説明

標的装置

【課題】実弾の射撃訓練に及びレーザ光を用いた射撃訓練に対応でき、遠方からでも、また角度をもって射撃を行っても着弾を判定でき、かつ連続射撃に対しても着弾判定が可能な標的装置を提供する。
【解決手段】標的装置31は、標的43、この標的43を隠顕駆動する直動駆動機構44、前記標的43への着弾を検知する着弾センサ及び前記標的43に可視光を照射する照射装置46を備える。照射装置46は、標的43とは別体に構成され、着弾センサによって着弾が検知されたとき標的43を可視光で照射し、標的43に着弾したことを射撃訓練者34に知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発射装置から発射されるレーザ光または実弾が着弾する標的部を備えた標的装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光や実弾を用いた射撃訓練装置においては、発射装置から発射されたレーザ光または実弾が標的装置の標的部に命中すると、LED(発光ダイオード)を発光させたり、標的部を起立状態から転倒状態にするなどして訓練者に知らせるようにしている(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
図5は、実弾により射撃訓練を行う射撃訓練装置に用いられる従来の標的装置10の構成例を示している。
標的装置10は、基台11上に標的支持部材12a、12bにより例えば板状に形成された標的13を支持している。上記標的支持部材12a、12bは、下端部が基台11の両側に回動可能に装着され、上部側において標的13を支持する。この標的13には、前面側に標的マーク14が示されていると共に、実弾の着弾を検知する衝撃センサ15が設けられている。衝撃センサ15は、着弾の虞がなく、かつ、標的13への着弾を検出できる場所に設けられる。
【0004】
上記衝撃センサ15により検知された信号は、基台11の内部に設けられる標的制御部(図示せず)へ送られる。標的制御部は、標的13を起立状態(現出状態)及び転倒状態(隠蔽状態)に制御する隠顕制御機能を備え、訓練開始時には標的13を起立状態に保持している。
【0005】
上記標的装置10は、訓練者17の位置から所定距離離れた位置に設置される。
訓練者17は、射撃訓練を行う際、現出状態にある標的13の標的マーク14に銃18の照準を合わせて実弾を発射する。衝撃センサ15は、標的13に着弾したことを検知すると、その検知信号を標的制御部へ出力する。標的制御部は、衝撃センサ15の検知信号から着弾の有無を判定し、着弾したと判定した場合に標的13を倒して訓練者17から隠蔽された状態とする。
【0006】
上記のように銃18から発射した実弾が標的13に命中した際に標的13を横に倒して隠蔽し、銃弾が標的13に命中したことを訓練者17に知らせる。
図6は、レーザ銃を使用して射撃訓練する場合の標的装置20の構成例を示している。この標的装置20は、基台21上に標的支持部材22a、22bにより例えば板状に形成された標的23を支持している。この標的23には、前面側に標的マーク24が示され、その中心部にレーザ用受光器25が設けられる。また、標的23には、前面上部にLED等の現示器26が設けられる。
【0007】
上記レーザ用受光器25は、レーザ光を受光すると、その受光信号を基台21の内部に設けられる標的制御部(図示せず)へ出力する。標的制御部は、レーザ用受光器25から受光信号が送られてくると、上記現示器26を点灯または点滅させてレーザ銃から発射されたレーザ光が標的23に命中したことを訓練者に知らせる。
【0008】
また、上記レーザ銃用の標的装置20において、実弾訓練用の標的装置10と同様に、標的23を起立状態及び転倒状態に駆動制御できるように構成し、レーザ用受光器25の受光信号によって標的23を隠顕制御することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−130595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記図5に示したように着弾の有無によって標的13を隠顕制御するようにした標的装置10においては、実弾が標的13に1発着弾する毎に隠顕動作するため、連続して発射された場合、最初の1発目しか着弾を判定できず、このため連続して射撃する訓練には使用できないという問題がある。
【0011】
また、図6に示したようにレーザ光をレーザ用受光器25により受光した際に現示器26を点灯または点滅して表示するようにした標的装置20においては、現示器26としてLEDを使用しており、遠くからでも目視できるように指向性を持たせているが、訓練者と標的23との角度を持たせると、訓練者から発光が見えないため標的23に命中したかどうかを判別することができない。また、上記レーザ銃用の標的装置20において、レーザ光の命中の有無によって標的23を隠顕制御するようにした場合は、上記実弾用の標的装置10と同様に最初の1発目しかレーザ光による着弾を判定することができない。
【0012】
