構造物の点検装置
【課題】本発明は、点検対象物の下方を撮影する撮影カメラを正確に位置決めすることができるとともに点検作業を効率よく安全に行うことが可能な点検装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】点検対象物上に設置された点検台車に上下動可能に取り付けた垂直ロッド5を介して水平アーム6を点検対象物の下方に配置し、水平アーム6上を走行する走行台車に撮影カメラを取り付けて点検を行う。垂直ロッド5は、支持フレーム20に上下方向のみ移動可能に保持されており、支持フレーム20の取り付けられた昇降用ウインチ22から繰り出されるワイヤ23により垂直ロッド5が下降して水平アーム6の昇降位置が設定される。支持フレーム20は、駆動モータ15により回動するようになっており、支持フレーム20とともに垂直ロッド5が回動して水平アーム6が旋回するようになる。
【解決手段】点検対象物上に設置された点検台車に上下動可能に取り付けた垂直ロッド5を介して水平アーム6を点検対象物の下方に配置し、水平アーム6上を走行する走行台車に撮影カメラを取り付けて点検を行う。垂直ロッド5は、支持フレーム20に上下方向のみ移動可能に保持されており、支持フレーム20の取り付けられた昇降用ウインチ22から繰り出されるワイヤ23により垂直ロッド5が下降して水平アーム6の昇降位置が設定される。支持フレーム20は、駆動モータ15により回動するようになっており、支持フレーム20とともに垂直ロッド5が回動して水平アーム6が旋回するようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の下面又は建造物等の床下などの直接目視点検することが困難な構造物の部位を撮影カメラにより撮影して点検する構造物の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や建造物の老朽化に伴い強度の劣化が近年問題となっており、例えば、道路の橋梁については、既存の橋梁のうち1950年代から1973年代までの高度成長期に築造されたものが多く、これらの橋梁の架け替えや補強が必要となってきている。
【0003】
こうした橋梁に関しては、定期点検を数年に一度行う必要があり、点検の際に橋梁管理カルテを作成・更新していく業務が行われている。しかしながら、橋梁の点検では、橋梁の下面側の床版、橋桁、支承及び橋脚といった部位や橋桁の間の空間に設置された水道管等の添架設備など目視点検が困難な箇所を点検しなければならず、そのため点検作業にトラッククレーンや点検足場といった大掛かりな設備が必要であった。
【0004】
こうした大掛かりな設備は作業日数がかかる上に点検コスト負担が大きいため、点検箇所を撮影カメラを用いて撮影する点検装置が提案されている。例えば、特許文献1では、点検台車に上下動可能に取り付けた垂直ロッドを介して水平アームを点検対象物の下方に配置し、水平アーム上を走行する走行台車に立設した保持アームに撮影カメラを取り付け、保持アームを回動させるとともに撮影カメラを上下方向に回動させて撮影方向を設定して点検対象物の下面の点検箇所を撮影する点検装置が記載されている。また、特許文献2では、車両本体に、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に変更可能に構成した多関節の可動アームを取り付け、可動アームの先端に搭載された撮影用機器により構造物の下面を撮影するようにした点検装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−275385号公報
【特許文献2】特開2008−020426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、垂直ロッドが分割ロッド部材を連結して上下方向の長さを設定しており、垂直ロッドを昇降用ウインチで上下方向に移動させて高さを調整することができ、また垂直ロッドを回動させて水平アームの位置調整を行うようにしている。しかしながら、垂直ロッドのこうした位置調整は手動で行われるものであるため、正確な位置決めを行うことは難しく、また垂直ロッドも手動できる程度に軽量化する必要があって十分な強度を持たせることができない課題がある。
【0007】
特許文献2では、3軸方向に変更可能な多関節の可動アームを油圧又は電動で動作させて撮影用機器を位置決めするようにしているが、可動アームの関節部分が多く複雑な構造となって重量も重くなり、正確な動作を行う上で難点がある。
【0008】
そこで、本発明は、点検対象物の下方を撮影する撮影カメラを正確に位置決めすることができるとともに点検作業を効率よく安全に行うことが可能な点検装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る構造物の点検装置は、点検対象物の側方において上下方向に保持されるロッド部材と、前記ロッド部材の下部に固定されて点検対象物の下方に延設されるアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた撮影カメラにより点検対象物を下方から撮影する撮影手段と、前記ロッド部材を軸方向にのみ移動可能となるように案内する案内手段と、前記アーム部材に先端部が固定されて前記ロッド部材の軸方向に沿って張設されたワイヤにより前記ロッド部材を保持するとともに前記ワイヤの繰り出す長さを調整して前記アーム部材の昇降位置を設定する昇降手段と、前記ロッド部材を軸回りに回動させて前記アーム部材の旋回位置を設定する旋回手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記ロッド部材は、伸縮構造を有するとともに前記ワイヤの繰り出す長さに応じて伸縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、上下方向に保持されるとともに軸方向にのみ移動可能なロッド部材をワイヤの繰り出す長さに基づいて自重により上下動させて、アーム部材の昇降位置を正確に設定することができる。また、旋回手段によりロッド部材を軸回りに回動させてアーム部材の旋回位置を正確に設定することができ、昇降位置及び旋回位置を正確に設定することで、アーム部材に取り付けた撮影カメラの位置精度を高めることができる。
【0011】
また、昇降手段及び旋回手段により遠隔操作により撮影カメラの位置設定を行うことができるので、橋梁等の構造物を点検する場合に点検作業を効率よく安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する正面図である。
【図2】垂直ロッドの昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大正面図である。
【図3】垂直ロッドの昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】伸長した状態の垂直ロッドに関する正面図である。
【図7】短縮した状態の垂直ロッドに関する正面図である。
