説明

様々な形態の活性型第V因子を用いた止血を調節する組成物及び方法

【解決手段】 第V因子/第Va因子を用いた凝固疾患の治療に対する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2006年2月23日に出願された米国仮出願第60/776,124号に対してU.S.C.第119(e)に基づいて優先権を主張するものであり、その全体はこの参照によって完全に説明されたものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
35U.S.C第202(c)に準じて、米国政府は、国立衛生研究所からの資金(グラント番号K01 DK60580−01及びP01−HL74124−01(プロジェクト2))によって一部なされている本明細書に記載された本発明における特定の権利を有することが認められている。
【0003】
技術分野
本発明は、医学及び血液学の分野に関連している。より特異的には、本発明は、必要な患者において凝固カスケードを調節するための、FV及びそれの誘導体の活性型を用いた治療戦略を記載するものである。
【背景技術】
【0004】
いくつかの刊行物及び特許文書は、本発明に関連する最先端を記載するために、本明細書を通じて引用されている。この引用文献のそれぞれは、この参照によって完全に説明されたものとして本明細書に組み込まれる。
【0005】
血友病は、FVIII(血友病A)或いはFIX(血友病B)遺伝子における変異に起因するX連鎖性出血性疾患であり、世界において約1:5,000の比で男性個人に発症する。患者は一般的に自発性出血を示し、外傷或いは手術後の出血が延長する。重篤な患者は、正常の1%以下のFVIII或いはFIXレベルを示し、臨床的な徴候の大部分を構成する。残りの患者は1〜30%の因子レベルを有する軽度〜中程度の疾患を有する[1]。
【0006】
血友病の臨床症状は、FVIII若しくはFIX欠損かは基本的に区別不可能である。しかしながら、血友病の臨床表現型は、同様の残存因子レベルを有する或いは同様な根底にある変異を有する患者によって変わるという明らかな証拠が存在する[2〜4]。従って、他の遺伝的或いは獲得因子が血友病表現型に影響を及ぼすことは可能である。静脈血栓の遺伝的基礎の現在の理解は、これらのリスク因子は血友病表現型を改善することができるかどうか決定する機会を提供する。
【0007】
トロンビン産生は、活性化プロテインC(PKC)によって一部調節され、これはトロンビン−トロンボモジュリン複合体による酵素前駆体プロテインCの制限タンパク質分解によって形成される。APCの抗血栓効果は、膜表面のVaVI及びIIaの両方の不活性化の結果生じる[5]。最も一般的な遺伝栓友病は、FV Leiden(FVL)として知られているFV遺伝子(Arg506のGlnへの)変異によって生じる。Arg506はAPCに対する開始切断部位であるので、FVLは正常FVaの約1/10の割合で不活性化され[6]、凝血原状態を作るトロンビンレベルを生じる。
【0008】
FLVは、2〜5%のコーカサス人種において存在するため、血友病表現型の最も一般的な研究された修飾因子である[7、8]。最初の報告は、FVLを有する患者における深刻な血友病A表現型の寛解を示唆していた[9、10]。しかしながら、更なる研究ではそのような関連の臨床的影響を示せなかった。700人を超える血友病患者のスクリーニングにおいて、35ケースにおいてFVLが同定された。これらのケースの半分のみ(14血友病A及び1血友病B)において、出血の頻度及び/若しくは長期に亘る因子消費の観点において、その関連が考えられる利点となった。これらの矛盾に対する理由は明らかではないが、少人数の患者、年齢群の違い、根底にある感染疾患の存在、及び研究の回顧的性質が関連しているであろう。成人において一般的な多くの合併症が小児において交絡因子ではないので、小児科研究の結果はこの問題において有益であった。このケースコントロール研究によって、FVLを有する或いは他の栓友病リスク因子を有する血友病A小児において、第一の出血発症の開始が遅れたことが示された[14]。
【0009】
また、FVL変異はFVII[15]或いはIFIX欠損血漿[16]におけるトロンビン産生を修飾できるというin vitroでの証拠も存在する。さらに、血友病における線維素溶解系の評価によって、FVIII或いはFIX欠損血漿におけるトロンビン誘導性血栓は未熟に溶解されたことが明らかになった[17]。従って、FVLによる増強されたトロンビンの産生も未熟な溶解に対するフィブリン血栓の抵抗性も増加する[18、19]。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0010】
血友病におけるFVLの影響の臨床及び研究評価の間の矛盾への洞察を得るために、本発明者らは、深刻な血友病及びFVLに対する遺伝操作マウスの有効性を利用した。これらのマウスモデルは、最小限の環境因子の影響下でin vivoでの血友病表現型を修飾する場合のこの血栓リスク因子の役割を扱うための機会を提供する。生動物における血栓形成の生化学アッセイ及びリアルタイム画像化と併せてこれらの独自モデルシステムを用いて、本発明者らは、FVの活性型は血友病表現型を有利に修飾することができることを見いだした。
【0011】
FVの活性型、さらには患者へ直接注入される生物学的適合性担体における本発明の活性型FVの切断耐性型を有する薬学的組成物も提供される。本発明の別の好ましい観点は、必要な患者における止血関連疾患の治療する方法を含み、この方法は本明細書に記載された薬学的組成物を含むFVの活性型の治療上有効な量を投与する工程を有する。そのような方法は、凝血原が必要で、限定されるものではないが血友病A及びB、阻害抗体に関連した血友病A及びB、凝固因子欠損、ビタミンKエポキシド還元酵素C1欠損、ガンマ−カルボキシラーゼ欠損、外傷、傷害、血栓、血小板減少症、脳卒中、凝固障害、播種性血管内凝固(DIC)に関連した出血、過剰抗凝固治療疾患、ベルナールスーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、及び貯蔵プール欠乏症を含む、疾患の治療における有効性を有すべきである。
【0012】
本発明の別の観点は、それらを大量生産するために本発明のFVの様々な活性型を発現する宿主細胞を含む。FVの活性型を単離し精製する方法も開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
深刻な血友病表現型の修飾因子としての第V Leiden因子(FVL)の役割は、未だ明らかではない。本発明者らは、FVLと交雑した血友病A或いはBを患ったマウスを用い、止血のin vivoパラメーターを解明した。微小循環におけるリアルタイム血栓形成は、生動物における広視野顕微鏡を用いてレーザー誘導性内皮傷害条件下で標識化血小板の堆積によってモニタリングした。血友病A或いはBマウスにおいて血管障害に続く血栓は形成されなかった。しかしながら、FVLに対するヘテロ接合体或いはホモ接合体の血友病マウスは、全ての傷害部位で血栓を形成した。血友病A或いはBマウスへの精製活性型FVの注射は、FVLのin vivo効果を模倣することができた。微小血管ベッドにおけるレーザー傷害に対するこれらの反応とは対照的に、FVLは、凝固時間及び高循環性トロンビンレベルが改善されたにも関わらず、塩化鉄頸動脈傷害モデルにおける大血管の傷害に続く持続性止血を提供できなかった。これらのデータをまとめると、FVLは血友病A或いはB表現型を改善する能力は持っているが、この効果は特定の血管傷害に続く微小循環レベルで主に明らかであるという証拠が提供された。本発明者らの観察によって、血友病におけるFVLの効果的な役割の異種の臨床的証拠が部分的に説明されるであろう。
【0014】
従って、本発明の一観点によると、血友病を治療する方法が提供される。例示的な方法は、FV或いはそれの誘導体の活性型の有効な量を患者へ投与し、血栓形成を増強し、それによって血友病の症状を軽減する工程を必要とする。この治療は、内因性経路タンパク質が欠損し、これらのタンパク質に対する阻害剤を持つ個人、若しくはFVの活性型の投与によって利益を受ける他の止血異常をいくつか有する個人における凝固を開始する。活性FV或いは内因性或いは外因性経路において欠損をバイパスするようなFV活性型様特性を持つFVの活性型の遺伝子操作誘導体の投与方法が開示される。
【0015】
血漿由来型第VIII因子(或いはB−ドメイン欠損VIII)、第IX因子、或いは第VIIa因子(NovoSeven)を用いたタンパク質置換治療は現在、血友病治療の大黒柱である。この治療型は制限がある一方、非常に有効であり何千もの患者を助けてきた。過去20年以上、FVの生化学を理解したいくつかのグループによって著しい進歩がなされてきた。第V因子は、一本鎖プロ補助因子として7μg/mL(20nM)の濃度で血漿中を循環しており、12時間の半減期である。それは、大きく(M=330,000、2196アミノ酸)高度にグリコシル化された一本鎖複数ドメイン(A1−A2−B−A3−C1−C2)タンパク質であり、肝臓で合成され、第VIII因子と相同性を有している。第V因子は不活性化プロ補助因子として分泌され、プロトロンビナーゼ複合体(Fxa、Fva、アニオン膜及びカルシウム)において機能できない。これは、FVは仮にそうだとしてもFXa及びプロトロンビンへ非常に弱く結合するという観察と一致し、FVからFVaへのタンパク分解性変換は補助因子機能を与える適切な構造変化を導くことを示唆している。トロンビンは、FVの最も強い活性化因子として証明された。タンパク分解は、Arg709、Arg1018及びArg1545で起こり、Ca2+イオンを介して関連したN−末端105kDa重鎖及びC−末端74/71kDa軽鎖から構成されたヘテロダイマーであるFVaIIaを生じる。図5を参照のこと。アミノ酸710〜1545に広がった大きく高度にグリコシル化されたBドメインは、補助因子活性化に必要ではなく、活性化の間に放出される。
