構造物用の滑り支承
【課題】大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、損壊の虞のない上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る構造物用の滑り支承を提供すること。
【解決手段】橋脚2に対して橋桁3を水平方向において橋軸方向Hに移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1は、橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3の鉛直方向Vの荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【解決手段】橋脚2に対して橋桁3を水平方向において橋軸方向Hに移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1は、橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3の鉛直方向Vの荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎、橋脚等の下部構造物と建物、橋桁等の上部構造物との間に介在されて下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持する構造物用の滑り支承に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−73145号公報
【特許文献2】特開平11−81237号公報
【0003】
滑り支承は、地震等による地盤の振動を建物、橋桁等の上部構造物に伝達しないで地震等による上部構造物の倒壊を防止するようになっている。また、橋梁に用いられる滑り支承は、上記に加えて、温度変化による橋桁の伸縮を滑りにより吸収するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大きな地震等により下部構造物に対して上部構造物が大きく変位すると、単に平坦な面同士の滑りを用いた滑り支承では、下部構造物から上部構造物が脱落してしまう虞がある上に、仮に、斯かる脱落を防止するために脱落防止機構を設けても、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギが脱落防止機構に直接加わることとなり、脱落防止機構が損壊する虞もある。そして、大きな振動エネルギに対する脱落防止機構は、その製造に費用も嵩む上に大きなスペースを必要とし必ずしも満足できるものではない。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、損壊の虞のない上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る構造物用の滑り支承を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持するべく、下部構造物と上部構造物との間に介在される本発明による構造物用の滑り支承は、上部構造物側に配される上部側滑り面と、この上部側滑り面に水平方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面を介して上部構造物の荷重を受けるように下部構造物側に配される下部側滑り面と、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段とを具備しており、復元力発生手段は、下部構造物及び上部構造物のうちの一方に固定されると共に下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有しており、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を上部構造物から鉛直方向に移動させるようになっている。
【0007】
本発明によれば、下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有している復元力発生手段が下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を下部構造物から鉛直方向に移動させるようになっているために、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを上部構造物の下部構造物からの鉛直方向の移動をもって位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく上部構造物と下部構造物との間の相対的な水平方向の大変位を防止でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る上に、変位面への対抗面の接触において摩擦力による減衰効果も期待できる。
【0008】
本発明の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して傾斜した平坦面を有している。
【0009】
他の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は湾曲面を有しており、この場合、変位面は湾曲凹面を有しており、対抗面は湾曲凸面を有していても、これに代えて、変位面は湾曲凸面を有しており、対抗面は湾曲凹面を有していてもよい。
【0010】
また、他の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの一方を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの他方を有している。
【0011】
変位面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方と連続して伸びていても、これに代えて、変位面及び対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して別個独立に設けられていても、更には、変位面及び対抗面のうちの一方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、変位面及び対抗面のうちの他方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方に対して別個独立に設けられていてもよい。
【0012】
本発明では、復元力発生手段は、変位面及び対抗面に加えて、下部側滑り面に対する上部側滑り面の一定以上の水平方向の相対的変位を禁止する禁止機構を有していてもよい。
【0013】
以上において、傾斜した平坦面、湾曲凸面及び湾曲凹面の傾斜角、形状及び曲率等を適宜設定することにより、運動エネルギから位置エネルギへの変換特性及び/又は下部構造物の塑性化を任意に制御することができる。
【0014】
本発明では、上部側滑り面及び下部側滑り面からなる上部構造物の荷重を受ける機構と、復元力発生手段とを一体的に設けても、これに代えて、荷重を受ける機構と復元力発生手段とを別体に設けてもよく、別体に設ける場合には、耐震設計の自由度が高くなり、好ましい場合がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、損壊の虞のない上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る構造物用の滑り支承を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明は、これら例に何等限定されないのである。
【0017】
図1において、本例の構造物用としての橋梁用の滑り支承1は、下部構造物としての橋脚2に対して上部構造物としての橋桁3を水平方向において橋軸方向H(以下、H方向という)に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される。
【0018】
滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3の鉛直方向V(以下、V方向という)の荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0019】
復元力発生手段11は、鍔部21で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23を介して固着された基台24と、基台24のV方向の上端に設けられた滑り板支持機構25と、基台24のH方向の両側面に設けられた一対の変位機構26及び27と、取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されていると共にH方向において基台24を間にして配された一対の支持部材28及び29と、H方向に対して傾斜した支持部材28及び29の夫々の傾斜面30及び31に夫々固着された滑り板32及び33とを具備している。
【0020】
基台24は、H方向に伸びた平坦な上端面35及び上端面35のH方向の両端縁からH方向に対して傾斜して下方に伸びた一対の平坦な傾斜面36及び37を有した截頭四角錐体からなる基台本体38と、基台本体38のH方向に伸びた平坦な下端面39に一体的に設けられた鍔部21とを具備している。
【0021】
滑り板支持機構25は、基台本体38の上端面35に形成された凹所41と、凹所41に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板42とを具備しており、弾性板42の上面43に滑り板10の下面44が加硫接着されており、これにより、滑り板支持機構25は、弾性板42を介して滑り板10を基台本体38上で支持している。滑り板10は、その下面44で弾性板42の上面43に加硫接着される代わりに、弾性板42の上面43に配されて凹所41において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0022】
変位機構26は、基台24のH方向の一方の側面である基台本体38の傾斜面36に形成された凹所51と、凹所51に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板52と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面53を有すると共に傾斜面53に対する裏面で弾性板52に加硫接着されている滑り板54とを具備している。滑り板54は、その裏面で弾性板52に加硫接着される代わりに、弾性板52に重ね合わされて凹所51において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0023】
変位機構27は、変位機構26と同様に、基台24のH方向の他方の側面である基台本体38の傾斜面37に形成された凹所56と、凹所56に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板57と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面58を有すると共に傾斜面58に対する裏面で弾性板57に加硫接着されている滑り板59とを具備している。滑り板59もまた、その裏面で弾性板57に加硫接着される代わりに、弾性板57に重ね合わされて凹所56において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0024】
橋桁3の下面6から滑り板54に向かって斜めに突出した支持部材28は、その一端の鍔部61で取付板7にボルト等により固着されて斯かる取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されている。
【0025】
橋桁3の下面6から滑り板59に向かって斜めに突出した支持部材29は、その一端の鍔部62で取付板7にボルト等により固着されて斯かる取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されている。
【0026】
傾斜面53に隙間65をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66を有した滑り板32は、滑り面66に対する裏面で支持部材28の他端の鍔部67の傾斜面30にボルト等により固着されており、変位面としての傾斜面53と対抗面としての滑り面66とは、互いに同一の傾斜角(補角関係)を有している。
【0027】
傾斜面58に隙間68をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面69を有した滑り板33は、滑り面69に対する裏面で支持部材29の他端の鍔部70の傾斜面31にボルト等により固着されており、変位面としての傾斜面58と対抗面としての滑り面69とは、互いに同一の傾斜角(補角関係)を有していると共に傾斜面53と滑り面66とも互いに同一の傾斜角を有している。
【0028】
橋桁3側に配される上部側滑り面5を有していると共にボルト等を介して取付板7に固着された滑り板8並びに橋脚2側に配される下部側滑り面9を有した滑り板10の夫々は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっている。
【0029】
滑り板32及び33もまた、滑り板8及び10と同様に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっていてもよく、また、摩擦力による減衰効果を期待するときは、高摩擦特性を有する例えば制動用材料等からなっていてもよい。