【図8】図7に示す短縮状態における先端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。
【図9】図8のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図及びD−D断面図である。
【図10】図7に示す短縮状態における後端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。
【図11】図10のH−H断面図、G−G断面図、F−F断面図及びE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する正面図である。点検装置は、橋梁等の点検対象物1の上面に設置された点検台車2、点検台車2に設けられた台車支柱3、台車支柱3に水平に支持された取付アーム4、取付アーム4に上下方向に沿って取り付けられた垂着ロッド5、垂直ロッド5の下端部に水平方向に沿って取り付けられた水平アーム6、水平アーム6の長手方向に走行可能に取り付けられた走行台車7、走行台車7に取り付けられた撮影カメラ8を備えている。
【0015】
点検台車2は、自在キャスターを底面に取り付けており、手押し自走が可能となっている。また、点検台車2を所定位置に移動させた後点検台車2全体をジャッキアップさせ、点検作業を行う位置において移動しないように設置される。
【0016】
点検台車2の上面には軸支部材10が立設されており、軸支部材10に台車支柱3が回動可能に軸支されている。そして、点検作業時には台車支柱3を立設した状態に回動して固定し、点検装置の運搬等を行う際には台車支柱3を横向きに回動させて収納するようにする。台車支柱3には、上下方向に伸縮可能な伸縮支柱が内蔵されており、台車支柱3に付設された昇降機構のハンドル11を手動で回転させることで、伸縮支柱を上下動させて取付アーム4の高さ位置の調整を行えるようになっている。
【0017】
台車支柱3の伸縮支柱の上部には、アーム保持ユニット12が固定されており、アーム保持ユニット12に軸支された2対のガイドローラの間に取付アーム4が水平方向に移動可能に支持されている。取付アーム4には、長手方向に沿って直線状にラック歯が取り付けられており、アーム保持ユニット12には、駆動歯車及び駆動モータが取り付けられている。そして、ラック歯を駆動歯車に噛み合わせた状態で駆動モータを駆動することで取付アーム4を水平方向に移動させて水平位置の調整を行えるようになっている。
【0018】
図2及び図3は、垂直ロッド5の昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大正面図及び平面図である。取付アーム4の先端部には、固定フレーム13が取り付けられている。固定フレーム13は、垂直ロッド5が通過可能な枠状に形成されており、外周部の一部が取付アーム4の先端部にネジ止めされて固定されている。
【0019】
固定フレーム13の上部は平面状に形成されており、外周縁部の一部を外方に向かって突出させて延設部14が形成されている。延設部14の下面には、駆動モータ15が取付固定されており、駆動モータ15の駆動軸が延設部14を貫通して上方に突出し、突出部分に駆動歯車16が固定されている。
【0020】
図4は、図3のA−A断面図である。固定フレーム13の上方には玉軸受からなる環状の連結機構17を介して可動フレーム18が回動可能に取り付けられている。可動フレーム18は、固定フレーム13と同様に垂直ロッド5が通過可能な枠状に形成されており、その外周には、環状の平歯車19が嵌め込まれている。そして、平歯車19の外周縁部に形成された歯列は、駆動歯車16と噛み合うように設定されている。そのため、駆動モータ15を回転駆動することで、可動フレーム18を回動させることができる。
【0021】
可動フレーム18の上面には、支持フレーム20が立設されてネジ止めにより固定されている。支持フレーム20は、断面矩形状の筒状体で、内部を垂直ロッド5が通過可能に形成されている。そして、支持フレーム20の内部には、2対のガイドローラ21が軸支されており、各対のガイドローラ21により垂直ロッド5が両側から挟持されて上下方向(垂直ロッド5の軸方向)にのみ移動可能となっている。
【0022】
垂直ロッド5の中心軸は、可動フレーム18の回動中心と一致するようにガイドローラ21により支持されており、可動フレーム18が回動することで垂直ロッド5は中心軸を中心に回動するようになる。そのため、垂直ロッド5の下端に取り付けられた水平アーム6は、可動フレーム18の回動動作により垂直ロッド5の中心軸を中心に旋回するようになる。
【0023】
支持フレーム20の側面には、昇降用ウインチ22が取付固定されており、昇降用ウインチ22から垂直ロッド5を支持するワイヤ23が下方に向けて繰り出されるようになっている。図5は、図2のB−B断面図である。昇降用ウインチ22から繰り出されたワイヤ23は、下方のガイドローラ21の軸中央部分に形成されたガイド溝21aに装着されて垂直ロッド5の軸方向に沿うように下方に向かって繰り出されるように設定されている。そして、ワイヤ23の下端部は、垂直ロッド5の下端部に固定された取付部24に形成された取付孔24aに固定されており、垂直ロッド5が上下方向に沿うように設定された際に垂直ロッド5の自重がワイヤ23に加わってワイヤ23が垂直ロッド5の側面に沿うように張設されるようになる。そのため、垂直ロッド5は、ワイヤ23により吊り下げられた状態に設定される。また、垂直ロッド5の下端部の取付部24には水平アーム6の取付フレーム25がネジ止めにより固定されており、取付フレーム25に水平アーム6が挿入されて水平方向に沿って取付固定されるようになっている。
【0024】
垂直ロッド5は、ガイドローラ21により上下方向(垂直ロッドの軸方向)にのみ移動可能に支持されるとともに吊り下げ用のワイヤ23が上下方向に沿って張設されているので、昇降用ウインチ22の駆動モータを回転駆動させてワイヤ23の繰り出す長さを調整すれば、垂直ロッド5の下端位置が上下動して正確に高さ調整されるようになり、垂直ロッド5の下端に取り付けられた水平アーム6も連動して昇降位置の調整を正確に行うことができるようになる。
【0025】
図6は、伸長した状態の垂直ロッド5に関する正面図であり、図7は、短縮した状態の垂直ロッド5に関する正面図である。垂直ロッド5は、5本の分割ロッド51〜55を組み合せて構成されており、各分割ロッドは、それぞれ断面矩形状で筒状に形成されている。分割ロッド51〜55は、先端側の分割ロッド51から後端側の分割ロッド55にいくに従いサイズが大きくなるように設定されており、分割ロッド51は分割ロッド52内に収納可能に形成され、同様に分割ロッド52は分割ロッド53内に、分割ロッド53は分割ロッド54内に、分割ロッド54は分割ロッド55内にそれぞれ収納可能に形成されている。
【0026】