【0016】
活性型第V因子(FVa)を用いることに加えて、本発明者らは、B−ドメインの多くの断片が欠損している一本鎖FV誘導体(例えば、FVdes811−1491;FV−810、Journal of Biological Chemistry,(2004)279:21643−21650;図5)を設計した。本発明者らはさらに、補助因子様特性を同様に持つ付加的誘導体も作成した。例えば、FV−902(第Vdes903−1491因子)もFV−810及びFVの活性型と同様な活性化特性を有している。これらB−ドメイン切断誘導体は、例え意図的なタンパク分解が存在しなくても、FVaと同等な機能特性を示す。本出願における文脈におけるこれら誘導体の有用性は、1)それらは、一本鎖型で哺乳類細胞株から分泌され、トロンビン或いは第Xa因子での意図的タンパク分解活性化を必要としない;2)それらは、二本鎖活性第Va因子と同程度の活性を有する;3)それらはトロンビンでの更なる加工は必要としない;及び4)それらは二本鎖第Va因子と同程度に血漿においてより安定である(すなわちより長い半減期を有する)ということである。
【0017】
付加的な有用誘導体には以下のものを含む:
FV−810;アミノ酸811〜1491を欠損した第V因子(JBC,279,2004,21643−21650に公開された)
FV−859;アミノ酸860〜1491を欠損した第V因子;
FV−866;アミノ酸867〜1491を欠損した第V因子;
FV−902;アミノ酸903〜1491を欠損した第V因子;
FV−924;アミノ酸923〜1491を欠損した第V因子;
FV−937;アミノ酸938〜1491を欠損した第V因子;
FV−956;アミノ酸957〜1491を欠損した第V因子。
【0018】
他には以下のようなものを含む:
FV−1033−B58−s131;アミノ酸1034〜1491を欠損し、第VIII因子のアミノ酸907〜1037と交換されたアミノ酸900〜1030を有する第V因子;
FV−1033−B58−s104;アミノ酸1034〜1491を欠損し、第VIII因子のアミノ酸972〜1075と交換されたアミノ酸904〜1007を有する第V因子;
FV−1033−B58−s46;アミノ酸1034〜1491を欠損し、第VIII因子のアミノ酸1032〜1077と交換されたアミノ酸963〜1008を有する第V因子である。上述した誘導体のそれぞれは、二本鎖活性型FVと同程度の機能特性を示す。
【0019】
In vivoで分子の安定化を増強し、抵抗性或いは保護性Cタンパク質経路を提供するために、上述した誘導体のそれぞれは:
Arg506
Arg306
Arg679
で修飾されるであろう。理論においてはあらゆるアミノ酸はこの部位で交換されるが、Glnは好ましい。
【0020】
従って、本発明の方法及び組成物は、血友病A及びBを患った患者;それぞれ第VIII因子或いは第IX因子に対する阻害性抗体を持つ血友病A及びBを患った患者;及び他の止血疾患を治療するために使用される。
【0021】
I.定義:
本発明の生物学的分子に関連した様々な用語は、上で使用されたものと、本明細書及び請求項を通じて使用されたものである。
【0022】
「FVの活性型」という用語は、意図的タンパク分解及び特異的補助因子の非存在下で二本鎖FVaと同程度の補助因子活性を示すように遺伝的に変換されたFVの修飾型を意味する。親FV分子におけるアミノ酸変換に対して好ましい部位は、上述した。
【0023】
「止血関連疾患」という用語は、血友病A及びB、阻害性抗体を有する血友病A及びB患者、凝固因子第VII因子、第IX因子及び第X因子、第XI因子、第V因子、第XII因子、第II因子、フォンヴィルブラント因子、混合FV/FVIII欠損、ビタミンKエポキシド還元酵素C1欠損、ガンマ−カルボキシラーゼ欠損などの出血疾患;外傷、傷害、血栓、血小板減少症、脳卒中、凝固障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)に関連した出血;ヘパリン、低分子量ヘパリン、五糖、ワルファリン、小分子抗血栓性(すなわちFXa阻害剤)に関連した過剰抗凝固;及びベルナールスーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、及び貯蔵プール欠乏症などの血小板疾患を意味している。
【0024】
本発明の核酸を参照すると、「単離された核酸」という用語がしばしば使用されている。この用語は、DNAに適用された場合、それが由来する生物体の天然由来ゲノムにおいてすぐ近接する(5’及び3’方向)配列から分離されたDNA分子を意味するものである。例えば、「単離された核酸」は、プラスミド或いはウイルスベクターなどのベクターへ挿入される、若しくは原核生物或いは真核生物のDNAへ組み込まれるDNA或いはcDNA分子を有する。
【0025】
本発明のRNA分子に関して、「単離された核酸」という用語は主に上で定義されたような単離DNA分子によってコードされたRNA分子を意味する。或いは、その用語は、「実質的に純粋」な形態で存在する(「実質的に純粋」という用語は以下で定義する)ような、その天然状態(すなわち細胞或いは組織内)に関連するRNA分子から十分に分離されたRNA分子を意味する。
【0026】
タンパク質を参照した場合、「単離タンパク質」或いは「単離及び精製タンパク質」という用語がしばしば使用される。この用語は主に本発明の単離核酸分子の発現によって産生されたタンパク質を意味する。或いは、この用語は、「実質的に純粋」な形態で存在するような、天然にそれと関連がある他のタンパク質から十分に分離されたタンパク質を意味する。
【0027】
「プロモーター領域」という用語は、遺伝子の転写調節領域を意味し、これはコード領域の5’或いは3’側で、若しくはコード領域内或いはイントロン内に見いだされる。
【0028】
「ベクター」という用語は、DNA配列が複製され得る宿主細胞へ導入されるために挿入され得る小担体DNA分子を意味する。「発現ベクター」は、宿主細胞内での発現に必要な必要調節領域を有する遺伝子或いは核酸配列を含む特殊化ベクターである。
【0029】
「操作可能に連結された」という用語は、コード領域の発現に影響を及ぼすように、前記コード領域の発現に必要な調節性配列が適切な部位でDNA分子に配置されたことを意味する。この同様な定義は、発現ベクターにおけるコード配列及び転写調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー及び終結エレメント)の配置に対してしばしば適用される。この定義はさらに、ハイブリッド核酸分子が産生される第一及び第二核酸配列分子の核酸配列の配置に対しても適用される。
【0030】
「実質的に純粋」という用語は、目的の前記化合物(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)を少なくとも50〜60重量%有する調合を意味する。より好ましくは、前記調合は、目的の前記化合物を少なくとも75重量%有しており、最も好ましくは90〜99重量%有するものである。純度は目的の前記化合物に対して適切な方法(例えば、クロマトグラフィー法、アガロース或いはポリアクリルアミドゲル電気泳動法、HPLC解析及びそれらと同等物)によって測定される。
【0031】
特定のヌクレオチド配列或いはアミノ酸配列を参照した場合の「本質的に構成される」という語句は、所定の配列ID番号:の特性を持つ配列を意味する。例えば、アミノ酸配列を参照する際に使用された場合、前記語句は、配列それ自体及び前記配列の基礎的及び新規特徴には影響を与えない分子修飾物を含む。
【0032】
本明細書で用いられたように、「オリゴヌクレオチド」という用語は本発明のプライマー及びプローブを意味し、2若しくはそれ以上の、好ましくは3以上のリボ−或いはデオキシリボヌクレオチドで構成される核酸分子として定義される。前記オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、様々な因子及び前記オリゴヌクレオチドが使用される特定の適用に依存するであろう。
【0033】
本明細書で用いられたように、「プローブ」という用語は、前記プローブに相補的な配列を有する核酸とアニーリングする或いは特異的にハイブリダイズすることができる、制限酵素消化などの天然由来或いは合成的に産生されたオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド或いはDNA或いはRNAの核酸を意味する。プローブは一本鎖或いは二本鎖である。前記プローブの正確な長さは、温度、プローブ源及び使用する方法を含む多くの因子に依存するであろう。例えば診断適用に対して、標的配列の複雑度に依存して、前記オリゴヌクレオチドプローブは、より少ないヌクレオチドを含むが、一般的に15〜25或いはそれ以上のヌクレオチドを含む。本明細書の前記プローブは、特定の標的核酸配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択される。これは、前記プローブは、一連の予定された条件下でそれぞれの標的鎖と「特異的にハイブリダイズする」或いはアニーリングすることができるように、十分に相補的であるべきであることを意味している。従って、前記プローブ配列は、前記標的の正確な相補配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片は、前記標的鎖と相補的なプローブ配列の残部を有する前記プローブの5’或いは3’末端へ連結される。或いは、非相補的塩基或いはより長い配列は前記プローブへ散在され、それによって、前記プローブ配列が前記標的核酸の配列に対する充分な相補性を有し、それと特異的にアニーリングすることができる。