また、実弾を使用する標的装置10においては、現示器26は実弾によって損傷するため取り付けることができない。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、実弾の射撃訓練にもレーザ光を用いた射撃訓練にも対応でき、遠方からでも又標的から角度をもって射撃を行っても着弾を判定でき、かつ連続射撃に対しても着弾判定が可能な標的装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、発射装置から発射されるレーザ光または実弾が着弾する標的部を備えた標的装置において、前記標的部に前記レーザ光または実弾が着弾したことを検知する着弾センサと、前記着弾センサによって着弾が検知されたとき、前記標的部を可視光で照射する照射装置とを備え、前記照射装置は、前記標的部とは別体に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、標的への着弾が着弾センサにより検知された際、標的とは別体に構成された照射装置から標的に可視光を照射することにより、射撃訓練者は遠方からでも、また標的に対して角度をもって射撃した場合でも、標的への着弾を確実に判定でき、実弾の射撃訓練にもレーザ光を用いた射撃訓練にも対応することができる。また、標的に対して連続射撃を行った場合でも、着弾の都度照射装置を動作させて標的に可視光を照射することで着弾判定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る射撃訓練装置の全体の概略構成図である。
【図2】同実施例1における標的装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例2に係る射撃訓練装置の全体の概略構成図である。
【図4】同実施例1における標的装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の実弾による射撃訓練装置の概略構成例を示す図である。
【図6】従来のレーザ光による射撃訓練装置における標的装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1に係るレーザ光を用いた射撃訓練装置の全体の構成例を示す図、図2は標的装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように射撃訓練装置30は、標的装置31と、この標的装置31を射撃するための発射装置例えばレーザ銃32によって構成される。射撃訓練者34は、上記レーザ銃32を使用して射撃訓練を行う。
【0018】
標的装置31は、基台41上に支柱42が垂直に設けられると共に、この支柱42の前面側に標的43が設けられる。支柱42の前面側には、例えばボールネジ等の直動駆動機構44が設けられ、この直動駆動機構44よって標的43が上下方向に駆動制御される。また、上記標的43の前面中央部には、着弾センサとしてレーザ用受光器45が設けられる。この受光器45は、レーザ銃32から発射されたレーザ光33を受光した際に受光信号を出力する。この受光信号は、図2に示すように基台41の内部に設けられる制御部51へ送られる。
【0019】
また、標的装置31の前面側の下方には、標的43とは別体に構成される照射装置46が設けられる。この照射装置46は、制御部51からの指示に従って動作し、標的43を可視光により一定時間照射する。
上記制御部51は、例えば射撃訓練管理人の遠隔操作によって動作モードが設定され、その動作モードに従って直動駆動機構44を駆動し、図1の矢印aに示すように標的43を上下方向に移動させて隠顕制御を行う。また、制御部51は、レーザ銃32から発射されたレーザ光33が標的43の受光器45に命中した際、照射装置46を駆動して標的43を可視光で照射し、レーザ光33が標的43に命中したことを射撃訓練者34に知らせる。
【0020】
上記のように構成された標的装置31は、射撃訓練に際して図1に示すように射撃訓練者34から所定距離離れた位置に設置される。制御部51は、射撃訓練時に直動駆動機構44を駆動して標的43を所定のタイミングで上下動させ、標的43が最上部に達した際に標的43を予め定めた標的現出時間だけ停止し、標的43を現出状態とする。
【0021】
射撃訓練者34は、上下動している標的43が上方に移動して現出状態となった際に、標的43の受光器45にレーザ銃32の照準を合わせてレーザ光33を発射する。発射されたレーザ光33が標的43の受光器45に命中すると、受光器45から受光信号が出力されて制御部51へ送られる。制御部51は、受光器45から受光信号が送られてくると、照射装置46を駆動して標的43に可視光を一定時間照射する。これにより標的43が明るく照明され、射撃訓練者34はレーザ銃32から発射したレーザ光33が標的43に命中したと判定することができる。
【0022】
上記のようにレーザ銃32から発射したレーザ光33が標的43に命中した際、標的43とは別体に構成されている照射装置46を駆動して可視光を標的43に照射することにより、遠方からでも標的43への着弾を明確に判定することができる。また、標的43に対して角度をもって射撃しても、標的43の全体が照射装置46からの可視光で照射されるので、標的43への着弾を確実に判定することができる。
【0023】