そのため、図6に示すように、各分割ロッドが引き出された伸長状態、及び、図7に示すように、各分割ロッドが収納された短縮状態にそれぞれ設定することで、垂直ロッド5を伸縮させることができる。また、各分割ロッドが収納された状態では、内側の分割ロッドの外周面及び外側の分割ロッドの内周面の間に所定の間隔の隙間が生じるように設定されており、設定された隙間は後述するガイドローラにより維持されて垂直ロッド5のスムーズな伸縮動作が可能となっている。
【0027】
図8は、図7に示す短縮状態における先端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。また、図9は、図8のA−A断面図(図9(a))、図8のB−B断面図(図9(b))、図8のC−C断面図(図9(c))及び図8のD−D断面図(図9(d))である。
【0028】
先端側のガイドローラは分割ロッドの外側面に取り付けられている。最外側の分割ロッド55の先端部には、対向する細幅側面に一対のガイドローラ55a及び55bが固定されており、対向する広幅側面に一対のガイドローラ55c及び55dが固定されている。
【0029】
ガイドローラ55a及び55bは、細幅側面に固定された支持板550に取り付けられた固定軸551及び固定軸551に回動自在に軸支された一対のローラ体552を備えている。そして、ローラ体552は、分割ロッド55の先端部を後端側に切り欠いて形成された開口から内側に突出して分割ロッド54の外側面に当接するように配置されている。
【0030】
ガイドローラ55c及び55dは、広幅側面に固定された支持板553に取り付けられた固定軸554及び固定軸554に回動自在に軸支された一対のローラ体555を備えている。そして、ローラ体555は、分割ロッド55の先端部に穿設された一対の開口から内側に突出して分割ロッド54の外側面に当接するように配置されている。
【0031】
以上のように、分割ロッド55の4つの外側面に取り付けられたガイドローラ55a〜55dが内側の分割ロッド54の外側面に四方から当接した状態に設定されているので、分割ロッド54の外周面と分割ロッド55の内周面との間に所定の隙間が形成された状態で分割ロッド54が軸方向に安定して移動することができる。
【0032】
分割ロッド54の外側面にも分割ロッド55と同様の構造の4つのガイドローラ54a〜54dが取り付けられており、内側の分割ロッド53の外周面と分割ロッド54の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド53の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。また、分割ロッド53の外側面にも同様の構造の4つのガイドローラ53a〜53dが取り付けられており、内側の分割ロッド52の外周面と分割ロッド53の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド52の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。また、分割ロッド52の外側面にも同様の構造の4つのガイドローラ52a〜52dが取り付けられており、最内側の分割ロッド51の外周面と分割ロッド52の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド51の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。
【0033】
そして、垂直ロッド5が短縮した状態では、分割ロッド52〜55の先端部に固定された支持板520〜550が外側の分割ロッドの先端に当接してストッパの機能を果たすようになり、それ以上分割ロッド52〜54が挿入されないようになっている。
【0034】
また、支持板520〜550にはストッパピン526〜556が取り付けられており、ストッパピン526〜556の先端部は分割ロッド52〜55内側に突出している。垂直ロッド5が伸長した状態では、分割ロッド51〜54の後端側の外面に固定された係止部(図示せず)がストッパピン526〜556に引っ掛かり、分割ロッド51〜54が引き抜かれないようになっている。
【0035】
図10は、図7に示す短縮状態における後端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。また、図11は、図10のH−H断面図(図11(a))、図10のG−G断面図(図11(b))、図10のF−F断面図(図11(c))及び図10のE−E断面図(図11(d))である。
【0036】
後端側のガイドローラは各分割ロッドの内側面に当接するように取り付けられている。最内側の分割ロッド51の後端部には、対向する広幅側面の端部に一対の取付板51eが固定されている。一対の取付板51eは、略矩形状に形成されて先端側が分割ロッド51に固定されて後端側が延設されており、延設部分では取付板51eの間の間隔が狭くなるように内側に向かって段差状に形成されている。そして、一対の取付板51eの間には細幅側面側に一対のガイドローラ51f及び51gが取り付けられており、各取付板51eの広幅側面側には一対の摺動体51hが固定されている。
【0037】
ガイドローラ51f及び51gは、取付板51eの間に架け渡されて固定された回動軸516及び回動軸516に回動自在に軸支された一対のローラ体517を備えており、ローラ体517は、分割ロッド51の細幅側面から外方に突出して分割ロッド52の内周面に当接するように配置されている。摺動体51hは、取付板51eの外側面に固定されており、分割ロッド52の内周面に摺接するように配置されている。
【0038】
分割ロッド51の後端側において4つの外側面に対応して一対のガイドローラ51f及び51g並びに一対の摺動体51hが取り付けられて外側の分割ロッド52の内側面に四方から当接した状態に設定されているので、分割ロッド51の外周面と分割ロッド52の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となる。上述したように、分割ロッド52の先端側ではガイドローラ52a〜52dにより分割ロッド51が支持されているので、分割ロッド51は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0039】
分割ロッド52の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板52eが固定されており、取付板52eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ52f及び52g並びに一対の摺動体52hが取り付けられて外側の分割ロッド53の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド52の外周面と分割ロッド53の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド53の先端側ではガイドローラ53a〜53dにより分割ロッド52が支持されているので、分割ロッド52は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0040】