【0034】
「特異的なハイブリダイズ」という用語は、本分野で一般的に使用される予定条件下でそのようなハイブリダイゼーションを可能にする(しばしば「実質的に相補的」と呼ばれる)、2つの十分に相補的な配列の一本鎖核酸分子間の関連を意味する。特に、その用語は、非相補的配列の一本鎖核酸を有するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは実質的に除外して、本発明の一本鎖DNA或いはRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを意味する。
【0035】
本明細書で用いられたように、「プライマー」という用語は、RNA或いはDNAの、一本鎖或いは二本鎖の、生物学的システム由来のオリゴヌクレオチド、制限酵素消化によって産生されたオリゴヌクレオチド、若しくは適切な環境に置かれた場合、鋳型依存性核酸合成のイニシエーターとして機能的に作用することができる合成的に産生されたオリゴヌクレオチドを意味している。適切な核酸鋳型、適切な核酸のヌクレオシド三リン酸前駆体、ポリメラーゼ酵素、適切な補助因子及び適切な温度やpHなどの条件が示された場合、前記プライマーは、プライマー伸長産物を得るためのポリメラーゼの作用或いは同様な活性によってヌクレオチドの付加によってその3’末端で伸長される。
【0036】
前記プライマーは、適用の特定条件及び装置に依存して長さが変わる。例えば、診断適用において、前記オリゴヌクレオチドプライマーは一般的に15〜25或いはそれ以上のヌクレオチドの長さである。前記プライマーは、望ましい伸長産物の合成を開始するために、すなわちポリメラーゼ或いは同様な酵素による合成の開始に使用するために適切な近位における前記プライマーの3’ヒドロキシル部位を提供するのに十分なやり方で、望ましい鋳型鎖とアニーリングすることができるように、望ましい鋳型に対して十分に相補的であるべきである。前記プライマー配列は望ましい鋳型の正確な相補性を示す必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド配列は、他の相補的プライマーの5’末端へ連結される。或いは、非相補的塩基は、オリゴヌクレオチドプライマー配列に散在され、これによって、前記プライマー配列は望ましい鋳型鎖の配列と十分な相補性を有し、前記伸長産物の合成のための鋳型−プライマー複合体を提供するものである。
【0037】
「パーセント同一」という用語は、核酸或いはアミノ酸配列間の比較に関して本明細書で用いられる。核酸及びアミノ酸配列はしばしば、核酸或いはアミノ酸の配列を整列させ、2つの間の違いを定義するためのコンピュータプログラムを用いて比較される。本発明の目的のために、核酸配列の比較は、Genetics Computer Group(Madison、ウィスコンシン州)から利用可能なGCG Wisconsin Package 9.1バージョンを用いて実行した。便宜上、前記プログラムによって指定される初期設定パラメータ(ギャップ生成ペナルティー=12、ギャップ拡張ペナルティー=4)は、配列同一性を比較するために本明細書で使用することを意図されるものである。或いは、初期設定パラメータを有するギャップアライメントを用いる、国立バイオテクノロジー情報センターによって提供されるBIastn2.0プログラム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/;Altschul et al.,1990,J Mol Biol 215;403−410)は、核酸配列及びアミノ酸配列間の同一性及び類似性のレベルを決定するために使用される。
【0038】
II.FVの活性型をコードした核酸分子、ポリペプチド及びその誘導体の調合
A.核酸分子
本発明のFVの活性型或いはその誘導体をコードする核酸分子は、組換えDNA技術法を用いることによって調合される。ヌクレオチド配列情報の利用能は、様々な手段によって本発明の単離核酸分子の調合を可能にする。例えば、FVの活性型或いはそれの誘導体ポリペプチドをコードする核酸配列は、本分野でよく知られた標準プロトコールを用いて適切な生物源から単離される。
【0039】
本発明の核酸は、あらゆる便利なクローニングベクターにおいてDNAとして維持される。好ましい実施形態において、クローンは、適切なE.coli宿主細胞において増殖する、pBluescript(Stratagene,La Jolla,カリフォルニア州)などのプラスミドクローニング/発現ベクターにおいて維持される。或いは、前記核酸は、哺乳類細胞における発現に適したベクターにおいて維持される。翻訳後修飾がFVの活性型或いはその誘導体機能に影響を与える場合、前記分子は哺乳類細胞において発現するのが好ましい。
【0040】
本発明のFVの活性型或いはその誘導体−コード核酸分子は、一本鎖或いは二本鎖のcDNA、ゲノムDNA、RNA及びそれらの断片を含む。従って、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1つの配列とハイブリダイズ可能な配列を持つオリゴヌクレオチド(DNA或いはRNAのセンス或いはアンチセンス鎖)を提供するものである。そのようなオリゴヌクレオチドは、FV発現の活性型を検出するためのプローブとして有用である。
【0041】
B.タンパク質
本発明のFVの完全長活性型或いはその誘導体ポリペプチドは、既知方法に従って様々な方法で調合される。前記タンパク質は、例えば形質転換細菌或いは動物培養細胞、或いはFVの活性型を発現した組織などの適切な源から、免疫親和性精製によって精製される。しかしながら、これは、既知の細胞タイプにおいて常に存在する低量タンパク質であるので、好ましい方法ではない。
【0042】
FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードした核酸分子の利用能は、本分野で既知のin vitro発現方法を用いたFVの活性型或いはその誘導体の産生を可能にする。例えば、cDNA或いは遺伝しは、in vitro転写用のpSP64或いはpSP65などの適切なin vitro転写ベクターへクローニングされ、その後、コムギ胚芽或いはウサギ網状赤血球可溶化液などの適切な無細胞翻訳システムにおける無細胞翻訳がなされる。In vitro転写及び翻訳システムは、例えば、Promega Biotech(Madison,ウィスコンシン州)或いはBRL(Rockville,メリーランド州)など商業的に利用可能である。
【0043】
或いは、好ましい実施形態によると、より大量な前記FVの活性型或いはその誘導体は、適切な原核生物或いは真核生物発現システムにおける発現によって産生される。例えば、FV活性型をコードするDNA分子の一部或いは全ては、E.coliなどの細菌細胞、或いはCHOやHela細胞などの哺乳類細胞における発現に適応したプラスミドベクターへ挿入される。或いは、好ましい実施形態において、FVの活性型或いはその誘導体を有するタグ化融合タンパク質が産生され得る。そのようなFVの活性型或いはその誘導体−タグ化融合タンパク質は、DNA分子の一部或いは全てによってコードされ、E.coliなどの細菌細胞或いは、これに限定されるものではないが、酵母及び哺乳類細胞などの真核生物細胞における発現に適応されたプラスミドベクターへ挿入される望ましいポリペプチドタグの一部或いは全てをコードするヌクレオチド配列に対して正しいコドンリーディングフレームに連結されるものである。上記のベクターなどのベクターは、宿主細胞におけるDNAの発現を可能にするようなやり方で置かれた、宿主細胞におけるDNAの発現に必要な調節エレメントを有する。発現に必要なそのような調節エレメントは、これに限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、及びエンハンサー配列を含む。
【0044】
組換え原核生物或いは真核生物システムにおける遺伝子発現によって産生される、FVの活性型或いはその誘導体タンパク質は、本分野で既知の方法に従って精製される。好ましい実施形態において、商業的に利用可能な発現/分泌システムが使用され、それにより組換えタンパク質が発現され前記宿主細胞から分泌され、周囲の培養液から容易に精製できる。発現/分泌ベクターを使用しない場合、代替アプローチは、前記組換えタンパク質に特異的に結合する抗体との免疫学的相互作用、或いはN−末端或いはC−末端での6〜8ヒスチジン残基でタグ化された組換えタンパク質の単離用ニッケルカラムなどの親和性分離による組換えタンパク質の精製方法を含む。代替タグは、FLAGエピトープ、GST或いは赤血球凝集素エピトープを有する。そのような方法は、熟練した実行者によって一般的に使用される。
【0045】
上述した方法によって調合されたFVの活性型或いはその誘導体タンパク質は、標準手順に従って解析される。例えば、そのようなタンパク質は、既知方法に従って、アミノ酸配列解析に供される。
【0046】
上述したように、本発明によるポリペプチド産生の便利な方法は、発現システムにおける核酸の使用によってそれをコードする核酸を発現することである。本発明の方法に有用な様々な発現システムは、本分野の当業者にはよく知られている。
【0047】
従って、本発明はさらに、(開示されたような)ポリペプチドを作成する方法も含み、前記方法は前記ポリペプチド(一般的には核酸)をコードする核酸からの発現を含む。これは、前記ポリペプチドの産生を引き起こす或いは可能にする適切な条件下でベクターなどを含む宿主細胞を培養することによって便利に達成される。ポリペプチドはさらに、網状赤血球可溶化液などのin vitroシステムにおいても産生される。
【0048】
III.FVの活性型或いはその誘導体−コード核酸呼びタンパク質の使用