なお、上記実施例1では、標的43を上下方向に移動させて隠顕動作するようにしたが、特に標的43を隠顕動作させなくても、標的43への着弾を射撃訓練者34に示すことができる。従って、例えば標的43を現出状態に固定した状態で連続的に射撃を行い、レーザ光33が標的43に命中する毎に照射装置46から標的43に可視光を照射することにより、標的43への着弾を明確に示すことができる。
【0024】
また、上記実施例1では、標的43にレーザ光33が着弾する毎に照射装置46を動作させるようにしたが、その他、標的43にレーザ光33が複数回例えば3回着弾した場合に照射装置46を動作させる等の重み付けを行って標的43への着弾表示を行うようにしても良い。
【実施例2】
【0025】
次に本発明を実弾による射撃訓練装置に実施した場合について説明する。
図3は本発明の実施例2に係る実弾を用いた射撃訓練装置の構成例を示す図、図4は標的装置の構成例を示すブロック図である。
この実施例2に係る射撃訓練装置30Aは、標的装置31Aと、この標的装置31Aを射撃するための発射装置例えば実弾を用いた銃32Aによって構成される。射撃訓練者34は、上記銃32Aを使用して射撃訓練を行う。
【0026】
標的装置31Aは、実施例1における標的装置31とほぼ同様の構成であるが、標的43にレーザ用受光器45の代わりに実弾の着弾を検出する衝撃センサ61を設けると共に、標的43の前面中央部に標的マーク62を設けている。上記衝撃センサ61は、着弾の虞がなく、かつ、標的43への着弾を検出できる場所、例えば標的43の隅部等に設けられる。衝撃センサ61は、標的43に実弾が着弾したときの衝撃または衝撃波による振動周波数を検出し、その検出信号を基台41の内部に設けられた制御部51へ出力する。また、上記標的43とは別体に照射装置46が設けられる。
【0027】
上記制御部51は、例えば射撃訓練管理人の遠隔操作によって設定される動作モードに従って直動駆動機構44を駆動し、標的43を上下方向に移動させて隠顕制御を行うと共に、銃32Aから発射された実弾が現出状態にある標的43に命中すると、衝撃センサ61の検知信号により照射装置46を駆動して標的43を可視光により一定時間照射し、実弾が標的43に命中したことを射撃訓練者34に知らせる。
【0028】
上記のように構成された実弾射撃訓練用の標的装置31Aは、実施例1と同様に標的43への着弾を検出した際、標的43とは別体に構成した照射装置46から可視光を標的43に照射することにより、遠方からでも、また、標的43に対して角度をもって射撃しても、標的43への着弾を確実に判定することができる。
【0029】
また、標的43を現出状態に固定した状態で連続的に射撃を行い、実弾が標的43に命中する毎に照射装置46から標的43に可視光を照射することにより、標的43への着弾を明確に示すことができる。また、標的43に実弾が複数回着弾した場合に照射装置46を動作させる等の重み付けを行って標的43への着弾表示を行うことも可能である。
【0030】
なお、上記実施例1、2では、標的43を上下方向に移動して隠顕制御する場合について示したが、その他の方向、例えば標的43を回転駆動して隠顕制御する場合、あるいは標的43を起立状態(現出状態)及び転倒状態(隠蔽状態)となるように駆動して隠顕制御する場合においても、標的43への着弾を検知して照射装置46から標的43に可視光を照射することにより、標的43への着弾を確実に判定することができる。
【0031】
また、図2や図4に破線で示すように、照射装置46に駆動機構60を設け、照射装置46の可視光の照射方向が標的43の移動に常に追従するように制御してもよい。
また、上記射撃訓練は、一般的には日中において行われるが、夜間において、標的装置31、31Aにライトを照射することにより、夜間射撃訓練が可能である。この場合、ライトは、標的43の現出に合わせて照射するか、現出し続けている標的43に照射する。
【0032】
また、夜間において、標的装置31、31Aに赤外線を照射することにより、暗視装置による射撃訓練を行うことができる。この場合、赤外線は、標的43の現出に合わせて照射するか、現出し続けている標的43に照射する。
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0033】
30…レーザ光による射撃訓練装置、30A…実弾による射撃訓練装置、31…レーザ光による標的装置、31A…実弾による標的装置、32…レーザ銃、32A…実弾を用いる銃、33…レーザ光、34…射撃訓練者、41…基台、42…支柱、43…標的、44…直動駆動機構、45…レーザ用受光器、46…照射装置、51…制御部、61…衝撃センサ、62…標的マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射装置から発射されるレーザ光または実弾が着弾する標的部を備えた標的装置において、
前記標的部に前記レーザ光または実弾が着弾したことを検知する着弾センサと、
前記着弾センサによって着弾が検知されたとき、前記標的部を可視光で照射する照射装置と、
を備え、前記照射装置は、前記標的部とは別体に構成されることを特徴とする標的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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