【0030】
以上の滑り支承1は、例えば図2に示すように小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向における一方の方向の振動又は変位を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容し、同様にして小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向における他方の方向の振動又は変位を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容し、而して、小さな地震等に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震等において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、温度変化による橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容する。
【0031】
大きな地震等において例えば図3に示すように橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、滑り面66と傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、滑り面69と傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら滑り面66及び傾斜面53の相互接触と滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0032】
橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1であって、橋桁3側に配される上部側滑り面5と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5を介して橋桁3の荷重を受けるように橋脚2側に配される下部側滑り面9と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備しており、復元力発生手段11が、橋脚2に基台24を介して固定されると共に下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての傾斜面53及び58と、傾斜面53及び58の夫々に対面した対抗面としての滑り面66及び69とを有しており、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位において傾斜面53及び58への滑り面66及び69の接触に基いて橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させるようになっている以上の滑り支承1によれば、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを橋桁3の橋脚2からのV方向の位置エネルギに変換して振動エネルギを吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく橋桁3と橋脚2との間の相対的なH方向の大変位を防止でき、而して、橋脚2から橋桁3の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造に費用及び占有空間の低減を図り得、また、傾斜面53及び58への滑り面66及び69の接触において摩擦力による減衰効果も期待できる上に、傾斜面53及び58の傾斜角を適宜設定することにより、運動エネルギの位置エネルギへの変換特性及び橋脚2の塑性化を任意に制御できる。
【0033】
以上の滑り支承1は、変位面として傾斜した傾斜面53及び58からなる平坦面を用い、対抗面としても傾斜した滑り面66及び69からなる平坦面を用いたが、図4に示すように、変位面として湾曲凸面71及び72からなる湾曲面を用い、対抗面として湾曲凹面73及び74からなる湾曲面を用いてもよい。
【0034】
即ち、橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される図4に示す橋梁用の滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面75で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面76を下面99に有している滑り部材77と、上部側滑り面76にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面76、滑り部材77及び取付板7を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面78を上面に有した滑り板79と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段80とを具備している。
【0035】
滑り板79は、裏金85と、裏金85の一方の面86に一体的に形成されていると共にポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっている滑り層87とを具備した複層板からなっており、滑り層87の上面の露出面が下部側滑り面78になっている。
【0036】
復元力発生手段80は、橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して固着された基台90と、基台90のV方向の平坦な上端面91に設けられた滑り板支持機構92と、基台90のH方向の両側面93及び94に設けられていると共に湾曲凸面71及び72を有した一対の変位機構95及び96と、上部側滑り面76のH方向の両端縁97及び98の夫々から連続的に伸びて滑り部材77の下面99に形成された湾曲凹面73及び74とを具備している。
【0037】
滑り板支持機構92は、基台90の上端面91に形成された凹所101と、凹所101に配された衝撃吸収用の天然ゴム又は合成ゴム等からなる弾性板102とを具備しており、滑り板79は、その裏面104で弾性板102の上面103に接触して凹所101において基台90に配されており、これにより、滑り板支持機構92は、弾性板102を介して滑り板79を基台90上で支持している。弾性板102は、滑り板79及び基台90に加硫接着されていてもよい。
【0038】
湾曲凹面73は、基台90を介して橋脚2に固定された湾曲凸面71に隙間105をもって対面しており、湾曲凹面73の曲率半径と同一の曲率半径を有した湾曲凹面74は、湾曲凸面71の曲率半径と同一の曲率半径を有していると共に基台90を介して橋脚2に固定された湾曲凸面72に隙間106をもって対面しており、湾曲凹面73及び74の夫々は、湾曲凸面71及び72の夫々の曲率半径よりも大きな曲率半径を有している。
【0039】
以上の図4に示す滑り支承1でも、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面78に対する上部側滑り面76のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板102の弾性伸縮により許容する。
【0040】
大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に例えば一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、図5に示すように、湾曲凸面72と湾曲凹面74との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に湾曲凸面72と湾曲凹面74との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させて上部側滑り面76の下部側滑り面78への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、湾曲凸面72と湾曲凹面74との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面76の下部側滑り面78からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面76の下部側滑り面78への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、湾曲凸面71と湾曲凹面73との相互接触を生じさせるようにし、以下、湾曲凸面72と湾曲凹面74との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら湾曲凸面72及び湾曲凹面74の相互接触と湾曲凸面71及び湾曲凹面73の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな地震等に基づく大きな運動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0041】
橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1であって、橋桁3側に配される上部側滑り面76と、上部側滑り面76にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面76を介して橋桁3の荷重を受けるように橋脚2側に配される下部側滑り面78と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段80とを具備しており、復元力発生手段80が、基台90を介して橋脚2に固定されると共に下部側滑り面78に対して交差方向に伸びる変位面としての湾曲凸面71及び72と、湾曲凸面71及び72の夫々に対面した対抗面としての湾曲凹面73及び74とを有しており、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位において湾曲凸面71及び72への湾曲凹面73及び74の接触に基いて橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させるようになっている以上の滑り支承1によっても、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを橋桁3の橋脚2からのV方向の位置エネルギに変換して運動エネルギを吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく橋桁3と橋脚2との間の相対的なH方向の大変位を防止でき、而して、橋脚2から橋桁3の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造に費用及び占有空間の低減を図り得る。
【0042】
図1に示す滑り支承1の復元力発生手段11では、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53及び58を有する一対の変位機構26及び27を基台本体38のH方向の両傾斜面36及び37に設け、対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66及び69を有した滑り板32及び33を支持部材28及び29の夫々の傾斜面30及び31に固着したが、これに代えて、図6及び図7に示すように、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53及び58を有する一対の変位機構26及び27を基台本体38とは独立に鍔部21に設け、対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66及び69を上部側滑り面5と共に滑り板8に設けてもよい。
【0043】
図6及び図7に示す滑り支承1において、変位機構26及び27は、H方向に直交する方向において円柱状の基台本体38を挟んで鍔部21に固着されていると共に夫々に共用の略三角形の突起部材111及び112を具備しており、突起部材111及び112の夫々は、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53と、同じく他方の変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面58とを有しており、鍔部21を介して橋脚2に固定された二つの傾斜面53に二つの隙間65をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる二つの滑り面66は、滑り板8のH方向の一端側であってH方向に直交する方向の両端縁に設けられており、鍔部21を介して橋脚2に固定された二つの傾斜面58に二つの隙間68をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる二つの滑り面69は、滑り板8のH方向の他端側であってH方向に直交する方向の両端縁に設けられており、下部側滑り面9を上面に有した滑り板10及び衝撃吸収用の弾性板42は円板状の形状を有している。
【0044】