分割ロッド53の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板53eが固定されており、取付板53eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ53f及び53g並びに一対の摺動体53hが取り付けられて外側の分割ロッド54の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド53の外周面と分割ロッド54の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド54の先端側ではガイドローラ54a〜54dにより分割ロッド532が支持されているので、分割ロッド53は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0041】
分割ロッド54の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板54eが固定されており、取付板54eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ54f及び54g並びに一対の摺動体54hが取り付けられて外側の分割ロッド55の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド54の外周面と分割ロッド55の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド55の先端側ではガイドローラ55a〜55dにより分割ロッド54が支持されているので、分割ロッド54は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0042】
また、分割ロッド55の後端側に穿設された挿着孔55eには棒状のストッパ55fが分割ロッド55を貫通するように挿着されて外方に突出しており、ストッパ55fが支持フレーム20に当接することで分割ロッド55の抜け止めが防止される。
【0043】
以上説明したように、垂直ロッド5は、分割ロッド51〜55をそれぞれ引き出し又は挿入して伸縮させるように構成し、分割ロッドの両端側に取り付けたガイドローラによりスムーズに伸縮動作させるようにしているので、ワイヤ23の繰り出し又は巻き取りにより繰り出し長さを調整すればそれに対応して垂直ロッド5が伸縮して全体の長さを正確に設定することができる。そして、垂直ロッド5の最外側の分割ロッド55は、支持フレーム20のガイドローラ21に上下方向のみに移動可能に支持されているので、垂直ロッド5が前後左右に揺動することなく上下動させることができることから、ワイヤ23の繰り出し長さを調整して垂直ロッド5の下端部に取り付けた水平アーム6の昇降位置を正確に位置決めすることが可能となる。
【0044】
また、垂直ロッド5は、筒状の分割ロッドを組み合せて構成されているため、軽量化を図ることができる。そして、ワイヤ23で分割ロッドを吊り下げた状態で分割ロッドの自重により垂直ロッド5の伸縮動作を行うことができるので、水平アーム6の昇降機構を簡単な構成で実現することが可能となる。そのため、垂直ロッド5及び昇降用ウインチ22を支持する支持フレーム20全体を回動させる旋回手段の構成を簡略化して装置構成をコンパクト化することができる。
【0045】
以上説明した点検装置において、水平アームを取り付けて所定の位置に位置決めする場合には、まず、支持フレーム20のガイドローラ21の間に垂直ロッド5を短縮した状態で取り付けてワイヤ23で吊り下げた状態にしておき、水平アーム6を橋梁等の点検対象物の側面に沿った状態で垂直ロッド5の下端に固定する。
【0046】
次に、昇降用ウインチ22を動作させてワイヤ23を繰り出していき、それに伴い垂直ロッド5を伸長させる。垂直ロッド5が下方に向かって伸長していくことで、水平アーム6は点検対象物の側面をスムーズに下降していくようになる。垂直ロッド5の長さはワイヤ23の繰り出し量により正確に設定されるので、昇降用ウインチ22を駆動制御することで水平アーム6の下降位置を正確に設定することができる。
【0047】
そして、水平アーム6に搭載された撮影カメラ8が点検対象物の底面よりも低い所定の下降位置まで下降した段階で昇降用ウインチ22を駆動停止する。次に、固定フレーム13に取り付けた駆動モータ15を駆動して支持フレーム20を回動させて垂直ロッド5をその中心軸を中心に回動させる。垂直ロッド5の回動により下端に取り付けた水平アーム6を旋回させて撮影カメラ8を点検対象物の下方に移動させる。その際に、駆動モータ15を駆動制御することで水平アーム6の旋回角度を正確に設定することができる。
【0048】
以上のように、昇降用ウインチ22の駆動制御により水平アーム6の上下方向の昇降位置を設定するとともに駆動モータ15の駆動制御により水平アーム6の水平方向の旋回位置を設定することで、水平アーム6に搭載された撮影カメラの3次元位置を正確に位置決めすることができる。この場合、撮影カメラ8を搭載する走行台車7が水平アーム6上を走行する際に水平アーム6が変形するが、こうした変形による位置誤差を予め測定しておき、位置誤差を考慮して撮影カメラ8の位置決めを行うことで、より高精度の位置決めを行うことができる。
【0049】
さらに、橋梁等の点検対象物ではその下方に位置決めされた撮影カメラに関してGPS等により3次元座標位置を測定することは電波が届きにくく技術的に困難であるが、点検対象物上に載置された点検台車の3次元座標位置を測定し、測定された座標位置を基準にして上述の昇降位置及び旋回位置に基づいて撮影カメラの正確な3次元座標位置を測定することも可能となる。このように点検装置の点検位置を正確に設定できれば、同じ点検箇所を数年に一度点検する場合でも、同じ点検箇所に対して撮影カメラを短時間で正確に位置合せすることができ、同じ点検箇所の撮影画像が得られることで、パターンマッチング等の画像処理を行ってひび割れ等の進み具合をチェックすることが可能となり、橋梁管理カルテの更新作業の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 点検対象物
2 点検台車
3 台車支柱
4 取付アーム
5 垂直ロッド
6 水平アーム
7 走行台車
8 撮影カメラ
13 固定フレーム
14 延設部
15 駆動モータ
16 駆動歯車
17 連結機構
18 可動フレーム
19 平歯車
20 支持フレーム
21 ガイドローラ
22 昇降用ウインチ
23 ワイヤ
24 取付部
51〜55 分割ロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の下面又は建造物等の床下などの直接目視点検することが困難な構造物の部位を撮影カメラにより撮影して点検する構造物の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や建造物の老朽化に伴い強度の劣化が近年問題となっており、例えば、道路の橋梁については、既存の橋梁のうち1950年代から1973年代までの高度成長期に築造されたものが多く、これらの橋梁の架け替えや補強が必要となってきている。