FVポリペプチドの活性型或いはその誘導体、若しくは改変凝固活性を持つ同じものをコードする核酸は、例えば、血液凝固カスケードを調節する治療上及び/若しくは予防的薬剤として、本発明に従って使用される。本発明は、これらの分子が凝固を増加するように変換され得ることを発見した。
【0049】
A.本発明の好ましい実施形態において、FVの活性型或いはその誘導体は、生物学的に適合性の担体における注射を介して、好ましくは静脈内注射を介して患者へ投与される。本発明のFVの活性型或いはその誘導体は任意にリポソームへ被包される、若しくは他のリン脂質或いはミセルと混合され、前記分子の安定性を増加する。FVの活性型或いはその誘導体は、単独で、若しくは止血を調節すると知られている他の薬剤(例えば第VIIa因子、FIX、FVIII、或いはFX/Xa及びそれらの誘導体)との組み合わせで投与される。FVの活性型或いはその誘導体を送達する適切な組成物は、これに限定されるものではないが、患者の状態及び血行動態状態を含む様々な生理学的変数を考慮して医師によって決定される。異なる適用及び投与形態によく適した様々な組成物は、本分野ではよく知られており、以下で記載されている。
【0050】
FVの精製活性型或いはその誘導体を含む調合は、生理学的に許容可能なマトリックスを含み、薬学的調合として好ましく処方される。前記調合は、実質的に既知である先行技術法を用いて処方され、NaCl、CaClなどの塩類、及びグリシン及び/若しくはリシンなどのアミノ酸を含み、6〜8のpH範囲であるバッファーと混合され得る。必要になるまで、第V因子/Va類似体を含む前記精製調合は、完了溶液の形態で、若しくは凍結乾燥或いは冷凍形態で貯蔵され得る。好ましくは、前記調合は凍結乾燥形態で貯蔵され、適切な再構成溶液を用いて視覚的に透明な溶液へ溶解されるものである。
【0051】
或いは、本発明に従った前記調合はさらに液体調合として或いは冷凍された液体としても提供され得る。
【0052】
本発明に従った前記調合は特に安定である、すなわちそれは適用前に長時間溶解形態で維持することが可能である。
【0053】
本発明に従った調合は、1成分調合の形態で若しくは複数成分調合の形態で他の因子との組み合わせで、FVの活性型或いはその誘導体を有する薬学的調合として提供され得る。
【0054】
薬学的調合へと前記精製タンパク質を加工する前に、前記精製タンパク質は従来の質コントロールへ曝され、治療上の提示形態へと作られる。特に組換え体製造の間、前記制せ調合は、細胞性核酸さらには前記発現ベクター由来の核酸の非存在を、好ましくは欧州特許第EP0 714 987号に開示されたような方法を用いてテストされる。
【0055】
本発明の別の特徴は、高い安定性及び構造整合性を有し、特に不活化第V因子/Va類似体中間体及び自己タンパク分解性分解産物を含まず、上述されたタイプの第V因子類似体を活性化することによって及び適切な調合へ処方することによって産生され得る、FVの活性型或いはその誘導体を含む調合を提供することに関連している。
【0056】
前記薬学的調合は、特に好ましくは40μg/kgの変異第V因子ポリペプチドを有する、10〜1000μg/kgの間の、より好ましくは10〜250μg/kgの間の、最も好ましくは10〜75μg/kgの間の用量を含む。患者は出血を有する診察時に提示があり次第すぐに治療される。或いは、患者は1〜3時間毎にボーラス注射を受ける、若しくは十分な改善が観察された場合は、本明細書に記載されたようなFVの活性型或いはその誘導体の1日1回の注射を受ける。
【0057】
B.FVの活性型或いはその誘導体、若しくはその誘導体−コード核酸
FVの活性型或いはその誘導体−コード核酸は、本発明に従った様々な目的のために使用される。本発明の好ましい実施形態において、血液凝固を調節するための核酸送達媒体(すなわち発現ベクター)が提供され、ここにおいて前記発現ベクターはFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドがコードされた核酸配列、或いは本明細書に記載されたようなその機能的断片を有する。FVの活性型或いはその誘導体−コード発現ベクターの患者への投与は、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドの発現をもたらし、これは凝固を増強するように作用する。本発明に従って、FVの活性型或いはその誘導体コード核酸配列は、本明細書に記載されたようにその発現が止血を調節するFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードする。
【0058】
FVの活性型或いはその誘導体核酸配列を有する発現ベクターは、単独で、或いは止血を調節するのに有用な他の分子との組み合わせで投与される。本発明に従うと、前記発現ベクター或いは治療上薬剤の組み合わせは、患者へ単独に、或いは薬学的に許容可能な或いは生物学的に適合性な組成物において投与される。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、FVの活性型或いはその誘導体をコードする核酸配列を有する前記発現ベクターはウイルスベクターである。本発明において使用されるウイルスベクターは、これに限定されるものではないが、アデノウイルスベクター(組織特異的プロモーター/エンハンサーを有する或いは有さない)、複数セロタイプのアデノ関連ウイルス(AAV)ベクター(例えばAAV−2、AAV−5、AAV−7及びAAV−8)及びハイブリッドAAVベクター、レンチウイルスベクター及び偽型レンチウイルスベクター(例えばエボラウイルス、小胞口内炎ウイルス(VSV)、及びネコ免疫不全ウイルス(FIV))、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、FVの活性型或いはその誘導体、若しくはそれらの機能性断片をコードする核酸配列を有するウイルスベクターを投与する方法が提供される。本発明の前記方法に有用なアデノウイルスベクターは好ましくは、アデノウイルスベクターDNAの少なくとも重要な部分を含む。本明細書に記載されたように、そのようなアデノウイルスベクターの投与に続くFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドの発現は、止血を調節するように働く。
【0061】
組換えアデノウイルスベクターは、様々な遺伝子治療適用に対して広い有用性が見いだされていた。そのような適用に対するそれらの有用性の大部分は、様々な器官構成において達成されるin vivo遺伝子伝達の高い効率のおかげである。
【0062】
アデノウイルス粒子は、十分な遺伝子送達に対する媒体として利用される。そのようなウイルス粒子(ビリオン)は、そのような適用に対して多数の望ましい特徴を有しており、これには二本鎖DNA無エンベロープウイルスであることに関連した構造的特徴、及びヒト呼吸システム及び胃腸管に対するトロピズム(指向性)などの生物学的特徴を含む。さらにアデノウイルスは、受容体−仲介性エンドサイトーシスによってin vivo及びin vitroで広範囲の細胞タイプに感染すると知られている。アデノウイルスの全体の安全性を証明するために、アデノウイルスの感染は中程度インフルエンザ様症状を有するヒトにおいて最小限の病状を導いた。
【0063】
それらの大きなサイズ(36キロベース以内)のおかげで、アデノウイルスゲノムは、複製に本質的なアデノウイルス遺伝子及び非本質的領域の除去後の外来DNAの挿入に適応することができ、そのためアデノウイルスゲノムは、遺伝子療法媒体として使用するのに非常に適している。そのような置換は、前記ウイルスベクターへ複製機能及び感染力に関する障害を与える。注目すべきは、アデノウイルスは遺伝子治療及び異種性遺伝子の発現に対するベクターとして使用されていたことである。
【0064】
遺伝子治療に利用されたアデノウイルスベクターの使用のより詳細な議論に対しては、Berkner,1988,Biotechniques 6:616−629及びTrapnell,1993,Advanced Drug Delivery Reviews 12:185−199を参照のこと。
【0065】
例えば、望ましい遺伝子の複数コピーを提供でき、それ故にその遺伝子の大量な産物を提供できるベクターを導入するのは望ましい。改善アデノウイルスベクター及びこれらのベクターを産生する方法は、たくさんの参考文献、特許文献及び特許出願に詳細に記載されており:Mitani and Kubo(2002,Curr gene ther.2(2):135−44);Olmsted−Davis et al.(2002,Hum Gene ther.13(11):1337−47);Reynolds et al.(2001,Nat Biotechnol.19(9):838−42);米国特許番号第5,998,205号(ここにおいて複数DNAコピーを有する腫瘍特異性複製ベクターが提供されている);第6,228,646号(ここにおいてヘルパーを含まない全く欠損したアデノウイルスベクターが記載されている);第6,093,699号(ここにおいて遺伝子治療用のベクター及び方法が提供されている);第6,100,242号(ここにおいて導入遺伝子−挿入複製欠損アデノウイルスベクターは末梢血管疾患及び心疾患のin vivo遺伝子治療において効果的に使用された);及び国際特許出願第WO94/17810号及び第WO94/23744号を含む。
【0066】