図6及び図7に示す滑り支承1においても、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の振動の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容し、また、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、例えば二つの滑り面66と二つの傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、二つの滑り面69と二つの傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら二つの滑り面66及び傾斜面53の相互接触と二つの滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0045】
図6及び図7に示す滑り支承1では、H方向に直交する方向において基台本体38を挟んで鍔部21に固着されてなる夫々に共用の略三角形の突起部材111及び112を具備した変位機構26及び27を用いたが、これに代えて、図8及び図9に示すように、鍔部21に一体形成された二つの基台本体38にH方向に直交する方向において挟まれた共用の略三角形の突起部材121を具備した変位機構26及び27を用いてもよい。
【0046】
即ち、図8及び図9に示す滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5及び滑り板8を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面9を夫々上面に有した二つの滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備しており、滑り板8は、H方向に伸びた滑り板本体122と、滑り板本体122のH方向の中央部のH方向に直交する方向の端縁から当該H方向に直交する方向に一体的に突出すると共に下面に上部側滑り面5を夫々有した一対の突出板部123とを具備しており、復元力発生手段11の基台24は、H方向に直交する方向に並んでいると共に夫々截頭四角錐体からなる一対の基台本体38と、各基台本体38の下端面39に一体的に設けられた鍔部21とを具備しており、下部側滑り面9を上面に有した各滑り板10は、各基台本体38において滑り板支持機構25により支持されており、鍔部21及び一対の基台本体38に一体に形成されている変位機構26及び27に共用の突起部材121は、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53と、同じく他方の変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面58とを有しており、鍔部21及び一対の基台本体38を介して橋脚2に固定された傾斜面53に隙間65をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66は、滑り板本体122のH方向の一端側に設けられており、鍔部21及び一対の基台本体38を介して橋脚2に固定された傾斜面58に隙間68をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面69は、滑り板本体122のH方向の他端側に設けられている。
【0047】
図8及び図9に示す滑り支承1でも、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の振動の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容し、また、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り面66と傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、滑り面69と傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら滑り面66及び傾斜面53の相互接触と滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0048】
ところで、以上の滑り支承1では、一体物からなる基台24又は90を用いたが、これに代えて、図10に示すように、下側基台本体131と下側基台本体131に重ね合わされていると共に下側基台本体131に対してH方向及びV方向に移動自在な上側基台本体132とからなる2つに分割された基台本体38を有した基台24を用いてもよい。
【0049】
即ち、橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される図10に示す滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0050】
図10に示す滑り支承1の復元力発生手段11は、下側基台本体131及び上側基台本体132からなる2つに分割された基台本体38を有すると共に下側基台本体131に一体的に形成された鍔部21を有して当該鍔部21で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して固着された基台24と、基台24のV方向の上端に設けられた滑り板支持機構25と、基台24の下側基台本体131のH方向の両側面に設けられた一対の変位機構26及び27と、下部側滑り面9に対する上部側滑り面5の一定以上のH方向の相対的変位を禁止する禁止機構135とを具備している。
【0051】
截頭四角錐体からなると共に下端面141で一体的に鍔部21に形成されている下側基台本体131は、H方向に伸びた平坦な上端面142と、H方向に対して夫々補角関係を持って傾斜した平坦な傾斜面143及び144とを具備しており、四角柱体からなる上側基台本体132は、H方向に伸びた平坦な上端面145と、V方向に伸びると共にH方向において互いに対面する一対の側端面146及び147と、下側基台本体131を受容する凹所148が形成された下端面149とを具備している。
【0052】
図10において、滑り板支持機構25は、上側基台本体132の上端面145に形成された凹所41と、凹所41に配されて上側基台本体132に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板42とを具備しており、滑り板10がその下面44で弾性板42の上面43に加硫接着又は弾性板42に重ね合わされて凹所41において上側基台本体132に嵌合されており、これにより、滑り板支持機構25は、弾性板42を介して滑り板10を上側基台本体132上で支持しており、変位機構26は、下側基台本体131のH方向の一方の側面である下側基台本体131の傾斜面143に形成された凹所51と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面53を有すると共に凹所51に配されて下側基台本体131に傾斜面53に対する裏面で固着された滑り板54とを具備しており、変位機構27は、変位機構26と同様に、下側基台本体131のH方向の他方の側面である下側基台本体131の傾斜面144に形成された凹所56と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面58を有すると共に凹所56に配されて下側基台本体131に傾斜面58に対する裏面で固着されている滑り板59とを具備しており、凹所148は、H方向に伸びた平坦な底面152とH方向に対して夫々補角関係を持って傾斜した平坦な傾斜面150及び151とによって規定されており、橋脚2に下側基台本体131を介して固定された傾斜面53に接触すると共に傾斜面53と同一角度をもって傾斜した傾斜面150は、傾斜面53に対面した対抗面となっており、橋脚2に下側基台本体131を介して固定された傾斜面58に接触すると共に傾斜面58と同一角度をもって傾斜した傾斜面151は、傾斜面58に対面した対抗面となっており、本例の場合も、滑り板54及び59は、滑り板32及び33並びに滑り板8及び10と同様に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっているとよい。
【0053】
禁止機構135は、H方向において上側基台本体132を隙間をもって挟んで配置されていると共に取付板7にボルト、溶接等により固着された一対の禁止板155及び156と、禁止板155及び156の夫々及び取付板7にボルト、溶接等により固着されていると共に禁止板155及び156の夫々を補強する補強部材157及び158とを具備しており、一対の禁止板155及び156は、滑り板8に対する上側基台本体132のH方向の相対的な移動において上側基台本体132の側端面146及び147に衝突して上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止するようになっている。
【0054】
図10に示す以上の滑り支承1は、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を、図11に示すように、下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようし、温度変化による橋桁3の伸縮等の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容する。
【0055】
図10に示す滑り支承1は、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、例えば図12に示すように、禁止板155への上側基台本体132の側端面146の衝突を生じさせて上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止した後に、傾斜面150と傾斜面53との間に滑りを生じさせて上側基台本体132の上昇と共に橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させ、斯かる移動後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、傾斜面150と傾斜面53との間の滑りを介して上側基台本体132の下降と共に橋桁3を下降させて橋桁3を元の位置に復帰させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、禁止板156への上側基台本体132の側端面147の衝突を生じさせて上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止した後に、傾斜面151と傾斜面58との間に滑りを生じさせて、以下、傾斜面150と傾斜面53との間の滑りの場合と同様に動作し、而して、これら傾斜面150及び傾斜面53の間の滑りと傾斜面151及び傾斜面58の間の滑りとにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな運動エネルギである振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0056】
上述の滑り支承1は、上部側滑り面5を有する滑り板8又は滑り板10を支持する基台24若しくは90に、復元力発生手段11又は80の少なくとも一部を設けたが、図13及び図14に示すように、これら滑り板8又は基台24若しくは90とは別個に復元力発生手段11を設けてもよい。
【0057】
図13及び図14に示す橋梁用の滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3のV方向荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、滑り板10を橋脚2上で支持する支持台161と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0058】
支持台161は、上端面162で滑り板10を支持した四角柱体からなる支持台本体163と、支持台本体163に一体的に設けられた鍔部164とを具備しており、鍔部164は、アンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して橋脚2の上面22に固着されており、滑り板10は、滑り板支持機構25(図1参照)を介して支持台本体163の上端面162に固着されている。
【0059】
図13及び図14に示す復元力発生手段11は、鍔部165で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット166を介して固着された橋脚側固定台167と、鍔部168で取付板7及びボルト等を介して橋桁3の下面6に固着された橋桁側固定台169とを具備している。
【0060】
橋脚側固定台167は、鍔部165に加えて、鍔部165に一体形成された固定ピン171と、固定ピン171が貫通すると共に鍔部165に加硫接着された衝撃吸収用の弾性部材172と、固定ピン171の上端部が隙間をもって挿入されていると共に弾性部材172に加硫接着された変位部材173とを具備しており、変位部材173は、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面であって、H方向に対して互いに補角関係をもって傾斜している一対の平坦な傾斜面174及び175からなる逆V字状の上面を有している。
【0061】
橋桁側固定台169は、鍔部168に加えて、鍔部165に一体形成されていると共にH方向に対して互いに補角関係をもって傾斜している一対の平坦な傾斜面176及び177からなる逆V字状の下面を有した固定台本体178と、傾斜面176に固着されていると共に傾斜面174に隙間179をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面180を有した滑り板181と、傾斜面177に固着されていると共に傾斜面175に隙間182をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面183を有した滑り板184とを具備している。