【0003】
こうした橋梁に関しては、定期点検を数年に一度行う必要があり、点検の際に橋梁管理カルテを作成・更新していく業務が行われている。しかしながら、橋梁の点検では、橋梁の下面側の床版、橋桁、支承及び橋脚といった部位や橋桁の間の空間に設置された水道管等の添架設備など目視点検が困難な箇所を点検しなければならず、そのため点検作業にトラッククレーンや点検足場といった大掛かりな設備が必要であった。
【0004】
こうした大掛かりな設備は作業日数がかかる上に点検コスト負担が大きいため、点検箇所を撮影カメラを用いて撮影する点検装置が提案されている。例えば、特許文献1では、点検台車に上下動可能に取り付けた垂直ロッドを介して水平アームを点検対象物の下方に配置し、水平アーム上を走行する走行台車に立設した保持アームに撮影カメラを取り付け、保持アームを回動させるとともに撮影カメラを上下方向に回動させて撮影方向を設定して点検対象物の下面の点検箇所を撮影する点検装置が記載されている。また、特許文献2では、車両本体に、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に変更可能に構成した多関節の可動アームを取り付け、可動アームの先端に搭載された撮影用機器により構造物の下面を撮影するようにした点検装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−275385号公報
【特許文献2】特開2008−020426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、垂直ロッドが分割ロッド部材を連結して上下方向の長さを設定しており、垂直ロッドを昇降用ウインチで上下方向に移動させて高さを調整することができ、また垂直ロッドを回動させて水平アームの位置調整を行うようにしている。しかしながら、垂直ロッドのこうした位置調整は手動で行われるものであるため、正確な位置決めを行うことは難しく、また垂直ロッドも手動できる程度に軽量化する必要があって十分な強度を持たせることができない課題がある。
【0007】
特許文献2では、3軸方向に変更可能な多関節の可動アームを油圧又は電動で動作させて撮影用機器を位置決めするようにしているが、可動アームの関節部分が多く複雑な構造となって重量も重くなり、正確な動作を行う上で難点がある。
【0008】
そこで、本発明は、点検対象物の下方を撮影する撮影カメラを正確に位置決めすることができるとともに点検作業を効率よく安全に行うことが可能な点検装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る構造物の点検装置は、点検対象物の側方において上下方向に保持されるロッド部材と、前記ロッド部材の下部に固定されて点検対象物の下方に延設されるアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた撮影カメラにより点検対象物を下方から撮影する撮影手段と、前記ロッド部材を軸方向にのみ移動可能となるように案内する案内手段と、前記アーム部材に先端部が固定されて前記ロッド部材の軸方向に沿って張設されたワイヤにより前記ロッド部材を保持するとともに前記ワイヤの繰り出す長さを調整して前記アーム部材の昇降位置を設定する昇降手段と、前記ロッド部材を軸回りに回動させて前記アーム部材の旋回位置を設定する旋回手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記ロッド部材は、伸縮構造を有するとともに前記ワイヤの繰り出す長さに応じて伸縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、上下方向に保持されるとともに軸方向にのみ移動可能なロッド部材をワイヤの繰り出す長さに基づいて自重により上下動させて、アーム部材の昇降位置を正確に設定することができる。また、旋回手段によりロッド部材を軸回りに回動させてアーム部材の旋回位置を正確に設定することができ、昇降位置及び旋回位置を正確に設定することで、アーム部材に取り付けた撮影カメラの位置精度を高めることができる。
【0011】
また、昇降手段及び旋回手段により遠隔操作により撮影カメラの位置設定を行うことができるので、橋梁等の構造物を点検する場合に点検作業を効率よく安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する正面図である。
【図2】垂直ロッドの昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大正面図である。
【図3】垂直ロッドの昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】伸長した状態の垂直ロッドに関する正面図である。
【図7】短縮した状態の垂直ロッドに関する正面図である。
【図8】図7に示す短縮状態における先端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。
【図9】図8のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図及びD−D断面図である。
【図10】図7に示す短縮状態における後端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。
【図11】図10のH−H断面図、G−G断面図、F−F断面図及びE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する正面図である。点検装置は、橋梁等の点検対象物1の上面に設置された点検台車2、点検台車2に設けられた台車支柱3、台車支柱3に水平に支持された取付アーム4、取付アーム4に上下方向に沿って取り付けられた垂着ロッド5、垂直ロッド5の下端部に水平方向に沿って取り付けられた水平アーム6、水平アーム6の長手方向に走行可能に取り付けられた走行台車7、走行台車7に取り付けられた撮影カメラ8を備えている。
【0015】
点検台車2は、自在キャスターを底面に取り付けており、手押し自走が可能となっている。また、点検台車2を所定位置に移動させた後点検台車2全体をジャッキアップさせ、点検作業を行う位置において移動しないように設置される。
【0016】
点検台車2の上面には軸支部材10が立設されており、軸支部材10に台車支柱3が回動可能に軸支されている。そして、点検作業時には台車支柱3を立設した状態に回動して固定し、点検装置の運搬等を行う際には台車支柱3を横向きに回動させて収納するようにする。台車支柱3には、上下方向に伸縮可能な伸縮支柱が内蔵されており、台車支柱3に付設された昇降機構のハンドル11を手動で回転させることで、伸縮支柱を上下動させて取付アーム4の高さ位置の調整を行えるようになっている。