いくつかの適用に対して、発現コンストラクトはさらに特定の細胞或いは組織タイプにおける発現を駆動するように働く調節エレメントを有する。そのような調節エレメントは、本分野の当業者には既知であり、Sambrook et al.(1989)及びAusubel et al.(1992)に深く議論されている。本発明の発現コンストラクトにおける組織特異性調節エレメントの組み込みは、FVの活性型或いはその誘導体、若しくはそれらの機能的断片の発現に対する少なくとも部分的な組織トロピズム(指向性)を提供する。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下でFVの活性型或いはその誘導体をコードする核酸配列を有するE1欠損型5アデノウイルスベクターは、本発明の前記方法において利用される。
【0067】
アデノウイルスベクターを産生するための例示的な方法
組換え遺伝子発現に対するアデノウイルスベクターは、ヒト胚性腎臓細胞株293(Graham et al.,1977,J.Gen.Virol.36:59−72)において産生された。この細胞株は、アデノウイルス5ゲノムの左端を有しE1タンパク質を発現するため、アデノウイルス2(Ad2)及びE1機能が欠損したアデノウイルス5変異体の増殖に対して許容である。293細胞の細胞性ゲノムへ連結されたE1遺伝子は、これらの遺伝子が欠損したものからウイルスベクターを増幅する発現システムとしてこれらの細胞の使用を促進するレベルで発現されている。293細胞は、ヘルパー非依存性クローニング及びアデノウイルスベクターの発現のためのE1変異体の単離及び増殖に対して広範囲に使用されていた。従って、293細胞株のような発現システムは、トランスに本質的なウイルス機能を提供し、それにより外因性核酸配列がE1遺伝子に置換されたウイルスベクターの増殖を可能にする。Young et.al.(The Adenoviruses,Ginsberg,ed.,Plenum Press,New York and London(1984),pp.125−172)を参照のこと。
【0068】
アデノウイルスベクターの増殖に非常に適した他の発現システムは、本分野の当業者には既知であり(例えばHeLa細胞)、他の所で概説されている。
【0069】
さらに、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードした核酸送達媒体を有する個人の細胞を提供する工程、及びFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドが発現される条件下で前記細胞が増殖することを可能にする工程を有する止血を調節する方法が本発明に含まれる。
【0070】
前述の議論から、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチド、若しくは同じものをコードした核酸は、異常血液凝固に関連した疾患の治療に使用される。
【0071】
C.薬学的組成物
本発明の発現ベクターは、対象へ送達され、生物学的活性タンパク質(例えばFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチド、若しくはそれらの機能的断片或いは誘導体)の産生を可能にする薬学的組成物へ取り込まれる。本発明の特定の実施形態において、レシピエントが治療上有効な量のFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドを産生することを可能にするのに十分な遺伝的物質を有する薬学的組成物は、前記対象における止血へ影響を及ぼすことができる。或いは、上で議論されたように、有効な量の変異第V因子ポリペプチドは、必要とする患者へ直接注射される。前記組成物は、単独で、若しくは、これに限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖及び水を含むあらゆる無菌生体適合性薬学的担体において投与される安定化化合物などの少なくとも1つの他の薬剤との組み合わせで投与される。前記組成物は、患者へ単独で、若しくは止血に影響を及ぼす他の薬剤との組み合わせで投与される。
【0072】
好ましい実施形態において、前記薬学的組成物はさらに薬学的に許容可能な賦形剤も含む。そのような賦形剤は、前記組成物を投与された個人へ有害な免疫反応を誘導せず、過度な毒性なしで投与されるあらゆる薬学的因子を含む。薬学的に許容可能な賦形剤は、これに限定されるものではないが、水、生理食塩水、グリセロール、糖及びエタノールなどの液体を含む。例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩及びそれらと同等物などのミネラル酸性塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、及びそれらと同等物などの有機酸の塩類などの薬学的に許容可能な塩類もここに含むことができる。付加的に、湿潤剤或いは乳化剤などの補助的な物質、pH緩衝物質、及びそれらと同等物はそのような媒体に含まれる。薬学的に許容可能な賦形剤の完全な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,18th Edition,Easton,Pa.[1990])で利用可能である。
【0073】
非経口投与に適した薬学的処方は、水性溶液において、好ましくはハンクス液、リンガー液、或いは生理学的緩衝生理食塩水などの生理学的に適合性緩衝液において処方される。水性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、或いはデキストランなどの前記懸濁液の粘性を増加する物質を含む。付加的に、前記活性化合物の懸濁液は、適切な油状注入懸濁液として調合される。適切な親油性溶剤或いは溶媒は、ゴマ油などの油脂、若しくはエチルオレイン酸或いはトリグリセリドなどの合成油脂エステル、若しくはリポソームを含む。任意に、前記懸濁液はさらに、高度濃縮溶液の調合を可能にする適切な安定剤或いは前記化合物の溶解度を増加する薬剤も含む。
【0074】
局所的或いは経鼻投与に対して、特定の担体が浸透するのに適切な浸透剤は前記処方において使用される。そのような浸透剤は一般的に本分野で既知である。本発明の前記薬学的組成物は、本分野のあらゆるやり方(例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉末化、乳化、被包、封入或いは凍結乾燥工程の手段によって)で製造される。
【0075】
前記薬学的組成物は、塩類として提供され、これに限定されるものではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸と処方され得る。塩類は、対応する無塩基形態と比べて、水性或いは他のプロトン酸溶剤により可溶性である。他の場合において、前記好ましい調合は、以下のいずれか或いは全てを含む凍結乾燥粉末である:1〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%ショ糖、及び2〜7%マンニトールであり、pHは4.5〜5.5の範囲であり、使用前にバッファーと組み合わされるものである。
【0076】
薬学的組成物が調合された後、それらは適切な容器へ置かれ、治療用に標識される。FVの活性型或いはその誘導体−含有ベクターの投与に対して、そのような標識には量、頻度及び投与方法が含まれている。
【0077】
本発明での使用に適した薬学的組成物は、前記活性成分が意図した治療目的を達成するのに有効な量を含む組成物を含む。治療上有効な用量を決定することは、本発明で提供された技術を用いて熟練医師の能力範囲内で可能である。治療上用量は、他の因子、対象の年齢及び病状、異常血液凝固表現型の重篤度、及びFVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドの発現レベルを調節するコントロール配列の強度に依存するであろう。従って、ヒトにおける治療上有効な量は、FVのベクターベース活性型或いはその誘導体治療に対する個々の患者の反応に基づいて医師によって決定される比較的広範囲に入る。
【0078】
D.投与
単独或いは他の薬剤との組み合わせにおけるFVポリペプチドの変異活性型は、上述したような適切な生物学的担体において患者へ直接注射される。FVの活性型或いはその誘導体、若しくはそれらの機能的断片をコードする核酸配列を有する本発明の発現ベクターは、様々な手段によって患者へ投与され、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドの予防的に及び/若しくは治療上有効なレベルを達成し維持する。本分野の当業者は、特定の患者の治療に対して、FVの活性型或いはその誘導体をコードした本発明の発現ベクターを用いた特異的なプロトコールを容易に決定できる。アデノウイルスベクターの製造及び患者への投与に対するプロトコールは、米国特許第5,998,205号;第6,228,646号;6,093,699号;第6,100,242号、及び国際特許出願第WO94/17810号及び第WO94/23744号に記載されており、これらはこの参照によってその全体が組み込まれるものである。
【0079】
FVの活性型或いはその誘導体をコードした本発明のアデノウイルスベクターは、あらゆる既知の手段によって患者へ投与される。対流−増強送達などの他の送達方法が述べられていた(例えば米国特許第5,720,720号を参照のこと)が、in vivoでの前記薬学的組成物の直接送達は一般的に、従来のシリンジを用いた注射を介して達成される。これに関して、前記組成物は皮下、表皮、皮内、くも膜下腔内、眼窩内、粘膜内、腹腔内、静脈内、動脈内、経口的、肝内、或いは筋肉内に送達される。投与の他の様式は、経口或いは肺性投与、坐薬、及び経皮適用を含む。血液凝固疾患を患った患者の治療を専門に扱う臨床医は、これに限定されるものではないが、患者の状態及び治療の目的(例えば血液凝固を増強或いは減少するなど)多くの基準に基づいて、FVの活性型或いはその誘導体核酸配列を有する前記アデノウイルスベクターの投与に最適な経路を決定する。
【0080】