【0062】
橋脚側固定台167を介して橋脚2に固定された傾斜面174と滑り面180とは、互いに同一の傾斜角を有しており、橋脚側固定台167を介して橋脚2に固定された傾斜面175と滑り面183とは、互いに同一の傾斜角を有している。
【0063】
図13及び図14に示す復元力発生手段11を具備した滑り支承1は、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42(図1参照)の弾性伸縮により許容する一方、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、例えば図15に示すように、傾斜面174と滑り面180との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に傾斜面174と滑り面180との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、傾斜面174と滑り面180との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、傾斜面175と滑り面183との相互接触を生じさせるようにし、以下、傾斜面174と滑り面180との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら傾斜面174及び滑り面180の相互接触と傾斜面175及び滑り面183の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0064】
図13及び図14に示す復元力発生手段11では、橋脚側固定台167の変位部材173の上面を一対の平坦な傾斜面174及び175からなる逆V字状に形成し、橋桁側固定台169の固定台本体178の下面を一対の平坦な傾斜面176及び177からなる逆V字状に形成したが、これに代えて、図16に示す復元力発生手段11のように、橋脚側固定台167の変位部材173の上面を一対の連続した半円弧凸面191及び192からなる連続する半円弧凸面状に形成し、橋桁側固定台169の固定台本体178の下面を一対の連続した半円弧凹面193及び194からなると共に半円弧凸面191及び192からなる半円弧凸面状の変位部材173の上面の曲率半径よりも大きな連続する半円弧凹面状に形成し、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位では、例えば図17に示すように、半円弧凸面191と半円弧凹面193との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に半円弧凸面191と半円弧凹面193との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、半円弧凸面191と半円弧凹面193との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、半円弧凸面192と半円弧凹面194との相互接触を生じさせるようにし、以下、半円弧凸面191と半円弧凹面193との相互接触の場合と同様に動作させ、而して、これら半円弧凸面191及び半円弧凹面193の相互接触と半円弧凸面192及び半円弧凹面194の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようにしてもよい。
【0065】
図16に示す復元力発生手段11においても、半円弧凹面193及び194からなる連続した半円弧凹面状の固定台本体178の下面に、当該下面に沿って滑り板を固着してこの滑り板の2つの半円弧凹面からなる連続した半円弧凹面状の下面を半円弧凸面191及び192の対抗面としてもよい。
【0066】
また、復元力発生手段11としては図18に示すようにしてもよい。図18に示す復元力発生手段11は、橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット201及び202を介して固着されていると共にH方向に並んで配された一対の橋脚側固定台203及び204と、鍔部205及び206で取付板7及びボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されていると共にH方向に並んで配された一対の橋桁側固定台207及び208とを具備している。
【0067】
橋脚側固定台203は、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面210を上面に有しており、橋脚側固定台204は、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面211を上面に有しており、橋脚側固定台203を介して橋脚2に固定されると共に傾斜面210と傾斜面211とからなる傾斜面は、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面となっている。
【0068】
橋桁側固定台207は、鍔部205に加えて、鍔部205に一体的に形成されていると共に変位面である傾斜面210に隙間215をもって対面した対抗面としての下に凸の湾曲面216を有した対抗面部材217を有しており、橋桁側固定台208は、鍔部206に加えて、鍔部206に一体的に形成されていると共に変位面である傾斜面211に隙間218をもって対面した対抗面としての下に凸の湾曲面219を有した対抗面部材220を有している。
【0069】
図18に示す復元力発生手段11では、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位では、例えば図19に示すように、湾曲面219と傾斜面211との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に湾曲面219と傾斜面211との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、湾曲面219と傾斜面211との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、図20に示すように、湾曲面216と傾斜面210との相互接触を生じさせるようにし、以下、湾曲面219と傾斜面211との相互接触の場合と同様に動作させ、而して、これら湾曲面219及び傾斜面211の相互接触と湾曲面216及び傾斜面210の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようにしている。
【0070】
以上の滑り支承1を橋桁3を直列に配列した連続桁の夫々に設けた場合には、常時、風時、地震時等に橋脚2及び橋桁3間の夫々に伝達される力に対して各滑り支承1でもって適宜分担して受容できるように任意に調節することもできる。
【0071】
また、上部側滑り面5、76及び下部側滑り面9、78の摩擦抵抗を小さくすることにより、上部側滑り面5、76に対する下部側滑り面9、78の水平方向の拘束力を小さくでき、温度変化、コンクリート製の橋桁3の場合にはその乾燥収縮及びクリープ等による緩慢な水平変位並びに橋桁3の活荷重撓みに起因する橋桁3の端の回転変形による変位に対する優れた追従性を得ることができる。
【0072】
橋桁3は、滑り支承1を介して橋脚2上に支持されるのであるが、地震等の消滅後に、橋桁3を元の位置に復帰させる原点復帰機構を橋桁3と橋脚2との間に介在させてもよく、また、地震等における橋桁3の橋脚2に対する振動変位を効果的に減衰させる減衰機構を同じく橋桁3と橋脚2との間に介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の好ましい例の正面説明図である。
【図2】図1に示す例の動作説明図である。
【図3】図1に示す例の動作説明図である。
【図4】本発明の好ましい他の例の正面説明図である。
【図5】図4に示す例の動作説明図である。
【図6】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図7】図6に示す例の分解斜視説明図である。
【図8】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図9】図8に示す例の分解斜視説明図である。
【図10】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図11】図10に示す例の動作説明図である。
【図12】図10に示す例の動作説明図である。
【図13】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図14】図13に示す例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図15】図14に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図16】本発明の好ましい更に他の例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図17】図16に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図18】本発明の好ましい更に他の例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図19】図18に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図20】図18に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 滑り支承
2 橋脚
3 橋桁
5 上部側滑り面
6 下面
7 取付板
8 滑り板
9 下部側滑り面
10 滑り板
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎、橋脚等の下部構造物と建物、橋桁等の上部構造物との間に介在されて下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持する構造物用の滑り支承に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−73145号公報
【特許文献2】特開平11−81237号公報
【0003】
滑り支承は、地震等による地盤の振動を建物、橋桁等の上部構造物に伝達しないで地震等による上部構造物の倒壊を防止するようになっている。また、橋梁に用いられる滑り支承は、上記に加えて、温度変化による橋桁の伸縮を滑りにより吸収するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大きな地震等により下部構造物に対して上部構造物が大きく変位すると、単に平坦な面同士の滑りを用いた滑り支承では、下部構造物から上部構造物が脱落してしまう虞がある上に、仮に、斯かる脱落を防止するために脱落防止機構を設けても、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギが脱落防止機構に直接加わることとなり、脱落防止機構が損壊する虞もある。そして、大きな振動エネルギに対する脱落防止機構は、その製造に費用も嵩む上に大きなスペースを必要とし必ずしも満足できるものではない。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、損壊の虞のない上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る構造物用の滑り支承を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持するべく、下部構造物と上部構造物との間に介在される本発明による構造物用の滑り支承は、上部構造物側に配される上部側滑り面と、この上部側滑り面に水平方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面を介して上部構造物の荷重を受けるように下部構造物側に配される下部側滑り面と、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段とを具備しており、復元力発生手段は、下部構造物及び上部構造物のうちの一方に固定されると共に下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有しており、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を上部構造物から鉛直方向に移動させるようになっている。
【0007】
本発明によれば、下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有している復元力発生手段が下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を下部構造物から鉛直方向に移動させるようになっているために、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを上部構造物の下部構造物からの鉛直方向の移動をもって位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく上部構造物と下部構造物との間の相対的な水平方向の大変位を防止でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る上に、変位面への対抗面の接触において摩擦力による減衰効果も期待できる。
【0008】