【0017】
台車支柱3の伸縮支柱の上部には、アーム保持ユニット12が固定されており、アーム保持ユニット12に軸支された2対のガイドローラの間に取付アーム4が水平方向に移動可能に支持されている。取付アーム4には、長手方向に沿って直線状にラック歯が取り付けられており、アーム保持ユニット12には、駆動歯車及び駆動モータが取り付けられている。そして、ラック歯を駆動歯車に噛み合わせた状態で駆動モータを駆動することで取付アーム4を水平方向に移動させて水平位置の調整を行えるようになっている。
【0018】
図2及び図3は、垂直ロッド5の昇降動作及び回動動作を行うための作動機構に関する一部拡大正面図及び平面図である。取付アーム4の先端部には、固定フレーム13が取り付けられている。固定フレーム13は、垂直ロッド5が通過可能な枠状に形成されており、外周部の一部が取付アーム4の先端部にネジ止めされて固定されている。
【0019】
固定フレーム13の上部は平面状に形成されており、外周縁部の一部を外方に向かって突出させて延設部14が形成されている。延設部14の下面には、駆動モータ15が取付固定されており、駆動モータ15の駆動軸が延設部14を貫通して上方に突出し、突出部分に駆動歯車16が固定されている。
【0020】
図4は、図3のA−A断面図である。固定フレーム13の上方には玉軸受からなる環状の連結機構17を介して可動フレーム18が回動可能に取り付けられている。可動フレーム18は、固定フレーム13と同様に垂直ロッド5が通過可能な枠状に形成されており、その外周には、環状の平歯車19が嵌め込まれている。そして、平歯車19の外周縁部に形成された歯列は、駆動歯車16と噛み合うように設定されている。そのため、駆動モータ15を回転駆動することで、可動フレーム18を回動させることができる。
【0021】
可動フレーム18の上面には、支持フレーム20が立設されてネジ止めにより固定されている。支持フレーム20は、断面矩形状の筒状体で、内部を垂直ロッド5が通過可能に形成されている。そして、支持フレーム20の内部には、2対のガイドローラ21が軸支されており、各対のガイドローラ21により垂直ロッド5が両側から挟持されて上下方向(垂直ロッド5の軸方向)にのみ移動可能となっている。
【0022】
垂直ロッド5の中心軸は、可動フレーム18の回動中心と一致するようにガイドローラ21により支持されており、可動フレーム18が回動することで垂直ロッド5は中心軸を中心に回動するようになる。そのため、垂直ロッド5の下端に取り付けられた水平アーム6は、可動フレーム18の回動動作により垂直ロッド5の中心軸を中心に旋回するようになる。
【0023】
支持フレーム20の側面には、昇降用ウインチ22が取付固定されており、昇降用ウインチ22から垂直ロッド5を支持するワイヤ23が下方に向けて繰り出されるようになっている。図5は、図2のB−B断面図である。昇降用ウインチ22から繰り出されたワイヤ23は、下方のガイドローラ21の軸中央部分に形成されたガイド溝21aに装着されて垂直ロッド5の軸方向に沿うように下方に向かって繰り出されるように設定されている。そして、ワイヤ23の下端部は、垂直ロッド5の下端部に固定された取付部24に形成された取付孔24aに固定されており、垂直ロッド5が上下方向に沿うように設定された際に垂直ロッド5の自重がワイヤ23に加わってワイヤ23が垂直ロッド5の側面に沿うように張設されるようになる。そのため、垂直ロッド5は、ワイヤ23により吊り下げられた状態に設定される。また、垂直ロッド5の下端部の取付部24には水平アーム6の取付フレーム25がネジ止めにより固定されており、取付フレーム25に水平アーム6が挿入されて水平方向に沿って取付固定されるようになっている。
【0024】
垂直ロッド5は、ガイドローラ21により上下方向(垂直ロッドの軸方向)にのみ移動可能に支持されるとともに吊り下げ用のワイヤ23が上下方向に沿って張設されているので、昇降用ウインチ22の駆動モータを回転駆動させてワイヤ23の繰り出す長さを調整すれば、垂直ロッド5の下端位置が上下動して正確に高さ調整されるようになり、垂直ロッド5の下端に取り付けられた水平アーム6も連動して昇降位置の調整を正確に行うことができるようになる。
【0025】
図6は、伸長した状態の垂直ロッド5に関する正面図であり、図7は、短縮した状態の垂直ロッド5に関する正面図である。垂直ロッド5は、5本の分割ロッド51〜55を組み合せて構成されており、各分割ロッドは、それぞれ断面矩形状で筒状に形成されている。分割ロッド51〜55は、先端側の分割ロッド51から後端側の分割ロッド55にいくに従いサイズが大きくなるように設定されており、分割ロッド51は分割ロッド52内に収納可能に形成され、同様に分割ロッド52は分割ロッド53内に、分割ロッド53は分割ロッド54内に、分割ロッド54は分割ロッド55内にそれぞれ収納可能に形成されている。
【0026】
そのため、図6に示すように、各分割ロッドが引き出された伸長状態、及び、図7に示すように、各分割ロッドが収納された短縮状態にそれぞれ設定することで、垂直ロッド5を伸縮させることができる。また、各分割ロッドが収納された状態では、内側の分割ロッドの外周面及び外側の分割ロッドの内周面の間に所定の間隔の隙間が生じるように設定されており、設定された隙間は後述するガイドローラにより維持されて垂直ロッド5のスムーズな伸縮動作が可能となっている。
【0027】
図8は、図7に示す短縮状態における先端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。また、図9は、図8のA−A断面図(図9(a))、図8のB−B断面図(図9(b))、図8のC−C断面図(図9(c))及び図8のD−D断面図(図9(d))である。
【0028】
先端側のガイドローラは分割ロッドの外側面に取り付けられている。最外側の分割ロッド55の先端部には、対向する細幅側面に一対のガイドローラ55a及び55bが固定されており、対向する広幅側面に一対のガイドローラ55c及び55dが固定されている。
【0029】
ガイドローラ55a及び55bは、細幅側面に固定された支持板550に取り付けられた固定軸551及び固定軸551に回動自在に軸支された一対のローラ体552を備えている。そして、ローラ体552は、分割ロッド55の先端部を後端側に切り欠いて形成された開口から内側に突出して分割ロッド54の外側面に当接するように配置されている。
【0030】
ガイドローラ55c及び55dは、広幅側面に固定された支持板553に取り付けられた固定軸554及び固定軸554に回動自在に軸支された一対のローラ体555を備えている。そして、ローラ体555は、分割ロッド55の先端部に穿設された一対の開口から内側に突出して分割ロッド54の外側面に当接するように配置されている。
【0031】
以上のように、分割ロッド55の4つの外側面に取り付けられたガイドローラ55a〜55dが内側の分割ロッド54の外側面に四方から当接した状態に設定されているので、分割ロッド54の外周面と分割ロッド55の内周面との間に所定の隙間が形成された状態で分割ロッド54が軸方向に安定して移動することができる。