本発明はさらに、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードした核酸配列を有するAAVベクターも含む。
【0081】
さらに、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードした核酸配列を有するレンチウイルス或いは偽型レンチウイルスベクターも提供する。
【0082】
さらには、FVの活性型或いはその誘導体ポリペプチドをコードした核酸配列を有する裸プラスミド或いは発現ベクターも含む。
【0083】
以下に説明された実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されるものである。これは本発明をあらゆる方向でも制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0084】
以下の物質及び方法は、本発明の実施を容易にするために提供されるものである。
【0085】
動物
地域実験動物委員会は全ての手順を許可している。重篤なFVIII[20]或いはFIX欠損[21]のマウスモデルは、以前に記載された[22、23]ノック−イン技術によって産生されたFVL(C57B16バックグラウンド)を有するマウスと交雑させた。血友病Bモデルは、C57Bl/6−129混合バックグラウンドで作成し[21、14]、さらに付加的に5世代、C57Bl/6へ交雑させた。血友病Aマウスは、C57Bl/6−129混合バックグラウンドで作成した。一連の繁殖を通じて、本発明者らは全ての3種類の期待FVL遺伝子型の血友病A或いはBマウスを得、これにより同腹仔のうち一匹のマウスでの比較が可能となった。
【0086】
凝固アッセイ
尾部クリップによって得られた血液サンプルは、3.8%クエン酸ナトリウムへ回収した(9割の血液:1割の抗凝固剤)。凝固因子活性は、50μlの活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試薬(Organon Teknika,Durham,ノースカロライナ州)を有する50μlのヒトFIX−或いはFVIII−欠損血漿、及びトータル50μlの無希釈テストサンプルをインキュベーションする修飾ワンステージアッセイによって決定した。50μlの25mM CaClを添加し、凝固形成までの時間をStat4 Coagulation Instrument(Diagnostic Stago,Parsipanny,ニュージャージー州)を用いて測定した。トロンビン−アンチトロンビン(TAT)複合体は、以前記載されたように、Dade Behring(Marburg,ドイツ)から購入したEnzygnost TAT酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(これはマウスTATに高度交差反応性を示す[25、26])によって測定した。
【0087】
尾部クリップアッセイ
マウスに麻酔をし、尾部の遠位部(2.5〜3mm直径)を切り、37℃生理食塩水に浸した。10分を超える出血時間測定は、尾部を縫合することによって止めた。血液損失は、報告されたように[26]尾部が置かれた前記生理食塩水におけるヘモグロビンの吸光度(A575nm)を測定することによって決定した。
【0088】
塩化鉄(FeCl)頸動脈モデル
成体マウスの頸動脈を露出し、Doppler flowプローブ(Model 0.5VB;Transonic Machinery Systems,Ithaca,ニューヨーク州)を露出動脈の表面へ置き、基準血流測定を記録した。次に、塩化鉄(15%溶液)に浸した2mm切片のWhatman#1紙を前記露出動脈の外膜表面へ2分間適用し、除去後頸動脈血流を記録した。頸動脈閉塞の時間は、動脈障害の開始後時間及び安定閉塞の開始時間として定義した[27]。
【0089】
リアルタイム広視野生体内顕微鏡
成体マウスの精巣挙筋を露出し、生体内顕微鏡トレイへ固定した。ラット抗−CD41(マウス血小板糖タンパク質複合体IIb/IIIa)Alexa−555標識化抗体(Molecular Probes,Eugene,オレゴン州)をマウス当たり10μgの用量で注射した。前記抗体の注射後すぐに、精巣挙筋の血管壁へレーザー誘導性障害を実行した[28]。前記障害は、マイクロポイントレーザーシステム(Phototonic Instruments,St.Charles,イリノイ州)を介して適用されたパルス−窒素色素レーザーを用いて行なった。本発明者らは、長距離コンデンサー及び40X浸水対物レンズを備えたオリンパスBX6IWI固定ステージ電動直立蛍光顕微鏡を用いた。データ解析は、Slidebook4.0ソフトウェア(Intelligent Imaging Innovations,Denver,コロラド州)を用いて実行した。蛍光データは、300フレーム、10ミリ秒/イベントまでデジタル処理で保存した。発展血栓における血小板蓄積の量は、前記血小板特異的シグナルの全ピクセル値の合計によって決定し、集積血小板蛍光強度を決定する任意の単位である相対蛍光単位(RFU)として表した。
【0090】
血友病マウスの止血におけるFV或いはFVaタンパク質効果の評価
ヒトFVを血漿から単離し、組換えFVaを以前に記載された[29]ように調合した。両タンパク質の精製は、抗−ヒトFV抗体を含む免疫親和性カラムを用いて実行した[29]。FVのin vitro活性化に対して、20nM FVは0.25nMの濃度のマウス或いはヒトトロンビン(Haematological Technologies,Inc.,Essex−Junction,バーモント州)と共に37℃でインキュベーションした。サンプルは複数時点で反応混合液から採取し、特定補助因子活性はFV−欠損血漿を用いてPT−ベースアッセイによって決定した。マウス或いはヒトトロンビンによるFVの切断を決定するために、300nMの一本鎖FVは、複数時間インターバルの間トロンビン(1nM)とインキュベーションした。サンプルを除去し、SDS−PAGEによって解析した。次に、FVaを血友病Bマウスへ尾部静脈を介して注射し、FVaレベル、aPTT及びTATレベルを決定するために、血液サンプルをタンパク質注射の前、及び15分及び120分後に尾部クリップによって回収した。次に本発明者らは、ヒトFVa(30〜60μg/マウス)或いはFV(60〜120μg/マウス)を血友病A或いはBマウスの経静脈を通じて注射し、2時間周期で生体内顕微鏡における血栓形成をモニタリングした。
【0091】
統計解析
異なる実験群から得られたデータの比較は、JMPバージョン4.0.2(SAS Institute Inc.Cary,ニューヨーク州)を用いて解析した。
【0092】
結果
FVLを有する血友病A及びBマウスは、改善された凝固時間を示した
FVL変異に対する血友病Aマウスホモ接合体或いはヘテロ接合体の凝固活性の決定より、FVLを有さない血友病Aマウスと比較した場合、aPTT値の短縮が見られた(図1A)。aPTT値における同様の改善も、FVLを有する血友病Bマウスに対しても見いだされた(図1B)。本発明者らは次に、前記aPTT値の改善がトロンビン産生増加に関連するかどうかを評価するためにTATレベルを決定した。この免疫アッセイは、ヒトTATを検出するために開発されただけでなく、マウスTATに対して高度な交差反応性を示すものである[25、26]。aPTTの短縮とTATレベルの増加の間には良い相関関係が見られた(図1、パネルC及びD)。しかしながら、FVLを有する血友病マウスのTATレベルは血友病でないFVLのTATレベルには届かなかった(図1、パネルF)。
【0093】
尾部クリッピング後の血液損失はFVLを有する血友病Bマウスにおいて減少する
本発明者らは次に、in vitroでの凝固時間の軽度改善はin vivo止血能力と関連するかどうかをテストした。血液損失は、尾部の遠位部を切開した後10分間測定した。FVLを有する血友病AマウスとFVLを有さないマウスとの間に違いは見られなかったが、変異がないマウスと比較した場合、FVLに対する血友病Bマウスホモ接合体の間では血液損出が減少した(図2B)。
【0094】
FVLを有する血友病マウスにおける頸動脈障害後の血栓形成は持続しない
全ての正常マウス(n=5)或いは血友病を患っていないFVLホモ接合体マウス(n=5)は、完全な血管閉塞を示し(表1)、この血管閉塞は血管障害後6〜8分以内の血流の中断によって特徴付けた。FVLを有する10匹の血友病Aマウスの内2匹において、血流の一過性減少が検出されたが、完全な管腔閉塞を示唆するレベルではなかった(表1)。同様な知見はFVLに対する血友病Bホモ接合体においても決定され、8匹のマウスの内1匹のみが完全な血管閉塞を起こし、1匹が一過性血管閉塞を生じた。
【0095】
【表1】

【0096】
FVLは微小循環レベルで血友病マウスにおける血栓を形成する能力を回復する
本発明者らは、微小循環におけるレーザー誘導性内皮損傷のリアルタイム画像化の間の血小板蓄積をモニタリングした。合成画像は、血栓の明視野画像及び血小板の蛍光画像から構成された(図3)。正常マウス(n=3)において、本発明者らは全ての障害細動脈部位(n=30)において血栓形成を生じたことを決定した。加えて、本発明者らは、FVLホモ接合体マウス(n=4)の血栓形成、及び予想されたように全ての(n=40)障害部位における血栓形成を特徴付けした(表2)。
【0097】
【表2】

【0098】
対照的に、血友病A(n=8)或いはB(n=4)を患ったマウスにおいて、トータル68傷害部位に対して成功した血管傷害(1マウス当たり平均3〜10部位)に続く血栓形成は検出されなかった(図3、パネルA;表2)。しかしながら、これらの動物が、正常レベルの100%以下を達成する用量に濃縮されたヒト精製FVIIIFIX静脈内注射を受けた場合、血栓は全ての部位に形成された(図3、パネルB)。