本発明の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して傾斜した平坦面を有している。
【0009】
他の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は湾曲面を有しており、この場合、変位面は湾曲凹面を有しており、対抗面は湾曲凸面を有していても、これに代えて、変位面は湾曲凸面を有しており、対抗面は湾曲凹面を有していてもよい。
【0010】
また、他の好ましい例では、上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの一方を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの他方を有している。
【0011】
変位面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方と連続して伸びていても、これに代えて、変位面及び対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して別個独立に設けられていても、更には、変位面及び対抗面のうちの一方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、変位面及び対抗面のうちの他方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方に対して別個独立に設けられていてもよい。
【0012】
本発明では、復元力発生手段は、変位面及び対抗面に加えて、下部側滑り面に対する上部側滑り面の一定以上の水平方向の相対的変位を禁止する禁止機構を有していてもよい。
【0013】
以上において、傾斜した平坦面、湾曲凸面及び湾曲凹面の傾斜角、形状及び曲率等を適宜設定することにより、運動エネルギから位置エネルギへの変換特性及び/又は下部構造物の塑性化を任意に制御することができる。
【0014】
本発明では、上部側滑り面及び下部側滑り面からなる上部構造物の荷重を受ける機構と、復元力発生手段とを一体的に設けても、これに代えて、荷重を受ける機構と復元力発生手段とを別体に設けてもよく、別体に設ける場合には、耐震設計の自由度が高くなり、好ましい場合がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを位置エネルギに変換して大きな振動エネルギを効果的に吸収でき、而して、下部構造物から上部構造物の脱落を防止でき、しかも、損壊の虞のない上に、製造費の低減及び占有空間の低減を図り得る構造物用の滑り支承を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明は、これら例に何等限定されないのである。
【0017】
図1において、本例の構造物用としての橋梁用の滑り支承1は、下部構造物としての橋脚2に対して上部構造物としての橋桁3を水平方向において橋軸方向H(以下、H方向という)に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される。
【0018】
滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3の鉛直方向V(以下、V方向という)の荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0019】
復元力発生手段11は、鍔部21で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23を介して固着された基台24と、基台24のV方向の上端に設けられた滑り板支持機構25と、基台24のH方向の両側面に設けられた一対の変位機構26及び27と、取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されていると共にH方向において基台24を間にして配された一対の支持部材28及び29と、H方向に対して傾斜した支持部材28及び29の夫々の傾斜面30及び31に夫々固着された滑り板32及び33とを具備している。
【0020】
基台24は、H方向に伸びた平坦な上端面35及び上端面35のH方向の両端縁からH方向に対して傾斜して下方に伸びた一対の平坦な傾斜面36及び37を有した截頭四角錐体からなる基台本体38と、基台本体38のH方向に伸びた平坦な下端面39に一体的に設けられた鍔部21とを具備している。
【0021】
滑り板支持機構25は、基台本体38の上端面35に形成された凹所41と、凹所41に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板42とを具備しており、弾性板42の上面43に滑り板10の下面44が加硫接着されており、これにより、滑り板支持機構25は、弾性板42を介して滑り板10を基台本体38上で支持している。滑り板10は、その下面44で弾性板42の上面43に加硫接着される代わりに、弾性板42の上面43に配されて凹所41において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0022】
変位機構26は、基台24のH方向の一方の側面である基台本体38の傾斜面36に形成された凹所51と、凹所51に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板52と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面53を有すると共に傾斜面53に対する裏面で弾性板52に加硫接着されている滑り板54とを具備している。滑り板54は、その裏面で弾性板52に加硫接着される代わりに、弾性板52に重ね合わされて凹所51において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0023】
変位機構27は、変位機構26と同様に、基台24のH方向の他方の側面である基台本体38の傾斜面37に形成された凹所56と、凹所56に配されて基台本体38に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板57と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面58を有すると共に傾斜面58に対する裏面で弾性板57に加硫接着されている滑り板59とを具備している。滑り板59もまた、その裏面で弾性板57に加硫接着される代わりに、弾性板57に重ね合わされて凹所56において基台本体38に嵌合されていてもよい。
【0024】
橋桁3の下面6から滑り板54に向かって斜めに突出した支持部材28は、その一端の鍔部61で取付板7にボルト等により固着されて斯かる取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されている。
【0025】
橋桁3の下面6から滑り板59に向かって斜めに突出した支持部材29は、その一端の鍔部62で取付板7にボルト等により固着されて斯かる取付板7を介して橋桁3の下面6に固着されている。
【0026】
傾斜面53に隙間65をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66を有した滑り板32は、滑り面66に対する裏面で支持部材28の他端の鍔部67の傾斜面30にボルト等により固着されており、変位面としての傾斜面53と対抗面としての滑り面66とは、互いに同一の傾斜角(補角関係)を有している。
【0027】
傾斜面58に隙間68をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面69を有した滑り板33は、滑り面69に対する裏面で支持部材29の他端の鍔部70の傾斜面31にボルト等により固着されており、変位面としての傾斜面58と対抗面としての滑り面69とは、互いに同一の傾斜角(補角関係)を有していると共に傾斜面53と滑り面66とも互いに同一の傾斜角を有している。
【0028】
橋桁3側に配される上部側滑り面5を有していると共にボルト等を介して取付板7に固着された滑り板8並びに橋脚2側に配される下部側滑り面9を有した滑り板10の夫々は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっている。
【0029】
滑り板32及び33もまた、滑り板8及び10と同様に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっていてもよく、また、摩擦力による減衰効果を期待するときは、高摩擦特性を有する例えば制動用材料等からなっていてもよい。
【0030】
以上の滑り支承1は、例えば図2に示すように小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向における一方の方向の振動又は変位を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容し、同様にして小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向における他方の方向の振動又は変位を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容し、而して、小さな地震等に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震等において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、温度変化による橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容する。
【0031】
大きな地震等において例えば図3に示すように橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、滑り面66と傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、滑り面69と傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら滑り面66及び傾斜面53の相互接触と滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな地震等に基づく大きな運動エネルギである振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0032】
橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1であって、橋桁3側に配される上部側滑り面5と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5を介して橋桁3の荷重を受けるように橋脚2側に配される下部側滑り面9と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備しており、復元力発生手段11が、橋脚2に基台24を介して固定されると共に下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての傾斜面53及び58と、傾斜面53及び58の夫々に対面した対抗面としての滑り面66及び69とを有しており、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位において傾斜面53及び58への滑り面66及び69の接触に基いて橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させるようになっている以上の滑り支承1によれば、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを橋桁3の橋脚2からのV方向の位置エネルギに変換して振動エネルギを吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく橋桁3と橋脚2との間の相対的なH方向の大変位を防止でき、而して、橋脚2から橋桁3の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造に費用及び占有空間の低減を図り得、また、傾斜面53及び58への滑り面66及び69の接触において摩擦力による減衰効果も期待できる上に、傾斜面53及び58の傾斜角を適宜設定することにより、運動エネルギの位置エネルギへの変換特性及び橋脚2の塑性化を任意に制御できる。
【0033】
以上の滑り支承1は、変位面として傾斜した傾斜面53及び58からなる平坦面を用い、対抗面としても傾斜した滑り面66及び69からなる平坦面を用いたが、図4に示すように、変位面として湾曲凸面71及び72からなる湾曲面を用い、対抗面として湾曲凹面73及び74からなる湾曲面を用いてもよい。
【0034】
即ち、橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される図4に示す橋梁用の滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面75で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面76を下面99に有している滑り部材77と、上部側滑り面76にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面76、滑り部材77及び取付板7を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面78を上面に有した滑り板79と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段80とを具備している。