【0032】
分割ロッド54の外側面にも分割ロッド55と同様の構造の4つのガイドローラ54a〜54dが取り付けられており、内側の分割ロッド53の外周面と分割ロッド54の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド53の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。また、分割ロッド53の外側面にも同様の構造の4つのガイドローラ53a〜53dが取り付けられており、内側の分割ロッド52の外周面と分割ロッド53の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド52の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。また、分割ロッド52の外側面にも同様の構造の4つのガイドローラ52a〜52dが取り付けられており、最内側の分割ロッド51の外周面と分割ロッド52の内周面との間に所定の隙間が形成された状態に設定され、分割ロッド51の軸方向の移動に伴い各ガイドローラが回動して安定したスムーズな移動を行うことができる。
【0033】
そして、垂直ロッド5が短縮した状態では、分割ロッド52〜55の先端部に固定された支持板520〜550が外側の分割ロッドの先端に当接してストッパの機能を果たすようになり、それ以上分割ロッド52〜54が挿入されないようになっている。
【0034】
また、支持板520〜550にはストッパピン526〜556が取り付けられており、ストッパピン526〜556の先端部は分割ロッド52〜55内側に突出している。垂直ロッド5が伸長した状態では、分割ロッド51〜54の後端側の外面に固定された係止部(図示せず)がストッパピン526〜556に引っ掛かり、分割ロッド51〜54が引き抜かれないようになっている。
【0035】
図10は、図7に示す短縮状態における後端側のガイドローラ部分に関する拡大図である。また、図11は、図10のH−H断面図(図11(a))、図10のG−G断面図(図11(b))、図10のF−F断面図(図11(c))及び図10のE−E断面図(図11(d))である。
【0036】
後端側のガイドローラは各分割ロッドの内側面に当接するように取り付けられている。最内側の分割ロッド51の後端部には、対向する広幅側面の端部に一対の取付板51eが固定されている。一対の取付板51eは、略矩形状に形成されて先端側が分割ロッド51に固定されて後端側が延設されており、延設部分では取付板51eの間の間隔が狭くなるように内側に向かって段差状に形成されている。そして、一対の取付板51eの間には細幅側面側に一対のガイドローラ51f及び51gが取り付けられており、各取付板51eの広幅側面側には一対の摺動体51hが固定されている。
【0037】
ガイドローラ51f及び51gは、取付板51eの間に架け渡されて固定された回動軸516及び回動軸516に回動自在に軸支された一対のローラ体517を備えており、ローラ体517は、分割ロッド51の細幅側面から外方に突出して分割ロッド52の内周面に当接するように配置されている。摺動体51hは、取付板51eの外側面に固定されており、分割ロッド52の内周面に摺接するように配置されている。
【0038】
分割ロッド51の後端側において4つの外側面に対応して一対のガイドローラ51f及び51g並びに一対の摺動体51hが取り付けられて外側の分割ロッド52の内側面に四方から当接した状態に設定されているので、分割ロッド51の外周面と分割ロッド52の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となる。上述したように、分割ロッド52の先端側ではガイドローラ52a〜52dにより分割ロッド51が支持されているので、分割ロッド51は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0039】
分割ロッド52の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板52eが固定されており、取付板52eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ52f及び52g並びに一対の摺動体52hが取り付けられて外側の分割ロッド53の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド52の外周面と分割ロッド53の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド53の先端側ではガイドローラ53a〜53dにより分割ロッド52が支持されているので、分割ロッド52は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0040】
分割ロッド53の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板53eが固定されており、取付板53eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ53f及び53g並びに一対の摺動体53hが取り付けられて外側の分割ロッド54の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド53の外周面と分割ロッド54の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド54の先端側ではガイドローラ54a〜54dにより分割ロッド532が支持されているので、分割ロッド53は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0041】
分割ロッド54の後端側にも分割ロッド51と同様に一対の取付板54eが固定されており、取付板54eには4つの外側面に対応して一対のガイドローラ54f及び54g並びに一対の摺動体54hが取り付けられて外側の分割ロッド55の内側面に四方から当接した状態に設定されている。そのため、分割ロッド54の外周面と分割ロッド55の内周面との間に所定の隙間が形成された状態となり、上述したように、分割ロッド55の先端側ではガイドローラ55a〜55dにより分割ロッド54が支持されているので、分割ロッド54は、両端側においてガイドローラに支持されて軸方向に安定して移動することができるようになる。
【0042】
また、分割ロッド55の後端側に穿設された挿着孔55eには棒状のストッパ55fが分割ロッド55を貫通するように挿着されて外方に突出しており、ストッパ55fが支持フレーム20に当接することで分割ロッド55の抜け止めが防止される。
【0043】