【0099】
本発明者らは次に、FVLに対する血友病A(n=5)或いはBマウス(n=4)ホモ接合体をテストした。血栓形成は、全85傷害部位に観察され(5〜10部位/マウスの範囲)、この実験期間安定であった(図3パネルE及びF)。興味深いことに、同様の結果はFVLに対する血友病A(n=6)或いは血友病B(n=3)マウスヘテロ接合体において観察された。この群において、トータル61傷害部位を解析し、血栓形成は一貫して検出された(図3、パネルD)。血友病マウス群に対する血小板堆積の時間経過は図4に示した。そのデータは、血小板堆積由来のRFUの中央値によって示し、これはテストした異なる群の間の相対比較を示すものである。変異のない血友病マウスと比較して、FVLを有する両血友病モデルにおいて長期間の血小板堆積が増加した(図4、パネルB)。
【0100】
精製FVaの注射は血友病A或いはBのマウスモデルにおける血栓形成を誘導する
はじめに、本発明者らは、マウストロンビンがヒトトロンビンと同様の傾向でヒトFVを活性化することを決定した。FV或いはFVaにおける一過性増加がFVLのin vivo効果を模倣出来るかどうかテストするために、本発明者らは、精製ヒトFV或いはFVaをマウスに注射した。FVaは活性型で分泌されるので、前記精製タンパク質のトロンビン活性化は必要ではなかった[29]。従って、これらデータの直接的な解釈は、注射された前記タンパク質溶液におけるトロンビンの追跡に振り回されない。血友病Bマウスへの30μgのFVa/マウスの注射は、注射後の両時点(15或いは120分)で、基準での77±3秒から72±4秒にaPTTの個別短縮をもたらした。これらのデータは、15±5ng/ml(基準)から69±10及び67±22ng/ml(それぞれ15及び120分での)へのTATレベルの増加に十分一致していた。本発明者らは次に、インターバル顕微鏡における血栓形成をモニタリングした。タンパク質注射の前に、予想されたように血友病A及びBマウスの両方において血栓形成は観察されなかった。30μg或いは100μgのFVaの注射に続いて、全傷害部位において血小板堆積が直ちに観察された(図4、パネルC及びD)。対照的に、マウスに同様の血漿濃度(0.180或いは0.360pモル)を達成するのに匹敵する用量でプロ補助因子FVを注射した場合、血栓形成は検出されなかった。まとめると、これらの結果は両血友病モデルと類似であった(表2及び図4、パネルC−D)。
【0101】
ディスカッション
血友病表現型に対するFVLの臨床影響の評価は、議論の余地があり、他の後天性及び遺伝的修飾因子の複合体相互作用によって阻害された。従って、マウスモデルの使用はいくつかの後天性因子の影響を最小限にするものである。重篤な血友病A或いはBに対するマウスモデルにおける自発性出血発症の発生は稀である。従って、重篤な血友病表現型に対するFVLの効果を適当に扱うために、一連のin vivo止血テストをこれら動物モデルに行った
FVL変異を有する血友病マウスは、トロンビン産生の増強を反映した、aPTT−ベースアッセイの短縮及びTATレベルの増加によって決定されたように、止血において改善を示した。止血のin vitroパラメータに対する改善がin vivoで血友病表現型に対して関連影響を与えるかを検討するために、マウスを一連の止血実験に供した。
【0102】
第1モデルにおいて機械的傷害を尾部血管の切開によって誘導し、第二モデルにおいて、前記傷害を塩化鉄化学によって頸動脈へ誘導した。後者のモデルは、内皮を破壊する酸化傷害によって特徴付けされ、内皮下層を曝すものである[30]。FVLに対する血友病Bマウスホモ接合体は、FVLを有さない同腹仔のうち一匹と比較した場合、両方法における止血の中程度改善を示したが、血友病Aモデルにおいては改善が見られなかった。FVLで既に示されたように、マウス種の違いは止血パラメータのいくつかに影響を及ぼす可能性はある[22]。これらのデータによって、大血管の傷害において、FVLは主な有利な止血効果を提供しないということが示唆された。
【0103】
レーザー誘導性内皮傷害モデル[31]に関連した、Furie及びその同僚によって開発された[28]血栓形成のリアルタイム画像化は、生動物の微小循環での止血の評価に対して感受性を持つ方法を提供する。この方法の結果は血管管腔の完全な閉塞ではなく;むしろ内皮細胞は内皮下層の少ない露出を伴う破裂の代わりに活性化されるように見られるということが観察された[28、31]。FVL変異を有さない血友病マウスにおいて、レーザー曝露に成功していても血栓は観察されなかった。しかしながら、ヒトFVIII或いはFIX濃縮物の静脈内注射によって欠損凝固因子の置換に続いて、血栓形成は傷害された全ての細動脈部位において観察された。FVL変異に対する血友病A或いはBマウスホモ接合体は、血栓を形成する能力が回復した。興味深いことに、FVLに対する血友病マウスヘテロ接合体において、血栓形成はホモ接合体FVLに匹敵する。血友病及びFVLを有するほとんどのヒトは1つのFVL対立遺伝子のみを有するので、これは特に興味深いものである。
【0104】
ヒトのデータをマウスモデルのデータから推定する場合、FV合成の開始点[32、33]などのヒト及びマウスFVの間の違い、及びマウスFVaを適当に不活性化するヒトaPCの能力としてのAPC経路における違い[34]、及び血漿Cタンパク質阻害剤の欠如[35]を考慮することが重要である。血友病表現型の修飾因子としてAPC経路の役割をよりよく評価するために、トロンボモジュリン或いは内皮Cタンパク質受容体(EPCR)機能[36]などの他の成分を調査する必要がある。トロンボモジュリン及びEPCRの血管分布は、血管サイズの機能とは異なっている。FVLによる止血における改善が血管依存性(すなわち微小VS(対)大循環)であるようなので、マウスモデルの結果は有益である。微小循環におけるトロンボモジュリン濃度は、0.3cm直径以下の血管における濃度より1000倍以上高く、これはトロンビンの結合を容易にし、結果的に凝固活性が抑制されるものである。本発明者らは、FVL存在下、微小循環での連続的トロンビン産生は高度な遊離トロンビンを導き、従って凝固は局所的に増強されると推測した。マウス頸動脈(0.55mm以下の直径)などの大血管において、トロンボモジュリンレベルが相対的に低いので、トロンビンは遊離しているようである[37、38]。従って、FVLの影響は微小循環レベルでの止血を有意に変換するのには十分ではない。
【0105】
ヒト血友病A血漿を用いて、Mann及びその同僚らによって、FVaの緩徐形成は障害されたトロンビン産生に影響を与える付加的因子であることが示された。遊離FXaは容易に不活性化されるので、プロトロンビナーゼ複合体においてFXaと複合体を形成した完全な活性FVaの存在は、アンチトロンビン及び組織因子経路阻害剤によるFXa不活性化を阻害するのに重大な意味を持つ[39]。更なる実験によって、血友病A血漿における150%までのFVレベルの増加はトロンビンの有意な増強をもたらさなかったが、100%或いは150%のレベルまでFVを添加すると、トロンビン産生がそれぞれ3及び5倍増強されたことが示された[15]。最近、同様な効果が血友病B血漿において決定された[16]。従って、本発明者らは、FVaレベルにおける増加は血友病マウスにおけるFVLの効果を模倣できると仮定した。その結果、FVではなくFVaはFV投与で示唆された発見と同じように、微小循環での血友病表現型を回復する能力を有していることが示された。
【0106】
FVLではなくヒトFVにおいて、FVIIIaのAPC−仲介性不活性化における補助因子活性を示す証拠が存在する。最近Simioniらによって、FVL変異(野生型FV活性は保存されている)に対するヘテロ接合体として遺伝子型を同定された対象と比較した場合、ホモ接合体FVL及び部分的FV欠損(偽ホモ接合体APC耐性)を有するFVLに対するヘテロ接合体におけるトロンビン産生及び静脈血栓症に対するリスクの増加が示された。ここでは本発明者らは、同腹仔のうち一匹のFVLに対する血友病マウスヘテロ接合体及びホモ接合体は、in vitro及びin vivo止血パラメータ両方の改善を同じ傾向で示したことを見いだした。これらのデータによって、これは血友病におけるFVLの潜在的利点の元となるプロ血液凝固活性でのFVaの緩徐不活性化であることが示唆された。従って、マウスFVは、APCによるFVIIIa不活性化に対する補助因子活性を示さない可能性がある。これらの実験条件は異なる基礎メカニズムを示すにも関わらず、遺伝的モデル及びタンパク質注射で得られたデータは、最終結果としてトロンビンレベルにおける増強の有利な効果を示し、血友病に対する他の代替治療アプローチが研究され得ることを示唆するものであった。
【0107】
まとめると、この研究によって、FVL変異は、凝固時間の改善によって及び血栓を形成するin vivo能力によって判断されたように血友病A或いはBマウスにおける止血を増強することが示された。FVLは主に内皮下層を曝さなかった傷害において微小循環レベルで著しく有利な効果を有するので、前記出血性実験に対する保護は少量の出血に影響を及ぼすようであるが、外傷誘導性出血に対しては影響を及ぼさなかった。これらのデータは、FVLを有する重篤な血友病表現型、特に成人において観察された臨床多様性の不均一性の一部を説明するものである。
【0108】
参考文献
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40. Simioni P,Castoldi E,Lunghi B,Tormene D,Rosing J,Bernardi F.An underestimated combination of opposites resulting in enhanced thrombotic tendency.Blood 2005.