【0035】
滑り板79は、裏金85と、裏金85の一方の面86に一体的に形成されていると共にポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっている滑り層87とを具備した複層板からなっており、滑り層87の上面の露出面が下部側滑り面78になっている。
【0036】
復元力発生手段80は、橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して固着された基台90と、基台90のV方向の平坦な上端面91に設けられた滑り板支持機構92と、基台90のH方向の両側面93及び94に設けられていると共に湾曲凸面71及び72を有した一対の変位機構95及び96と、上部側滑り面76のH方向の両端縁97及び98の夫々から連続的に伸びて滑り部材77の下面99に形成された湾曲凹面73及び74とを具備している。
【0037】
滑り板支持機構92は、基台90の上端面91に形成された凹所101と、凹所101に配された衝撃吸収用の天然ゴム又は合成ゴム等からなる弾性板102とを具備しており、滑り板79は、その裏面104で弾性板102の上面103に接触して凹所101において基台90に配されており、これにより、滑り板支持機構92は、弾性板102を介して滑り板79を基台90上で支持している。弾性板102は、滑り板79及び基台90に加硫接着されていてもよい。
【0038】
湾曲凹面73は、基台90を介して橋脚2に固定された湾曲凸面71に隙間105をもって対面しており、湾曲凹面73の曲率半径と同一の曲率半径を有した湾曲凹面74は、湾曲凸面71の曲率半径と同一の曲率半径を有していると共に基台90を介して橋脚2に固定された湾曲凸面72に隙間106をもって対面しており、湾曲凹面73及び74の夫々は、湾曲凸面71及び72の夫々の曲率半径よりも大きな曲率半径を有している。
【0039】
以上の図4に示す滑り支承1でも、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面78に対する上部側滑り面76のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板102の弾性伸縮により許容する。
【0040】
大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に例えば一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、図5に示すように、湾曲凸面72と湾曲凹面74との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に湾曲凸面72と湾曲凹面74との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させて上部側滑り面76の下部側滑り面78への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、湾曲凸面72と湾曲凹面74との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面76の下部側滑り面78からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面76の下部側滑り面78への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、湾曲凸面71と湾曲凹面73との相互接触を生じさせるようにし、以下、湾曲凸面72と湾曲凹面74との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら湾曲凸面72及び湾曲凹面74の相互接触と湾曲凸面71及び湾曲凹面73の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな地震等に基づく大きな運動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0041】
橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される橋梁用の滑り支承1であって、橋桁3側に配される上部側滑り面76と、上部側滑り面76にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面76を介して橋桁3の荷重を受けるように橋脚2側に配される下部側滑り面78と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段80とを具備しており、復元力発生手段80が、基台90を介して橋脚2に固定されると共に下部側滑り面78に対して交差方向に伸びる変位面としての湾曲凸面71及び72と、湾曲凸面71及び72の夫々に対面した対抗面としての湾曲凹面73及び74とを有しており、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位において湾曲凸面71及び72への湾曲凹面73及び74の接触に基いて橋桁3を橋脚2から鉛直方向に移動させるようになっている以上の滑り支承1によっても、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを橋桁3の橋脚2からのV方向の位置エネルギに変換して運動エネルギを吸収でき、斯かる大きな振動エネルギに基づく橋桁3と橋脚2との間の相対的なH方向の大変位を防止でき、而して、橋脚2から橋桁3の脱落を防止でき、しかも、大きな地震等に基づく大きな振動エネルギを効果的に利用できて、損壊の虞をなくし得る上に、製造に費用及び占有空間の低減を図り得る。
【0042】
図1に示す滑り支承1の復元力発生手段11では、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53及び58を有する一対の変位機構26及び27を基台本体38のH方向の両傾斜面36及び37に設け、対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66及び69を有した滑り板32及び33を支持部材28及び29の夫々の傾斜面30及び31に固着したが、これに代えて、図6及び図7に示すように、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53及び58を有する一対の変位機構26及び27を基台本体38とは独立に鍔部21に設け、対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66及び69を上部側滑り面5と共に滑り板8に設けてもよい。
【0043】
図6及び図7に示す滑り支承1において、変位機構26及び27は、H方向に直交する方向において円柱状の基台本体38を挟んで鍔部21に固着されていると共に夫々に共用の略三角形の突起部材111及び112を具備しており、突起部材111及び112の夫々は、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53と、同じく他方の変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面58とを有しており、鍔部21を介して橋脚2に固定された二つの傾斜面53に二つの隙間65をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる二つの滑り面66は、滑り板8のH方向の一端側であってH方向に直交する方向の両端縁に設けられており、鍔部21を介して橋脚2に固定された二つの傾斜面58に二つの隙間68をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる二つの滑り面69は、滑り板8のH方向の他端側であってH方向に直交する方向の両端縁に設けられており、下部側滑り面9を上面に有した滑り板10及び衝撃吸収用の弾性板42は円板状の形状を有している。
【0044】
図6及び図7に示す滑り支承1においても、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の振動の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容し、また、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、例えば二つの滑り面66と二つの傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、二つの滑り面69と二つの傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら二つの滑り面66及び傾斜面53の相互接触と二つの滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0045】
図6及び図7に示す滑り支承1では、H方向に直交する方向において基台本体38を挟んで鍔部21に固着されてなる夫々に共用の略三角形の突起部材111及び112を具備した変位機構26及び27を用いたが、これに代えて、図8及び図9に示すように、鍔部21に一体形成された二つの基台本体38にH方向に直交する方向において挟まれた共用の略三角形の突起部材121を具備した変位機構26及び27を用いてもよい。
【0046】
即ち、図8及び図9に示す滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5及び滑り板8を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面9を夫々上面に有した二つの滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備しており、滑り板8は、H方向に伸びた滑り板本体122と、滑り板本体122のH方向の中央部のH方向に直交する方向の端縁から当該H方向に直交する方向に一体的に突出すると共に下面に上部側滑り面5を夫々有した一対の突出板部123とを具備しており、復元力発生手段11の基台24は、H方向に直交する方向に並んでいると共に夫々截頭四角錐体からなる一対の基台本体38と、各基台本体38の下端面39に一体的に設けられた鍔部21とを具備しており、下部側滑り面9を上面に有した各滑り板10は、各基台本体38において滑り板支持機構25により支持されており、鍔部21及び一対の基台本体38に一体に形成されている変位機構26及び27に共用の突起部材121は、変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面53と、同じく他方の変位面としての傾斜した平坦面からなる傾斜面58とを有しており、鍔部21及び一対の基台本体38を介して橋脚2に固定された傾斜面53に隙間65をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面66は、滑り板本体122のH方向の一端側に設けられており、鍔部21及び一対の基台本体38を介して橋脚2に固定された傾斜面58に隙間68をもって対面すると共に対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面69は、滑り板本体122のH方向の他端側に設けられている。
【0047】
図8及び図9に示す滑り支承1でも、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の振動の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容し、また、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り面66と傾斜面53との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に滑り面66と傾斜面53との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、滑り面66と傾斜面53との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、滑り面69と傾斜面58との相互接触を生じさせるようにし、以下、滑り面66と傾斜面53との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら滑り面66及び傾斜面53の相互接触と滑り面69及び傾斜面58の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0048】
ところで、以上の滑り支承1では、一体物からなる基台24又は90を用いたが、これに代えて、図10に示すように、下側基台本体131と下側基台本体131に重ね合わされていると共に下側基台本体131に対してH方向及びV方向に移動自在な上側基台本体132とからなる2つに分割された基台本体38を有した基台24を用いてもよい。
【0049】
即ち、橋脚2に対して橋桁3をH方向に移動自在に支持するべく、橋脚2と橋桁3との間に介在される図10に示す滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3のV方向の荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0050】
