連して言及されている利点を有する。
【0033】
本発明による構造化硬質クロム層は、例えば、ピストンリング、シリンダ、ピストン、ボルト、カム軸、ガスケット、コンポジット材料、バルブ、摩耗防護および摩擦低減軸受け、インクの濡れ性が改良された印刷シリンダ、自動車産業の深絞り加工用の改良されたエンボス加工ローラ、太陽エネルギー利用技術用、装飾用途、医療技術用、マイクロ工学およびマイクロエレクトロニクス用など、多数の加工物のめっきに用いられ得る。
【0034】
本発明のさらなる課題の1つは、本発明の方法を実行するための電解液であり、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する電解液である。
【0035】
この電解液は、詳細には、上述においてより詳細に説明されている構造化硬質クロム層を、加工物の上に製造するために用いられ得る。
図面と関連する以下の実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【0036】
図1〜8には、実施例1〜8の硬質クロム層に対応する写真を示す。
【実施例】
【0037】
実施例1:
以下の基本的な組成を有する、従来技術のクロム電解液を調製した。
クロム酸無水物 CrO 250 g/L
硫酸 HSO 2.5 g/L
通常の前処理の後、部品(Warenteil )を電解液に差し込み、40A/cmで、55℃、30分間めっきする。
この条件でめっきした部品は、処理の後、従来技術の光沢のある均質なクロム層を有する。図1を参照。
【0038】
実施例2:
実施例1の電解液に、100g/Lのモリブデン酸アンモニウム塩、(NHMo24・4HO、および4g/Lのメタンスルホン酸をさらに添加する。実施例1で説明した条件で部品をめっきする。このようにして説明される部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。このクロム層は表面の凸部分(支持部分(Traganteil))に光沢のある外観を有し、この構造の凹部分においては褐色のカソード皮膜すなわちバリア層が得られる(図2)。
【0039】
実施例3:
部品を実施例2の条件でめっきする。しかしながら、40A/cmの電流密度を作用させる代わりに、20A/cmを用いてめっきする。
【0040】
このようにしてめっきした部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。実施例2の構造化層と比較して、光沢表面の領域(支持部分)である凸部分の比率はより小さく、凹部
分の比率はより大きい(図3)。
【0041】
実施例4:
部品を実施例2の条件でめっきする。しかしながら、40A/cmの電流密度を作用させる代わりに、60A/cmを用いてめっきする。
【0042】
このようにしてめっきした部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。実施例2の構造化された層と比較して、光沢表面の領域(支持部分)である凸部分の比率はより大きく、凹部分の比率はより小さい(図4)。
【0043】
実施例5:
部品を実施例2の条件でめっきする。このようにしてめっきした部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。今度は、その構造化クロム層の上に続けて、実施例1の従来技術のクロム電解液中、50A/cmで、55℃、120分間、クロムを用いてめっきする。このようにしてめっきした部品は、実施例2と比較して、構造の高さにおいて相当な増大を示す(図5)。
【0044】
この段階的な(gradierte)層は、その表面上に従来技術のクロムに似た冶金学的特性
を有することに加えて、構造化されてもいる。
この層構造の利点は、実施例2〜4による唯一の析出においては層の成長速度が遅いために限定されている層構造の断面高さ(Profilhoehe )を、広い範囲に渡って変化させることが可能であるという事実に由来する。
【0045】
実施例6:
部品を実施例2の条件でめっきする。このようにしてめっきした部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。従来技術の黒色クロム電解液中で、この構造化クロム層の上に続けて黒色のクロム酸化物含有層を析出させる。
このようにしてめっきした部品は、非常に高い光線反射率を備える均質な深黒色の表面を有する(図6)。
【0046】
実施例7:
部品を実施例2の条件でめっきする。このようにしてめっきした部品は、処理の後、構造化クロム層を有する。従来技術のスズ電解液中で、この構造化クロム層の上に続けて、構造化クロム層の凹部分をスズで満たすために充分な厚さでスズ層を析出させる。
このようにしてめっきした部品は、高い耐摩耗性に加えて、非常に優れた滑り性を備える表面を有する(図7)。
【0047】
実施例8:
部品を実施例1の条件で従来技術のクロム層と共にめっきする。
【0048】
続いて、実施例2の条件で、この実施例1のクロム層の上に構造化クロム層をめっきする。
この構造化クロム層は、従来技術のクロム層に対する導入層(Einlaufschicht)として働き、トライボロジー用途によっては、層のシステムの改良を導く(図8)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に対応する硬質クロム層の写真。
【図2】実施例2に対応する硬質クロム層の写真。
【図3】実施例3に対応する硬質クロム層の写真。
【図4】実施例4に対応する硬質クロム層の写真。
【図5】実施例5に対応する硬質クロム層の写真。
【図6】実施例6に対応する硬質クロム層の写真。
【図7】実施例7に対応する硬質クロム層の写真。
【図8】実施例8に対応する硬質クロム層の写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液から加工物の上にクロムを析出させる、構造化硬質クロム層の製造方法であって、前記電解液は、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する、製造方法。
【請求項2】
前記Cr(VI)化合物はCrOである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族スルホン酸はメタンスルホン酸である請求項1乃至2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
密なカソード皮膜を形成する前記化合物は(NHMo24・4HOである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記電解液は実質的にフッ化物を含有しない請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
20A/cm〜200A/cmの電流密度で作用する工程を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
12%以下のカソード電流収率で作用する工程を含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、構造化硬質クロム層。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の記載の製造方法を実行するための電解液であって、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する、電解液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液から加工物の上にクロムを析出させる、構造化硬質クロム層の製造方法であって、前記電解液は、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する、電解液であり、
12%以下のカソード電流収率で作用する工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記Cr(VI)化合物はCrOである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族スルホン酸はメタンスルホン酸である請求項1乃至2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
密なカソード皮膜を形成する前記化合物は(NHMo24・4HOである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記電解液は実質的にフッ化物を含有しない請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
20A/cm〜200A/cmの電流密度で作用する工程を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、構造化硬質クロム
層。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法を実行するための電解液であって、
(a)50g/L〜600g/Lのクロム酸無水物に対応する量のCr(VI)化合物、
(b)0.5g/L〜10g/Lの硫酸、
(c)1g/L〜20g/Lの脂肪族スルホン酸であって、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、および、
(d)密なカソード皮膜を形成する、10g/L〜200g/Lの少なくとも1つの化合物であって、モリブデン酸アンモニウム塩、モリブデン酸アルカリ塩、モリブデン酸アルカリ土類金属塩、バナジウム酸アンモニウム塩、バナジウム酸アルカリ塩、バナジウム酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アンモニウム塩、ジルコン酸アルカリ塩、およびジルコン酸アルカリ土類金属塩から選択される化合物、
を含有する、電解液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−508243(P2006−508243A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556080(P2004−556080)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010425
【国際公開番号】WO2004/050960
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(398071439)フェデラル−モーグル ブルシャイト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (28)
【Fターム(参考)】