以上説明したように、垂直ロッド5は、分割ロッド51〜55をそれぞれ引き出し又は挿入して伸縮させるように構成し、分割ロッドの両端側に取り付けたガイドローラによりスムーズに伸縮動作させるようにしているので、ワイヤ23の繰り出し又は巻き取りにより繰り出し長さを調整すればそれに対応して垂直ロッド5が伸縮して全体の長さを正確に設定することができる。そして、垂直ロッド5の最外側の分割ロッド55は、支持フレーム20のガイドローラ21に上下方向のみに移動可能に支持されているので、垂直ロッド5が前後左右に揺動することなく上下動させることができることから、ワイヤ23の繰り出し長さを調整して垂直ロッド5の下端部に取り付けた水平アーム6の昇降位置を正確に位置決めすることが可能となる。
【0044】
また、垂直ロッド5は、筒状の分割ロッドを組み合せて構成されているため、軽量化を図ることができる。そして、ワイヤ23で分割ロッドを吊り下げた状態で分割ロッドの自重により垂直ロッド5の伸縮動作を行うことができるので、水平アーム6の昇降機構を簡単な構成で実現することが可能となる。そのため、垂直ロッド5及び昇降用ウインチ22を支持する支持フレーム20全体を回動させる旋回手段の構成を簡略化して装置構成をコンパクト化することができる。
【0045】
以上説明した点検装置において、水平アームを取り付けて所定の位置に位置決めする場合には、まず、支持フレーム20のガイドローラ21の間に垂直ロッド5を短縮した状態で取り付けてワイヤ23で吊り下げた状態にしておき、水平アーム6を橋梁等の点検対象物の側面に沿った状態で垂直ロッド5の下端に固定する。
【0046】
次に、昇降用ウインチ22を動作させてワイヤ23を繰り出していき、それに伴い垂直ロッド5を伸長させる。垂直ロッド5が下方に向かって伸長していくことで、水平アーム6は点検対象物の側面をスムーズに下降していくようになる。垂直ロッド5の長さはワイヤ23の繰り出し量により正確に設定されるので、昇降用ウインチ22を駆動制御することで水平アーム6の下降位置を正確に設定することができる。
【0047】
そして、水平アーム6に搭載された撮影カメラ8が点検対象物の底面よりも低い所定の下降位置まで下降した段階で昇降用ウインチ22を駆動停止する。次に、固定フレーム13に取り付けた駆動モータ15を駆動して支持フレーム20を回動させて垂直ロッド5をその中心軸を中心に回動させる。垂直ロッド5の回動により下端に取り付けた水平アーム6を旋回させて撮影カメラ8を点検対象物の下方に移動させる。その際に、駆動モータ15を駆動制御することで水平アーム6の旋回角度を正確に設定することができる。
【0048】
以上のように、昇降用ウインチ22の駆動制御により水平アーム6の上下方向の昇降位置を設定するとともに駆動モータ15の駆動制御により水平アーム6の水平方向の旋回位置を設定することで、水平アーム6に搭載された撮影カメラの3次元位置を正確に位置決めすることができる。この場合、撮影カメラ8を搭載する走行台車7が水平アーム6上を走行する際に水平アーム6が変形するが、こうした変形による位置誤差を予め測定しておき、位置誤差を考慮して撮影カメラ8の位置決めを行うことで、より高精度の位置決めを行うことができる。
【0049】
さらに、橋梁等の点検対象物ではその下方に位置決めされた撮影カメラに関してGPS等により3次元座標位置を測定することは電波が届きにくく技術的に困難であるが、点検対象物上に載置された点検台車の3次元座標位置を測定し、測定された座標位置を基準にして上述の昇降位置及び旋回位置に基づいて撮影カメラの正確な3次元座標位置を測定することも可能となる。このように点検装置の点検位置を正確に設定できれば、同じ点検箇所を数年に一度点検する場合でも、同じ点検箇所に対して撮影カメラを短時間で正確に位置合せすることができ、同じ点検箇所の撮影画像が得られることで、パターンマッチング等の画像処理を行ってひび割れ等の進み具合をチェックすることが可能となり、橋梁管理カルテの更新作業の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 点検対象物
2 点検台車
3 台車支柱
4 取付アーム
5 垂直ロッド
6 水平アーム
7 走行台車
8 撮影カメラ
13 固定フレーム
14 延設部
15 駆動モータ
16 駆動歯車
17 連結機構
18 可動フレーム
19 平歯車
20 支持フレーム
21 ガイドローラ
22 昇降用ウインチ
23 ワイヤ
24 取付部
51〜55 分割ロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象物の側方において上下方向に保持されるロッド部材と、前記ロッド部材の下部に固定されて点検対象物の下方に延設されるアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた撮影カメラにより点検対象物を下方から撮影する撮影手段と、前記ロッド部材を軸方向にのみ移動可能となるように案内する案内手段と、前記アーム部材に先端部が固定されて前記ロッド部材の軸方向に沿って張設されたワイヤにより前記ロッド部材を保持するとともに前記ワイヤの繰り出す長さを調整して前記アーム部材の昇降位置を設定する昇降手段と、前記ロッド部材を軸回りに回動させて前記アーム部材の旋回位置を設定する旋回手段とを備えていることを特徴とする構造物の点検装置。
【請求項2】
前記ロッド部材は、伸縮構造を有するとともに前記ワイヤの繰り出す長さに応じて伸縮することを特徴とする請求項1に記載の点検装置。
【請求項1】
点検対象物の側方において上下方向に保持されるロッド部材と、前記ロッド部材の下部に固定されて点検対象物の下方に延設されるアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた撮影カメラにより点検対象物を下方から撮影する撮影手段と、前記ロッド部材を軸方向にのみ移動可能となるように案内する案内手段と、前記アーム部材に先端部が固定されて前記ロッド部材の軸方向に沿って張設されたワイヤにより前記ロッド部材を保持するとともに前記ワイヤの繰り出す長さを調整して前記アーム部材の昇降位置を設定する昇降手段と、前記ロッド部材を軸回りに回動させて前記アーム部材の旋回位置を設定する旋回手段とを備えていることを特徴とする構造物の点検装置。
【請求項2】
前記ロッド部材は、伸縮構造を有するとともに前記ワイヤの繰り出す長さに応じて伸縮することを特徴とする請求項1に記載の点検装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−236673(P2011−236673A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110053(P2010−110053)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(308015522)ジビル調査設計株式会社 (3)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(308015522)ジビル調査設計株式会社 (3)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]