図10に示す滑り支承1の復元力発生手段11は、下側基台本体131及び上側基台本体132からなる2つに分割された基台本体38を有すると共に下側基台本体131に一体的に形成された鍔部21を有して当該鍔部21で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して固着された基台24と、基台24のV方向の上端に設けられた滑り板支持機構25と、基台24の下側基台本体131のH方向の両側面に設けられた一対の変位機構26及び27と、下部側滑り面9に対する上部側滑り面5の一定以上のH方向の相対的変位を禁止する禁止機構135とを具備している。
【0051】
截頭四角錐体からなると共に下端面141で一体的に鍔部21に形成されている下側基台本体131は、H方向に伸びた平坦な上端面142と、H方向に対して夫々補角関係を持って傾斜した平坦な傾斜面143及び144とを具備しており、四角柱体からなる上側基台本体132は、H方向に伸びた平坦な上端面145と、V方向に伸びると共にH方向において互いに対面する一対の側端面146及び147と、下側基台本体131を受容する凹所148が形成された下端面149とを具備している。
【0052】
図10において、滑り板支持機構25は、上側基台本体132の上端面145に形成された凹所41と、凹所41に配されて上側基台本体132に加硫接着又は嵌合された天然ゴム又は合成ゴム等からなる衝撃吸収用の弾性板42とを具備しており、滑り板10がその下面44で弾性板42の上面43に加硫接着又は弾性板42に重ね合わされて凹所41において上側基台本体132に嵌合されており、これにより、滑り板支持機構25は、弾性板42を介して滑り板10を上側基台本体132上で支持しており、変位機構26は、下側基台本体131のH方向の一方の側面である下側基台本体131の傾斜面143に形成された凹所51と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面53を有すると共に凹所51に配されて下側基台本体131に傾斜面53に対する裏面で固着された滑り板54とを具備しており、変位機構27は、変位機構26と同様に、下側基台本体131のH方向の他方の側面である下側基台本体131の傾斜面144に形成された凹所56と、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面としての、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面58を有すると共に凹所56に配されて下側基台本体131に傾斜面58に対する裏面で固着されている滑り板59とを具備しており、凹所148は、H方向に伸びた平坦な底面152とH方向に対して夫々補角関係を持って傾斜した平坦な傾斜面150及び151とによって規定されており、橋脚2に下側基台本体131を介して固定された傾斜面53に接触すると共に傾斜面53と同一角度をもって傾斜した傾斜面150は、傾斜面53に対面した対抗面となっており、橋脚2に下側基台本体131を介して固定された傾斜面58に接触すると共に傾斜面58と同一角度をもって傾斜した傾斜面151は、傾斜面58に対面した対抗面となっており、本例の場合も、滑り板54及び59は、滑り板32及び33並びに滑り板8及び10と同様に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の低摩擦特性を有する合成樹脂又は斯かる合成樹脂にガラス繊維及び有機繊維等の補強材を混入した補強材入合成樹脂からなっているとよい。
【0053】
禁止機構135は、H方向において上側基台本体132を隙間をもって挟んで配置されていると共に取付板7にボルト、溶接等により固着された一対の禁止板155及び156と、禁止板155及び156の夫々及び取付板7にボルト、溶接等により固着されていると共に禁止板155及び156の夫々を補強する補強部材157及び158とを具備しており、一対の禁止板155及び156は、滑り板8に対する上側基台本体132のH方向の相対的な移動において上側基台本体132の側端面146及び147に衝突して上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止するようになっている。
【0054】
図10に示す以上の滑り支承1は、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を、図11に示すように、下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようし、温度変化による橋桁3の伸縮等の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42の弾性伸縮により許容する。
【0055】
図10に示す滑り支承1は、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、例えば図12に示すように、禁止板155への上側基台本体132の側端面146の衝突を生じさせて上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止した後に、傾斜面150と傾斜面53との間に滑りを生じさせて上側基台本体132の上昇と共に橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させ、斯かる移動後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、傾斜面150と傾斜面53との間の滑りを介して上側基台本体132の下降と共に橋桁3を下降させて橋桁3を元の位置に復帰させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、禁止板156への上側基台本体132の側端面147の衝突を生じさせて上側基台本体132のそれ以上のH方向の相対的な移動を禁止した後に、傾斜面151と傾斜面58との間に滑りを生じさせて、以下、傾斜面150と傾斜面53との間の滑りの場合と同様に動作し、而して、これら傾斜面150及び傾斜面53の間の滑りと傾斜面151及び傾斜面58の間の滑りとにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな運動エネルギである振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0056】
上述の滑り支承1は、上部側滑り面5を有する滑り板8又は滑り板10を支持する基台24若しくは90に、復元力発生手段11又は80の少なくとも一部を設けたが、図13及び図14に示すように、これら滑り板8又は基台24若しくは90とは別個に復元力発生手段11を設けてもよい。
【0057】
図13及び図14に示す橋梁用の滑り支承1は、ボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されている取付板7を介して上面で橋桁3の下面6に固着されていると共に上部側滑り面5を下面に有している滑り板8と、上部側滑り面5にH方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面5、滑り板8及び取付板7を介して橋桁3のV方向荷重を受ける下部側滑り面9を上面に有した滑り板10と、滑り板10を橋脚2上で支持する支持台161と、橋脚2に対する橋桁3の一定以上のH方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段11とを具備している。
【0058】
支持台161は、上端面162で滑り板10を支持した四角柱体からなる支持台本体163と、支持台本体163に一体的に設けられた鍔部164とを具備しており、鍔部164は、アンカーボルト・ナット23(図1参照)等を介して橋脚2の上面22に固着されており、滑り板10は、滑り板支持機構25(図1参照)を介して支持台本体163の上端面162に固着されている。
【0059】
図13及び図14に示す復元力発生手段11は、鍔部165で橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット166を介して固着された橋脚側固定台167と、鍔部168で取付板7及びボルト等を介して橋桁3の下面6に固着された橋桁側固定台169とを具備している。
【0060】
橋脚側固定台167は、鍔部165に加えて、鍔部165に一体形成された固定ピン171と、固定ピン171が貫通すると共に鍔部165に加硫接着された衝撃吸収用の弾性部材172と、固定ピン171の上端部が隙間をもって挿入されていると共に弾性部材172に加硫接着された変位部材173とを具備しており、変位部材173は、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面であって、H方向に対して互いに補角関係をもって傾斜している一対の平坦な傾斜面174及び175からなる逆V字状の上面を有している。
【0061】
橋桁側固定台169は、鍔部168に加えて、鍔部165に一体形成されていると共にH方向に対して互いに補角関係をもって傾斜している一対の平坦な傾斜面176及び177からなる逆V字状の下面を有した固定台本体178と、傾斜面176に固着されていると共に傾斜面174に隙間179をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面180を有した滑り板181と、傾斜面177に固着されていると共に傾斜面175に隙間182をもって対面した対抗面としての傾斜した平坦面からなる滑り面183を有した滑り板184とを具備している。
【0062】
橋脚側固定台167を介して橋脚2に固定された傾斜面174と滑り面180とは、互いに同一の傾斜角を有しており、橋脚側固定台167を介して橋脚2に固定された傾斜面175と滑り面183とは、互いに同一の傾斜角を有している。
【0063】
図13及び図14に示す復元力発生手段11を具備した滑り支承1は、小さな地震又は温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋脚2に対する橋桁3のH方向の振動を下部側滑り面9に対する上部側滑り面5のH方向の滑りにより許容して、小さな地震に基づく橋脚2のH方向の振動の橋桁3への伝達を阻止して、小さな地震において橋桁3にH方向の過大な荷重が生じないようにし、温度変化による橋桁3の伸縮等に基づく橋桁3のH方向の変位の橋脚2への伝達を阻止して、橋桁3の伸縮等において橋脚2にH方向の過大な荷重が生じないようにし、そして、自動車の走行等によるV方向の橋桁3の撓み振動を弾性板42(図1参照)の弾性伸縮により許容する一方、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位が生じると、滑り支承1は、例えば図15に示すように、傾斜面174と滑り面180との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に傾斜面174と滑り面180との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、傾斜面174と滑り面180との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、傾斜面175と滑り面183との相互接触を生じさせるようにし、以下、傾斜面174と滑り面180との相互接触の場合と同様に動作し、而して、これら傾斜面174及び滑り面180の相互接触と傾斜面175及び滑り面183の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようになっている。
【0064】
図13及び図14に示す復元力発生手段11では、橋脚側固定台167の変位部材173の上面を一対の平坦な傾斜面174及び175からなる逆V字状に形成し、橋桁側固定台169の固定台本体178の下面を一対の平坦な傾斜面176及び177からなる逆V字状に形成したが、これに代えて、図16に示す復元力発生手段11のように、橋脚側固定台167の変位部材173の上面を一対の連続した半円弧凸面191及び192からなる連続する半円弧凸面状に形成し、橋桁側固定台169の固定台本体178の下面を一対の連続した半円弧凹面193及び194からなると共に半円弧凸面191及び192からなる半円弧凸面状の変位部材173の上面の曲率半径よりも大きな連続する半円弧凹面状に形成し、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位では、例えば図17に示すように、半円弧凸面191と半円弧凹面193との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に半円弧凸面191と半円弧凹面193との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、半円弧凸面191と半円弧凹面193との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、半円弧凸面192と半円弧凹面194との相互接触を生じさせるようにし、以下、半円弧凸面191と半円弧凹面193との相互接触の場合と同様に動作させ、而して、これら半円弧凸面191及び半円弧凹面193の相互接触と半円弧凸面192及び半円弧凹面194の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようにしてもよい。
【0065】