【0109】
本発明の特定の好ましい実施形態を上に記載し特に例示したが、これは本発明がそのような実施形態に制限されることを意図するものではない。様々な修飾は、本発明の観点及び範囲から逸脱することなく、添付の請求項に説明されたように、それになされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、血友病或いは第V Leiden因子(FVL)のマウスモデルにおける、及び正常コントロールにおける凝固アッセイを示したものである。パネルA、C及びE:マウス血漿における修飾ワンステージ活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)。パネルB、D及びF:マウス血漿におけるトロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)レベル。1群当たりの動物数を示した。FVLを有する成人血友病A(HA)或いは血友病B(HB)マウスはFVLに対して動物へテロ接合体(+/−)或いはホモ接合体(+/+)で比較した。
【図2】図2は、第V Leiden因子(FVL)で交雑された血友病マウスにおけるテールクリップアッセイ後の止血評価を示したものである。血液損失量は、血友病マウスのテールクリッピング後のA575の吸光度によって生理食塩水のヘモグロビン含有量で測定した。パネルA:血友病A(HA)マウス、HAヘテロ接合体(+/−)及びFVLに対するホモ接合体(+/+)を比較した。パネルB:同腹仔のうち一匹血友病B(HB)、HBへテロ接合体(+/−)及びFVLに対するホモ接合体(+/+)を比較した。1群当たりの動物数を示した。P値はt−テストによって計算した。
【図3】図3は、蛍光シグナルを用いたレーザー誘導性血管内皮損傷におけるマウスの動脈血栓における血小板堆積を示したものである。上部パネルは、血友病A(HA)マウスからのデータを示し、下部パネルは血友病B(HB)マウスからのデータである。血小板堆積は、抗−CD41Alexa−555標識化抗体を用いてモニタリングし、レーザー障害後120秒以内の複合性画像を示した。血栓形成は、ベースライン(パネルA)及びタンパク質置換後(パネルB)にて評価した。FVLに対する血友病マウスホモ接合体或いはヘテロ接合体は、パネルD〜Fに示した。血友病マウスには30μgのFVaを注射した(パネルC)。
【図4】図4は、動脈血栓における血小板蓄積の時間経過を示したものである。長期間に亘る血栓発生における血小板堆積は、抗−CD41Alexa−55標識化抗体を用いてモニタリングした。任意の相対蛍光単位(RFU)は、いくつかの血栓に対して中位血小板由来蛍光を示した。パネルAは、血友病Bマウス(HB)を示し、HBマウスには濃縮ヒトF.IXを注射し、止血的に正常なC57B1/6マウスをコントロール(CT)として使用した。パネルBは、第V Leiden因子(FVL)に対する血友病A(HA)或いはHBマウスホモ接合体、及び野生型血友病マウスを示した。パネルC及びDは、血友病A(HA)或いは(HB)、若しくは精製FV或いはFVaタンパク質を注射された野生型マウスを示した。これらの実験は、表2に示したように、1群当たり2〜4マウスにおける複数血栓(5血栓/マウス以上)を代表的に示してある。
【図5】図5は、FV、FV−810及びFVaの略図を示したものである。FV−810上の配列は、B−ドメインエレメントが欠損していることを示している。IIa切断部位は、様々な断片の分子量と同様に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における血友病を治療する方法であって、
FV変異体の活性型或いはその誘導体の有効量を投与する工程を有し、それによって前記患者における血栓形成を増強し、先天性及び遺伝性出血疾患の症状を軽減するものである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記誘導体は、FV−810;アミノ酸811−1491を欠損した第V因子、FV−859;アミノ酸860−1491を欠損した第V因子、FV−866;アミノ酸867−1491を欠損した第V因子、FV−902;アミノ酸903−1491を欠損した第V因子、FV−924;アミノ酸923−1491を欠損した第V因子、FV−937;アミノ酸938−1491を欠損した第V因子、FV−956;アミノ酸957−1491を欠損した第V因子、FV−1033−B58−s131;第VIII因子のアミノ酸907−1037と変換されたアミノ酸900−1030を有するアミノ酸1034−1491を欠損した第V因子、FV−1033−B58−s104;第VIII因子のアミノ酸972−1075と変換されたアミノ酸904−1007を有するアミノ酸1034−1491を欠損した第V因子、及びFV−1033−B58−s46;第VIII因子のアミノ酸1032−1077と変換されたアミノ酸963−1008を有するアミノ酸1034−1491を欠損した第V因子から成る群から選択されるものである。
【請求項3】
血友病Aを治療するための、請求項1記載の方法。
【請求項4】
血友病Bを治療するための、請求項1記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記FVの活性型或いはその誘導体は静脈内に送達されるものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記FVの活性型或いはその誘導体をコードするベクターは前記患者へ投与されるものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記変異体はプロ凝固因子であり、前記疾患は、血友病A及びB、阻害抗体に関連した血友病A及びB、凝固因子欠損、ビタミンKエポキシド還元酵素C1欠損、ガンマ−カルボキシラーゼ欠損、外傷、傷害、血栓、血小板減少症、脳卒中、凝固障害、播種性血管内凝固(DIC)に関連した出血、過剰抗凝固治療疾患、ベルナールスーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、及び貯蔵プール欠乏症から成る群から選択されるものである。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記過剰抗凝固治療疾患は、ヘパリン、低分子量ヘパリン、五糖類、ワルファリン、小分子抗血栓性、及びFXa阻害剤の投与に起因するものである。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記変異体は、約10〜500μg/kgの間の用量で少なくとも1日1回静脈内に投与されるものである。
【請求項10】
FVの活性型をコードする単離核酸分子であって、前記FVの活性型はFV−859、FV−866、FV−924及びFV−937から成る群から選択されるものである、単離核酸分子。
【請求項11】
FVの単離活性型であって、前記FVの活性型は、請求項1記載の核酸分子によってコードされているものである、FVの単離活性型。
【請求項12】
FVの活性型をコードする単離核酸分子であって、前記FVの活性型の506、306及び679位で少なくとも1つのアルギニン残基は、アルギニン以外のアミノ酸で置換されているものである、単離核酸分子。
【請求項13】
請求項12記載の単離核酸分子において、前記アルギニン残基はグルタミンで置換されているものである。
【請求項14】
請求項12記載の核酸分子において、前記FVの活性型は、FV−810;FV−859;FV−866;FV−902;FV−924;FV−937;FV−1033−B58−s131;FV−1033−B58−s104及びFV−1033−B58−s46から成る群から選択されるものである。
【請求項15】
FVの単離活性型であって、前記FVの活性型は、請求項12記載の核酸分子によってコードされているものである、FVの単離活性型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−528293(P2009−528293A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556560(P2008−556560)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/062720
【国際公開番号】WO2007/101106
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(306011126)
【Fターム(参考)】