図16に示す復元力発生手段11においても、半円弧凹面193及び194からなる連続した半円弧凹面状の固定台本体178の下面に、当該下面に沿って滑り板を固着してこの滑り板の2つの半円弧凹面からなる連続した半円弧凹面状の下面を半円弧凸面191及び192の対抗面としてもよい。
【0066】
また、復元力発生手段11としては図18に示すようにしてもよい。図18に示す復元力発生手段11は、橋脚2の上面22にアンカーボルト・ナット201及び202を介して固着されていると共にH方向に並んで配された一対の橋脚側固定台203及び204と、鍔部205及び206で取付板7及びボルト等を介して橋桁3の下面6に固着されていると共にH方向に並んで配された一対の橋桁側固定台207及び208とを具備している。
【0067】
橋脚側固定台203は、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面210を上面に有しており、橋脚側固定台204は、H方向に伸びる上部側滑り面5及び下部側滑り面9に対して傾斜した平坦面からなる傾斜面211を上面に有しており、橋脚側固定台203を介して橋脚2に固定されると共に傾斜面210と傾斜面211とからなる傾斜面は、下部側滑り面9に対して交差方向に伸びる変位面となっている。
【0068】
橋桁側固定台207は、鍔部205に加えて、鍔部205に一体的に形成されていると共に変位面である傾斜面210に隙間215をもって対面した対抗面としての下に凸の湾曲面216を有した対抗面部材217を有しており、橋桁側固定台208は、鍔部206に加えて、鍔部206に一体的に形成されていると共に変位面である傾斜面211に隙間218をもって対面した対抗面としての下に凸の湾曲面219を有した対抗面部材220を有している。
【0069】
図18に示す復元力発生手段11では、大きな地震等において橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向における一方の方向の相対的振動変位では、例えば図19に示すように、湾曲面219と傾斜面211との相互接触を生じさせると共に斯かる接触後に湾曲面219と傾斜面211との間に滑りを生じさせて橋桁3を上昇させ、橋桁3を橋脚2からV方向に移動させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を解除し、斯かる移動、解除後、H方向における他方の方向の相対的振動変位で、湾曲面219と傾斜面211との間の滑りを介して橋桁3を下降させ、上部側滑り面5の下部側滑り面9からのV方向の離反を解除させて上部側滑り面5の下部側滑り面9への接触を回復させ、次に、H方向における他方の方向の大きな相対的振動変位では、図20に示すように、湾曲面216と傾斜面210との相互接触を生じさせるようにし、以下、湾曲面219と傾斜面211との相互接触の場合と同様に動作させ、而して、これら湾曲面219及び傾斜面211の相互接触と湾曲面216及び傾斜面210の相互接触とにおいて、橋脚2に対して橋桁3に一定以上のH方向の相対的変位を生じさせる大きな振動エネルギを橋桁3の位置エネルギに転化して橋脚2に対する橋桁3の過度なH方向の相対的変位を生じさせないようにしている。
【0070】
以上の滑り支承1を橋桁3を直列に配列した連続桁の夫々に設けた場合には、常時、風時、地震時等に橋脚2及び橋桁3間の夫々に伝達される力に対して各滑り支承1でもって適宜分担して受容できるように任意に調節することもできる。
【0071】
また、上部側滑り面5、76及び下部側滑り面9、78の摩擦抵抗を小さくすることにより、上部側滑り面5、76に対する下部側滑り面9、78の水平方向の拘束力を小さくでき、温度変化、コンクリート製の橋桁3の場合にはその乾燥収縮及びクリープ等による緩慢な水平変位並びに橋桁3の活荷重撓みに起因する橋桁3の端の回転変形による変位に対する優れた追従性を得ることができる。
【0072】
橋桁3は、滑り支承1を介して橋脚2上に支持されるのであるが、地震等の消滅後に、橋桁3を元の位置に復帰させる原点復帰機構を橋桁3と橋脚2との間に介在させてもよく、また、地震等における橋桁3の橋脚2に対する振動変位を効果的に減衰させる減衰機構を同じく橋桁3と橋脚2との間に介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の好ましい例の正面説明図である。
【図2】図1に示す例の動作説明図である。
【図3】図1に示す例の動作説明図である。
【図4】本発明の好ましい他の例の正面説明図である。
【図5】図4に示す例の動作説明図である。
【図6】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図7】図6に示す例の分解斜視説明図である。
【図8】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図9】図8に示す例の分解斜視説明図である。
【図10】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図11】図10に示す例の動作説明図である。
【図12】図10に示す例の動作説明図である。
【図13】本発明の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【図14】図13に示す例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図15】図14に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図16】本発明の好ましい更に他の例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図17】図16に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図18】本発明の好ましい更に他の例の復元力発生手段の正面拡大説明図である。
【図19】図18に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【図20】図18に示す例の復元力発生手段の動作説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 滑り支承
2 橋脚
3 橋桁
5 上部側滑り面
6 下面
7 取付板
8 滑り板
9 下部側滑り面
10 滑り板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持するべく、下部構造物と上部構造物との間に介在される構造物用の滑り支承であって、上部構造物側に配される上部側滑り面と、この上部側滑り面に水平方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面を介して上部構造物の荷重を受けるように下部構造物側に配される下部側滑り面と、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段とを具備しており、復元力発生手段は、下部構造物及び上部構造物のうちの一方に固定されると共に下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有しており、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を下部構造物から鉛直方向に移動させるようになっている構造物用の滑り支承。
【請求項2】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して傾斜した平坦面を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項3】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は湾曲面を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項4】
変位面は湾曲凸面及び湾曲凹面のうちの一方を有しており、対抗面は湾曲凸面及び湾曲凹面のうちの他方を有している請求項3に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項5】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの一方を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの他方を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項6】
変位面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方と連続して伸びている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項7】
変位面及び対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して別個独立に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項8】
変位面及び対抗面のうちの一方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、変位面及び対抗面のうちの他方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方に対して別個独立に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項9】
復元力発生手段は、下部側滑り面に対する上部側滑り面の一定以上の水平方向の相対的変位を禁止する禁止機構を有している請求項1から8のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項1】
下部構造物に対して上部構造物を水平方向に移動自在に支持するべく、下部構造物と上部構造物との間に介在される構造物用の滑り支承であって、上部構造物側に配される上部側滑り面と、この上部側滑り面に水平方向に滑り移動自在に接触すると共に上部側滑り面を介して上部構造物の荷重を受けるように下部構造物側に配される下部側滑り面と、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位に対する復元力を発生する復元力発生手段とを具備しており、復元力発生手段は、下部構造物及び上部構造物のうちの一方に固定されると共に下部側滑り面に対して交差方向に伸びる変位面とこの変位面に対面した対抗面とを有しており、下部構造物に対する上部構造物の一定以上の水平方向の相対的変位において変位面への対抗面の接触に基いて上部構造物を下部構造物から鉛直方向に移動させるようになっている構造物用の滑り支承。
【請求項2】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して傾斜した平坦面を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項3】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面及び対抗面の夫々は湾曲面を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項4】
変位面は湾曲凸面及び湾曲凹面のうちの一方を有しており、対抗面は湾曲凸面及び湾曲凹面のうちの他方を有している請求項3に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項5】
上部側滑り面及び下部側滑り面の夫々は水平方向に伸びた平坦面を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの一方を有しており、変位面は湾曲面及び平坦面のうちの他方を有している請求項1に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項6】
変位面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方と連続して伸びている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項7】
変位面及び対抗面は、上部側滑り面及び下部側滑り面に対して別個独立に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項8】
変位面及び対抗面のうちの一方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの一方と連続して伸びており、変位面及び対抗面のうちの他方は、上部側滑り面及び下部側滑り面のうちの他方に対して別個独立に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【請求項9】
復元力発生手段は、下部側滑り面に対する上部側滑り面の一定以上の水平方向の相対的変位を禁止する禁止機構を有している請求項1から8のいずれか一項に記載の構造物用の滑り支承。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−144429(P2009−144429A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323335(P2007−323335)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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